勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 日本経済ニュース時評

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    韓国の反日不買運動は、昨年7月から始まって15ヶ月が経った。韓国社会の日本観も沈静化している。それを反映するデータが登場してきた。日本製自動車の販売増加とユニクロが新規に4店舗を開店するというニュースである。

     

    『中央日報』(10月8日付)は、「韓国内日本車販売量、2カ月連続増加 『不買運動弱まったか』」と題する記事を掲載した。

     

    昨年7月以降「NOジャパン」不買運動の打撃を受けた日本車の販売量が2カ月連続で増加した。

    (1)「韓国輸入自動車協会は9月日系ブランド乗用車の新規登録が1458台で昨年(1103台)に比べて32.2%増加したと7日、明らかにした。不買運動が日本車にまで広がり打撃を受けていたが、8月13カ月ぶりに初めて増加傾向(1.1%)に転じ、今月には増加幅が二桁に増えた。先月、レクサス701台、トヨタ511台、ホンダ244台で前年同期比それぞれ49.5%、36.6%、47.0%の増加率を見せた」

     

    日系車の販売が、7月以降2ヶ月連続で増加に転じた。不買運動の火が燃えさかっていた頃には、ガソリンスタンドが日系車への給油を拒否するという騒ぎにまで発展した。それが、1年経ってようやく正常化にこぎ着けた。



    (2)「一方、年末韓国市場から公式撤収する日産とインフィニティはそれぞれ0台、2台で販売量が95.8%減った。日本車の販売は今年に入り累積では1万4528台で、昨年同期より49.3%も減少している」

     

    韓国から撤退する日産車は当然、不振を極めた。

     

    ユニクロは不手際も手伝って、反日不買運動の影響をもっとも強く受けた。それも沈静化して、新規に4店舗開店するまでになっている。

     


    『韓国経済新聞』(10月8日付)は、「
    収まった『NOジャパン』ユニクロ、店

    舗4カ所オープンで『弾み』」と題する記事を掲載した。


    昨年韓国に対する輸出規制で韓日関係が悪化し、日本製品不買運動の集中攻撃を浴びたユニクロが最近立て続けに新店舗をオープンしている。閉店が続いた状況で反騰を試みている。

    (3)「業界によると10月7日、ユニクロは9月釜山(プサン)凡一(ポムイル)店をオープンしたのに続き、この日正式オープンしたスターフィールド安城(アンソン)にも新店舗を出した。これに先立ち、4月には釜山三井(サムジョン)タワー店、5月ロッテモール光明(クァンミョン)店などを相次いで開店させて今年に入り計4店舗が新たにオープンした。これでユニクロの店舗数は全体166店舗に増加した」

     

    ユニクロ店舗数は一昨年末187店舗に達したが、日本製品不買運動と新型コロナウイルス(新型肺炎)事態が相次いで襲い、10店舗が閉店し、160店舗余りに減少した。それが、最新時点で166店舗へと回復している。


    (4)「業界では、ユニクロを運営するエフアールエルコリアが慎重に拡大を準備しているのではないかとの分析を出している。エフアールエルコリアはその他非常務理事にカン・ヒテ・ロッテショッピング副会長兼代表取締役と、今年初めに韓国ユニクロ共同代表から退いた若林隆広前代表を任命した。ユニクロが韓国市場に注力していないのに、あえてロッテショッピング代表でありロッテグループのナンバー2であるカン・ヒテ氏を理事職に任命しないという解釈だ」

    いったん退いた日本人前代表が経営最前線に復帰した。同時に、ロッテの韓国人経営者を取締役から外すという経営責任の明確化を図っている。経営に起動力をつけるという狙いであろう。



    (5)「エフアールエルコリアは昨年、売上高が前年比30%以上減少して9749億ウォン(約892億円)と、5年ぶりに売上高が1兆ウォンを割り込んだ。2000億ウォン台に達した営業利益も、一挙に19億ウォンの赤字へ転落。2018年9月に韓国市場に進出した下位ブランド「GU」は今年8月に韓国事業から撤退した」

     

