勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: 台湾経済

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    中国の軍事的な進出は、これまでタブーとされてきた日本と台湾の関係を密接なものにさせている。中国海警船は連日、尖閣諸島沖に現れて日本をけん制する時代だ。日本は、もはや中国に配慮することなく、自衛策をめぐって台湾と協議できる国際環境になっている。

     

    中国は、こうやって日本と台湾の関係を結びつける「縁結び役」になっている。中国外交の稚拙がもたらした「オウンゴール」である。

     

    『日本経済新聞 電子版』(8月27日付)は、「日台『与党版2プラス2』初開催、対中抑止を議論」と題する記事を掲載した。

     

    自民党と台湾の与党、民主進歩党(民進党)は8月27日、外交・防衛政策の責任者がテレビ会議で初めて協議した。東・南シナ海に進出する中国への抑止策を巡り意見交換した。日本側は外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)の「与党版」と位置づけ、議員レベルの外交を深める。

     


    (1)「開催は自民党が呼びかけ、佐藤正久外交部会長と大塚拓国防部会長が参加した。台湾民進党の立法委員(国会議員)で主に外交を担う羅致政氏や国防担当の蔡適応氏と議論した。日台間は国交がないため、政府の閣僚が表立って活動するのが難しい。佐藤氏は「政府間の実務者交流は制限がある。与党の責任者が政策を積み重ねることが日台関係の強化につながる」と述べた。佐藤氏らは半導体大手、台湾積体電路製造(TSMC)の生産拠点の日本誘致で後押しを求めた。羅氏らは日台共同の途上国への支援を提案した。4氏は両党の枠組みを保ち、新型コロナウイルスの感染収束を見極めて対面の会談を開く方針も確認した」

     

    日台関係が、スムースになってきたのは、米台関係の活発化を反映したものでもある。米国は、台湾の国際的な地位引上げを目指しており、中国のけん制を無視した形だ。日本もこの線にそって台湾との関係強化に努めている。

     

    EU(欧州連合)では、小国リトアニアが中国と国交を結んでいるにもかかわらず、台湾との国交を結ぶ方針を発表している。リトアニアが、台湾へ大使館を開設する方向だ。こうして、中国の傍若無人の外交姿勢は反感を買っており、リトアニアに次ぐ「台湾関係復活国」が現れそうな国際的な環境になっている。

     

    (2)「日本政府は今年に入り、台湾有事の可能性を踏まえた動きを強める。日米両政府は4月、首脳会談の共同声明としては52年ぶりに台湾に言及した。「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調」と記し「両岸問題の平和的解決を促す」と唱えた。日本は6月以降、新型コロナのワクチン340万回分を台湾に供与した。自衛隊は7月、台湾防衛を念頭に米軍やオーストラリア軍などと共同訓練を実施した」

     

    中国は、台湾に関し軍事力による解放を宣言している。この事態になれば、近接国の日本へも余波が及ぶ。黙って見ている訳にいかず、何らかの対応をすることは明らかである。直接の交戦国にならないまでも、「台湾支援」に動くことは明らかである。

     


    『大紀元』(8月26日付)は、「日台初の与党版『2+2』開催へ、台湾議員『台湾の未来は日本の安保に影響』=報道」と題する記事を掲載した。

     

    日本と台湾の与党議員は27日、中国当局の軍事的脅威に対抗するために、初めての二国間安保会談を開催することがわかった。AFP通信などによると、台湾民進党(DPP)からは羅致政立法委員(国会議員)と蔡適応立法委員、日本自民党(LDP)からは佐藤正久参議院議員と大塚拓衆議院議員がそれぞれオンライン会談に出席する予定。いわゆる「2+2」会談だ。

     

    (3)「羅致政立法委員は25日、AFP通信の取材に対して、「今回の会談は日本側の提案で実現した。われわれは外交、防衛、地域の安全保障問題について話し合う予定だ」と述べた。羅氏は、民進党内で国際交流を担当する幹部である。また、自民党の外交部会長を務める佐藤議員は、英紙『フィナンシャル・タイムズ』に対して、日台間の安保会談は「必要である」と強調した。同氏は「台湾の未来は日本の安保と経済に深刻な影響を及ぼす」「今、台湾の状況は日本にとって非常に重要だ」と述べた」

     

    台湾が中国の手に落ちると、尖閣諸島防衛が危なくなる。それは同時に、沖縄への攻撃を警戒せざるを得なくなるという形で、危機の連鎖が始まる。中国の飽くなき軍事力拡大は、日本を警戒させるのだ。

     


    (4)「日本と台湾は現在、国交がないため、政権与党の議員間の会談は閣僚級会議に代えることができるという。佐藤議員は、自民党は将来、台湾政府高官との間でハイレベルの会合の開催を目指していると明かした。いっぽう、中国当局は日台間の会談に不満を示した。中国外務省の王文斌報道官は25日の記者会見で、「台湾問題は中日関係の政治的基礎に関わる。(中略)(日本側は)言動に注意を払う必要がある」とし、「いかなる形でも中国の内政を干渉してはいけない」述べた。『フィナンシャル・タイムズ』紙によると、台湾の政治家は、中国による台湾への軍事脅威に対して日本が関心を強めていることに、奮い立たされたと話した。会談の台湾関係者1人は「国会議員4人が会談に出席することは、実際に両国の政策に直接的影響を及ぼすだろう」と話した」

     

