勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 日本経済ニュース時評

    caedf955
       


    日本の半導体国策会社ラピダスが、最先端半導体「2ナノ」(10億分の1メートル)の製造を手がけていることに、韓国メディア『朝鮮日報』記者が「疑問」の声を投げかけている。これまでの日本が、40ナノの半導体までしか製造した経験がないので、「2ナノ」は無理という前提である。だが、日本の半導体は1980年代後半まで、世界半導体の5割のシェアを占めた実勢を持つ。半導体製造設備・半導体素材を一貫生産している世界で唯一の国である。その潜在的能力は、決して韓国に引けを取らないだろう。 

    『毎日新聞』(3月24日付)は、「『ラピダス』が背負うリスク、日本国民は理解しているか」と題する記事を掲載した。筆者は、朝鮮日報東京支局長の成好哲記者である。 

    「ラピダス」。周りの日本人にこの会社の話を持ち出すと、ほとんどの人が知らない。関心すら示さない。それは、日本の国会議員でも大差なかった。「半導体会社ですよね」という薄い反応だ。質問を変えてあれこれ聞くと、ようやく関心を示してくる程度だ。

     

    (1)「ラピダスは2022年11月、トヨタ自動車、NTT、ソニーグループ、ソフトバンク、デンソー、キオクシア、NECの7社がそれぞれ10億円、三菱UFJ銀行が3億円を出資して設立した民間の半導体会社だ。日本政府はこの新生会社に補助金3300億円を投じ、さらに国の基金に最大6773億円が積み増される。合わせて1兆円余の資金を日本の人口で単純に割ると、1人あたり8000円強負担することになる。4人家族なら3万2000円つぎ込む計算だ」 

    政府の補助金目的は、ラピダスによって新規雇用が生まれることだ。地域の賃金水準を押し上げる効果もある。日本経済の成長に重要なテコ入れだ。同時に、新しい技術の伝播効果もある。最先端半導体の供給によって新産業が生まれる可能性だ。 

    (2)「ラピダスは今後4兆円の資金が必要だが、これも日本政府が負担する可能性が少なくない。ラピダスに出資する民間投資家がほとんどいないからだ。ラピダスの目標は、27年初めに最先端レベルの回路線幅である2ナノメートル(ナノは10億分の1)の半導体を生産することだ。半導体工場の設立及び量産にかかる総費用は約5兆円の見通しだ。23年9月、北海道千歳市で工場起工式が行われた。岸田政権は「半導体の復権を導く会社」と補助金支給の理由を説明するが、失敗するリスクが伴う大きな挑戦だ。国家予算1兆円がかかったプロジェクトであるにもかかわらず、国会で主要争点になっていないのは不思議だ」 

    記事では、失敗のリスクを指摘している。日本の半導体産業が、総合的に世界トップの位置にあることを忘れては困る。日本にとっては、後発のサムスンやTSMCに可能なことが、日本で不可能であろうか。

     

    (3)「匿名を求めた韓国のある半導体専門家は、ラピダスが成功するかどうかについて「不可能ではないが、四つの壁をすべて乗り越える必要がある」述べた。一番目は、ラピダスには2ナノ技術がないため米IBMと提携しているが、その水準がTSMCやサムスン電子に追いつかなければならない。しかし、もともと半導体製造企業ではないIBMの2ナノ技術はまだ実験室レベルで、製造現場では検証されていないという。TSMCとサムスン電子の量産水準でも現在3ナノ台だ。ラピダスが2ナノの生産ラインを実現するかは未知の領域だ」 

    日本半導体が、グローバル経済下で大きく出遅れたのは事実だ。だが、これからは地政学リスクが全面化して保護主義の時代に移る。世界の半導体研究所が、一斉に日本支援で体制を組んでいる事実を認識すべきだ。IBMのほかに、ベルギーの半導体研究開発機関であるimec(アイメック)と提携している。ラピダスや東大など国立大学、理化学研究所が参画する研究機関「最先端半導体技術センター(LSTC)」と、フランスのLeti(レティ)が昨年10月、協業検討に向けた覚書を結んだ。次世代品でも日米欧で連携し、将来のサプライチェーン(供給網)の安定につなげる。 

    (4)「二番目は、半導体の製造過程で、不良品を除いた歩留まりがどの程度かという技術力が問題だ。現在、日本で製造する半導体は40ナノにとどまっており、最先端の半導体を製造した経験が全くない。いわば、40ナノ半導体を経験した50、60代のエンジニアが独学しながら、2ナノの生産ラインを設置、運用しようとしている状況だ」 

