勝又壽良のワールドビュー

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    カテゴリ: 豪州経済

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    中国がTPP加盟を申請したが、前途は多難である。加盟11ヶ国中で、一ヶ国でも反対論が出れば加盟は不可能であるからだ。

     

    日本、豪州・メキシコは、いずれも慎重論である。一方、マレーシアとシンガポールは歓迎の立場を明らかにしている。

     

    『日本経済新聞 電子版』(9月21日付)は、「メキシコ、中国のTPP加盟に慎重」と題する記事を掲載した。

     

    メキシコ経済省は20日、中国による環太平洋経済連携協定(TPP)への加盟申請について慎重な姿勢を示した。TPPが「高い基準を順守するすべての国に門戸は開かれている」と指摘した。国有企業への補助などの中国の経済ルールが加盟に課題となることを暗に示唆した形だ。

     


    (1)「声明では、「協定の創設国として他の10カ国と共に、中国の加盟申請について迅速にフォローし、関連の活動に加わる」とも言及した。メキシコは2020年7月に発効したUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)を通じて、北米で一体となった経済圏を構築している。メキシコの最大の貿易相手は米国で、圧倒的な地位を占めている。米中の摩擦が深まる中では中国のTPP加盟支持を打ち出すことは容易ではない。

     

    USMCAは、米国のトランプ政権が、TPPをモデルにしてそれまでのNAFTA(北米自由貿易協定)を改定させたものである。USMCAでは、独裁国との貿易協定を結ぶ場合、脱退しなければならないという「縛り」が入っている。USMCAには、TPP加盟国のカナダも加盟しているので当然、この制約条項に抵触する。よって、メキシコ・カナダは、中国のTPPには反対の意志を示さざるを得ない。

     

    (2)「加えてUSMCAでは、非市場経済国との自由貿易協定には、交渉開始の意図を他国に知らせることが定められている。一方で、メキシコにとって中国は、輸入で米国に次ぐ2番目の相手国でもある。新型コロナウイルスへのワクチンの供与を巡って関係が深まってきた事情もある。TPPの交渉官を務めた経験を持つロベルト・サパタ氏は地元紙レフォルマの取材に「メキシコにとって、非常に複雑で敏感な多面的交渉が始まる」と指摘した」

     

    米国のトランプ前政権では、中国を通商から排除するという強い意志を示していた。NAFTAをUSMCAへ切り変えさせた目的は、米国がTPPのメリットをカナダとメキシコから得るというものであった。前記二ヶ国は、中国と貿易協定を結ばせないという、かなり米国に有利な条件を付けさせてある。

     

    中国は、こういうUSMCAの存在を知っているはず。それにも関わらず、TPP加盟を申請してきたのは、米国との関係を揺さぶるという目的であろう。

     


    『日本経済新聞 電子版』(9月17日付)は、「豪貿易相、中国のTPP加盟に難色『2国間に問題』」と題する記事を掲載した。

     

    オーストラリアのテハン貿易・観光・投資相は17日声明を出し、中国の環太平洋経済連携協定(TPP)加盟申請に関して「最初に加盟交渉を開始するかどうかを決定するが、決定には全加盟国の支持が必要だ」と述べた。

     

    (3)「そのうえで、「すでに中国に伝えたが、(豪中の間では)閣僚間で取り組むべき重要な問題がある」と述べ、中国が豪産品に課した高関税などの問題が解決しない限りは、中国の交渉入りを支持しないとの姿勢を示唆した。また、「加盟国は申請国がTPPの高い(自由化の)水準を満たすだけでなく、世界貿易機関(WTO)やすでに参加する既存の貿易協定の規定を順守した実績があると確信したいはずだ」とも述べた」

     

    中国は、豪州から痛いところを突かれている。中国は、新型コロナウイルスの発生源に関して独立調査を求めた豪州に反発し、2020年5月以降、豪産大麦やワインに高関税を課したほか、一部の食肉や石炭の輸入も制限している。豪州は大麦とワインの関税を不当として中国をWTOへ提訴しているのだ。中国の身勝手な豪州への経済制裁を棚上げして、「TPP加盟、宜しくネ」とはいかないのだ。ここら当たりが、中国の「戦狼外交」の独り善がりさを示している。

