勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    米国トランプ大統領の外交政策は、行き当たりばったりとの批判がつきまとっている。だが、ベネズエラ急襲やキューバ懐柔に続くイラン攻撃で、親中国国家を狙い撃ちしていることだ。これは昨年、米国がレアアース(希土類)で中国からしっぺ返しされたことへの「反撃」とみられる。とすれば、中国はレアアースで優位に立ったものの、親中国国家を次々に失う羽目に陥っているという構図だ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(3月10日付)は、「トランプ政権のイラン攻撃、親中国家に照準 対中優位性確保に陰の狙いか」と題する記事を掲載した。

     

    トランプ米政権によるイラン攻撃は、対中国戦略の一環だとの見方が広がる。1月のベネズエラ攻撃から始まり、次にイラン、キューバと中国に近い国への攻勢に一気に乗り出した。経済・軍事で親中国家を制し、米国の優位性を確保する狙いが透ける。トランプ米大統領は9日、キューバについて「彼らが取引をするか、我々が(ベネズエラやイランと)同じように簡単に(攻撃を)するのかどちらかになる」と語った。反米政権を改めて米国に近づくことが要求の主眼にある。

     

    (1)「米政権は1月、ベネズエラを攻撃してマドゥロ大統領を拘束し、親米政権への転換を促している。2026年に入って行動に出たベネズエラ、イラン、キューバはいずれも反米親中国家だ。米国に対抗するため中国と近い関係を築いてきた。政権の一連の行動は、中国に対して優位性を保つための戦略の一環といえる。政権に近い専門家によると、対中抑止を柱の一つに掲げた国家安全保障戦略を公表した25年12月ごろから本格的に動き始めたという」

     

    トランプ氏が自ら唱えた「ドンロー主義」で、米国が西半球から中ロ勢力の一掃を掲げた。これは、米国の陽動作戦である。アジア太平洋を軽視するものでなかった。それどころか、「敵は本能寺」で中国の拡張主義を押し返す重要な一歩である。「反米チャンピオン」キューバが、石油攻めによって米国との交渉テーブルに着く所まで追い込まれている。中国にとっては、支持勢力の一端を失う事態だ。

     

    (2)「保守系軍事専門家のマイケル・ウォーラー氏は「イラン攻撃は、共産主義・中国に対抗するトランプ氏の世界戦略を強力に推し進めるためのものだ」と指摘する。イラン、ベネズエラのいずれも産油国で、米国の行動は中国への打撃となった。イランの原油輸出先の9割を中国が占める。ベネズエラの輸出分と合わせると、中国の石油輸入の少なくとも15%を占める。両国の原油は米国などの制裁対象となっている。中国は、行き先を失った原油を割安価格で手に入れてきたが、米国の攻撃によって手に入りにくくなった。中国は25年、レアアース(希土類)の供給停止をちらつかせて米国との貿易交渉で譲歩を引き出した。トランプ政権は石油を通じて中国に反撃に出ている」

     

    中国は、ベネズエラとイランから割安価格で原油を輸入してきた。それが、米国の攻撃で不可能になっている。中国は、レアアースで米国へ対抗した。米国は、原油で中国へ反撃している。

     

    (3)「米国は、政情不安が続く中東に軍事資源を割いてきた。反米イランの現体制を突き崩せば、インド太平洋に資源を振り向けられるとの算段がある。23年からイエメンの親イランの武装組織フーシが紅海で相次ぎ商業船舶を攻撃したり拿捕したりした。米国は対応するため高性能ミサイル迎撃弾の在庫の約4分の1を使い果たした。米保守系シンクタンク、安全保障政策センターのグラント・ニューシャム氏は「中東において米国の安保問題はイランが根源だ。そしてイランを支えているのは中国だ。イランの体制が倒れれば軍事資源を中国に振り向けられる」と話す」

     

    米国はイランを叩けば、米軍の大軍を中東地域へ駐留させる必要がなくなる。その余力は、インド太平洋防衛へつぎ込める。中国封じ込め戦略の強化だ。

     

    (4)「イランは、中国やロシアから軍事支援を受けてきた。防空網を簡単に突破され、最高指導者ハメネイ師ら幹部が一斉に殺害された衝撃は大きい。軍事専門家は、米軍の力を中国や親中の国に見せつけたことは、米国の抑止力向上につながるとみる」

     

