勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: インド経済

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    西側諸国は、中国の「龍」よりもインドの「象」に親しみを感じている。その「象」は、なかなか経済的に「龍」の代役を果たせないという失望を与えているのが現実だ。どうしたら、たくましい「象」が誕生するのか。

     

    日中韓など15カ国が昨年11月、東アジアの地域的な包括的経済連携(RCEP)協定に署名した。ただ、インドが離脱してしまった。RCEPは、もともとインドも含む16カ国で、2013年に交渉を始めたもの。関税の撤廃・削減などを巡る協議が難航し、交渉妥結の時期を何度も延期してきた経緯がある。挙げ句に、インドの離脱になった。

     

    インド離脱の理由については、対立関係を深める中国との経済関係を蜜にしたくなかったなどが取沙汰されている。だが最終的には、RCEPの関税ひき下げがインドに重荷になるという判断であった。日本は、インドと「クアッド」(日米豪印)による、半導体・医薬品・バッテリー・レアアースの4品目で協力体制を組んでいる。これを通して、インド経済の体質強化が進むように支援する必要がある。

     

    『日本経済新聞』(8月29日付)は、「中国に取って代われないインド」と題する寄稿を掲載した。筆者は、カナダ・アジア太平洋財団特別研究員 ルパ・スブラマニャ氏である。

     

    オーストラリアのアボット元首相は、「好戦的な」中国よりも、民主主義国のインドとの経済・貿易関係を強化すべきだとの議論を展開する。欧米が、グローバル・バリューチェーン(GVC=国際的な価値の連鎖)の中心として中国に依存していることも強く批判している。

     

    (1)「欧米の多国籍企業にとって、法治国家であり労働人口の多いインドは、理想的なパートナーのはずだ。だがスイス金融大手UBSによると、こうした企業が中国中心のGVCから撤退しているかどうかははっきりしない。理由のひとつは、中国が圧倒的なスケールメリットによって競争力を維持していることかもしれない。アボット氏らは、中国に対する自国経済の脆弱性を誇張しすぎているようにもみえる」

     


    米国がTPP(環太平洋経済連携協定)へ復帰する事態になれば、否応なく中国に拠点を置く欧米の多国籍企業は移転せざるを得なくなろう。幸いというべきか。現在の米国は、インフレ問題が起こり始めている。米国がTPPへ復帰できるまたとない条件をつくっているのだ。物価を下げるためにも、TPP復帰は必要という論理が理解されるだろう。

     

    (2)「豪州のような国が、地政学的あるいは戦略的な理由から中国から離れることを望む場合、GVCの重要な部分をインドに移すだろうか。可能性はあまり高くない。インドは、環太平洋経済連携協定(TPP)と東アジアの地域的な包括的経済連携(RCEP)に参加していない。世界最大の経済で、巨大な国内市場を持っているために余裕のある米国を除けば、唯一不参加の域内主要国といえる。TPPとRCEPは、世界の貿易と経済活動の大きな部分を占めている」

     

    インドがいつまでも、TPPやRCEPに背を向けていることはあり得ない。参加は、時間の問題であろう。日本は、インドの友好国としてなにか助言することがあれば積極的に行うべきだ。トヨタ自動車は、現地に技術専修学校をつくっている。こういう試みを拡大させることも有力な技術レベルの引き上げ手段となろう。

     

    (3)「インドが中国に取って代わって世界の製造業のハブになるというのは、経済学に基づいているというより、地政学から生まれた希望的観測に基づくものというのが本当のところのようだ。インドは既存のGVCへの統合レベルが低いため、スタートラインに立つことさえできない。世界貿易機関(WTO)の指標などによると、ベトナムのようなアジアの新興国は、中国から移転するGVCの獲得という点で、インドのペースを上回る。(こうした動きをみても)インドは世界最大の民主主義国かもしれないが、中国が当面、世界の工場であり続けるだろう」

     

    当面は、インドへの期待は地政学から生まれた希望的観測に基づくものとしても、中国の労働力不足は深刻である。特に、ブルーカラー不足が顕著である。逆に、ホワイトカラーが余剰という、雇用のミスマッチが起っている。この状態は、中国の李首相自身が2025年まで続くと見ているほどだ。

     

