勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: ドイツ経済ニュース

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    ウクライナは、ロシアの大軍10万の圧力を受け、NATO(北大西洋条約機構)へ必死の支援要請をしている。米英仏は、対ロシア政策で歩調を合せ軍備の増強を急いでいるところだ。その中でドイツが、ロシアへ気配りして中立を装うという予想外の行動を見せ、顰蹙(ひんしゅく)を買っている。

     

    ドイツは、ウクライナに対してヘルメット5000個を送ること。万一に備えて野戦病院を建設するというのだ。NATO主力メンバー国のドイツが、ロシア軍を前にして「逃亡姿勢」である。これでは、NATO存立の意味が問われる事態だ。ドイツの理由は、ウクライナへの武器供与がロシアとの対立を煽るとして拒否しているもの。ウクライナは、軽武装でロシアへ立ち向かえと言っているに等しい。

     

    ウクライナの首都キエフのビタリー・クリチコ市長は、独日刊紙『ビルト』に対し「言葉を失った」と失望を示した。クリチコ氏は、「われわれが対峙(たいじ)しているのが装備の整ったロシア軍で、いつ侵攻が始まってもおかしくないことを理解していない」とドイツを批判。「ヘルメット5000個なんて冗談もいいところだ」「次は何を送るつもりだ? 枕か?」と皮肉った。以上は、『AFP=時事』(1月27日付)が伝えた。

     


    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(1月24日付)は、「ドイツは信頼できる米同盟国ではない」と題する寄稿を掲載した。筆者のトム・ローガン氏は、米ニュースサイト・週刊誌『ワシントン・エグザミナー』の国家安全保障担当ライターである。

     

    ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナ侵攻に乗り出す気配が濃厚となる中、米同盟諸国の大半はウクライナ政府を支持し、北大西洋条約機構(NATO)加盟諸国の中で脆弱(ぜいじゃく)な国々を安心させる行動を見せている。しかしドイツは、ロシアの利益を欧米側の利益よりも優先するという、異なった対応を示している。

     

    (1)「ドイツ政府の対応からは、厳しい現実が分かる。それは、米国と第2次大戦後の民主的国際秩序が、中国・ロシアという2つの最も重大な安全保障上の脅威に直面する中で、ドイツはもはや信頼できる同盟国ではなくなったということだ。ドイツにとっては、安価なガス、中国向け自動車輸出、そしてプーチン氏を怒らせないことが、民主主義に支えられた同盟諸国の結束よりも重要なように見える。ウクライナの運命は、ドイツが担うべき責任の重さを伝えることになるだろう」

     

    ドイツには、米軍が駐留している。トランプ大統領時代、米独が対立してトランプ氏は、米軍をポーランドへ移転させると発表したことがある。これに困惑したドイツは、米軍の移転撤回を求めた経緯がある。このようにドイツは、米軍駐留の恩恵を受けながら、ウクライナへは軍事支援しないという、身勝手な行動を取っている。何か、韓国と似た面がありそうだ。

     

    (2)「独政府はウクライナへの武器供与を拒否し、さらにエストニアによるウクライナへの武器供与を阻止しようと活発な動きを見せている。英国はここ何日かの間に対戦車用兵器をウクライナに空輸し、ウクライナ情勢に関連した情報収集のため航空機の飛行を行っている。情報収集の飛行は、英国とウクライナを結ぶ最も直線的ルートであるドイツの領空を通過するルートで行われたが、兵器の空輸はドイツを迂回するルートを利用した」

     

    英国防省が、ドイツに領空通過の許可を求めなかったのは、ドイツがそれに応じるか拒否するかの選択を強いられるからだった。オラフ・ショルツ首相が率いるドイツ新政権は、対ロシア紛争から身を退いて、中立を装っている。それは、ロシア産の天然ガスと深い関係がある。ドイツを右顧左眄させている理由は、天然ガス供給である。

     

