勝又壽良のワールドビュー

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    カテゴリ: 北朝鮮

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    文政権は、北朝鮮を「主敵」の地位から外した。これが、韓国軍の士気低下を招いている。38度線の向こうに、韓国を侵略した北朝鮮軍が大量の武器で今なお存在しながら、これを主敵と見ないと言うのだ。こういう「言い逃れ」が、韓国軍の北朝鮮軍への警戒心を弛緩させている。

     

    具体的には、従来になく脱北者が38度線を簡単に越えていることだ。脱北者が、北朝鮮軍であったならば、ゾッとする思いであろう。韓国軍の士気低下が著しく進んでいる証拠であろう。文大統領は就任後、国民に対して良いことを何もしない大統領である。

     

    『朝鮮日報』(2月24日付)は、「現在韓国軍は内部崩壊の状態にある」と題する社説を掲載した。

     

    今月16日にある北朝鮮男性が東海岸を通じて帰順したが、これはほぼ崩壊状態にある韓国軍の実情を赤裸々に示す出来事だった。韓国軍合同参謀本部が23日に発表した内容によると、この北朝鮮男性が韓国側の海岸を歩いて南に移動する際、監視カメラに10回も撮影されていたが、韓国軍はその8回目まで事態を全く把握できていなかった。前方の監視カメラでは2回にわたり警告灯と警告音が作動したが、監視兵は特に理由もなく風が原因の誤作動と勝手に判断してこれを無視した。幹部は電話中だった。最初から警戒をしていなかったのだ。任務を遂行しない部隊はここだけだろうか。決してそんなことはないだろう。

     


    問題の北朝鮮男性は5~6キロの距離を3時間以上かけて歩き、民間人統制ライン付近まで南下したが、最初に識別されてから師団長に報告されるまで34分もかかった。武装した敵軍が侵入していればどうなっていただろう。北朝鮮男性は海岸に設置されている鉄柵下の排水路に入り込んだ。ところが現場の部隊はこの排水路の存在そのものをこれまで知らなかったという。

     

    (1)「地形や地雷の危険性などから把握が難しかったと言い訳している。兵士が自ら担当する地域の中で、「行きにくくて危険」という理由で行ったことがない場所があるというのだ。昨年7月にはある脱北民が西海の鉄柵下にある排水路を通って越北したが、この時も合同参謀本部は現場の部隊全体に排水路の確認を指示した。ところが今回問題となった師団は問題の排水路を確認もせず、「問題なし」と報告していた。合同参謀本部の命令さえ聞き流しているのだ。これではもはや軍隊とは言えない」

     

    このパラグラフで印されている事実は、韓国軍がサラリーマン化している証拠である。文政権は、北朝鮮が主敵でないと宣言している以上、敵でない北朝鮮へ鋭敏に対応するはずがない。問題の根源は、文政権にある。

     

    (2)「合同参謀本部は「事態を深刻に認識している」とした上で「根本的な対策にあたる」と約束した。古いレコードが回っているような感覚だ。昨年の脱北民越北事件でも合同参謀本部議長は国会で「事態を深刻に認識している」として「根本的な対策にあたる」と誓った。「厳正な対処」「厳しい調査」「責任を痛感」などの言葉も、問題が発生するたびにオウムのように繰り返されているが、これらがわずか1回でも守られたことはない。今やこの種の言葉を聞くと国民はもちろん、兵士たちでさえ内心苦笑いをしていることだろう」

     

    北朝鮮軍が主敵でない以上、警戒心が弛緩するのは当然のこと。間違いの元は、北朝鮮に対する主敵の看板を降ろしたことにある。

     

    (3)「このように初歩的な警戒さえできない軍隊が、戦時作戦統制権(注:統帥権)の移管を急いでいる。核兵器を保有する北朝鮮と全面戦争が起こった場合、核抑止力を全く持たない韓国軍が核抑止力を持つ米軍を指揮するというのだ。これに米国が同意するだろうか。このようなナンセンスについては驚くべきことに韓国軍が先頭に立っている。軍人でありながら国を守ることをせず、国内の政治宣伝に没頭する大統領にこびを売っているのだ」

     

    精神的に言えば、韓国軍は北朝鮮軍に対して「腑抜け」状態になっている。こういう軍隊は、「インド太平洋戦略」のクアッド(日米豪印)に加えても、足手まといになるだけだろう。在韓米軍が韓国軍に統帥権を与えても、機能しないことは明白である。むしろ、弊害だけが出てきて、北朝鮮軍に敗北する最悪状態を招くに違いない。

     


