勝又壽良のワールドビュー

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    バイデン米国大統領は就任以来、海外の首脳と面談を行なったのは日本と韓国の二カ国首脳だけだ。最大の外交課題である対中戦略をめぐって、知略を尽くしてきたがほぼ成功したようだ。3月には、クアッド(日米豪印)のオンライン首脳会談を開いて、4ヶ国のインド太平洋戦略の大枠を固めた後、実働部隊として日本と韓国が動き出したというところである。韓国は、中国を恐れる臆病者で正会員にならず、韓国企業によるサプライチェーンという「兵站部門」を担うことになった。

     

    バイデン氏は、名伯楽である。中国が、尖閣諸島をめぐって領海侵犯を続けているので、日本の政治力=軍事力を利用する。韓国は、表面に立ちたくないというので戦略部門の投資を米国で行なわせ、サプライチェーンの兵站部門で責任を持たせるというのだ。トランプ政権当時では、考えもつかなかった同盟国を串刺しにして団結を高める手法を採用した。

     


    『中央日報』(5月4日付)は、「バイデン氏、日本とともに中国と圧迫 韓国とは投資・新技術で実益」と題する記事を掲載した。

     

    米国のジョー・バイデン大統領が日本および韓国の首脳との会談で、それぞれ異なる分野に対する成果を確保したという評価が出ている。

    (1)「日本の菅義偉首相からは、中国牽制(けんせい)のための政治的支持を、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領からは、半導体など新技術での協力と企業投資など経済的利益を得た。4月16日の日米首脳会談の後に出てきた共同声明には、「中国」が5回登場した。「中国が国際ルールに外れる行為をしていることに懸念を表わす」とし、中国を規範違反者だとみなした。台湾に関して「両岸問題の平和的解決」を促し、南シナ海問題や香港および新疆ウイグルの人権の懸念も取り上げた」

     

    米国は、対中戦略において日韓それぞれの役割分担をさせている。日本は政治力、韓国はサプライチェーンの兵站部門の役割分担である。政治力は影響力である。軍事力も含まれる。日本の広範な潜在力の発揮である。

     


    (2)「5月21日(現地時間)、韓米共同声明には「中国」とのいう単語がそもそもなかった。その一方で「韓国と米国は、規範に基づいた国際秩序を阻害したり、不安定にしたり、脅かしたりするすべての行為に反対する」とし、秩序を乱す主体を明示しないで迂回的に中国を圧迫した。台湾問題も明示し、南シナ海の平和と安定も強調した。米国が同盟である韓国を配慮し、対中牽制の文面を調整しながらも、対中政策の優先順位である台湾問題で韓国から確かな立場を得たという分析だ」

     

    米韓共同声明に、「中国」という言葉は登場していない。韓国が、中国の報復を恐れているからだ。韓国は、中国の反対側に回ったことが明らかになった以上、もはや逃げ隠れはできない状況になった。二股外交もダメ。諦めることである。

     

    (3)「韓米および日米共同声明の最初の小題目には、同盟の性格を含蓄的に現わす文言が入った。韓国とは「同盟:新たなページを開く」、日本とは「同盟:自由で開かれたインド太平洋を作る」とした。日本とはすでにインド太平洋戦略全般で協力している点を強調し、韓国とは今後協力の幅を広げていくことに対して期待を示した。ホワイトハウスは同盟とのパートナーシップを具体化したファクトシート(説明書)も公開した。「韓米パートナーシップ」には国名だけを入れたが、日米パートナーシップには「競争力」と「回復力」という単語の英語の頭文字を取って「CoReパートナーシップ」と名付けた」

     

    ホワイトハウスは、日米パートナーシップを「CoReパートナーシップ」と名付けた。韓国には何もない。韓国は兵站部門担当で、最前線で活躍しないからやむを得ない措置と言えよう。韓国が、日本同様の正会員になれば、名称がつくだろう。それまでお預けである。

     


    (4)「北朝鮮非核化解決法では、バイデン政府は同盟の見解を十分に尊重するという立場だ。米当局者は最近、韓国政府の「韓半島(朝鮮半島)の完全な非核化」という表現を使い、今回の共同声明にもこれを入れた。4月の日米共同声明には日本の懸念を反映して「北朝鮮の完全な非核化」を明示した。日米および韓米共同声明では、ともに非核化で国連安全保障理事会決議の遵守を明示した。安保理決議は「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」や「核放棄(CVIA)」が目標だ。米国の非核化原則には変化がないということを各声明によって強調したといえる」

