勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    あじさいのたまご
       


    中国当局は、不動産開発企業の倒産整理に消極的である。香港大法院で「企業整理」に判決が出ても、大陸では「のらりくらり」して整理の進行を邪魔している形だ。倒産が現実化すると、新たな倒産企業を発生させるという思惑からだ。これでは、住宅関連の不良債権は、いつまでも根雪のように残るだけだ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(5月16日付)は、「中国不動産、不況の出口見えず 積み上がった住宅在庫5年分」と題する記事を掲載した。

     

    中国の不動産市場が低迷から抜け出せない。経営が厳しい不動産会社の延命措置など抑え込み政策で金融システム危機に発展する懸念はいったん後退。銀行株は堅調に推移する。対照的に不動産株自体は政府が取り繕った市場の「安定」への警戒感が強く、株価はさえない。肝心の不動産販売額は落ち込み、市場には5年分の住宅が在庫として残り、中国経済の足かせになりかねない。

     

    (1)「不動産は関連産業も含めれば国内総生産(GDP)の約3割を占めるとされる中国経済の支柱だ。2023年以降は負債総額が2兆3882億元(約49兆円、23年6月末時点)に達した中国恒大集団などの信用不安が深刻化。巨額の債務問題が金融システムや経済全体を揺るがすとの懸念から海外マネーが「中国離れ」に動く事態を招いた。政府は24年秋に財政出動を決めて不動産市場の支援を強化した。金融システム危機へつながる懸念は後退し、中国の銀行株で構成する香港市場の「ハンセン中国本土銀行指数」は足元で上昇傾向が鮮明だ」

     

    中国GDPは、3割が不動産開発関連事業関連とされる。このエース格が、半身不随状況に陥っている。政府は、対策に逃げ腰だ。これでは、経済も回復するはずもない。

     

    (2)「一方で、「ハンセン中国本土不動産指数」は19年末に比べ8割安の水準。底ばいから抜け出せない。取引先の連鎖倒産などの危機を防ぐため、不動産会社が「ゾンビ」のように延命されているに過ぎないと、投資家らは弥縫(びほう)策を見透かす。不動産会社の主要債権者である銀行と不動産の株価の連動性は薄れ、チャートはワニの口のように差が広がった。不動産市場にリスクはくすぶり続けている。恒大は24年1月に香港高等法院が任命した清算人のもとで法的整理(清算)手続きが始まった。しかし、中国当局の裁量が及ぶ本土側の主要資産に手をつけられていない。香港高裁では恒大以外にも複数企業が債権者から法的整理を申し立てられている。22年に業界トップだった碧桂園控股(カントリー・ガーデン・ホールディングス)も24年12月末時点で社債などのデフォルト(債務不履行)の総額が1881億元に上った」

     

    債務不履行の不動産大手2社が、倒産整理もされずに存在している。不思議な現象だ。政府が「生き延びさせて」いる最大の理由は、最終的に不良債権確定を恐れているからだ。国が,率先して逃げ腰である。こういう国の経済が、回復軌道に乗るはずはない。

     

    (3)「こうした企業は、香港で債権者から突き上げにあう一方、本土ではゾンビ化して在庫物件を売り続ける。みずほリサーチ&テクノロジーズの試算によると、24年の中国の住宅在庫は約44億平方メートルと年間販売面積の5.4倍にのぼる」。

     

    ゾンビ化しても「生かして」おけば、不良債権にならないという理屈付であろう。「ウミ」を出さずに「自然治癒」を狙っているのだろう。これでは、在庫一掃に5年以上の歳月がかかるであろう。

     

    (4)「同社の月岡直樹主任エコノミストは、「人口減少で25〜34歳の住宅購入層が減っている。実需がどれだけ減るか見通せない」と警戒する。中国の調査会社、克而瑞研究センターが発表した不動産大手100社の4月の販売額は前年同月比8.%減の2846億元(約5兆6000億円)だった。24年9月以来の2カ月連続でのマイナスとなった。5月は「回復が弱い状況が続く」とし、大きな改善は望めない。需給の引き締めは一筋縄ではいかない」

     

    25〜34歳の住宅購入層は、これからますます減って行く。企業整理の時期を先へずらせばずらすほど、不動産開発業界は「衰弱」していくであろう。

     

