勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    中国は、習近平氏が国家主席3期目を実現させるために、緊急に解決に向かわなければならない問題を放置している。なぜか、あらゆる問題で波風を立たせないで「平穏」を演出するためだ。習氏は、何ごともなかったような状況下で、国家主席3期目に選出されることを願っている結果である。

     

    だが、時間は無慈悲である。解決が遅れれば遅れるほど、事態を悪化させるものだ。早い段階で問題の芽を摘まなければならないが、それを怠っているのだ。問題とは、ゼロコロナ対策、不動産バブル後遺症対策、IT企業への規制強化、出生率の急低下の4つである。これらは、中国経済の命取りになる問題ばかりである。

     


    『大紀元』(9月27日付)は、「米専門家、中国『四分五裂の兆し』 ゼロコロナ・不動産問題などで」と題する記事を掲載した。

     

    米専門家はこのほど、中共ウイルス(新型コロナ)の感染対策、不動産セクターの債務危機、IT企業への規制強化、人口構成について分析し、今後中国情勢が大きく混乱すると警告した。

     

    (1)「シンクタンク『外交問題評議会』のセバスチャン・マラビー上級研究員は9月24日、米紙『ワシントンポスト』に寄稿した。同氏は、5G(次世代移動通信網)や人工知能など、テクノロジー分野で米国を追い越そうとしている経済大国の中国は、「病んでいる巨人だ」とし、近年、中国の弱点がますます顕在化したとの認識を示した。マラビー氏は、中国の今年の国内総生産(GDP)成長率について、中国政府が設定した目標「5%前後」を下回り、3%の見通しだとした。年間成長率が約8%だった十数年前と比較して、今の状況は「屈辱的」で、「権威主義体制は限界に達している」と指摘した」

     

    世界銀行は9月26日、2022年の中国の実質成長率が2.%と予測した。4月の前回予測で示した5.%から大幅に下方修正した。原因は、ゼロコロナ政策で感染封じ込めを狙う厳しい移動制限が経済活動を妨げたこと。不動産市場の停滞も上げている。世銀の予測には、さらなる下方修正の余地がある。

     

    (2)「同氏は、中国の直面している最大の課題が、中共ウイルスの大流行だとした。中国政府が上海市や深セン市を含む全国各地で「経済に破滅的な影響を与える外出制限」は世界のサプライチェーンを混乱させ、数百万人に食糧不足などの苦難をもたらした。中国とミャンマーとの国境に位置する町、瑞麗市の住民は2021年3月~22年4月にかけて、累計で119日間も外出を禁止された。世界各国が社会経済活動を再開しウィズコロナを模索する中、極端な「ゼロコロナ」政策を続ける中国政府に、中国の人々は強く憤慨している。9月18日、南部貴州省で隔離施設へ向かっていた大型バスが横転し、27人が死亡した。地元政府は一部の役人を停職処分にしたが、依然としてネット上では反発の声が高い」

     

    ゼロコロナ政策の問題は、一過性ですむことでなく、人々に深い政治への不信感を植え付けたことである。共産主義政治への絶望感だ。これは、結婚忌避・出産忌避と結びついている。中国の合計特殊出生率は今後、一段の低下が予想される。韓国と世界のワースト1位を争うような事態が想定されるのだ。

     


    (3)「
    マラビー氏は、中国が解決しなければならない2つ目の課題は、不動産問題だと示した。中国政府の「歪んだ」政策が不動産市場の「不健全な成長」を促した。中国政府は銀行や地方政府に住宅の建設ブームに関わるよう命じたため、銀行の不良債権や地方政府の債務が急増しただけでなく、国内の不動産開発大手が債務不履行(デフォルト)に陥った。現在、住宅ローンの返済拒否運動が中国100以上の都市に広がり、住宅価格は12カ月連続で下落している。同氏は、不動産セクターが中国経済の4分の1を占めているため、「同セクターの崩壊はより広範囲の不況を招く恐れがある」と警告した。

     

    住宅ローンの返済拒否運動は、全土の300カ所以上で行なわれている。ローンを払っても住宅が手に入らないという、これほど不条理な話はない。これまでも、この手の話は多かったが、表面化しなかっただけで、不動産バブル崩壊はもっと早い時点から起こっていたのだ。人口動態から見ても、もはや新規住宅需要はとっくに峠を越えている。