     


    下線部は、中国のWTO加盟に当って約束した部分が、未だに不履行である点を責められているのだ。こういう中国が、TPPの規定を守れるかという「皮肉」を浴びせられている。

     

    英国は現在、TPPへの加盟申請を終えて審査中である。来年の加盟が認められる方向だ。この英国が、中国加盟に「絶対反対」の意思を示している。その理由は、豪州と同じでWTOの規定すら守らない中国が、TPPの規定を守るはずがないというのである。中国は多分、TPP加盟でもこの手段を使ってくるであろう。「TPP条項を守る」と約束して、守らないというこれまでの常套手段を使う積もりだ。

     

    マレーシア政府は、中国のTPPへの加盟申請について「メンバーに迎えることを楽しみにしている」との声明を出し、支持する姿勢を示した。東南アジアの参加国ではシンガポールも歓迎の意向を表明している。東南アジアの参加国ではシンガポールも歓迎の意向を表明している。

     

    日本経済新聞の取材にマレーシア貿易産業省が19日、前記のように回答した。同省は16日の中国の加盟正式申請の発表に「非常に元気づけられた」とした上で、加盟に向けた参加国との交渉が早ければ2022年にも始まるとの認識を示した。中国が実際に加盟すれば「両国間の貿易と投資はさらなる高みに到達する」とし、貿易拡大への期待が加盟支持の主な理由だと明らかにした。以上は、『日本経済新聞』(9月21日付)が伝えた。

     

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    米国が、中国の軍事的な弱点である潜水艦作戦に衝撃を与えた。豪州が、米国・英国との新たな安全保障協力の枠組みを通じ、原子力潜水艦の技術供与を受けることになったからだ。豪州は、10年計画で8隻の攻撃型原潜を建艦する。

     

    豪州のモリソン首相は9月16日、原潜配備が「防衛能力の向上へ最大の前進になる」と表明した。自由主義陣営の一員として、インド太平洋への進出を強める中国をけん制する姿勢を改めて強調した。モリソン氏は、「核武装を目指しているのではない」と述べ、核兵器を保有する可能性を明確に否定した。

     


    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(9月18日付)は、「
    米豪が原潜でタッグ、深海での中国の弱み突く」と題する記事を掲載した。

     

    オーストラリアが米国からの技術供与を受けて原子力潜水艦8隻の建造を決めたことで、米国は中国に対する制海権を強化できそうだ。また、インド太平洋における原潜による防衛網の構築を促し、中国の海洋進出に対する抑止力となる可能性がある。

     

    (1)「中国は今年の国防支出が2000億ドル(約22兆円)を超えるなど、近年急速に軍拡を進めており、海軍の規模では米国を抜いた。だが、米国は秘匿性の高い強力な潜水艦を有しており、水面下での優位性を維持している。米国は豪州に技術供与し、防衛関係を深化させることで、自国のアジア艦隊を事実上、増強できることになる。米豪両国は中国を抑止するという目標で一致している」

     

    中国の猛烈な軍拡に対して、米国は豪州への原潜技術供与で対抗する構図を明らかにした。中国の「戦狼外交」がもたらした破綻である。中国は、こうして周辺に敵対国をつくるという自滅の道を進んでいる。愚かという一言であろう。

     


    (2)「オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)の国防戦略・国家安全保障プログラム責任者、マイケル・シューブリッジ氏は「これらは極めて強力な攻撃兵器であるため、インド太平洋における長期的な軍事バランスがリセットされることになる」と指摘する。今回建造が決まった原潜は、他の潜水艦や水上艦を破壊する能力を持ち、豪州にとっては初の攻撃型潜水艦となる。
    実際に展開できるまでには10年以上を要する見込みだが、とりわけ原子力船など潜水艦の探知・破壊能力という中国の相対的な弱みの1つを脅かすことになる」

