勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: インド経済

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    各国が威信を賭けて、コロナワクチン生産に取り組んでいる。ソフトパワーによる影響力を拡大するためだ。コロナワクチンが、世界的に重要な外交上の「通貨」となりつつある。

     

    中国とロシアは、欧米の製薬会社に伍して国産ワクチンを売り込んでいる。その中で、彗星のように登場したのがインドである。もともと、インドは世界のワクチン生産の約6割を生産する医薬品大国だ。そのワクチン製造企業名は、インド血清研究所(SII)である。公的機関のような印象を受けるが、純然たる個人所有の企業である。創業者の信仰心が厚く、コロナワクチン収束に向け世界に寄与すると抱負を語る。

     

    SIIは、1966年に個人が設立した企業である。2年間の研究・開発の末、破傷風を治療する血清を製造し、すぐに破傷風予防ワクチンを発売して参入した。SIIが現在、生産するワクチンは、ポリオ、ジフテリア、破傷風、百日咳、肝炎、BCG、ヘモフィルスB型、麻疹など多様である。

     

    世界中の子供の65%は、SIIが生産したワクチンを少なくとも1回は接種していると推定されている。同社が製造したワクチンは、世界保健機関(WHO)の認定を受け、世界170カ国に輸出されている。SIIは、自社が製造したワクチンが、各国のワクチンプログラムを通じて接種され、これまで世界中で数百万人の命を救ったと自負する。現在、容量基準で世界最大のワクチン製造会社へと発展した。『中央日報』(2月23日付)が報じた。

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2月15日付)は、「ワクチン外交にインドも参戦、先行する中国と火花」と題する記事を掲載した。

     

    インド洋に浮かぶ島国セーシェルに1月、インド海軍の飛行機が降り立つと、駐機場で外相ら閣僚がその貴重な貨物を出迎えた。インドで製造された英製薬大手アストラゼネカの新型コロナウイルスワクチン5万回分だ。その2週間前には、中国で製造された中国医薬集団(シノファーム)のコロナワクチン5万回分が人口9万8000人のセーシェルに届いていた。中国は戦略的な観点から、長らくインドの影響下にあるとみられていたこれらの地域に進出することを狙っている。

     

    (1)「インドはコロナ禍以前から世界のワクチン生産の約6割を握る医薬品大国だ。隣国との関係強化や影響力の拡大を目指し、ここにきて「ワクチン外交」の動きに加わった。中国当局は長年、セーシェルに前哨基地を構築しようとするインドの取り組みを妨害してきた。インドにとっては、セーシェルに前哨基地を建設できれば、周辺海域の中国海軍の艦艇や民間船舶の動きを監視できる。またインドはこれまで、中国の侵入を食い止めようと抵抗しており、沿岸一帯のレーダー基地網の建設を支援した。その結果、中印両国からのワクチン外交攻勢を受けた小国セーシェルが、大量のワクチンを確保するという異例の状況となった。ワクチン接種率で、セーシェルはイスラエル、アラブ首長国連邦(UAE)に続き世界3位だ」

     

    インドは、ワクチンだけでなく医薬品でも大生産国である。インドは、来たるべき経済大国として発展するため、中国の存在に焦点を合わせている。人口では、2027年に中国を抜いて世界一になる。コロナ外交でも、中国にひけをとらないように、という配慮がありありと見える。

     


    (2)「SIIは、アストラゼネカと英オックスフォード大が共同開発したコロナワクチンを1日に数百万回分の単位で生産している。また今年、米バイオ医薬品会社ノババックスが開発したワクチンを最大10億回分生産することを確約している。インドはワクチン輸出を開始した先月以降、2300万回分のワクチンを出荷。このうち650万回分は、インド政府がセーシェルやアフガニスタン、バングラデシュ、カンボジアなど隣国に加え、カリブ海のドミニカ共和国やバルバドスなどに無償提供したものだ」

     

    SIIは、アストラゼネカと英オックスフォード大が共同開発に対して、資金提供と生産面で協力した貴重な存在である。SIIが存在しなかったら、アストラゼネカのワクチンが日の目を浴びなかったかも知れないとされている。

     

    (3)「インド製造のアストラゼネカワクチンは、世界保健機関(WHO)が主導する世界ワクチン配布計画「コバックス」の大半を占める見通しで、今年1~6月期に2億4000万回分の出荷が見込まれている。これにはインドのライバル、パキスタン向けの1700万回分も含まれる。インド外務省の政策顧問アショク・マリク氏は、「多くの国がワクチンと言えば、インドを思い浮かべる」と話す」

     

    SIIが、WHOの世界ワクチン配布計画「コバックス」生産の大半を占める見通である。インド外務省は、「ワクチン外交」で中国を上回るはずと胸を張る。

     


    (4)「マリク氏によると、ニューデリーで省庁横断の特別委員会が毎週開催され、インド国内のワクチン接種計画をどの程度進めることができるか議論し、残りのワクチン輸出を承認する。インドは、これまで国民向けに供給したワクチンの3倍余りを外国に輸出している。これに対し、中国のワクチンメーカーは、国内で新たな感染者が出ていることを受け、海外向けの出荷を遅らせている