     


    (4)「中国政府が、政治的な理由でIT企業を締め付けることは、「中国の技術力に暗雲を投げかけている」と同氏は指摘した」

     

    IT企業は、いずれも民間企業だ。この大株主に「反習近平派」が大量に存在していることに気付かれ急遽、規制対象にされてしまった。IT企業は雇用の受け皿でもあり、これに加えられた規制が、失業者を生んでいる。中国の経済成長率を支える有力な産業が、政治的な思惑で萎んでしまった。

     

    (5)「マラビー氏は、中国の人口問題が共産党政権の現在直面する4つ目の課題との考えを示した。中国政府が1979年に人口抑制政策、「一人っ子政策」を導入してから、性選択的中絶、ジェンダーの不均衡、出生率の低下などで人口構成が歪み、少子高齢化が速く進み、労働人口が急減した。政府が方針を転換し、2016年に「二人っ子政策」、2021年に「三人っ子政策」に移行したが、「出生率は回復していない」と同氏は強調した。同氏は24日、『ワシントンポスト』への寄稿に関して「中央集権的な経済モデルは終焉を迎えつつある」とツイートした」

     

    習氏は、「一人っ子政策」を止めるタイミングを見誤った。一人っ子政策を推進した当事者への思惑や、一人っ子政策を管理する人たちの処遇に手間取っている間に、肝心の「幹」を枯らすという本末転倒の事態を招いた。出生率急低下は、中国が世界の覇権を握れない一つの要因である。

     


    ムシトリナデシコ
       

    日本は、10月11日から海外旅行でノービザ・個人旅行を解禁する。この措置で、最も期待しているのは韓国航空業界だ。特に、LCC(格安航空券)は、国土の狭い韓国では国際線が主力事業。コロナ前は、観光需要の多い日本便や中国便が稼ぎ頭だった。LCC大手の済州航空は、2019年の売上高のうち日本便が2割、中国便が2割を占めていた。それだけに、日本への旅行再開に業績回復の手がかりを得たいところだろう。

     

    韓国『聯合ニュース』(9月27日付)は、「韓国航空各社が日本路線を大幅増便 水際対策緩和で」と題する記事を掲載した。

     

    日本政府が来月11日から新型コロナウイルスの水際対策を緩和し、1日最大5万人とする入国者数の上限を撤廃するほかビザ(査証)なしでの短期滞在を認めることを受け、韓国の航空各社が日本路線の運航を大幅に増やす。

     


    (1)「最大手の大韓航空は27日、来月11日から仁川(ソウル)と成田(東京)、大阪を結ぶ路線をそれぞれ週7往復から週14往復に増便すると伝えた。仁川―福岡線は来月14日から週3往復の運航を再開し、来月30日からは毎日運航する。仁川―札幌線は来月30日から運航を再開する。仁川―名古屋線は11月から1往復増便して週5往復とし、12月からは毎日運航する。釜山―成田線は来月13日から週4往復増やして7往復とする」

     

    『聯合ニュース』(9月27日付)では、韓国で日本行き航空券の予約が大きく伸びていると報じている。予約サイトの「インターパーク」は27日、同発表(21日)直後の23~25日のデータを前週の同期間と比較したところ、日本行き航空券の予約件数は268%、日本旅行商品の予約件数は204%、それぞれ増加したと伝えた。インターパークが運営する旅行プラットフォームのトリプルでも、同期間に航空券の予約件数と取引額がそれぞれ1200%以上激増した。

     

    これだけの、日本旅行客の予約が急増している以上、航空会社は安心して増便できる。日本からの韓国旅行客も増えるであろう。

     

    (2)「大手のアシアナ航空は来月30日から、仁川―成田線を週10往復から12往復に、仁川―大阪線を週7往復から10往復に、仁川―福岡線を週3往復から7往復に、仁川―名古屋線を週2往復から3往復にそれぞれ増便する。都心部へのアクセスに優れた金浦(ソウル)―羽田(東京)線も増便を計画している。アシアナ航空は、新型コロナ流行前の2019年夏季には日本路線を週143往復運航していた。だが、現在はコロナと両国間のビザ免除停止による需要急減で週29往復の運航にとどまっている。来月の増便を皮切りに、年内に日本路線の運航をコロナ前の4割水準に回復させる計画だ」