    韓国ユニクロは、反日不買運動による急激な悪化で昨年、赤字に転落した。原因は、ユニクロ日本本社の幹部が、「反日不買運動は長く続くまい」と発言したこと。これが、韓国で大きな批判を浴び、集中的な不買運動の対象にされた。また、現地CMが韓国人を侮辱したと難癖をつけられるなど、酷い目に会うことになった。ここからの再起である。



     

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    米は共産主義対抗で不退転の決意

    中国の台湾攻撃は大博打の危険性

    中国脅威を軽視する日本メディア

    韓国は米中対立の本質を理解せず

     

    日米豪印4ヶ国の外相対話(クワッド)が10月6日、東京で開催された。第1回は、昨年9月に米国で開かれ、今回が2回目になる。今後は毎年、開催されることで合意した。クワッドの定期開催が、対中国への安全保障政策を協議する舞台になる。中国にとっては手強い相手になり、これまでの傍若無人の威圧行動を差し控えることは確実であろう。中国が、性懲りなく強硬策を続ければ、クワッドの結束力は一挙に高まるはずだ。

     

    日米豪印4ヶ国は今後、さらに参加国を増やす意向である。「クワッド・プラス」である。韓国・ベトナム・ニュージーランドが候補国に上がっている。韓国政府は、表向き関心を占めさず傍観している。中国の反発を恐れており、「動くに動けない」状況である。主権国家として、まことに恥ずかしい振る舞いである。

     

    日米豪印は、いずれも貿易面で中国と深いつながりがある。それでも安全保障という国家の存立がかかる問題では、経済を離れて純粋に地政学的な観点から冷静に分析している。韓国には、それがないのだ。歴史的な「事大主義」に凝り固まっており、中国の意に反することをやれば、復讐を受けるという恐怖感に取り憑かれている。

     

    中国と一対一の関係である「連衡」では、中国の復讐によって立ち往生させられる。だが、「合従」(同盟)を組んでいれば、同盟国の支援によって中国の武力攻撃をかわせるのである。中国が、「合従連衡」でもっとも苦手なのは「合従」である。秦の始皇帝が、初めて中国を統一できたのは、敵方の「合従」を壊し、「連衡」にもちこんで征服したのだ。この伝で言えば、韓国が米韓同盟を脱退すれば、中国の「連衡」策に引っかかり、飲み込まれる運命である。中国は、言葉巧みに「合従」を破棄させる動きを狙っているのだ。

     

    米は共産主義対抗で不退転の決意

    日米豪印連合は、中国のもっとも嫌う「合従」である。これによって、中国の巧みに接近する切り崩し工作を防ぐことができる。4ヶ国は、次のような申し合わせを行った。これが、対中国の防波堤の役割をする。

     

    1)年1回開催を定例化し、次回は来年開催

    2)「自由で開かれたインド太平洋」実現に向け、より多くの国との連携が重要

    3)質の高いインフラ、海洋安全保障、サイバーで実践的な協力を進める

    4)保健衛生やデジタル経済分野での新たな国際ルール作りで連携

    5)北朝鮮の核・ミサイル開発が深刻との認識を共有し、日本人拉致問題への協力を確認

     

    以上の5項目を見れば、安全保障問題だけでなく、経済問題でも密接な連携を模索していくことが分る。具体的な中身は、今後の対話に委ねられる。米国は、どのような意図を持っているのかをまず知る必要があろう。

     

    米国務長官は、日本経済新聞との単独インタビュー(『日本経済新聞 電子版』10月6日付)で、次の点を明らかにしている。

     

    「4カ国の協力を制度化すれば、本物の安全保障の枠組みづくりに入ることができる。経済や法の支配、知的財産、外交関係についても議論できる。軍事的なものにはとどまらず、より幅広いものになる」

     

    日米豪印4ヶ国の協力を制度化(安全保障条約)すれば、経済・外交など幅広い協力関係が成立する。NATO(北大西洋条約機構:加盟国30ヶ国)の「アジア版」が出現するのだ。それには、「クワッド・プラス」として、韓国、ベトナム、ニュージーランドの参加が期待されている。韓国については、文政権が去就を明らかにしていない。ASEAN(東南アジア諸国連合)も参加すれば、中国の強硬策に悩んでいる諸国が大挙して加盟する事態が起きるであろう。その場合、中国はNATOの仮想敵「ロシア」と同じ立場になる。

