勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    中国が、海洋進出を深めれば深めるほど、米国が頼りにできるのは日米同盟で結ばれている日本である。これまで、米国の新大統領が就任後の最初の会談相手が、日本の首相であったという記事が現れた。そう言われてみれば、ホワイトハウスで新任大統領の会見相手は日本の首相である。今回も、その恒例の初会見が「菅首相」であるのか。

     

    『中央日報』(11月10日付)は、「『ホワイトハウスに一番乗り』、菅首相、バイデン氏と最初の首脳会談狙う」と題する記事を掲載した。

     

    「ホワイトハウスに一番乗りだ」。米国大統領選で民主党のジョー・バイデン元副大統領の勝利が確実となったことから、日本政府が菅義偉首相とバイデン氏の最初の首脳会談のための日程調整に入ったと時事通信が10日、報道した。
    (1)「日本政府は米国の新政府と早期に信頼関係を築いて「強力な日米同盟」を周辺国に示すために「各国に先駆けて」首脳会談を開くことを目指している。時期は来年1月20日の米国大統領就任式直後である2月中になるものとみられる。菅首相も9日、首相官邸で訪米または米国新大統領との電話会談の日程に関する質問を受け、「タイミングを見て調整していきたい」と明らかにした。日本政府はすでにバイデン陣営に対面首脳会談と電話会談を提案したことが分かった」

     

    安倍前首相が、トランプ氏と初会見を実現したとき、国内メディアは「忠犬安倍」と揶揄した。だが、安倍・トランプの関係は、世界が羨む濃密なものとなった。外交戦略の要諦は、相手の胸に飛び込んで本音を言い合える関係構築である。菅首相とバイデン氏は、互いに「苦労人」であるので話が合うと指摘する向きもいる。そうあって欲しいものだ。



    (2)「時事通信によると、日本政府は米大統領が就任にあたりどの順番で各国首脳と会うかは、その国の重要度をどうみているかを示すバロメーターだと考えている。これまで米国にとっては日本が「1番手」だった。2016年ドナルド・トランプ大統領は、大統領選挙投票日から9日後に外国首脳として初めて安倍晋三当時首相と非公式協議を行った。続いて、翌年の就任式から3週間後には公式な対面会談が行われた」

     

    米国が、アジア重視戦略を取っている以上、日本との関係は濃密でなければならない。以心伝心で、日米が息を合わせれば、中国も警戒して滅多な手出しはできなくなる。菅首相は、空手の有段者と聞く。空手の手法で、日米外交に新たなページを付け加えて欲しいものだ。

     

    (3)「2009年に就任したバラク・オバマ大統領も最初の首脳会談相手に当時麻生太郎首相を選んだ。特に、東シナ海などで軍事行動を強化している中国や核開発をやめない北朝鮮、国交正常化以降で最悪の状況に陥っている韓日関係などを考えると、日米協力の必要性が非常に高い状態だ。ある外務省幹部は時事通信に対して「日米間に隙を見せないことが不可欠」と語った」

     

    日米関係が緊密に保たれていることが、中国に対する最大の警告となろう。米韓関係のように、韓国が中国へ秋波を送るという「無様なこと」があってはならないことだ。明治維新以降、日米関係が緊密であった時代は、日本がもっとも平穏な時期である。不幸にも対立して戦争状態になった時代は、最大の混乱に巻き込まれている。米国嫌いで中露が好きな向きは別として、日米関係は堅固なものでなければならない。その意味で、「ホワイトハウス一番乗り」は、平和の証として歓迎すべきことである。

     

    (4)「麻生・安倍両氏の訪米が早いタイミングで行われたため、今回だけ出遅れる場合、「外交が苦手」という菅首相に対するこれまでのマイナス評価が広がりかねないとの懸念もある。ある政府関係者は「ホワイトハウス一番乗りを目指す」と明らかにした。当初、米国大統領選挙をめぐり日本政府の悩みは深かった。バイデン氏優勢とみながらも、これまで日本と親密な関係を築いてきたトランプ大統領も配慮しなければならなかったためだ。したがって当選者が明確になるまでは菅首相の祝意発表を控える方向だった」