    (4)「最も重要な韓米合同軍事演習は、すでにコンピュータ・ゲームのように変わってしまった。政権が行う南北ショーと平和ショーにより、韓国軍は事実上、精神的な武装解除に向かっており、今では「軍事力ではなく対話で国を守る」「韓米訓練については北と協議する」とまで言い出した。元在韓米軍司令官は現状について「このままでは北朝鮮に服属する」と指摘したが、この警告を誰が聞き流せるだろうか」

     

    文政権の国防意識は、ゼロ以下であろう。「軍事力ではなく対話で国を守る」などという話は、童話の世界である。自衛権は、国家存立の基本概念である。それさえ捨てて、北朝鮮と統一したいという文政権の存在に嘆息するほかない。

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    文政権は、これまで北朝鮮の属国のように振る舞って話題となってきた。文大統領が、訪欧の際に北朝鮮を説明して歩いたこと。北朝鮮へ原子力発電所を建設しようとしたこと。北朝鮮が非難する韓国政府閣僚を更迭する、などだ。

     

    これに加えて新たに分かったのは、脱北の元政府高官や大学教授などに職業を斡旋せず、アルバイト稼業で生活させ冷遇していることだ。文政権は、鉄のカーテで覆われている北朝鮮情報を聞き出さず、北朝鮮のご機嫌取りをしているのである。北朝鮮の情報収集は、韓国政府の基本業務のはずだが、これすら放棄している。真意は、南北統一のためには「雑音」に耳を塞ぎたいのだろう。

     

    『朝鮮日報』(2月23日付)は、「金正恩に代わり文大統領が行う 高官クラス脱北者の完全封鎖」と題する社説を掲載した。

     

    (1)「かつて北朝鮮政府関係者だった脱北民たちが文在寅(ムン・ジェイン)政権の仕打ちによって生活苦にあえいでいるという。2年前に帰順(脱北)したリュ・ヒョンウ元クウェート駐在北朝鮮代理大使やチョ・ソンギル元イタリア駐在北朝鮮代理大使らは今もまだ明確な職場がない。前政権までは元政府関係者や専門職だった脱北民らは国家情報院、あるいはそれに関係する研究所などに勤務することができた。米中央情報局(CIA)でさえ把握できていない北朝鮮の極秘情報を数多く知り、北朝鮮に対する内側からの見方などを提供してきたからだ」

     

    文政権は、北朝鮮に与えてきた「主敵」という位置を取り消した。代わって、日本が「主敵」とされている。こういう倒錯した情勢認識で、韓国は北朝鮮への防備が完全に緩んでいる。北朝鮮の脱北民が、やすやすと38度線を越えてきているのに気づかない例が跡を絶たないのだ。こういう状況だから、文政権は北朝鮮の末端情報に関心を持つはずがない。

     


    (2)「リュ元大使は、「韓国政府から研究院などへの就職要請はなかったのか」との質問に「全くなかった」と伝えた。国家情報院関係の研究院などは、元北朝鮮政府関係者だった脱北民を新たに採用していない。研究院の顧問を退職した元脱北民も生活苦を訴えている。この脱北民は故ファン・ジャンヨプ元秘書と共に脱北した人物だ」

     

    脱北の元北朝鮮高官について、韓国政府は情報収集もしないという。金正恩氏の発言の信憑性を調べるためにも元北朝鮮高官の握る情報は貴重なはずだ。そういう機会さえ放棄していることは、北朝鮮へ向けた最大の「好意」であろう。

     

    (3)「北朝鮮で検事だったある脱北民は、包装のアルバイトをしている。韓国法務部や統一部(いずれも省に相当)などにとっては北朝鮮の元検事以上に北朝鮮の検察について詳しい人物はいない。ある脱北外交官の妻はコンビニでアルバイトをしており、北朝鮮で大学教授だった脱北民は日雇い労働をしている。彼らは特別な待遇は望んでおらず、ただ北朝鮮に関する情報や自らの経験を韓国社会に提供し、活用してもらえる機会を求めているだけだ

     

    文政権得意の「人権論」から言えば、生命の危険を冒してまで脱北してきた人たちを、それなりに遇するのは義務のはずだ。文政権は、中国や北朝鮮の人権無視を非難する国連声明に賛同したことがない。文在寅の人権論は、味方の中朝にはルーズであり、敵の日本には徴用工や慰安婦の問題で畳みかけてくる「選択的人権論」である。要するに、まやかしなのだ。

     


