勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: 台湾経済

    テイカカズラ
       


    台湾は、欧米への経済的協力で積極的姿勢を見せる。米国に対しすでに、インド太平洋戦略の経済的枠組に協力する意向を固めている。中国が、「戦狼外交」によって反感を買われているのをチャンスに、台湾のトレードマークである半導体技術をひっさげ、台湾への友好国を増やす戦術だ。

     

    中国は、東欧のリトアニアが台湾代表部設置することで反対し対立を深めている。台湾は、これを機にリトアニアへ10億ドルの協力金を提供し、半導体工場建設を示唆している。これは、EU(欧州連合)全体に「台湾歓迎ムード」をもたらしており、EUは中国によるリトアニアへの経済制裁に対抗措置をとる方向へ動いている。

     

    『日本経済新聞 電子版』(1月20日付)は、「台湾、米主導の経済枠組み参加に意欲 駐米代表会見」と題する記事を掲載した。

     

    台湾の駐米大使に相当する駐米台北経済文化代表処の蕭美琴代表は日本経済新聞のインタビューに応じ、米国が創設をめざすインド太平洋地域の経済的な協力の枠組みに「台湾も加われるよう希望している」と参加に意欲を示した。サプライチェーン(供給網)やデジタル貿易、インフラなどで民主主義勢力が連携し、中国の威圧に対抗する必要があると強調した。

     

    (1)「蕭氏は、安全保障に関する蔡英文(ツァイ・インウェン)総統の上級顧問を経て2020年7月に現職に就いた。蔡氏の右腕として知られ、外交政策の決定に深く関わる。21年1月にはバイデン大統領の就任式に出席した。米大統領の就任式に台湾の駐米代表が正式に招待され、出席するのは1979年の米台断交後初めて。21年12月にバイデン氏が主催した「民主主義サミット」にも参加した。蕭氏はインタビューで、民主化の成功で開放性や創造性を高めた台湾の民主主義の維持は「価値だけでなく、戦略としての重要性がある」と語り、中国による香港への抑圧などアジアの民主主義を後退させないために極めて重要と指摘した」

     


    中国による香港への「国家安全維持法」導入以来、西側諸国は台湾を守れという意識が高まっている。これは、中国にとって予想外のことであろう。香港を得て台湾を失った感じである。インド太平洋戦略は、表面には出ていないが台湾防衛が主題である。そうでなければ、結成する意味はなかったであろう。

     

    (2)「バイデン米政権の複数の高官は、日本などの同盟国・友好国と近く「インド太平洋経済枠組み」を立ち上げ、経済面でのアジア関与を強める意向を示している。蕭氏は「中国の経済的な威圧、不正な操作、影響力の行使に対抗するには、国際的な貿易ルールを尊重する民主主義勢力が結束、連携するしかない」と語り、サプライチェーンの安定へ重要な役割を担う台湾を枠組みに入れることが「全ての参加者にとっての利益になる」と言明した。台湾が締結を目指す米国との貿易協定については「米国が重要性を真剣にとらえるよう希望する」と述べた」

     

    「インド太平洋経済枠組み」は、条約という形式を踏まない見込みである。議会で承認という煩雑さを嫌い、実効面で効果の上がる方式を模索していると言う。台湾も、この枠組に加入して、「クアッド」を経済面で支えることで「日米豪印」へ貢献しようという狙いと見られる。こうなると、台湾は韓国とバッティングすることになる。韓国の立ち位置が微妙になろう。

     


    (3)「中国による台湾への軍事的、経済的な威圧については、「武力行使を排除しない意志、軍事能力の急速な強化の両面で、深刻な脅威を感じる」と明言。台湾の自衛力増強によって中国の実力行使を阻止することを最優先の課題に挙げた。中国の抑止に向けた米国と台湾の防衛協力は「非常に幅広く多面的だ」と強調し、台湾海峡の現状維持へ米国が日本、オーストラリアや欧州の同盟国と結束を強めている動きを評価した」

     

    台湾は、秘密裏に山中に飛行機や武器弾薬を隠していると言われる。中国の不意を突く戦略である。米軍によって、台湾軍の訓練が行なわれている。

     


