勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 日本経済ニュース時評

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    韓国にとっての日本は、永遠に気になって仕方ない相手のようである。早速、韓国は新型コロナウイルスで「K防疫モデル」と自画自賛である。ただ、日本の経済力を越すことは不可能である。その象徴的な例が現れた。日本は3月に、民間で米国債などを504億ドル購入したことが判明した。一方の韓国は、ドル資金不足によるウォン相場急落で、FRB(連邦準備制度理事会)と600億ドルの為替スワップを結んだ。ドルの借り入れである。この日韓の違いこそ、どうにもならない経済力格差を示している。韓国は、逆立ちしても日本に敵わないという一例である。

     

    『中央日報』(5月18日付)は、「中国に対抗する日米経済同盟 日本、504億ドルの米国債買った」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「米国にとって信頼できるのはやはり日本だけだろうか。新型コロナウイルス以降ぐらついている米国経済の支援軍として日本が静かに動いている。明確な動きは国債買い入れで感知される。日本銀行は15日、日本人投資家が3月に買い入れた米国債と政府保証モーゲージ債の金額が504億ドルに達すると発表した。関連金額を集計し始めた2005年以降で最高水準だ

    日本の民間による証券投資で3月、米国債と政府保証モーゲージ債の金額が504億ドル

    に達したと日銀が発表した。世界一の流動性が保証されている米国債などへの投資は、間違いなく日本の資金運用が目的である。日本が、中国を意識して行なっているものではない。純然たる投資なのだ。韓国から見ると、日米関係がより緊密化すると映り、羨望の眼差しを向けるのであろう。

     

    (2)「米中不和が激化する局面で中国が米国に圧力カードとして使えるのが米国債売却だ。実際に中国国際経済交流センターの黄奇帆副理事長は7日、「米国は自国の国債を持つ世界の国に債務償還義務を負っている。米国の信用が先に破産しかねない」と脅しをかけた。この場合、米国が頼れるのは日本だ。米国と日本は反中戦線で同じ船に乗って久しい」

     

    米国は、国際通貨基軸国である。単純に言えば、ドルを刷って世界に流動性を供給する義務がある。そういう米国の国債が、償還で困ることはあり得ないのだ。中国による「米国は自国の国債を持つ世界の国に債務償還義務を負っている。米国の信用が先に破産しかねない」という脅しは、「無学」を嗤われるだけである。その前に、中国の「超過負債」が現実問題になって、人民元相場を圧迫するはずだ。



    (3)「新型コロナウイルス以前には国際政治でその様相が明確だったがいまは経済でも日米同盟の鮮明度は高まった。日米両国はさらに経済安全保障関連問題を取り扱うための別途の政府間対話チャンネルまで作ることで合意した。読売新聞の16日の報道によると、この協議体は軍事転用が可能な先端技術の日米共同管理と第5世代移動通信(5G)などの安全な通信ネットワーク確保などと関連した対策協議が目標だ」

     

    日米が、安全保障政策で一体化するのは当然である。中国の軍事的膨張への対抗策として、日・米・豪・印4ヶ国が「インド太平洋戦略」で歩調を合わせる。この4ヶ国の中で、日米が中軸である。その日米が、経済安保として先端技術と5Gで、共同対応するのは自然な流れである。

     

    (4)「両国政府が経済安保関連主題に対する包括的な対話の枠組みを作るのは今回が初めてだ。早ければ年内に初めての会議が開かれる見通しという。米国と日本のこうした動きは中国牽制の一環だ。読売新聞は、日米は軍事転用が可能な技術の海外流出を防ぐための連係を強化していくとし、日米の国内直接投資に対する監視強化、大学と研究機関の外国人留学生管理、安全な通信網構築なども対話の議題になるだろうと伝えた」

     

    中国が、米国で留学生を利用しスパイ行為を行なっていることは周知のことだ。米国が、中国留学生を閉出しており、日本でのスパイ行為を防がなければならなくなろう。日米が共同で対応する必要に迫られるのだ。

     