    下線部は、全くの誤解である。全員が、米国IBMへ派遣されており、現地で新技術の研修を受けている。独学ではない。

     

    (5)「三番目は資金だ。工場設立後も、設備投資と研究開発に膨大な資金を投じ続けなければならない。TSMCとサムスン電子の設備投資額は22年、それぞれ363億ドル(約5兆4700億円)と320億ドル(約4兆7000億円)だった」 

    ラピダスは、25年に「2ナノ」試作品を発表してから、株式上場の意向だ。これで、資金調達が可能になる。 

    (6)「四番目が技術や資金よりもっと高い壁だが、顧客を得られるかだ。ファウンドリーは顧客の企業からチップ設計図を受け取り、製造して納品する企業だ。TSMCはアップルにiPhone(アイフォーン)のチップを供給している。日本には2ナノ半導体を必要とする企業がない。2ナノの顧客はアップル、エヌビディア、グーグル、マイクロソフト、クアルコム、サムスン電子のように、スマートフォンや人工知能、データセンター関連で先端を走る巨大テック企業だ。新生企業が工場を新設したからといって、大企業が取引先を変えるだろうか」 

    ラピダスは、「チップレット」と言って、異種の半導体も組み合わせる世界最先端技術でサムスンやTSMCへ対抗する。これによって、短納期を実現してユーザーを引きつけられると試算している。ユーザーにとって、ビジネスチャンスを逃さないためにも、短納期は有力な手段である。

     

    (7)「世界的ベストセラー『半導体戦争』の著者で、米タフツ大准教授のクリス・ミラー氏は米経済メディア「ビジネスインサイダー」とのインタビューで、「ラピダスは、小規模の生産でもビジネスとして成り立つということ、そのようなマーケットが存在するのだということを、身をもって証明しなくてはならないでしょう」と述べている」 

    下線部は、まさに「チップレット」という世界初の技術で開拓可能である。

     

    次の記事もご参考に。

    2024-03-07

    メルマガ547号 日本経済再生「2024年」、半導体追撃で頂点可能 秘策は「チップ

     


    a0070_000030_m
       


    日経平均株価は22日、4日続伸し連日で最高値を更新した。投資家の目は、1年先の2025年3月期の企業業績に向いている。来期も純利益が1割伸びるとの予想が買い手がかりとなっている

     

    『ブルームバーグ』(3月23日付)は、「日本株ブームは終わらない 企業業績信頼で17年ぶり利上げにもめげず」と題する記事を掲載した。

     

    2007年以来となった日本銀行による利上げも、日本株相場の記録的な騰勢を鈍らせることはなかった。輸出と内需セクター双方の企業業績が良好で、先行きに対しても強気の投資家は安心感を持ち続けているためだ。

     

    (1)「日本政府高官は、過度な為替市場の動きに対し行動を起こすと再三警告しているものの、足元で進む円安は輸出セクターの収益を押し上げ、日本株の活況につながっている。また、日銀が利上げに踏み切る要因になった日本経済のデフレからインフレへの転換は、内需セクターにとってプラスだ。ただ、賃金の上昇が続かない限り、生活コストの上昇がいずれ家計に打撃を与えることになる」

     

    円安で、輸出にプラスという前提で買われている。こうした目先要因とは別に、日本経済がインフレ基調へ転換したことの評価が根本にあろう。賃上げが価格転嫁して消費者物価を押し上げるという好循環の到来である。日本が、待ちに待ったパターンだ。その裏には、企業のパラダイムシフトがある。「値上げは良いこと」という共通認識である。

     

    (2)「BofA証券が実施した最新のアジアファンドマネジャー調査によると、パラダイムシフトを理由に日本は機関投資家からの人気が最も高く、日本の景気に対しては全体の67%が今後1年で「強くなる」と予想している。一方、最近の株高が急ピッチだったため、今後1年間の期待リターンについて3月は「ゼロ~プラス5%」と回答する向きが最も多かった。2月は「プラス5~10%」が最多だった。また、BofAでは東証株価指数(TOPIX)採用銘柄の1株当たり利益(EPS)について、25年3月期の伸び率を9%、26年3月期を8.3%と見込んでいる

     

    TOPIX採用銘柄の1株当たり利益は、25年3月期の伸び率が9%、26年3月期を8.3%と見込まれている。こうした高水準の利益増が期待できれば、日本経済のデフレ脱却は確実である。