    (3)「ロシアから欧州に天然ガスを輸送するパイプライン「ノルドストリーム2」に関する独政府の対応も、ドイツの姿勢を明確に示す一例だ。ドイツの規制当局は、同パイプラインについて、関連企業による法令順守基準の達成が確認されるまで、運転開始は認められないと主張している。これは、パイプラインの即時運転開始を望むプーチン氏をいら立たせている。その見返りとして、プーチン氏に操られたロシア国営ガス会社ガスプロムは、既存の「ヤマル・ヨーロッパ」パイプラインでのガス輸送を、4週間超の期間にわたって通常と逆方向の流れに変えている。ロシアはまた、ウクライナ向けの一般炭の供給を3カ月以上にわたって停止している」

     

    ドイツが、ロシアに揺さぶられているのは、ロシア産天然ガス供給が大きな理由だ。ドイツは、脱原発でエネルギー事情が不安定である。原発を止めて天然ガスへ切り変えたので、ロシアの思う壺に落込んでしまった。脱原発という理想論へ走ってしまい、ロシアにまんまと裏をかかれる事態になっている。EUは、原子力をクリーンエネルギーに指定したほど。ドイツにおける脱原発の根拠が失われたのである。すでに、ドイツのエネルギーコストが高騰しており、競争力に陰りが出ている。

     


    (4)「プーチン氏のメッセージは明白だ。そのメッセージとは、ウクライナはロシア支持へと寝返るのが賢明であり、ドイツはノルドストリーム2の運転開始を承認するのが賢明だというものだ」

     

    ロシアは、ドイツとウクライナへ石炭と天然ガスで独占的な供給状態である。これを利用して、意のままに操縦しようとしている。ドイツは、この策略に乗せられている。表面的には、「紛争を好まない」と綺麗事を言っている以上、ドイツ駐留の米軍をウクライナ近辺へ移駐させて、ドイツの目を覚まさせることだ。

     

    (5)「ドイツはまた、国防費を国内総生産(GDP)の2%にするというNATO目標の達成を断念し、1.5%しか支出していないほか、国内でロシアの化学兵器に関する研究が行われることを容認している。そうした研究は、ロシアの反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏や元英国のスパイを標的にした事件のような暗殺計画を下支えする。ショルツ氏はまた、核兵器禁止条約でオブザーバーの立場を追求することを約束しており、NATOの核抑止力を漠然としか支持していない。こうした譲歩は、プーチン氏が長年求めていたものだ」

     

    ドイツが、NATO精神に沿わない動きをしているならばこの際、思い切って駐独米軍の完全撤退をして、NATOに貢献する国々の防衛を優先させるべきであろう。ドイツは、NATOに防衛して貰いながら、義務を果たさないのでは、ますます韓国に似てきた感じがする。

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    ドイツは、12月上旬にも新政権が発足する。環境と人権を重んじ、理想主義がにじむ左派リベラル政権である。気候変動対策で欧州をけん引すると意気込み、中国やロシアには人権で注文をつける姿勢である。北京冬季五輪への外交ボイコットに追随する可能性が出てきた。メルケル氏の「親中政策」には、大きな修正が加えられる。

     

    9月の総選挙で第1党になった中道左派・ドイツ社会民主党(SPD)と環境政党の緑の党、中道リベラルの自由民主党(FDP)の3党が24日、政権樹立で合意した。外相は、緑の党から出るとみられている。緑の党は、これまで中国に対して厳しい姿勢で臨んでいる。

     


    『ハンギョレ新聞』(11月26日付)は、「『中国は…』ドイツ連立政権の合意文に10回登場、対中政策変わるか」と題する記事を掲載した。

     

    ドイツでいわゆる「信号連立」政権樹立の交渉が終わり、ドイツの対中国政策の変化の可能性が強まったという指摘が出てきた。

     

    (1)「香港の英字紙『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』は25日、「社会民主党のオラフ・ショルツ代表が、緑の党および自由民主党との連立政権の樹立に合意した。これまで対中国強硬論を主張してきた政治家の相当数が内閣に参加することになるものとみられる」と報じた。特に同紙は「連立政権樹立の合意文には、中国に対する言及が10回ほど登場するが、新疆ウイグルでの人権弾圧問題と香港の基本権蹂躪、台湾状況などについての言及も含まれている」と報じた。いずれも、中国側が「内政」と規定し、外部からの介入に強く反発している内容だ」

