勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: 欧州経済

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    9月20日の香港株式相場が急落した。ハンセン指数は前週末比で一時4%超下げて2万4000の節目を下回る場面があり、終値は2万4099と昨年10月以来の安値となった。原因は、中国恒大集団の経営の先行き懸念が深まっていることだ。同社は、過剰債務と資金繰り不安に揺れており、投資家がリスク回避姿勢を強めたもの。一葉落ちて天下の秋を知る、である。

     

    中国本土投資家は、中秋節の連休に伴い16~22日は証券相互取引を通じた香港株売買が休止となっている。このことも、ハンセン指数の下げ幅を大きくしたと見られるが、恒大集団の経営自体に改善の動きはない。

     


    中国恒大は9月23日、8350万ドルの社債利払いが期日を迎える。同29日には4750万ドルの利払いが控える。30日以内に利払いを履行できなければ、デフォルト(債務不履行)になる、切羽詰まったところへ追込まれている。20日正午までに株価は一時19%急落した。2010年5月以来、約11年ぶりの安値を付けたが、これはデフォルトを織込んだ相場と見られている。

     

    『日本経済新聞 電子版』(9月20日付)は、「欧州株全面安、中国・恒大不安が波及 独4カ月ぶり安値」と題する記事を掲載した。

     

    9月20日の欧州株式相場は、ほぼ全面安の展開になった。過剰債務で資金繰り不安が強まっている中国の不動産大手、中国恒大集団の経営不安を背景に同日の香港株が急落した流れを引き継いだ。ドイツの主要40銘柄でつくる株価指数DAXは一時3%下げ、取引時間中としては5月19日以来ほぼ4カ月ぶりの安値水準をつけた。

     

    (1)「欧州株は現地時間の午後にかけて一段安となり、主要国の株価指数は前週末比で2~3%程度下げて推移している。フランスのCAC40、英FTSE100種総合株価指数はそれぞれ7月半ば以来、約2カ月ぶりの安値水準をつけた。金融や機械、自動車など幅広い銘柄が売られている。同日の香港市場ではハンセン指数が年初来安値を更新し、恒大集団が一時2割安と急落した。中国の金融や不動産市場の先行き不透明感から、運用リスクを回避する売りが膨らんだ。米株価指数先物も大幅安になっている。日経平均先物も3万円代を割り込んで推移している」

     

    米国でも恒大問題を嫌気して、一時500ドルもの値下がりに見舞われた。欧州と中国の政治関係も、冷え切っている。新疆ウイグル族の人権弾圧に対してEU(欧州連合)が制裁を科すと、中国もEU要人に報復制裁して一挙に関係は悪化している。7年越しで署名にこぎ着けたEU・中国の包括投資協定のEU側批准審議は無期限棚上げになった。EUにとっては、もはや落日の趣が強い中国経済へ魅力を感じない面も大きい。

     

    こういう状況下での中国恒大の経営不始末問題である。EU側は、一段と中国経済への懐疑的な見方を強めることになろう。中国経済の核心部分である不動産開発企業の経営蹉跌は、中国経済の終わりを告げる晩鐘であろう。

     

    (2)「恒大集団は23日以降に発行した社債の利払い日が相次ぎ到来するため、資金繰りに行き詰まるとの懸念が高まっている。香港不動産大手の株価も中国政府が統制を強めるとの見方から急落しており、恒大発の不安が世界の株式市場に波及している」

     

    中国政府は、恒大集団に対する姿勢を全く見せずにいる。環球時報の「名物」編集長によれば、恒大は潰れても中国経済に影響なしと豪語している。実際に、どういう影響が出るか、最後の場面へ向かっている。

     


    『日本経済新聞 電子版』(9月20日付)は、
    「香港株が急落 中国恒大問題に深まる懸念」と題する記事を掲載した。

     