     

    中国の台湾攻撃は大博打の危険性

    「(もし、台湾が攻撃されれば)地域の緊張を緩和するためには何でもする。世界におけるトランプ政権のミッションだ。我々は紛争でなく平和を求めている。恥ずべきは中国共産党だ。ベトナムとの関係に加え、ここ日本でも沖縄県・尖閣諸島周辺で(航空自衛隊が)緊急発進を頻繁にせざるを得ない状況だ。(中印の軍事衝突が起きた)ヒマラヤで何が起きていると思うか。これが中国の力ずくのやり方であり、大国がすることではない。中国との融和策は正解にならないとの認識に至った」

     

    台湾が中国に攻撃されれば、米国は「救援」すると明言している。これは、ベトナムや尖閣諸島でも同様に対応するという立場だ。もはや、中国との融和策は問題解決にならないとしている。ここでは、米英が第二次世界大戦の導火線になったドイツの周辺国への侵略を大目に見ていた「宥和策」の失敗を指している。米国は、中国に対してもはや一歩も退かず、断固として「戦う」としている。(つづく) 

     

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    中国外交は、文字通りの四面楚歌である。豪州とは、新型コロナウイルスの発生源調査をせよとの発言で対立。小麦やワインの関税を引上げて、豪州へ報復している。インドとは、6月15日深夜、ヒマラヤ山中で軍事衝突した。インド兵20名を殺害したので、中印関係は急速に悪化している。インド側が報復措置として、中国IT企業のアプリを全面禁止しているほどだ。

     

    中国はこういう状態に置かれているにもかかわらず、日本への不満を口にしている。中国人留学生の日本入国ビザの資格審査で、人民解放軍関係者を除外しているからだ。技術窃取を阻止する上にはやむを得ない措置である。

     

    『中央日報』(10月7日付)は、「米国に従い『中国バッシング』に出た日本に怒りをたぎらせる中国」と題する記事を掲載した。

     

    米国の「中国バッシング」に従う日本の行動が一つ二つと増え、中国が怒りをたぎらせている。それだけ日中関係も悪化の一途だ。中国メディア「環球時報」は6日、「先端技術の『中国流入』が怖くて日本が米国を学ぼうとするのか」というタイトルの記事を掲載した。



    (1)「内容は、日本政府が来年から中国人留学生に対するビザ審査を厳格化するという日本読売新聞報道に関するものだ。読売の5日の報道によると、日本政府は2021年から中国人留学生のビザ発行に関連し、相当難しい審査を行う。国家安全保障局が外務省、法務省、経済産業省、防衛省などの各部署といわゆる「疑わしい人物」に対する情報を共有し、該当人物に対してはビザ発行の拒否も可能にするということだが、その対象国を「中国など」とし、中国がターゲットである点を明らかにした」

     

    中国は、米国、英国の大学院入学ビザを厳格化している。人民解放軍関係者の入学ビザをチェックしているもの。この流れから、日本へ入学者が殺到するものと予測し、排除する準備を始めている。

     

    (2)「日本政府の措置は国家安保に関連した先端技術が中国人留学生などを通じて流出することを防ぐのが趣旨で、外務省はビザ審査の強化のために概算要求で2億2000万円の予算を計上することにした。経済産業省も関連事業のための予算に18億7000万円を計上し、日本企業や大学が持つ先端軍事技術が海外に流出するのを防ぐために使う予定だと明らかにした。読売は米国など西側国家では情報機関が留学生の個人情報を徹底的に調べた後、ビザ発行を拒否する事例が増えていて、日本も国家安保に関連した先端技術が留学生を通じて「中国など」に流出することを防がなければなければならないと強調した」

     

    日本の重要な技術が安全保障上、中国へ漏出することは危険このうえない話である。日本が、防衛処置を取るのは当然である。中国が、批判する筋合いではない。

     