     

    (3)「日本経済が長年のデフレから脱却し、転換期を迎えている兆候は各種データから確認することが可能だ。日銀は17年ぶりの利上げに踏み切り、生鮮食品を除く消費者物価指数(CPI)などの数字はインフレの加速を裏付けている。上場企業経営者の株主還元姿勢の変化や円安進行もあり、グローバル投資家が日本への投資を積極化した結果、日経平均株価は2月に1989年に付けた史上最高値を30年以上ぶりに更新した」

     

    日銀にマイナス金利解除は、日本経済正常化への後押しになる。これまでの利益ゼロの「ゾンビ企業」は整理され、貴重な労働力が他産業へ向えば、日本経済の底上げに繋がる。

     

    (4)「投資家が次に気にしているのは、日銀が追加利上げに踏み切るタイミングだ。ブルームバーグの調査によると、エコノミストら47人のうち約62%が10月までに日銀は再利上げに動くと予想している。JPモルガン証券クオンツストラテジストの高田将成氏は「短期金利ゾーンで追加利上げ観測が強まれば、今後の市場環境に影響を及ぼす」と分析。株式市場では内需関連株を買い、外需関連株を売る「日銀追加利上げトレードが増えそうだ」と読む」

     

    日銀が利上げできる環境が整えば、日本経済は完全な健康体になった証拠である。祝うべきことだ。再生日本経済の「成人式」と言えよう。

     

     

    caedf955
       

    日米が、揃って半導体生産体制強化に合わせ、韓国からの人材獲得へ動き出している。韓国では、後輩が役員へ昇格すると先輩は退職する例が多いことから、ここを狙い目に人材スカウトを始めている。台湾のTSMCも人材スカウトの標的になっている。ただ、TSMCの離職率は韓国の半分とされ、高い定着率となっている。 

    『中央日報』(3月23日付)は、「米日、韓国半導体のブレイン引き抜き サムスン電子の離職率 TSMCの2倍『半導体人材争奪戦』」と題する記事を掲載した。 

    米国や日本の半導体業界は、韓国の半導体人材を欲している。韓国の半導体企業は、愛国心の強調を越えて、自ら人材を引き寄せる魅力を備えなければならないとの指摘が出ている。

     

    (1)「米国の「メイド・イン・USA・チップ」構想には、チップを作る人材が必須だ。米政府から27兆ウォン(約3兆円)の補助金を受けたインテルは、韓国のファウンドリー人材を狙っている。メモリーメーカーのマイクロンは、世界1位の韓国のHBM人材を狙っている。匿名希望の韓国国内の工科大学教授は「サムスン・SKハイニックスで働く元教え子たちが最近、米国企業への転職の提案を受けているが、幼い子供がいる場合は真剣に米国行きを悩んでいた」と述べた。中国半導体企業の人材奪取に続き、米国企業に流出する人材規模が大きくなりかねないという意味だ。影響は、国内の素材・部品・装備業者にも及んでいる。ある部品業者の関係者は、「サムスン・SKなどに技術支援をしていた従業員がそのまま離職する事例が増え、最近年俸を高め新規採用も増やしている」と述べた」 

    韓国独特の「年功序列」意識が、後輩の役員就任を機に先輩を退職させている。海外企業は、こういう「チャンス」を捉えて、積極的なスカウトを行っている。 

    (2)「政府が乗り出して「半導体復活」を叫ぶ日本も、人材確保に死活をかけている。日本半導体の「失われた20年」の間、人材養成が途絶えたため、50代のエンジニアが再び現場復帰する場合が多い。台湾3位のファウンドリー企業PSMCと日本SBIホールディングスの合弁会社・日本JSMCのジョセフ・ウー代表は先月、現地メディアに「最も大きな問題はエンジニア不足」とし「台湾からエンジニアを派遣してもらい、日本エンジニアを台湾に送って訓練させ海外人材も募集する」と述べた」 

    日本では、過去の半導体技術者を積極的に採用して、技術再訓練を行っている。「ダピダス」の場合、こうした技術者が次々と応募しているという。

     