     

    豪州の建艦する原潜は攻撃型とされる。米英が、豪州原潜の運用面でも協力するので、米英豪の連合原潜部隊の出現になる。中国にとっての驚きは、一通りでないはず。中国は、これまで豪州へ経済制裁を加えて悦に入っていたが、その何十倍もの「お返し」を受ける身になった。

     


    (3)「米国防総省は昨年、中国の軍事力に関する年次報告書で、中国は海中戦闘能力を進化させているが、「深海での強固な対潜戦闘能力が引き続き欠如している」と指摘していた。中国は昨年、対潜軍事演習に関して異例の公表に踏み切るなど、潜水艦への反撃能力を改善しようとする意図をうかがわせている。米国防総省によると、米中は潜水艦の数ではほぼ肩を並べているが、米国が保有する52隻すべてが原潜であるのに対し、中国の攻撃型潜水艦62隻のうち原潜は7隻にとどまる。残りはディーゼル式攻撃型潜水艦で、ディーゼル式は排ガスの除去やバッテリー充電のために頻繁に海面に浮上する必要がある。原潜は速度でもディーゼル式に勝る」

     

    米国は、保有する海軍力の6割をインド太平洋戦略に向けると発表している。保有原潜52隻の6割は31隻である。これに豪州原潜の8隻が加われば、39隻になる。中国の原潜7隻に対して5倍強の布陣である。圧倒的に米豪の連合原潜部隊が優位に立つ。

     


    (4)「安全保障分野のアナリストは、中国台頭への懸念を背景に結成された「クワッド」と呼ばれる日米豪印4カ国による防衛協力の仕組みが強化されていることで、いずれはインド太平洋地域全体で各国の潜水艦隊の展開をある程度連携させていくのではないかと指摘している。インドは2018年に初の弾道ミサイル搭載原子力潜水艦を就役させており、ディーゼル電気攻撃潜水艦およそ15隻を保有する。一方、日本はディーゼル電気攻撃潜水艦およそ24隻を持っている。シンガポールの国際戦略研究所(IISS)のアジア太平洋安全保障担当アナリスト、ユアン・グラム氏は、豪州が南方に位置していることで、同国の潜水艦はインド洋の安全保障でインドとともに役割を担うことができると指摘する」

     

    インドは、ディーゼル電気攻撃潜水艦およそ15隻保有する。日本が同24隻である。中国にとっては、こうした劣勢挽回でロシアを引入れるであろう。

     


    (5)「潜水艦隊間の幅広いネットワークはインド太平洋における重要な貿易ルートを確実に開かれたものとし、マレーシアとインドネシアの間にあるマラッカ海峡といった航路の要所を守る一助となる。グラム氏は、このような取り決めには、軍事情報や諜報(ちょうほう)の共有に向けて大きく前進することが必要だと話す」

     

    米英豪三ヶ国の「AUKUS」(オーカス)と、日米豪印4ヶ国の「クアッド」が戦力を糾合すれば、中国は簡単に開戦の決断を付けにくくなろう。戦争抑止効果は、かなり大きくなるはずだ。

     

    (6)「ホワイトハウスによると、クワッドの4カ国首脳は9月24日、ワシントンで対面会談を行い、自由で開かれたインド太平洋の促進に向けた方策を協議する。豪州が潜水艦建造に要する何年もの間に、中国の軍事能力が向上するとの警告も専門家からは出ている。また豪州は潜水艦8隻が見込まれているが、一度に展開できるのは2~3隻となる公算が大きいという。しかしながら、地域の軍事バランスにおいては、なお重要性が高いと考えられている。豪有力シンクタンク、ローウィー研究所の国際安全保障プラグラム責任者、サム・ロッゲビーン氏は、「これはいかなる敵国にとっても重大な戦略的重みを持つ、大きな戦力となるだろう」と述べる」

     