    必ず、西側の多国籍企業はインドへ労働力を求めて移転するはず。それが、経済常識というものなのだ。

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    中国の急速な軍事力拡張に刺激され、インドも2隻目の空母を建艦した。こうして、一国の軍事力拡大は、周辺国の軍事力を拡大させる「安全保障のジレンマ」をもたらすことを立証している。諸悪の根源は、中国である。自国の思惑通りに、ことが進まないという現実を知るべきだろう。

     

    『大紀元』(8月21日付)は、「インド海軍、ミサイル駆逐艦など南シナ海に派遣」と題する記事を掲載した。

     

    一触即発の国境紛争の和解を目指して中印の交渉が進む中、提携諸国や近隣諸国との関係深化を図ることで継続的にインド太平洋における防衛態勢の強化に取り組むインドの姿勢には、中国を牽制したい同国の願望が如実に表れている。

     

    (1)「ロイター通信の報道では、インド海軍は2021年8月上旬に友好国との安保関係強化を目的として南シナ海に海軍任務部隊を派遣すると発表した。インド海軍が発表した声明によると、誘導ミサイル駆逐艦と誘導ミサイルフリゲートを含む4隻の艦船が東南アジア、南シナ海、西太平洋を2ヵ月間航行する予定である。同海軍は声明を通して、「今回のインド海軍艦船の展開は、海事領域における秩序の確保に向けて作戦範囲、平和的な存在感、友好国との連帯を強調することを目的としている」と述べている。2016年の常設仲裁裁判所の判定を無視した中国が現在も広大な海域の領有権を主張し、環礁や岩礁を軍事化していることで長年にわたり南シナ海は紛争の火種となってきた」

     

    下線のように、インド海軍は4隻の艦船で南シナ海を航行する。インドも「航行の自由作戦」に参加したことになる。インド海軍の実力を中国へ見せつける場だ。

     

    (2)「インド海軍艦船は南シナ海を航行するだけでなく、2021年8月下旬にはグアム島沖でオーストラリア、日本、米国と合同訓練を実施する予定である。合同海軍演習「マラバール」に参加する諸国は、通称「Quad(クワッド)」として知られる日米豪印戦略対話(4ヵ国戦略対話)に参加している。インドはまた、初の国産空母の試験航行を実施するなど海洋における存在感を強化している。最近、インド南部に位置するケーララ州沖で試験航行が開始された空母「ヴィクラント」が就役すれば、これがインド2隻目の現役空母となる」

     

    インド海軍は、実戦訓練をクアッド(日米豪印)海軍と行う。これとは別途に、初の国産空母「ヴィクラント」の試験航行を実施する。この就航によって、インドは2隻の空母を保有することになった。

     


    (3)「フランス通信社(AFP)によれば、インドは「空母を国内で設計・製造できる数少ない諸国の仲間入りができる。これはインド政府が推進する「インドでモノづくりを(Make in India)」イニシアチブの推進力を示す真の証となる」と、インド海軍は発表している。多国間の協力体制強化を目的として、インドとその防衛提携諸国は継続的に「航行の自由」作戦を実施している」

     

    国産空母「ヴィクラント」は、「インドでモノづくり」をというイニシアチブを実現したことになる。工業力において、インドは中国と同等であることを示した。

     

    (4)「2021年7月下旬、インドと英国がベンガル湾で演習を完了した後、満載排水量6万5000トンの新空母「クイーン・エリザベス」を中核として構成された「英国空母打撃群21」が南シナ海の紛争海域に入域した。中国は同空母打撃群を追い返すと脅しをかけていたが、CNNニュースの報道では、同空母打撃群は合法的に海域を航行して公海の最も直接的な航路を取って、演習が予定されているフィリピン海に向かったと、英国国防省が声明を通して発表した」

     

    中国は、英国の最新鋭空母「クイーン・エリザベス」と打撃群の南シナ海航行を拒否する姿勢を見せていたが、「口先」に終わった。英国の原子力空母のほかに米国とオランダ艦船も随行しおり、「後難」を恐れた結果であろう。中国の「脅迫」は、こうして影響力を失っている。

     