    (3)「日本の新生ファウンドリー・ラピダスの関係者は21日、韓国中央日報紙に「工程とパッケージング分野全般に人材が不足しており、海外人材を必ず迎え入れなければならず、当然韓国エンジニアもリクルーティングの対象」と述べた。TSMCの日本子会社JASMは最近、韓国の大学院生を対象にした就職情報サイト「キム博士ネット」で、修士・博士クラスの専攻者エンジニアを対象に求人活動を始めた。JASMが韓国で人材採用に参入したのは今回が初めてだ。日本経済新聞などによると、日立・パナソニック・NEC・富士通などが最近賃金を大幅に引き上げ、半導体装備業者の東京エレクトロン(TEL)は大卒新入社員の初任給を40%引き上げた」 

    日本のハイテク企業は、積極的な賃上げを行った技術者の転職を防ぐ体制を強化している。 

    (4)「台湾は、自国の半導体技術人材を徹底的に守っている。KOTRAによると、台湾の賃金労働者の所得は韓国の69%水準に止まっている。しかし、台湾半導体従事者の年俸はこの5年間で22.9%増加し、台湾の平均(9.3%)を大きく上回った。台湾を代表する半導体企業メディアテックとTSMCの2022年の非管理職職員の年俸中央値はそれぞれ374万7000台湾ドル(約1772万円)と243万5000台湾ドル(約1152万円)で、台湾平均の4~5倍水準だ。台湾の経済安保を主導する産業らしい処遇だ。TSMCの修士クラスの新入エンジニアの初任給は8360万ウォン(約950万円)水準だ。2018年に比べて2022年のTSMCの賃金は47%増えた」 

    台湾TSMCの給与水準は、台湾平均の4~5倍である。2022年の非管理職職員は、1772万~1152万円。新人エンジニアは約950万円である。

     

    (5)「TSMC創業者であるモリス・チャン博士は昨年秋、米マサチューセッツ工科大学(MIT)での講演で「台湾が半導体強国になった理由」について第一に人材、第二に低い離職率を挙げた。台湾は、半導体エンジニアと生産職が報酬のより高い職場へ移ることはほとんどなく、日本も同様だという。チャン博士は「反面、米国の半導体業界は離職率が15~25%で高い」として「これでは製造業がまともに成功できない」と述べた。TSMCとサムスン電子の離職率はそれぞれ6.7%と12.9%で(2022年基準)、サムスン電子がTSMCの2倍だ」  

    TSMCとサムスン電子の離職率は、それぞれ6.7%と12.9%で(2022年基準)である。サムスン電子が、TSMCの2倍になっている。 

    (6)「韓国は、工学部を出て大企業に行っても、40代半ばから後半になると「押し出される」という認識が強い。IMF通貨危機の時に経験した大企業構造調整の余波は最近20年間「工科大学忌避、医大志向」につながった。「後輩が先に役員になったら出て行かなければならない」という通念も根強い」 

    韓国では、妙な「年功序列」意識が働いている。「後輩の下では働かない」という意識だ。これでは、韓国からの人材流出は増え続けるであろう。

    テイカカズラ
       

    世界の半導体は、メモリーから非メモリーへと大きく転換している。特に、AI(人工知能)の実用化とともに、この流れが加速化している。韓国のサムスン電子は、こうした流れを見誤り、今や大きな差を付けられた。韓国半導体に危機が忍び寄っているのだ。 

    『ハンギョレ新聞』(3月23日付)は、「メモリー輸出も、AI時代の非メモリーも不振 赤信号灯った『半導体強国』韓国」と題する記事を掲載した。 

    (1)「830億ドル(2018年)から429億ドル(2023年)に。5年間で韓国メモリー半導体の輸出額は半分に減った。特にここ2年間は、毎年輸出額の減少率が2桁に達した。世界のメモリー市場で、サムスン電子とSKハイニックスを中心とした韓国の半導体大手のシェアは、約10年間にわたり60%前後に達するほど独占的地位を保っているにもかかわらず、輸出額において急激な変化が現れたのだ。専門家たちは、業況によって大きく左右されるメモリー中心の韓国の半導体産業構造に内在した弱点が露呈した2年だと評価する」 

    世界のメモリー市場で、サムスン電子とSKハイニックスは60%前後に達する高いシェアを持つ。だが、メモリー市場は世界半導体の23%にすぎない。76%は非メモリー市場である。韓国は、その狭い市場で6割を占めるという「お山の大将」である。

     