    (5)「米中間の緊張関係は佳境に入りつつある。トランプ大統領が14日に「われわれは(中国と)すべての関係を断絶することもできる」という爆弾発言をしたのに続き、15日には米中貿易合意破棄の可能性まで示唆した。トランプ大統領の頭の中にはひとつの日付が日深く打ち込まれている。11月3日、自身の再選がかかった大統領選挙日だ。新型コロナウイルスで彼が自慢した経済業績は1日で水の泡になってしまった。この状況で選挙レースが本格的に熱くなる7-9月期の経済反騰が彼には重要だ。新型コロナウイルスの発源地が中国だという点を印象付け、さらには経済急落の責任も中国に転嫁する様相だ。実際に中国に高率関税を課す可能性も排除しにくい状況だ」

    米中間の対立は、コロナ禍をきっかけに激化の様相を呈している。世界中が、コロナ禍で人的にも膨大な損失を被っている以上、中国非難が澎湃として起こることは当然なのだ。中国は、これを回避すべく「屁理屈」を並べるであろう。これが一層、中国非難に拍車を掛けるに違いない。米中の対立激化を回避する道はなさそうである。


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    仏革命のジャコバン派と瓜二つ

    韓国2大特権集団の凄い怒髪力

    低い新薬開発力で治験段階の涙

    高い自営業比率が示す前近代性

     

    韓国は、いろいろな顔を持っている。民主化運動で軍事政権を倒したという歴史が、その後の韓国に錯覚と傲慢をもたらしたことは事実だ。この民主化運動の立て役者が、現在の文政権を支える「86世代」である。1960年代に生まれ、1980年代に学生生活を送り、民主化闘争で火焔瓶を投げまくった学生運動家である。

     

    単に、学生運動家だからと言って批判するのではない。日本の政治家でもそういう経歴の人たちはいる。日本の場合、社会へ出て諸々の経験と知識を積んで政治の途に入ったという経歴が大半だ。韓国の学生運動家は、卒業後に在野の社会運動に身を投じ、系統だった政策立案の経験を積んでいない人たちが多いのである。

     

    要するに、「86世代」は韓国の世直しに成功したという錯覚で、好き勝手な政策を行い、韓国の社会や経済を混乱させているのだ。そのことに、国民が気付いていない点にも大きな問題がある。先の総選挙は、文政権の政策を総点検するこの上ない機会であった。だが、コロナ禍による「国難」意識が災いして、現政権の政策継続へ「ゴー」サインを出したのである。コロナ後の世界変革の中で、韓国は取り残される危険性が高い。それは、既得権益階級に振り回されてしまい、メスを入れてまで改革を行なう意思がないことだ。

     

    仏革命のジャコバン派と瓜二つ

    話は飛ぶが、フランス革命(1789~99年)でジャコバン派が、独裁を敷き革命の熱気に動かされメチャクチャな政策が行なわれ大混乱した。現在の韓国は、火焔瓶闘争の最前線で活躍した「86世代」が、間違った世直し感覚で政治を行なっている。反日と反企業という感覚的反発で、韓国の外交と経済の舵を好き勝手に動かす矛楯に気付いていないのである。韓国に取り返しのつかない結果をもたらすが、複眼的な思考能力を失っているのだ。その韓国ジャコバン派の頭目が文在寅である。

     

    政策立案は、深い洞察と長い経験があってこそ初めて可能になる。文政権には、そういうベテランが存在しないのだ。これまで、政策立案に立ち会ってきた官僚機構は、無用の長物として排斥されている。それゆえ、感情的で行き当たりばったりの政策に陥っている。その最適例が、GSOMIA(日韓軍事情報包括的保護協定)を巡るドタバタ劇である。素人が、感情論だけで反日米政策に舵を切り大失敗した。嗤うに笑えない素人劇である。

     


    この文政権が、政権運営の指針にしているのは政権支持基盤の労組と市民団体の意向である。一見、民主的に見えるが、実態は全く異なっている。韓国における最大の既得権益集団であるからだ。この両団体は、飽くなき権益追求の点で朝鮮李朝の両班(ヤンバン)という特権階級に近い立場である。理由もなく、政権から優遇されて当然という特権意識に支えられているからだ。