    (3)「恒大集団は一時2割近く下落。同社への貸付金が金融機関の中で最大と伝わった中国民生銀行も1割超、下げる場面があった。恒大集団の取引先の金融機関や、他の不動産株にも売りが広がっている。広州富力地産など、財務基盤が弱いとされる不動産株も売りが目立った。ほかにも中国ネットサービスの騰訊控股(テンセント)など、ハンセン指数を構成する主力株にも売りが及んだ。恒大集団を巡っては前週、20日に控える融資の利息を支払えない見込みなどと伝わり、資金繰り不安が一気に広がった。同社は23日に米ドル建てと人民元建て社債の利払いを控えるとされる」

     

    恒大は、9月23日に8350万ドル、同29日に4750万ドルの利払いが控えている。合計で1億3100万ドルだ。現状では支払い不可能であろう。その際の反動は大きいに違いない。

     


    (4)「仮に恒大集団が経営破綻すれば、取引が深い下請け業者の業績や、物件を購入していた消費者の家計資産を圧迫する。
    恒大集団向けの融資が焦げ付いた金融機関や、同社債の保有が多いとされる米欧投資家が損失を補塡するために他の資産を投げ売りし、グローバル金融市場に悪影響が及ぶ可能性が高まってくるそんな不安を反映してか、市場参加者のリスク回避はほかの市場にも広がっている。20日は中国本土や台湾、韓国が休場だったが、東南アジアなど中国と関係が深く経済基盤の相対的に弱い国の株価がつれ安を演じた。商品市況の悪化を警戒する声も出ており、外国為替市場では新興国通貨とともに資源産出国オーストラリア(豪)ドルなどに売りが膨らんだ」

     

    恒大集団の問題は、グローバル市場への悪影響を広げ、中国経済の信頼を一挙に引下げるであろう。これで、中国経済が米国を追い抜くという、これまで流布されてきた「寝言」は、全て消え去るに違いない。

     

     

     

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    中国の習近平国家主席は7月1日、中共100周年で西側諸国へ「宣戦布告」し、絶対に屈服しないと宣言した。これに呼応するように、EU(欧州連合)議会と英下院外交委員会が、来年の北京冬季五輪への外交官などの出席ボイコットを呼びかける決議(EU)と報告書)英下院外交委員会)を発表した。中国にとっては、とんだ「やぶ蛇」になった感じだ。

     

    『中央日報』(7月9日付)は、「欧州議会、香港の人権が改善されなければ『北京五輪ボイコット』決議」と題する記事を掲載した。

     

    欧州議会が香港の人権状況が改善されなければ、来年北京冬季オリンピック(五輪)をボイコットするように加盟国に勧告する決議案を成立させた。

     


    (1)「AFP通信によると、8日(現地時間)欧州議会で中国政府が香港やチベット、新疆ウイグル自治区、内モンゴル自治区などの人権状況を検証することができるように改善したと立証しなければ、政府代表団や外交官の北京五輪出席の招待を拒否してほしいと欧州連合(EU)と加盟国に促す決議案が議決された」

     

    EU議会は、北京冬季五輪への政府代表団や外交官の出席拒否をEU各国へ促す決議を行った。選手ではない。

     

    (2)「議員578人が決議案に賛成して29人が反対し、73人は棄権した。決議案には香港反中メディア「蘋果日報(アップル・デイリー)」が「強制廃刊」されたとし、これを強く批判する内容が盛り込まれた。蘋果日報の廃刊をめぐり「香港の自由社会を解体し、報道機関と表現の自由を抹殺する中国当局のもう一つの措置だった」と批判した。

     

    EU議会の決議案は、85%の議員が賛成するという圧倒的多数で可決された。中国当局は、香港紙『アップル・デイリー』を廃刊に追込んだが、この無謀な行為へ痛烈な反対意思を表明している。こういう中国が、平和の祭典である五輪を開催する資格がないというもの。

     


    (3)「決議案は香港の人権侵害状況に責任のある個人と団体を制裁するようにEU加盟国に促す一方、中国に香港国家安全保障法の廃止を求めた。また、英国・オーストラリア・カナダが香港市民に移住の機会を提供した点を歓迎し、EU加盟国も香港の民主活動家と政治指導者の移住に協力するべきだと促した」

     