    米国は、ベネズエラやイランで、中国製防空網を簡単に制圧した。これは、米国の電子戦がいかに強力であるかを見せつけたもので、中国製防空網の無力ぶりを暴露した。

     

    (5)「トランプ政権が、デンマーク自治領グリーンランドの領有を狙って動いたのも、イランなどと同じ文脈にある。グリーンランドは親中ではないが、北極圏は米中が争う重要な軍事的要衝だとトランプ氏らは主張してきた。トランプ政権はパナマでも中国の影響力排除に動いた。パナマ政府にパナマ運河を返還するよう脅した。26年に入り、運河両端の港を管理していた中国・香港の巨大企業グループの排除が確実になった」

     

    トランプ氏は、グリーンランドとパナマでも中国勢力の拡張予防策に打って出ている。グリーンランドには「接近禁止」、パナマには港湾管理権の返上を促した。

     

    (6)「仮に台湾海峡で有事が起きそうになった場合、世界の海運の要衝を米中のどちらが抑えられるかが、開戦判断に大きな影響を及ぼす。政権に近い軍事専門家は、トランプ政権の一連の要衝確保は中国と「戦わずして勝つ」ための戦略だと唱える」

     

    台湾は地勢上、軍事的に世界でも有数の難攻不落の場所とされている。「孫氏の兵法」では、こういう地帯は絶対に攻めてはならない場所である。勝ち目ないからだ。それにもかかわらず、習氏は強引に攻撃目標に仕立てている。この強引さをいかにして諦めさせるか。それは、米国の巨大軍事力を見せつけるしかない。米国は、まずイランを無力化して、軍事力を中東からインド太平洋へシフトさせることだ。トランプ氏は、中国包囲網の最終戦に取組んでいる。

     

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    イランの次期最高指導者は、死亡したハメネイ師の次男、モジタバ師に決まった。強硬論者であることから、紛争の長期化予想が高まっている。これを反映して、原油価格の高騰という事態だ。国際エネルギー機関(IEA)トップは、G7(主要7ヶ国)財政相会議で「各国の石油備蓄の放出に早急に取り組むべき」と呼びかけなど慌ただしくなっている。こうした事態を前に、米国トランプ大統領は8日(現地時間)、「イランへの攻撃停止を巡り「適切な時期に決断する」と述べた。

     

    『日本経済新聞 電子版』(3月9日付)は、「トランプ氏、原油高騰に焦り イランとの戦闘停止『適切な時期に決断』」と題する記事を掲載した。

     

    トランプ米大統領は8日、イランへの攻撃停止を巡り「適切な時期に決断する」と述べた。イランが反米強硬派の最高指導者を選んで抗戦の意思を示すなかで、攻撃停止に言及した。中東情勢の緊迫化を見込んだ原油価格の高騰に対する焦りが背景にありそうだ。

     

    (1)「トランプ氏は、イスラエルメディア『タイムズ・オブ・イスラエル』のインタビューに語った。攻撃停止の判断はイスラエルのネタニヤフ首相と一緒に検討する考えを示した。「イスラエルを破壊しようとした国を私たちは破壊したのだ」と一連の攻撃の成果を主張した。トランプ氏は6日、イランに無条件降伏を突きつけた。交戦中のイランとの合意条件を引き上げた。イランは9日までに、新たな最高指導者に殺害されたハメネイ師の次男、モジタバ・ハメネイ師を選んだ。反米強硬派として知られる同師の選出を通じて、米国とイスラエルへの抗戦姿勢を鮮明にした形だ」

     

    イランが、最強硬派を次期最高指導者に選んで、少なくも6ヶ月間は抵抗するという軍部の声明もあった。これが、原油高騰へ拍車をかけている。

     

    (2)「トランプ氏は、イラン最高指導者の選出に自ら関与する考えを示し、モジタバ師は「受け入れがたい」と反対していた。現体制の中から米国と協力する穏健派の選出を望んだが、思惑通りにはならなかった。イスラエルメディアにモジタバ師が選出されたことを問われ「どうなるか注視する」とだけ答えた。トランプ氏が攻撃停止に言及したりモジタバ師への批判を控えたりした背景に、原油価格の急騰といった金融市場の混乱がありそうだ」

     

    トランプ氏は、市場の反応に対して敏感に動くという特色がある。国債相場の下落の際も、同様に政策を変更している。

     