     

    これまで、対中国強硬論を主張してきた政治家の多くが、入閣する見込みという。これは、中国にとって、極めて好ましくない現象である。ドイツ新政権が、ここまで対中政策を変えるのは、ドイツ国内の事情だけでなく、欧州全体の対中観の変化を示している。それは、同時に台湾への接近である。

     

    民主主義の友邦である台湾を支えることが、政治的にも経済的にも利益になるという判断が生まれてきたことと無縁でない。これが、台湾海峡の現状を守り平和を保つことにも役立つと考えるようになってきた現実を反映している。中国は、台湾にも欧州にも攻撃的な姿勢を強めているが、これにひるまず中国へ剛速球を投げ返す姿勢だ。10月には欧州議会が、台湾との関係を強化し「包括的かつ強化されたパートナーシップ」の確立を求める決議を採択しているほどだ。

     


    (2)「実際、合意文では「欧州連合(EU)レベルでの単一の対中国政策の一部分として、ドイツは民主的な台湾が国際機関に実質的に参加することを支持する」とし、「新疆ウイグル自治区の問題を含む中国の人権弾圧に対してより明確に発言し、香港の一国二制度(一つの国家に二つの体制)の原則が復旧されるよう促す」と強調している」

     

    合意文書では、新疆ウイグル自治区の問題や香港の一国二制度の原則復旧が取り上げられている。中国としては、とても応じられない内容だ。ドイツも中国も、ともに妥協できなければ対立するしかない。中国にとって、「親中のドイツ」が反中に転じる事態は、余りにも打撃の大きい変化である。

     

    (3)「次期政権の内閣のメンバーも、ドイツの対中国政策に変化が生じることを予告している。外相として有力視される緑の党のアンナレーナ・ベアボック代表は、「価値に基づく外交」を強調し、中国の人権問題について批判的な発言を続けていたことがある。財務相を担当するとみられる自由民主党のクリスティアン・リントナー代表も、前任のアンゲラ・メルケル首相の政権での穏健で合理的な対中国政策を攻撃していた」

     

    ドイツ新政権は、中国に対して厳しい要求を出すことは確実と見られる。これに対して、中国は当然、強くはね返すであろう。その結末は、北京五輪への外交ボイコットである。すでに、米英が「検討中」となっている。検討中とは、外交ボイコットへ踏み切る前提であろう。米英が踏み切れば、ドイツも追随する可能性が強まるであろう。

     


    (4)「『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』は専門家の言葉を引用し、「合意文に出てきた中国関連の表現は、ドイツ政府がこれまで使ってきた表現よりはるかに強力であり、習近平主席の統治下の中国の方向性に対するドイツ内の懸念が強まっているという点を反映したものとみられる」とし、「中国側が越えてはならない線だと規定した問題まで取り上げたことは、今後、これらの問題について、さらに公開の場で対応するつもりだということを示したもの」だと報じた」

     

    中国の示すレッドラインへ、欧州もドイツも挑戦して一歩も引かない姿勢を取っている。かつて欧州は経済的利益優先で、中国の人権問題へ目を瞑ってきた。その中国経済が落ち目になっている。「金の切れ目が縁の切れ目」は、古今東西の外交政策において現実のようである。

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    ドイツは、11月15日のコロナ感染者数が4万8508人とピークに達している。これに業を煮やした次期政権担当予定の3政党が、ワクチン未接種者に公共交通機関を利用させない強硬手段を法制化するという。

     

    これに引き比べ、日本は国民の協力もあって11月17日、全国の感染者数は204人、前週同曜日比で2名増加である。ここで日独比較論をする積もりはないが、改めて他国での猛威を見て気を引締めなければならない感じだ。

     

    英紙『フィナンシャル・タイムズ』(11月15日付)は、「ドイツ、未接種者を公共交通から締め出す法案提出」と題する記事を掲載した。

     