    EU決議は、英国・オーストラリア・カナダが香港市民に移住の機会を提供した点を歓迎した。EUは、西側諸国の一翼として中国の人権圧迫へ鋭く対立する姿勢を明確にした。一方、英国下院も人権圧迫を理由にして、北京冬季五輪への一部ボイコットを提案した。

     

    『大紀元』(7月9日付)は、「英下院委員会、ウイグル問題で中国への制裁強化求める 北京五輪ボイコットも」(大紀元)と題する記事を掲載した。

     

    英下院外交委員会は7月8日に提出した調査報告書で、新疆ウイグル人の人権問題に対して政府がより強い制裁を実施し、2022年北京冬季オリンピックの一部をボイコットするよう求めた。

     

    (4)「37ページに及ぶ同報告書は、中国共産党政権が新疆ウイグル自治区で「人道に対する罪」と「ジェノサイド」を行っていると非難し、英政府に、この暴挙を制止するための具体的な政策方針を提言した。外交委員会は、ジョンソン政権に対して、国際刑事裁判所(ICC)を通じて新疆ウイグル自治区での人権問題を捜査することを提案した」

     

    英下院外交委員会の報告書は、英政府に対して中国が新疆ウイグル自治区で行っている犯罪捜査をICCへ申入れるように提案している。こういう「犯罪国家」の開催する北京冬季五輪は、違法という認識であろう。

     


    (5)「報告書は、中国当局はウイグル人住民に対して「強制労働、再教育施設での恣意的拘禁、ウイグル文化の消滅、レイプ、強制不妊、ハイテク技術による監視」などを実行しているとした。「中国当局による深刻な人権侵害の証拠には反論の余地がない。ウイグル人に対するこれらの行為はすべて中国の中央指導部が承認している」とした」

     

    中国当局による新疆ウイグル自治区での犯罪行為は反論の余地がない自明のことと指摘している。

     

    (6)「外交委員会のトム・トゥーゲントハット委員長は、「英政府が議会の決定を認め、政府の対応を強化すべきだ」と示した。報告書は、英政府が「新疆綿」の輸入・取引禁止令を衣料品業界から他業界に拡大するよう求めた。同時に、来年の北京冬季オリンピックの開幕式と閉幕式に、同国高官を派遣しないほかに、英企業は同大会のスポンサーにならないよう求めた 

     

    報告者は、政府高官が北京冬季五輪の開会式や閉会式へ出席しないように要請している。英国の外にEU各国の政府関係者の多くが欠席すれば、中国政府の受ける打撃は大きくなる。

    中国政府は、これを恐れて東京五輪には全面協力すると発言している。北京冬季五輪で、日本政府が欧州へ同調して欠席しないように釘を刺しているのだ。

     

     

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    中国は、G7首脳会談で包囲されているが、これを突破すべく独仏首脳とのテレビ会談を行った。だが、中国のアキレス腱である人権問題で溝が深く、中国の思惑通りに事態が進む可能性はない。

     

    『時事通信』(7月6日付)は、「中国の人権に『深刻な懸念』習主席と会談―独仏首脳」と題する記事を掲載した。

     

    ドイツのメルケル首相とフランスのマクロン大統領は7月5日、中国の習近平国家主席とテレビ会談を行い、中国の人権状況に「深刻な懸念」を表明した。仏大統領府が明らかにした。メルケル、マクロン両氏は習氏に対し、新疆ウイグル自治区でのウイグル族の強制労働を根絶するよう求めた。

     


    (1)「ただ、独政府の声明は中国の人権に関して言及せず「欧州連合(EU)と中国の関係の現状について意見交換した」と説明するにとどめた。この他、中国市場へのアクセスやミャンマー、イラン情勢、新型コロナウイルスワクチンなどについても協議した。新疆をめぐっては、EU欧州対外活動庁(EEAS)も1日、ウイグル族の収容所とみられる「再教育施設」や強制労働について深刻な懸念を示す声明を発表した。これに対し、中国のEU代表部は2日、EUの声明は「事実を無視」しており、強く反対すると反論している。

     

    中国の人権問題が、EUとの間では喉に刺さった「トゲ」になっている。EUにとっては、絶対に見逃すことのできない根本問題だけに、中国としては立ち往生させられた形である。中国も妥協はできず結局、これが引き金になって溝を深めるであろう。

