勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    半導体は、「21世紀の石油」という呼び名の通り、産業と地政学を左右する存在である。人工知能(AI)の急速な発展で、半導体の重要性は一段と高まっている。この新たな展開のもと、トランプ米大統領は中国に対抗すべく動き出している。この米国は、日本という「同伴者」なしには世界覇権を維持できない事態になっている。

     

    『日本経済新聞 電子版』(11月16日付)は、「半導体・AI戦争、対中攻防は日米で連携を 経済史家クリス・ミラー氏」と題する記事を掲載した。クリス・ミラー氏は、タフツ大教授。2022年の著書『半導体戦争』が世界中で話題となり、多くの企業にも助言を求められている。日経コメンテーター 西村博之氏がミラー氏へインタビューした記事である。


    ここ数年で顕著になったAIの発展は、半導体の進化が最大のけん引役だ。だからこそ世界のテック大手も最先端の半導体を満載したデータセンターに巨費を投じている。これが経済の生産性を大きく向上させ、情報収集や軍事面の能力も高める。結果として半導体とAIの主要企業とインフラを握る国が、強い政治力をもつことになる。

     

    (1)「(質問)米政府は経済への関与を積極化している。補助金を使って市場シェアを広げる中国に対抗するには、競争条件を一致させる必要があるとの判断だ。(答え)バイデン政権時から、半導体生産の国内移転を促しつつ、中国への技術流出を防ぐ米国の方針は一貫している。トランプ政権が異なるのはその手段で、関税を使おうとしているほか、企業トップと取引する姿勢も強めている」

     

    米国は、中国の補助金による産業育成へ対抗して、同じ競争条件維持で産業育成政策に取り組んでいる。

     

    (2)「(質問)中国の生産能力の現状と行方をどう見ますか。(答え)中国の中芯国際集成電路製造(SMIC)は今、回路線幅7ナノ(ナノは10億分の1)メートルの半導体を少量生産する。TSMCが2018〜19年に製造を開始し20年には大量生産していた製品だ。つまりSMICはTSMCより5〜6年は遅れている。過去15年間、変わらないギャップだ。直近は米制裁で東京エレクトロンやオランダのASML製の最先端の製造装置が入手できず、差がさらに広がった可能性もある。米政権内には、中国が早々に追いつくとみる人々もいるが、私は中国がなお苦戦していると思う。SMICの最大顧客である中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)が、AI向けに制裁を迂回して密輸入したTSMCの半導体を使っているのは象徴的だ」

     

    中国は台湾のTSMCから5~6年は遅れている。ファーウェイが、TSMCの半導体を密輸して使っているほどだ。技術の差は,歴然としている。

     

    (3)「(質問)旧世代の「レガシー半導体」分野で、中国が存在感を高めています。(答え)中国は、補助金で旧世代半導体を大量生産して日米などの企業の投資意欲をそぎ、各国の産業基盤を中国製半導体に依存させようとしている。これは極めて危険な動きだ。例えば自動車に使われる千もの半導体の98%はレガシー半導体で、いずれ大半が中国製になる。これに頼れば、中国が望むままに生産は止まる。レアアース(希土類)をめぐる摩擦の、より激しい形態だ」

     

    中国は、旧世代半導体の支配権を狙っている。現在は、世界の30%程度のシェアを握っている。

     

    (4)「(質問)日本は半導体産業の再生に向けラピダスを設立、TSMCを誘致し、約10兆円の資金を投じます。(答え)各国が半導体分野に巨額の資金を投じるなか、日本が主要な地位を保つには必要な対応だ。折しも半導体産業は大きな変革期にある。AIの進化で求められる半導体のタイプは様変わりした。同時にAIの活用で半導体の生産工程も激変し、より効率的な設計・生産が可能になった。日本は汎用の半導体でなく、これら特定分野向けの半導体に注力するべきだろう。日本は、最先端半導体とAIの大胆な活用で主要産業の競争力を保とうと自己改革に挑んでいる。AIなしのビジネスはもはや成功しない。生き残りには研究開発や製造・設計工程にAIを組み込むしかない」

     

    ラピダスは、PCへアクセラレーターを接続するAI半導体を目指して試作中だ。27年から量産化へとり掛る。業種ごとのAI半導体製造を目指すもので、日本の精密機械が一段と付加価値を高める。

     