     

    米国は、北朝鮮の非核化問題について、日韓で表現を変えている。日米首脳会談では、「北朝鮮の完全な非核化」を用いた。米韓首脳会談では、「朝鮮半島の非核化」と言葉が異なっている。日韓それぞれの事情に応じて、米国が使い分けているもの。実質は、安保理決議に従っている。韓国メディアの『ハンギョレ新聞』は、この日韓の言葉の違いを金科玉条としているが、愚かなことを自慢しているに過ぎない。

     

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    韓国国立外交院は韓国の唯一の外交官養成機関である。院長は次官級待遇を受け、外交安保政策や中長期戦略などの研究機構である。そのトップである金峻亨(キム・ジュンヒョン)院長が、先の米韓共同声明を高く評価し、日本を貶めるという「異例発言」をした。米韓同盟は密接な関係に達して、日本が割り込む余地はないというのだ。

     

    この金院長は、今年3月に『永遠の同盟という逆説』と題する著書で、韓国が米韓同盟に毒されていると強烈な米国批判をした人物である。金氏の主張はこうだ。「韓国は、韓米同盟によって中毒症状を呈している。それは、圧倒的に強い相手によるガスライティング現象に似ていている」と書いた。ガスライティングとは、強者が弱者を心理的に支配し、正しい判断を下せない状態にさせるという心理学用語である。つまり、韓国は米国という存在のために「常識的・合理的で実用的な判断をできなくなった」というのだ。『中央日報』(4月1日付)が報じた。

     


    こういう彼が一転して、今回の米韓共同声明を絶賛し日本を批判したのだ。「ガスライティング現象」は消えたのか。そういう判断を飛び越えて、米韓同盟を絶賛している。どうも的外れなことを言う謎の人物である。

     

    『中央日報』(5月24日付)は、「韓国国立外交院長『韓米関係に日本が割り込む隙ない』」と題する記事を掲載した。

     

    韓国国立外交院の金峻亨院長が韓米首脳会談と日米首脳会談を比較し、「外交的にも、実質的な協力の部分でも、日本が割り込む隙はない」と評価した。



    (1)「金院長は24日、TBSラジオ時事番組「キム・オジュンのニュース工場」に出演し、「我々は米国と対等な協力があるが、日本はそのようにできず、最も大きな問題であるはず」とし、このように伝えた」

     

    米韓は対等な関係だが、日米は対等でないと言っている。何が根拠か不明だが多分、韓国が米国のワクチン技術を許与され生産することを指していると見られる。これは、韓国にワクチン開発能力がないから、技術を移転して製造させるに過ぎないのだ。

     

    日本では、複数の製薬企業がワクチン開発に取り組み、生産できるメドがついている。先陣を切るのは塩野義製薬だ。早ければ、年内に「日の丸ワクチ」第1号の接種が実現する状況になってきた。大阪大発ベンチャーのアンジェスも治験第二段階を済ませて、最終治験に向かっている

     


    これらに続いて、第一三共明治ホールディングス傘下のKMバイオロジクス(熊本市)が進めている。日の丸ワクチンがざっと4社からお目見えする状況で、韓国の「ゼロ」とは状況が異なるのだ。
    武田薬品工業は、米バイオ医薬品企業ノババックスが開発したワクチンについて、年内の供給開始を目指している。山口県光市の工場に年2億5000万回分の生産設備を整え、来年は1億5000万回分を供給する方向で政府と協議している。

     

    要するに、日本がワクチンでは韓国よりも数歩先を走っている計算になる。韓国外交院長が、実情を全く知らずに「K自慢」(何でも韓国が一番)すると笑われるのだ。

     


    (2)「続いて、「(日本に関連する内容は)一つも入らなかった。北朝鮮問題など韓米日協力の枠組みという米国側の意見だけが反映され、日本はわずか一度だけ入った。単独でもなく、韓日問題でもない」とし「(日米間の)外交・国防閣僚(2プラス2)会談でも今までした高官級でも(日本側は)非常に強硬で、CVIDもあった。中国と関連しても新疆ウイグル、香港のすべてが入ったが、我々と(会談を)する時はそのようなことがすべて除かれた」と説明した」