    ドイツで新型コロナウイルスの新規感染者が増加するなか、同国の次期政権を担う見通しの3党は、ワクチンを接種していない住民を対象とした制限を強化する法案を提出した。

    中道左派のドイツ社会民主党(SPD)、緑の党、ビジネス重視の自由民主党(FDP)が提出した法案には、公共交通機関の利用を制限する内容が盛り込まれている。SPD連邦議会議員団副団長のディルク・ウィーゼ氏は、「事実上、ワクチン未接種者を対象とするロックダウン(都市封鎖)だ」と述べた。

     


    (1)「SPD、緑の党、FDPはメルケル首相退任後の新政権発足を目指し、連立協議を進めている。9月の連邦議会選(総選挙)では3党合わせて過半数の議席を獲得した。ドイツは欧州連合(EU)の中でも未接種の住民の割合が高く、人口の約3割が新型コロナワクチンを接種していない。隣国のスイスやオーストリアと同様の状況にある。3党の法案では、バスや鉄道を利用する際には全員、感染検査の陰性証明書かワクチンの接種証明書、または新型コロナから完全に回復したことを示す証明書を提示しなければならない。また、職場にも同様の制限を課すことが提案されている

     

    次期政権は、左派であるが人口の3割がワクチン接種していない状況に業を煮やしている。個人意識が強いので、政府があれこれ言っても聞く耳を持たぬのであろう。時間が経てば感染者増えて自然に免疫ができるとはいうものの,その間の感染者が増えて大変なことになる。3党の法案では、公共交通機関だけでなく職場にも同様の制限を課すという。

     

     

    (2)「ドイツの新連立政権の樹立を目指す3党は先週、コロナ対策の緊急事態宣言を解除し制限を緩和する法案を議会に提出した。また法案では、各州は州内のホテルや店舗に閉鎖を命じる権限がないとしている。だが、国内で新型コロナの新規感染者数が急増するさなかに提出されたため、同法案は激しい批判にさらされた。15日には過去7日間合計の新規感染者数が10万人当たり300人を超え、過去最多を更新した。医療関係者によれば、集中治療室が逼迫しつつあるなか、治療を受けている患者の約9割はワクチン未接種だという」

     

    ドイツでは、感染者の9割がワクチン未接種者という。これでは、社会へ迷惑をかけているのだから、自己主張ばかりしてはいられなくなろう。

     

    (3)「ドイツで最もよく使われている接触確認アプリ「luca(ルカ)」の開発者によれば、10月はアプリ内の接触通知の72%がクラブとバーから出されたという。ドイツのシュタインマイヤー大統領は15日、ワクチン未接種者は自分の健康と公衆衛生をリスクにさらしていると述べ、接種を受けるよう呼びかけた。「まだワクチン接種をためらっている人には、この際はっきりと問いたい。これ以上どうすれば納得してくれるのだろうか」と」

     

    10月の接触通知は、72%がクラブやバーから出ているという。ドイツの大統領を嘆かせるほど、ワクチン未接種者が巷を徘徊しているのだ。ただ、ドイツの10月は「オクト-バー・フェスト」(ビール祭り)である。去年もドイツの感染者が激増した。新しいビールで騒ぐ気持ちもよく分かるのだが。

     

    (4)「オーストリアでは、ワクチンの2回接種を完了した人、または感染が確認され、回復した人以外は外出が禁止されている。これらの未接種者は食料品の買い出しなどの生活に必要な外出に限り、11回のみ認められている。この規制は12歳以上が対象となる。当局は、警察による確認を実施し、違反した場合は最高3600ユーロ(約46万7000円)の罰金を科すと警告している。オーストリアのネハンマー内相は「全国民がチェックされると思ってもらいたい」と述べた。オーストリアの保健当局は14日に1万1350人の新規感染者を確認し、人口当たりの人数では欧州で最悪となっている」

     

    オーストリアは凄いチェックである。違犯者は、約46万7000円の罰金を科すという。これでは、接種を済ませた方がはるかに楽だ。

     