    (5)「(質問)日米は、どう連携すべきだと考えますか。(答え)現在、中国はソフト分野で米国に次ぐ世界第2位、精密製造分野でも日本に次ぐ第2位だ。AIの活用で中国のロボット技術が発展すれば、ソフトとハードを融合させたエコシステムが進化し日米双方をしのぐと懸念している。われわれが中国と渡り合う唯一の方法は、日本のロボット技術や精密製造の能力を米国のソフトウエア技術と統合することだ。両国企業の連携でシリコンバレーのデジタル分野の力と日本企業が物理面でできることを掛け合わせ、次世代のサプライチェーン(供給網)を構築するのだ」

     

    西側諸国が中国へ勝利するには、米国のソフト力と日本の精密機械製造能力の結合が必要である。日米製造業の「戦略的統合」こそが、世界の民主主義体制を守る上で不可欠だ。次の記事もご参考に。

     

     

    2025-11-13メルマガ721号 日本、対米5500億ドル投資 年内に満杯 日米製造業「戦略的統合時



     

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    韓国政府は、米国が原潜保有を承認したことが、どういう意味であるかを全く理解していないようである。黄海と日本海の警備だけが任務と解釈しているからだ。米国が、核拡散防止条約という壁を乗り越えて韓国へ原潜保有を認めるのは、米国の世界戦略の一端を担うという意味である。韓国は、驚くほど国際情勢への認識を欠いている。

     

    『ハンギョレ新聞』(11月18日付)は、「韓国に対中・対ロ前哨基地の役割を求める在韓米軍司令官」と題する社説を掲載した。

     

    ザビエル・ブランソン在韓米軍司令官が17日、中国とロシアの脅威への対抗における朝鮮半島の地政学的重要性を強調し、(韓国に)事実上米国の覇権維持のための「前哨基地」になることを求めた。さらに韓米日の三角軍事協力を越えて韓国・日本・フィリピンが手を携えた時の利点も強調した。

    (1)「米国から見ると朝鮮半島は、中国の下に位置した「軍事基地」のように見えるかもしれないが、ここは5千万人を越える同盟国市民の大切な生活の場だ。ブランソン司令官は「軍事的効率性」だけを掲げて同盟国に無理な役割を押し付けようとする言動をやめ、韓米の政治指導者たちが下す決定を後押しする本来の役割に忠実であることを望む」

     

    ブランソン在韓米軍司令官は、国連軍司令官であるはずだ。韓国が、自主性を強調するならば、国連軍の手を借りずに韓国軍だけで防衛すべきである。集団安全保障の中で現在、韓国の安全が維持されているという「恩恵」を考えるべきだ。

     

    (2)「ブランソン司令官はこの日、在韓米軍のホームページに掲載した文章で、東アジアの地図を(従来の北が上になっている図の方向を)東を上にしてみると、朝鮮半島と関連した「全く異なる戦略的地形があらわれる」とし、「在韓米軍は遠距離で増員を必要とする待機戦力ではなく、米軍が危機状況や有事の際に突破しなければならない防衛線の内側にすでに配置された戦力であることが明らかになる」と主張した」

     

    韓国が、集団安全保障の一員という位置づけになれば、ブランソン司令官の発言は当然である。

     

    (3)「ソウルと平壌(ピョンヤン)、北京、ウラジオストクまでの距離を列挙し、「韓国はロシアの北方からの脅威に対応すると同時に、韓中間の海域(西海)で中国の活動に対応しようとする西欧に接近性を提供する」、「北京の視点から見ると、烏山(オサン)空軍基地に配置された米軍戦力は遠距離戦略ではなく、中国周辺で直ちに効果を発揮する隣接した戦力」だと綴った。朝鮮半島を米国の軍事的便宜によっていくらでも使える「発進基地」にすべきという主張だ。さらに、韓国・日本・フィリピンの間に「戦略三角形」を描く必要があるとし「3国協力を強化することで、米国が利益を得ることができる」と指摘した」

     

    韓国が、米軍=国連軍によって安全が保障されている現状から言えば、朝鮮半島を米国の軍事的便宜によっていくらでも使える「発進基地」にすべきという主張は当然である。朝鮮戦争は現在、法的に「休戦状態」である。国連軍が、韓国でいかなる布陣を敷こうが自由であるのだ。ただし、日本やフィリピンが、米国の利益のために一方的な立場に立たされることはない。日本の場合、日米安全保障条約に縛られるからだ。

