勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 日本経済ニュース時評

    35
       

    米中デカップリング(分断)が本格化すれば、中国はどこの国を頼るだろうか。米国にバイデン政権が誕生すれば、同盟国の結束を図って中国へ圧力をかけると広言している。EU(欧州連合)も米国と足並みを揃えて、中国への門戸を狭める。となれば毎日、尖閣諸島で嫌がらせをしている日本しか頼る先はないのだ。

     

    中国のことだ。自分から頭を下げてくることは絶対にない。先の王毅外相の訪日は、中国の申入れであったという。菅新政権の対中政策の感触を探りにきたのだろう。すでに、習近平氏が突然のTPP(環太平洋経済連携協定)参加意思を表明した。参加資格もない中国が、名乗り出たのは「中国を忘れないでね」というシグナルである。

     


    『日本経済新聞 電子版』(11月28日付)は、「中国、TPP検討の思惑、包囲網打破へ日本に接近」と題する記事を掲載した。

     

    貿易や投資で高度な自由化を求める環太平洋経済連携協定(TPP11)への参加に、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席が前向きな姿勢を打ち出した。もともとオバマ前米政権が主導したTPPの目的は対中包囲網づくりだった。あえてそこに中国が参加検討を表明する背景には、3つの深謀が働いている。

     

    (1)「習氏は20日、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で「TPP11参加を積極的に考える」と表明した。15日に東アジアの地域的な包括的経済連携(RCEP)協定に署名した勢いのまま、突然の発表だった。予想外の参加表明の狙いは、米国との覇権争いに終わりはないと見越し、TPPをテコに日本に近づき日米関係にくさびを打ち込むことだ。中国外務省の関係者は「日本を味方につけて米国の対中包囲網を打ち破る」と真顔で語る。「塑造周辺(自陣営の周辺国を作る)」という習指導部の外交方針を体現する」

     

    中国は、都合のいいときだけ日本へ接近する。日本は、その意図を見透かしているからニーハオと言ってきても「無駄弾」である。米中関係の密接さも知らないとすれば、中国の外交はどうなっているのか。どう転んでも、日本が中国の味方になるはずがない。基本において、日本は中国を尊敬していないからだ。恋愛と一緒である。お互いが尊敬の念を持たずに愛は続かない。それは、一時の打算に過ぎず破綻する運命だ。

     


    (2)「2つ目の狙いは、米次期政権との対話の糸口を探ることだ。中国では「習氏の表明が米国のTPP復帰を早める」との論調もある。米大統領選で当選を確実にした民主党のバイデン前副大統領は国際的な枠組みを重視する。同氏のもとで米国がTPPに復帰すれば、なかば恒久的な対話の窓口ができると期待する」

     

    このパラグラフの認識も間違っている。米国がTPPに復帰する時期について、当面は無理とされている。ラストベルト地帯の雇用が改善しなければ、米新政権はTPPを持ち出せないと見られている。仮に、22年に米国がTPPに復帰しても、中国を加盟させる意思はゼロである。TPPはもともと、中国排除の目的で結成されたのだ。中国外交は、完全に目算が狂っているのだ。

     

    (3)「3つ目の狙いは、国内改革を進める外圧としての活用だ。中国共産党幹部を養成する中央党校の国際戦略研究院の梁亜浜副教授は「外部の力を借りることも、中国の改革開放を絶えず深化させる重要な手段だ」と中国メディアで指摘した。関税撤廃率が99.%に達するTPPは、貿易や投資の自由度がRCEPを上回る。TPP加入に備えて、国内の構造改革を進めて民間の活力を高める必要がある。習政権のもとで改革の機運がしぼんだが、改革派の知識人らはTPPをきっかけに再び前進させるべきだと訴える」

     

    中国が、TPPに加盟するには現在の「国進民退」を改めて、「民進国退」に戻すことが不可欠である。つまり、国有企業中心の産業政策を捨てて、自由競争基本の市場経済に戻すことだ。それは、中国共産党による統制経済でなくなるという意味だ。中国が、そこまでしてTPPに加盟するとは考えられない。

     


    (4)「ただ中国が実際にTPPに参加するにはハードルが高い。TPPは、政府が国有企業を補助金などで優遇して競争をゆがめることを禁じる。鉄鋼など中国の国有企業がむやみに設備投資を膨らまし、グローバルな供給過剰を生んだことが念頭にある。習氏は4月の党内組織の会議で「国有企業も改革や合理化が必要だ」としつつも「絶対に否定や弱体化はできない」と述べた。国有企業の増強を前提としたままでは、TPP参加交渉はつまずきかねない」

