勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: 台湾経済

    テイカカズラ
       

    中国は、奇襲作戦にいろいろと策を練っている。今度は、民間フェリーを改造し水陸両用装甲車を乗せて、上陸作戦に使用するのでないかとの憶測が生まれている。民間フェリーは、相手を油断させる上で効果的であろう。民間船であれば、攻撃対象にならないからだ。敵を欺く戦術だ。

     

    これまでは、漁船を擬装して武器弾薬を積み島嶼を急襲する方法を取ってきた。このやり方は広く知れ渡ったので、今度は民間フェリーへと格上げして奇襲作戦を展開するつもりであろう。民間フェリーでは、攻撃されまいという狙いに違いない。あくまでも、相手の油断を誘う戦術である。手が込んできた。

     


    『大紀元』(8月9日付)は、「中国、水陸両用作戦に民間フェリーを改造=米海軍研究者」と題する記事を掲載した。

     

    米海軍大学の研究者がこのほど発表した調査報告書は、中国当局は軍事行動の水陸両用作戦で使用するために民間フェリーを改造していると指摘した。これにより、中国当局が台湾を武力侵攻した場合、中国海軍の水陸両用攻撃能力が大幅に高められる可能性があるという。

     

    (1)「米メディア『ディフェンス・ニュース』(8月5日付)によると、米海軍大学の中国海事研究所の講師を務めるコナー・ケネディ氏は7月、シンクタンク、ジェームズタウン財団のウェブ誌「チャイナ・ブリーフ」で同報告書を発表した。報告書によると、2019年以降、中国海運最大手、中国遠洋運輸(集団)公司(COSCO)が所有し運営している1万5560トンのRO-ROフェリー、「棒棰島号」には、沖合で水陸両用装甲車を乗降できるように改造スロープが取りつけられている。これにより、中国の船は専用の港湾施設がなくても車両を乗降できることを意味する」

     

    米国は、克明に調査している。先ず、その情報作戦に驚く。中国は、もはや米国によって正体を掴まれている以上、効果は半減である。むろん、米国や日本の潜水艦が近海で警戒しているはず。望遠鏡で覗けばカムフラージュはすぐにばれて攻撃されるのだ。そう考えると、あまり頭の良い戦術とも思えない。北朝鮮の瀬取を取り締るようなものだ。

     


    (2)「ケネディ氏は、海上でのスロープ使用には「多くの課題が残る」が、技術的アプローチが機能するという中国のエンジニアと船舶運航者の自信を反映したと示した。報告書は、油圧システムとサポートアームを組み合わせて使用することで、この新しいスロープは軽い海況への対応のほうがより適しているとの見方を示した」

     

    この戦術は、島嶼奪取作戦であろう。中国は、台湾本島へ攻撃をする前に、南シナ海にある台湾の島嶼を奪取して、台湾の気勢を削ぐ作戦に出ると予想されている。同時に、尖閣諸島への上陸作戦を展開するとの予測もある。だが、中国の民間フェリーが現れて、水陸両用装甲車を走らせれば、すぐに攻撃を受けて全滅であろう。こんな危険な戦術を敢行するだろうか。援護射撃でもなければ自殺行為だ。民間フェリーから大砲を撃てば、一発で「擬装」を告知するようなものである。

     

    第二次世界大戦における米軍は、硫黄島作戦や沖縄作戦、フランス・ノルマンディー上陸作戦でも、かならず事前に大量の艦砲射撃と猛烈な空爆を行なっている。こうして、相手を殲滅してからの上陸作戦になるのだ。それに比べれば、中国が使う民間フェリーと水陸両用装甲車程度では歯が立たず、単なる偵察行動に過ぎないであろう。

     


