勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: 世界経済ニュース

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    中国の7~9月期GDPが発表された。前期比では、0.2%増で年率換算0.8%程度である。前年同期比では、4.9%増だ。10~12月期以降も期待は持てない以上、中国経済が大きな屈折点に入ったことは否めない。

     

    中国GDPの約25%を支える不動産開発が、中国恒大の過剰債務問題の表面化によって限界に突き当たっていることを浮き彫りにしている。ドル建て債券の利息については、すでに三銘柄の支払い遅延が起こっている。30日の猶予期間を経て、その間に支払いがなければデフォルト扱いになるギリギリの局面を迎えた。中国政府は沈黙を守っており、具体的な対応策を持ち合わせていないことを示している。時間稼ぎをしながら、事態の沈静化を図るという「無策」ぶりだ。

     


    『ロイター』(10月18日付)は、「中国経済の失速、世界への影響長期化も」と題するコラムを掲載した。

     

    中国には「長痛不如短痛(長期間痛みを味わうより一瞬の痛みのほうがまし)」という言い回しがあるが、中国の影響力の大きさを踏まえると第3・四半期国内総生産(GDP)成長率の4.9%への想定以上の鈍化は一瞬の痛みでは済まず、世界中に影響が広がることになるだろう。

     

    (1)「複合的要因が、景気の大幅減速を招いた。習近平国家主席による、社会の格差や非効率な成長を是正するための政策は、長期的に中国への依存度が高い市場に響くとみられる。習主席の何年にもわたる不動産相場抑制策は景気減速の主因となった。中国銀行保険監督管理委員会(CBIRC、銀保監会)の郭樹清主席は6月に、習主席の不動産関連政策を軽視すれば代償を払うことになると警告。それ以降、集合住宅の販売が急速に鈍化し、不動産大手の中国恒大集団は経営危機に陥った。国家統計局が18日発表したデータに基づきロイターが算出したところによると、9月の国内新築着工は6カ月連続で減少した」

     

    習近平氏は、社会格差や非効率な成長を是正すべく、政府依存度の高い産業への規律を導入しようとしてきた、と指摘している。不動産開発はその適例の産業であるが、政府自らこの不動産開発業の成長をテコにした経済発展を続けてきた。その点では、政府も不動産開発も「同じ穴の狢」であった。

     


    現に政府は、パンデミック下でも政策金利を引き下げられないほど、不動産バブルが進んでいたことを認識していたはずである。政府は、今になって不動産開発企業を突き放しているが、地価値上りによって中央・地方の財政は潤ってきたのである。
    20年の土地売却収入は中央・地方政府合計で約8兆4000億元。税収総額(約15兆4000億元)の5.5%の規模だ。

     

    政府は、政府財政を潤してきた「相棒」の不動産開発企業に対して、それなりの収拾策を行わず放り出せば、深刻な「不動産バブル崩壊」の余波を受ける。上記のように、財政収入の大幅不足に陥るのだ。不動産バブル崩壊は、中国財政を破綻させるにちがいない。

     

    (2)「これらの問題に加え、中国は電力不足に直面している。地方政府に達成を義務付けられた気候関連目標や新型コロナウイルスの散発的な感染拡大などが要因だ。9月の鉱工業生産は前年同月比で3.1%増と、コロナ対応の行動制限が敷かれた2020年序盤以来の低い伸びとなり、小売売上高も鈍いままだった。地方政府が大型事業を控える中、インフラへの公共投資による押し上げも不在だった」

     

    電力不足も深刻である。燃料炭不足がもたらした結果である。中国が、豪州に対する不条理な経済制裁によって、豪州炭の輸入を禁止した「返り血」を浴びたものだ。豪州は、中国と軍事対決も辞さずと、「AUKUS」(米英豪)の軍事同盟を結び、中国へ対抗する姿勢を鮮明にしている。中国が、敢えて敵をつくったと言える。こうして、中国を取り巻く対外環境は急速に悪化している。

     

    (3)「習主席は先週、共産党の理論誌「求是」に公表した論文で、格差が是正されない場合の悲惨な結末について警告し、固定資産税導入に向けた法案を進めるべきだと呼び掛けた。消費税の適用範囲拡大も求めた。これらの方針が実現すれば中国の年間2兆ドルにも上る外国のモノとサービスへの需要がリスクにさらされることになる」

     

    中国の格差縮小(ジニ係数の引下げ)には、直接税(所得税・固定資産税・相続税)の引上げしか方法はない。だが、中国には固定資産税・相続税という税制が存在しない「金持ち超優遇国」である。この恩恵に浴しているのは、共産党幹部である。習氏は、「消費税の適用範囲拡大も求め」ているが、とんでもないこと。消費税は間接税である。中国の税制では、この間接税が6割を占め、直接税は4割と主要国とは逆であり、金持ちを優遇しているのだ。習氏は、こういうアベコベのことを平気で発言し感覚が狂っている。

     


    (4)「ゴールドマン・サックス(GS)は、住宅着工が30%減少すれば2022年の経済成長率を4%ポイント押し下げると試算する。中国の建設業界や金属消費に影響を受けやすいチリやオーストラリアなどの貿易相手国は即座に痛みを受けることになるだろう。賃金の低迷と増税の組み合わせは「ルイ・ヴィトン」を手掛ける仏LVMHといったファッション大手にも打撃を与える。株式相場が調整局面に入れば、2015年の世界同時株安のように、世界的に波及する可能性がある。そろそろ心の準備が必要なようだ」