     

    習氏の権力基盤は、共産党二世グループ「太子党」「紅二代」にある。彼らが、国有企業全体を率いているのだ。紅二代の経済的利益は、国有企業から吸い上げている。その結果、栄耀栄華な生活を送くれるのだ。国有企業の縮小・解体はタブーである。こういう事情ゆえに、TPPに加盟できる訳がないのだ。

     

    (5)「習指導部は、経済強国を築くため、国内産業を保護すべく多くの規制を駆使してきた。TPPのルール分野には個別に適用を見送る凍結規定があるものの、多用は認められない。中国内には貿易面だけ参加する「限定参加論」を唱える声もあるが、加盟国の同意が得られるかは読めない」

     

    どう見ても、中国がTPPに加盟することは不可能である。そこで、中国が貿易面だけ参加する「限定参加論」を唱える声もあるという。とんでもない甘えである。社会主義国のベトナムもTPP加盟に当り、国有企業の比率を引下げる努力をしたのだ。中国だけ甘やかすことは不可能である。中国は加盟に当って、既存加盟国すべての承認を必要とする。一国でも反対があればダメなのだ。中国が、こういう「限定参加論」を持ち出すほど、米中デカップリングが深刻であることを物語っている。早くも、中国敗北を示している。

    a0960_006624_m
       

    日本が、日中韓首脳会談に参加する方針を見せないことから、中国が日韓関係修復に一肌脱ぎたいような素振りを見せ始めた。日本は何も、中国の介入を必要としている訳でない。韓国の「反日体質」をこの際、徹底的に矯正させるという「教育効果」を狙っているだけである。二度と再び、歴史問題を蒸返して「謝罪と賠償」というパターンの繰り返しを阻止したいのである。そのために、日本は絶対にここで妥協してはならない。むろん、中国の介入も必要ないのだ。

     

    『レコードチャイナ』(11月28日付)は、「日韓関係は、切っても切れず『糸口もつかめない』状態ー中国メディア」と題する記事を掲載した。

     

    中国商務部が主管するサイト『中国商務新聞網』(12月27日付)は、日韓関係について「切っても切れず、糸口もつかめない」とする記事を掲載した。

     

    記事は、今月23日に韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が新しい駐日大使に姜昌一(カン・チャンイル)氏を起用したことを挙げ、「このニュースは2年の間、波風が多かった日韓関係にいくらかの温かみを与えた」と指摘した。姜氏は「日本通」として知られ、東京大学大で修士、博士号を取得した、日本問題に詳しい歴史学者。共に民主党所属の国会議員を4期務め、現在は韓日議員連盟の名誉会長を務める。

     


    (1)「記事は、「イライラと悪化の中にある日韓関係において、『日本通』が駐日大使に就任することは、少なくとも韓国が双方の交流において、日本の意図と要求により耳を傾け、理解したいということを意味している」とし、韓国大統領府関係者が「関係を改善したいという文大統領の意思を反映した人事」と評したことを伝えた」

     

    韓国が、日本との関係修復に全力を上げていることは事実である。だが、韓国は徴用工問題を自国で解決する意向を見せない点が最大の難問である。韓国は、これを逃げ切ろうと狙っている。その底意が透けて見えるから、日本は警戒しているのだ。

     

    (2)「このほど、日中韓が参加する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)が署名に至ったことに言及。「これにより、3者間の経済協力がますます緊密になる」とした上で、「2つのパートナーの距離が徐々に離れていく場合、第3者(注:中国)がタイムリーに介入すれば2者の行き詰まりを打破し、互いの負の感情を緩和することができる。RCEPへの署名は日韓関係の正常な発展を促す一定の作用がある」と指摘した」

     

    RCEPは、貿易関係の領域である。別に日韓の経済関係が止まっているわけでないので、中国がRCEPを持ち出して、「介入」する必要性はゼロである。中韓関係も「THAAD」問題でギクシャクしているが、日本が第三者として介入する必要はない。それと同じことなのだ。

     


    (3)「そして、「最近、双方のハイレベル交流が頻繁に行われ、関係改善の突破口を積極的に探している」としたほか、「韓国は拉致問題という『日本の痛いところ』を利用し、東京五輪という接点に乗じて、遠ざかっている日本との関係を縮めようとしている」とも指摘。11月中旬に日本を訪問した韓日議員連盟の金振杓(キム・ジンピョ)会長が、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長を来年7月の東京五輪に招待することについて「日本が前向きな回答を示した」と明らかにしたことを挙げた。なお、日本側はこれを否定している」

