勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    中国経済は、3年間のパンデミック下の苦境に加え、本格化する不動産不況の重圧に喘いでいる。生活実感に近い名目GDPは、4~6月期に4.0%増で、実質成長率4.7%を下回る「名実逆転」が5四半期連続している。デフレ圧力の根強さを示しているのだ。こういう状況で、地方政府は住宅販売不振で土地売却収入が急減し、歳入に大きな穴が開いている。 

    そこで編み出したのが、市民への罰金取り立てである。この罰金が、市の歳入で3割も占める異常な事態が起こっている。強気を鳴らす習近平氏が、こういう事態を認識しているのか疑わしい。 

    『毎日新聞』(7月15日付)は、「中国の地方財政は罰金頼み? 税収の3割占める街に不満『悪循環だ』」と題する記事を掲載した。 

    中国経済の低迷が続く中、中国各地で罰金の徴収が増えている。背景にあるのが地方政府の深刻な財政難だ。「罰金の街」として有名になった東北部・遼寧省盤錦市を歩いてみた。

     

    (1)「郊外の高速鉄道の駅から乗車したタクシーの男性運転手(42)に罰金の話題を振ると、苦笑しながら「実は先月も交通違反で罰金200元を払ったばかりだ」と教えてくれた。客を拾うためUターンした場所が運悪く禁止区域だったという。市内に張り巡らされた監視カメラで撮影された写真とともに違反通知が届いた。「反論しても良いことは何もないからすぐに支払った。ただこの不景気の中で、罰金で一日の稼ぎの大半を持って行かれるのは本当に痛い」とため息をついた」 

    タクシー運転手は、Uターン禁止区域へ入ったために罰金200元(約4400円)を科された。1日の稼ぎの大半である。 

    (2)「盤錦市は、2021年に29億7672万元(約655億円)もの罰金を徴収して全国的にも有名になった。市の税収の27.9%にも相当する規模で、市民1人あたり年間約5万円の罰金を支払っている計算となる。渤海の最北端に面するこの都市は、石油を産出する「油城」として1970年代以降、急速に発展したが、90年代半ばをピークに産出量は減少。資源枯渇型都市から脱却するため産業転換を進めている最中に新型コロナウイルス禍が直撃した。現在も税収はコロナ前の水準に回復していない」 

    盤錦市は、2021年税収の27.9%を市民への罰金で補っている。典型的な「警察監視都市」である。

     

    (3)「罰金収入の割合が高いのは盤錦市だけではない。中国メディアの報道では黒竜江省七台河市、内モンゴル自治区オルドス市、広西チワン族自治区梧州市などは、盤錦市を超える割合の罰金収入とも指摘される。罰金による増収は市民の反発を招くため、データを公表していない都市も多く、詳細を確認することは難しい状況だが、国家統計局の統計で地方財政全体の推移を確認すると、税収は伸び悩んでいる一方で、罰金収入は右肩上がりとなっている。罰金収入が地方都市の重要な財源となっていることは明らかだ」 

    地方財政の歳入は、伸び悩んでいる。だが、罰金収入は右肩上がりで重要な財源になっている。哀しい現実だ。タコが自分の足を食っているような現象である。 

    (4)「中国では3年間のゼロコロナ政策により防疫コストがかさみ、多くの地方政府の財政状況が悪化した。そこを不動産不況が直撃した。地方政府にとって財源の柱の一つだった土地使用権の売却収入が激減。景気低迷により税収全体も減っている。そのため地方政府が企業に対して数十年前の未納税を請求するといったケースも相次いでいる。中国政法大財税法研究センターの施正文主任は経済紙『第一財経』の取材に「近年は地方財政収支の矛盾が拡大し、一部の地域では『増収のための罰金』『利益追求のための罰金』となっている」と指摘する」 

    地方政府は、「増収のための罰金」や「利益追求のための罰金」という世も末のことを始めている。こういう不条理の積み重ねが、政権への信頼度を低めている。

     

    (5)「実際に中国国内のSNS(ネット交流サービス)では、「増収のための罰金」と思われるケースが話題になっている。「知人から買い取ったセロリを転売して14元(約300円)の利益を得た農家に対して地方政府が残留農薬を理由に10万元(約220万円)の罰金を言い渡した」「耳かき店を無認可で営業したとして22万元(約480万円)の罰金を命じた」といった事例だ。これに対しては、SNS上でも「罰金が高すぎる」「職権の乱用だ」などと当局の対応を批判する声が相次いだ」 