     

    両班とは、次のような歴史的産物である。

     

    もともと、科挙(かきょ:官僚)試験は基本的に賎民を除いた住民に広く受験機会が開かれていた。ただ、受験には学問や知識が必要であり、経済力のある家庭に限定された。こうして科挙試験を合格し官僚になれたのは、両班階級が大多数を占める結果になった。李氏朝鮮では、両班階級が事実上官僚機構を独占し、特権階級になった。李氏朝鮮末期には国民の相当多数(地区によっては7割以上)が戸籍上、両班階級だったと指摘されている。現代の韓国人で、祖先が両班でないという人は珍しいのである。

     

    この事実こそ、極めて重要である。両班制度は、実質的に日韓併合で追放された経緯がある。韓国人の家庭で家系図が持ち出せば、祖先の栄耀栄華な生活を追放したのは、日本の併合となろう。日韓併合が、韓国近代化へ道を開いたという大所高所の話は吹き飛んで、両班という支配家族を没落させた話に矮小化され、日本への恨みで「反日運動」が盛り上がるのであろう。

     

    ここで、話しを整理しておきたい。

     

    現代韓国における労組や市民団体の既得権益集団意識は、朝鮮李朝の両班制度に深く根ざした特権階級意識を受け継いでいる。それゆえ、文政権はこれに反する政策決定は不可能である。両班制度が、実質的に追放されたのは日韓併合である。労組や市民団体の既得権益集団は、必然的に「反日」へ傾斜するDNAを持っているのだろう。祖先の敵討ちという報復論である。そうでなければ、福島原発の汚染問題を非科学的根拠で誇大宣伝している理由が、分からないのだ。完全に、感情論の虜になっている。(つづく)

     

     

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    訪日外国人の3割は中国人である。むろんトップである。国際世論調査における国レベルの好感度で見ると、全く異なる結果が出てきた。日本人の85%が、中国嫌いという結果である。中国人は好きでも、国家としての中国を嫌うというのだ。

     

    この背景には、尖閣諸島への軍事挑発が日本人の意識を逆なでしているのであろう。歴史的にも日本固有の領土であることは、新中国発足直後の『人民日報』で、日本領として記載してあるからだ。また、無人島の尖閣諸島へ人間が常住したのも日本人が初である。これらは、国際法で日本固有の領土として認知される条件である。現に、日本人によって所有権登記がされていたのである。

     

    以上のような、動かしがたい条件があるにもかかわらず、中国は最初に尖閣諸島を発見したと言い張り、古い地図を持ち出して対抗している。仮にそうだとしても、中国が『人民日報』で認めたことは、国際法において後から覆すことができない、と規定されている絶対的条件である。

     

    中国は、法的に所有権を主張できない南シナ海を不法占拠している国である。尖閣諸島へも口実をつけて上陸・占拠しかねない不信の念を持たれている。日本人が、こういう不誠実な中国を嫌うのは、はっきりした根拠があってのことなのだ。

     


    『大紀元』(5月16日付)は、「台湾の『台湾人』自認が過去最高、日本人85%は中国『好ましくない』世界最多」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「ピュー・リサーチ・センターは2019年12月、世界34カ国で同年5月から10月にかけて、対中感情調査を行った。中国共産党政権70年に合わせたもので、3万8000人が回答した。中国を最も好ましくないと答える人が世界で最も多いのは、日本(85%)だった。インド太平洋6カ国のなかで、韓国(63%)が次点、台湾(61%)が3番目に高かった」

     

    世界34ヶ国の中で、日本が最も中国を「好ましくない」と答えていることが分かった。中国共産党政権70年を機に行なった世論調査だけに、「共産党政権」への強い警戒観が現れている。日本社会では、共産主義を拒否していることが明らかである。韓国は63%、台湾が61%といずれも「好ましくない」として受入れないのだ。