    (3)「読売はまた、米国とオーストラリアでは中国人留学生の科学技術盗用事件で警戒心が強まっていると伝えた。特に米国に拒否された中国人留学生が『ターゲットを変えて』日本に来ることが多くなったと主張した。実際、中国は米国との貿易戦争が悪化したことを受けて、先端技術の確保のために日本との関係を意図的に改善しようとする動きを見せている。日本も習近平国家主席の訪日と東京オリンピック(五輪)の成功的開催のために中国に友好的なジェスチャーを示した。しかし、新型コロナウイルス感染症(新型肺炎)事態で習主席の訪日が約束なく延期され、五輪もまた延期となり、日中関係はこじれ始めた。中国の顔色を伺う必要がないと判断した日本が、米国に従って「中国バッシング」に参加する動きをみせて関係は悪化の一途だ」

     

    中国の見え透いた「ニーハオ」に乗せられたら一大事である。警固は固くしておくことが、最善の策である。

     

    (4)「安保分野での日中摩擦も激化している。香港明報は6日、日本報道機関と香港軍事専門家の言葉を引用し、日本が米国の中国包囲の動きに合わせて中国を狙った「海洋連盟」を計画していると伝えた。最近、共同通信の報道によると、9月末に開かれた中国人民解放軍のあるシンクタンク会議で、菅義偉政権が現在米国などと共に中国を狙った「海洋連盟」を推進しているという分析が出てきたという。これに伴い、中国は必要な措置を取ってこのような日米包囲を強く警戒するべきだという意見が提起されたという」

     

    「海洋連盟」とは、日米豪印4ヶ国による「インド太平洋戦略」である。だいたい、言葉からして間違っており、「インド太平洋戦略」の概要を把握していないようだ。

     

    (5)「日中はまた、最近では両国間で長い間領有権をめぐり紛争となっている尖閣諸島(中国名・釣魚島)問題でぶつかっている。中国釣魚島デジタル博物館が3日、釣魚島専用サイトを開いて釣魚島の主権が歴史的にも法律的にも中国に属すると主張すると、日本政府も5日絶対に受け入れることができないとし、外交チャネルを通じてデジタル博物館の閉鎖を要求した」

     

    中国釣魚島デジタル博物館開設について、日本側が抗議している。噓八百の情報をかき集めて、尖閣諸島領有説を唱えているのであろう。中国の「ウソ体質」は遺伝的なものである。南シナ海領有説も、国際司法機関から「根拠ゼロ」と却下されている。 

     

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    中国政府の尖閣諸島領有説は、南シナ海領有説と並んで根拠のない「つくり話」である。国際法から見て中国の尖閣諸島領有説は、「昔から中国領」程度のことで確たる証拠はない。尖閣諸島へ最初に住んだのも日本人である。中国にとって決定的なマイナス材料は、人民日報で、「尖閣諸島は日本領」と報じたことだ。これは、取消しのできない事項である。

     

    こういう経緯がありながら、「中華帝国」は臆面もなく中国領であると主張している。しかも、尖閣諸島オンライン博物館を開設するという厚かましさである。

     

    『大紀元』(10月6日付)は、「政府、中国『尖閣諸島の領有権主張』のオンライン博物館開設に抗議」と題する記事を掲載した。

     

    日本政府は10月5日、中国が尖閣諸島(沖縄県石垣市)に関するオンライン博物館を開設したことについて、正式に抗議を申し入れた。中国共産党は地域の領有権について、国際的な宣伝強化を図っている。中国の武力による尖閣諸島奪取が見え見えの現在、日本は「インド太平洋戦略」で、米国・豪州・インドとともに共同防衛に立ち上がっている。中国包囲網強化である。中国にとって、尖閣諸島奪取戦術はプラスにならないのだ。

     

    (1)「加藤官房長官は、政府は外交ルートを通じて中国側に抗議し、同ウェブサイトの削除を求めたことを明らかにした。「尖閣諸島は歴史的にも国際法上も、日本の固有の領土であり、現に有効支配している」と指摘し、「わが国の固有領土に対する中国側の主張は、全く受け入れられない」と抗議したという」