    (5)「在庫水準が高止まりすれば、価格は下がっていく。不動産は中国の家計資産の約5割を占めるとされる。資産価格の低下で消費意欲が減退する「負の資産効果」によってデフレ圧力が強まる可能性が高い。中国共産党は4月25日に中央政治局会議を開き、不動産市場について「重点領域のリスクを予防・緩和する」と言及。政府による不動産在庫の買い取りなどを続ける方針を確認した。丸紅中国の鈴木貴元・経済研究総監は「当局が大手不動産会社を潰さずリスクの連鎖を防ぐという『神話』が消費者の購入意欲を一定程度支えている効果はあるものの、なお厳しい地域はある」と語る」

     

    在庫整理の極意は、十分な価格下落によって「底入れ感」を形成することだ。いつまでも,ズルズルと値下がりし続ければ、需要も供給も際限ない落込みとなろう。市場機能に背を向ける習近平氏は、目を覚まさなければダメなのだ。

     

     

    a1320_000159_m
       


    トランプ支持派は熱狂的で、米国は対中国政策で強硬対応すべきという点で結束している。それだけに、米国が対中関税を30%以下に下げることに大きな不満をみせるだろうと予測されている。この30%関税が続けば、中国の打撃は大きい。ブルームバーグが、エコノミスト調査をした結果、以上のような内容が浮かび上がった。

     

    『ブルームバーグ』(5月16日付)は、「トランプ政権、対中関税率30%に据え置きへ-アナリストら半年先予想」と題する記事を掲載した。

     

    米国と中国は、90日間の関税率相互引き下げで先に合意した。ブルームバーグが実施した最新調査では、米関税率はこの期間が終了後も、中国の対米輸出を大幅に抑制すると見込まれる水準にとどまる公算が大きいとの見通しが示された。

     

    (1)「アジアや欧州、米国の資産運用会社や銀行、調査会社のアナリストや投資家ら計22人を対象とした14、15両日の調査によれば、中国産品に対する米関税率は2025年終盤まで現行の30%に据え置かれると予想(中央値)されている。12日の合意発表前の145%を大幅に下回るものの、中国の中期的な対米輸出を優に70%減らす高水準だとブルームバーグ・エコノミクス(BE)は推計。米中貿易交渉が早期の米関税政策見直しにつながる期待は低く、中国の経済的痛手が続く可能性を示唆するものだ」

     

    関税引下げは、米中貿易問題解決の入り口にすぎない。米国は、中国の対米黒字削減の具体的な輸入計画の提示と、その実現性の検証が控えている。さらに、米国は中国の過剰輸出を食止める内需充実策を要求している。こういう一連の問題を抱えているだけに今後、半年以内に問題がすべて解決するとは思えない。となると、現状の対中30%関税は維持されるどころか、引上げられる可能性まである。

     

    (2)「DNBバンクのエコノミスト、ケリー・チェン氏は来年11月の米中間選挙が合意期限となる可能性を指摘した上で、「米中の相対的な立場が本質的に変化するには、十分な時間が残されていない」との見方を示した。半年後には関税率が30%を下回ると予想する回答者が7人いた一方で、一段と高い関税率を見込む回答者も6人いるなど、将来に向けた見通しは一層分かれており、両国が対立を解消できるかどうかに対する不確実性が浮き彫りとなった。なお、米中が最終的な貿易合意に達した場合、関税率は20%まで引き下げられる可能性があるとの予想が中央値で示された」

     

    来年11月の米国中間選挙まで、米中合意が引き延ばされるという見方もある。これは、米国が中国へ強気姿勢を取る結果だ。

     

    (3)「幾人かの回答者は、トランプ大統領の関税政策の予測不可能性を理由に、予想すること自体に慎重な姿勢を示した。EFGアセット・マネジメントのエコノミスト、サム・ヨキム氏は「トランプ政権1期目を教訓とすれば、状況はまだ完全に好転したわけではなく、合意が必ずしも維持されるとは限らない」とし、「米通商政策の高度の不確実性に伴うリスクは引き続き高い」と指摘した」

     

    トランプ氏の「不確実性」によって、見通しは付けがたいとする意見も出されている。

     

    (4)「トランプ氏の対中関税政策は、今年の世界経済と市場に影響を与える最大級の変数の一つだ。関税や景気刺激策を巡る不確実性が影を落とし、中国資産は年末まで現在の水準付近で狭いレンジ内の取引が続く公算が大きいと回答者はコメントした。調査結果によれば、人民元は25年末までに1ドル=7.2元前後で推移するとの予測が回答者17人の中央値で示された。中国当局主導の元安誘導に関する臆測が和らぐ状況にあって、当局は急激な資本流出や過度な流入を防ぐとみられており、人民元は安定した水準で推移する可能性がある」