     

    菅首相も、ホワイトハウス一番乗りをすべきである。メディアが批判しても構わずに行い、その結果が平和であればいいのである。

     

    (5)「一方で、バイデン氏との今後の関係を考慮して祝意表明が遅れすぎないように時機を見計らっていた。結局、菅首相は日本時間で8日未明、米国メディアから「当確」報道が出てきた後に欧州主要国の首脳が祝意を送り始めた8日午前、ツイッターを通じて祝いのメッセージを残した。これについて外務省幹部からは「早過ぎず遅過ぎずのタイミングだ」という肯定的な評価が出てきたと時事通信は伝えた」

     

    日本は、バイデン氏への祝意表明のタイミングが難しかったと思う。トランプ大統領と安倍前首相の親しい関係をぶち壊すことがあってもならない。また、そうかといって欧州主要国からかなり遅れてもならない。そういうタイミングでは、G7の中で「最後」という場所取りとなった。トランプ氏への義理も果たさなければならないのだ。

    あじさいのたまご
       

    韓国の日本への接近が度を越してきた。日韓関係が最悪状態中で、韓国が唐突に「日韓共同宣言」を提案しているという。中央日報によれば、日本を訪問中の朴智元(パク・ジウォン)国家情報院長が8日、二階俊博自民党幹事長と会い、強制徴用や輸出規制問題など、日韓葛藤を解くための解決法として両国首脳の度量の広い宣言を提案したと韓国外交消息筋が9日、伝えた。

     

    この日韓共同宣言なるものが、韓国の都合で提案されていることは明白である。狙いは、韓国が主宰する12月の日中韓3ヶ国首脳会談へ、菅首相の出席を取り付けたいだけである。文大統領は、この首脳会談開催で政治的得点を挙げられると踏んでいる結果だ。旧徴用工賠償問題で何らの対案も出さない韓国が、日韓共同宣言でウヤムヤにしてしまう意図であろう。

     

    『中央日報』(11月10日付)は、「訪日した朴智元、自民党に『韓日首脳共同宣言』提案」と題する記事を掲載した。

     

    時事通信は、成田空港を通じて入国した朴氏が、8日夜、東京のホテルで二階氏と会ったと報じた。消息筋によると、朴氏は二階氏に文在寅(ムン・ジェイン)大統領と菅首相がそれぞれ政治的決断を下し、新たな韓日関係の進む方向を共に提示しようと提案した。



    (1)「これは、韓日関係の短い黄金期を可能にした「金大中(キム・デジュン)-小渕宣言(日韓共同宣言-21世紀に向けた新たな日韓パートナーシップ-)」に続く性格のものとみることができる。1998年10月金大中大統領は日本を訪問し、小渕恵三首相とともに「韓日共同宣言」を発表した。ここで小渕首相は植民地支配によって韓国国民に多大な損害と苦痛を与えたことを認めて、痛切な反省と心からの謝罪を表明した。金大統領は小渕首相の歴史認識と平和憲法に基づいた日本の戦後平和・繁栄努力を評価した」

     

    韓国は、日韓関係について「風見鶏」である。反日が得と見れば反日、損と見れば親日を装うというカメレオンである。今年5月の総選挙で与党は、「韓日決戦」を謳い文句にして大量の議席を得ている。こういう韓国与党が持込む提案には、必ず「裏」があることを警戒すべきだ。

     

    (2)「1965年国交正常化のときも文書に入れることができなかった日本の植民支配謝罪を明確にし、金大統領はこれで両国間の歴史認識による葛藤は一段落したと明らかにした。朴氏は当時大統領秘書室公報首席秘書官だった。朴氏は韓日関係が最低点をつけている状況で、当時のような指導者間の大乗的な決断が必要だという次元でこのような構想をしたとみられる。強制徴用問題を両国が直ちに解決することは難しいことから、まず指導者が大きな枠組みで共に未来志向的に進んでいこうという約束、すなわち政治的宣言をすることで、関係改善の転換点とみなすことができるようにしようという趣旨だと消息筋は説明した。これについての二階氏の反応は確認されなかった」

