中国は、奇襲作戦にいろいろと策を練っている。今度は、民間フェリーを改造し水陸両用装甲車を乗せて、上陸作戦に使用するのでないかとの憶測が生まれている。民間フェリーは、相手を油断させる上で効果的であろう。民間船であれば、攻撃対象にならないからだ。敵を欺く戦術だ。
これまでは、漁船を擬装して武器弾薬を積み島嶼を急襲する方法を取ってきた。このやり方は広く知れ渡ったので、今度は民間フェリーへと格上げして奇襲作戦を展開するつもりであろう。民間フェリーでは、攻撃されまいという狙いに違いない。あくまでも、相手の油断を誘う戦術である。手が込んできた。
『大紀元』(8月9日付)は、「中国、水陸両用作戦に民間フェリーを改造=米海軍研究者」と題する記事を掲載した。
米海軍大学の研究者がこのほど発表した調査報告書は、中国当局は軍事行動の水陸両用作戦で使用するために民間フェリーを改造していると指摘した。これにより、中国当局が台湾を武力侵攻した場合、中国海軍の水陸両用攻撃能力が大幅に高められる可能性があるという。
(1)「米メディア『ディフェンス・ニュース』(8月5日付)によると、米海軍大学の中国海事研究所の講師を務めるコナー・ケネディ氏は7月、シンクタンク、ジェームズタウン財団のウェブ誌「チャイナ・ブリーフ」で同報告書を発表した。報告書によると、2019年以降、中国海運最大手、中国遠洋運輸(集団)公司(COSCO)が所有し運営している1万5560トンのRO-ROフェリー、「棒棰島号」には、沖合で水陸両用装甲車を乗降できるように改造スロープが取りつけられている。これにより、中国の船は専用の港湾施設がなくても車両を乗降できることを意味する」
米国は、克明に調査している。先ず、その情報作戦に驚く。中国は、もはや米国によって正体を掴まれている以上、効果は半減である。むろん、米国や日本の潜水艦が近海で警戒しているはず。望遠鏡で覗けばカムフラージュはすぐにばれて攻撃されるのだ。そう考えると、あまり頭の良い戦術とも思えない。北朝鮮の瀬取を取り締るようなものだ。
(2)「ケネディ氏は、海上でのスロープ使用には「多くの課題が残る」が、技術的アプローチが機能するという中国のエンジニアと船舶運航者の自信を反映したと示した。報告書は、油圧システムとサポートアームを組み合わせて使用することで、この新しいスロープは軽い海況への対応のほうがより適しているとの見方を示した」
この戦術は、島嶼奪取作戦であろう。中国は、台湾本島へ攻撃をする前に、南シナ海にある台湾の島嶼を奪取して、台湾の気勢を削ぐ作戦に出ると予想されている。同時に、尖閣諸島への上陸作戦を展開するとの予測もある。だが、中国の民間フェリーが現れて、水陸両用装甲車を走らせれば、すぐに攻撃を受けて全滅であろう。こんな危険な戦術を敢行するだろうか。援護射撃でもなければ自殺行為だ。民間フェリーから大砲を撃てば、一発で「擬装」を告知するようなものである。
第二次世界大戦における米軍は、硫黄島作戦や沖縄作戦、フランス・ノルマンディー上陸作戦でも、かならず事前に大量の艦砲射撃と猛烈な空爆を行なっている。こうして、相手を殲滅してからの上陸作戦になるのだ。それに比べれば、中国が使う民間フェリーと水陸両用装甲車程度では歯が立たず、単なる偵察行動に過ぎないであろう。
(3)「米シンクタンク、新アメリカ安全保障センターの研究員であるトーマス・シュガート氏は、『ディフェンス・ニュース』に対して、水陸両用輸送船として民間フェリーを利用するという中国軍の取り組みは、「世界クラスの中国の商船を水陸両用攻撃部隊に統合する試みの一部だ」と述べた。「成功すれば、中国軍は台湾海峡を越えて海上輸送能力を大幅に増強する可能性がある。これで、台湾侵攻において中国側の主要な障害の1つを取り除くことになるだろう」とシュガート氏は示した」
台湾海峡に、中国の民間フェリーが終結すること自体が異常なこと。すぐに攻撃対象になるだろう。あるいは、攻撃前に台湾軍から停船命令が出て、海岸への接近を阻止されるはずだ。それを見逃すような台湾の沿岸警備隊では、とても戦闘の役に立たない案山子だ。
(4)「台湾国防部(省)のシンクタンクである国防安全研究院欧錫富研究員は、近年、中国軍の水陸両用軍艦の数が急増しているにも関わらず、ヘリコプターや726型エアクッション揚陸艦、水陸作戦部隊の兵力が依然として不足しているとの見解を示した。「726型エアクッション揚陸艦に関しては、海上訓練中に搭載量が足りていないという問題が起き、パワー不足との情報が入っている。また、中国軍の水陸作戦部隊の兵力不足に関しては、中国軍が海を越えて台湾に上陸作戦を展開する際、第一陣の兵力は40万人程度と言われている。台湾国軍の厳しい防衛力に対して、中国軍の兵力はまだ十分ではないと言える」。
中国は、台湾上陸に要する兵員は30~40万人とされている。これだけの兵力を一挙に輸送する能力は、まだ中国にないとされる。民間フェリーでは、間に合わないのだ。途中で、攻撃されれば沈没である。中国軍が、そんな危険な戦術を取るほど稚拙とは思えない。