テイカカズラ
   


中国は抗議デモより不買

人権問題で妥協が不可能

蛇に睨まれた蛙の立場へ

EUが全面対決する危機

 

米中外交首脳部によるアラスカ会談は、物別れに終わった。中国は、この会談を定期化したい希望であったが、米国は当初から「一回限り」と釘を刺していた。米国が、中国に対してレッドラインを明示し、「決闘状」を突きつけたのである。

 

中国の受けたショックが、いかに大きかったか。中国王毅外相が、すぐにロシアとイランの外相と会議したことに現れている。外交専門家によれば、中国が事前に決裂を予想してロシアとイランとの会議をセットしていたとの見方もある。いずれにしても、中国は孤立無援でないことをアピールすべく、イランまで引っ張り出さざるを得なかった。中国を支援する有力国はゼロであるのだ。

 


中国は抗議デモより不買

中国は、これまで見せた外国との紛争で、官製抗議デモを組織するのが普通である。今回の米国との交渉決裂では抗議デモを組織せず、ゆとりあるところを見せている。果たして内情はどうなのか。それは、中国が抗議デモに代わる手段を持っているからである。

 

今回の「アラスカショック」では、対話アプリやミニブログ上で激しい対米批判が見られる。それにもかかわらず、中国内で目立った街頭での対米抗議デモなどは起きていないのだ。この背景には、中国のGDPが世界2位になったという「ゆとり」によって、抗議手段が代わったと見るべきだろう。

 

例えば、1999年5月には、コソボ紛争に絡み米軍を主体とするNATO軍が当時、ユーゴスラビアの首都だったベオグラードを爆撃した。その際、米軍のB-2爆撃機が中国大使館を誤爆し、中国人3人が犠牲になる事件が起こった。中国は当然、猛烈な抗議をしたが実力行使には及ばなかった。中国市民も横断幕を掲げての抗議行動で終わった。

 

「アラスカショック」では、米中対立が1時間余もTVで放映された。中国市民にしては、米国から非難されたので憤りを示しても不思議でない。そのショックは、不買運動という形で噴出してきた。日本は、尖閣諸島の国有化で不買運動の対象にされたが、それも時間の経過とともに沈静した。現在の不買運動は、どういう形で終息するのか。あるいは、終息しないままで混乱が続くのか。

 

今回は、人権問題が絡んでいる点で従来と異なっている。それは、中国の政治体制の根幹に関わる重大問題であるからだ。一過性の問題でなく永続性という、深刻な対立へ発展するリスクを抱えているのである。

 

人権問題で妥協が不可能

中国の人権問題を象徴するのは、新疆ウイグル族をめぐる強制収容所である。約100万人が、職業訓練と称して刑務所を思わせる建物に閉じ込められている。写真を見れば分かるように、高い塀と有刺鉄線が張り巡らされ、監視用の高い塔が随所に建てられている。これは、脱走を警戒する強制収容所であることを雄弁に物語る。ウイグル族の意思に反した収容であるのだ。

 


収容所の中では、ウイグル語に代わって中国語や中国文化が教え込まれている。まさに「民族抹殺」であり、米国では「大虐殺」という表現が使われている。中国政府が、ウイグル族の反抗を抑えるため、強制収容所に閉じ込めているのは明らかである。

 

西側企業では抗議の意味を含めて、新疆特産物の綿花購入を中止する動きが広がっていた。欧米消費者が、新疆ウイグル自治区の強制収容問題に関心を持ち、企業に対して新疆ウイグル地区の綿花を使用しないよう申入れたことが発端である。欧米企業が、これに応えて「不使用」宣言をしたものである。中国はこの動きに目をつけて、逆に不買運動に火を付け「逆襲」に転じてきた。次に、やや詳しい事情を説明したい。『ブルームバーグ』(3月25日付)から引用した。

 

中国共産党の青年組織である共産主義青年団(共青団)は3月24日、スウェーデンの衣料小売り、ヘネス・アンド・マウリッツ(H&M)を批判した。理由は、日付のないH&Mの声明文が、「新疆綿」の生産地・新疆ウイグル自治区で強制労働があるとの懸念を示したというもの。その文面には、H&Mがウイグル自治区内の衣類工場と一切取引せず、製品調達も行わない、と記しているという。

 

H&M製品不買の呼び掛けは、すぐにスニーカーの米ナイキも標的にし始めた。同社は以前、労働環境を巡る懸念から新疆ウイグル自治区から製品を調達しないと表明していた。H&Mとナイキの中国における口コミ紹介人の間では、ここ数日間で両社との関係解消が相次いでいる。(つづく)

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