     

    (4)「韓国は1950年初め、米国の防衛線である「アチソンライン」から除外されたため、朝鮮戦争という凄惨な悲劇を経験した。朝鮮半島の戦略的重要性を強調し、同じ過ちを防ごうとするブランソン司令官の善意を受け入れるとしても、今回の発言は一介の軍人が口にするレベルをはるかに越えたものだ。ブランソン司令官の提言が現実化すれば、朝鮮半島は在韓米軍の「発進基地」に転落し、中ロの報復攻撃に耐えなければならない」

     

    ブランソン司令官は、国連軍司令官である。一介の軍人ではない。韓国を軍事的に防衛している最高司令官である。

     

    (5)「韓国軍の活動範囲も南シナ海まで一気に拡大される。このような話はブランソン司令官にとっては斬新な「戦略的提案」かもしれないが、我々にとっては生死にかかわる問題だ。あえて地図を逆さまにしなくても、朝鮮半島はあまりにも戦略的に敏感な地域であるため、韓国人としては慎重にならざるを得ない」

     

    朝鮮戦争の当事者は、米国・国連軍・韓国vs中国・北朝鮮である。米国が中国へ対抗すべく南シナ海まで「戦域」を拡大することは、国連軍という立場にたてば可能だ。このように、韓国は、米軍の広い庇護下にあることを認識することだ。現在が、「休戦下」という異常状態にあることを再確認する必要がある。そうなれば、韓国が原潜を持つことの意味が明らかになる。米軍=国連軍という視点にならざるを得ないのだ。それが嫌ならば、原潜を持つべきではない。

     

     

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    現在、75歳以上の高齢者の過半は、医療費の保険料や窓口負担が1割り負担となっている。これが、現役世代の保険料負担を大きくしているという理由から見直しが進んでいる。 

     

    政府は株式の配当など金融所得を高齢者の医療費の保険料や窓口負担に反映する方針を固めた。損益通算のための確定申告をしなければ、保険料負担などが軽くなる不公正を是正する。2020年代後半(28年度)の開始を目指す。金融資産を多く持つ高齢者の医療給付費を抑え、現役世代の負担軽減につなげる目的だ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(11月18日付)は、「高齢者の配当・利子、2020年代後半に保険料反映へ 現役世代の負担軽く」と題する記事を掲載した。

     

    政府が月内にまとめる経済対策に「具体的な法制上の措置を2025年度中に講じる」と明記する。26年の通常国会に関連法の改正案を提出する方針だ。

     

    (1)「自民党と日本維新の会が10月に結んだ連立合意書で、25年度中に制度設計を実現すると明記していた。まずは、75歳以上が入る後期高齢者医療制度への反映を目指す見通しだ。働き方の違いによる加入保険の差がない75歳以上から始めた方が、不公平感を生まないとの見方がある。医療やマイナンバーなどに絡む複数の法改正が必要となる。自営業者らが入る国民健康保険や介護保険への反映も検討する。会社員らが入る健康保険は対象外とする。確定申告と関係なく給与をもとに保険料が決まり、労使折半で負担するため反映のハードルが高いからだ。現役世代の資産形成を促す少額投資非課税制度(NISA)の口座も算定対象から外す」

     

    現行の窓口負担は、70~74歳は2割、75歳以上の後期高齢者は1割が原則だ。ただ、70歳以上でも「現役並み所得」があれば3割負担となる。75歳以上では、課税所得が145万円以上で、年収が単身世帯で383万円以上、複数人世帯で520万円以上を基準としている。こういう大雑把な基準が廃止されて、配当・利子が所得へ加えられる。

     

    (2)「後期高齢者医療制度や介護の保険料は、給与や年金といった所得に応じて決まる。上場株式の配当や社債の利子といった金融所得は、損益通算のために確定申告をすればいまも翌年度の社会保険料に反映されている。ただ医療保険を運営する自治体などが、未申告の金融所得を把握するルートはない。保険料や窓口負担が軽くなるケースがあり、不公平さが指摘されていた。厚労省は対象となる金融所得のうち、金額ベースで約9割が算定から外れているとみる」

     

    厚労省は、対象となる金融所得のうち、金額ベースで約9割が算定から外れているとみる。この未申告の9割が、今後は保険料算定基準に加えられる。保険料の窓口負担1割の人たちがかなり減るであろう。