    (4)「
    韓国政府は、「元高官だった脱北民への冷遇はない」と主張しているが、これはうそだ。元北朝鮮政府高官の脱北民が代表を務める団体への支援はすでに中断しており、事務所に対する監査も行われた。ある脱北民は、「かつて韓国軍や地方自治体から要請のあった安保関連の講演も今はほぼなくなった」と伝えた。収入源が遮断されたのだ。かつて北朝鮮外交官だった太永浩(テ・ヨンホ)議員に対し、元青瓦台(韓国大統領府)行政官の民主党所属議員は「変質者が暴れている」と侮辱した。これが彼らの本音だ。北朝鮮政権がかつて政府高官だった脱北民たちを攻撃する際に使う言葉がまさにこの「変質」と「背信」だ」

     

    韓国与党は、脱北者を敵視している。金正恩氏を神格化しているので、その統治から逃れてきた者は許せないという立場であろう。

     

    (5)「北朝鮮の元海外駐在官による入国は2013年には8人だったのが14年に18人、15年には20人にまで増えていた。これは国家情報院が当時報告していた内容であり、彼らの多くは北朝鮮のエリートたちだ。ところが最近はこの種の亡命が一気に減少したという。コロナの影響により海外で勤務する北朝鮮関係者の数そのものも減っているが、同時に「韓国に行けば生活苦にあえぐ」という話も伝え聞いているはずだ」

     

    北朝鮮の元高官の脱北者数は、文政権になって一気に減少しているという。冷遇している結果であろう。

     


    (6)「文在寅政権による元高官クラス脱北民に対する冷遇は、北朝鮮の高官たちに「韓国に来るな」というシグナルを送るものであり、脱北を最初から阻止する行為に他ならない。これは金正恩(キム・ジョンウン)兄妹が最も望んでいることだ。元高官クラス脱北民への冷遇は北朝鮮暴力集団の生存を助け、彼らの人倫に反する犯罪の幇助(ほうじょ)につながる。文在寅政権の親北行為はこのようなところにまで及んでいるのだ」

     

    文政権は、南北統一が夢である。この夢を実現する上で、脱北者の存在は統一の正統性を疑わせることになる。韓国の国民が、脱北するほど嫌な北朝鮮と統一するのは「ご免」という世論形成を恐れているのだろう。

     

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    米韓では、対北朝鮮政策で大きな隔たりが見られる。韓国は、ともかく対話を再開すれば北朝鮮が核放棄の話合いに応じるかも知れないと見る。米国は、北朝鮮への無原則な対応が核放棄をはぐらかし、核戦略強化に資するだけという判断である。

     

    韓国が、ひたすら北朝鮮のご機嫌伺いに力を入れているのは、北朝鮮の核による「人質心理」に陥っているとの指摘がある。人質犯が、人質に親切な行為をすると、人質は犯人へ親近感を持ち始めるという「ストックホルム症候群」が、すでに文政権の下で起こっていると指摘する向きが現れたのである。

     

    『朝鮮日報』(2月13日付)は、「韓国版『ストックホルム症候群』を危惧する」と題する寄稿を掲載した。筆者は、崔剛(チェ・ガン)峨山政策研究院副院長である。

     

    核実験を6回も行った北朝鮮は、韓国に対して何のためらいもなく核の脅しを加えてきて、韓国は北朝鮮の核の脅しに戦々恐々とする「核の人質」になってしまった。

     


    (1)「北朝鮮の核武装よりも懸念すべきことは、韓国人が「韓国版ストックホルム症候群」に陥っている点だ。ストックホルム症候群は、1973年にスウェーデンの首都ストックホルムのある銀行で、武装強盗が行員4人を人質にして6日間立てこもった事件に由来する。震え上がっていた人質は、犯人が上着を着せてくれるなど友好的なジェスチャーを見せると、犯人に対し親近感を抱き、後には擁護する態度まで見せた。ある人質女性は「私は警察や国の懐より、彼と一緒にいるときの方が安定的で穏やか」とまで言った」

     

    ストックホルム症候群とは、人質が犯人の親切にしてくれる行動によって親近感を持つ、という倒錯した関係を意味する。現在の韓国政府は、北朝鮮の核保有で脅迫されているにも関わらず、北朝鮮へ親近感を示すという不思議な心理状態である。まさしくストックホルム症候群である。

     

    (2)「2018年に韓国の特使団が平壌を訪れたとき、金正恩は特使団に、核兵器はもちろん通常兵器も韓国に向けて用いないことを確約したという。これを聞いて韓国人が安心したら、ストックホルム症候群に陥るのだ。対北ビラ散布禁止法は、韓国人がストックホルム症候群に陥っていることを示す事例だ。韓国の首都圏が、北朝鮮のミサイル攻撃に対して無防備な状態に置かれているにもかかわらず、追加のTHAAD(超高高度防衛ミサイル)を配備せず、米国主導のミサイル防衛に参加しないという「三不合意」は、ストックホルム症候群のもう一つの事例だ」