    (3)「米シンクタンク、新アメリカ安全保障センターの研究員であるトーマス・シュガート氏は、『ディフェンス・ニュース』に対して、水陸両用輸送船として民間フェリーを利用するという中国軍の取り組みは、「世界クラスの中国の商船を水陸両用攻撃部隊に統合する試みの一部だ」と述べた。「成功すれば、中国軍は台湾海峡を越えて海上輸送能力を大幅に増強する可能性がある。これで、台湾侵攻において中国側の主要な障害の1つを取り除くことになるだろう」とシュガート氏は示した」

     

    台湾海峡に、中国の民間フェリーが終結すること自体が異常なこと。すぐに攻撃対象になるだろう。あるいは、攻撃前に台湾軍から停船命令が出て、海岸への接近を阻止されるはずだ。それを見逃すような台湾の沿岸警備隊では、とても戦闘の役に立たない案山子だ。

     


    (4)「台湾国防部(省)のシンクタンクである国防安全研究院欧錫富研究員
    は、近年、中国軍の水陸両用軍艦の数が急増しているにも関わらず、ヘリコプターや726型エアクッション揚陸艦、水陸作戦部隊の兵力が依然として不足しているとの見解を示した。「726型エアクッション揚陸艦に関しては、海上訓練中に搭載量が足りていないという問題が起き、パワー不足との情報が入っている。また、中国軍の水陸作戦部隊の兵力不足に関しては、中国軍が海を越えて台湾に上陸作戦を展開する際、第一陣の兵力は40万人程度と言われている。台湾国軍の厳しい防衛力に対して、中国軍の兵力はまだ十分ではないと言える」。

     

    中国は、台湾上陸に要する兵員は30~40万人とされている。これだけの兵力を一挙に輸送する能力は、まだ中国にないとされる。民間フェリーでは、間に合わないのだ。途中で、攻撃されれば沈没である。中国軍が、そんな危険な戦術を取るほど稚拙とは思えない。

     

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    台湾は一時、「T防疫」としてコロナ防疫面で成果を上げていたが、その後の感染急増で苦境に立っている。日本は、先に台湾へ124万回分のワクチンを贈ったが、少なくとも1回のワクチン接種を受けた人が人口の6%にとどまっている。当局はワクチンの調達を急いでおり、民間企業によるワクチン購入を許可せざるを得ない状況に追い込まれている。

     

    郭氏は18日、自身の教育財団を通じて、独ビオンテックの新型コロナワクチン500万回分を購入する計画について、蔡英文総統と協議したいと表明。「政治的な意図や商業的な意図は全くない」と述べた。羅秉成報道官は、TSMCからも同量のワクチンの寄付の申し出があったことを明らかにした。

     


    台湾当局は、ドイツ政府の支援を得て、独自にビオンテックとの交渉を続けており、郭氏などがワクチンを調達できる保証はないとしている。台湾は、中国からの圧力により、ビオンテックからワクチンを購入する契約が今年初めに成立しなかったと主張している。中国側はこれを否定。大中華圏でビオンテックと販売契約を結んでいる上海復星医薬を通じて、台湾は自由にワクチンを確保できるとしている。しかし、台湾は中国からのワクチンは信用できないとし、ビオンテックとのみ契約する方針を表明している。以上は、『ロイター』(6月18日付)が報じた。

     

    台湾政府が、下線のように中国製ワクチンは信用できないとして拒否しているには理由がある。中国製ワクチンを接種しても感染者が続出している結果だ。

     

    『大紀元』(6月20日付)は、「中国シノバック製ワクチン接種した医療従事者350人感染―インドネシア」と題する記事を掲載した。

     

    インドネシアでは、350人以上の医療従事者が、中国の科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)が開発したウイルスのワクチン「コロナバック」の接種を受けた後に感染したことが判明した。18日付のロイターが報じた。

     