     

    (3)「申告の有無によるひずみは金融所得を多く持つ高齢者の方が大きいとみられる。総務省の全国家計構造調査(2人以上の世帯)によると、60代以上の金融資産は2019年で平均1800〜2000万円台に上る。30代では資産が500万円台まで下がる。データ把握には証券会社などが国税庁に提出する税務調書を使う。市町村などが把握できるよう専用の「法定調書データベース(仮称)」をつくる方向だ。厚労省所管で医療費請求書の審査を手掛ける社会保険診療報酬支払基金(東京・港)に置く案がある。金融と保険データの照合を自治体が担うのは荷が重く、負担軽減にも配慮する」

     

    毎年、証券会社などが国税庁に提出する税務調書が渡されている。市町村は、このデータを使えば自動的に金融所得が把握される。

     

    (4)「財務省の試算によると、75歳以上で配当収入が同じ年500万円でも申告をしなければ医療保険料は年1万5000円ほどで済む。確定申告をすると、およそ35倍の約52万円に跳ね上がる。医療費の窓口負担も原則の1割から3割に上昇する。75歳以上が入る後期高齢者医療制度の給付費は、総額の4割を現役世代らの保険料を原資とする「仕送り」が支える。所得のある高齢者が能力に見合った負担をすれば、結果的に現役世代からの支援は抑えられる」

     

    75歳以上が入る後期高齢者医療制度の給付費は、総額の4割が現役世代らの保険料で賄われる。金融所得が健康保険料に加算されると、現役世代の負担が減ることは確かだ。内閣府「令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査」によると、65歳以上の高齢者世帯のうち、約27.%が「配当・利子収入あり」である。そのうち、年間配当収入が50万円以上の世帯は約8.%を占めている。

     

    この前提で荒っぽい計算だが、100万高齢者世帯あたり「追加財源約9億円」規模の効果が見込める。制度の設計次第では、現役世代の負担比率が数%単位で軽減される可能性があるという。これは、大きな改善効果かも知れない。「負担公平」という時代の波が、高齢者へ押し寄せてきた。

     

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    高市首相の台湾問題発言に対して、中国が抗議をエスカレートさせている。中国人の訪日旅行や日本留学にブレーキを掛ける動きに出てきた。これら一連の動きの裏には、習近平国家主席が指示している。中国外務省は14日、孫偉東外務次官が前日夜に金杉憲治駐中国日本大使と「指示に従って会い」と明らかにしたことで習指示を示唆した。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(11月18日付)は、「中国が日本にけんかを売る理由」と題する記事を掲載した。

     

    中国の「戦狼」は新たな標的を見つけた。ロイター通信の報道によれば、彼らは下品な言葉を使って日本の高市早苗新首相を攻撃している。危機がエスカレートする中で、中国当局は中国人の観光客やビジネス関係者に対し、日本への渡航自粛を呼びかけた。また、日本に留学した場合に直面するとされるリスクについて注意喚起したほか、日本が領有権を主張する海域をパトロールするために沿岸警備艇を立て続けに派遣した。

     

    (1)「高市氏の「罪」は、国会での質問に対して正直かつ率直な答弁をしたことだ。これは重大な質問だ。2015年に成立した安全保障関連法では、「存立危機事態」は日本の集団的自衛権の行使につながり得る。高市氏の答弁は明快だった。その内容は、中国が武力で台湾を支配下に置こうとした場合は、安保関連法が想定する存立危機事態に当たり、そうした状況下では自衛隊が米国などの同盟国を支援することがあり得るというものだ。過去の日本の首相でこれほど明確に発言した者はいないが、日本の基本的な立場に実質的な変化はなかった。中国による台湾への攻撃は日本にとって大きな脅威となり得る」

     

    高市首相は、率直に中国による台湾への攻撃が日本にとって大きな脅威となり得ることを表明した。これは,事実である。

     

    (2)「中国の反応は、ある程度避けられないものだった。領有権を主張している国は、その主張が消えないようにするために、常に強く表明しておかなくてはならない。中国の見解では、台湾は中国の一つの省であり、中国が台湾をどう扱おうと、他国に干渉する権利はない。日本が中国本土と台湾の紛争に介入する可能性を示唆するなら、中国は抗議せざるを得ない。さもなければ自らの主張に関して疑念があると認めることになる。同様に、米国が台湾に武器を売却するたびに、中国は自国の主張が真剣なものであり、いつかはそれを実現させる意向だということを示すために、異議を申し立てざるを得ない」