    (3)「トランプ氏は8日、SNSに「イランの核の脅威を破壊し終えれば原油価格は急落する」と投稿した。高騰は短期間で収まるとの見方を示し「米国と世界の平和と安全のためならとても小さな代償だ」と言い切った。とはいえ、原油高に伴ってガソリン価格が跳ね上がれば、車社会の米国で有権者の不満が高まりやすい。11月の米中間選挙を控えて、トランプ氏にとって大きな打撃となりかねない。野党・民主党は長引く物価高による生活苦をトランプ政権への攻撃材料にしている。最近は、与党・共和党地盤の地方選挙で民主党が勝利する事態が相次ぐ」

     

    米国のガソリン価格が急騰している。全米自動車協会(AAA)によるとレギュラーガソリンは9日時点で、イラン攻撃開始時より16.%も値上がりしている。トランプ政権は、11月に中間選挙を控えており、家計の負担増が強い逆風となる。

     

    (4)「トランプ氏の支持層「MAGA」からも不満の声が強まる。MAGAはもともと外国の戦争への関与を嫌う。イランとの長期戦は、中間選挙を前に支持層の分裂まで引き起こす可能性がある。3月末からは、訪中し中国の習近平国家主席と会談する予定だが、対イラン情勢が影響しかねない。イランは対決姿勢を崩していないが、トランプ氏からはすでに「勝利宣言」のような発言も出始めている」

     

    MAGAは、外国との戦争を嫌う面があるので、イランとの長期戦が中間選挙で不利に働く懸念も出ている。

     

    (5)「米ブルームバーグ通信は8日、トランプ氏がイラン攻撃で地上への特殊部隊投入を選択肢として検討していると報じた。イランが保有する高濃縮ウランを押収するためだという。トランプ氏が言う「核の脅威」を取り除いて成果を誇示し、戦争の長期化も避けたいとの思惑が透ける。ただ地上作戦への突入は情勢をさらに混乱させるおそれもある」

     

    米国が、地上作戦へ踏み込めば長期化は避けられない。原油価格の高騰は、こういう諸々の要素を織り込んだものだ。

    ライト米エネルギー長官は8日、CBSテレビに出演し、米国とイスラエルのイラン攻撃をきっかけとした原油価格高騰について「長くは続かない」と述べた。イランの攻撃力低下に伴い、原油高を招いている国際原油輸送の要衝ホルムズ海峡の封鎖問題が間もなく緩和するとの見通しを示した。ライト氏は、原油高が「最悪でも数週間で、数カ月とはならない」と指摘。世界の原油供給は十分で、相場も「現在の水準からさほど上昇しない」と予想した。原油高はあくまでも「物流の問題だ」と断じた。

     


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    中国は、米・イスラエル両軍によるイラン攻撃を巡り、友好国イランへの直接的な支援を見送っている。トランプ米大統領の訪中を3月末に控え、対米関係の悪化を避けたいという事情があるからだ。現実に中国は、中東情勢へ介入できる余地が少ない。習近平政権は、これまで貿易・投資面で中東との関係を深めてきた。だが、米軍の圧倒的な戦力を前に何もできず、経済による影響力拡大の限界を露呈している。自称、中国大国論は遠くへかすんだ感じである。

     

    『ブルームバーグ』(3月9日付)は、「中国、イラン戦争でも米国との関係を最優先-トランプ氏訪中に期待感」と題する記事を掲載した

     

    トランプ米大統領は、対イラン攻撃の拡大を示唆し、中国の戦略的パートナーを「非常に激しい」打撃を与えると警告した数時間後、中国の王毅外相は世界中から集まった報道陣を前に2026年が米中関係にとって節目の年になり得るとの考えを示した。

     

    (1)「王氏は8日、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の会期中に行われた年次記者会見で、米中が「誠意と信義をもって向き合えば、26年を中国と米国の関係にとって健全で安定的かつ持続可能な発展の画期的な年にできる」と述べた。この発言は、王氏自身が5年前に署名したイランとの関係強化を維持しつつも、米国が主導しているイラン攻撃にもかかわらず、米政府との関係を守る意向を中国側が示したこれまでで最も明確なシグナルだ」

     

    不動産バブル崩壊の後遺症に悩む中国は、米国との友好関係維持による輸出増にすべてを賭けている。米国の機嫌を損ねてはならない窮地に立たされているのだ。この鬱積した気持ちが、日本非難となって現れているのだろう。