    (1)「中部ジャワ州クドゥス県の保健局長バダイ・イズモヨ氏はロイターの取材に対し、感染した医療スタッフのほとんどは軽症や無症状と診断され、自宅で隔離治療を受けているが、数十人が高熱と呼吸困難で病院に搬送されたと語った。この地域では現在、より感染力の強いインド型の変異ウイルスが原因とみられる流行が発生しており、病床使用率は90%を超えている。多くの医療従事者が次々と感染し、医療スタッフの不足は深刻化している」

     

    インドネシアは、中国シノバック製ワクチンを接種しているが、それでも大量の感染者が出ている。

     

    (2)「首都ジャカルタでは、放射線科医のプリジョ・シディプラトモ博士がロイターに、過去1カ月間に少なくとも6人の医師がワクチン接種後に感染し、うち1人は集中治療室で治療を受けていると述べた。インドネシアでは、医療従事者が優先接種者に指定され、1月にワクチン接種が始まった直後に接種を受けた。インドネシア医師会(IDI)によると、医療従事者の大半がシノバックワクチンを接種しているという。世界保健機関(WHO)は今月1日、シノバックワクチンの緊急使用を承認した。WHOの戦略的諮問委員会は、同ワクチンの有効性を50~84%と評価している」

     

    WHOがシノバックワクチンの緊急使用を承認したが、感染率の高いところから有効性が低いことを立証している。

     


    (3)「インドネシアでは、ほとんどの医療従事者がシノバックワクチンを接種しているが、このワクチンがウイルスの変異体に対してどの程度効果があるのかは分かっていない」と述べた。インドネシアでは現在、国内の新型ウイルスの累計感染者が196万人を超え、医師や看護師946人を含む約5万4000人の死亡が確認された」

     

    シノバックワクチンは、ウイルスの変異体に対してどの程度効果のあるかも不明である。インドネシアは、厄介なワクチンを導入したものだ。

     

    こうして、台湾政府は中国製ワクチンを除外しているが、米国が当初予定の3倍に当る250万回分のワクチンを供与することになった。

     


    『ロイター』(6月19日付)は、「
    米、台湾にワクチン250万回分を供与 中国けん制へ予定の約3倍」と題する記事を掲載した。

     

    (4)「米国が台湾に供与する新型コロナワクチンが、当初の3倍以上となる250万回分になることがわかった。米政府高官が19日、ロイターに明らかにした。供与するのはモデルナ製。もともと75万回分を予定していたが、中国の「ワクチン外交」をけん制する。20日晩に台北に到着する予定。同高官は「政治、経済の状況に基づいてワクチンを提供するのではない。人命を救うことが目的だ」と述べた。また「われわれのワクチンは条件付きではない」とし、台湾が国際市場でのワクチン入手で不公正な状況に置かれているとの認識を示した。台湾は今年、独ビオンテックのワクチン購入計画が不調に終わった。台湾側は、中国からの圧力があったと主張している」

     

    米国が、独ビオンテックのワクチン250万回分を20日午後、台湾へ送り届けた。地元テレビ局は日本の時と同様に、ワクチンを載せた航空機が空港に着陸する様子を生中継し、歓迎した。これによって、台湾政府とビオンテックの間にルートが開ければ今後、問題なく購入することが可能になろう。

     

     

     

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    中国は7月1日、共産党創建100周年を迎える。その直前に、G7やNATO(北大西洋条約機構)が、中国を危険視する声明文を発表している。中国の「核心的利益」とする台湾・香港・新疆ウイグル族問題がヤリ玉に上がっているのだ。中国としては、絶対に看過できないはずだが、共産党創建100周年前に騒ぎを起したくないと抑制している模様だ。

     

    それでも、軍部をなだめるには「暴発」も必要なのだろう。いわゆる「ガス抜き」である。それが6月15日、中国軍用機のべ28機が、台湾の防空識別圏(ADIZ)へ侵入して「憂さ晴らし」をした。

     

    中国は一般的に、米国が台湾への関与を深める度合いに応じ、台湾のADIZに侵入する軍機の数を決める傾向にあるという。軍機の数が多ければ多いほど、米国への強い不満を示すことになる。