     


    文政権は、北朝鮮だけでなく中国に対してもストックホルム症候群の症状を見せている。「三不合意」とは、次の三点である。

    1.米国のミサイル防衛(MD)体制に加わらない
    2.韓米日安保協力が三カ国軍事同盟に発展することはない
    3.THAAD(サード)の追加配備は検討しない

     

    中国が韓国へミサイル攻撃の照準を合わせているのに、韓国は中国へ「無防備」を誓うという異常な約束である。国家としての体裁を失った敗北宣言をしたようなものだ。文政権は、こういう国を売り渡すような行為をしているのである。

     

    (3)「ストックホルム症候群は、人質が犯人に同調して感化され、犯人を弁護するという非理性的な心理現象だ。対北融和政策を行えば、いつか平和が実現すると期待しているのが、韓国版ストックホルム症候群だ。人質状態を抜け出すため努力するよりも、北朝鮮という人質犯の善意に期待しているのだ。北朝鮮の非核化を追求して人質状態から抜け出そうと思うのなら、国全体が人質状態にあることを認めなければならない。まず、北朝鮮の核武装によって韓半島非核化共同宣言がずっと前に破棄されたと認めることから始めるべきだ」

     

    下線部分は、文政権の主張していることである。北朝鮮への愛を示せば、北が応えるという善意の期待だ。北朝鮮が、このような善意を持つ国家ならば、約束を反故にして核開発を秘かに行うはずがない。韓国は、こういう厳然たる事実を受入れなければならない。北朝鮮は、韓国に危害を加える人質犯であるのだ。

     

    (4)「(南北)非核化共同宣言は、韓半島に非核時代がやって来たと錯覚させ、北朝鮮に核兵器を作る時間を稼がせた。30年が経過した今、共同宣言が北朝鮮の違反により紙切れと化した。北朝鮮は、核保有国の地位を認めさせ、南北関係において主導権を握り、北朝鮮主導の赤化統一を達成しようと考えている。北朝鮮は、自由で豊かな韓国が鼻先にあるということ自体が、閉鎖された北朝鮮の体制に対する脅威だから、韓国をなくそうとしているのだ」

     

    北朝鮮は、韓国を侵略した相手である。その相手が今度は、核開発して韓国を脅かしているのである。韓国制圧が目的だ。朝鮮半島の非核化という要求で、在韓米軍の撤退を要求する。その空白期に、南北統一を狙う魂胆である。文政権は、それが分からない。あるいは、承知で北に肩入れしようとしているのかも知れない。北が核を保有しながら、南北統一を主張するのは「クセ玉」である。

     


    (5)「先日来韓し、峨山政策研究院を訪問した米国のビーガン国務副長官は、北朝鮮が核を放棄しない場合、韓国と日本が核武装する可能性があると語った。これは、北朝鮮が非核化しなければ韓国と日本の核武装を容認することもあり得るということだと解釈できる。冷戦時代に米国は3万発、ソ連は4万発の核兵器を持っていたが、これは力の均衡をもたらし、米ソ間の冷戦が終わることになった。韓国も、北朝鮮の核による人質状態から解放されて真の平和を実現したいのなら、韓半島で力の均衡を追求すべきだ

     

    下線部は重要である。韓国が北朝鮮と軍事的に対等になるには、韓国に米軍の戦略核を置くことも必要である。それを、明言して北朝鮮に核開発が無意味であることを知らせることだ。米国シンクタンクが提案した、日米豪韓の共同戦略の展開も必要であろう。

     

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    韓国、「近視眼」文在寅2つの弱点、金正恩は南北対話に「応じない?」

     

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    文在寅(ムン・ジェイン)大統領の任期は、あと15ヶ月である。文氏は、この短い期間に南北対話を実現させて、大統領のレガシーとしたいはずである。この「文構想」は、実現するだろうか。

     

    大きな前提は、米バイデン政権の北朝鮮政策が具体化することだが、米国側は北朝鮮懐疑派で占められている。トランプ政権のようなトップダウン外交ではないことを認識すべきである。

     

    次は、北朝鮮が文政権を信頼しなくなっている点だ。ベトナム・ハノイの米朝会談では、文氏の甘い見通しが外れ、金正恩(キム・ジョンウン)氏が屈辱を味わった。2回も南北対話をしたが、目立った成果はゼロである。3回目の南北対話では、金氏がソウルへ行かざるを得ない。それは、独裁者にとって大きなリスクを伴う。北朝鮮国民が過大な期待を持ち、大きな成果を求めるからだ。