     


    (2)「この問題ではフランスで1日、強制労働で得た新疆の綿を使っているとNGOからの告発を受け、ユニクロが捜査対象となっていることが明らかになった。欧州と中国の間で緊張が高まっており、日本企業も無関係ではいられなくなっている」

     

    フランスは、新疆ウイグル族の人権弾圧に強硬姿勢を取っている。日本のユニクロもこれに巻き込まれている。

     

    (3)「中国の習近平国家主席は、「欧州が戦略的自主性を具体的に表すよう望む」と強調した。中国外務省が発表した。独仏首脳は6月の先進7カ国首脳会議で対中包囲網形成を目指したバイデン米大統領に対し温度差を示しており、中国が切り崩しを図った形だ。習氏は世界情勢に関し、新型コロナウイルスの感染状況が依然深刻で、今後の経済回復も不透明だと指摘。「中国と欧州は共通認識や協力を拡大し、世界的な挑戦に適切に対応するため重要な役割を発揮することを希望する」と主張した」

     

    習近平氏は、「欧州が戦略的自主性を具体的に表すよう望む」と米国との間に溝を掘るような動きをしているが無駄である。中国は、EUが米国に強制されているような誤解を与える発言をすると後々、EUからしっぺ返しを受ける羽目となろう。

     


    『大紀元』(7月7日付)は、「欧州各国大使が中国側と激しい応酬 外交関係などめぐり 北京の国際フォーラムで」と題する記事を掲載した。

     

    北京の精華大学で開かれた「世界平和フォーラム」では4日、欧州各国の駐中国大使と中国の出席者がEUと中国の関係を巡り、激しい応酬を繰り広げた。

     

    (4)「EUのニコラス・シャピュイ駐中国大使は、EUと中国がここ10数年来、相互に理解し、信頼し合う空間が狭まったと指摘した。「北京はますます傲慢で横柄になっている。これには失望した」という。また、現在凍結されている中国EUの投資協定について、「欧州議会の議員への制裁を解除しなければ、前進は難しい」と新疆ウイグル人の人権問題をめぐる中国の行動が問題だと指摘した。イタリアのルカ・フェラーリ駐中国大使は「中国への不信感は強まっている。これは戦狼外交と関係がある」と中国の強硬な外交姿勢を批判した」

     

    下線部のように、EU側ははっきりと中国へいいたいことをズバリと言い切っている。これは、珍しいケースである。EUが、最早中国へ遠慮することのない姿勢を見せていることで、画期的である。

     


    5)「欧州の外交官らが中国の戦狼外交と新疆ウイグル人への人権弾圧に懸念を示したのに対し、中国の学者は欧州が中国を敵とみなしたから、関係が悪化したと反論した。フォーラムで、米国の臨時代理大使ウィリアム・クライン氏は、世界中の民主国家は皆「頑固な中国(中国共産党)と破壊的なロシア」に直面していると述べた。英国のキャロライン・ウィルソン大使は、「英国は自分のやり方を中国や共産党に押し付けたりはしない。中国にも、自分のやり方を他人に押し付けないことを願っている」と述べた。

     

    下線部の中国側の言分は、極めて消極的である。完全にEUに言われっぱなしになっている。人権問題がテーマとなれば、中国は不利に決まっている。

     


    (6)「中国国務院のシンクタンク、中国社会科学院欧州研究所の江時学前所長は、「欧州には独立した外交政策があり、アメリカに盲従していないと思っているのか」と各国の大使に質問した。EUのシャピュイ大使は「EUは独立した外交政策を採用している」と即答し、「私はワシントンの言うことを聞いてない」と冗談を交えた。そして「アメリカもEUの言いなりになっていない」とお互いの政策が独立していることを強調した」

     

    中国は、EUが米国に追随していると見ている。欧米は、「血は水より濃し」であって、最終的には意見の一致を見る価値構造だ。中国は、この事実に気付かず、米欧間にくさびを打ち込もうと無駄な努力をしているのである。