     

    アシアナ航空は、2019年夏季に日本路線を週143往復運航。それが現在、週29便と5分の1へ激減している。年内にはこれが4割まで回復させる計画という。韓国の観光客が増えれば、日本もそれに応じて観光地やゴルフ場は活気を取り戻せよう。

     


    (3)「格安航空会社(LCC)のチェジュ航空も来月1日から、仁川と成田、大阪、福岡を結ぶ路線をそれぞれ1日2往復に増便する。来月30日からは、2020年3月に停止した金浦―大阪線と仁川―札幌線をそれぞれ週7往復運航する。また、LCCのエアプサンは来月11日から釜山と福岡、大阪を結ぶ路線をそれぞれ毎日運航し、17日からは毎日2往復に増便する。仁川―大阪線も来月20日から毎日運航する」

     

    世界的に貨物運賃の上昇が続いているので、LCCは自らのコスト競争力を武器に需要取り込みに躍起である。LCC各社は、韓国政府の雇用維持支援金が9月末で期限を迎える。政府は20年3月に航空や旅行など14業種を対象に、従業員の休職時に国が休業手当の半額を負担する制度を導入した。その期限が9月末なのだ。タイミング良く、日本の海外旅行客の受入れが10月11日からである。危うくセーフという感じだ。

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    米FRB(連邦準備制度理事会)は、9月21日3会合連続で「0.75%」の利上げに踏み切った。これに伴うドル高が、米国以外の国々での経済見通しを悪化させている。欧州はロシアとの経済戦争の最前線に立たされている。中国は、何十年も続いた不動産ブームの崩壊を受けて、近年で最大級の景気減速に直面している。

     

    米国にとってドル高は、輸入品価格を低下させ、インフレ抑制の取り組みへの追い風になる。しかし米国以外の世界各国は、ドル高の悪影響に苦しんでいるのが事実だ。

     


    『ロイター』(9月26日付)は、「ドルしか勝たない『逆通貨戦争』の結末、介入効果弱く」と題する記事を掲載した。

     

    米国以外の各国が相次いで利上げや自国通貨を買い支える為替介入に乗り出しているにもかかわらず、ドルの高騰は止まらずに新たな高値をつけている。これは、各国にとってこの「逆通貨戦争」には絶望的な未来が待っていることを物語っている。つまり超タカ派的な米連邦準備理事会(FRB)に勝負を挑んだとしても、最終的な唯一の勝者はドルになる。

     

    (1)「今年の9月第3週は早くも歴史的な節目になろうとしている。FRBが3会合連続の75ベーシスポイント:bp(0.75%)幅の利上げに動くとともに、さらなる引き締めを約束し、世界中の市場が足元から崩れる中で、ドルだけが上昇する構図となったからだ。残念ながら米国以外の世界にとって、ドル高は各自の経済と金融市場に大打撃を与える要素であり、そうした惨状が待っている以上、投資家はこれらの国・地域の通貨を一層敬遠してドルに向かうという悪循環が強まる。

     

    米国の積極的な利上げ方針に呼応して、世界の資金が米国へ吸い寄せられている。どうにも、手の打ちようがない状況だ。強すぎる米ドルにも「困り者」だ。

     


    (2)「例えば、スウェーデンを見てみよう。同国の中央銀行は1993年以降で最も大幅な100bp(1%)利上げに踏み切って市場を驚かせた。だがスウェーデンクローナは対ドルで1週間に4%余り下落し、過去最安値を更新した。欧州中央銀行(ECB)も75bp(0.75%)の利上げを実施し、追加利上げを約束したのにユーロ/ドルの下げ歩調を止められず、23日には0.97ドルと20年ぶりの安値を記録した」

     

    スウェーデンは、1%もの利上げをした。だが、スウェーデンクローナは対ドルで1週間に4%余り下落し、過去最安値を更新した。利上げの効果はゼロどころか、国内経済にはマイナス要因を強めることになった。ドルは、磁石みたいな力を持ち始めている。

     