     


    例えば、日米共同声明発表の4日前の4月12日は、過去最多の25機が台湾のADIZに侵入した。同声明に「台湾」が明記される見通しが強まり、中国が強い不満の態度を示したかったものとみられる。さらにブリンケン米国務長官が、ニュース番組で中国による台湾への圧力について「武力で現状変更しようとするのは深刻な過ちだ」などと強く警告したことも、中国軍の行動に拍車をかけたとされる。

     

    一方、日米が共同声明を発表して以降、64日現在までは、台湾に侵入する軍機の数は大きく減った。1日平均で1.9機と、共同声明発表前までの3.4機から大幅減となった。10機以上による中国軍機の大量侵入も、日米共同声明発表後は、1回も確認されていない状況にある。以上は、『日本経済新聞 電子版』(6月6日付)が報じた。

     

    『大紀元』(6月16日付)は、「中国軍機28機が台湾ADIZに侵入 国内強硬派を取り鎮める狙いとの見方も」と題する記事を掲載した。

     

    中国軍の軍用機のべ28機が15日、台湾の防空識別圏(ADIZ)に入った。1日の数としては最多。台湾の専門家は、中国当局は国内の強硬派や愛国主義者らをなだめ、国際社会に対して台湾問題で譲歩しないとのメッセージを送る狙いだと指摘した。台湾国防部(防衛省に相当)によると、台湾西南部のADIZに進入した。中国軍の戦闘機「殲16」14機と「殲11」6機、KJ-500早期警戒管制機2機、H-6爆撃機4機などが台湾西南部のADIZに進入し、同東南部海域の上空を飛行した。

     

    (1)「国防部シンクタンク、国防安全研究院の蘇紫雲氏は、台湾メディア「中央社」の取材に対して、今回の中国軍機の進入および飛行ルートは「バシー海峡を封鎖する意図がある」「南シナ海で多国軍の軍事演習を狙ったものだ」と分析した。国防部がウェブサイトで公開する情報によると、4日から13日まで中国軍機の進入は確認されなかった。14日、中国軍のY-8対潜哨戒機1機の進入を確認した」

     

    中国軍機は6月4~13日まで、侵入が確認されなかったが、15日には突然の大量な飛来となった。その動機が何かである。こういう意味もないことの繰返しによって、中国はG7やNATOから危険視されている。

     


    (2)「蘇氏は、中国当局が15日に突然、大規模な軍用機を出動させたのは現在の国際情勢と関係があると示した。過去3カ月、日米首脳会談、米韓首脳会談とG7サミットの共同声明に「台湾海峡の平和と安全の重要性」などが明記され、国際社会では台湾への支持が広がっている。また、14日、ベルギーで開催された北大西洋条約機構(NATO)の首脳会議は、中国の軍事的脅威に強い懸念を示した」

     

    中国への見方は完全に変わっている。「インベーダー」というイメージである。

     

    (3)「蘇氏は、中国当局は「戦狼外交」を転換し、国際社会でのイメージアップを図っているさなか、軍事圧力を強めたのは国内の(外国の批判に)「手をこまねいている」と不満を持つ強硬派を取り鎮めるためだと指摘。しかし、軍事的な行動によって、国際社会の「中国脅威論」が一段と強まる可能性がある。「中国がジレンマに陥った」と同氏は分析した」

     

    中国は、軍拡に力を入れてきたので、いずれは制御棒が自然に外れるという危険性が高まるであろう。戦前の日本陸軍が暴走したように、中国軍にもその危険性はつきまとう。中国軍内部には「政治将校」が多く配属されているが、この政治将校が謀反を起せばどうにもならないだろう。民主主義国では、シビリアンコントロールができているが、革命軍上がりの中国軍にそれが可能という保障はない。危ないものだ。

     

     