    下線部は、地方政府が常識を疑う振舞をしている。これは、間違えば「革命への導火線」になり得る事態だ。 

    (6)「中央政府も、罰金に対する市民の不満については懸念を深めているようだ。今年2月、国務院(政府)は「罰金の決定は国民の感情を十分に考慮し、法的原則に準拠している必要がある」などと通知。最高検も今月8日、「高額な罰金を科すことは法律の精神に合致せず、行政処罰は『過重罰』を避けなければならない」とする見解を示し、過度な罰金の徴収を控えるよう改めて指示した。しかし、これが抜本的な解決につながるか不透明な状況だ」 

    中央政府も、「罰金問題」へ頭を悩ませている。地方政府への財源移譲を増やすしか、問題は解決しないであろう。もう一つ、内需回復への政策転換である。

     

     

     

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    日本の犯罪件数が少ないことは、世界的に有名である。確かに、凶悪事件は減少しているが、特殊詐欺事件でもネット詐欺が増えている。こういう生活に身近な事件の発生を防がなければならないが、国際的な水準から見た日本は、「無風地帯」である。日本の治安・安全費用の対GDP比は、1.22%(2022年 OECD調べ)。フランスは、同1.72%である。外紙が、日本の安全ぶりを報道している理由であろう。 

    『COURRIER Japon』(7月12日付)は、「ほとんど犯罪のない国、ニッポンの『のどかさ』の秘密を仏紙が探る」と題する記事を掲載した。著名紙『フィガロ』の翻訳である。 

    日本本で1年間に押収された大麻の量は、フランスの320分の1、強盗の件数は37分の1、窃盗は13分の1。これが日仏の犯罪に関する主要統計の差だ。両国は多くのテーマに関して何かと比較したがるが、この興味深いテーマに関する研究は、あまりにも少ない。

     

    (1)「日本のマスコミが報じる軽犯罪の数々は、この国の“のどかさ”を物語っている。警察庁によれば、犯罪件数は2002年をピークに4分の1に減少した。こうした記録は、世界各国の内務大臣を羨望の念に駆り立てることだろう。たとえば、警察庁の最新の集計では、国内の殺人発生率はフランスの4分の1。人口10万人当たりの強盗の発生件数はフランスの44.3に対して日本は1.2。窃盗は、フランスが457.6、日本は35.2である」 

    日本の凶悪犯は、フランスと比べて極端に少ない。地理的条件の違いも大きいであろう。欧州は,国境が陸続きである。犯罪が、他国から持ち込まれるケースも多いはずだ。 

    (2)「犯罪学の第一人者である龍谷大学教授の浜井浩一は、こう話す。「日本は麻薬密売の抑制におおむね成功しています」。彼によると、人生で大麻を経験したことがある日本人は1%台であるのに対し、フランス人は32.1%、米国人は41.9%だ。2023年、フランスでは128トンの大麻が押収された。いっぽうの日本はと言うと、麻薬・覚醒剤乱用防止センターの数字を見ると、同年に押収された乾燥大麻は約800kg(過去最高)で、これは同等の人口に対して320倍も少ない計算になる」 

    2023年、フランスでは128トンの大麻が押収された。日本は約800kg(過去最高)である。これは、日本がヨーロッパと違い海で囲まれていることで、多くの「関所」があることで持ち込みを抑制している。

     

    (3)「それだけではない。公共平和の証拠はいたるところにある。大都市の女性たちも、夜遅くに帰宅することに些かの不安も抱かない。子供たちは幼い頃から一人で出歩いている。こうした平和の象徴は、国内に何十万台もある飲み物の自動販売機だろう。毎日現金を貯める自動販売機は、まるで野放しにされた金庫のよう」 

    野外の自動販売機は、日本がいかに犯罪と無縁の國であるかを示している。 

    (4)「この社会的な平和については、「被告人の権利をほとんど顧みない警察と、刑事司法制度にあるのでは」と考えたくなる。街中の警察は非常に存在感があり、自転車やピカピカのパトカーで常に通りをパトロールしている。この秩序だった世界の裏側にある「正義」の正体については、カルロス・ゴーンの事例を通してその一部が世界中に明かされた。弁護士の立ち合いなしでの取り調べ、1つの罪状につき最大23日間の公判前拘束、99%を超える有罪率(註:刑事事件で起訴された場合)、そして何よりも「死刑(絞首刑)」がある」 