    (3)「『通貨戦争』という言葉は2010年に当時ブラジル財務相だったグイド・マンテガ氏が名付けの親。世界金融危機後、先進国間で成長てこ入れとデフレ防止のために相次いで通貨安政策が採用された局面を指す。ところが今は、新型コロナウイルスのパンデミックが和らぐとともに世界中にインフレの波が押し寄せ、事態は完全に逆転。主要中銀は競うように利上げに走り、何とか自国通貨の価値を高めることでインフレを抑え込もうとしている。ただこの「逆通貨戦争」は、FRBとドルに立ち向かっても勝ち目が非常に乏しい」

     

    これまでの通貨戦争とは、利下げによる為替相場の切下げを目的にした。現在は、金利引上げによる為替相場切り上げという「逆通貨戦争」に追込まれている。この逆通貨戦争でも、世界の絶対王者ドルに対しては勝ち目がないのだ。

     

    (4)「ドル高の打撃は世界各国が感じているが、恐らく最も痛感しているのは日本と英国だろう。円は対ドルで24年ぶりの安値となり、日本政府と日銀は1998年以降で初めて円買い介入を実行。ポンド/ドルも37年ぶり安値まで売り込まれ、英国債が歴史的急落に見舞われたため、イングランド銀行(BOE)もこれまでで最も厳しい局面の1つに置かれた。日英がいかに脆弱な立場にあるかは事実が示している」

     

    日本円と英国ポンドが、対ドル「戦争」では辛い立場に立たされている。いずれも、勝ち目がないからだ。

     


    (5)「日本政府・日銀はドル/円が150円へと向かう流れをようやく食い止めたとはいえ、市場関係者は介入効果が長続きするかどうか疑問視している。日本政府の外貨準備は1兆3000億ドル相当あり、その大半がドル建て資産。しかしそれだけの規模でも限りがあることは間違いないので、円買い介入能力はいつまでも続くわけではない。また円買い介入は、日銀が長短金利をほぼゼロにする政策運営を継続し、FRBが一段の利上げに動く限り、成功しにくいだろう」

     

    日本も1ドル146円台で介入して、円売りエネルギーの蓄積と止めた。だが、この介入効果はいつまで持つかだ。日米金利差は広がるばかりだけに、これがアキレス腱である。だが、介入姿勢を見せてけん制するのも一つの手法。最終的には、米国との話合いが必要な局面も近いだろう。

     

    (6)「ポンド安が進んだ現状で、BOEへ何らかの対応を求める声が強まっている。ポンド/ドルは23日に3.5%も下がった。1日の下落率としてこれより大きかったケースは、50年前に変動相場制が始まってからわずか6回しかない。ドイツ銀行のジョージ・サラベロス氏は23日、「今の事態に必要な政策対応は誰の目にも明らかだ。すなわち早ければ次週にも大幅な緊急利上げを行って市場の信認を取り戻すことに尽きる」と記した」

     

    ポンド急落は、新政権の減税政策への失望も表われている。為替相場対策で利上げに踏み切れば、減税効果を相殺しかねず難しい選択である。

     

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    にわか成金になった中国は、およそ金融常識とかけ離れた融資で、世界中に「一帯一路」プロジェクトを進めた。その結果、6000億ドルもの焦げ付け債権を発生させている。

     

    たった10年で、エクアドルやアンゴラなど約150カ国の開発プロジェクトに融資などを通じて約1兆ドル(約145兆円)を拠出。これにより、中国は初めて、世界最大の債権国に浮上した。だが、その6割が返済困難に陥っている。笑うに笑えない話だ。愚かというか、無鉄砲というか。不動産バブルの生んだ余波であろう。

     


    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(9月27日付)は、「中国に一帯一路『2.0構想』 問題噴出で方向転換」と題する記事を掲載した。

     

    中国が巨大経済圏構想「一帯一路」の見直しに着手した。影響力の拡大を狙い、アジアやアフリカ、中南米諸国に多額の資金を投じてきたが、ここにきて債務国の返済が行き詰まっており、軌道修正を余儀なくされている。政策運営に関与している複数の関係者が明らかにした。中国の銀行はすでに、低所得国の新規案件に対する融資を大きく減らし、既存融資の対応に注力している。

     