     

    日本が、中国共産党に拒否感を持つのは、その便宜主義にある。尖閣諸島周辺に石油資源賦存が判明してから、中国が領有権を主張し始めた経緯がある。国益のためには手段を選ばない、その不誠実な外交姿勢は今後、どのように変わるか見極めができないのだ。いつ、牙を剥いて尖閣諸島を襲ってくるか。予測不可能である。

     

    ならば常時、防衛体制を固めるしか途はない。日本が防衛能力を高める努力をすると、中国はすぐに「イチャモン」をつけてくるのだ。現在も、尖閣諸島一帯の日本領海を繰り返し侵犯している常習犯である。隙あらば、尖閣諸島へ上陸して占領する狙いであろう。こういう相手国を「好ましい」と見るはずがない。85%が「嫌って」当然であろう。

     


    (2)「インド太平洋6カ国は、おおむね米国に好意的で、フィリピン(80%)が最も親米的、次いで韓国(77%)、3位は台湾と日本(68%)と同点で、インド、オーストラリア、インドネシアが続く。フィリピン、インドネシア、オーストラリア、韓国では、30%程度の人しか中国を「好ましい」と答えなかった。インドでは更に低く23%で、4分の1以下が中国に対して「好ましくない」と考えている」

     

    米国に対する好感度は、日本と台湾が68%である。韓国は77%だ。一般的なイメージでは、韓国の「反米」、日台が「親米」である。このイメージからいえば、やや外れている感じがする。日台の「親米度」が低く、韓国の「親米度」が高く出ているからだ。日台は、米国に対して控え目な親しさを示している。それだけ、安定的と言えるだろう。韓国は、「熱しやすさ」という一面が加わっている。

     

    日米が音頭を取る「インド太平洋戦略」は、中国の膨張主義への対抗策として、日・米・豪・印の4ヶ国が連携して共同防衛に当るものだ。アジアでは、中国を「異質国家」の仮想敵にして防衛線を固めている。各国から、中国へ警戒感が滲み出ている点に注目すべきだ。

     

    中国を「好ましい」とする比率は、次のように低いのである。

     

    フィリピン、インドネシア、オーストラリア、韓国では、30%程度の人しか「好ましい」と答えなかった。インドではさらに低く23%で、4分の1以下が中国に対して「好ましくない」と考えていることがわかった。

     

    中国はアジア覇権を狙っているが、各国の国民から支持されていないのだ。中国共産党の「空回り」というほかない。GDP世界2位の中国に対しての好感度が、ここまで低いというのは中国外交の失敗を意味する。「空威張りする」中国に何の魅力も感じないのだ。まさに空回りしていると言うほかない。



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    最近の韓国政府は、コロナ防疫対策が上手くいった自信から、コロナで痛んだ韓国経済修復に向けて、明らかに日本を意識した派手な対策を打ち出している。日本が、コロナ経済対策で対GDP比10%の支出をすることが分かると、韓国も右へならえである。この大盤振る舞いについて、IMF(国際通貨基金)から警告が出たのだ。

     

    『中央日報』(5月15日付)は、「韓国『現金給付に依存するな』IMFから警告」と題する記事を掲載した。

     

    李昌ヨン(イ・チャンヨン)国際通貨基金(IMF)アジア太平洋局長は中央日報のインタビューで、全国民を対象にした韓国政府の災難支援金支援に懸念を表した。李局長は韓国政府の新型コロナウイルス感染症政策対応に関し、防疫とマクロ対策処方はよかったが、先進国の対策についていくのは問題があると警告した。韓国は、国際通貨を印刷する先進国ではないだけに、政策の優先順位を明確に決める必要があると述べた。

    (1)「(日米が行なっている)非伝統的な財政・通貨政策は現在、財政余力があり、ドル・ユーロ・日本円など国際通貨(注:国際的な信認を得ている通貨、という意味)を発行できる先進国が主導している。韓国のように国際通貨を持たない国が先進国を真似て過度に通貨膨張や財政拡大で対応すれば、通貨安や金利上昇につながり、ウイルス危機が経済危機につながるおそれがある。現在、財政政策浮揚規模がGDP比10%に近い先進国に比べ、新興国・開発途上国の財政浮揚規模が2-3%にすぎないのも、こうした制約を反映した結果だ」