    (4)「蕭代表は、「米国の党派を超えた台湾への支持に感謝する」と述べ、与党・民主党、野党・共和党の両党議員から数多くの台湾訪問の申し出があると明らかにした。現在は新型コロナウイルスの厳しい感染防止措置で動きが鈍ったが「さらに多くの米議員による台湾訪問を歓迎する」と、交流の一段の深化に期待を示した。日本との関係では「台湾への新型コロナワクチンの寄付に感謝する」と表明。台湾が中国とほぼ同時に申請した環太平洋経済連携協定(TPP)への参加では「日本や地域の有力国がオープンな姿勢で台湾を支持してくれることを強く期待する」と述べた」

     

    台湾のTPP加盟について、日豪は「歓迎する」と言明している。だが、中国については、「条件クリアは厳しいだろう」と釘を刺している。台湾を歓迎し、中国を拒否する意向だ。台湾が、TPPへ加盟すれば台湾の国際的認知が一層進むと見られる。

     

     

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    世界の中国経済への見方が、一夜にして代わってしまった印象である。本欄のように、10年以上も前から不動産バブルの危険性に警鐘を打ってきた立場からすれば、世間の変わり身の早さに戸惑うほど。これまで、中国発展間違いなしと見てきた人たちにとって、急に舞台が暗転したと見えるのであろう。

     

    いずれにしても、中国経済への認識が改まったことは歓迎すべきである。これまでの「度の合わないメガネ」を補正して、「ピント」を合せたのは,正しい中国を認識する上で良いことである。

     

    『ニューズウィーク 日本語版』(1月4日付)は、「ピークを過ぎた中国は世界の脅威、習近平がまず噛みつく相手は?」と題する記事を掲載した。筆者は、英国オックスフォード大学総長のクリス・パッテン氏である。最後の香港総督、元欧州委員会委員を勤めた。

     


    (1)
    「『ポスト・ピーク期』の中国が抱える構造問題は、今後ますます明白になるだろう。中国はこれまでのような、厄介なほどの成功を収めた新興大国ではなくなったようだ。中国がピークを過ぎたことを最も劇的な形で示した事例が、不動産大手・中国恒大集団の経営危機だ。これを2008年のリーマン・ショックと比較するのは適切ではないだろう。この問題は単なる市場の大失敗ではなく、中国政府が直面する3つの重大危機のうちの2つが結び付いたものだ」

     

    不動産大手・中国恒大集団の経営危機は、不動産バブルが支えてきた中国経済の破綻を象徴する事件である。

     

    (2)「1つ目の危機は、特に不動産部門で深刻な過剰債務だ。今の中国は、10年前と同等の成長を達成するために2倍の借り入れを必要としている。ハーバード大学のケネス・ロゴフと清華大学の楊元辰(ヤン・ユアンチェン)の試算によると、不動産・建設部門は中国のGDPの29%を占める。土地の使用権売却は極めて重要な地方政府の収入源であり、中国の個人資産の約78%が住宅関連だ。しかし、民間部門の債務総額は2008年~2019年の間に8倍に膨れ上がり、現在ではGDPの約3倍の規模になっている」

     

    中国経済は、不動産バブルにまみれている。民間部門の債務総額はGDPの3倍にも膨れている。

     


    (3)「
    2の大きな問題は、人口動態だ。債務の急増と生産性の低下は、生産年齢人口の劇的な減少に伴って起きている。予測によれば、中国の労働人口は2050年までに1940万人減少する見込みだ。さらに中国では男女比率の不均衡が大きく、世帯数と出生率の両方が減少している。この傾向は最も若い年齢層で顕著であり、10~14歳の男女比は1.2対1だ。世帯数の減少を考えれば、住宅建設ブームが多くの無人アパートと少なくとも50の鬼城(ゴーストタウン)を生み出したことも不思議ではない」

     

    下線部は重要な指摘だ。債務急増は、必然的に生産性低下と結びついている。この事態が、生産年齢人口(中国の場合、15~59歳)の急減少下に起こったことだ。卑近な例で言えば、還暦過ぎた人間が、過大な借金を背負った状態である。満足に返済できるはずがない。

     

