中国当局は、不動産開発企業の倒産整理に消極的である。香港大法院で「企業整理」に判決が出ても、大陸では「のらりくらり」して整理の進行を邪魔している形だ。倒産が現実化すると、新たな倒産企業を発生させるという思惑からだ。これでは、住宅関連の不良債権は、いつまでも根雪のように残るだけだ。
『日本経済新聞 電子版』(5月16日付)は、「中国不動産、不況の出口見えず 積み上がった住宅在庫5年分」と題する記事を掲載した。
中国の不動産市場が低迷から抜け出せない。経営が厳しい不動産会社の延命措置など抑え込み政策で金融システム危機に発展する懸念はいったん後退。銀行株は堅調に推移する。対照的に不動産株自体は政府が取り繕った市場の「安定」への警戒感が強く、株価はさえない。肝心の不動産販売額は落ち込み、市場には5年分の住宅が在庫として残り、中国経済の足かせになりかねない。
(1)「不動産は関連産業も含めれば国内総生産(GDP)の約3割を占めるとされる中国経済の支柱だ。2023年以降は負債総額が2兆3882億元(約49兆円、23年6月末時点)に達した中国恒大集団などの信用不安が深刻化。巨額の債務問題が金融システムや経済全体を揺るがすとの懸念から海外マネーが「中国離れ」に動く事態を招いた。政府は24年秋に財政出動を決めて不動産市場の支援を強化した。金融システム危機へつながる懸念は後退し、中国の銀行株で構成する香港市場の「ハンセン中国本土銀行指数」は足元で上昇傾向が鮮明だ」
中国GDPは、3割が不動産開発関連事業関連とされる。このエース格が、半身不随状況に陥っている。政府は、対策に逃げ腰だ。これでは、経済も回復するはずもない。
(2)「一方で、「ハンセン中国本土不動産指数」は19年末に比べ8割安の水準。底ばいから抜け出せない。取引先の連鎖倒産などの危機を防ぐため、不動産会社が「ゾンビ」のように延命されているに過ぎないと、投資家らは弥縫(びほう)策を見透かす。不動産会社の主要債権者である銀行と不動産の株価の連動性は薄れ、チャートはワニの口のように差が広がった。不動産市場にリスクはくすぶり続けている。恒大は24年1月に香港高等法院が任命した清算人のもとで法的整理(清算)手続きが始まった。しかし、中国当局の裁量が及ぶ本土側の主要資産に手をつけられていない。香港高裁では恒大以外にも複数企業が債権者から法的整理を申し立てられている。22年に業界トップだった碧桂園控股(カントリー・ガーデン・ホールディングス)も24年12月末時点で社債などのデフォルト(債務不履行)の総額が1881億元に上った」
債務不履行の不動産大手2社が、倒産整理もされずに存在している。不思議な現象だ。政府が「生き延びさせて」いる最大の理由は、最終的に不良債権確定を恐れているからだ。国が,率先して逃げ腰である。こういう国の経済が、回復軌道に乗るはずはない。
(3)「こうした企業は、香港で債権者から突き上げにあう一方、本土ではゾンビ化して在庫物件を売り続ける。みずほリサーチ&テクノロジーズの試算によると、24年の中国の住宅在庫は約44億平方メートルと年間販売面積の5.4倍にのぼる」。
ゾンビ化しても「生かして」おけば、不良債権にならないという理屈付であろう。「ウミ」を出さずに「自然治癒」を狙っているのだろう。これでは、在庫一掃に5年以上の歳月がかかるであろう。
(4)「同社の月岡直樹主任エコノミストは、「人口減少で25〜34歳の住宅購入層が減っている。実需がどれだけ減るか見通せない」と警戒する。中国の調査会社、克而瑞研究センターが発表した不動産大手100社の4月の販売額は前年同月比8.7%減の2846億元(約5兆6000億円)だった。24年9月以来の2カ月連続でのマイナスとなった。5月は「回復が弱い状況が続く」とし、大きな改善は望めない。需給の引き締めは一筋縄ではいかない」
25〜34歳の住宅購入層は、これからますます減って行く。企業整理の時期を先へずらせばずらすほど、不動産開発業界は「衰弱」していくであろう。
(5)「在庫水準が高止まりすれば、価格は下がっていく。不動産は中国の家計資産の約5割を占めるとされる。資産価格の低下で消費意欲が減退する「負の資産効果」によってデフレ圧力が強まる可能性が高い。中国共産党は4月25日に中央政治局会議を開き、不動産市場について「重点領域のリスクを予防・緩和する」と言及。政府による不動産在庫の買い取りなどを続ける方針を確認した。丸紅中国の鈴木貴元・経済研究総監は「当局が大手不動産会社を潰さずリスクの連鎖を防ぐという『神話』が消費者の購入意欲を一定程度支えている効果はあるものの、なお厳しい地域はある」と語る」
在庫整理の極意は、十分な価格下落によって「底入れ感」を形成することだ。いつまでも,ズルズルと値下がりし続ければ、需要も供給も際限ない落込みとなろう。市場機能に背を向ける習近平氏は、目を覚まさなければダメなのだ。