     

    中国は、国際法上も日本領の尖閣諸島領有を奪取しようとしている。隣国としてあり得ない振る舞いである。

     

    (2)「中国国家海洋局直属の国家海洋情報センターが開設した「中国釣魚島デジタル博物館」は3日に公開された。同ウェブサイトのページ上部には 「釣魚島(尖閣諸島)中国の固有領土」と大きく書かれている。同サイトは、「自然環境」「歴史的根拠」「文学」「法的文書」など9つのカテゴリーで構成されている。それぞれ中国が領有権主張の根拠とする史料や地図などを紹介し、明治維新後に「日本が盗んだ」と主張している。また、釣魚島は「台湾の一部」としている。現在、中国語、英語、日本語が用意されている。ドイツ語、ロシア語、スペイン語およびその他の言語バージョンは後に追加される予定だという」

     

    中国得意の宣伝戦で、尖閣諸島を自国領に組入れようとしているが、中国の国際的な信用度は急落している。また、日本と揉めているのかという認識であろう。

     


    (3)「尖閣諸島の領有権について、こうした情報宣伝のほか、日本に対して領有権を入手するための威嚇行動を強めている。海上保安庁のデータによると、2020年18月に尖閣諸島周辺の領海侵入と、接続水域内で確認された中国公船は合わせて873隻となり、同期比で過去最多となった。新型コロナウイルス流行期においても、その拡張行動は止むことはなかった」

     

    中国の威嚇行動に怯える日本ではない。同盟国・準同盟国を動員して「アジア版NATO」結成に動いている。実現すれば、中国は手も足も出せなくなる。軍備増強が無駄になるだけだ。

     

    (4)「9月25日、海上保安庁は尖閣諸島の領海警備体制の強化を柱とした2021年度予算概算要求を公表した。過去最高額の20年度当初予算額から4%上積みし、2301億3900万円を計上した。「今回の中国側の動きは、日本側が2018年1月に開設した北方領土・竹島および尖閣諸島の主権立場を裏付ける『領土・主権展示館』への対応と思われる。北京側は国際社会に対して、中国側の主権的地位の強化を望んでいる」とアナリストは分析する。日本の展示館側は、「尖閣諸島が日本固有の領土であることは歴史的にも国際法上も疑いのない事実だ」と主張している」

     

    中国は、南シナ海侵略で国際的にミソをつけている。その中国が、「尖閣諸島は中国領」と主張しても、ウソで固めた南シナ海領有説と同類に見られるだけだろう。

     


    (5)「9月22日、米シンクタンク「ボストン・グローバル・フォーラム」が開いたオンライン国際会議に、衛藤晟一前領土問題担当相が出席し、ビデオ演説で尖閣諸島について語った。「明治28年(1895年)の閣議決定で日本領土に組み入れた」とし、日本の領有権は国際法上にも、中国との歴史的な公文書からも明らかになっているとした。衛藤氏は、昭和44年(1969年)に国連の調査団が東シナ海の大陸棚に石油が埋蔵している可能性に言及する調査報告書を発表したのち、中国および台湾が領有権を主張し始めたとした」

     

    下線部は、事実である。海底資源欲しさに「尖閣諸島領有説」を唱えている面も強い。呆れるほど貪欲な国である。

     

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    「石油没落」などと書くと、大きな反発を受けることは必至である。あえてそう言わざるを得ない例がでてきた。ホンダが、22年以降にF1レースから撤退すると発表したのだ。自動車メーカーにとって、内燃機関の開発は社運を賭すものであった。F1は、それを象徴するイベントである。ここから撤退するホンダは、経営資源をEV(電気自動車)振り向けるというのだ。

     

    EVは、まだ開発途上である。ガソリンエンジンに比べ、走行距離が短いなどの欠陥を抱えている。だが、二酸化炭素は異常気象の原因になっている以上、ガソリン車はEVへ席を譲らざるを得ない時代環境になった。ホンダは、こういう大きなうねりを肌で感じて、F1撤退を決断したとみられる。

     

    英誌『エコノミスト』(10月3日付)は、「ガソリン車禁止、炭素税とほぼ同効果」と題する記事を掲載した。

     