    豪州の原潜が、一時に8隻全て揃うことはなくても、共同防衛への方向性が定まったという意味で、中国にとって重圧になるはずである。中国は、香港へ強引に「国家安全維持法」を導入し、「一国二制度」を破棄した跳ね返りが、こういう形で襲って来ている。習近平氏は、ここまで読めなかったであろう。全ては、身から出た錆である。

     

     

     

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    米英は、門外不出の原子力潜水艦技術を豪州へ提供することになった。新たに米英豪三ヶ国の安保協力体「AUKUS」を設立する。AU=豪州、K=英国、US=米国である。

     

    米英豪三ヶ国は、南シナ海や東シナ海で奔放な動きを見せる中国軍に対して、有事の際は「開戦72時間以内」に中国海軍の全艦船を沈没できる攻撃体制を整える。これにより、中国の際限ない軍事膨張に対してトドメを刺す狙いだ。中国が、台湾や尖閣諸島へ行う侵攻作戦を諦めさせようとするものである。

     

    『朝鮮日報』(9月17日付)は、「中国けん制のため 米英、原子力潜水艦の極秘技術を豪に移転」と題する記事を掲載した。

     

    米国が英国、豪州と共に3カ国の新たな安保協力体「AUKUS」を立ち上げることを9月15日(現地時間)正式に発表した。米国、日本、豪州、インドによる4カ国連合体「クアッド(Quad)」に続きまた新たな対中けん制ネットワークが誕生する運びとなった。

     


    (1)「AUKUSは3カ国による初の協力事業として、豪州に「原子力潜水艦艦隊」を立ち上げることにした。米国と英国が全面的に支援を行うという。米国が原子力潜水艦の建造に必要な原子力関連技術を他国に移転するのは、1958年に英国に移転して以来63年ぶりとなる。3カ国首脳はこの日発表した共同声明で「可能な限り早い時期に豪州がこの能力を実戦配備できるようにしたい」との考えを示した。豪州は近くアデレードで原子力潜水艦の建造を開始する予定だ」

     

    豪州は、フランスと進めてきた潜水艦建艦契約を破棄した。これに対してフランス側は激怒している。歴史的な英仏対立の構図を覗かせている。歴史は、こうして繋がっていることを示唆して興味深い。

     

    豪州が、米英最新技術の原子力潜水艦を建艦すれば、南シナ海に潜む中国潜水艦を一網打尽にできるのであろう。中国が、これまで練ってきた「第一列島線」防衛構想は、「AUKUS」によって簡単に崩されるのだ。

     


    (2)「米国のバイデン大統領はこの日、豪州のモリス首相、英国のジョンソン首相と共に行った遠隔による3カ国共同記者会見で「我々はインド・太平洋の長期的な平和と安定を何としても保証する必要性を認識しているため、今日3カ国間の協力を深め、これを正式なものとする一つの歴史的一歩を踏み出した」と述べた。バイデン大統領は「我々3カ国と世界の未来は、自由で開かれたインド・太平洋が引き続き維持され、繁栄するかどうかにかかっている」「米国はさらにASEAN(東南アジア諸国連合)、クアッド、インド・太平洋の条約同盟5カ国および近いパートナー、欧州と世界の同盟国やパートナーと引き続き協力を進めるだろう」との考えも示した」

     

    米国は、対中安保体制においてAUKUSのほかにASEAN、クアッド、インド・太平洋の条約同盟5カ国などと協力する。NATO(北大西洋条約機構)との連携も視野に入れて、何重もの防衛網を敷くと宣言した。こうなると、中国は迂闊に他国侵攻を行えば、重大な反撃を食い、習近平体制そのものの瓦解を招くリスクを生む。「中華の夢」も萎むであろう。

     


    (3)「3カ国の首脳は、この日発表した共同声明で「情報と技術の共有を深めて行き、安全保障および国防と関連した科学、技術、産業基盤、サプライチェーンの統合を深めていきたい」の考えも明らかにした。さらに「合同の力と相互の運用性を強化するため、より多くの分野で3カ国による協力を始める」とした上で、サイバー能力、人工知能、量子技術、海底での新たな技術開発を初期の重点事項とした」

     