    日本は、犯罪に対して厳罰主義で臨んでいる。被疑者の人権は,ゼロ同然であるという。

     

    (5)「しかし、「警察に対する恐怖」という説明は適当ではないだろう。一般市民と接するとき、警察は一般的に礼儀正しく、威圧的でもなければ、あまり干渉もしない。日本の司法制度で収監される人は少ないため、刑事施設の収容率も低い。フランスでは人口10万人あたり111人、米国では531人であるのに対し、日本では33人だ」 

    人口10万人あたり受刑者数は、日本が33人に対してフランス111人。米国531人だ。日本は圧倒的に少ない。 

    (6)「龍谷大学教授の浜井浩一は、この公共ののどかさは、日本社会独特のものだと見ている。「私は、この国を『家族人質社会』と呼んでいます。悪い行いをすれば、悪評が身近な人たちに降りかかるのです」。非行少年の親が、子供の勾留を避けさせようとするのではなく、むしろ勾留させて欲しい言うこともよくあることだ。死刑判決を受けた者の親が、恥じて自殺することも珍しくない。フランスでの留学経験を持つ広島大学教授で、刑事法学を研究する吉中信人は、近親者との同調傾向を指摘する。「フランスでは『我思う、ゆえに我あり』、日本では『彼思う、ゆえに我思う』です。フランスでは『ありがとう』と言う場面でも、日本では『ごめんなさい』と言うのです」 

    「我思う、ゆえに我あり」は、周知のようにデカルトの言葉だ。「すべての意識内容は疑いえても、意識そのもの、意識する自分の存在は疑うことができない」という、自己肯定である。日本は、「彼思う、ゆえに我思う」としている。他人の規範が自己を規制しているという意味であろう。自己肯定の真逆である。「ありがとう」は自らが発する言葉であり「ごめんなさい」は自己否定である。日本人の価値観は、欧米に比べてこれだけの差がある。これが、刑事事件発生率の差になっていると言うのだが。

     

     

     

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    中国の住宅価格は、6月も下落し続けている。政府は、小出しの対策を打っているが、全く需要増に結びつかない状況だ。6月の小売売上高は、前年同月比2%増と落込んでいる。市場予想の3.4%増をあざけわらうような状態だ。消費の中核である中産階級が、長引く不況で打撃を受けている影響である。 

    数字を見ているだけでは、消費不況の実態は分らない。近年、人口が急増した四川省成都市では、どのような状況であるか。成都の人口は、2023年末時点で2140万人。この20年で倍増し、首都・北京の2185万人とほぼ肩を並べている。その急成長する成都の現状のレポートである。 

    『毎日新聞』(7月15日付)は、「人影まばら、閉店目立つ商業施設 中国経済のけん引役 成都の“異変”」と題する記事を掲載した。 

    中国の景況感が依然としてさえない。背景にあるのが、これまで経済成長をけん引してきた個人消費の低迷だ。中国でも指折りの消費都市として知られる四川省成都市で実態を探った。市中心部にある繁華街「春熙路」には大型商業施設が集積し、火鍋など四川料理の店や露店などが立ち並ぶ。週末の夜に訪ねると歩道は若者や親子連れ、観光客などであふれていた。

     

    (1)「中国の人口が22年から減少に転じる中、周辺地域からの人口流入が今なお続き、中国を象徴する消費地とされる。しかし、成都といえど、国内消費の低迷と無縁ではいられない。春熙路に面する大型施設内では、あちらこちらで「異変」が生じていた。ショッピングモール「尚都広場」では、婦人服店が並ぶ13階に客はほとんどおらず、閉鎖した店舗も目立つ。10階を超えるビルの4階以上は照明が消され、エスカレーターも止められていた。春熙路にあった伊勢丹とイトーヨーカ堂の店舗はいずれも22年末に閉店し、現在は現地資本の商業施設となっているが、やはり人影はまばらだ」 

    人口増加中の成都市の有力モールが、超閑散状態に追込まれている。10階を超えるビルの4階以上は照明が消され、エスカレーターも止めるほどの消費不振だ。習近平氏の耳には入らない情報であろう。 