     

    インドは、国内向け供給の3倍余を輸出に向ける。自国の感染者増加にも関わらず、世界への義務を果たすというのである。中国は、国内優先供給方針に切り変えている。

     

    次の記事もご参考に。
    インド、「驚いた!」ワクチン外交開始、アストラゼネカの委託生産生かし「中国へ対抗」

    2021-02-09 

     

     

     

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    世界で二番目にコロナ患者が多いインドが、アストラゼネカ製のワクチン委託生産を行っているメリットを生かし、中国やパキスタンへ対抗してワクチン外交へ乗出している。

     

    アストラゼネカ・ワクチンの有効性は、1回の接種でも約76%の有効性があり、3カ月間持続するとの分析結果によって裏付けられている。標準としている2回の接種で、これが約82%に上昇するという。中国製ワクチンの有効性は50%強とされる。インド政府が、アストラゼネカ・ワクチンで「ワクチン外交」に打って出る理由はここにあろう。

     

    『ロイター』(2月8日付)は、「インド、『ワクチン外交』で中国やパキスタンに対抗」と題する記事を掲載した。

     

    インドの当局者は7日、同国がカンボジアへの新型コロナウイルスワクチン出荷を承認し、モンゴルや太平洋諸島諸国への供給も計画していると発表した。同日にはアフガニスタンにも同国からワクチンが届いた。これは、全てインドが拡大している「ワクチン外交」の一環だ。

     


    (1)「2月7日、インドの当局者は同国がカンボジアへの新型コロナウイルスワクチン出荷を承認し、モンゴルや太平洋諸島諸国への供給も計画していると発表した。狙いは、同様にワクチン供給を約束しているアジアの巨大なライバル国、中国を出し抜くことだ」

     

    インドは自身が、コロナ感染者数で世界2番目に多い国で、国内では8月までに人口約13億人のうち3億人に接種する計画。1月16日に接種を開始し、同月中に医療従事者約300万人に接種した。夏までに設定した国内目標を達成するには、接種ペースをもっと加速する必要がある。こういう国内の切迫した事情を抱えるが、中国より有効性の優れたワクチンで対抗する構えだ。

     

    (2)「モディ政権は、自国での接種計画はまだ始まったばかりだというのに、近隣諸国に英アストラゼネカが開発しインドのセラム・インスティテュート・オブ・インディアが生産するワクチン数百万回分を供与している。モディ首相は地域諸国との関係を改善し、中国の政治的、経済的優位を押し返すために、様々な疾病向けの世界最大のワクチン生産国としての国力を駆使する構えだ」

     

    アストラゼネカ・ワクチンは、有効性において中国製ワクチンをはるかに上回る。その有利性を生かして中国のワクチン外交に対抗する構えだ。

     


    (3)「インドのカンボジア駐在大使によると、インド政府はカンボジア向けの新型コロナワクチン10万回分を緊急承認。カンボジアのフン・セン首相からモディ氏に寄せられた依頼に応えた。カンボジアは本来、中国の重要な同盟国だ。中国も国営シノファーム(中国医薬集団)が主要な開発者であるコロナワクチンを百万回分、提供する見込みになっている。カンボジア駐在インド大使は、「ほかの友好国から無数の要請があったにもかかわらず、また、インド国民への接種の約束にもかかわらず、セラムを通じた(カンボジアへの)供与が保証された」と強調した」

     

    インドはミャンマー、バングラデシュ、ネパール、スリランカ、モルディブにも、最前線の労働者を手始めに接種していくのを支援するためワクチンを送っている。「ワクチン・フレンドシップ」と名付けた取り組みだ。中国への対抗では、並々ならぬものがある。

     

    (4)「インドは2月7日に、アフガニスタンにアストラゼネカのワクチン50万回分を送った。荒廃した同国にとって初めて届いたワクチンだ。同ワクチンは世界保健機関(WHO)からの緊急承認を待っている段階である。インドが長年、アフガニスタンに何百万ドルも投資してきたのは、仇敵・パキスタンのアフガニスタンへの影響力を押し返すための幅広い努力の一つと見なされている。インド政府筋は「このワクチンは無償供与だ」と語った」

     

    インドは、パキスタンが仇敵である。カシミール高原の領有を巡って、長年の紛争を続けてきた。インドとしては、パキスタンによるアフガニスタンへ及ぼす影響力を排除しなければならない。その決め手が、「ワクチン外交」なのだ。

     


    (5)「インド外務省報道官によると、同国はこれまでに寄付ないし商業契約を通じて計17カ国に総計1560万回分を提供した。向こう数週間でモンゴル、カリブ海諸国、太平洋諸島諸国にも送られるという。同氏は「対外的な供与は、それぞれの国内の必要に応じて進められている」と説明した」

     

    インドは、これまでに寄付ないし商業契約を通じ、計17カ国に総計1560万回分のワクチンを提供している。インドは、隠れたワクチン供与国である。潜在的な科学技術力の高さを示している。

     

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