    (4)「こうした問題に対処するため、習は生産性の高い民間企業への統制を強め、国有企業を優遇する方向に大きく舵を切った。この政策の背後にあるのは、成功した大手IT企業に主導権を奪われ、民間部門の経済的成果が格差を悪化させることへの恐れだ。中国共産党にとって、経済的格差は第3のアキレス腱である。しかし、富と所得の不平等さを測るジニ係数を見ると、現在の中国は多くの欧米先進国よりも格差が大きく、アメリカのレベルに近づいている(引用者注:中国のジニ係数0.47台、米国0.39で米国の方が低い)少数の億万長者に財産の一部を差し出させたとしても、これでは焼け石に水だろう。格差を是正するためには、党上層部のために多額の富をかき集める共産党の権力構造の解体が必要になる」

     

    債務急増を引き起したのは民間企業である。そこで習氏は、民間企業の統制を行い「共同富裕」という美名でカムフラージュしようとしている。だが、中国の経済格差を示すジニ係数は、米国以上の最悪事態である。経済格差の改善は、税制改正でしか解決できない。それを行なうと、共産党幹部に負担が掛かるので二の足を踏んでいる。中国共産党では、この経済的不平等の根本的解決が不可能である。

     


    (5)「
    習近平の中国は、深刻な資源と環境の問題も抱えている。原油の輸入量は世界最大。食糧安全保障の問題にも直面している。気候変動の影響も甚大だ。特に中国北部は水不足に陥っている。中国の水資源は世界の7%にすぎないが、人口は18%を占め、人が住む場所と水がある場所の間に完全なミスマッチが生じている。中国が二酸化炭素の排出量を削減すれば、さらなる経済成長の足かせとなる可能性が高い。いずれにせよ債務問題と人口問題の結果、経済成長は横ばいになるだろう。国民が経済危機を実感すれば、習はさらなる監視と脅迫によって権力を維持しようとする可能性がある」

     

    下線部の水不足は、中国の致命傷になっている。半導体不足・食糧不足・エネルギー不足を加えた状況で、中国は他国と紛争を起こせない根本的欠陥を抱えている。実は、その認識のないことが致命的である。

     


    (6)「危険なのは習がさらに攻撃的になることだ。その場合、経済成長を通じて国民の暗黙の支持を保つ代わりに、状況が悪化するなかでナショナリズムをあおり立て、支持を得ようとする可能性が高い。多くの専門家が、中国の台湾侵攻を現実の脅威とみている。世界にとって、今は危険が増している時代だ。自由民主主義陣営は習近平政権に対し、越えてはならない「レッドライン」があること、その1つが台湾海峡に引かれていることを、注意深く、だが毅然とした態度で明確に示さなければならない」

     

    習氏は、経済的に追い込まれる中で、ナショナリズムをあおり立てる危険性を抱えている。国内危機を外部危機(台湾侵攻)に転嫁させるリスクだ。だが、中国は半導体不足・食糧不足・エネルギー不足で、経済封鎖に最も弱い体質である。「飛んで火に入る夏の虫」という事態になりかねないのだ。

     

    習氏は、台湾侵攻で敗北すれば国家主席を辞任せざるを得ないくらい自覚しているはず。となれば、瀬戸際政策を行なっても戦端を開かないと見る。これは、習氏が正常に判断をできるという前提の話である。

     

     

     

    テイカカズラ
       

    韓国は、独立国かと疑わせるような事態が起こった。韓国の大統領直属第4次産業革命委員会が、台湾の唐鳳(オードリー・タン)行政院デジタル担当政務委員(閣僚級)にオンラインでの講演を依頼していたが、講演1時間前に韓国側がキャンセルしたのである。台湾メディアは、韓国の対応について「中国との関係を考慮した」と報じている。

     

    韓国の「二股外交」はよく知られている。それにしても、韓国政府が招待した台湾の閣僚級オンライン講演を、中国の横槍で直前に中止するとは呆れてものも言えない状況だ。ここまで、中国の顔色を覗っているとは、属国的な振る舞いである。

     


    『ハンギョレ新聞』(12月22付)は、「台湾デジタル担当相の演説を行事直前に取り消した韓国政府の『外交的非礼』」と題する社説を掲載した。

     