    (5)「同国のミュックシュタイン労働・社会問題・保健・消費者保護相は、新たに導入された制限措置でも感染者数の上昇を抑えるには十分ではないと考えられるため、政府は17日により厳格な措置を発表すると述べた。バーやレストランなどを午後10時で閉店するといった規制案が検討されているという。政治家からは制限措置に対する反対の声が上がっている。オーストリアの右翼ポピュリスト政党、自由党のヘルベルト・キクル党首は、未接種者に対する制限措置を「コロナファシズム」と呼んで非難した。キクル氏は15日、自身が新型コロナに感染したことが確認された」

     

    オーストリアは、バーやレストランが午後10時で閉店する規制案を検討中という。未接種者に対する制限措置を「コロナファシズム」と呼ぶというほど、ワクチンを嫌悪している理由は何だろうか。コロナに感染して、病院など医療ティームに迷惑をかける方がはるかに、反社会的行為と思える。そこは、思想信条の違いなのだろう。

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    ドイツは、親中派とされるメルケル首相の退任決定と共に、中国へ厳しい姿勢を見せている。中国政府は、中国語や中国文化を世界へ普及する目的で始めた「孔子学院」設置が、実はスパイ機関やプロパガンダ(政治宣伝)でないかと疑われている結果だ。

     

    ドイツ教育大臣は、中国が孔子学院を通じてドイツの言論自由へ干渉しているとして、全国にある孔子学院閉鎖を求める事態になった。すでに、カナダや米国では、孔子学院閉鎖が進んでいる。ついに、ドイツへもこの波が及んできた形だ。日本でも、政府が実態調査を始めている。

     

    『大紀元』(11月1日付)は、「ドイツ教育大臣、孔子学院の全校閉鎖求める」と題する記事を掲載した。

     

    ドイツのカーリチェク連邦教育研究省大臣は、同国内に設置されたすべての孔子学院の閉鎖を求めている。独週刊誌「デア・シュピーゲル」が伝えた。カーリチェク大臣は、各関係大学の学長室と各州の教育部長室に送った書簡で、孔子学院の役割を再評価し、結論を出すよう指示した。

     


    (1)「10月下旬、デュースブルク・エッセン大学とハノーファー大学に設置された孔子学院がドイツ人作家らの著書『習近平伝』の2回のリモート読書会を中止した。中国政府関係者の介入があったという。このことを発端に、カーリチェク大臣は、19の大学にある孔子学院がドイツの高等教育機関に与える影響について、「受け入れられないものだ」と懸念を示した。同氏は、各大学に対して孔子学院との協力関係の見直しを要請し、連邦憲法擁護庁や連邦情報局と緻密に連携するよう助言した。ドイツでは大学は各州の管轄であるため、連邦大臣が大学に直接介入するのは、極めて異例だという。

     

    中国では、大使館を通じて外国へ種々の干渉を行い問題になっている。北欧では、中国大使が暴言を吐いたとして厳重注意を受ける事態まで起っている。昨今の「戦狼外交」の一環として行っているものだ。

     

    中国では、他国政府に対して威圧的発言をすることが、中国の国威発揚をもたらすと錯覚している。実は、これが中国への評価を下げていることに気づかないようである。中国の「お山の大将」意識が非難の的になっているのだ。

     

    今回の騒ぎは、中国がドイツ人作家らによる著書『習近平伝』について、2回にわたるリモート読書会を中止させたことが発端である。『習近平伝』が、中国を批判していると見たものであろう。神格化されている習近批判を、許さないというポリシーなのだ。

     

    (2)「『習近平伝』の3人の共同著者のうちの1人、長年、中国に駐在した週刊誌のエイドリアン・ガイジュ記者は、同書は中国政府を敵対視しておらず、バランスの取れた内容だと強調し、「習近平氏が望んでいるのは、バランスのとれた報道ではなく、中国国内のように、国際社会までも彼を個人崇拝することだ」と糾弾した。ラジオドイツによると、政治学者のアンドレアス・フルダ氏は、ドイツの大学に対して孔子学院との提携をやめるよう進言したという。同氏は、今回の読書会の中止は、許すべきものではないとしている」