     

    中国の見解では、台湾が中国の一つの省である。中国が、台湾をどう扱おうと、他国に干渉する権利はないとしている。これは、自国本位であり武力使用は他国へ損害を与えるだけに許されない問題だ。平和裏に行われるならば、他国は介入不可能である。

     

    (3)「そうした反応が避けられなかったとしても、危機が避けられないというわけではなかった。中国は形式的な抗議をして、数週間で平常に戻ることもできただろう。中国政府は小さな騒動を大きな対立に変えることを決めた。それはなぜか。中国政府の動機をアウトサイダーが読み解くのは難しい可能性があるが、二つのことが起きているように思える」

     

    習近平氏は二つの理由から、高市発言をテコにして大騒動に持ち込む決意をしている。

     

    (4)「第一に、中国共産党には威圧という長い伝統がある。相手が国内の敵対勢力であろうと、扱いにくい外国政府であろうと、中国政府はまず直感的に相手を威圧したり、脅したりすることが多く、可能な場合には、相手に何かを強要する。これがうまくいった場合は、それでよい。うまくいかなかった場合は、いつでも、より対立的でないアプローチに変えられる」

     

    中国は、相手構わずに気にくわない国へは、直感的に相手を威圧する行動に出る。現状は、この第一回戦が始まった。

     

    (5)「第二に中国政府は、高市氏が自らの立場を完全に確立する前に同氏の力を損なうことを望んでいる。同氏は、タカ派だった安倍晋三元首相の政治手法の後継者だ。高市氏はまた、ややハト派の公明党から連立維持を拒否された後、タカ派のより小規模な日本維新の会を連立に引き入れることができた。中国は、高市氏に歯止めをかけなければ、日本の防衛力強化に向けたより多くの施策が打ち出されるのではないかと懸念している。共同通信は、高市政権が非核三原則の見直しを検討していると報じた。世界の歴史の中でも最速のペースで核武装強化を進めている中国は、近隣諸国が核兵器を持たない弱い国であってほしいと考えている」

     

    第二回戦は、日本国内に「反高市ムード」の高まることを狙っている。これは、日本国内世論へ手を突っ込む行為である。高市首相を支持する人も、そうでない人も中国の言動に賛成することは危険である。こういう言葉を使いたくないが、「利敵行為」という醜い結果になろう。

     

    (6)「中国は、高市氏の発言への同国の憤りが、日本国内の反高市勢力の活性化につながることを期待している。中国と関係を持つ企業が雇用の中心になっている地域の議員や、観光が主な収入源になっている地域の議員もいる。高市氏は、自らの手本となる人物としてマーガレット・サッチャー氏(元英首相)の名を挙げている。高市氏が元祖「鉄の女」サッチャー氏と同様に、タフで機知に富んだ鉄の女であることを期待したい」

     

    高市首相は、欧米との連携を強めるべきである。台湾の武力侵攻は、自由と民主主義に関わる重大問題である。

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    トランプ米大統領は、高関税措置を自画自賛してきたがここへきて揺れている。米国内で高まる物価上昇への不満に対応するため、14日に多くの農産物・食品の関税を大幅に引き下げる方針転換を余儀なくされているからだ。さらに、「トランプ関税」の収入を原資に、富裕層を除く米国民に1人当たり2000ドル(約30万円)を支給するバラマキ構想までぶち上げている。実現には多くの壁が立ちはだかる。

     

    『毎日新聞』(11月17日付)は、「正反対に振れた『トランプ関税』 バラマキ構想も『実行困難』か」と題する記事を掲載した。

     

    トランプ氏は14日夜、「一部の食品価格を引き下げたい。我々がやろうとしているのは関税の引き下げだ。場合によっては、店頭価格がかなり下がるだろう」と大統領専用機内で記者団に説明した。

     