    大統領の直属機構である第4次産業革命委員会が、台湾の長官クラスの人物を国際カンファレンスに招待しておきながら行事の直前に突然演説を取り消した。外交的非礼も甚だしい。台湾問題は最近、国際的に最も敏感な外交事案の一つという点で、思慮に欠ける処置という批判は避けられない。

     

    (1)「台湾外務省は20日夜、ホームページに声明を発表し、韓国政府の第4次産業革命委員会が今月16日に開催した「第4次産業革命グローバル政策カンファレンス」で、台湾のオードリー・タン(唐鳳)デジタル担当政務委員(長官級)に主題発表を要請したが、行事直前に演説を中止させたと公開した。台湾外交部は「韓国側の欠礼に関し、駐台北韓国代表部の代理代表を呼んで強い不満を示し、駐韓台湾代表も台湾政府の厳重な抗議を伝えた」と明らかにした」

     

    『ハンギョレ新聞』は、文政権支持メディアである。そのメディアが、ここまで政権批判した社説を掲げたのは、文政権の目に余る「二股外交」への警鐘であろう。韓国が、招待演説を依頼しながら、1時間前に取消すとは、二重の「外交欠礼」になる。

     


    (2)「台湾メディアの報道によると、今年9月にタン政務委員にオンラインでの演説を要請した第4次産業革命委員会は、16日午前7時50分(韓国時間8時50分)に電子メールで演説キャンセルを通知し、「両岸(中国・台湾)関係の様々な側面を考慮した」という理由を述べたという。行事の開幕が10時なのにもかかわらず、わずか1時間前にキャンセルを通知したのだ。タン政務委員がどれほど呆れ戸惑ったことか、想像に難くない」

     

    キャンセルした理由が、「両岸(中国・台湾)関係の様々な側面を考慮した」という。最初から分かりきったことを承知で招待したはずだ。中国の猛烈な圧力に屈したに違いない。これで、韓国外交は一段と国際的な評価を下げることになった。

     

    (3)「4次産業革命委員会が「より良い未来のためのAI(人工知能)デジタル転換」をテーマに開いた今回のカンファレンスは、オンラインとオフラインで行われ、行事の案内の報道資料もオードリー・タン政務委員を「台湾デジタル担当相」と紹介し、発表者と告知した。2017年に設立された同委員会は、キム・ブギョム首相とAIの専門家であるソウル大学のユン・ソンロ教授が共同委員長を務めている」

     

    台湾のオードリー・タン政務委員は、天才ハッカー出身とされる。それだけに貴重な意見が開陳された筈だ。韓国政府は、その機会を自らの優柔不断な外交で失った。

     


    (4)「台湾の長官級の人物が韓国政府の行事で演説することに対し、中国政府の反対があったか、または韓国政府が中国の反発を憂慮して演説を取り消したのではないかという議論が起き、外交部は事態の収拾に苦心している。外交部のチェ・ヨンサム報道官は21日、「諸般の状況を総合的に検討して決定したと聞いている」としながらも、具体的な背景については明らかにしなかった。理由が何であれ、大統領直属の機関で他国の長官級の人物に頼んだ演説を直前に取り消したことは、深刻な外交的非礼だ

     

    韓国が、他国の圧力に簡単に屈する姿を見ると、朝鮮李朝の末期に清朝・ロシア・日本の圧力によって右往左往した姿を彷彿とさせる。独立国としての「信念」がないのだ。

     

    (5)「『天才ハッカー』出身で台湾の最年少長官として名の知れたオードリー・タン政務委員は、デジタルを基盤とする台湾の革新と「開かれた政府モデル」を世界に知らせる役割を積極的に果たしている。今月9~10日にバイデン米政権が開催した「民主主義首脳会議」にも台湾代表として出席し、演説している。タン政務委員の知名度と台湾問題の敏感性が加わり、今回の外交的非礼は国際社会でも注目を集めている。最近、韓国の外交が米中間の「戦略的曖昧さ」にはまり、「顔色を伺う外交」をしていると指摘する人が少なくない。このような時であるほど、外交の原則と戦略を精巧に立て、きめ細かい外交をしなければならないということを重ねて強調したい」

     

    このキャンセルは、米韓同盟にも微妙な影響を与えるであろう。米国は改めて、韓国を「クアッド」(日米豪印)に参加させずホットしているだろう。この調子では、貴重な情報が中国へ筒抜けになるところだった。彷徨える韓国は、李朝と同じ軟弱体質である。