     

    人民元は、25年末までに1ドル=7.2元前後で推移するとの予測が多かった。中国当局主導の元安誘導は困難としている。資本流出が起こるからだ。中国が、もっとも神経を使っている問題だ。

     

    (5)「回答者の大多数は、トランプ政権1期目に導入された関税が維持されると予測している。これを引き下げることは大きな譲歩と受け取られ、政権支持層の怒りを招く可能性があるためだ。BEの推計によれば、これらの関税率は平均約12%となっている。アバディーン・インベストメンツの新興市場担当シニアエコノミスト、ロバート・ギルフーリー氏は対中関税率が50%前後で落ち着くと予想する。「関税に関する好材料があれば、中国の政策緩和の動きは抑制される可能性が高く、それは市場の上昇余地を限定的なものにすることを示唆している」とギルフーリー氏は分析。「ダメージの実態が明らかになり経済が減速する中で、最終的には当局が為替の下落を容認すると予想している」と論じた」

     

    対中関税率が引下げられたとしても、トランプ政権1期の平均約12%を下回らないとみている。関税率の極端な引下げによって、中国の内需充実策が中途半端になるというリスクが生じる。となると、高めの関税設定となる。

    あじさいのたまご
       

    中国は、米国の関税爆弾に対する報復として、米ボーイング製の旅客機3機を受領せず送り返した。塗装まで終えた厦門航空のボーイング737MAXが米シアトルに戻ってきた様子が報じられた。中国政府は5月13日、国内の航空会社に対して輸入停止措置を解除し、ボーイングによる機体の納入再開を認める通知を出している。

     

    受領拒否されたボーイングは、慌てるどころか「欲しがる先は山ほど」と悠然たる構えであった。何しろ、ボーイングの民間機受注残は5643機に上る。米証券のジェフリーズは、「現在の受注量は約8年分の生産量に相当する」と指摘しているほど。中国が受注をキャンセルしても「痛くもかゆくもない」のだ。中国の空回りであった。

     

    『朝鮮日報』(5月16日付)は、「中国の受領拒否でも悠然とする米ボーイング…中国旅客機が関税の犠牲になった理由とは」と題する記事を掲載した。

     

    中国の航空各社は、米国の関税爆弾に対する報復として、最近ボーイング製の旅客機3機を受け取らずに送り返しました。ボーイングが今年、中国に引き渡す旅客機は計50機ですが、中国の航空会社はそれをすべて受領しない立場とされました(注:その後受領方針へ転換)。

     

    (1)「ボーイングは、悠然と構えています。同社のケリー・オルトバーグ最高経営責任者(CEO)は4月23日、米エアデータニュースのインタビューに対し、「中国の受領拒否が経営に大きな影響を与えることはないだろう。(送り返された)機体を皆が欲しがっている」と発言しました。マレーシア航空などが既に購入意向を表明しています。ボーイングは最近、旅客機の発注が殺到し、目が回るほど忙しい状況です。737MAXも納期を短縮するため、月間の生産を30機から38機に引き上げようとしています」

     

    中国は、後先のことを考えずにボーイング製旅客機を受領せず、送り返す「異常行動」に出た。米国を困らせる目的であったが、逆の結果になった。欲しがる国がいくつも名乗り出たからだ。これに慌てて、引き取り方針に変わった。

     

    (2)「中国が、独自開発した中型旅客機「C919」が、米中による関税戦争の犠牲になりかねないとの報道が相次いでいます。中国はC919の国産化率を60%以上と説明していますが、航空機エンジン、運航システム、電子設備など重要部品は全て欧米から輸入しています。アメリカが本気になって輸出を阻めば、C919の生産は中断されかねない状況です」

     

    中国は、欧米の協力で商用機C919の製作を行っている。主要部分は、すべて欧米製が担っている。中国国産とは、名ばかりの飛行機だ。

     

    (3)「トランプ米大統領は、政権1期目に米国とフランスが合弁で生産するC919用ジェットエンジンの輸出中断を検討したことがあります。中国は米国に対する報復として、米ボーイング製の旅客機を受け取らずに相次いで送り返しましたが、米中関税戦争の犠牲になるのはボーイングではなく、中国が独自開発した中型旅客機C919になるのではないかというのが国際専門家の分析です。ボーイングはただでさえ発注が積み上がっている状態なので、中国による旅客機受領拒否は大きな打撃ではないと言っています。中国が送り返したボーイング737MAX旅客機は、マレーシア航空やエアインディアなどが購入意向を表明しています」