     

    GSの試算では、住宅着工が30%減少すれば、22年のGDPは4%ポイント引下げられるとしている。今年9月の国内新築着工は、6カ月連続減少になっている。すでに、中国の空き家は6500万戸(21%)もある。敢えて新築着工をする必要はないほど住宅は満ち足りている。消費者は、それを知らないで投機目的で購入しているのだ。こういう事実が知れ渡れば、誰でも手を引くだろう。中国は、今や危機的状況に立ち至っている。

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    約2年わたって猛威をふるってきた新型コロナウイルスは、あと1年以内に終息する見通しという報道が増えている。モデルナのステファン・バンセル最高経営責任者(CEO)も、このような予想を語った。あとは、定期的なワクチン接種が必要という。インフルエンザ並みの予防が必要になる。

     

    問題は、中国のようにロックダウン(都市封鎖)を厳重に行い、感染抵抗力の小さい国では、過渡的にコロナ感染者の急増というリスクを抱える。中国は、欧米の優れたワクチン受容を拒否しているだけに、どのように対応するのか。

     


    『中央日報』(9月25日付)は、「ワクチン開発者『1年以内にコロナ収束 さらに強い変異株出現は難しい』」と題する記事を掲載した。

     

    新型コロナワクチン開発者の間で1年以内に新型コロナが収束して日常生活に復帰できるという楽観論が相次いで出ている。ただ、高いワクチン接種率、そして富裕国と貧困国のワクチン格差が解消されるという前提である。

     

    (1)「ワシントンポスト(WP)によると、モデルナのステファン・バンセル最高経営責任者(CEO)は23日(現地時間)、スイス日刊紙ノイエ・チュルヒャー・ツァイトゥング(NZZ)のインタビューで「来年は日常生活に復帰できそうか」という質問に対し、「今日から1年以内には可能だと思う」と答えた。バンセル氏は、ワクチン産業全般にわたり新型コロナワクチンの生産が拡大し、ワクチンの十分な確保が可能になったという点を理由で提示した。続いて「来年半ばまでに地球上のすべての人が接種できるほどワクチンを確保できると予想される」とし「ブースターショット(追加接種)も必要な分を接種できるだろう」と述べた」

     


    9月24日開催されたクアッド(日米豪印)首脳会議では、全世界に12億回分を超えるワクチンを供与することで合意した。4首脳は今年3月にオンラインで協議し、10億回分のワクチン製造体制を整えるとしていたので、生産量の上乗せを図る。

     

    世界中でワクチン増産体制が整えば、「来年一杯で新型コロナ終息」の可能性が出てくるのであろう。今後、変種の出現もなさそうだという。

     

    (2)「ブースターショットは、今後1-3年ごとに必要になると予想した。バンセル氏は「結局、新型コロナはインフルエンザと似た水準になるはずで、予防接種を適時にすれば冬を問題なく過ごすことができ、ワクチンを接種しなければ入院するリスクを負えばよい」と話した。新型コロナが一般の風邪レベルで扱われるという見方は、英製薬会社アストラゼネカのワクチン開発者の間でも出てきた」

     

    日本でもブースターショット(追加接種)は、来年から始まると報じられている。日本を例にとれば、「ウイズ・コロナ」も次第に軌道に乗るであろう。

     


    (3)「アストラゼネカとワクチンを共同開発したオックスフォード大のサラ・ギルバート教授とジョン・ベル教授は、デルタ株より強力な変異株は出現しにくいという見方を示した。ギルバート教授は「ウイルスは免疫力が強い人の間で伝播しながら徐々に致命率が低くなる」とし「従来の免疫を突破するほど伝染力が強く致命的な変異株に進化するのは難しいだろう」と述べた。ベル教授もワクチン接種者が増えている英国について「最悪の状況は通過した」と評価し、「ワクチン接種率が高まる中でウイルス拡大は弱まる傾向が表れている」と説明した」

     

    専門家は、デルタ株より強力な変異株は出現しにくくなるとしている。「ウイルスは、免疫力が強い人の間で伝播しながら徐々に致命率が低くなる」結果と判断している。

     


    (4)「これに関し現在、ファイザー取締役のスコット・ゴットリーブ元米食品医薬品局(FDA)局長も「デルタ株が新型コロナ大流行の最後なるだろう」と話した。ゴットリーブ氏は、ワクチン免疫を回避する変異株が出現しないという前提で新型コロナが季節性疾病になるという点に異見を唱えなかった。また、新型コロナが風土病になるためにはワクチン接種率を高めることが最優先課題だと述べた。ゴットリーブ局長は「米国の人口の80~85%まで接種してこそ感染件数が減少し、拡大ペースが落ち始める」とし、新型コロナと共存する未来について慎重に言及した」

     

    デルタ株が、「新型コロナ大流行の最後なるだろう」とすれば、今後の感染津波は回避できるのかも知れない。それにしても、菅首相はこのコロナによって政治生命を左右されることになった。政治家も時の運・不運に左右される運命であることを改めて見せつけている。「首相職、お疲れ様でした」

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