     

    金大中氏は、もともと日本の政界関係者と親しかったという地盤があった。日韓共通の理解が可能という背景があったのだ。現在の韓国与党と日本は、何のつながりもなく、凧の糸が切れたも同然である。口を開けば日本を批判する韓国与党とは、共同宣言を出すような雰囲気でない。

     


    (3)「朴氏は、菅首相の表敬訪問も推進していると日本メディアTBSが伝えた。実現する場合、10日に首相官邸を訪問する形になる可能性が高い。朴氏が文大統領のメッセージを持って行くかどうか、二階氏に提案した構想を菅首相にも説明するかどうかは確実ではない」

    朴氏が菅首相と面会すれば、次のような点を話題にしたいと、『朝鮮日報』(11月10付)が報じている。

     

    1)韓国が、今年議長国を務めている日中韓3カ国首脳会議の今年末開催問題

    2)来年、北朝鮮の参加が注目されている東京五輪関連協力方案

    3)強制徴用など、韓日対立の打開策模索

     

    韓国は、2)の北朝鮮の東京五輪選手団に合わせ金委員長の東京訪問を実現し、日本側と北朝鮮拉致問題解決の話合いを促進させる。こうして、日本の関心を引こうとしている。韓国の真意を見抜く必要がある。

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    待ちに待ったニュースの登場である。米製薬大手ファイザーは9日、ドイツのバイオ企業ビオンテックと開発中の新型コロナウイルスのワクチンについて、「90%以上の予防効果があった」とする最終の臨床試験(治験)の初期結果を発表した。安全性の確認が終われば、月内にも米食品医薬品局(FDA)に、緊急時使用の許可申請を出す。年内にも米国の一部で接種が開始される可能性があるという。朝日新聞が報じた。

     

    『朝日新聞 電子版』(11月9日付)は、「コロナワクチン『効果9割超』米ファイザー許可申請へ」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「ファイザーによると、最終の第3相の治験には43千人あまりが参加。ワクチン候補と偽薬を投与するグループ二つに分け、それぞれ2回接種し、効果と安全性を確かめている。これまでのところ治験参加者で陽性が確認されたのは94人。偽薬投与者が多いとみられる。発表された「90%以上の予防効果」は、当初予想された60~70%を大幅に上回る。FDAは少なくとも50%以上の効果があることが正式な薬事承認の条件としている。ただ、治験は終了しておらず、結果は専門家の査読を受けた論文として発表されていない。免疫効果がどれほど続くのかなど、詳細は不明だ」

     

    米国ファイザー社は、2019年の製薬売上高が世界2位の企業である。1949年、抗生物質テラマイシンを開発した製薬企業である。「ストマイ」は、戦後の日本では結核などで多くの人々が命を救われた。今回の新型コロナウイルスワクチン開発で、人類へ大きな貢献をした企業として記憶されよう。

     

    発表された「90%以上の予防効果」は、当初予想された60~70%を大幅に上回る。FDAは少なくとも50%以上の効果があることが正式な薬事承認の条件としてきた。これを大幅に上回る。これまで、ロシアや中国からワクチン開発ニュースが流れたが、いずれも詳細が分からなかった。ブラジルでの中国開発ワクチンは、接種者の2~3割が副作用を発生し、ブラジル大統領が正式接種を拒否する騒ぎとなっていた。

     


    (2)「ファイザーなどワクチンを開発する製薬会社がめざすのは「緊急時使用許可」だ。最終の治験が終わる前でも、効果や安全性が確認できれば医師の判断で接種できるようになる。FDAの指針では、申請する際には、少なくとも治験参加者の半数を第2回接種後、2カ月間追跡し、安全性を確認するデータを集める必要がある。ファイザーによると、現時点で重大な安全性の問題は見つかっておらず、2カ月の目安が過ぎる11月第3週を待って、使用許可申請を出すという。治験は、少なくとも164人のウイルス陽性者が確認されるまで続ける。日本政府はファイザーから来年6月末までに6千万人分のワクチンの供給を受けることで基本合意している