     

    国際専門家は、中国がボーイングへ高飛車に出たとみている。欧米が、C919用ジェットエンジンの輸出を止めれば、中国は打つ手がないのだ。こういう「力関係の差」を忘れて突飛な行動に出たのである。中国は、米国が報復しないうちに、ボーイング受領に転じて「命拾い」した形だ。

     

    (4)「英『フィナンシャルタイムズ』(FT)は今月6日、「ボーイングとエアバスが支配する世界の旅客機市場に挑戦した中国初の国産旅客機C919が貿易戦争の混乱に直面した」と報じました。国営の中国商用飛機(COMAC)が開発したC919は、2023年に初の商業運航を始めました。これまで中国の国営航空会社に計17機を引き渡し、今年も30機以上供給する予定です。主要部品サプライヤー88社の内訳は、米国が48社、欧州が26社、中国が14社だということです。中国メーカーで高価な重要装備を供給している企業はないそうです」

     

    中国は、「虎の子」であるC919が、欧米の協力で生産している事実を忘れて高飛車に出たのだ。お笑い種である。

     

    (5)「中国が、レアアースの輸出を規制したように(注:その後解除の方向)、米国がC919部品の供給中断に乗り出すのではないかとの見通しが示されています。英国の航空・防衛産業アナリスト、サッシュ・トゥサ氏はFTに対し、「米国はまだ供給中断について言及していない。恐らく次の段階の措置になるだろう」と述べました」

     

    中国が今後再び、レアアース輸出禁止策に出たならば、米国がC919部品の供給中断に乗り出せば「お相子」になるほどだ。中国も弱点を抱えているのだ。

     

    a0960_008532_m
       

    韓国の民主主義が、文字通りの危機に直面している。大統領選に立候補している「共に民主党」候補の李在明氏は、自らの選挙違反事件で下された高裁再審判決(事実上の有罪)を不満として、「最高裁をクリーンにする」と威嚇している。あってはならない発言を行い、司法府の独立性を脅かしている。李氏が大統領に当選すれば、最高裁人事は「左派」で占められよう。これで、韓国の民主主義が消える。

     

    『中央日報』(5月16日付)は、「共に民主党の李在明候補『法廷はクリーンであるべき』…司法府激浪を予告」と題する記事を掲載した。

     

    これまで司法府に対する党内の強硬論と距離を置いた共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)大統領選候補が15日、最前線に立った。李候補はこの日、慶尚南道河東郡(ハドングン)での演説で「司法府の最高責任は大法院(最高裁)にある」とし「きれいな手で(判決)しなければいけない」と述べた。前日の演説でも「内乱首魁だけでなく2、3次内乱を起こそうとする者をすべて捜し出して法廷に立たせるべきだ。法廷はクリーンでなければいけない」と話していた。

     

    (1)「李候補の発言は、当選すれば司法府を全面的な改革対象にするという意志が込められている。民主党が言う司法府大改造の内容は、これまで民主党がしてきた「司法府圧力」法案に反映されている。民主党は前日、国会法制司法委員会全体会議で虚偽事実公表罪の構成要件から「行為」を削除する選挙法改正案を通過させた。改正案が発効すれば李候補を選挙法で処罰する法条項自体が消える。法制司法委員会は7日には、大統領に当選した被告人の刑事裁判公判手続きを任期中に停止する内容の刑事訴訟法改正案も通過させた」

     

    最大野党が委員会で、大統領に当選した被告人の刑事裁判公判手続きを任期中に停止する内容の刑事訴訟法改正案も通過させた。李候補は、大統領に当選すれば、ひとまず「安泰」だ。

     

    (2)「政界では、李候補が大統領選挙で勝利する場合、民主党が直ちに国会本会議でこの2つの改正案から強行処理するという見方が出ている。民主党の関係者は「国民が結局、李候補に軍配を上げたことになり、法案処理の名分になる」と述べた。李候補の破棄差し戻し審裁判所は民主党の「裁判官弾劾」圧力の中、当初15日に予定していた最初の選挙法公判期日を大統領選挙後の6月18日に延期した。改正案が本会議を通過すれば李候補は「免訴(法条項廃止で処罰できない)」判決を受ける道が開かれる」