     

    米韓共同声明に、「日本」という言葉が登場しなかったと自慢しているがおかしなことだ。日本は当事国ではない。入らなくて当然である。

     

    日米共同声明では、「新疆ウイグル」「香港」の言葉が並んだが、米韓共同声明には除かれたとも自慢している。これは、韓国が入れないで欲しいという要請をしたから入れなかった結果である。共同声明とは、そういう性格のものだ。韓国が、中国の報復を恐れて共同声明に入れることに反対したわけである。外交院長が、こういう事情を知らないはずがない。韓国の中国に対する立場が、それだけ弱いことを物語っている。自慢するどころか、卑下に値する事態だ。

     


    (3)「金院長は、「日本の半導体やワクチンの力で割り込む余裕がないことが証明された」とし「素材、部品など装備では(日本が)確実に優位だが、いま最も必要な部分では競争力がかなり落ちている」と述べた」

     

    日本の半導体技術を見下しているが、韓国はメモリー半導体で競争力があるものの、システム半導体では日本に及ばず、だ。日本政府は、台湾の有力半導体メーカーの工場・研究所を筑波へ誘致して、一大「反攻作戦」へ転じる。自民党内に支援ティームを立ち上げてバックアップ体制を組んでいる。安倍前首相らが、支援の先頭に立って「日の丸」半導体再興に立ち上がる。ワクチンについて、韓国は不毛の地であるが、日本は独力で開発が軌道に乗っているのだ。

     

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    米国・フランス・オーストラリアが日本と共同で中国を仮想敵国とする訓練を始めた。日本は今後こうした共同訓練を定例化することにしている。5月16日の産経新聞によると、防衛省はフランスの艦隊が日本に寄港するたびに共同訓練を実施する方針だ。共同訓練は、強襲揚陸艦「トネール」(2万1000トン級)などで構成されたフランスの艦隊が、5月6日に佐世保国連軍司令部の後方基地に入港する前、あらかじめ準備されていた。フランスの艦隊は2017年、19年に続いて3回目の日本寄港となる。

     

    産経新聞は、日本が尖閣諸島を含む南西諸島を守るために米国・フランスとの連携を強化し、中国を牽制する目的で共同訓練を定期的に行う方針だと説明した。これに対して、中国が敏感に反応している。

     


    『レコードチャイナ』(5月23日付)は、「日米仏豪の合同軍事演習『インド太平洋のNATO化』と中国メディア」と題する記事を掲載した。

     

    日本、米国、フランス、オーストラリア4カ国が5月11日から17日にかけて東シナ海で行った合同軍事演習を中国メディアが取り上げ、「インド太平洋のNATO(北大西洋条約機構)化」と報じた。記事は同時に「中国をけん制しようと騒ぎ立てているが、一部の国によるけん制戦略はおのずと瓦解する」と自信をのぞかせた。

     

    (1)「『中国網』は合同軍事演習について、項昊宇・中国国際問題研究院アジア太平洋研究所客員研究員が執筆した記事を掲載。3点が異例だったとして、まず「ハイグレードの装備」を挙げた。この中では「4カ国海軍は11隻の軍艦、1隻の潜水艦、数十機の輸送機と哨戒機を出動させた」と説明。「特に日仏米が派遣した主力艦『いせ』『トネール』『ニューオリンズ』は、いずれもヘリコプターの発着艦が可能な1万トン級准空母だ。また日米仏はさらに計220人の精鋭海軍陸戦部隊を出動させた」と述べた」

     

    中国海軍は、実戦経験がゼロである。兵士が、戦場での超緊張状態を乗り切れるか注目されている。日清戦争における清国海軍の大敗が、トラウマになっていると指摘する専門家もいる。中国の潜水艦が潜航中に、自衛隊哨戒機から浮上するように通告され、国旗を上げて浮上した実例も報告されている。中国兵が、「日本軍強し」のイメージにどこまで打ち勝てるか注目されている。

     