     

    韓国は、自国が譲歩しないで「得する」ことだけを模索している。これでは、日本を納得させられるはずがない。現在の日韓関係悪化は、すべて文政権が仕掛けたものだ。日韓慰安婦合意の破棄。旧徴用工問題賠償は国際法違反である。日本に責任のある問題ではない。文大統領は、日本に喧嘩を売って、最後は頭を下げて解決したという「不格好」な終わり方を避けたいだけである。日本が、それに付合って譲歩する必要性はない。文大統領の「自作自演」の騒ぎなのだ。

     

    (4)「一方で、記事は「日韓関係の正常化は徴用工と慰安婦問題という歴史的な『閉塞点』を避けられないことにも目を向けるべきだ」と指摘する。これまで徴用工問題をめぐって日本企業への賠償を求める訴訟が起こされてきたこと、慰安婦被害者らが日本政府に対して起こした損害賠償請求訴訟を審理しているソウル中央地裁が今月10日、英国の国際法の権威であるクリスティーヌ・チンキン教授から、日本の賠償を認めるようにとの趣旨の意見書を受け取ったことを説明した」

     

    慰安婦問題は、韓国が一方的に破棄した問題である。今後一切、日本の責任は免除されるべきである。徴用工問題は、1965年の日韓基本条約で解決済みである。もはや、日韓の歴史上の問題はすべて解決しているはず。これが、法的な解釈なのだ。

     

    a0960_006618_m
       

    昨年7月以来、反日不買の運動はもの凄い勢いだった。文大統領は、「二度と日本に負けない」と広言するほど、韓国中に「NO JAPAN」や「NO 安倍」という幟を立て、まなじりを決する悲愴さを滲ませていた。あれから1年以上経った今、文大統領が日本へ「ラブコール」を送るほどに変ってきている。

     

    これでは、反日不買も尻つぼみとなって当然。再びスーパーのバーゲンセールでは、日本製ビールが客寄せに使われ始めている。41万ウォン(約930円)で店頭に山積みされているという。

     

    『朝鮮日報』(11月23日付)は、「ノー・ジャパンは終わった? 再び登場した日本製ビール『41万ウォン』」と題する記事を掲載した。

     

    日本製品不買運動(ノー・ジャパン)の影響で影を潜めていた日本製ビールが、41万ウォン(約930円)などの割引イベントで大手スーパーやコンビニエンスストアに再び姿を現した。

     

    (1)「韓国流通業界が23日に明らかにしたところによると、ロッテマートは系列会社のロッテアサヒ酒類が輸入・販売するアサヒビールを41万ウォンで販売している。ロッテマートは昨年7月に日本製品不買運動が起きて以降、日本製のビールに関するイベントを中止していたが、最近になってアサヒビールをはじめとする90種類のビールを対象に割引セールを始めた」

     

    日本製ビールが、再び店頭に山積みにされる日がやってきた。絶対に「飲まない」と力んでいたが、韓国人にはもともと人気がある。「昼間は反日、夜は日本ビール」と揶揄されるほどであった。

     

    (2)「セブンイレブンやCUなど一部のコンビニエンスストアでも、アサヒビールを1缶2500ウォン(約233円)で販売している。事実上、41万ウォンと同じ価格だ。コンビニ業界の関係者は「取引先(ロッテアサヒ酒類)が最近になって供給価格を引き下げたものであり、当社が自ら割引イベントを実施しているわけではない」と説明した。しかし値下げによって、一度背を向けた消費者の心をつかむことができるかは未知数だ」

     

    アサヒビールは、1缶2500ウォン(約233円)だという。韓国ビールは拙い。SNSでは、「やっぱり日本製ビール」と書き込みがされている。反日青年からは、相変わらず反日批判が書き込まれているが結構、反論も多いという。ようやく、反日不買運動も峠を超えたと見られる。

     

    (3)「アサヒビールは輸入ビール1位で、500ミリリットル缶を3000ウォン(約280円)で販売していたが、日本製品不買運動によって販売量が急減した。関税庁などによると、今年7月の日本製ビールの輸入額は68万5000ドル(約7100万円)で、1年前に比べ84.2%減少した」、

     

    今年7月の日本製ビールの輸入額は、前年比84.2%減という。まさに「激減」というにふさわしい減り方である。あれだけ、親しんでいた日本製ビールを口にしなくなったのだ。これは、「見事」と言うほかない。激昂したときの韓国社会は、手をつけられなくなる一例である。