    中国にとっては大きな外交的失敗に終わった。日本は、台湾へコロナ・ワクチン124万回分を寄贈したが、中国による妨害工作は日航機の離陸するまで行なわれた。日航機の輸送中に東シナ海で中国空軍の妨害を防ぐべく、沖縄から米空軍偵察機も飛び立ったという情報まで流れている。それだけ、緊迫して状況にあったのだろう。

     

    『大紀元』(6月7日付)は、「台湾へのワクチン寄贈、岸防衛相『到着を見守る』中国が最後まで妨害か=台湾メディア」と題する記事を掲載した。

     

    64日午後、日本政府から台湾に無償提供したワクチンが無事に台湾に到着した。台湾メディア「上報」4日付は、ワクチンが専用機に積まれる前まで、中国側は妨害工作を働いていたと報じた。同記事によると、岸信夫防衛相はワクチンが台湾に到着するまで見守っていた。

     


    (1)「菅義偉首相が2日、「COVAX(コバックス)ワクチンサミット」で台湾へのワクチン提供を進める方針を示した。記事は、その後中国が外交ルートを通じて圧力や妨害を続けていた、と述べた。外交筋が明らかにしたところによると、中国側は「一つの中国の原則に反する」として、この行動のリスクを度々警告していたという。「人命がかかっているというのに、まだ『一つの中国』と言っているのか」と中国側の強硬な態度に日本側は呆れていたという」

     

    中国は、日本から台湾へのワクチン贈呈に当って最後まで妨害したという。中国がメンツを潰されると見たからだろう。

     

    (2)「同記事はまた、台湾へ無償提供した124万回分のワクチンを積んだ日本航空(JAL)のJL809便を追跡サイトで追跡したところ、東シナ海上空を飛行する同便を米空軍のMC-12W偵察機が沖縄の米軍基地からずっと追随しているというネット情報に言及した。同便が無事台湾に到着すると岸信夫防衛相はすぐにそのニュースをリツイートし、「無事に台湾へ」と投稿した。記事は情報筋の話として、台湾へのワクチン寄贈計画を進めるなか、台、日、米の3国は、外交による圧力に失敗した中国が、「より強力な干渉行動」に出て、衝突を誘発すると懸念していたと報じた」

     

    ワクチンを輸送した日航機は、東シナ海上空を飛行する際に、米空軍のMC-12W偵察機が沖縄の米軍基地からずっと追随したというネット情報も公開された。万々一に備えて、万全を期したのだ。

     

    (3)「4日に成田空港から日本寄贈のワクチンを見送った、謝長廷・台北駐日経済文化代表処代表(駐日本台湾大使に相当)は、Facebookに一礼して日航機を見送る写真を添付した。謝代表はまた、「この国は特殊な状況にある。ワクチンが飛行機に積まれる前までは状況が変わる可能性があった。そのため、自分は最後まで秘密を守らねばならなかった。これらのワクチンが無事故郷に届けられるのを守ることが、最優先の使命であり、自分の責任だ」と説明した。謝氏は日本から台湾へのワクチン供給に関する情報を秘密にした理由について言及しなかったが、中国政府による圧力が関係しているとみられる」

     

    ワクチンの台湾空輸戦術は、最後まで極秘事項とされた。中国の妨害工作を回避するためである。

     

    (4)「台湾の王定宇・立法委員(国会議員)は5日、「中国は人命、健康を政治的手段にしている、その手口は粗末な上、うんざりさせられるものだ」と述べた。また、「日台の友情は中国の政治的介入に勝った、日本は『64日』の日付をあえて避けなかった。日台関係はこの先もっと良くなるだろう。中国はその悪行によって得るものよりも失うものの方が大きいかもしれない」と指摘した。王氏は、「中国の圧力はワクチンを載せた専用機が飛び立つ前まで続いた。在日中国大使らは自ら日本外務省に出向き、抗議し、『ワクチンを下ろさせ、できるだけ遅くらせるように』と要求した」と中国の圧力工作の一部始終を語った」