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    中国政府が、スパイの基地として設置してきた孔子学院が、オランダやカナダから閉鎖を迫られている。「価値観の相違」を理由にして受入れを拒否されているからだ。米国バイデン大統領は、世界に向けて「民主主義の価値を守る闘い」を宣言しており、民主主義国は中国の人権弾圧政策に違和感と警戒感を示している。

     

    『大紀元』(6月26日付)は、「オランダ教育相、孔子学院との提携停止呼びかけ 複数大学が中国軍大学にも協力」と題する記事を掲載した。

     

    オランダのイングリット・ファン=エンゲルスホーフェン教育・文化・科学相はこのほど、中国の孔子学院(CI)が学問の自由を侵しているとし、オランダの大学に同学院との提携をやめるべきだと呼びかけた。16日の議会で孔子学院に関する質問に書面でこう回答した。オランダの独立調査報道メディア「Follow the Money」は57日、中国共産党との提携は経済的損失をもたらすだけでなく、学問の自由も制限を受けていると報じた。その後、同国の政党「キリスト教民主アピール」が議会で孔子学院について問題提起した。

     


    (1)「現在、オランダにある孔子学院は2校だ。それぞれフローニンゲン大学とザウト応用科学大学と提携している。オランダ最古の高等教育機関、ライデン大学は、2019年に契約満了をもって、同大の孔子学院を閉鎖した。オランダ放送協会(NOS)は5月、フローニンゲン大学の中国人教授は孔子学院との契約書で、「中国のイメージを損なう言動をしない」と約束したことを報じた。また、同教授の報酬の一部は中国政府教育部(文部科学省に相当)傘下の国家漢語教育指導弁公室(国家漢弁)から支払われている事が分かった。国家漢弁は孔子学院の本部でもある」。

     

    現在、オランダには孔子学院が2つの大学に附設されている。下線のように、中国に反対することを教えないという契約が交わされている。つまり、中国の政治的宣伝機関である。

     

    (2)「その後、フローニンゲン大学は、孔子学院との提携継続に反対する署名活動を開始した。これを受け、同国のエンゲルスホーフェン教育相は議会の質問に対して、「フローニンゲン大学は国家漢弁から資金提供を受けている中国語と文化の講義を中止する予定だ」と書面で答弁した。同大学も「国家漢弁」との契約を更新しないと表明した。契約は2016年からの5年契約となっている」

     

    フローニンゲン大学は、2021年の契約満了をもって閉鎖する。

     


    (3)「表向きで中国語教育の普及を目的とする孔子学院は、米連邦捜査局(FBI)から「学術活動を破壊し、学問の自由を損なっている」と指摘され、捜査の対象にもなっていた。中国共産党政権は孔子学院を巨大経済圏構想「一帯一路」の教育アクションの重要部分に位置付けている」

     

    孔子学院は、一帯一路プロジェクトと関連づけられており、教育宣伝機関としての「宣撫工作」の任が与えられている。日本にも二桁の孔子学院が設置されている。日本は、この孔子学院から被害を受けていないのかどうか。気懸りである。

     

    (4)「オランダでは孔子学院以外にも、中国の大学との学術交流が問題となっている。3月26日、オランダのデルフト工科大学(TUD)は同校が中国軍とつながりのある中国の4つの大学と協力しているとのレポートを発表した。デルフト工科大学は、オランダで最も古く、最大の総合工科大学である。設立以来3人のノーベル賞受賞者を輩出しているオランダを代表する研究型工科大学であり、多くの高等機関において高い評価を得ている世界トップレベルの名門校の1つである。航空宇宙工学科をはじめとする9つの学科で構成されており、1万5000人を超える学生と、2700人以上の研究者が在籍している。

     

    中国軍は、オランダで最も古く最大の総合工科大学であるデルフト工科大学へ食込んでいる。ここから、貴重な研究成果を窃取する基礎をつくっていたのだ。

     