     

    (2)「中国は、中東情勢の激化に対し脆弱だ。中東での生産や輸送の混乱がエネルギー価格を急騰させている。また、海上輸送による中国の原油輸入の約13%を占めていたイランが不安定化すれば、供給源の多角化を進める中国の取り組みに打撃となる。王氏は停戦を求め、イランを巡る紛争は「決して起きてはならなかった」と論じた。一方、31日~4月1日に予定されるトランプ氏の訪中に合わせ、習近平国家主席が開く首脳会談の計画に、この紛争が影響することはないとの見方を示唆した」

     

    中国は、イラン問題よりも自国経済の立直しが重要な状況へ追い込まれている。

     

    (3)「北京を拠点とする独立系シンクタンク、ホライズン・インサイツ・センターのエグゼクティブディレクター、チュー・チュンウェイ氏によると、米中関係の安定と改善の重要性は強調してもし過ぎることはない。イランや中東全体で何が起きても、米中関係が不安定化したり首脳会談が中止されたりする可能性は低いとの見方を示した」

     

    中国は、自国経済が立ち行くかどうかという切羽詰まった状況にある。少しでも、米国へ輸出できる保証を得たいのだ。

     

    (4)「王氏の記者会見前から、米中が首脳による発表を想定した潜在的な合意の準備を進めている兆しがあった。そこには大規模な商業取引が含まれる見通しだ。ベッセント米財務長官とグリア米通商代表部(USTR)代表が来週末、中国の何立峰副首相とパリで会合を開き、地ならしを行うとみられている」

     

    米国は、中国へ米国産石油の購入を要求する構えだ。中国は、ベネズエラやイランから割安な原油を輸入してきただけに、割高な米国産輸入には抵抗があろう。

     

    (5)「王氏のイランに関するスタンスに見られる自制は、世界一の経済大国である米国との関係安定が最優先との計算に基づくものだ。中国は国内での成長鈍化と、自国の輸出に対する世界的な反発の高まりに直面。首脳会談が成功すれば、関税対立の棚上げ延長や貿易を巡る対外環境の安定化につながる可能性がある。ユーラシア・グループのシニアアナリストで元米外交官のジェレミー・チャン氏は、中国はイランやベネズエラを守ることよりも、米国とのデタント(緊張緩和)維持により大きな関心を持っていると指摘した」

     

    中国の本音は、イランやベネズエラを守ることよりも、米国とのデタント維持により大きな利益機会を見出そうとしている。これまでの「反米チャンピオン」が、ここまでへりくだっているのだ。

     

    (6)「こうした計算には、中国の信頼性を損ねるリスクも伴う。中国は、自らが提唱する「グローバル・セキュリティー・イニシアチブ(GSI)」を、弱肉強食の論理や米国の介入主義的アプローチより優れた枠組みと位置付けてきた。友好国への実質的な支援が乏しければ、中国が米国の力に代わる信頼できる選択肢を提示しているというメッセージ自体が損なわれかねない。チャン氏は、「ウクライナやパレスチナ自治区ガザ、そして今回のイランでの世界を巻き込む紛争は中国の構想の限界を示している」と分析。「パートナー国に準安全保障上の保証を提供したいのであれば、GSIよりも強力な手段を打ち出す必要がある」と述べた」

     

    中国は、「グローバル・セキュリティー・イニシアチブ(GSI)」を足場に、反米勢力の旗頭になってきた。それが、ベネズエラもイランも見捨てて、米国の元へはせ参じる格好だ。貧すれば鈍する、という適例がみられる

     

     

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    韓国経済が病んでいる。昨年、韓国の信用不良者(現在の呼称は金融債務不履行者)が再び100万人に迫り、2017年以降で最多となった。信用不良者になると、クレジットカードの発行を受けられず、新規融資も利用できない。信用不良者が増えると、経済全体で内需回復の足かせとなる。低成長に陥っている韓国経済にとって、新たな懸念材料が増えている。

     

    韓国人口に占める信用不良者数は、総人口5100万人に対して1.96%である。先進国では、信用不良者(長期延滞者)が人口の1%を超えると危険水域として警戒される。韓国は、実にこの2倍もの比率であるだけに、個人消費へも強いプレッシャーとなる。韓国の家計債務の対GDP比は、105%と世界のワースト記録だ。高い信用不良者数比率は、当然の結果と言えよう。この背景には、年功序列・終身雇用制による労働流動性遮断という大きな制度的歪みが存在する。労組が、終身雇用制を絶対堅持と政府に働きかけている結果でもある。