    (1)「トランプ氏はこの日、牛肉やバナナ、トマトなど幅広い農産物・食品について、世界各国に対する「相互関税」の対象から外し、関税を大幅に引き下げる大統領令に署名した。米紙『ワシントン・ポスト』とABCニュース、調査会社イプソスが10月24~28日に実施した世論調査によると、トランプ政権の関税政策の支持率は33%にとどまった。不支持率は65%で、主要政策別で最大。トランプ政権は「関税はインフレを招かない」とかねて主張してきたが、11月4日のニューヨーク市長選などでライバルの民主党候補が勝利する中で焦りを深めた模様で、結局、関税引き下げで物価抑制を図る正反対の措置を取ることになった」

     

    トランプ氏は、物価上昇による国民の生活圧迫が顕著になると共に、相互関税の一部撤回を行わざるを得なかった。これは、トランプ氏の支持率低下となって表れている。

     

    (2)「実は、「トランプ関税」を巡って世論の支持を得ようとするトランプ氏の試みは、他にもある。発端は、9日の自身のソーシャルメディアへの投稿だった。「関税に反対する人々は愚か者だ」と記したうえで、巨額の関税収入や大規模な対米投資、史上最高値を更新する株価を経済政策の「成果」として誇った。そして、1人当たり最低2000ドルの「配当金」を支払う構想を打ち出した。支給対象や方法ははっきりしない。ベッセント財務長官は米メディアで「年収10万ドル(約1540万円)未満」の人に支払う可能性に触れたが、子供も対象となるかは示さなかった。「配当金」の規模感は定まっていない」

     

    トランプ氏は、関税を財源に国民一人当たり2000ドルを支給するとぶち上げた。本来は、財政赤字削減目的で相互関税を実施したはずが、バラマキ財源に化けようとしている。

     

    (3)「トランプ氏は14日、支給時期について「今年ではなく、来年のある時期になる」との見通しを記者団に示した。来秋の中間選挙を前に、世論の支持向上につなげる思惑が透ける。だが、実現のハードルは高そうだ。米シンクタンク「タックス・ファンデーション」のエリカ・ヨーク氏はX(ツイッター)で、ベッセント氏が示した「年収10万ドル」で線引きして子供を除外した場合でも、対象は約1億5000万人にも上り、約3000億ドルが必要だと指摘する。米財務省によると、9月末時点の関税関連収入は1950億ドル。必要額と大きな開きがあり、ヨーク氏は「実行困難」とみる」

     

    トランプ氏は、2000ドル支給時期は来年になるとしている。中間選挙目当てである。現実にはこの2000ドル支給は実現困難とみられている。

     

    (4)「さらに、今回の農産物関税の大幅引き下げで、関税収入は当初の設計より減少すると見込まれる。将来の収入を元手に国債発行などで賄う選択肢も考えられるが、財政悪化につながる懸念もある。2000ドルの「配当金」は家計に「恩恵」と思えるが、かえってインフレを助長する恐れもある。セントルイス連銀の推計によると、コロナ禍での米国の景気刺激策はインフレ率を年間2.6ポイント押し上げた。経済の状況は当時と現在で異なるが、英調査会社オックスフォード・エコノミクスのエコノミストは米CNNの取材に、過度の「配当金」によって「景気を過熱させるリスクがある」と警鐘を鳴らした」

     

    2000ドル支給案は、かえってインフレを助長する恐れがあると指摘されている。こうなると、トランプ構想は宙に浮いてしまうだろう。

     

    (5)「トランプ政権が、一方的に推し進めることも難しそうだ。ベッセント氏や国家経済会議(NEC)のハセット委員長は今回の構想を実行に移す場合、立法措置が必要になるとの認識を示している。懸念点が拭えない中、すんなりと議会の承認を得られる見通しは立っていない。トランプ関税の枠組み自体が崩れる懸念も強まっている。連邦最高裁が5日に実施した「相互関税」を巡る訴訟の口頭弁論では、リベラル派だけでなく多数派を占める保守派の判事からも、大統領権限で全世界一律の高関税措置を講じる正当性に懐疑的な見方が示された。早ければ年内に下される判決でトランプ政権側の敗訴となれば、自動車や鉄鋼・アルミニウムなどを対象とした品目別関税は残るが、「数百億ドルの資金源を失うことになる」(米ニュースサイト「アクシオス」)」

     

    2000ドル支給案は、国会承認が必要になる。中間選挙を前に、インフレ気味の案に共和党がすんなり賛成するかも不明である。最高裁の相互関税判決も決め手になる。違憲となれば、トランプ氏の立場は一層追い込められるであろう。

     

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