    (5)「こうした海事紛争が続く一方で、インド軍は中印国境紛争の終結に向けて中国側と交渉を続けており、2021年8月上旬に両国が「迅速に」問題解決することで合意したとの声明を発表した。同声明は12回にわたる和解交渉の末の成果であるが、チベット地域の実効支配線に位置する汽水湖「パンゴン湖」沿いでは、衝突発生以来数千人に上る両国軍隊兵士が対峙している。ロイター通信によると、2020年6月に発生した衝突ではインドと中国の両軍に死者が発生した。長年緊張状態にあった国境において、これは過去40年あまりで初の中印軍隊間の流血乱闘となった事件である」

     

    昨年6月、中国軍によるインド軍へのヒマラヤ山中における奇襲攻撃は、真夜中に行われた。インド兵士20名が犠牲になりこれ以降、インドは中国への経済報復を行っている。中国は、何の意味もない奇襲攻撃で信頼を失う結果になった。

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    インドの対中防衛戦略は、クアッド(日米豪印)からNATO(北大西洋条約機構)まで幅広く網を張っていることが分かった。インドは、ここまで重層的な防衛戦略を組立てており、中国を慎重に対応させる狙いであろう。

     

    インドは独立後、非同盟主義を貫いてきた。だが、中国の向う見ずな軍事的な動きを見ると、理想論ばかりに頼ることもできない現実に直面している。昨年6月、ヒマラヤ山中で中国軍の急襲に遭い、20名の兵士が犠牲になった。以後、中国への警戒心が一段と高まっている。

     

    『大紀元』(8月12日付)は、「NATOと関係強化に取り組むインドと題する記事を掲載した。

     

    インド海軍は、北大西洋条約機構(NATO)同盟国4ヵ国と合同軍事演習を実施することで、相互運用性の向上および海洋脅威に対抗する複合作戦の強化に取り組んでいる。これは、「共通の価値観」が脅かされているとして、インドと北大西洋条約機構の間の協力体制強化を呼びかけた北大西洋条約機構のイェンス・ストルテンベルグ事務総長により推進された動きである。

     


    (1)「協力強化を目的とした今回の取り組みは、アラビア海で2021年4月25日から27日にかけて実施された仏印合同演習「ヴァルナ21」を皮切りに、7月21日から23日にかけてインド北東部のベンガル湾で実施されたインド海軍と英国海軍による「コンカン」演習で一応の完了を迎えた。インド海軍が発表したところでは、ヴァルナ演習ではインド海軍が駆逐艦1隻、フリゲート2隻、補給艦1隻、潜水艦1隻を派遣し、フランス海軍の空母、駆逐艦、フリゲート各1隻と共に訓練に臨んでいる。また、両軍隊のヘリコプターと哨戒機がフランスのジェット戦闘機に加わり、高度な防空訓練と対潜戦訓練に焦点を当てた演習も実施された」

     

    インド海軍は、フランス海軍と合同演習を行っている。

     

    (2)「ヴァルナ演習実施前の2021年4月中旬に仮想形式で実施されたインド政府主催の国際会議「第6回ライシナ対話」で、ストルテンベルグ事務総長は北大西洋条約機構とインドの協力関係を再確認している。同事務総長は中国に言及しながら、北大西洋条約機構とインドが共有する自由、民主主義、法の支配といった価値観が「権威主義の台頭および同盟・提携諸国とは価値観を異にする諸国」により脅かされていると発言した。同事務総長はまた、「同じ価値観と志を持って法の支配に基づく秩序を支持する民主主義のインドのような諸国とより緊密に協力することができる」とし、「インドは同地域だけでなく国際社会においてもまさに重鎮である」と述べている」

     

    NATOは、インドとの協力関係を再確認している。下線部は、日本や豪州との緊密な関係をも想定していることを覗わせている。将来は、クアッドとNATOが連携する事態も予想されている。NATOが積極的になっているのだ。

     

    (3)「インド国防省の発表によると、2021年6月13日に地中海に向けて出航したインド海軍のフリゲート「タバール」は、74日から5日にかけてイタリアと、7月15日から16日にかけてフランスと演習を実施している。演習には防空作戦、海上補給、通信訓練、ヘリコプターを用いた飛行甲板間移動が含まれていた。 インドのPTI(Press Trust of India)通信が報じたところでは、今回の取り組みの一環として、ジブラルタル海峡西端に位置するスペインのトラファルガー岬付近まで航行したフリゲート「タバール」は、78日にスペイン海軍とも演習を実施している。スペイン海軍は同演習で「セスナ(Cessna)」海上哨戒機と「シーキング(Sea King)」哨戒ヘリコプターを展開した」