    (2)「続いて、「顕著な狙い」に言及。「今回の演習場は日本の九州および付近の東シナ海の海域で、日本の本州から中国大陸および台湾島まで直線距離で最も近い地域で、
    尖閣諸島から1000キロしか離れていない。演習は『離島奪還』のテーマをめぐり、主に上陸作戦訓練を行った。陸海空多兵種共同作戦を強調し、ヘリによる強襲、市街戦、上陸作戦の訓練を重点的に行った」と解説した」

     

    訓練は仮想敵国が離島を占領すれば連合軍戦力が奪還するというシナリオで構成された。日本の水陸機動団など100人、米国の海兵隊60人、フランスの海兵歩兵隊約220人余が重火器と共に動員された。日本の尖閣諸島奪回軍事作戦であることがひと目で分かる内容であった。仮想敵国は中国である。



    (3)「3点目は、「欧州の大国の加入」。「仏艦隊が遠路はるばる訪れ、初めて日本の本州と東シナ海における軍事演習に参加した。仏軍事省の報道官は今回の合同軍事演習は『フランスのインド太平洋地域への関心の程度、日本との協力関係掘り下げの機会を確認した』と述べた」と紹介した」

     

    フランスは、ベトナムやカンボジアなどの旧宗主国で歴史的な関係が残る。アジアと欧州を結ぶ海洋交通路(シーレーン)が、中国の活動で自由に航行できなければ自国にも影響が及ぶ。香港や新疆ウイグル自治区での人権問題もフランスの背中を押す。今回の異例の共同訓練はフランス側から持ちかけたという。中国の抑止に積極的になったフランスの強い意志が表れている。

     

    今年後半にはフランスだけでなく、英国やオランダ、ドイツも軍の艦艇を日本周辺に派遣する。かつての欧州は、中国との経済的なつながりを重視して、東アジアの安全保障の問題と距離を置く場合が多かった。いま欧州主要国は、対中国で日米に足並みをそろえようとしている。中国にとって、自国の海洋進出がこういう事態を招いていることを認識すべきだろう。

     

    (4)「米日などの国は『インド太平洋版NATO』を構築するつもりはないと称しているが、その一方では実際の行動により、価値観を基準とし地域で食い違い・対立を極力引き起こし、地域諸国を中国対抗に抱き込んでいる」と批判。「地域諸国を抱き込み、対中競争・けん制を展開する米日の戦略は人心を納得させないだろう」

     

    中国の誤った領土拡張政策が、こういう日米豪仏の4ヶ国合同演習を招いている。中国がなぜ海洋進出をするのか。国内の矛楯を海外へ向けさせるという典型的な「帝国主義戦争」への準備と見るほかない。中国は、近代戦争の経験がなく先進国全てを敵に回して勝てるはずもない。こういう限界を認識せず、軍備拡張に進んでいる姿は自殺行為に見えるのだ。将来、NATOアジア版が生まれる可能性が極めて大きい。中国は、海洋進出を強めれば強めるほど、抵抗を受けて頓挫の運命を辿るはずだ。

     

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    中国が、米国との対立激化で焦っている。日韓に対して儒教を持ち出して「儒教国団結」を叫んでいるからだ。韓国は、中国以上に儒教国であるが、日本はその影響は極めて少ないのである。江戸時代に朱子学は、朝鮮経由で日本へ渡ってきたが、日本は盲信したわけでない。その非科学性に批判の矢を放っていたのである。

     

    これは、江戸時代に蘭学によって西洋の実証的精神の重要性を学んでいたことが影響した。また、国学によって儒教や仏教が渡来する以前の古事記・日本書記・万葉集などの古典によって、日本固有の文化が究明されていたことなどによって、儒教は部分的にしか摂取されなかった。ただ、教養としては理解されている。

     

    和算と言って、江戸時代の数学は独特の方程式や円周率の計算などの発展を遂げていた。技術や科学を否定する儒教が日本ではびこっていたら、このような独特の文化を持つことはなかっただろう。ただ、江戸時代に徳川幕府が自らの地位安泰を図って、儒教を利用したことは事実である。

     


    『朝鮮日報』(5月23日付)は、「民間外交も『赤い』中国」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のパク・スチャン北京特派員である

     