     

    習氏は、すでに中国で神格化されている。それだけに、海外で批判されることは絶対に許せないということなのだ。

     


    (3)「ドイツ紙『ディ・ヴェルト』は、「孔子学はドイツに伸ばしてきた中国共産党の長い手だ」と形容した。孔子学院について、欧米では教育の名を飾った中国共産党のプロパガンダ機関だという批判が広がり、米国をはじめ閉鎖する大学が相次いでいる。日本には14校ある」

     

    中国4000年の歴史は、陰謀と策略の歴史である。真摯に物事を探求するという歴史がない結果であろう。気の毒と言えば、これほど気の毒な歴史もない。歴史に,自己反省するという自浄作用がないのだ。

     

    日本では、孔子学院が14私立大学に設置されている。文部科学省によると、大学が海外の機関と連携する場合、学位の取得に関係しなければ、国に許認可を求めたり、届け出たりする必要はない。このため、国は孔子学院の運営実態を把握してこなかった。

     

    今年5月以降、孔子学院を設置している各大学に対し、教育活動の自主性に配慮しつつ、孔子学院の教育内容や組織運営の状況について、情報公開を徹底するよう求めることになった。文科省や外務省など関係省庁が連携し、情報収集を進める方針を決めたもの。

     

    日本政府が対応を強化するのは、欧米諸国が孔子学院を中国のプロパガンダ機関とみなし、規制を厳しくしていることが背景にある。日本政府だけが、何もしないで放置し問題が起ったのでは遅いので、問題発生を未然に防ぐ狙いもあろう。 

     

     

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    習近平氏は、全権力を掌握して全てを自由自在に動かせる立場に上り詰めた。だが、過剰な住宅問題を解決できる力がなく右往左往している。中国の抱える新築の空き室で、ドイツ全人口8400万人を住まわせるスペースを持て余しているのだ。「あちら立てれば、こちら立たず」の矛楯に悩まされている。空室を防ぐには、固定資産税の実施が効くが、共産党幹部が全員、反対に回っている。みんな、欲得に目が眩んでいるのだ。

     

    過剰供給であれば、すぐに生産を止める。これが、市場経済の原則だ。中国は、この分かりきったことができないという大きなジレンマを抱えている。住宅建設を止めたら、土地を売却して財源に充当している中央・地方の財政が財源不足に陥る危険性が高まる。それだけでない。GDPの25%を占める関連産業の不動産開発・鉄鋼・アルミ・セメント・化学が連鎖倒産の危機を迎えるのだ。土地の扱いが、中国の未来を左右するという滑稽な局面に落込んでいる。

     

    米TV『CNN』(10月15日付)は、「空き室あふれる中国の『ゴーストタウン』 ドイツの全人口住める規模に」と題する報道をした。

     

    この数週間、資金繰りに窮する中国の不動産開発企業、中国恒大集団の話題が各国のメディアの見出しを飾り、投資家は同社の抱える巨額の債務が今後どうなるのか固唾(かたず)をのんで見守っている。ただ恒大の崩壊以前から、中国不動産市場の冷え込みを示唆する危険信号は灯っていた。全国各地に存在するとみられる膨大な数の売れ残り物件がそれだ。

     

    (1)「近年、問題は悪化の一途をたどっている。キャピタルエコノミクスのアジア担当チーフエコノミスト、マーク・ウィリアムズ氏の試算によると、中国不動産市場は依然として約3000万件の売れ残り物件を抱える。8000万人が暮らせるだけの住居が余っている計算で、これはドイツのほぼ全人口に相当する。さらに、購入はされたものの実際には誰も住んでいないとみられる物件が1億件ほど存在し、ざっと2億6000万人分の空き室を生み出している。こうしたプロジェクトにはこの数年で厳しい目が注がれるようになっており、中国の「ゴーストタウン」というあだ名までついている」

     