     

    李候補の当選後、国会はすぐに「李在明免訴」の法案を成立させる見通しだ。軍事政権並みの権力行使である。

     

    (3)「法制司法委員会に14日に上程された法案は、次の通りだ。▼大法院長含む計14人の最高裁判事数を最大100人まで増やす裁判所組織法改正案▼大法院の判決を憲法訴訟対象に新たに含める憲法裁判所法改正案▼曹喜大大法院長を捜査する「特別検査法」は「大統領退任後に再開される李候補の司法リスクまでも防ぐ法案」(法律家出身の元非李在明派議員)という評価を受ける」

     

    国会の法制司法委員会は、最高裁判事数を現在の14人から最大100人まで増やすとしている。登用される判事はすべて左派系になるはず。「お手盛り」裁判官に、左派に有利な判決を出させる準備だ。李氏の選挙違反事件で高裁差戻し判決を出した最高裁長官は、「特別検査法」で捜査するとしている。司法の独立性が、土足で踏みにじられる暴挙であり、韓国の民主主義は「死」を迎えるであろう。

     

    (4)「最高裁の判事数を最大100人まで増やす場合、親民主党性向の最高裁判事を多数任命して退任後の無罪の可能性を高めることができる。それでも有罪が確定する場合、その3審判決に対して「李在明政権」で進歩優位に再編される憲法裁判所でもう一度判断を受けようという「4審制」を意図したのが憲法裁法改正案という解釈だ。「曹喜大特検法」は13日、金容民(キム・ヨンミン)院内政策首席副代表が発議した「法歪曲罪」とも結びつく。改正案は、判事が法理を歪曲して誤った判決をする場合10年以下の懲役とする」

     

    「共に民主党」は、民主主義の殻を残しながら左派独裁政権を築こうという野心に燃えている。民主国の裁判は、「3審制」(地裁・高裁・最高裁)だが、韓国は「4審制」にして左派の無罪を勝ち取る体制を目指している。判事が誤った判決をする場合、10年以下の懲役にするという「脅し」まで付けている。ここまで来ると、韓国は完全な「左派独裁」に陥る。

     

    (5)「国民の力は激しく批判した。国民の力の金文洙(キム・ムンス)大統領候補はこの日、緊急記者会見を開き、民主党の司法府圧力法案を「李在明セルフ免罪5大悪法」とし「世界史上このような独裁者がいただろうか。法を変えて生きるという、世界で唯一の人物が李在明」と述べた」

     

    少数与党「国民の力」は、危機感を募らせている。国民が、これをどう受止めるかだ。これでも李氏が大統領に当選するならば、韓国は政治も経済も「死」を迎えるであろう。それほど危険は内容である。

     

    (6)「民主党の一部からも慎重論が提起された。李明博(イ・ミョンバク)政権で法制処長を務めた李石淵(イ・ソクヨン)民主党共同選挙対策委員長は、ラジオ番組で「私は大法院長に対する特検法、弾劾、聴聞会は一つの政治攻勢とみて、党内からこうした主張は出てこないと思った」と話した。柳寅泰(ユ・インテ)元国会事務総長もラジオ番組で「司法府に対する圧力がむしろ票を減らしていると考える」と述べた」

     

    民主党内部からも異論が出ている。李在明氏の側近たちには、こういう「正論」が響かないであろう。

    あじさいのたまご
       


    日産自動車、ルノー、三菱自動車の3社連合は、2018に世界1の販売台数を誇った。かつての「日産のドン」カルロス・ゴーン氏は、保護主義が起こるとは夢にも思わず、グローバル主義を唱え続けた。だが、日産自体は国内生産を基盤に米国へ輸出する,従来型の「輸出企業」でしかなかった。現在は、グローバル主義への寒風が一段と厳しくなり、日産自動車の「グローバル主義」は空中分解し始めている。トランプ関税によって、日産グローバル主義は大きく揺らいでいるのだ。

     

    『ブルームバーグ』(5月15日付)は、「沈みゆく日産、グローバル化の終焉映す-フィックリング」と題するコラムを掲載した。

     