    (1)「中国の対外融資のうち、借り手が返済困難な状況にあるとされる割合は60%に迫っており、2010年の5%から急上昇している。対外債務について数多く執筆しているセバスチャン・ホーン、カーメン・ラインハート、クリストフ・トレベシュ各氏が分析した。途上国の債務問題解決のため、中国は先進国で構成する「パリクラブ(主要債権国会議)」といった多国間制度についても、長年の拒否姿勢を撤回する方向にかじを切った。足元では途上国の債務負担軽減に向けて20カ国・地域(G20)と協力している。中国は長年、債務元本の減免ではなく、返済期限を延長することで融資の焦げ付きに対応してきた」

     


    中国は、「一帯一路」融資で焦げ付け債権多発し立ち往生している。これまで、G20と協力せずにこの問題に対処してきたが、余りの数の多さに音を上げ他国と返済問題を協議するようになった。

     

    (2)「習氏は2012年に実権を握ると、中国の影響力を拡大するとともに、国産品を販売する市場を構築するため、自身の看板政策として一帯一路を推進し始めた。15年に中国株急落で内需が低迷すると、中国は一帯一路を使って、鉄鋼や繊維など国内で過剰供給にあった製品の輸出拡大にまい進。中国輸出入銀行や国家開発銀行(CDB)は往々にして、中国サプライヤーからの調達を途上国向け融資の条件としていた」

     

    一帯一路は、習氏の「専売特許」である。国内の過剰生産問題解決に利用したので、「融資・工事」すべて中国が担当した。当初の「一帯一路」構想では、他国へも恩恵が及ぶことになっていた。それが、反古になったのだ。

     


    (3)「中国外務省によると、中国はたった10年で、エクアドルやアンゴラなど約150カ国の開発プロジェクトに融資などを通じて約1兆ドル(約145兆円)を拠出。これにより、中国は初めて、世界最大の債権国に浮上した。ウィリアム・アンド・メアリー大学傘下の研究所エイドデータが分析した

     

    このパラグラフは、中国の無計画性を如実に表している。たった10年で、エクアドルやアンゴラなど約150カ国の開発プロジェクトへ約1兆ドル(約145兆円)を融資した。今この6割が焦げ付いている。中国は青ざめているのだ。

     

    (4)「エイドデータの責任者、ブラッド・パークス氏は、対外融資のほぼすべてを支援として実施する米国とは対照的に、中国は「銀行」のように振る舞う傾向があると指摘する。例えば、エイドデータの分析によると、中低所得国に対する支援1ドルにつき、中国は9ドルを融資として提供している。米国はそのまさに反対で、少なくとも支援9ドルに対して融資1ドルの割合だという。17年頃までには、中国銀行業界の幹部の間で、回収の見込みがない案件への融資を強要されているとして政府への不満が高まっていた。内情を知る業界幹部らが明らかにした」

     

    下線部は、中国が融資先国を「食い物」にした証拠だ。相手国をわずかな支援金で釣り、「支援1ドル:融資9ドル」を押し付けた。米国は真反対で「支援9ドル:融資1ドル」である。

     


    (5)「問題の多い一帯一路だが、過去10年に多数の国々を中国の勢力圏に引き入れたことも事実だ。国連の採決では、借り手の多くが中国の意向に合わせて票を投じるようになった。中国が融資への消極姿勢を強めれば、一部の国にとっては中国マネーの魅力が薄れ、国際社会の意志決定において中国の影響力が後退することもあり得る。ただ、代替策も練っているという。融資ではなく、助成金などの支援を拡大するといった措置が挙げられる。内情に詳しい関係筋によると、中国当局者はリスク軽減に向けた官民パートナーシップの構築、市場水準を下回る優遇金利での融資といった手段を通じて、一帯一路を持続可能な軌道に乗せる方策も探っている」

     

    中国は、一帯一路によって低開発国を味方につけてきたが、焦げ付け債権化でこの状況は一変する。返済方針を巡って対立しかねないのだ。一帯一路は完全に破綻したが、これに代わる負担の少ない方法として「助成金」などを模索している。中国は、貸付残高1兆ドルの6割が回収困難では、人民元相場に影響して当然だろう。