     

    「6月4日」は、言わずと知れた天安門事件発生日である。中国としては、この日を避けさせたかったのだろう。だが、日本政府は断固として実行したという。日本の強い決意を中国に見せつけるためだったのだろう。

     


    (5)「今回、ワクチンの輸送を担当した日本の航空機はJALのJL809便で、6月4日に台湾に到着した。野党・台湾基進で新聞部(ニュース部)副主任を務める陳子瑜氏は、日本の輸送機の便名と出発日付を合わせると「8964」になる。これは中国が最もタブー視する日だ。しかし、この日が意図的に選ばれたことは実に興味深いと述べた」

     

    日本政府は頼もしいことをやってくれた。日航機の便名と出発日付を合わせると「8964」になる。つまり、1989年6月4日の天安門事件発生日である。日本政府が、中国の人権弾圧に抗議する姿勢を見せたものだ。日中対立は、もはや引けぬところまで来ている。日中友好話は、昔のことになった。

     

    (6)「2011年の東日本大震災後、台湾から200億円の義援金が送られた。昨年4月、中共ウイルス(新型コロナ)感染拡大を受けて、台湾は日本に約200万枚のマスクを寄贈した。茂木外相は4日の記者会見で、「東日本大震災後に、台湾からいち早く多くの義援金を送ってもらったことは、鮮明な記憶として残っている。台湾との重要なパートナーシップや友情を踏まえた、今回の提供だ」と述べた。蔡英文総統は、「言葉では言い尽くせないほど感謝している」「価値観の共有に基づき、互いを信頼し助け合うという『台日友好』の真髄を改めて目にした」と自身のツイッターで発信した」

     

    日本が今回、ワクチンを無償で台湾へ提供したのは、2011年の東日本大震災後、台湾から200億円の義援金が送られて、世界で断トツの金額であった。また、約200万枚のマスクを寄贈されている。日本が、こういう恩義に応えるのは人間としての務めである。

     

    次の記事もご参考に。

    2021-06-07

    日本、「いよいよ始動」ワクチン外交、台湾に続きベトナム・マレーシアへも「提供を検討」

     

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    4月16日の日米首脳会談による共同声明は、台湾問題に言及して「座視」しないことを示唆した。中国は、この共同声明発表を境にして、台湾への軍事挑発を抑制する方向に変わった。中国が、台湾を深追いすると日米が結束して対応することを確認したのだ。

     

    日米共同声明で台湾に言及したのは1969年以来、51年ぶりのことである。日本の安全保障における台湾の重要性から見て当然のと受け止められている。こういう、時代の変化を映して、日本は米軍への後方支援という形で台湾防衛に加わるものとされている。ただ、大枠は決まっているとしても、具体策は未着手である。

     


    自民党内では、これを受けて日米の防衛協力の指針(ガイドライン)を見直す案が浮上している。日本が防衛政策を変更する場合、国家安全保障戦略や防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画を見直す。政策の方向性から装備品の調達の予定までを書き込む。こうした文書と並行して米国とつくるのがガイドラインになる。自衛隊と米軍の役割や任務を記し、両者の協力関係を定める。平時から日本が武力攻撃を受ける事態まで緊密に連携できるようにするもの。台湾防衛への協力は、日本の防衛政策変更を意味する。重大なことである。

     

    『日本経済新聞 電子版』(6月5日付)は、「中国、台湾への軍事挑発一段落か『日米共同声明後』」と題する記事を掲載した。

     

    中国の台湾への軍事的圧力が一段落している。1週間で5日間ペースだった中国軍機による台湾の防空識別圏(ADIZ)入りが共同声明で「台湾」が明記されたことで米国への過剰な刺激を避ける目的に加え、国内の統制を優先し、間近に迫る71日の中国共産党創立100年を成功裏に収めたい中国指導部の狙いが透ける。

     