    カルロス・ゴーン氏は2018年、販売実績で世界最大の自動車グループになったことに自信を深め、単一企業体制への統合を視野に入れていた同氏にとって、保護主義は懸念材料ではなかったようだ。しかし、地殻変動はすでに始まっていた。日産の社内では数週間もたたないうちにゴーン氏の逮捕につながる内部調査が開始され、19年には日本からの劇的な逃亡劇が展開された。その後、連合はフランスと日本の分離を試みるも、ほぼ10年にわたり成功せずに引きずっている。

     

    (1)「こうした中、日産が今週発表した24年度決算では6709億円の当期純損失を計上。同時に車両生産工場について27年度までに現在の17から10に削減すると確約した。世界有数の自動車メーカーだった日産は終焉に近づいているのかもしれない。投資家らも同様の判断を下している。日産のPBR(株価純資産倍率)は約0.25倍で推移しており、社債も主要格付け3社全てからジャンク級と評価されている。時価総額は1兆3000億円程度とネットキャッシュの約1兆5千億円を下回っている」

     

    日産の凋落は、本当に胸が痛む話だ。日本の自動車企業として草分け的な存在である。それだけにプライドも高い。今回のホンダとの統合破談は、その高いプライドのもたらした悲劇である。

     

    (2)「日産の最高経営責任者(CEO)に就任したイバン・エスピノーサ氏は、わずか数カ月で再建計画を打ち出した。日産の再建計画は過去5年間で3度目だ。もっとも、この計画は内田氏が6カ月前に発表した前回の取り組みの焼き直しに過ぎず、出血を止めるには不十分だろう。この問題を解決する機会は、内燃エンジンの黎明期以来、世界の自動車業界が最も劇的な変革を遂げていた過去7年間にあった。日産はその期間、ゴーン氏追放を発端とする社内での対立や混乱の対応に追われていた。現在でも2024年度決算短信でゴーン氏の事件を巡る記述が2ページにわたって記されている。エスピノーサ氏が打ち出した中国事業の再建計画も悪い冗談のように思える。中国市場での販売は19年以降でおよそ半減している。エスピノーサ氏はプラグインハイブリッド車(PHV)への注力により立て直そうとしているが、日産はあまりにも後れを取っており、存在感はほとんどない」

     

    過去7年間、日産は内紛で時間を浪費した。時代を遡って元を糺せば、過激な労使紛争が原因であった。戦後から一貫した紛争劇が、日産の体力を消耗させたのである。

     

    (3)「日産は、日本企業である。従業員の45%、製造拠点の約35%を国内で占めているにもかかわらず、国内販売はわずか16%だ。売上高の半分以上は北米で、国内工場で生産された車両の約30%が同市場に輸出されている。トランプ政権による25%の自動車関税は、この取引からの利益を完全に消し去るのに十分だ。ゴーン氏がもたらした1999年以降の日産の復活は、グローバリゼーションによる成功の象徴だった。しかし、その裏でナショナリズムが消え去ることはなかった。日産の失墜には、純粋な事業の失敗に加え、日仏政府間の代理戦争的な側面も大きく影響した」

     

    日産は、国内販売はわずか16%であるにもかかわらず、従業員の45%、製造拠点の約35%を国内が占めた。この実態とグローバル主義は、全く釣り合いの取れない話である。グローバル主義とは、現地生産で現地販売分をカバーすることと理解すれば、内実は全く異なっていた。日産の場合、単なる「輸出路線」と言えるものである。ここに、大きな食い違いが起こった。

     

    (4)「競合企業にとっても、沈みゆく日産の姿を喜ぶ余裕はない。主要な自動車メーカーが自国市場に閉じ込められるような世界は、中国企業以外の主要メーカーにとって厳しいものとなる。中国だけが規模、生産技術、EV分野での技術的優位性を確保し、他を圧倒する可能性があるためだ。この猛攻を食い止める最良の方法は国境を越えて協力することだったが、グローバリゼーションによる成功の象徴だった日産の失墜は、その未来への希望を完全に消し去った。旧勢力が無駄な争いに明け暮れているうちに新たな強国が覇権を握っていくのが世の常だ。国家と同様、自動車メーカーにおいても、このパターンが再び展開されている」

     

    中国EVは、ダンピング輸出で世界市場へ出没している。だが、全固体電池という次世代技術を持たない「特攻隊」的な出撃である。次世代電池が、登場するまでの「EVの露払い」的可能性が大きいのだ。ここは、技術面からグローバル化の本質を見届ける必要がある。現状判断で、明日のEV世界地図は予測できない。中国EV優位論に目が眩んではだめだろう。

    このページのトップヘ