    厖大な売れない空室のほかに、投機目的で買われた未使用の住宅が控えている。これらを合計すると、ほぼ1億戸が存在しているという。本欄では、2017年時点で6500万戸、21%の空室と報じてきたが、18年以降にさらに積み上がって合計1億戸に達したのであろう。

     


    (2)「元々、中国において不動産とその関連部門は、国内総生産(GDP)の3割を占める重要な産業だ。建設業とそれに付随する業務の割合は「他の主要な経済国よりはるかに高い」と、ウィリアムズ氏は指摘する。過去数十年にわたり、これらの分野が牽引(けんいん)する形で中国経済は急速な成長を維持してきた。ただ最近では、これらの産業が抱えるリスクへの疑念も浮上。各社が開発計画の資金を莫大(ばくだい)な借金で賄っていることなどが理由とされる。負債が3000億ドル(約34兆円)を超える規模に膨らんだ恒大は持続不可能な成長をしてきた企業の典型だが、「苦しんでいるのは恒大だけではない」と、ムーディーズ・アナリティクスのエコノミスト、クリスティーナ・チュー氏は強調する」

     

    中国恒大が、過剰債務を抱える筆頭として騒がれている。だが、財務不安の不動産開発企業は、外にも存在する。GDPの4分の1が不動産開発関連需要とされるから、中国最大の産業であることは間違いない。

     

    (3)「同氏の最近の報告によれば、今年の上半期で中国の不動産会社12社が債務不履行に陥った。焦げ付いた資金の総額はおよそ192億人民元(約3400億円)に上るという。 これは1~6月期に中国本土の企業が支払えなくなった債務の20%近くを占める。全産業で最も高い割合だとチュー氏は語る。新型コロナのパンデミック(世界的大流行)から経済が再開する中で、建設業界もある程度は上向いたものの、好調が長く続くことはなかった。 この数カ月で価格上昇率や住宅着工件数、住宅販売といった指標は著しく低下したとチュー氏は分析。8月には床面積を基準にした不動産販売が、前年同月比で18%の減少を記録したほか、新築住宅価格も同3.5%増と、パンデミックからの回復後最も小さい上げ幅にとどまったという」

     

    債務不履行(デフォルト)に陥ると、裁判所でその後の再建が可能かどうか審査される。大きな企業は再生へ、小企業は見込みなしとして廃業になっている。恒大クラスは、再生策(企業分割と創業者追放)の可能性があるようだ。

     

    (4)「さらに、未完成物件の問題がある。中国の新築物件の約9割は完成前に販売が完了する。もし開発業者に問題が生じれば、その影響は買い手を直撃することになる。ウィリアムズ氏は、こうした状況が「当局が破たんした開発業者を再構築させながら、継続中のプロジェクトを進行させようとする強い動機となっている」と語る。 この数週間、政府もこの危機の波及を食い止め、市民を守る姿勢を見せている。中央銀行も不動産市場の健全な発展を維持し、消費者の権利と利益を守ると誓って、金融システムに資金を供給している」

     

    国内の利害関係者は保護されるが、株主とドル建て債保有者は切り捨てられる公算が大きい。米中対立の折、ドル建て債保有者の外国人(多くは米人)を保護するインセンティブに欠けるようだ。中国への投資は危険になった。

     

    (5)「これから来る10年間の構造的な住宅需要の減退をうまく切り抜けられるかどうか。そちらの方が難しい問題になるだろう。業界の統合が延々と続き、何年も経過する公算が大きい。開発業者が今すぐにも軒並み破たんするというシナリオは、比較的現実味が薄いように思える」とエバンズプリチャード氏は語った」

     

    政府が、資金繰り面で支援策を取ったとしても、過剰供給の住宅産業がこのままの状態で生き残れるはずがない。これから始まる住宅産業整理の中で、脱落する企業が増えるであろう。この過渡期に、中国のGDP成長率は低下局面へ向かう。土地販売の減少で、中国財政の窮乏化は不可避だ。高齢化の進行や軍事費拡大で、財政需要はうなぎ登りである。いずれ、中国財政も怪しくなる。

     

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