    (2)「相対的に安定した成長をみせる非メモリー半導体市場では、韓国の影響力は微々たるものだ。産業研究院の資料によると、国別の非メモリー半導体のシェア(売上ベース)は韓国が3.%で、台湾(10.%)、日本(9.%)、中国(6.%)を下回っている。半導体設計分野の強い米国が54.%を占めている。世界の半導体市場で、メモリー半導体の比重は23.88%(市場規模187兆ウォン)である一方、非メモリー半導体は76.12%(593兆ウォン)。韓国が強い存在感を放っているのは小規模な市場だけという話だ」 

    国別の非メモリー半導体のシェアでは、日本が9.2%であるが韓国は3.3%である。日本は、底力を発揮して韓国を大きくリードしている。こういう潜在的力量を持つ日本は今、半導体復興に賭けて立ち上がっているところだ。可能性は十分ある。 

    (3)「半導体強国に赤信号が灯ったのは、韓国の半導体産業を率いてきたサムスン電子の状況と相まっている。特に、サムスン電子はメモリー部門でも競争力を脅かされている。サムスン電子の半導体事業部(DS)内外では「四面楚歌」という反応まで出ている。大規模な投資を通じて汎用半導体市場をいち早く先取りすることに成功したサムスンの戦略が、注文生産に近づいた人工知能(AI)時代の新しい半導体地形にうまく対応できずにいるのだ。代表的な事例が、主力のDRAMのカテゴリーに属する高帯域幅メモリー(HBM)だ。AIサーバー用グラフィック処理装置(GPU)に欠かせないHBMは昨年から需要が急増したが、サムスン電子はGPUを独占しているNVIDIA(エヌヴィディア)にHBMを供給できなかった。サムスンを追撃していたSKハイニックスが事実上供給を独占した」 

    サムスンは、AI時代の到来を読み誤った。DRAMに属する高帯域幅メモリー(HBM)が、AIサーバー用グラフィック処理装置(GPU)に不可欠であることに気づかなかったのだ。技術陣の「大ミス」である。不注意の一語である。

     

    (4)「ユジン投資証券リサーチセンター長のイ・スンウ氏は「AI時代に入り、汎用半導体のDRAMも顧客オーダーメード技術が重要になっているのに、サムスンの競争力が伸び悩んでいる。HBMだけでなくダブルデータレート(DDR)でも技術力の問題があり、以前には見られなかったサムスン内部の危機が大きくなっている雰囲気」だと語った。サムスンが2019年にHBM開発チームを解体したのは、サムスンが未来の動向をうまく予測できなかった事例に挙げられる。匿名の半導体業界関係者は「サムスンが、2019年に収益性が保障されないとの理由でHBM開発チームを解体した。当時は、下降局面に対応しようとした選択だったが、未来を読めなかった短期的な戦略がAI半導体市場の初期に苦戦する結果を生んだ」と話した」 

    サムスンは2019年、前記のHBM開発チームを解体してしまった。サムスンが、朴大統領事件に巻き込まれて大混乱していた当時のことだが、経営危機感から守りの姿勢に入っていた証拠であろう。

     

    (5)「サムスンは、非メモリー分野で数年にわたって挑戦をしているものの、ライバルを遠くから追いかけている格好だ。非メモリー半導体を作る領域であるファウンドリ(半導体委託生産)市場でトップ業者である台湾のTSMCが、アップルやNVIDIA、AMDなど大型顧客企業を確保し、1位の地位を固めている。一方、サムスン電子が大手顧客企業から受注したというニュースは聞こえてこない。サムスン電子は家電および自社のスマートフォンに向けたチップ生産と、TSMCに集中した注文を分散して受け取る戦略で2位の座を保っている状況だ。最近は、米インテルがファウンドリ事業に再び進出し、サムスンを押しのけて2位にのし上がろうとしている状況だ」 

    サムスンは、長いこと「半導体世界一」を誇りにしてきたが、現在はそれどころの話でなくなった。台湾のTSMCに大きく引離されているほか、日本が国策半導体企業ラピダスによって追撃体制を固めている。韓国半導体は、かつての力を失った。

    a0960_008707_m
       


    中国は、レジェンド(旧世代)半導体の生産拡充によって、世界シェアを高める動きに出ている。米国は、こうした中国の動きを警戒しており、すでに輸出した半導体製造設備の部品やメンテナンスの提供も米国同様に禁止するよう同盟国(日本・オランダ)へ要請した。

     

    米商務省のアラン・エステベス次官(産業安全保障担当)は21日、下院外交委員会の聴聞会で「同盟国が米国と類似した中国向けの半導体輸出統制を導入するよう説得し、米国企業と同盟国企業の間で『同等さ』を達成しようと取り組んでいる」と説明した。米国の厳しい対中姿勢をみせている。