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    米中デカップリンが注目され始めた現在、アップルは生産のほとんどを中国に委託している。万一、米中の軍事対立が起これば、アップルの中国生産はストップしかねないリスクを抱える。そこでアップルは2年前、インドでの生産計画を明らかにしたが、ようやくその第一歩が始まる模様だ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(9月26日付)は、「APPLE 最新iPhone14をインド生産 中国依存を修正か」と題する記事を掲載した。

     

    米アップルは26日、新型スマートフォン「iPhone14」をインドで生産すると明らかにした。アップルは主に中国でiPhoneを製造してきたが、米中の経済対立や中国のロックダウン(都市封鎖)政策を背景に、中国への依存を減らす狙いがあるとみられている。

     


    (1)「アップルは同日の声明で、「私たちはインドでのiPhone14製造をうれしく思う」と述べた。インドではすでにiPhoneのほかのモデルを製造しているが、iPhone14は9月に世界各国で発売されたばかりの最新型だ。米ブルームバーグ通信は8月、アップルが新機種の生産について、中国とインドでの時期の差を従来の69カ月から短縮しようとしていると報じていた」

     

    iPhone14は、9月に発売されたばかりの最新型である。それが、インドで生産できることを証明した形だ。部品製造から組立てまで、インドで一貫生産できる体制が整ったとすれば、中国には脅威となろう。

     

    (2)「ロイター通信はJPモルガンのアナリストの分析として、アップルがインドでの生産を拡大して2025年にはiPhoneの25%が同国製になる可能性があると報じている。現時点でインドのスマートフォン市場では安価な中国メーカー製や韓国メーカー製が大半を占めるが、所得向上を背景にiPhone需要も拡大が期待されている」

     

    アップルは、2025年にはiPhoneの25%がインドで生産可能になるという。ようやく、念願であった「脱中国」への夢が部分的に叶う。生産のすべてを中国一国に委託するのは、全く危険である。一方で、アップルが中国製半導体を購入したことで、米議会の反発を買っている。

     


    『日本経済新聞 電子版』(9月23日付)は、「
    米議員、リスク分析要請 iPhoneの中国製メモリー採用で」と題する記事を掲載した。

     

    米上院情報特別委員会のメンバーは9月22日、中国半導体メーカーの長江存儲科技(YMTC)と米アップルとの潜在的な取引が国家安全保障にもたらす脅威を分析するよう米情報機関トップに要請したと明らかにした。議員らは取引が実現すれば「中国企業に大きな利益をもたらし、米国企業を世界的に弱体化させる」との懸念を示している。

     

    (3)「上院情報特別委員会のワーナー委員長(民主党)とルビオ副委員長(共和党)が22日、米国政府の情報機関を統括するヘインズ国家情報長官に宛てた連名の書簡を公開した。YMTCに関する包括的な公開報告書を作成するよう求めている。韓国メディアなどは9月上旬、アップルがスマートフォンの最新機種「iPhone14」シリーズで使うNAND型フラッシュメモリーの調達先候補にYMTCを加えたと報じていた。アップルはこれまで韓国のサムスン電子やSKハイニックス、キオクシア、米マイクロン・テクノロジーなどからNANDを調達しており、中国勢が加わるのは初めてだ」

     

    米国は、半導体の国内生産比率を高めるべく補助金を支給する。こういう状況下で、アップルが、中国の半導体を購入することで、米国製半導体シェアを食われれば、米国労働者にしわ寄せが行くと懸念しているもの。

     


    (4)「ワーナー上院議員らはヘインズ氏に宛てた書簡のなかで、「アップルのような世界的な大手メーカーとの大型契約に支えられたYMTCの成功は、半導体メモリー生産を支える2万4000人分の米国人の雇用を脅かすことになる」と指摘。「世界の半導体市場を支配するという中国政府の目標を前進させる」とも述べた。英紙『フィナンシャル・タイムズ』(FT)の取材に対し、アップルは中国国内で販売する一部のiPhoneに使うNANDについて、YMTCからの調達を検討していると認めた。中国国外で販売するiPhoneにYMTC製品を使うことは考えていないと回答している」

     

    アップルは、中国国内で販売されるiPhoneに使う半導体だけ、中国製半導体を使うと説明している。海外で販売されるiPhoneについては使用しないのだ。米中デカップリングの認識が高まるとともに、部品についも関心が向くようになってきた。


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