     

    『朝鮮日報』(3月9日付)は、「声なき絶望 韓国信用不良者100万人時代」と題する記事を掲載した。

     

    金相勲(キム・サンフン)国会議員(国民の力)が、韓国信用情報院から提出を受けた資料などによると、昨年末時点で国内の信用不良者は93万5801人だった。2017年(94万2634人)以降で最多だ。信用不良者は元金や利息などの債務を返済期日から90日以上延滞した場合が集計対象となる。

     

    (1)「信用不良者は、2003年のカード問題の際に370万人に達したが、その後は着実に減少し、17年には90万人台にまで抑えられた。その後も減少傾向が続き、22年には73万1428人まで減少したが、コロナ危機の影響で22年から再び急増し、25年までの3年間で20万人以上増加した」

     

    高金利と内需低迷が長期化する中、90日以上返済が滞る信用不良者が昨年末時点で93万人を超えた。今年は100万人を超えるとの予測もあるほどだ。金融的に脆弱な層の信用不良が、定着するという危機感が高まっている。

     

    (2)「特に韓国経済の要である40、50代の信用不良者は約44万人で、全体の半数に迫っている。40、50代の経済活動人口約1300万人の3.3%が金融取引をできない状態になっていることを意味する。特に自営業の割合が高い40、50代男性の信用不良者は4年前より3万人以上増加した」

     

    韓国経済を支える層の崩壊が深刻だ。昨年末の延滞者全体に占める40、50代の割合は半分に迫った。50代が22万8235人(24.4%)で最も多く、40代が21万5479人(23.0%)で続いた。40代・50代で合計47.4%に達している。経済活動人口のうち40・50代が約44%を占めるが、信用不良者はそれよりも高い割合だ。

     

    (3)「西江大経済学部のパク・チョンス教授は、「実体経済が厳しいため、信用不良者のように経済的な困難を抱える人が増えている」とした上で、「一時的に金銭が不足しているのではなく、構造的に返済能力が乏しく、信用不良者に陥る人がさらに増える可能性が高い」と述べた。金融当局関係者は、「コロナ当時に貸し出された多額の借金を返済できず、信用不良者が増加傾向にある。今後国民が債務負担を軽減できるような実質的な対策を整えていく」と語った」

     

    専門家は、急増する信用不良者の問題を単なる個人の道徳的怠慢と見なすべきではないと警告している。信用不良者が、経済活動人口から離脱すればするほど、国家経済の活力が低下するからだ。終身雇用制という制度へ切り込み是正しない限り、こういう事態は永遠に改善しないであろう。

     

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    イランの最高指導者を選出する権限を持つ「専門家会議」が、米国とイスラエルに殺害されたハメネイ師の後継として次男のモジタバ師(56)を選出したと発表した。モジタバ師を「受け入れられない」と宣言していたトランプ米大統領の方針を真正面から否定する動きと受け止められている。

     

    『ロイター』(3月9日付)は、「イラン新指導者にハメネイ師次男のモジタバ師、『反米』継承で遠のく早期終戦」と題する記事を掲載した。

     

    モジタバ師の最高指導者就任によってイラン体制は強硬派で固められる形となり、米国・イスラエルとの戦争が早期終結する望みは遠のいた。

     

    (1)「米首都ワシントンのシンクタンク、中東研究所のアレックス・バタンカ上席研究員は「(ハメネイ師の後を)モジタバ師が継いだため、(イランの姿勢は)変わらない。これほど大規模な危険の大きい作戦を実行し、ハメネイ師殺害を成し遂げたのに(最高指導者が)強硬派の息子に代わっただけ、というのは米国にとって大きな屈辱だ」と指摘した。複数の専門家の見立てでは、イランはモジタバ師を最高指導者に選んだことでこれ以上ないほどはっきりしたメッセージを発信した。つまり、指導部はいかなる妥協も拒否して体制を維持し、対決と復讐、忍耐以外の道筋は受け入れないということだ」

     