    (2)「春熙路以外の大型施設にも足を運んだ。市の南部に22年に開業したショッピングモール「成都SKP」は欧州の高級ブランド店が集積する中国屈指の高級モールと話題になったが、今は閑古鳥が鳴く。なぜか。市内の商業関係者は「飲食店はにぎわっても、モノが売れない。成都は他地域より消費が旺盛な地域なのに、節約志向が年々強まっている」と打ち明ける。「値下げセールで客数が一時的に増えても、イベントが終われば厳しくなる。消費が良くなる気配が見えない」と指摘する」 

    値下げセールで一時的に客数が増えても、イベントが終われば減る。かつての日本が喫した苦杯である。

     

    (3)「成都では23年末以降、新たに4カ所の大型商業施設がオープンした。過去の建設計画を止められない当局や民間の悪癖が過当競争に拍車をかけている状況だ。春熙路の商業関係者は「地元政府は大型施設の閉鎖を嫌う。無理をして営業している施設は多い」と吐き捨てるように言った。消費低迷の傷は確実に広がっている」 

    計画経済の弱点は、市場動向にお構えなく当初計画を推進することだ。過剰投資が分っていても止められないのだ。 

    (4)「中国の消費が低迷している元凶は、不動産不況の長期化にある。右肩上がりだった住宅価格が急落したことで、資産価格上昇に浮かれていた消費者心理が一気に冷え込んだ。中国当局は5月中旬、地方政府が売れ残った住宅在庫を買い取るなどの新たな不動産不況対策を発表した。成都市も4月末、住宅購入制限を撤廃し、不動産市場のテコ入れを図るが、目に見えた効果は上がっていないのが実情だ」 

    消費低迷の原因が、不動産不況にあることは自明である。だが、習氏は断固として救済する姿勢をみせずにいる。バブルを起こしたのは、不動産開発業者という認識を変えないのだ。だから、財政支援をしないというスタンスである。本音は、財政赤字の拡大で習氏の統治能力を問われることを恐れているのだろう。

     

    (5)「不動産仲介業者のサイトを見ると、成都市南部の新築マンション価格は1平方メートル当たり2万4000元(約48万円)前後。しかし、成都SKPに近いマンション展示場を訪れると、男性営業員が「以前より70万元値引きした部屋があります」と耳打ちした。展示場を出ると、別の不動産会社の女性営業員が近づいてきて「うちは1平方メートルあたり1万7000元。お得だよ」と勧誘してきた。展示場の来場者は少なくないが、マンションの「安売り」でつなぎとめているのが実態のようだ」 

    マンションは、投売りしても買い手がつかない状態だ。価格が、安定しないから「底値」を確認できない結果である。 

    (6)「平均可処分所得は23年4~6月期以降、前年同期比6%前後で増え続けている。成長率を上回る高い所得増を実現していることになる。ただ、中国人民銀行(中央銀行)が四半期ごとに行う預金者2万人を対象にしたアンケート調査の結果は正反対だ。23年4~6月期以降を見ると、収入が「増えた」との回答より「減った」との回答が多い。24年1~4月期の個人所得税の税収も、前年同期比7%減に沈む。国際金融筋は「可処分所得が増えているのは低所得者が中心。実際には消費の中心となる中間層以上の所得環境は厳しい状況だ」と分析する」 

    中国では、広範囲に賃下げが行われている。銀行マンは5割削減が普通である。他産業も同様だ。中間層以上が,長期不況の被害者である。

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    韓国では、会社勤めをしても安穏な日々は少ないという。「会社は戦場、外部は地獄」と言われるごとく、儒教独特の「長幼の序」が災いしている。会社で、後輩の部下になることは「末代までの恥辱」とばかり、転職する先もなく辞表を出す悪習がある。だから戦場なのだろう。それを我慢して迎える定年制は、60歳である。今年から第2次ベビーブーム世代が、定年を迎える。ようやく戦場を離れるのだが、労働力人口の低下によって、韓国経済の成長率は、年平均0.38ポイント低下するという。 