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    米国は、中国とのオンライン首脳会談後、畳みかけるように台湾をめぐって「接近戦」を展開している。中国が抱いている「米国衰退論」を打ち砕くようにパンチを繰り出しているのだ。「米国を舐めるなよ」と、言い聞かせるような動きである。

     

    欧州も、台湾の民主主義防衛へ協力姿勢を強めている。12月中旬発足予定のドイツ新政権は、メルケル氏の「親中政策」を離れて、「台湾接近」姿勢を強めている。EU(欧州連合)が、半導体強化に動いており、台湾を取り込もうという戦略が見え見えである。

     

    米国は、こういう欧州の動きを見ながら協力して、台湾防衛を強化して中国に台湾侵攻を諦めさせる意図を明らかにしている。

     


    バイデン米政権は、12月9~10日、初の「民主主義サミット」をネット経由で開催する。この民主主義国家を集めて開催するバーチャル会合へ、台湾を招待したのである。中国は、外交的に台湾を孤立させようと圧力をかけていることへ対抗する動きである。米国は、民主的な100カ国・地域以上の政府が招待しており、中国やロシアなど専制主義的な国家の首脳は除外した。バイデン政権は、この場へ台湾を招くことで、国際会議に台湾を参加させる取り組みを広げるとともに、中国の脅しに対抗する「橋頭堡」として、台湾の地位を高める狙いがある。『ウォール・ストリート・ジャーナル』(11月25日付)は、このように分析している。

     

    『中央日報』(11月26日付)は、「再び訪台した米議員団『到着映像も公開』、中国『また挑発』激昂」と題する記事を掲載した。

     

    米中首脳間のオンライン会談が行われてから10日後、米下院議員が再び台湾を訪問した。中国は「挑発」としながら強力に反発している。米議員団の訪問は今月10日に続いて今月に入って2回目となる。

     

    (1)「台湾中央通信は、米下院在郷軍人委員会のマーク・タカノ委員長のほか民主党・共和党の下院議員5人や議会補佐官ら17人が25日午後10時10分(現地時間)、米軍C-40C行政専用機を通じて松山空港に到着したと伝えた。これに先立ち、米上・下院議員団が米軍輸送機で台湾を訪れた当時、到着場面を非公開とした台湾当局はこの日、米議員が着陸する場面を外部に公開した。代表団が搭乗したC-40Cはボーイング737機の軍用機バージョンで、米海軍や空軍が主要公務員や物品を輸送するときに使われる専用機だ」

     


    米国の超党派議員団は、11月に二度も訪台して米台関係が密接であることを示した。米国が、米中首脳会談後に強い姿勢へ転じているのは、米国による「台湾防衛」への本気度を示している。台湾だけでなく、ASEAN(東南アジア諸国連合)へも「逃げない米国」を見せつけているのであろう。久々に見せた「強い米国」再現を意図している。

     

    (2)「彼らは26日午前、台湾在郷軍人会を訪問した後、午後に蔡英文総統と台湾国防長官と相次いで会談する予定だ。台湾外務部は、議員団到着直後に出した声明で、「米下院議員の訪問は米議会の超党派的で堅固な台湾-米国関係の支持を示すもの」としながら「今回の訪問を通じて台湾と米国議会の間の深い友情を一層深化できると信じている」と歓迎した。台湾総統部の張惇涵報道官も「これら議員団は台湾の世界保健機関(WHO)オブザーバー資格の回復を支持する法案に署名するなど台湾の国際参加を積極的に支援している」とし、「台湾と米国の関係と地域の安全保障問題に対する深みのある交流を望む」と明らかにした」

     

    米国の台湾への肩入れは、国際機関への台湾復帰のテコにすることと、中国による台湾と国交を結んでいる国々への圧力を取り除く狙いもある。中国は、世界での台湾の存在を消したいと願っている。そのため先ず、台湾と国交断絶させる工作を展開している。資金供与などの「買収戦術」を使って、相手国を籠絡させる汚い手である。

     