     

    これと関連して現在、韓国で起こっている法務部長官による検察総長の業務停止命令に対し、庶民の怒りがどう展開するか、という新たな関心が浮かぶ。検察総長に政権の犯罪を捜査させないようにする「検察総長の業務停止命令」は、国民をないがしろにする暴挙と言うほかない。

     

    国民の怒りが、反日から文政権腐敗糾弾に向かうのか。目が離せなくなってきた。

     


    『中央日報』(11月26日付)は、「日本製品不買運動弱まると、対日貿易赤字が再び拡大の兆し」と題する記事を掲載した。

     

    (4)「昨年、16年ぶりに最低値まで減少した対日貿易赤字規模が再び拡大する兆しを示している。26日、韓国貿易協会によると、今年1~10月に韓国が日本との貿易で出した貿易赤字幅は、165億6000万ドル(1兆73000億円)。昨年同期間の164億2000万ドルよりも赤字規模が僅かに拡大した」

    1~10月の期間、韓国から日本へ輸出した金額は、前年比13.0%減の206億3000万ドルに対し、日本から輸入した金額は7.3%減の371億9000万ドル。日韓の輸出入額の減少率では、韓国側が大きくなっている。不買運動をやっても、韓国の対日赤字の減少には限界がある。日本は、韓国の貿易赤字国1位国で、韓国は2004年から毎年200億~300億ドル規模の貿易赤字を出している。

     

    これは、韓国が加工型貿易である結果だ。日本から素材や部品を輸入し、それを加工して輸出するという産業構造のもたらす必然的な貿易赤字である。韓国にとっては、不可避の赤字である。その日本と反日不買運動を引き起したのだ。商人に喩えれば、仕入れ先の日本と喧嘩しているようなもの。あまり賢いやり方ではなさそうだ。国と国との間にも、感情というもの働く。日本を刺激しても加工型貿易構造が変らない以上、もう少し上手くやる方法を探すべきだろう。



     

    a0001_001089_m
       

    西村経済再生担当相は25日、有識者らによる新型コロナウイルス対策分科会後に記者会見し、強い危機感を発表した。分科会全体として強い危機感が共有されたとしたうえで、「この3週間が勝負だと。いまの感染拡大を抑えられるかどうか。その大事な、大事な3週間だということだ」と訴えたのだ。これまで日本政府は、日本的な防疫体制で新型コロナに立ち向かってきたが、コロナ第3波襲来で医療機関が収容能力を超える瀬戸際にあることを国民に訴えている。

     

    にわかに危機感が強まっているが、11月23日までのデータによって、米国経済通信社『ブルンバーグ』が、COVIDレジリエンス(耐性:回復力)ランキングを行った。それによると、日本は世界2位という好成績を収めている。この実績に自信を持って、これからの3週間を乗り切ろう。必ず、乗り切れるはずだ。

     

    『ブルンバーグ』(11月25日付)は、「コロナ時代、世界で最も安全・危険な国・地域-レジリエンスランキング」と題する記事を掲載した。

     

    ランキングは、経済規模が2000億ドル(約20兆9100億円円)を超える53の国・地域を10の主要指標に基づいて点数化した。その基準は症例数の伸びや全体の致死率、検査能力、ワクチン供給契約の確保状況などだ。国内医療体制の能力、ロックダウン(都市封鎖)などコロナ関連の行動制限が経済にもたらす影響、市民の移動の自由も考慮した。こういう総合的な評価において、日本が高得点をマークしたのは、大いに自信を持つべきであろう。

     

    1位 ニュージーランド 85.

    2位 日本       85.

    3位 台湾       82.

    4位 韓国       82.

    5位 フィンランド   82.

    6位 ノルウェー    81.

    7位 オーストラリア  81.

    8位 中国       80.

    9位 デンマーク    77.

    10位ベトナム     74.