     

    こういう状況を考えると、早期の南北対話再開は難しいであろう。北朝鮮は、文氏の二つの弱点を知っているからだという。一つは、残り任期期間の少なさである。約束しても実行の保障がないのだ。もう一つは、北朝鮮が韓国を脅せばなんらかの見返りがあることを知ってしまったことである。南北対話をするよりも、この方がメリットのあるという判断をしても不思議はない、というのだ。

     

    『朝鮮日報』(2月12日付)は、「金正恩は文大統領の二つの弱点を知っている」と題する寄稿を掲載した。筆者は、マイケル・ブリン元ソウル外信記者クラブ会長。

     

    韓国政府は、北朝鮮を交渉のテーブルに復帰させるという根本的目標に戦略的観点が欠けている。北朝鮮を対話に引き入れたいというのは良いアイデアのように見える。だが、本当にそうだろうか。事実を言えば、北朝鮮は和解に関心がないというのは極めて明白だ。数十年努力したが、何も変わらなかった。

     

    (1)「南北対話(の前提)は、北朝鮮の価値観が変わらないといかなる目標にも到達し得ない。それは、必然的に金日成(キム・イルソン)の遺業に逆らうことになる。彼の孫にそれはできないというのを、今では全ての韓国国民が理解するようになったと思う。南北対話の目的とは、簡単に言えば戦争を防ぐことだ。防御のためのものという意味だ。そしてこの総体的防御には、軍事的にだけでなく、韓国の民主主義を損なわないことも含まれる。北朝鮮との真の和解は、必ず民主的価値に基づいて行わなければならず、韓国自ら民主的価値を守ることができなければ、真の和解の価値もまた損なわれるのだ」

     

    北朝鮮が、価値観を変えない限りいかなる南北対話も成功しない。この価値観を返させるには、韓国の民主主義の価値観を北へ教えることだ。それが、北朝鮮の価値観を変えるきっかけになろう。

     


    (2)「もし文大統領が金正恩に「韓国の体制では国民の権利を保護しており、私が望んでいるからといって全てはできない。私は法に従わなければならない。それが民主主義だ」と語ったら、対話の再開はできないだろうが、韓国の価値を強化し、独裁者を教育したことだろう。先まで見通すと、このようにやることの方が重要だ。韓国政府の顕著な特徴の一つは、長期的戦略がほとんどないという点だ。北朝鮮に対する長期的アプローチ法がないというのも明らかだ。5年単任制の大統領は未来の成果に対する功績を認めてもらえない。韓国では、政治だけでなく他の分野のリーダーも、前任者の成功を引き継ぎたがらない」

     

    韓国には、北朝鮮への長期的戦略がないことである。超党派で話合われたことがないから、政権が代わるたびに右往左往する。安全保障政策の一環として、超党派で対北朝鮮の長期戦略を立てれば、北朝鮮も変わらざるを得まい。

     


    (3)「だから、政策を作る人々は、深い戦略的要因よりも短期的・戦術的利点を優先視したいという誘惑に陥る。逆に金正恩は、戦略的に考えることができ、目の前の和解を追う韓国の切迫感を操縦できる。加えて金正恩は、この「操縦」がかなりうまい。よく知られている通り対北ビラ禁止法は、金正恩の妹、金与正(キム・ヨジョン)が脱北者を「人間のくず」と呼んで開城工業団地の連絡事務所ビルを爆破した直後に出てきた。韓国の対応は「泣く子に乳を飲ませる」ということわざによるもののようだ。それは失策だった。良き養育の第一の原則を忘れている。「あしき行動に補償を与えたら、あしき行動を奨励するだけ」という原則だ。

     

    韓国の「5年単位」の対北政策に対し、北朝鮮は独裁政権ゆえに腰を据えて韓国を操縦できる時間的なゆとりを持っている。この差によって、韓国はキリキリ舞をさせられているのである。

     

    (4)「金正恩は今、文大統領の二つの弱点を知っている。時間があまりないということ、そしてあしき行動にも喜んで補償しようとすることだ。大統領が望む突破口を用意するには、1年しか残っていない。これまで見てきたように、そうした突破口は開かれないだろう。韓国政府は、この事実を悟る前に、北へまた何を与えようとするのだろうか」

     

    このパラグラフは、重要な点を指摘している。文政権の対北二大弱点である。

    1)文大統領の時間があまりないこと

    2)北朝鮮の悪しき行動にも韓国は喜んで補償しようとすること

     

    この二点を見ると、文氏の対北政策は失敗することが分かるであろう。

     

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