     

    ファイザー社は、11月第3週を待って使用許可申請を出すという。日本は、来年6月末までに6000万人分のワクチン供給を受ける基本合意を結んでいる。大朗報である。

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    文大統領は、瞬間湯沸かし器である。韓国は、日本が半導体製造で重要な3素材の輸出手続き強化を決めたことに反発し、反日不買運動を煽動した。「NoJapan」「No安倍」と幟を立てて反日一色に染め上げた。

     

    その韓国が、菅内閣発足に合せて「日本は重要な隣国」と愛嬌を振りまいている。韓国では、反日不買に燃える人たちと、もうとっくに「時効」と日本製品を買っている層で意見対立が見られる。文氏が、感情のあまりに投げ込んだ石が、韓国の池ではまだその波紋が収まらないのだ。

     

    『朝鮮日報』(11月9日付)は、「『ユニクロに並ぶ犬豚』『反日扇動のほうが犬豚』…日本製品不買運動1年、韓国社会の二つの表情」と題する記事を掲載した。

     

    今月4日、インターネットの掲示板サイト「ポベドリーム」に「二足で歩く豚」と題する写真が掲載された。ユニクロの店舗でレジに並ぶ市民を撮影したものだった。投稿者は写真に「(ジョージ・オーウェルの)小説『動物農場』を思い出す。あんな犬豚と同じ町内に住んでいるなんて」というコメントを付けて批判した。日本製品不買運動に賛同しない市民を「犬豚」に例えて批判したものだ。


    (1)「コメントはもっと過激なものだった。「日帝の奴らにひざまずき、首をはねられないと後悔しない」「日本に失せろ」などという内容だった。彼らは日本の靴販売店ABCマートを「アベシ×マート(Xの部分は卑語)」、日本料理店を「倭寇店」と呼び、聖域のない日本製品不買運動の継続を求めた。一部のネットユーザーは、「(一般市民の)写真まで撮ってシェアするのはあんまりではないか」と反論した。しかし、掲示板のメンバーは「サル(のような)考えだ」「虫」などと無視した。日本製品に対する市民の反感が依然上回っていた」

     

    韓国では、反日とそうでないグループが対立している。義務教育で、「日本は敵」と教えている以上、根強い反日が残るのはやむを得まい。それにしても、政治の事情で「日本は敵」と教え込む韓国の教育現場は、公正さ欠いている。隣国を敵と名指す韓国の異常さが、日韓関係を不安定なものにしているのだ。

     

    (2)「インターネットのコミュニティーが違うと写真に対する反応も克明に異なった。コミュニティー「FMコリア」には、「あの投稿に使ったスマートフォンにも日本の部品が入っているはずなのに」「反日扇動の側に付いたことがむしろ犬豚だ」という書き込みがあった。別のコミュニティー「MLパーク」には「小説『動物農場』が批判したのは全体主義的思考だが、小説を読んだことはあるのか」という非難の書き込みがあったほか、「自分はユニクロよりも慰安婦被害者を食い物にすることに憤怒を覚える」とし、正義記憶連帯などの市民団体を批判する人もいた」

     

    反日を食いものにする市民団体が、検察の捜査を受けて代表者(与党国会議員)は、在宅起訴になって裁判中である。日本であれば離党するが、堂々と与党の庇護を受けて検察批判に余念がない。こういう実態を見れば、韓国では反日がビジネスになっていることが分かる。

     

    (3)「昨年7月、日本による貿易規制に対する反発に端を発した日本製品不買運動が始まって1年が過ぎた。ユニクロ、アサヒビールなどに代表される日本製品不買運動は全国的な支持を得たが、1年たった現在、評価が極端に分かれている。「日本に対する国民の結集力を見せつけた成功した運動だった」という肯定的な評価と、「現実性がなく、国民的な反日感情にだけ頼った政府・与党の大衆扇動にすぎない」という批判が共存しているのだ」