    (5)「同大学の科学者はしばしば中国の研究者と協力して、中国軍に利益をもたらす技術の研究行っている。デルフト工科大学は、中国の「国防七大学」に数えられる北京航空航天大学、北京理工大学、ハルビン工業大学、西北工業大学と共同研究を行っている。デルフト工科大学のレポートによれば、過去15年間、同大学はこの4大学と学生交換、研究協力などの協定を締結している。特にデルフト工科大学の航空宇宙工学部もこの4大学と協定を締結しているという」

     

    豪シンクタンク「オーストラリア戦略政策研究所」は報告書で、中国の「国防七大学」は民間大学ではあるが、中国軍と密接な関係があり、その研究予算の少なくとも半分は、ミサイルや顔認識技術、軍用機や衛星の開発などの軍事研究に費やされていると指摘した。オランダは、こういう軍事目的に研究を中心とする中国の国防七大学の研究員を受入れていた。

     


    『大紀元』(6月26日付)は、「カナダの地方政府が孔子学院の閉鎖を決定、中国総領事が『ロブスター輸入禁止』で脅迫」と題する記事を掲載した。

     

    カナダのニューブランズウィック州のドミニク・カーディ教育長官は21日、同国議会の公聴会に出席し、同州が孔子学院の閉鎖を決定した後、中国総領事館から経済的な脅迫を受けたと証言した。

     

    (6)「カーディ教育長官は、下院のカナダ・中国関係に関する特別委員会(CACN)の公聴会で、孔子学院は中国共産党の関連組織で、カナダの教育界にそのイデオロギーを浸透させようとしていると批判した。このため、ニューブランズウィック州は2022年の契約終了とともに、孔子学院との協力関係を停止することを決定したとした。

     

    ニューブランズウィック州は、2022年末の契約を持って孔子学院との関係を終了する。

     

    (7)「在モントリオール中国総領事館の総領事がカーディ長官のオフィスを訪ね、直に交渉したという。「総領事は、孔子学院をめぐって私に圧力をかけようとしているとわかった。経済的な報復も含めた圧力だ。しかも、彼は、この件を学校教育の問題ではなく、両国の外交問題にまで発展させたい狙いだった」という。さらに、孔子学院を閉鎖することは「中国内政への干渉に関わる問題だ」と主張した。その結果、カナダ産ロブスターが中国で販売できなくなることも含めて、様々な影響が出ると話した」


    中国総領事は、孔子学院の閉鎖について「内政干渉」という口実を使って、カーディ長官へ圧力を掛けた。具体的には、カナダ産ロブスター輸入が困難になるという脅しである。こういう「戦狼外交」を連発して、相手国を威嚇するのだ。いかにも中国的である。

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    中国の戦狼外交は、あちこちに敵を作って歩いている。それが、国威発揚と誤解している結果だ。なぜ、他国へ傍若無人の振る舞いをするのか。それは、GDPが世界2位になったことと無縁でない。中国社会における人間の価値を計る物差しは、相手の所有する財産が基本である。こういう物でしか測れない価値基準が、現在の中国を尊大にさせているに違いない。

     

    中国が、GDPで世界2位になった2010年以降は、習近平氏が国家主席に就任した2012年以降と重なり合っている。こうしたGDPを背景にして、中国の民族主義は暴走を始めた。

     


    『日本経済新聞 電子版』(6月22日付)は、「インドと欧州を近づけた中国、『政冷経熱』の終焉」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「距離を縮めるインドと欧州。2020年1月のブレグジットで欧州連合(EU)27カ国と英国に因数分解された欧州の側が、インドへの接近を競い合う構図である。54日、まず英国が首脳会談を開いた。58日はEUの番だ。インドとの首脳会議は従来、EU大統領や欧州委員長の役目だったが、今回は初めて27カ国首脳が顔をそろえた。関係強化の証しとばかり、英国とEUのそれぞれがインドと合意したのが、自由貿易協定(FTA)の交渉入りだ。英がまだEUの一員だった07年から計16回の交渉を重ねたが、ほとんど進展がなく、13年以降は中断したままだった」

     

    2013年以降、インドはEUとFTA交渉を中断したままだったが、この5月に英国とEUとそれぞれ交渉を始めることになった。そのきっかけは、中国の勃興にある。互いに中国の存在を意識して、経済面で「脱中国」を目指している結果である。