    (1)「今年11日から、日米共同声明の発表があった4月16日までの間に、中国軍機が台湾のADIZに侵入した日数や軍機の数を詳細に調べた。それによると、全106日間のうち、中国軍機が侵入した日は75日に上り、侵入した日の割合は全体の約70%となった。1週間のうち、5日間のペースで台湾に圧力をかけ続けた計算になる。侵入した軍機の数は、戦闘機「殲16」「殲10」などを中心に、延べ257機に上り、1日平均で3.4機が侵入した」

     

    中国は、日米首脳会談前に台湾への軍事圧力を掛ければ、日米が中国への警戒姿勢を見せることは予想できたはずである。案の上、中国は日米を結束させて台湾防衛に向かわせるという最悪事態に陥った。これは、外交戦略から言えば、最も愚策のはずである。それをあえて行なったところに、習近平の不可思議さがある。

     

    中国外交は、伝統的に同盟を忌避して分裂させることを特技としてきた。まさに、「合従連衡策」である。今回の振る舞いは、この「逆バージョン」である。なぜか。中国は、台湾へ軍事圧力を掛けるだけで、侵攻する意思がないことかも知れない。つまり、中国国内へのポーズにすぎない、という解釈も成り立つのだ。真意は不明だが、日米共同声明後に見せる台湾への慎重姿勢は、これまでの台湾侵攻がポーズであったとも言えそうだ。

     


    もう一つの解釈も可能である。次のパラグラフのコメントに示した。

     

    (2)「特に、中国が米国への強い反発姿勢をみせる10機以上の大量侵入を見せた日を集計したところ、日数は9日を数えた。9日のうち6日は、日米共同声明発表前の3週間以内に集中し、中国の強い不満と焦りがうかがえた。中国は一般的に、米国が台湾への関与を深める度合いに応じ、台湾のADIZに侵入する軍機の数を決める傾向にある。軍機の数が多ければ多いほど、米国への強い不満を示すことになる」

     

    下線部は、中国が台湾問題をめぐる対米不満と焦りを日米首脳会談前に集中させた。その結果、日米が協力して台湾問題に乗出す姿勢を後押しする形になった。これは、先述の通り、外交戦略上は失敗のはずである。中国は、そういう失敗を招いたことから、日米首脳会談後に慎重姿勢に変わったという解釈も成り立つ。

     

    (3)「日米が共同声明を発表して以降、64日現在までは、台湾に侵入する軍機の数は大きく減った。1日平均で1.9機と、共同声明発表前までの3.4機から大幅減となった。10機以上による中国軍機の大量侵入も、日米共同声明発表後は、1回も確認されていない状況にある。特に、最近は侵入回数自体も減っている。直近の2週間でみると、7日間は侵入がなかった。残りの7日間も2機が最多で、6日間は1機の侵入にとどまっている。

     

    台湾に侵入する中国軍機の数は、共同声明発表前までの一日平均3.4機から、共同声明発表後に同1.9機へと大幅減となった。これが、中国にとってどういう意味かという謎解きが必要である。私はその回答が、先述の通り二つあることを示した。

     


    (4)「台湾国防部のシンクタンクである国防安全研究院の蘇紫雲所長は、「明らかに日米共同声明が影響している」と指摘する。具体的には「中国指導部としては、台湾に敏感な米国への刺激を避けながらも、中国共産党創立100年を成功裏に収めるため、中国軍の実力を誇示し、中国国内に対して強さをアピールし続けなければならない。そのため、それが最近のマレーシアやフィリピンなど東南アジアでの挑発行動につながっている」と分析する。

     

    中国共産党創立100年を内外で誇示する必要があれば、記念式典が終わるまで台湾への軍事的な圧力の継続させる必要があろう。それが、日米首脳会談後に腰砕けになってしまった。これでは、内外への示しがつかないはずだ。中国国内で強硬論への反対が出てきたのかも知れない。

     

     

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