    AUKUSは、防衛面だけでない。科学、技術、産業基盤、サプライチェーンの統合を深めるという。米国は、クアッドも率いており西側陣営の頂点として中国へ対峙する決意を示している。

     

    (4)「米国が伝統的な同盟国である英国に続き、63年ぶりとなる原子力潜水艦技術の移転先として豪州を選んだ背景には、豪州による中国けん制の意思とその力の双方を高く評価したことがあげられる。バイデン大統領はこの日行った共同記者会見の際、英国と豪州について「長きにわたる誠実かつ有能なパートナーだ」と表現した。最近になって豪州は中国と明らかに対立する姿勢を示しており、また豊富な天然資源などで中国も軽々しく扱えない立場にある点も考慮した発言だった」

     

    豪州は、中国と鋭く対立している。中国の経済制裁を受けても「馬耳東風」の構えだ。今回の原潜装備によって、逆に中国へ圧力を加える立場になった。中国は、これで完全にお手上げとなろう。

     


    (5)「米国からの原子力潜水艦技術移転は、「有事に3日以内の中国海軍壊滅」を目標にしているとの分析もある。米国のシンクタンク「アトランティック・カウンシル」のマシュー・クロニック戦略イニシアチブ局長はこの日、ホームページを通じ「中国の軍事攻撃を抑止するために米国と同盟国は72時間以内に中国海軍を壊滅する能力が必要だ」「米国の支援を受けて豪州が建造する攻撃用潜水艦は敵艦破壊に適しており、これこそまさに中国に対抗して我々がインド・太平洋において強化すべき抑止力と防衛能力だ」と説明した」

     

    下線部分は重要である。中国の潜水艦部隊は南シナ海に潜航して攻撃体制を敷いても、米豪の原潜部隊がこれら中国艦船を72時間以内に破壊できるというのだ。戦闘経験のない中国艦船にとって脅威であろう。

     

    (6)「バイデン大統領就任直後に国防長官候補として名前が上がっていたミシェル・フロノイ元国防次官は昨年6月、米国の外交専門誌『フォーリン・アフェアーズ』に「米国が72時間以内に南シナ海の全ての中国軍艦船、潜水艦、商船を沈没できると信じさせるほどの脅威を与える力があれば、中国の指導者たちは台湾に対する封鎖や侵攻などを始める前に再考するだろう」と主張した。豪州海軍がこの海域で原子力潜水艦を展開するようになれば、このような効果も実際に期待できるということだ」

     

    米軍が、開戦72時間以内に中国の艦船や商船を破壊できる能力を持つことは、中国に対して無謀な開戦を思いとどませる要因となろう。無益な戦争を防ぐには、西側諸国が圧倒的な軍備を持つしかない。

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    「血は水より濃し」である。豪州は、米英から原子力潜水艦の技術移転を受けて原潜建艦に取りかかる。米国が、秘蔵の原潜技術を移転するのは英国に次いで豪州は二番目となる。豪州の原潜が完成すれば、南シナ海に潜む中国原潜への「ハンター役」を果たす。中国は、ますます「袋のネズミ」になる。

     

    『日本経済新聞 電子版』(9月16日付)は、「米英、豪州の原子力潜水艦配備を支援 中国念頭に」と題する記事を掲載した。

     

    米国、英国、オーストラリアは9月15日、インド太平洋の安定に向けた新たな安全保障協力の枠組みの設置で合意したと発表した。3カ国による外交・安保担当の高官協議を立ち上げ、協力の第1弾として米英が豪州の原子力潜水艦の配備を支援する。中国を念頭に抑止力を強化する。

     


    (1)「新たな枠組みは3カ国の頭文字を組み合わせた「AUKUS」。バイデン米大統領は15日(日本時間16日午前)、ジョンソン英首相、モリソン豪首相とオンラインを通じて共同記者発表に臨み「21世紀の脅威に対処する能力を最新のものに高めていく」と強調した。原潜は原子力を動力とした潜水艦で、核保有国である米英が強みを持つ。秘匿性が高く長い時間の潜航が可能な原潜を展開できれば、中国の軍事活動が活発になっている南シナ海などを含むインド太平洋地域での抑止力が高まる」