     

    日本による貿易手続き規制は、単なる手続き上の問題である。日本が輸出を止めた訳でないのだ。それにも関わらず、文政権は空騒ぎを続けている。韓国国民がこの実態を知れば、「政府・与党の大衆扇動にすぎない」という批判を浴びて当然である。韓国政府も、反日をビジネスにしている。

     

    (4)「ユニクロと日本製ビールなどを対象とする日本製消費財に限れば、不買運動の効果は明らかにあった。業界は過去1年でユニクロの赤字が数百億ウォンに達したと推定している。ユニクロを運営する日本企業ファーストリテイリングは、2019年9月から1年間の売上高が12.3%、純利益が44.4%減少したと発表した。韓国に187カ所あったユニクロ店舗は160カ所余りに減少。日本製ビール、たばこの輸入額はそれぞれ84%、89%減少した」

     

    ユニクロと日本製ビールなどは、反日不買に影響を受けている。

     

    (5)「同じ期間に、韓国では日本のゲーム「どうぶつの森」がブームを起こし、日本のプレミアムブランド「コム・デ・ギャルソン」「オニツカタイガー」などは不買運動の影響を被らなかった。レクサス、トヨタは過去3カ月間で韓国での販売台数が前年同期比49%、13%増加するなど、不買運動が1年以上続き、日本企業の韓国での販売実績が高級消費財から徐々に回復を見せている。不買運動の動力が弱まった理由は選挙シーズンを前に「反日」感情を刺激してきた政府が選挙後、状況が何も変わっていないにもかかわらず、「相生・協力」を強調するなど態度を変えたからだとする見方もある」

     

    反日不買運動も1年を過ぎれば、マンネリ化して当然である。それに、輸出手続き規制の損害がゼロであったのだ。韓国政府はそれを隠している。韓国国民が、協力してはね返したことになっているのだ。騙されている国民が気の毒である。

     

    (6)「「もう日本には負けない」と韓日感情を主導してきた文在寅(ムン・ジェイン)大統領は日本の菅義偉首相が就任すると、「いつでも向かい合って座り、対話を行い、意思疎通する準備ができている」と日本に対話のジェスチャーを送った。今年9月には文大統領と菅首相の電話会談が実現した。朴智元(パク・チウォン)国家情報院長も最近、訪日日程を調整するなど関係改善に向けた水面下の作業を進めているとされる」

     

    韓国政府は今、国民を置き去りにして日本の菅政権へ接近している。文政権は、反日不買運動で4月の総選挙で大勝した。目的は遂げたから、次の獲物を求めて日本へ現れたのだろう。韓国政治は、こういう変わり身の早いものなのだ。

     

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    米大統領選で米国メディアによる「バイデン勝利」報道を受け、民主党バイデン候補が「勝利宣言」を出した。バイデン氏は、米上院で長らく外交委員長を務め、オバマ大統領時代は副大統領経験者だ。いわば、外交の専門家であるだけに、韓国にとっては厳しい交渉相手になりそうだ。

     

    文大統領は、米韓相互防衛条約を結びながら、中国と二股外交を行っている。米国は、韓国に対して「浮気者」という認識を持っているが、バイデン時代はそれを許さないと見られる。また、日韓関係についても破綻同然の現状打開に向けて、韓国へ圧力が掛かるだろうという予想が増えている。北朝鮮問題は、文氏の持論である「終戦宣言」について、バイデン氏は否定的である。要するに、文政権での外交戦略はことごとく修正を迫られるだろうと観測されている。

     

    『韓国経済新聞』(11月9日付)は、「金正恩委員長を『悪党』と呼んだバイデン氏…『終戦宣言』の韓国と摩擦も」と題する記事を掲載した。

     

    米大統領選挙で勝利したジョー・バイデン氏は「米国優先主義」を前面に出したドナルド・トランプ政権とは違い、同盟国との連携を強調しながら多者主義的外交政策を展開すると予想される。ただ、トランプ政権の対中国圧力政策はそのまま継承するか、むしろ強まる可能性が高いと、専門家らはみている。