     


    (2)「インドは、2011年の対日本を最後に10年間も新規のFTAの発効がない。そのインドが、欧州との協議再開に動いた事情は、経緯を振り返れば明快になる。19年11月、大詰めだった東アジアの地域的な包括的経済連携(RCEP)交渉からの離脱を宣言した直後、ゴヤル商工相が「我々はEUとFTA交渉を行うべきだ」と口にした。土壇場でRCEPに背を向けたのは、貿易赤字の4割を占める中国からのさらなる輸入拡大を嫌ったためだが、その反動として、数少ない貿易黒字相手の欧州へと意識が向いたのは自然な流れだ」

     

    インドが、RCEPの調印寸前にUターンしたのは、中国の影響が高まることを警戒した結果である。インドが「脱中国」を実現するには、EUや英国とFTAを結ぶことを踏み台に関係を強化すれば、代替可能と見たのであろう。

     


    (3)「EUや英国にとって対インド貿易は赤字だ。しかも貿易総額は大きくない。域内貿易が6割を占めるEUにとってインドはシェア0.%、英国にとっても1.%にすぎない。13億人市場の潜在力は認めるにしても、FTAの優先順位が高いとは思えない。ではなぜ、欧州の側が熱心なのか。そこにはブレグジットの微妙なアヤが作用している」

     

    現在の欧州側の貿易構造では、インドのウエイトは僅かである。EUと英国において、いずれも10位以下である。それにも関わらず、なぜインドとのFTAを急ぐのか。

     

    (4)「起点は英国だ。EU離脱後、成長戦略の軸足をかつて植民地支配した英連邦へと回帰させ、豪州やシンガポールに接近した。とりわけ経済規模が最大のインドにはジョンソン氏が執着する。ブレグジット後に通商上の競争相手となった英国の動きをEUも看過できない。英が先行し、EUが追走しているのが、相次いだ首脳会談の図式といえる」

     

    英国の事情は、EUから脱退した後の貿易の穴をアジアで埋めざるをえない。とりわけ、将来のインド経済の成長に期待する部分が大きい。EUも事情は同じだ。英国がインドと有利な関係を結ぶならば、EUも傍観はできないのだ。

     


    (5)「以前のFTA交渉を座礁させた難題のひとつに妥協の余地が生じたのも大きい。13年の交渉中断はインド側が自動車部品やワイン、スピリッツなどの関税引き下げをかたくなに拒んだことが主因だった。一方のEU側もソフトウエア開発やアウトソーシングの受託、医療業務といった、インドが強みを持つサービス輸出や「人財輸出」への市場開放には消極的だった。反対の急先鋒(せんぽう)が英国だった。後のブレグジットにつながる移民労働者の急増や雇用流出に神経をとがらせるなか、インドにサービス市場を開放すれば、旧宗主国で英語圏の自国が最も影響を被るのが確実だったからだ」

     

    皮肉なことに、英国がEUに止まっていた時、EUはインドとのFTAに消極的だった。英国が反対したからだ。その英国がブレグジットして、インドへ接近し始めた。EUも刺激されてインドへ接近するという、漫画のような構図が生まれている。

     

    (6)「それら以上に重要なのは、やはり対中国だろう。中国はEUにとって域外で最大、英にとってもEUや米国に次ぐ3位の貿易相手だ。巨大な輸出市場としてはもちろんだが、コロナ禍では医療物資など輸入依存への危機感も高まった。世界が調達網の分散に動くなか、欧州にとって歴史的にも関係が深いインドはその代わりになり得る存在だ。ただし、あくまでそれは将来への期待にすぎない。モディ政権下のインドは、前回のFTA交渉時よりむしろ保護主義を強めており、譲歩を引き出すのは至難の業だ。それでもインドに近づくことで、中国をけん制する意味は大きい

     

    インドは、土壇場でRCEPに背を向けたように保護主義的になっている。それでも英国とEUは、中国をけん制すべくインドとのFTA交渉を始めざるを得ない局面である。中国が、インドと欧州を接近させた接着剤である。

     

     

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