韓国政府がホルムズ海峡に海上哨戒機や軍需支援艦の軍事資産を派遣することを具体的に検討している。米国は、韓国を守っているのに、なぜ韓国はイラン作戦を支援しないのか。これが、米国の韓国への要請根拠である。朝鮮戦争時には、米軍が血を流しているだけに、米国の要請には、それなりの根拠がある。米軍が、朝鮮戦争で血を流した歴史的事実を「現在の請求権」として再提示している構造である。
『中央日報』(9月5日付)は、「ホルムズ海峡への参加、国益と同盟を守る選択になるべき」と題する社説を掲載した。
韓国青瓦台(チョンワデ、大統領府)の関係者は4日、ホルムズ海峡の自由な航行を確保するための国際社会の取り組みに関連し「韓国は実質的な貢献をするという立場を一貫して表明してきた。実質的な貢献には軍事的な貢献も含まれる」とし、「軍事的な貢献には戦闘への参加もあれば、非戦闘のものもあり、さまざまな選択肢がある」と述べた。
(1)「政府の選択肢としては、軍需支援艦「昭陽(ソヤン)」や最新鋭のP-8A海上哨戒機など非戦闘用資産を派遣する案などにも言及されていて、早ければ今月中に国会に派兵同意案を提出することも検討されているという。軍戦力を紛争地域に派遣する場合、2004年に盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権がイラクにザイトゥーン部隊を派遣して以来22年ぶりの海外派兵となる。外交的な波紋を懸念して慎重論を展開してきた政府の決定は遅かったが、正しい方向だ」
朝鮮戦争で、米軍は大量の犠牲を払った結果、韓国は国家存続を得ることができた。こういう因果関係から、米国は「血の同盟」を強調する。韓国は、海外派兵を拒みきれない大きな理由を抱えている。
(2)「派兵を積極的に検討するに至るまで、政府にも少なからぬ苦悩があったはずだ。しかしイラン戦争における韓国の「可視的な寄与」を望む米国との同盟関係を考慮すると、やむを得ない側面がある。トランプ米大統領は今年3月、韓国など主要同盟国を名指ししながらホルムズ海峡に軍艦を派遣するよう求めた。その後、韓国の対応を公然と問題視し「米国は韓国を守っているのに、韓国はなぜイランに対する軍事作戦を支援しないのか」という趣旨の露骨な不満を数回表明した。しかもホルムズ問題は韓米同盟をめぐる他の懸案とも絡んでいる。
韓国は、朝鮮戦争の一件を持ち出されると極めて弱い立場になる。米兵の多大な犠牲によって防衛できたからだ。
(3)「米国の政界やメディアでは、韓国が韓半島(朝鮮半島)安全保障では米国の支援を受けながらも、域外国の安全保障については十分に責任を分担していないとの批判が強まっている。米国の圧力は対米投資の履行や関税・通商分野に拡大していて、韓米合同軍事演習の縮小や戦時作戦統制権の転換など主な安全保障上の懸案にまで影響を及ぼしている。米国が経済・通商と安全保障を一つの枠組みで捉える「取引型同盟観」を強める状況の中、ホルムズ問題は中東の懸案を超え、韓米同盟の持続可能性を測る重大な試金石となった」
韓国は、インド太平洋戦略では一貫して「逃げの姿勢」である。それだけに、今回のような事態になると米国の要求は一段と厳しくなる。日頃の不満が現れるのであろう。
(4)「ホルムズ海峡は、米国だけのための航路ではない。世界のエネルギー輸送における重要な要衝であり、韓国もこの海峡を通じて原油やガスを輸入する主要な利害当事者だ。戦争の長期化により航行が脅かされ、自国船舶の安全までが問題となっている状況では、海峡の安全確保に参加してほしいという米国の要求を拒否する理由が弱いのも事実だ。ホルムズ海峡への派兵には自国のエネルギー安全保障と国民生活・経済を守るという側面もある」
ホルムズ海峡問題は、韓国経済にもエネルギー問題で深く関わっている。韓国の大義名分はできる。
(5)「とはいえ、米国の要求に盲目的に従うことが最善の方策ではない。自国の法的・軍事的な制約を説明しながらも、実質的な貢献策を模索してきた日本の事例を参考にする必要がある。「盲従か拒否か」という二分法から脱却し、韓国特有の事情を堂々と説明する一方、貢献できる分野を積極的に提案する能動的な外交が求められる。長年にわたり外交関係を維持してきたイランとの関係も慎重に管理しなければならない。今回の措置が軍事的な敵対行為ではなく、国際海上交通の安全確保と自国船舶の保護のためであることを透明性をもって説明し、理解を得る必要がある」
日本は、米国とインド太平洋戦略のほか、密接な関係を構築している。海外派兵は、憲法九条問題と絡むので困難である。
(6)「何よりホルムズ海峡派兵問題がイラク派兵当時のように国論の分裂や陣営間の対立に発展することがあってはならない。与野党はこの問題を党利党略を超えて国益の観点から扱うべきだ。大きく変わろうとする国際秩序の中で、韓国が国益と原則に基づいて責任を果たせば、ホルムズ海峡の安全確保に貢献するだけでなく、韓米同盟を相互責任と信頼に基づく強固な同盟に立て直す契機にもなるだろう」
韓国の弱点は未だに、朝鮮戦争時の米軍の支援に対する正しい評価がないことだ。左派は、潜在的に米軍支援がなかったならば、南北統一(韓国敗北)が実現できたという見解もあるほどだ。こういう極端な意見を持ち続けている一定の層が存在する以上、米国が折に触れ「踏み絵」を迫るのだろう。韓国側にも弱点はあるのだ。