     

    (1)「ランキング2位は日本だが、1位のニュージーランドと異なる道を歩んだ。日本にはロックダウンを強制する法的手段がないが、別の強みを素早く発揮した。過去に結核が流行した日本は保健所制度を維持しており、追跡調査が新型コロナでも迅速に採用された。高いレベルの社会的信頼やコンプライアンス(法令順守)を背景に国民は積極的にマスクを着用し、人混みを避けた」

     

    日本人特有の「人に迷惑をかけるな」という自己規制が、他国のようなコロナ蔓延を防いでいるのかも知れない。だが、国内の移動が精神的に自由になると共に、日本列島全体が再び警戒信号を打ち出す雰囲気になってきた。この「信号弾」が、必ず、自主規制効果を上げるだろう。

     

    (2)「米国や英国、インドなど世界で最も優れた民主主義国家の一部が後れを取った一方で、中国やベトナムなど全体主義的な国家が新型コロナウイルス抑え込みに成功したことは、民主的な社会がパンデミック(世界的大流行)への対応に適しているのかという疑問を投げ掛ける。しかし、ブルームバーグCOVID耐性ランキングはその疑問を否定する。トップ10のうち8つは民主的な国・地域だ。悪影響を最小限に抑えて新型コロナを封じ込めることに成功している政府は、市民に命令し服従させる力によってではなく、高い信頼と社会のコンプライアンスを引き出すことによってそれを可能にしているように見受けられる」

     

    市民に命令を下す社会よりも、高い信頼関係に結びついた社会は、「他人に迷惑をかけない」という自己規律が生まれる。中国のような規制社会では、必ず抜け駆けが始まる。この差が、社会の発展において大きな違いを生むのであろう。

     


    (3)「メルボルン大学で世界疾病負担(GBD)グループのディレクターを務める アラン・ロペス名誉教授によれば、社会的結束もこのパンデミックへの対応の成否を分ける要素だった。市民が当局とその指針を信頼している場合、ロックダウンは不要かもしれない。日本や北欧の社会を見ると、不平等がほとんどなく、非常に規律が行き届いていることが分かる」とロペス氏は述べた。「これが、国としてより結束した対応につながり、優れたコロナ対応ができた理由だ」と分析した」

     

    このパラグラフで、日本は北欧並みの規律がよく行き届いている社会と評価されている。いささか「褒めすぎ」でないかと思うが、海外からそう見られているならば、これから3週間は期待に応えて頑張らなければならない。

     

     (4)「米国から効果的な対応が見られなかったことが、今回のパンデミックで最も驚くべき展開の1つだった。超大国の米国が感染者数と死者数で世界最多となり、危機への対応は最初から出遅れていた。医療機器および個人防護具(PPE)の不足、検査と追跡システムにおける協調の欠如、マスク着用の政治問題化など不備が目立った。トランプ米政権はむしろ、治療とワクチンを主に重視した。「ワープ・スピード作戦」と銘打った取り組みの下、ワクチンを開発する製薬会社などに約180億ドルを配分した。一方、国内の各州は危機対応のための資金を求めていた」

     

    米国は、科学の国であるから治療とワクチンを重視した。ワクチンを開発する製薬会社などに、約180億ドルを配分するという偏りがあった。

     

    (5)「この異例な対応が、ブルームバーグのランキングで米国の順位を上げた。感染者と死者数の多さから、この点がなければ米国の順位はさらに11段階下だっただろう。メッセンジャーRNA(mRNA)という技術に基づくワクチンは米国で来月にも緊急使用許可(EUA)を得られる可能性があり、このワクチンの際立った有効性が転換点となるかもしれない」

     

    メッセンジャーRNA(mRNA)という遺伝子を注射し、これが体内で免疫力を作り出しコロナを封殺する、「人類初めて」の実績を上げた。体内が医薬品工場になるようなシステムである。多分、来年のノーベル賞候補に挙げられるほどの実績であろう。この手法が成功したので、ガンやリュウマチなどの免疫力低下によって引き起こされる疾病治療に道を開いたと専門家は見ている。これを支援したきっかけは、米国に生まれた30人のボランティアが、米国政府へ強く働きかけた成果である。米国ならではの「自由な社会」が、生み出した快挙である。 


     

     

     

    a0960_008683_m
       

    米ダウ史上初3万ドルへ

    米を見誤った背景は何か

    長期低金利がドル安円高

    構造的な円高を覚悟せよ

    為替のプロが見る円相場

     

    11月24日の米ダウ平均は、史上初めての3万ドルを突破(3万46ドル)した。新型コロナウイルスの死者が増え続ける中で、株式市場は、米国経済の力強い回復に自信のほどを示した。2016年の大統領選の日、ダウ平均は1万8332ドルが終値。トランプ大統領が、次期政権への事務引き継ぎを認めた日を、大統領選終了日と見れば、この間に1万1714ドルもの値上りである。率にして64%の上昇率だ。トランプ氏が大きく貢献した成果も含まれる。

     