     

    豪州は、通常動力型原潜の建艦でフランスと提携しているが、その後の進捗状況は報じられていない。一時、仏豪間にギクシャクしたものが存在するとされていたが、豪州は米英と提携して原子力潜水艦へとステップアップする。

     

    韓国も原子力潜水艦建艦を決めたが、肝心の技術は米国に依存するほかない。ただ、米国がこれに応じるかどうか疑問視されている。韓国の外交姿勢が、中国との二股であることから技術漏洩になれば元も子もなくなるからだ。その点、豪州は米英にとって同じルーツで信頼できることと、「ファイブ・アイズ」(米・英・豪・加・ニュージーランド加盟)のメンバーである。韓国とは親密度の次元が異なるのである。

     


    日本は、平和憲法の建前上、原子力潜水艦建艦は不可能である。攻撃型であるからだ。

     

    (2)「3カ国はこれから18カ月かけて製造や訓練など必要な計画をまとめて早期の実現をめざす。モリソン氏は非核保有国である豪州が「核兵器の保有をめざすわけではない」と説明した。軍事分野での重要性が増す人工知能(AI)とサイバー、量子テクノロジーでの協力を推進する。防衛産業における供給網(サプライチェーン)の統合も探る。米政府高官は「特定の国を対象にした取り組みではない」としながらも「インド太平洋でルールに基づく国際秩序を維持し、平和と安定を推進するものだ」と語った。強権路線に傾斜する中国が念頭にある。バイデン氏は「3カ国の協力を深め、明確にする歴史的な一歩だ」と語った」

     

    米英豪3ヶ国は、1年半の期間に原潜の建艦や乗員訓練などの計画をまとめるという。原潜だけでなくAIなどの技術協力を進めるという。強固な同盟が結成されれば、対中国への防衛布陣がより強固になる。日本にとっても心強い存在になろう。

     

    (4)「バイデン政権は24日に日本、豪州、インドとの4カ国による「Quad(クアッド)」首脳による初の対面式の会談をワシントンで開く。米英豪の新たな枠組みは多国間連携を重視するバイデン政権の取り組みの一環となる。英国は新たな安保戦略でインド太平洋地域への関与を強めている。豪州は新型コロナウイルスの起源の調査を求めたのをきっかけに中国との対立を深めている」

     

    24日には、クアッド4ヶ国の首脳がワシントンで会談する。これに先立つ、米英豪による原潜建艦協定の発表は、英国がクアッドへ参加する上での「下地」にも見える。クアッドの首脳会談では、英国加盟問題も出てくるのかも知れない。

     

    借りに、クアッドへ英国が参加すれば将来、クアッドとNATO(北大西洋条約機構)の合体という戦略展開にも広がる可能性を秘めるであろう。中国の無制限な軍拡がもたらす一つの結末であろう。

     

    フランスもインド太平洋戦略に大きな関心を持っている。海上・陸上の自衛隊と合同演習を始めており、定例化したい希望を表明している。英仏が、地理的に遠く直接的な利害を有さないようにみえる南シナ海の紛争に関与度を高めようとしている背景は、経済成長の著しいアジア太平洋での存在感を高めることが、今後の自国の国際的な地位に大きく影響するとの認識が指摘されている。

     

    英仏の戦力は限られていても、国連安全保障理事会の常任理事国としての影響力も合わせれば、中国に対する外交的な立場を強化できるとみる結果であろう。中国への軍事的・外交的な圧力は高まるばかりだ。

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    中国は豪州へ経済制裁を科しているが、当の豪州は意気軒昂である。中国が経済制裁しても、豪州産鉄鉱石は品質で抜群。豪州産を輸入しなければならない羽目に陥っている。

     

    2020年の豪州から中国へのモノの輸出額は、1478億豪ドル(約11兆7000億円)で19年から1%減っただけで済んだ。ただ、豪全体の輸出額も減少したことから、中国が占める比率は20年40.%と19年(38.%)から上昇している。形の上では、中国依存度が4割である。それでも。「脱中国」と意気軒昂である。韓国に、学ばせたいほどである。

