朴正熙を抹殺したい進歩派
国際情勢に合わない反日米
朝鮮李朝と酷似する文政権
外交的孤児は死を意味する
韓国進歩派を動かす文在寅(ムン・ジェイン)氏は、「親中朝・反日米」を心の拠り所としている。進歩派は、軍事政権の弾圧に対し火炎瓶で闘ったと自らの業績に酔って、保守派を全否定する暴力性を持っている。文氏が、保守派=親日派と位置づけて、「積弊一掃」の対象にしているほどだ。「反日米」こそが、韓国政治の理想形と思い定めているのである。
進歩派を動かしているのは、「86世代」である。1960年代に生まれ、1980年代に大学生活を送り、軍事政権と闘った人たちである。
1960年代は、韓国経済が奇跡の高度成長を実現した時代である。そのテコになったのは日韓基本条約(1965年)による日本からの経済協力金である。無償3億ドルのほかに有償2億ドル・借款5億ドル以上という巨額ドル資金が韓国経済を潤した。まさに、疲弊から超繁栄へと大転回した歴史的契機になった。同時に、日本企業による技術と資本が、韓国企業を後押ししたのである。
朴正熙を抹殺したい進歩派
日韓基本条約は、軍事政権であった朴正熙(パク・チョンヒ)大統領の手で結ばれ、「漢江の奇跡」という高度成長を実現させた。また、38度線で対峙する北朝鮮軍との対抗上、米韓同盟を強化するほか、国内の共産主義者取締を理由に、厳しい人権弾圧を行なった。「86世代」は、この人権弾圧を理由にして、今もなお保守派を「積弊対象」にする執念深さを見せている。
韓国のGDPは現在(2019年)、世界12位である。10位(2018年)までランクアップしたが、12位へ後退している。カナダやロシアに抜かれたのだ。今後は、このランクで定着するであろう。人口5170万人の韓国が、GDPで世界10位まで上昇した裏には、好むと好まざるとに関わらず、朴正熙軍事政権の経済・外交の路線が、韓国発展の基礎を固めたのである。これは、反対派でも認めざるを得ない歴史的事実だ。
こういう書き方をすると、進歩派から猛烈な反発を受ける。だが、軍事政権の意義を否定しても、現実に制度として存在したのだ。進歩派は、この歴史的事実すら認めたくないようで、現在の社会科教科書からは大幅に削除されている。これは、紛(まご)う方なき歴史の改ざん・欺瞞である。日韓併合時代も一切、拒否するというのも同じ脈絡である。進歩派にとっては、負の歴史でも真摯に向き合う度量が必要である。韓国進歩派は、不都合なことをすべて認めないという傲慢さがある。それが、韓国社会を分裂させている大きな理由だ。
この傲慢さが、文政権と進歩派の基盤をジワジワと蝕んでいる。「親中朝・反日米」が、国際情勢急変の中で、韓国の運命を翻弄することがしだいに明らかになってきたからだ。
国際情勢の急変とは、米中対立の長期化である。米中が、最終的に軍事衝突するという最悪事態を回避できると見ている専門家がいるだろうか。それは、米国にその意思がなくても、中国の「習近平思想」にはっきりと認められるのである。
「習近平思想」は2017年の共産党大会で習氏が提唱した政治思想だ。「2035年までに経済力や科学技術力を大幅に向上させ、建国100年となる2049年に『社会主義現代化強国』を作り上げる。『21世紀半ばまでに世界一流の軍中国隊を建設する』として、人民解放軍の実力を米軍と並ぶ水準まで引き上げる」
中国の有力37大学で、この「習近平思想」を必修科目として学生に学ばせるという。習政権は、学生に対して軍事力で世界覇権を実現させるという暗黙の目標を与えるのである。今時、こういう目標を告知する習政権の特殊性に注目すべきであろう。20世紀当初の帝国主義時代に逆戻りする、殺伐とした雰囲気になるのだ。
国際情勢に合わない反日米
中国が、ここまで戦闘的になっている現在、文政権の「親中朝・反日米」政策は自由主義国家において外交孤立の道を選ばせるであろう。米韓同盟という安全保障の基盤がありながら、あえて中国へ「秋波」を送ること自体、裏切り行為というリスクが高まるのだ。
文政権が、これまで「親中朝・反日米」という季節外れの振る舞いをしてきても、どの国も苦笑いで済ましてきた。だが、「習近平思想」が有力大学で必須科目になる時代背景を考えれば、笑って済ませる問題でなくなってきた。米国からすれば、韓国に対して「白黒をつけろ」と一喝浴びせても仕方ない局面になっている。(つづく)