    4月末に韓国、中国、日本の経済連携をテーマに中国人民対外友好協会と山東省が主催した「協力開発対話」を取材した。山東省済南のホテルで開催されたこのイベントには韓国や日本の企業経営者など300人以上が出席した。週末にもかかわらず山東省の劉家義書記や地元の政府関係者なども数多く姿を見せた。米国との関係が悪化しているためか、中国は近隣諸国との交流に力を入れていると感じた。

     

    (1)「このイベントを主催した中国人民対外友好協会は、中国の民間外交を担当している。会長は中国外交部(省に相当)でアフリカ局長や南アフリカ共和国駐在大使などを歴任した林松添氏が務めている。林会長は南アフリカ共和国での大使在任中にツイッターで米国を激しく批判し、「戦狼外交官」として知られるようになった。大使の仕事を終えてから昨年4月に中国の民間外交トップに就任した。直接話をしてみると、林会長はよく笑い、言葉も速射砲のように早かった。韓国には外交部にいたときに一度訪問したことがあるという」

     


    ここに登場する林松添・中国人民対外友好協会の会長は、元「戦狼外交官」である。米国批判で名を売ってきた人物という。中国共産党の広報マンである。

     

    (2)「韓国、中国、日本の民間協力について話し合う場であったが、その間に林会長が何度も口にした国は米国だった。「米国は建国直後の二十数年を除いてずっと戦争をしてきた」「緊張と競争をつくり上げないと生きていけない国だ」と批判した。林会長は米国とは異なる韓国、中国、日本の共通点に言及し「経済的にも地理的にも3カ国は分離できず、同じ儒教の伝統を共有している」「韓中日の3カ国は東アジアに定着して生きていかねばならない。われわれは東アジアを離れることはできない」と訴えた

     

    下線部分で、日中韓三カ国を儒教国として分類しているが間違っている。日本は儒教国ではない。毛沢東は、文化大革命の10年間にわたり儒教を排斥した歴史を持つ。中国は、今になって儒教国を唱えているが大間違いである。ならば、現在の「覇道」(武力・権謀を用いた政治)を止めて、「王道」(仁徳を基とする政治)へ復帰することだ。儒教には、「世界覇権」などと言う言葉はないのだ。

     

    始皇帝は、自らを批判した儒者を生き埋めにしている。毛沢東も、これに近い行為をしたのだ。習近平氏は、この毛沢東を超えようとしている。中国の政治には、一度も儒教精神が生かされたことはなく、法家思想(儒教の仁・義・礼を否定し法律重視)という弾圧が常用されてきたのである。

     


    (3)「
    林会長は東洋と西洋、そしてその代表として中国と米国を比較し、「東洋と中国が優位にある」と何度も強調した。西洋哲学は競争や対決を強調するが、韓国、中国、日本の儒教思想は「和して同ぜず」と「仁義礼智信」を持つ和合と平和の思想だという。米国におけるコロナの感染状況、人種対立、銃器事故などに言及しながら「米国政府は人民のための政府ではない」「これに対して中国と韓日の政府は人民のための政府だ」と主張した」

     

    中国の民衆弾圧の歴史は、人権思想の絶無を証明している。宗族重視で「私」を邪悪なものとして否定したのである。すべて、「われわれ」概念が先行して個人を否定する歴史であった。こういう中国が、西洋の個人重視の哲学に勝てるはずがない。中国の儒教思想は、法家思想によって否定されてきたのだ。習近平氏も法家思想の持ち主である。

     


    (4)「林会長の話を長々と伝えた理由は、ポストコロナにおいて国家主義を強化した中国を象徴していると感じたからだ。民間外交は「ソフトパワー」という言葉で表現されるように、政治的な違いをいったん置いてソフトに接近するものとされているが、林会長は中国共産党の色を鮮明に出した。韓国人に「林会長の主張に同意するか」と質問すれば、否定的な反応の方がはるかに多いはずだ。来年修好30周年を迎える韓中関係の難しさもここにありそうだ」

     

    現在の中国が、孔子による儒教精神に基づく国家運営でないことは明らかである。唯一、これに近かったのは孫文である。辛亥革命(1911年)が結果的に失敗したのは、孫文の理想主義(儒教)が法家思想に破れた証明である。台湾は、孫文の考え方が受け継がれている。

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    日本でもワクチン開発が進んでいる。先陣を切るのは塩野義製薬だ。早ければ、年内に「日の丸ワクチ」第1号の接種が実現する状況になってきた。大阪大発ベンチャーのアンジェスも治験第二段階を済ませて、最終治験に向かっている。