    日台は、与党政治家がこうして会談を持つこと自体、中国をけん制することになる。中国にとって、「内政干渉」という言葉ほど便利なものはない。これは、あらゆる違法行為を行える権利を持つものでなく、自ずと限界を持っている。普遍的価値に反する行為には、内政干渉なる用語が対象にならない。つまり、専制政治の中国は、民主主義の台湾に対して内政干渉を言える権利を持たないのだ。

     

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    中国人民解放軍が、台湾海峡で軍事示唆を展開している。中国本土ではヨチヨチ歩きの半導体産業が、台湾では一大産業として世界を睥睨(へいげい)するまでに急成長している。中国が、にわかに台湾侵攻を宣伝し始めた理由でもあろう。

     

    米海軍が4月11日、興味深い写真を公開した。米海軍第7艦隊所属のイージス艦「マスティン」艦長が、艦橋で足を投げ出し横に立つ副長とともに、中国海軍初の空母「遼寧」の通過を見過ごしている光景だ。米海軍の説明によると、この写真は4月4日、フィリピン海で撮影された。マスティンと遼寧は、互いに見えるほど近い距離を通過したのである。

     

    米イージス艦の艦長が、何ら緊張することなく遼寧を見やっている姿は、『中央日報』(4月12日付)によれば、「現在の米中関係を示しているようだ」としている。中国が肩をいらつかせていても、米国は、相手の実力のほどを知り抜いているので、慌てていないという意味であろう。

     


    『朝鮮日報』(4月12日付)は、「半導体大乱、突然「無視できないほど巨大」になった台湾」と題する記事を掲載した。


    「今世界は危険なほど台湾製半導体に依存している」。米『ブルームバーグ通信』は今年1月末、当時始まったばかりの世界的な半導体供給不足についてそう指摘した。記録的な寒波で米国内での半導体生産が全面中断する中、世界の主な自動車メーカーが相次いで台湾に支援を求めたからだ。ブルームバーグは「台湾の存在が突然、無視できないほど巨大になった」と評した。

     

    (1)「米半導体工業会(SIA)は4月1日、ボストン・コンサルティング・グループと共同で発表したリポートを通じ、「台湾のファウンドリー(受託生産業者)が1年間半導体を生産できない場合、全世界のIT企業で4900億ドル規模の経済的損失が生じる」と分析した。さらに、「台湾の半導体生産能力が永久にまひすれば、世界の半導体サプライチェーンは完全に崩壊し、それを再建するのに最低3年の時間と3500億ドルの資金が必要になる」と試算した」

     

    スマートフォン、テレビ、自動車から先端兵器システムに至るまで半導体を必要としない機器はないとされる時代にあって、世界のシステム半導体の半分以上を生産する台湾の存在なくして、いかなる先端製品も成り立たなくなったのだ。台湾半導体の世界的位置が、いかに大きいかを物語っている。中国は、台湾を喉から手の出るほど欲しい立場だ。これは、同時に、米国が絶対に台湾を中国に渡さないという意味である。

     


    (2)「台湾現地では、「ファウンドリーの好況を追い風として、韓国を超える半導体大国になろう」という声が高まっている。実際に台湾は昨年、半導体生産額が前年比20.9%増の3兆2200億台湾元(約12兆4200億円)を達成。うち半分以上がファウンドリーによる生産分だった。さらに台湾積体電路製造(TSMC)は最近、「(注文が殺到し)今後は大口の注文でも値引きはない」と発表した。他のファウンドリーは値上げを予告している。そのため、ファウンドリーが占める割合はさらに高まりそうだ。値上げされたとしても、まずは半導体の確保が急務の客先は、ファウンドリーに苦言を呈することができない立場だ」

     

    パンデミックによって、世界中が一挙にデジタル経済へ突入した。これを背景にして、半導体需要が膨らんでいる。「半導体飢餓」で生産をストップする産業も出てきた。自動車産業もその一つである。この基調は今後、さらに強まる傾向だ。台湾の位置は、ますます引き上がられる。それと共に、中国軍の雑音が高まることは必至の情勢である。

     


    (3)「台湾政府は、世界首位のTSMCだけでなく、現時点ではシェアがさほど大きくない2~4位の企業も本格的に育成し、台湾を半導体生産の中枢としていく戦略だ。3月25日には台湾・苗栗県に現地3位のファウンドリーである力晶積成電子製造(パワーチップ・セミコンダクター・マニュファクチャリング、PSMC)が2780億台湾元を投じる新工場の起工式を行った。当日は蔡英文台湾総統も自ら出席し、くわ入れを行った」

     

    台湾政府は、半導体ファウンドリー世界1位のTSMCに続いて、将来の世界2~4位候補企業も育成する方針である。台湾が、「半導体島」になる日は近い。それだけに、中国軍のやっかみは深まるという悩みを抱える。

     


    (4)「台湾の半導体産業にも懸念材料がある。現地では慢性的な問題点として、「五欠」という表現がある。水不足、電力不足、土地不足、労働力不足、人材不足だ。台湾は今年も冬の渇水で半導体工場が稼働中断の危機に直面し、ガソリンスタンドでの洗車や家庭用水を節約する方式でようやく稼働を維持した。天然ガスの在庫不足による電力不足、国土面積の限界による土地不足も問題点として挙げられる。さらに致命的なのが労働力・人材などの欠乏だ」

     

    台湾メディア『聯合新聞網』は、「半導体の崛起(くっき)を狙う中国による技術の奪取が深刻なので、中国の労働力は使わないというのが不文律だが、大規模な工場増設でそのルールも破られる兆しがある」と報じている。台湾での増産に限界があるので、TSMCは日本での増産を検討している。韓国メディアは、日本が半導体大国になると警戒するほどだ。


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