     

    世界の基軸通貨は、米ドルである。国際貿易の取引では圧倒的にドルだが、ユーロや円もこれに次ぐ通貨として使用されている。非伝統的な財政・通貨政策(異次元金融政策=アベノミクス)が容認されたのは、円の国際的な信認が背景にある。日本は、アベノミクスをアホノミクスと蔑んできたが、国際的な認識とかけ離れた「ローカル論」であった。当時の論者は、大恥をかいた形である。

     

    韓国ウォンは、「ドル・ユーロ・円」と別世界である。コロナ対策も日本と張り合った大盤振る舞いは、将来に大きな禍根を残すだけ、と指摘している。日本は、なぜ許されるのか。国債増発で「救援資金」を賄うものの、発行後に日銀が国債を市中から買い入れるので実質上、無金利になる。そのカラクリは、日銀保有の国債に支払われる金利は、いずれ国庫へ収納されるからだ。これでも、金融市場での国債信用は不動である。



    (2)「残念であり不公平に感じられるが、ドルやユーロなど国際通貨を簡単に発行できる先進国は『何でもする』という形で果敢に浮揚政策を推進する余力がある。しかし開発途上国は副作用を考慮して最適な組み合わせと規模を見いださなければいけないという限界がある。開発途上国は浮揚規模だけでなく政策ターゲティングも重要だ」

     

    ドル・ユーロ・円は、国際的な信認を受けている。それゆえ、一時的な財政赤字は問題にならない。その負担に耐えられる経済力と国際信用があるためだ。韓国ウォンにはそれがないので、財政健全化に常時、腐心すべしという立場を表明している。


    (3)「(質問)今年1-3月期の財政赤字(統合財政収支)は45兆ウォン(約4兆円)と過去最大だ。与党からはGDPに対する国家負債比率が60%になっても問題はないという声が出ている。GDP比の国家負債比率40%はもう守らなくてもよいのか」

    「(答え)GDP比の国家負債比率40%に理論的な理由はない。しかし60%も問題がないので財政支出を大きく増やそうという見解は懸念される。韓国の急激な高齢化で現水準の福祉政策をそのまま維持しても、GDPに対する税収比率が大きく増えなければ、国家負債比率は2040年に60%を超え、2050年には100%に近づく。財政余力があるので今すぐ支出を増やそうというのは、未来を考慮しない無責任な考えだ。国家負債比率60%は選択の問題でなく20年以内に我々に迫る避けられない現実だ」

    韓国が、日本を真似した財政膨張政策は危険である、と警告している。すぐに、ウォン暴落に見舞われる経済体質(輸出依存度の高さ)を考えれば、日本と同じことができるはずがない、としている。韓国にとっては、耳の痛い話であろう。日本は、世界一の対外純資産を抱えている。外貨準備高も同2位である。海外へ生産機能を構築しており、円相場の変動に左右されない経済基盤を持っているのだ。

     

    (4)「李局長は福祉支出に反対しているわけではない。李局長は「誤解の余地をなくすために明確にしておきたい」としてこのように強調した。「現在、わが国の福祉水準は高齢化などを考慮すると、さらに拡大しなければいけない。財政支出を増やすなら、今後避けられない低所得層と高齢者に対する福祉支出に選別的にあらかじめ使う一方、最終的には福祉支出拡大を支援できるよう税収を増やす案を今から考えなければいけない

     

    下線部分は、財政基盤を確立するためには、内需を拡充せよと言っているのだ。輸出依存から内需拡充へ転換して、世界経済の変動に揺さぶられない経済体質をつくれと忠告しているのだ。この点で、文政権は逆走している、内需崩壊の引き金(最賃大幅引き上げ)を引いているからだ。

     