    (3)「相次ぐ米議員団の訪問に対して、中国メディアは朝から「また挑発」という見出しの報道を相次いで流して激昂した反応を見せている。中華網は、「米国の政治家が台湾問題に荒々しく介入して衝突を起こしている」とし「今後は恐ろしくないのか」と非難した。米中のオンライン会談でバイデン大統領は「一つの中国」政策を支持するという原則的な立場を明らかにしたが、台湾を巡る米中の対立は悪化の一途をたどっている」

     

    中国は従来、米国機が台湾へ着陸したら、「何が起こるか分からない」と威嚇し続けてきた。現実には、何の威嚇行為もせずに口頭非難に止まっている。万一、軍事行動を取れば何が起こるか。中国も軽率な真似はできないのだ。米国は、こういう瀬踏みを続けながら米台関係強化に踏み出している。

     

    (4)「米国務省は前日、12月9~10日に米国主導で開かれる「民主主義サミット」の公式招待名簿を公開し、この中に台湾を含めた。これに対して中国外交部の王毅部長は24日、「民主主義という旗を掲げて世界の分裂を策動している」と激しく非難した。中国外交部の趙立堅報道官も「台湾独立勢力とともに火遊びすれば自らの身を焼くことにつながる」と再度警告した」

     

    このパラグラフに見られるように、中国は「口先非難」に止まっている。

     

    (5)「11月23日には米国・台湾間の経済繁栄パートナーシップ対話(EPPD)が開かれた。半導体など産業体サプライチェーンに対する協力と、中国圧迫に対する共同対応を約束している。米国はこの日、米第7艦隊所属の誘導ミサイル駆逐艦「USSミリアス」(DDG‐69)を台湾海峡に通過させた

     

    米国はこの日、米第7艦隊所属の誘導ミサイル駆逐艦「USSミリアス」(DDG‐69)を台湾海峡に通過させて、万一に備える用心深さを見せた。役者は、米国が何枚も上である。世界覇権国としての貫禄を見せているのだ。

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    中国は、台湾の蔡英文総統が「米軍が台湾軍の訓練に参加している」と発言したことで、激怒している。中国も薄々は知っていたのであろうが、台湾総統の発言によって米軍による台湾軍へのテコ入れが公になった。

     

    蔡氏は、米国CNNとのインタビューで「人々が思っているほど(駐留する米兵は)多くないが、米国とは防衛能力の向上を目的に、幅広い協力関係にある」と指摘した。通常、米軍がほかの国や地域の軍隊を訓練する場合、共同作戦への準備が視野に入る。この点について蔡氏は明確に発言しなかったが、米国は台湾への武器供与を続けている。米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』は10月7日、米軍が短くとも過去1年にわたり、台湾軍を訓練してきたと報じた。特殊部隊や海兵隊を秘密裏に台湾へ派遣していたという。

     

    台湾の蔡氏が、米軍の台湾駐留事実を初めて公式に認めたことで、中国は台湾に対して強硬発言をしている。中国国防部は28日、「必要なすべての措置を講じる」と警告し、外交部は「台湾独立は死の道」と言い切るほどだ。米国シンクタンクでは、中国による台湾侵攻のシミュレーションを行っている。その結果、自衛隊が参戦することで状況は大きく変わるとしているのだ。



    『大紀元』(10月29日付)は、「中共による台湾侵攻シミュレーション 抑止には日本の台湾支持が特に重要=シンクタンク」と題する記事を掲載した。筆者は、佐渡道世氏である。

     

    台湾海峡をめぐる米中衝突のリスクが高まるなか、米シンクタンクは10月26日、中国共産党による台湾侵攻を想定した机上の模擬戦争(ウォーゲーム)を実施した。分析によれば、台湾の南東にある東沙諸島(プラタス諸島)を中国に占拠された場合、再び島を台湾に戻すことは極めて難しいという。東沙諸島は南シナ海の海上交通路に差し掛かる位置にあることから、中国共産党はかねて入手を試みると想定されてきた。東沙諸島は台湾の施政下にあり、台湾軍兵士500人が駐留する。

     