    日本政府は、すでに任意の「70歳定年性」を推奨している。企業は、気力・体力がある人には、勤務形態を変更してでも働ける環境を維持できるようという配慮だ。すでに、定年制をなくした企業まで現れた。日本人の勤労観には、「元気なうちは働きたい」という強い意欲があるからだ。この点、中国は定年制延長絶対反対である。韓国も、中国ほどでないが定年延長には消極的である。儒教文化圏の労働観は、日本と異なっている。

     

    『ハンギョレ新聞』(7月14日付)は、「韓国、今年から第2次ベビーブーム世代の引退始まる 『年成長率0・4ポイント』の衝撃波」と題する記事を掲載した。 

    韓国銀行によれば、「第2次ベビーブーム」世代が今年から引退時点に入り、韓国の経済成長率が年間0.4ポイント下落する可能性があるとの分析を発表した。韓銀は「継続雇用および定年延長について社会的議論が必要な時点」と提言した。 

    (1)「韓銀は7月1日に発表した報告書「第2次ベビーブーム世代の引退年齢進入にともなう経済的影響評価」で、第2次ベビーブーム世代(1964~1974年生まれ)に属する954万人(総人口に占める比重18.6%)が今年から順次法定引退年齢(60歳)に進入したことにより、これらの世代の引退が雇用率に及ぼす影響をシナリオ別に分析した。それによれば、60代男女の雇用率が2023年水準(男68.8%・女48.3%)を維持するシナリオでは、第2次ベビーブーム世代の引退にともなう就業者数の減少で経済成長率が今後11年間(2024~2034年)にわたり年平均0.38%下落すると推定した。 

    韓国の経済成長率が、就業者減少で今後11年間にわたり年平均0.38%下落するという。労働力不足は、ロボットで克服できるという見方もある。だが、ロボットは消費をしないから「人間様」には敵わないのだ。

     

    (2)「この分析は、ベビーブーム世代の引退が青年層の労働市場への新規参入や全要素生産性などに及ぼす影響は考慮されていない。引退年齢への進入が昨年完了した第1次ベビーブーム世代(55~63年生まれ・705万人、総人口に占める比重13.7%)の場合、労働人口減少により2015~2023年の年間経済成長率が0.33%下落したと韓銀は推定した」 

    1次ベビーブーム世代の退職では、年間経済成長率が0.33%下落したという。第2次ベビーブーム世代の退職の方が年平均0.38%の成長率下落の計算である。 

    (3)「報告書は、「今年からは第1次より規模が大きい第2次ベビーブーム世代が労働市場を離脱することにより、成長潜在力がさらに大幅に落ちるのではないかという憂慮がある」とし「第2次ベビーブーム世代の場合、第1次世代より良好な経済・社会・文化的特性があり、効果的な政策と制度変化が後押しすれば否定的影響はかなり縮小できると予想される」と診断した」 

    2次ベビーブーム世代は、第1次世代よりも良好な経済・社会・文化的特性があるという。理由は説明していないが多分、儒教的な影響度が薄まり協調性があるということだろう。朝鮮朱子学による「自己の絶対性」を振り回されたのでは、職場での協調性を維持できないからだ。

     

    (4)「韓銀は、第2次ベビーブーム世代の肯定的特徴として、相対的に高い所得・資産と労働意欲を挙げた。統計庁の経済活動人口調査によれば、55~79歳の内で継続勤労を希望する回答者の割合は2012年の59.2%から2023年は68.5%へと大幅に上昇した。韓銀は60歳以上の雇用率がここ10年間の上昇率を維持する場合、今後10年間の経済成長率の下落幅も当初の予想値(0.38%)より低い0.24%に縮小されると分析した。もし、日本の定年延長(60→65歳・2006年)後の60代男女雇用率上昇の傾向に沿う場合には、成長率下落幅は0.16%へとさらに減ると推定した」 

    2次ベビーブーム世代は、高い労働意欲を上げている。この点が、第1次世代と異なっているに違いない。 

    (5)「第2次ベビーブーム世代の引退が、内需基盤を強化する可能性もあるとの主張も提示された。第2次ベビーブーム世代の純資産規模は第1次ベビーブーム世代より相対的に大きく、平均消費性向(消費支出を可処分所得で割った割合)も高いという理由からだ。韓銀のイ・ジェホ調査総括チーム課長は「第2次ベビーブーム世代の良好な経済・社会・文化的特性に効果的な政策が加われば、彼らの引退が成長潜在力に及ぼす否定的影響はかなり縮小されるだろう」とし、「高齢層の雇用延長制度と資産流動化および年金制度改善など政策的支援について社会的議論が必要な時点だ」と主張した」 