    (5)「(質問)全国民に給付する災難支援金のため論争が多かった。

    (答え)優先順位を誤った。そのお金を中小企業と自営業者の破産による大量失業を防ぐのに使えばさらに効率的だ。災難支援金は福祉政策と区別しなければいけない。災難支援金は一過性の性質であり、災難で直接被害を受けた階層をターゲットに支援してこそ効果がある。韓国の成長率が低下し、所得分配が悪化するほど、国民は今後、現金支援をさらに好むことになるだろう。経済が厳しくなるたびに現金給付を主張する政治家を国民が好めば、わが国の将来はそれほど明るくないはずだ

    韓国政治のポピュリズム特性を考えれば、国民に「徳政令」のような国からの贈り物に期待する心情を強くさせる。今後の韓国に、こうした潜在的な意識が存在すれば、「借金得」という妙な心理を植え付けるだろう。これが家計債務を増やして、中長期的な韓国経済の成長率を引き下げるのだ。要するに、徳政令期待→家計債務の急増→GDP成長率引き下げ、という悪循環に陥るのである。こうして、韓国経済は衰退するのだろう。


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    日本は、39県で15日からコロナ規制解除することになった。警戒姿勢の継続が条件である。従来通りの生活パターンに戻れるわけでない。このニュースに韓国メディは、複雑な反応を示している。韓国は、5月6日にコロナ規制を解除した。日本が、9日遅れでの解除になるからだ。日本の解除がもっと遅れれば、韓国の優位性が目立ったという「ジェラシー」である。妙な「日韓競争」である。

     

    『中央日報』(5月14日付)は、「アベノミクスが心配の安倍氏、国民不安の中で緊急事態解除開始」と題する記事を掲載した。

     

    安倍晋三首相は14日に新型コロナウイルス感染症対策本部会合を開き、47都道府県のうち39県で緊急事態宣言を解除する方針だ。解除対象は新型コロナ感染者が相対的に多い13都道府県「特定警戒地域」に含まれていなかった34県、「特定警戒地域」の中でも最近感染者数が連日0~3人の茨城・石川・岐阜・愛知・福岡など5県だ。東京都、北海道、埼玉県、千葉県、神奈川件、大阪府、京都府、兵庫県など8都道府県の緊急事態宣言は維持される。

    (1)「日本国内感染者は4月に一時一日700人まで増えたが、最近では100人前後まで減った。メディアの報道によると、日本政府は「最近1週間の新規感染者数が人口10万人あたり0.5以下」を基準として緊急事態宣言解除地域を選んだ。一部の地域の場合、この条件を充足しているものの、東京・大阪など大都市との地理的隣接性のために緊急事態が維持された。緊急事態が解除されれば経済・社会活動が段階的に正常化する見通しだ。そのため各自治体では「緊急事態が解除されなかった地域との往来が急速に増えて再び感染者が大きく増加するのではないか」という不安が強まっている。産経新聞によると、茨城など東京との往来が多い地域の住民たちの間で、特に「解除が早すぎるのではないか」という反応が多い

     

    韓国メディアは普段、産経新聞についてケチをつけているが、ここでは珍しく報道を紹介している。韓国に都合のいいニュースであるからだ。日本の規制解除では、科学的根拠を明確にしている。韓国は、ソウルのクラブで集団感染が起こってメンツ丸潰れになった。日本は、事業者の防疫協力体制をしっかりと築き、韓国の二の舞いにならぬように注意しなければならない。

     


    (2)「安倍氏は新型コロナ感染者の急増により、先月7日に東京都など7都府県に緊急事態宣言を発令し、同月16日にはこれを全国に拡大した。4日には5月6日までとしていた緊急事態の期限を今月31日まで延長しながら「14日ごろ中間状況を評価して解除が可能な地域は優先的に解除する」という立場を明らかにした。安倍首相が解除を急ぐのは経済に及ぼす打撃を懸念するためだとみられる。もし解除によって再び感染者が大きく増えれば、安倍氏にとって政治的な負担として返ってくることになる