    米ダウ史上初3万ドルへ

    一挙に3万ドル大台突破の株高を実現させたのは、次のような事情が、影響を与えたと見られる。

     

    1)11月3日の米国大統領選挙後の混乱は、トランプ大統領の次期政権への引き継ぎ承認で終息に向かい始めた。肝心の敗北宣言が出ないままに、引き継ぎ開始という異例の形である。トランプ氏は、4年後の大統領選を目指すとされており、周辺では最後まで「敗北」を認めないだろうと取沙汰されている。

     

    2)米議会選挙では、下院で民主党が多数で変らずだが、共和党が議席を増やしている。上院では、共和党が多数の見通しだ。こうなると、バイデン次期大統領が過激な左派主張の政策を実現することは不可能になる。

     

    3)ファイザーのコロナワクチンが、最終治験を経て95%超の有効性という「神がかり的」な最高データが発表された。米国で12月11日から、実際に接種される段階にこぎ着けたことで、長く苦しめられた「コロナ禍」から脱出可能になる。

     

    以上のような背景で、ニューヨーク株式市場はダウ工業株30種平均が、史上初めて3万ドルの大台を突破した。3月に記録した安値からの上昇率は62%にも達した。

     


    株価という先行指標で米国経済が、将来の成長性の明るさを世界に示すことになった。私は一貫して米国の持つ経済システムの成長性に注目し高く評価してきた。この5号前の「メルマガ206号 混迷した大統領選 『弱い米国』の前兆という悲観論はこれだけ間違っている!」において、米国経済に対する悲観論に異議を申し立てた。

     

    米を見誤った背景は何か

    『ロイター』(11月6日付)は、「混迷極まる米大統領選、『強い米国』はもう戻らない」と題するコラムを掲載した。筆者の鈴木明彦氏は、三菱UFJリサーチ&コンサルティング研究主幹である。

     

    先ず、要点を紹介する。

     

    1)米国は、今年がマイナス成長不可避であるのに対して、中国は小幅ながらプラス成長を維持する。2019年には米国の3分の2であった中国の経済規模が、20年には4分の3にまで高まる。2030年ごろには米中の経済規模が逆転するとの見方が一段と現実味を帯びてくる。

     

    2)経済規模が接近してくるのに伴い、国防費や研究開発費でも中国が米国に迫って凌駕してくるかもしれない。米中の対立はすでに、貿易戦争から安全保障や技術覇権での対立に重点が移っているが、コロナショックで大きなダメージを受けた米国は、中国との関係においても劣勢になってくる。

     

    3)今回の米国大統領選ではどちらが勝利しても、自由と民主主義を掲げて世界をリードしたアメリカが戻ってくることはなさそうだ。世界に貿易戦争を仕掛けて、中国との関税引き上げ合戦を始めたのはトランプ大統領だが、その前から米国は、WTO(世界貿易機関)による多国間の枠組みでの自由貿易の推進に距離を置いていた。2国間主義に転じている米国が、グローバルな自由貿易を推進することはない。また、世界の警察官の役割に後ろ向きになっている米国は、これからもアジア太平洋における存在感を低下させるだろう。

     

    4)中国は、新型コロナ対応や大統領選を巡る米国内の混乱を見て、自国の政治体制や政策対応に自信を深めているはずだ。米国と正面から対決しなくても、国力を高めていくことに専念し、米国の力が徐々に衰えていくのを待った方がよいと思っているのではないか。

     

    5)中国共産党は、2035年に1人当たりGDPを中等先進国並みにする、という目標を示した。2万ドル(約209万円)ぐらいの水準を想定しているとすると、15年間で現在の2倍目標となり、年5%弱の成長を続けていれば達成可能だ。もっとも、15年間安定した成長を維持するのは簡単ではない。それでも、米国の弱体化がこれからも続き、中国が米国を上回る成長を続ければ、米国を抜いて世界一の経済大国になることは十分想定できる。

     

    前記の5項目に対する私のコメント採録は省くが、一点だけ指摘したい。それは、市場経済が価格機能によって自動的な「バランス回復機能」を持っていることである。価格をシグナルにして動く市場経済の有利性を理解すれば、米国経済が史上二度のバブルによってもたらされた恐慌(世界恐慌とリーマン・ショック)を克服した理由が分かるであろう。米国経済は、不死身とも言える。その原点が市場経済システムの尊重である。その裏には、健全な市民社会を守ろうとする「ピューリタニズム」(清教徒精神)が健在であることだ。

    (つづく)

     

    このページのトップヘ