    下線部の指摘は、その通りであろう。世代が若くなるほど、儒教の影響度が薄れてくるからだ。儒教は、生産性向上に「有害」な側面を持っていることを示唆して興味深い。

     

    テイカカズラ
       

    中国国家統計局は、4~6月期のGDP統計を発表した。前年同期比で5%を割り込み4.7%成長であった。今回は、記者会見を開かずにWebで一方的に発表することになったが、理由を説明しなかった。15日から「3中全会」が開催されるので、記者会見で中国経済の不振ぶりを質問されることを忌避したのだろう。都合の悪いことには、「口を閉ざす」ということだ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(7月15日付)は、「中国GDP4.7%増、46月実質 生産・輸出がけん引」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国国家統計局が15日発表した2024年4〜6月の国内総生産(GDP)は、物価の変動を調整した実質で前年同期比4.%増えた。13月の5.%増より伸びは縮小した。生産や輸出が全体をけん引した。46月の前年同期比増加率は、日本経済新聞社と日経QUICKニュースが調べた市場予測の平均(5.%)を下回った。季節要因をならした前期比の伸び率は0.%と、13月(1.%)から鈍化した。

     

    4~6月期は、前年同期比4.7%増で目標の「5%前後」を下回った。前期比では、0.7%増である。これは、年率換算で2.83%になる。西側諸国の発表するGDP成長率は、前期比の年率換算である。この成長率が3%を割ったことは、中国経済が不動産バブル崩壊後の需要喪失に直面していることを示している。

     

    (2)「国家統計局は同日、GDPの発表に際して定例となっている記者会見を開かなかった。統計データをホームページ上でのみ公表した。理由は説明していないが、中国共産党が15日から北京で開く党の重要会議である第20期中央委員会第3回全体会議(3中全会)が影響した可能性がある」

     

    現下の経済状況は、まさに「急減速」状態になっている。これにもかかわらず、3中全会では「中国式現代化の実践」などと悠長なことを言っていられるだろうか。足元の経済的な困難事態を放置して、将来展望を議論しても説得力はないのだ。景気停滞の主因は、不動産バブル崩壊の処理に有効な策を講じていないことだ。不安心理が充満している。

     

    『ブルームバーグ』(7月15日付)は、「中国の住宅価格、6月も下落 最近の不動産支援策は改善に寄与せず」と題する記事を掲載した。

     

    中国の住宅価格は6月も下落し、デベロッパーや経済に打撃を与えている不動産不況を食い止めることが政策担当者にとっての課題であることが浮き彫りになった。

     

    (3)「国家統計局が15日発表したデータによると、70都市の新築住宅価格(政府支援住宅を除く)は、6月に前月比0.67%下落。5月は0.71%下げ、2014年10月以来の大幅な落ち込みとなっていた。6月の中古住宅価格は前月比0.85%下落。前月は1%下落していた。こうした数字は、5月に発表された当局の救済策が不動産市場のセンチメント改善にほとんど寄与していないことを示す新たな証拠だ」

     

    中国指導部は、不動産バブル崩壊後の処理について地方政府と金融監督当局の責任に帰しており、財政支出の拡大による救済策を講じずに放置している。製造業へは手厚い補助金を出しながら、住宅問題は「見殺し」に等しい冷遇ぶりだ。

     

    (4)「15日開幕する中国共産党の重要会議、第20期中央委員会第3回総会(3中総会)で、より積極的な対策が打ち出されるとはほとんど予想されていない。デベロッパーや住宅所有者が住宅を売却するために大幅な値引きに頼る中、価格圧力は続く公算が大きい。ブルームバーグ・インテリジェンスのアナリスト、クリスティ・フン氏とモニカ・シー氏は最近のリポートで、「新築・中古住宅の過剰在庫が、さらなる価格下落への圧力となっている」と分析した」

     

    国民の不安心理を煽っているのは、不動産価格の低迷である。持ち家評価も日々落込んでいる中で、家計の紐は一段と厳しくなっているのだ。中国指導部は、こういう微妙な消費者の心理を読めずに、「中国式現代化」などとちぐはぐなことを言っている。

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