     

    『日本経済新聞 電子版』(8月25日付)は、「豪、中国への圧力強化 強気支える鉄鉱石供給」と題する記事を掲載した。

     

    オーストラリアが人権問題などを巡り中国への圧力を強めている。豪政府は今月、人権侵害に関与した外国高官らに制裁を科せるよう法改正すると発表した。日米印の共同訓練には昨年に続き今年も参加する。豪州産の鉄鉱石に中国は依存しており、圧力を加えても中国は強力な経済制裁に踏み切れないとの読みがある。

     

    (1)「豪州のペイン外相は8月5日、「2011年自主制裁法」を改正する方針を発表した。人権侵害やサイバー攻撃など特定の行為に関与した個人や団体に資産凍結や入国禁止などの制裁を行えるようにする。中国・新疆ウイグル自治区の人権問題が念頭にある。英米や欧州連合(EU)は人権侵害を理由として外国当局者に制裁を科す法律を整備している。米国の法整備の契機となった、獄死したロシア人弁護士の名前をとって「マグニツキー法」と呼ばれる。豪州が今回の法改正で目指すのもマグニツキー法と同様の枠組みだ」

     

    豪州は、人権侵害国への制裁を強める。対象国は、言わずと知れた中国。新疆ウイグル族への人権弾圧批判である。

     


    (2)「豪国防省は8月23日、豪海軍が昨年に続き日米印による共同訓練「マラバール」に参加すると発表した。豪州は07年にマラバールに参加したが、中国が不快感を表明したため、その後20年までは参加を見合わせていた。2年連続での参加は、日米豪印4カ国が中国を念頭に安全保障などで連携する「Quad(クアッド)」重視の動きにほかならない。

     

    豪海軍が、昨年に続き日米印による共同訓練「マラバール」に参加する。クアッド(日米豪印)の合同訓練である。過去、中国が不快な姿勢を見せたので、「マラバール」参加を取り止めたが、今や堂々と参加する。

     

    (3)「モリソン首相が、中国に強い姿勢をみせるのは、中国が輸入鉄鉱石の6割超を豪州に依存していることも背景にある。中国税関総署によると、豪州が新型コロナウイルスを巡る独立調査を要求し両国関係が悪化した20年の輸入量も前年を7%上回った。中国政府は21年春から気候変動問題への対応で鉄鋼生産の抑制にカジを切った。67月の輸入鉄鉱石も数量ベースで前年同月比12割減ったが、豪産の割合は全体の6割超の水準を保っている」

     

    豪州に次ぐ輸出国のブラジルは、19年に起きた鉱山事故などにより生産が完全には回復していないという。中国にとって、良質な豪産鉄鉱石の代替ルートを見つけるのは難しいのだ。中国が、豪産大麦やワインにかけた高関税のように、鉄鉱石も輸入制限の対象に加えた場合逆に、供給制約という形で中国が受ける打撃も大きくなる。こういう計算が働いて、豪州は、中国の制裁をものともしていない。

     

    (4)「とはいえ、豪州が圧力を強め続ければ、中国が自らへの経済的な被害を度外視した経済制裁に踏み切る可能性も否定できない。モリソン政権は対中政策で米国と歩調を合わせつつ、中国への一定の配慮もみせている。3月にはEU、米国、英国、カナダがそれぞれ中国の少数民族ウイグル族への扱いが人権侵害にあたるとして中国政府当局者らに制裁を科すと発表した。ただ、モリソン政権は「各国の深い懸念を共有する」との声明を出すにとどめている」

     

    豪州も、さらに中国を刺激することを控えている。まあ、「匍匐(ほふく)前進」というところだろう。中国が2017年、豪州へスパイを送り込み内政干渉をしていたことが判明、以来、豪州が対中で強硬姿勢に転じている。日本との関係を強化しており準同盟国的になっている。 

     

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