    この記事では、安倍首相が自らの人気取りで規制解除に踏み切ったようなニュアンスである。そんなことをして、感染者が爆発的な増加になれば逆効果である。こういうリスクを背負ってまで、急ぎ規制解除に踏み切るはずがない。現に、北海道や東京、大阪などは1週間後の再検討に委ねられている。

     

    このように、韓国メディアは「反日=安倍」トーンである。愚かというか、現実無視というか、固定観念に囚われた報道である。次の記事は、典型的にそれを表わしている。

     


    『中央日報』(5月9日付)は、「『戦争ができる日本』は水泡に帰すのか、防疫問題で追い込まれる安倍政権」と題する記事を掲載した。


    (3)「ゴールデンウィーク末の5月4日、日本人は安倍晋三首相から衝撃的な発表を聞くことになった。日本メディアによると、安倍首相はこの日、「全国47都道府県全体を対象に新型コロナの感染拡大による緊急事態宣言の期限を当初の5月6日から31日に延長する」と発表した。安倍首相が本部長を務める政府対策本部の決定だ。安倍首相は延長の理由について「感染者の減少が十分なレベルとは言えず、医療現場の厳しい状況が改善されるには1カ月ほど必要」と述べた。「感染者の減少が十分なレベルとは言えない」という言葉はどういうことか。日本政府は一日の新規感染者100人を現行の医療体系が新型コロナ事態を適切に管理できる基本ラインと考えてきた。それ以上なら医療体制を圧迫し、患者にまともに対応できない状況になると懸念してきた」

     

    日本はこれまで、今回のようなパンデミックに襲われた経験がない。それに備えた医療システムでないのだ。韓国は、SARSとMERSの2回も経験している。パンデミック準備ができているのは当然だろう。韓国は、そういう状況を抜きにして自慢しているのだ。


    (4)「日本の医療対応態勢も安心できるレベルでない。もちろん日本の全体病床数は比較的多い。日本医師協会によると、全体の病床数は人口1000人あたり13.3床で、経済協力開発機構(OECD)で最も多い。問題は集中治療室の病床だ。日本の集中治療室の病床は他国に比べて著しく少ない。人口10万人あたりの重症患者病床数は比較的余裕がある米国が35床、ドイツが30床で、新型コロナ拡大で重症患者病室不足事態を経験したイタリアが12床だが、日本はわずか5床にすぎない。新型コロナが拡大して感染者が増えれば、対応するのが難しいということだ」

     

    日本は、重症患者病床数が少ないと批判している。健康保険制度で、重症になるまで放置せず、治療しているはずだ。

     

    (5)「新型コロナ患者治療のための装備の確保も十分でない。例えば3月末現在、人工呼吸器の場合、人口5170万人(2019年推算)の韓国は9828台を稼働することができた。体外式膜型人工肺(ECMO=エクモ)は350台を確保した。ところが人口が1億2616万人(2019年推算)で韓国の2.44倍にのぼる日本では2万2852台だったが、約1万台は他の疾患の患者が使用して直ちに活用できない状況だった。人口比例では日本は韓国の2.44倍の2万4000台の人工呼吸器が直ちに使用可能でなければならないが、実情はそうでなかった」

     

    韓国は、ここでも日本批判である。体外式膜型人工肺(ECMO=エクモ)の数が、人口に比べて少ないと言うのだ。これまで、患者が最悪事態に陥らずとも完治した証拠であろう。結局、日本の医療はパンダミック対応でなかったと言える。防疫対策でも、無闇に患者が病院へ殺到しないようにして時間を稼ぎ、医療崩壊を防いだと言える。今や医療面で余裕が生まれたので、今回の39県の規制解除にこぎ着けられたもの。

     

    本当の勝負は、防疫体制と雇用維持2本立ての優劣である。韓国が、この2本立てで成功するか。日韓の「防疫・雇用」マッチはこれからである。韓国が、防疫だけを勝ち誇ってはいけない場面に移行した。雇用が重視されるのである。

     

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