    イランは、対米最強硬派として知られていた人物を次期最高指導者に選んだ、死亡したハメネイ師の次男、モジタバ師である。あえて「火中の栗を拾う」立場になったが、イスラエルは次期最高指導者も狙うとしているから、モジタバ師へ押し付けたというケースも考えられる。モジタバ師が、それを弁えないとすれば「悲劇」だ。

     

    (2)「イラン内部の人物の話では、モジタバ師は今後すぐにも、不満を抱える国民と激化する戦闘という内外からの重圧に直面するだろうが、速やかに権力の強固な足場を築くという。それは革命防衛隊に対する幅広い指揮権を掌握するほか、国内の統制を強め、全面的な反対派抑圧に乗り出すことを意味する。米国とイスラエルの攻撃開始以前、国内で数カ月続いた反政府デモが1979年のイスラム革命以降最悪の流血事態をもたらした中で、イラン体制には弱体化の兆しが見えていた。背景にあるのは、西側の制裁で疲弊した経済や物価高騰、通貨暴落、広がる貧困などへの不満だ」

     

    モジタバ師は、父親以上に反米という。反対派弾圧も容赦しないとされる。危機を乗切るには、柔軟性が必要。猪突猛進は国と自身を滅ぼす。

     

    (3)「イラン政府に近い地域当局者の1人は、ロイターに「世界は彼の父(ハメネイ師)の時代を恋しがるだろう。モジタバ師は、『鉄拳』を誇示する以外に選択肢はない。戦争が終わったとしても、深刻な国内での弾圧が起きる」との見方を示した。イランの内部情報に詳しい別の人物も、モジタバ師の下で国内の統制が強まるとともに、対外的にはより攻撃的、敵対的な姿勢が打ち出されるとみている。中東研究所のポール・サレム上席研究員は、モジタバ師は米国と取引したり、イランの外交方針を転換したりする立ち位置にはないと明言。「妥協が可能な人物は誰も現れていない。これは強硬な局面でなされた強硬な選択だ」と述べた」

     

    モジタバ師は米国と取引したり、イランの外交方針を転換したりする立ち位置にいないとされる。誰か黒幕が、裏で糸を引くのだ。モジタバ師が、うまく乗せられたと言うイメージである。

     

    (4)「米国を「大悪魔」と呼ぶことで知られるイラン聖職者らの目には、暗殺されたハメネイ師は「殉教者」と映る。聖職者らは、ハメネイ師を英雄的人物として描き、抑圧に対する犠牲と抵抗の象徴であるイスラム教シーア派のイマーム・フセインになぞらえている。米国の元外交官でイラン専門家のアラン・エイヤー氏は、「モジタバ師は父親よりもさらに強硬だ」と説明し、モジタバ師は革命防衛隊に望まれた候補で「多くの復讐を行うだろう」と警告した」

     

    モジタバ師が、革命防衛隊に望まれた候補とされている。これで分かるように、単なる「武闘派」に過ぎない。いずれ、使い捨ての運命であろう。

     

    (5)「そうなると、さまざまなリスクが生じかねない。イスラエルは、ハメネイ師の後継者が誰であっても標的になり得ると表明しているほか、トランプ氏はイランの軍指導者と支配層が排除されない限り、戦争は終わらないかもしれないと発言しているからだ。モジタバ師はこれまで、西側との関係改善を提唱する改革派に反対し、保守派聖職者や革命防衛隊と近い関係にあることで、政治機構や治安機関への影響力を確保した。専門家の分析によると、モジタバ師はハメネイ師の下で影響力を高め、治安機関やその支配下にある巨大なビジネス帝国で主要人物として活動し、長年にわたりハメネイ師の門番、いわば「小さな最高指導者」として振る舞ってきている」

    モジタバ師は、父親の権威を借りて強硬派を演じてきた。このイメージか言えば、「虎の威を借る狐」という感じであろうか。

     

    (6)「中東研究所のサレム氏は、イランがたどる道は1991年以降のイラクのサダム・フセイン体制、もしくは2012年以降のシリアのアサド政権と同じだと分析する。いずれも数年の戦争を生き延びて孤立した後、次第に権力を失っていく流れだ。サレム氏は、「対外強硬姿勢をさらに推進する半面、国内はひどい状況に陥り、根底から不安定化する」と述べた」

     

    イランの辿る道は、第二のフセイン(イラク)やアサド(シリア)になりかねないという。イランに最も必要な指導者は、柔軟な外交術であろう。

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