     

    インド海軍は、イタリア海軍やスペイン海軍とも合同演習している。

     

    (4)「2021年7月21日、ベンガル湾で毎年実施されるコンカン演習で、インド海軍が英国の空母「クイーン・エリザベス」を中核として構成された「英国空母打撃群21(CSG21)」と共に訓練を実施した。英国のアレックス・エリス在インド高等弁務官によると、今回の英国空母打撃群を率いる展開が本格的な初航海となった満載排水量6万5000トンのクイーン・エリザベス空母が同演習に参加したことで、これは「インドとインド太平洋の安保に対する取り組みを強力に実証する事例となった」

     

    英国空母「クイーン・エリザベス」が打撃群21を伴い、初の海外演習の航行を続けており、9月に日本へ寄港する。英国は今年の年末に向けて、哨戒艦2隻をインド太平洋地域に恒久的に展開する方針であることを発表した。英国は、海軍艦船の事実上の母港となる港湾について、現在のところ言及を避けている。港湾施設から見て、日本が有力視されている。

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    中国軍は昨年6月15日、習近平氏の67回目の誕生日にヒマラヤ山中でインド軍を急襲し、20名のインド兵を殺害した。以降、中印関係は悪化している。インドは、中国製のスマホやソフトなどを使用禁止措置にして対抗している。これは、中国にとって大きな誤算になった。14億の人口を擁するインド市場から閉出されたことを意味するからだ。中国は、愚かなことを行ったものである。

     

    『大紀元』(8月1日付)は、「インド、中国との平和的共存は『ない』、専門家」と題する記事を掲載した。

     

    米国のブリンケン国務長官は7月28日、インドのジャイシャンカル外相、ナレンドラ・モディ首相と訪問先のニューデリーで会談した。両国は中国の名指しは避けたものの、日米豪印による協力枠組み「クアッド」の連携を深め、防衛協力を深めることで一致した。モディ首相はブリンケン氏との会談後、「印米戦略パートナーシップを強化するというバイデン大統領の強いコミットメントを歓迎する」とツイッターに投稿した。

     

    (1)「印シンクタンクCentre for Land Warfare StudiesCLAWS)の研究員で、アムリタ・ジャッシュ氏は、大紀元のインタビューで、権威主義体制を敷く中国の脅威の高まりに連帯することは、米印をはじめとする地域内外の国々を結び付ける「大義」であると述べた。また同氏は、2020年に起きた、インド北部と中国西部の国境地帯に位置するガルワン渓谷での中印衝突により、「(インドと中国の)平和的な共存は失われた」と語った。

     

    インドは、昨年6月15日深夜、ヒマラヤ山中での中国軍急襲によって、根本的な中印間の信頼関係が失われた。

     

    (2)「インドと中国の間には、実効支配線(LAC)が引かれており、中国はLACで「常にインドの心意を試し、挑発しようとしている」とジャッシュ氏は指摘する。両国国境を巡る対立は1962年の軍事衝突に端を発する。それ以来、LACで続いていた緊張状態が、ここ数年著しく高まっている。2017年には、ブータンの国境付近のドクラム地域で、中印両軍の一触即発のにらみ合いが1カ月以上にわたって続いた。きっかけは、中国軍がインドの同盟国ブータンの主張する実効支配線を越えて、道路を建設したことだった」

     

    中国の領土欲は尋常なものでない。旧植民地が盛行した当時の意識そのものである。中国は100年以上も遅れた国際意識を振りかざしている。こういう中国には、同盟を結成して対抗する以外に道はない。残念ながら、力には力で対抗するという原始方式の採用である。

     