    (1)「模擬戦争を実施した外交安保シンクタンク・新アメリカ安全保障センター(CNAS)は結果を受けて、侵攻が起こるのを未然に防ぐことが最も重要だと結論づけている。台湾と米国は特に、中国の行動の抑止には日本の関与が不可欠だと指摘する。日本の関与への期待は、中国が絡む他の紛争リスクを抑え込む成功例になりうるためだ。もし、「日本が台湾支持をはっきりさせないなら、中国軍撤退を呼びかける努力の効果も損なわれる」。また、台湾侵攻が実施されてしまえば「日本の領土を含むほかの紛争においても、中国による歯止めの効かない攻撃を許す前例となりかねない」と警告を発した」

     

    下線部は、中国の軍事行動を抑止するには日本の関与が必要であると指摘している。理由は、明らかにされていないが、自衛隊が中国軍の弱点を熟知しているという意味であろう。また、中国経済に及ぼす日本影響力の大きいことを示唆している。中国は、日本の要求を無視できない立場にあると見ているのだろう。

     

    (2)「米国、台湾、中国の専門家によるこのCNASのシミュレーションでは、2025年に中国人民解放軍の特殊部隊が「訓練」と称して突如、東沙諸島に上陸することを想定している。中国軍は島の台湾軍駐屯地を占拠し、兵士らをつぎつぎに捕虜に取る。そして、中国の武装警察や「民間」部隊を常駐させ、実質上の軍事基地化を始める。南シナ海一帯で軍事演習を強化するとともに、台湾への経済的圧迫を強めていく。台湾は最悪の事態である全面戦争を避けるため外交努力を続けるが、周辺国は懸念や非難の声明を出すのみで、効力は低いという。米国は台湾の米軍配置で一時的に対応するが、このほか官民一体の対策センターの設置やインド太平洋のパートナーシップ構築といった「緩慢な政策」しかとれないとCNASはみている」

     

    下線部の擬装作戦は十分にあり得ることだ。最近でも、中国軍は頻りに上陸作戦の訓練を繰返している。中国軍が東沙諸島侵攻後に、米台が「話合い解決」といった生温い対応をすると、禍根を残すと指摘する。上陸してくる中国軍は、徹底的に排除しないと既成事実をつくらせる。そこで、「一兵」たりとも上陸させてならないのだ。

     

    シミュレーションでは、「AUKUS」(米英豪)の原潜部隊出撃は含まれていないようである。最初が肝心である。AUKUSも参戦して、中国軍を追い払うべきである。中国へ、ことの厳しさを教えることである。

     


    (3)「最終的に、米国と台湾は中国を外交的・経済的に孤立させることに注力し、国際的な支持を得ようとする。しかし、台湾に関して「内政干渉」を主張する中国によるアジア地域の影響は強く、ゲームの主導権もまた依然として中国にあり、奪取された島の返還は極めて困難になるという。こうした島の侵攻を未然に防ぐために、CNASは、東沙諸島を、捕食者に危険をわからせる「ドクガエル」にするよう提案している。中国にこの島を占拠すれば軍事、経済、政治の面において高コストであると認識させ、侵略を防ぐ戦略だ」

     

    中国に、東沙諸島侵攻がいかに高い代償を払う結果になるか、事前にそれを知らせる必要性を強調している。そこで、ASEANから最大の信頼を得ている日本が、率先して動くことの重要性を指摘している。軍事的には、潜水艦部隊が出撃して、中国艦船を撃沈すること。経済的には輸出を止めること。ASEANを結束させるべく根回しをすること、などが期待されているのであろう。

     

    (4)「CNASは、中国の侵略を未然に防止するうえで、日本の協力が不可欠だと強調した。米国の同盟国である日本が関与することで、中国による軍事行動や外交がもたらすリスクが変化する可能性があるためだ。日本が関与することで、インドやオーストラリアとの4カ国戦略枠組み(クアッド)の連携も高められる。そして、ベトナムやフィリピンなど、中国による領土侵略に直面する他国との連携の機会も生まれる。報告書によると、この模擬戦争は「将来の予測」ではないが、脆弱性を見つけ、さまざまな意思決定手段を探るのには有効だと付け加えた」

     

    ASEANの中で、日本が最大の支持率を得ている。全体の半分以上が、日本を「好ましい」としている。米国や中国を上回っているのだ。これだけ高い支持を得ている日本が、台湾危機に対して逃げ腰であれば、ASEANの失望を買うだろう。

     

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