     

    海外では、こうした日本の動きを注目している。日本が、国産ワクチン生産の基盤を固める前に、日本で委託生産に踏み切り「シェア確保」へ踏み出す。米バイオ製薬モデルナが、5月21日に日本で承認された同社製の新型コロナウイルスワクチンについて、日本国内での生産を検討していることがわかった。

     

    ステファン・バンセル最高経営責任者(CEO)が、日本経済新聞の電話インタビューに応じ、「日本を含めたアジアでのワクチン生産について検討しており、協議を進めている」と述べたもの。モデルナは、日本国内での生産について、日本企業と委託契約やライセンス契約をする可能性があるという。バンセル氏は、「まだ初期段階だが、日本の製薬業界の関係者と協議を進めている」と明かした。「アジアでの事業拡大と生産拡大について非常に興味を持っている」とし、「日本の高い労働力と研究力については理解している」と話した。

     


    日本政府はモデルナと9月までに5000万回分の供給を受ける契約を結んでいる。バンセル氏は追加の供給について、「来年に向けて日本政府を含めて協議を進めている」とした。モデルナ製ワクチンの国内供給を担う武田薬品工業のクリストフ・ウェバー社長は今月、追加で5000万回分を供給する協議を進めていると明らかにしている。以上は、『日本経済新聞 電子版』(5月21日付)が報じた。

     

    『時事通信』(5月21日付)は、「国内コロナワクチン『年内供給も』早期承認制度、国と協議 製薬会社」と題する記事を掲載した。

     

    新型コロナウイルスワクチン開発をめぐり、国内でも複数の企業が臨床試験(治験)を進めている。現在は承認に必要な数万人規模の大規模治験が壁となっているが、塩野義製薬の手代木功社長は5月10日に「条件付き早期承認という形で(厚生労働省と)話をしている」と説明。年内に供給を開始できる可能性が出てきた。

     

    (1)「条件付き早期承認は治験が難しい医薬品について、一定の安全性や有効性を確認した上で、発売後に評価を行う条件で承認する制度。製薬業界だけでなく、与党からも適用を求める声が上がっている。国産ワクチンの治験では、大阪大発ベンチャーのアンジェスが既に500人に対し、第2段階の接種を終えている。大規模治験の実施は困難だが、制度が適用できれば早期申請への道が開ける」

     

    条件付き早期承認は、大量の治験が難しい医薬品について科学データを基に先に承認し、発売後に評価を行う条件で承認する制度である。この「便法」によって、「日の丸」ワクチンの早期接種が可能になるという。塩野義製薬とアンジェスが対象である。こういう便法があれば、米国のワクチンも早く承認すべきであった。これで、二ヶ月の時間を空費した。

     

    (2)「武田薬品工業は米バイオ医薬品企業ノババックスが開発したワクチンについて、年内の供給開始を目指している。山口県光市の工場に年2億5000万回分の生産設備を整え、来年は1億5000万回分を供給する方向で政府と協議している。ワクチンの国内治験は、第一三共明治ホールディングス傘下のKMバイオロジクス(熊本市)が進めているほか、創薬ベンチャーの治験も始まる。製薬業界では「来年になればかなりの供給量がそろうのではないか」といった見通しも出ている」

     

    武田薬品は、米ノババックス・ワクチンの委託生産で年内供給を目指す。これに加えて、前述の通り、米モデルナの生産にも着手する。来年になれば、現状がウソのように潤沢なワクチン生産国になりそうだ。今しばらくの辛抱と言えよう。

     


    国産ワクチンの動きを少し詳しく見ておきたい。

     

    日本勢で開発が先行するアンジェスは、タカラバイオなどの参画を得て生産体制を構築。塩野義は、アピとその子会社であるUNIGENと協力し、21年度末までに年間3500万人分の生産体制を整備することを目指す。23年度の実用化を目指しているKMバイオロジクスも、21年度末までに半年で3500万回分を生産できる体制を整備中。武田薬品は、ノババックスから技術移転を受けて国内生産することになっており、年間2億5000万回分以上の生産能力を構築する計画である。以上は、『AnswersNews』(5月19日付)が報じた。

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