    (1)「韓国政府はその間、対立が深まる米中の間で「綱渡り外交」をしてきた。しかし「同盟強化」「対中牽制」を外交・安保政策の基本とするバイデン政権に入れば、「戦略的あいまい性」基調をこれ以上は維持するのが難しくなるという見方が出ている。どちらか一方を選択するしかないということだ。対北朝鮮政策に関しても「非核化が前提になってこそ北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長に会うことができる」と話してきたバイデン氏と隔たりが生じる可能性が高い」

     

    バイデン流外交は、韓国に対して対中の「二股外交」を認めない、「白黒論」で迫ってくると見られる。同盟重視というバイデン氏の立場から言えば、米韓同盟を結びながら、中国へ媚びる韓国は異常な相手というべきである。それを放置しておいて、「同盟強化」は不可能である。韓国が、米中双方から「プラスだけ引き出す」戦術は、あまりにも露骨で品に欠ける行為なのだ。

     

    (2)「バイデン氏が、今回の大統領選挙の過程でトランプ大統領との違いを出そうと努力したことの一つが同盟政策だ。バイデン氏は9月、米軍事専門紙の星条旗新聞のインタビューで「私が当選すれば、真っ先にすべきことは(同盟国の)首脳らに電話をかけて『米国が帰ってきた。私たちを信頼してもよい』と伝えることだ」と述べた。こうした同盟政策は対中国牽制政策とも密接な関係がある。バイデン氏は先月の大統領選テレビ討論で「トランプ大統領が北朝鮮と中国主席(習近平主席)のような悪党を包容し、指で我々の友人と同盟の目を刺している」と述べ、韓米連合軍事訓練など安保協力を通じて中国に圧力を加える考えを表した」

     

    バイデン外交は、同盟強化が基本である以上、米国も同盟の義務を果たす。一方、韓国も義務を果たせと迫られれば、中国との曖昧戦術は継続不可能であろう。簡単に言えば、「夫の義務を果たすから、妻の義務も果たせ」という話であろう。

     


    (3)「韓国政府はその間、「韓米同盟は我々の外交・安保の根幹」としながらも、中国を意識してクアッド(quad=日米豪印戦略対話)拡大など米国の対中強硬策に微温的な態度を見せてきた。韓東大の朴元坤(パク・ウォンゴン)教授は、「米国の対中牽制政策はトランプ政権以前から続いてきた」とし「伝統的な同盟外交を好むバイデン氏は韓国などに『反中連合戦線』に参加すべきだと圧力をはるかに強める可能性がある」という見方を示した。米国の対中圧力政策が強化され、韓国に対する支持・参加要求も強まるということだ」

     

    バイデン外交は、韓国に「反中連合戦線」への参加を求めると見ている。

     

    (4)「韓国国家戦略研究院の申範チョル(シン・ボムチョル)外交安保センター長は、「米中のうち一方を選択しなければいけない時期が近づいている」とし「留保的な立場に固執すれば、対米関係の悪化のほか、中国とも遠ざかる危険がある」と警告した」

    米中対立の長期化という背景を考えれば、「米韓相互防衛条約」の性格から、韓国は「反中連合」に参加せざるを得ない。それを拒否するならば、米韓同盟を破棄することである。

     

    (5)「バイデン氏は与党・共に民主党と政府が推進中の「韓半島終戦宣言」に対しても、トランプ大統領に比べて懐疑的な立場を見せている。朴元坤教授は「文在寅政権が『先に終戦宣言、後に非核化』を主張できたのは、トランプ大統領が終戦宣言に関心があったため」とし「非核化に進展がない状態で終戦宣言ばかり主張すれば、バイデン政権と摩擦が生じることも考えられる」と指摘した」

     

    米国が、米朝交渉の長い過程から得た教訓は、北朝鮮が不誠実であることだ。非核化の前に「終戦宣言」したならば、非核化の棚上げに賛成するようなもの。バイデン外交が受入れるはずがないであろう。文氏は、ここでも路線修正である。





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