     

    『中央日報』(3月22日付)は、「米国、同盟国の半導体装備部品『対中輸出統制も米国水準にならなければ』」と題する記事を掲載した。

     

    米国の半導体など核心技術の輸出統制を総括するアラン・エステベス米商務省産業安保次官は21日(現地時間)、対中国半導体製造装備の輸出統制はもちろん、中国にすでに輸出した装備のサービスと部品販売も統制中だと明らかにした。また、半導体装備の対中輸出統制に参加すると言ったオランダ・日本など同盟国が部品とサービスの輸出統制も米国と同じ水準になるよう牽引するという意向を明らかにした。多国間レベルの対中輸出統制戦略を示唆したものと分析される」

     

    (1)「21日(現地時間)、米下院外交委員会聴聞会を主宰したマイケル・マッコール外交委員長(共和党)は「日本・オランダが(米国と)類似の対中半導体輸出統制を適用することで合意したことは希望的だが、依然として日本・オランダが半導体製造用の部品を中国に販売しサービスすることが相当部分許容されている」と指摘した。聴聞会に出席したエステベス次官は、「我々は主要核心技術に対する広範囲な戦略的輸出統制に入った」とし、「これには軍事用・スーパーコンピュータAI(人工知能)を駆動するのに必要な先端コンピュータ半導体とこのような先端半導体生産に必要な製造装備が含まれる」と述べた。続けて、「同盟国が米国と類似した対中国半導体輸出統制を導入するよう説得し、米国企業と同盟国企業間の同等性(parity)を達成しようと努力している」と述べた」

     

    米国は、日本やオランダとともに中国へ最先端半導体製造設備の輸出規制をしている。だが、日蘭両国はすでに輸出した製造設備の部品やメンテナンスを続けているので、これも米国並みに中止するように要請された。この理由は、中国が古い設備を使って最先端半導体を作ろうとしているからだ。昨年、ファーウェイが7ナノ半導体を装着したスマホを発売したが、この半導体は古い設備を使ったものだ。米国はこういう経緯もあって、過去の製造設備でも部品とメンテンナスの提供を規制しようという狙いである。

     

    (2)「エステベス次官は、「中国に輸出された(半導体)装備のサービス問題も調べている」とし「また(半導体装備)部品も扱っている。我々は部品が中国に行くのを防ぎ、同盟国も参加させるために努力している」とした。聴聞会でアン・ワグナー共和党下院議員は「現在、米国の輸出統制システムには深刻な欠陥がある。その結果、昨年、アメリカ大陸のデータ収集のために送った偵察風船などで米国の技術が敵のプログラムに使われている」と批判した。また、エステベス次官に「マイクロチップ技術の輸出統制を強化するために同盟国およびパートナーにどんな圧力をかけているか」と質問した」

     

    中国が、半導体製造設備を入手すべくあの手この手を使っているので、米国は抜け穴塞ぎに躍起になっている。

     

    (3)「半導体装備市場を主導しているオランダや日本などは、米国の対中輸出統制戦略に参加する意思を明らかにしたが、部品やサービス販売に関する限り、低いレベルの統制政策を展開し、損害が出ているというのが米国関連企業の不満だった。米国半導体産業協会(SIA)は2月「韓国や日本、台湾、イスラエル、オランダなど競争企業は輸出統制対象にない半導体装備を中国に輸出でき、関連サービスも提供できるため米国企業が不利な条件」という意見書を米商務省産業安保局(BIS)に出した。同時に「米国と同等水準の多国間輸出統制方式を使わなければならない」と要求した」

     

    日蘭両国は、部品やメンテナスを行っている。米国は、これが結果として中国の半導体製造能力を高めると危惧している。

     

    (4)「これと関連して昨年12月、エステベス次官は韓米経済安保コンファレンスの基調演説で韓国など同盟と新しい輸出統制体制を作る方案を議論していると述べた。このような中、エステベス次官がこの日、同盟国に「米国と同等な」水準の半導体装備部品およびサービス販売統制を説得していると言ったことは、米国業界が要求した多国間輸出統制方式を使うという意味と解釈される」

     

    韓国は、中古の半導体製造設備を中国へ輸出しないと申入れている。韓国半導体が、米国への協力するものだ。

     

     

     

    このページのトップヘ