    (3)「中印両軍は2020年6月にもガルワン渓谷で衝突し、双方に死者が出た。これまで両軍の間には銃器を使用しないとの合意があったが、中国兵は有刺鉄線を巻いた金属バットや釘を埋め込んだ棍棒を用いた。「中国が扇動したということは、非常に明白である」とジャッシュ氏は述べ、中国共産党政権の武器使用はLAC沿いにおける中印間の「すべてのプロトコルを破った」と指摘した。同氏は著書の中で、「インドと中国の国境沿いでの中国の行動パターンは、南シナ海で見られるような、紛争地域を侵食して支配する『サラミ・スライス』戦略に準拠している」と述べ、中国は漸進的な小さな行動を積み重ね、目標を達成しようとしていると指摘した」

     

    中国軍に襲われたヒマラヤ山中の現場は、凄惨を極めていたという。モディ首相は、現地で中国への復讐を誓うという異常事態を現出させた。その責任は、全て中国にある。

     


    (4)「ジャッシュ氏は、権威主義的な中国は、インドと中国の国境沿いで強さを誇示しようとしている。いっぽう、中国共産党の一党支配を根本的に脅かす国内外の大きな問題に直面しているという。中国国内では、経済成長の鈍化や、チベット、新疆ウイグル自治区、香港における中国共産党の支配に対する広範な抵抗が挙げられる。対外的には、米国、インド、日本、台湾など世界の自由民主主義諸国や、「一帯一路」構想に参加して多額な負債を抱えた国々との経済的・軍事的な緊張関係が生じている」

     

    中国の権威主義が生み出す内外の矛楯は、明らかに中国共産党への批判の度合いを高めている。中国経済の減速度合い大きくなるとともに、習近平氏は一層の困難に直面し「横暴化」するであろう。それは、破局への道にほかならない。

     

    (5)ジャッシュ氏は、2002~20年にかけて米印間で結ばれた軍事情報保護、軍事ロジスティックス共有、通信の安全保障、標的と航行情報の提供に関する「4つの基本合意」 を挙げ、米印関係は「時間とともに強化されている」と述べた。同氏は、米印関係に貢献しているもうひとつの大きな要因は、「自由で開かれたインド太平洋」を支持する日米豪印4カ国による、安全保障協議の枠組み「クアッド」にあると述べた。さらに同氏は、中共ウイルスの大流行を受け、4カ国の関係は「かつてないほど強固になった」と強調し、「英国、カナダ、フランス、ドイツなどの国々が、インド太平洋のビジョンに少しずつ賛同するようになってきている」と語った」

     

    インドは、ネール時代以来の「非同盟主義」を貫いてきたが、中国の横暴が強まると共に、日米豪印4ヶ国の「クアッド」への依存を深めている。インドにとっては、日本という得がたい友好国がクアッドに存在するので、心置きなく全てを託せる気持ちになっていると思われる。インドにおける日本の信頼度は、これほど高いのだ。

     

    テイカカズラ
       


    中印関係の険悪化を象徴するニュースが伝わってきた。インドのモディ首相がチベットの精神的指導者であるダライ・ラマに直接電話をかけて誕生日を祝ったもの。ダライ・ラマは1959年インド北部にチベット亡命政府を樹立、中国からの独立運動を導いている最高指導者である。

     

    インド政府は、これまで中印関係を考慮して、ダライ・ラマとの接触を避けてきた。ところが今回、モディ首相自らが電話して祝意を伝え、この事実を公開した。中印関係が、最悪事態にあることを改めて示している。トニー・ブリンケン米国務長官も、声明を通じて祝意を表した。

     


    『中央日報』(7月8日付)は、「ダライ・ラマ誕生日を公開祝賀、習主席に一発食らわした印モディ首相」と題する記事を掲載した。

     

    7月6日(現地時間)、印メディア『エコノミック・タイムズ』は、「モディ首相が中国と紛争中にもかかわらず、ダライ・ラマに電話をかけて彼の86歳の誕生日を祝った」とし「異例」と伝えた。この日、モディ首相はツイッターにも「ダライ・ラマの誕生日を祝うために彼と電話で話をした」とし「彼が元気に長生きできるよう祈っている」とコメントした。ダライ・ラマは1959年インド北部にチベット亡命政府をたてて中国からの独立運動を導いている。

     

    (1)「この間、モディ政府は2019年まで中国との関係を考慮してチベット亡命政府とは距離を置いていた。これに先立ち、チベット亡命政府が2018年亡命60周年事前記念行事を大々的に進めようとした時もインド政府は難しい表情だった。ところが今回はモディ首相がダライ・ラマに直接電話をかけて話をし、また、祝賀事実を公開した。モディ首相が中国に「一発」食らわせたのも同然だという反応が外交界から出ている」