    気候変動がもたらす恐ろしい脅威を考えると、経済学者が推奨するグリーン政策は複雑に思えることがある。頭でっかちな学者は「炭素価格」の導入を熱く提唱するが、それには数字にしにくい「二酸化炭素(CO2)排出量の社会的コスト」を各国政府が算出する必要がある。こうした複雑で手間のかかる選択肢を考えると、気候変動を加速させる技術自体を単純に禁止するのは、さほど悪くないのではないかと考えたくなる。

     

    (1)「9月23日には米カリフォルニア州のニューサム知事が2035年までに電気自動車以外の新車の販売を禁じると発表した。こうした旧来技術の禁止措置は見せかけだけで実態が伴わないように見えるかもしれないし、実際見せかけだけで終わる場合もあるだろう。状況によっては販売禁止措置が効果を発揮し、CO2排出を効率的に削減できる可能性がある。販売禁止という手法は、炭素価格やグリーン補助金に比べて過激といえる。禁止された技術に代わる優れた技術がない場合、削減できたCO2排出量とほぼ同じレベルで、従来の車が提供してきた恩恵が消失しかねないリスクが生じるからだ」。

     

    米カリフォルニア州のニューサム知事が2035年までに電気自動車以外の新車の販売を禁じると発表した。かつて、排出ガス規制で日本車が世界的に飛躍したように、今回のカリフォルニア州の決定は、EV時代の決定的なテコになろう。

     

    (2)「カリフォルニア州は1990年、自動車メーカーに対し排ガスを出さない「ゼロエミッション車」の同州内における年間新車販売台数に占める割合を98年までに2%、2003年までに10%に引き上げる規制を導入した。ところが車に載せる電池の性能とコストがこうした目標を達成できるほど改善していないことが判明し、1996年に目標値を大幅に下方修正した。電気自動車がガソリン車の完璧な代替としてまだ機能していない状況でも、ガソリン車の製造禁止措置は、CO2排出量を削減する手段として、一般に考えられているほど非効率的ではないとの分析がでてきた」。

     

    行政が、技術的な制約を課すことは新技術開発の大きな契機になる。先述の排ガス規制もその効果をあげたからだ。

     


    (3)「実際にはガソリン車の代替としての電気自動車の性能は時間の経過とともに進化するし、代替は車の性能だけで決まるものでもない。この点からも、環境に負荷をかける技術を適切な計画の下に禁じていく手法は望ましい。ガソリン車なら自分の運転する車の燃料が少なくなって警告を発しても、近くに石油スタンドはあるだろう。一方、充電できるネットワークがまだ広範囲に整備されていないのを理由に電気自動車の購入をためらう人もいるだろう(実際には自宅か職場で充電する人がほとんどだ)。充電拠点が10%増えると電気自動車の販売台数は8%増え、電気自動車の走行台数が10%増えると充電拠点の新規設置件数は6%増えるという

     

    下線部の指摘は重要である。EVでは、充電拠点の増加→販売台数増加→充電拠点の増加という好循環を描く。最初の充電拠点増加が鍵を握る。それは、行政の仕事とも言える。

     

    (4)「一定期日をもってガソリン車の販売禁止を表明すれば、このプロセスは加速し、コストも下がる。理由は、禁止の計画が明らかになることで企業は新たなガソリン車を発売しなくなっていくし、消費者も早晩売られなくなるとみて買わなくなるからだ。企業も消費者も、ある技術の使用禁止で有用期間が短くなりかねない資本財に無駄金を費やしたくはない。関連分野で規模の経済が働き始める可能性もある。自動車メーカーは研究開発費の多くを電気自動車に投じた方がいいと判断するかもしれないし、電気自動車向けサービスを提供できるよう準備を始める整備士が増えるかもしれない。一方、ガソリン車向けサービスへの投資は激減していくだろう」

     

    行政が、英断をもってEVへの準備ができるか。それが今、もっとも問われているようだ。自動車メーカーは、それを指針として動き出す。最初の鐘を鳴らすのは行政という側面もあろう。

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