     

    インドが、中国の敵であるダライ・ラマへ電話して祝意を伝える挙に出た。モディ首相は、インド太平洋戦略における「クアッド」(日米豪印)というつながりをバックに、中国へ厳しい姿勢を示した形である。

     

    (2)「AP通信は、「モディ首相が2014年就任後、ダライ・ラマと話をしたことを公開的に確認したのは今回が初めて」と説明した。ジャワハルラル・ネール大学のスリカント・コンダパッリ教授(中国学)もロイター通信とのインタビューで「昨年までは政党の人さえ(ダライ・ラマの誕生日を)公開的に祝うことが許されなかった」と話した」

     

    インド政府は、ダライ・ラマとの関係強化で中国へ妥協しない強硬姿勢を見せている。

     

    (3)「昨年5月パンゴン湖乱闘事件、1カ月後の6月にインド軍と中国軍からそれぞれ20人と4人の死者を出したガルワン渓谷「棍棒衝突」など、中印間の国境衝突はその後、新型コロナウイルス感染症(新型肺炎)事態と冬季の寒さなどで小康状態だった。しかし、インド現地のタイムズ・オブ・インディアは「天候が暖かくなり、中国政府が今年1万5000人水準だった駐留兵力を5万人に増やしたことに伴い、インド軍も5万人の兵力を急派した」と報じた。モディ首相の異例の行動にインド現地メディアも「今回の通話事実の公開は中国からの強い反発はもちろん、境界隣接地域における両者の緊張感を誘発している」と伝えた」

     

    中印国境をめぐる紛争は、緩和化に向かうどころか悪化している。昨年6月夜半、中国軍がインド軍を襲った事件は、インド側に強い怒りと警戒心をもたらしている。インドが、クアッドへ参加したきっかけは、この中国による夜襲事件にあった。

     


    (4)「中国政府はダライ・ラマを「祖国分裂活動家」と規定し、これに対する言及そのものに敏感に反応してきた。1959年、中国政府はチベット地域に対する一国二制度を終わらせて直接統治を始めたが、長く「祭政一致」(宗教と政治的権力が分立しない)の伝統を守ってきたチベット人にはダライ・ラマが今も精神的柱の役割を果たしている。1959年3月、チベット人は中国政府の宗教弾圧に対抗して2万人余りが参加した大規模武装デモを起こして鎮圧された。その後ダライ・ラマはインド北部ダラムサラにチベット亡命政府の拠点を置いて非暴力独立運動を率いてきた」

     

    中国は、ダライ・ラマに強い圧力を加えている。中国が、多民族の宗教にまで干渉しているのは、新疆ウイグル族への弾圧と同じ理由である。



    (5)「チベット人は、ダライ・ラマが「観世音菩薩」の化身であり、死なずに生まれ変わり後継者の身体を探して果てしなく生まれ変わると信じている。現在のダライ・ラマ14世は先立って「90歳になったら生まれ変わるかを決める」と明らかにした。中国政府は2010年、外信記者に「ダライ・ラマの後継者選びには中国中央政府の承認が必ずなければならない」と釘をさした状況だ。だが、今年86歳を迎えたダライ・ラマが後継者を選んで中国の承認を素直に受け入れる可能性は高くない」

     

    ダライ・ラマは、チベット信仰の象徴である。インド政府が、このダライ・ラマとの関係強化に乗出したのは、中国への強い反撃を意味している。

    (6)「誕生日を迎えたダライ・ラマはYouTube(ユーチューブ)の映像を通じて「私に本当の愛と尊敬、信頼を寄せてくれているすべての友人たちに心からの感謝を伝えたい」とし「死に至るまで非暴力と慈悲の心を掲げていくことを約束する」と話した。続いてインド政府に対して「私が難民となってインドに定着して以来、私はインドの自由と宗教間の調和を最大限に享受してきた」として感謝を伝えた」

    ダライ・ラマは、これでインド政府からのさらに温かい支援を受けられることになった。同時に、中国の非人道的行為への批判の輪を広げることになった。



     

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