勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    AI(人工知能)普及がもたらす最大の悩みは、消費電力量が膨大であることだ。データの計算や保存を行うデータセンターを新設する企業が相次ぎ、日本では2050年に4割弱も増えるとの予測が出ているほどだ。こうした悩みを解決するのが、NTTが開発した光半導体を使った次世代通信(6G)「IWON」である。日本初の技術開発である。 

    NTTが、米サンフランシスコで現地時間10~11日に開いた技術イベントで、IWONの実証実験成功が公開された。英国では約89キロメートル、米国では約4キロメートル離れたデータセンターを1000分の1秒以内というわずかな時間差でつなぎ、一つのインフラのように運用できたと公開した。 

    今回の日米首脳会談では、「日米企業は、IOWNグローバルフォーラムのようなパートナーシップを通じ、光半導体を通じて得られる幅広い可能性を模索している」と確認された。政府間の文書でIOWNへの言及があったのは初めて。6Gの切り札として国際標準化へ向けた動きが活発化する。 

    『日本経済新聞』(4月13日付)は、「NTT、光技術で世界標準へ 次世代通信『IOWN』実証成功 『iモード』教訓 米で布石」と題する記事を掲載した。 

    NTTが、光技術を使った次世代通信基盤「IOWN(アイオン)」で世界市場を狙う。離れた場所にあるデータセンターをつなぐ実証に英国と米国でそれぞれ成功した。NTTが米サンフランシスコで現地時間1011日に開いた技術イベント会場には独自開発した大規模言語モデル(LLM)「tsuzumi(つづみ)」やセキュリティー関連の展示が並んだ。IOWNは会場の目立つ場所に展示ブースを構え、英国と米国での実証実験の結果も発表した。

     

    (1)「生成AI(人工知能)のデータ処理を担うデータセンターの重要性は急速に高まる。ただ、都市部で設置を増やすにはスペースの制約があった。複数のデータセンターをつないで遅延がない運用ができれば、設置場所の選択肢が郊外に広がる。NTTが2019年5月に構想を表明したIOWN。得意とする光通信技術を応用し、少ない電力で大容量のデータのやり取りを可能にする。2030年以降には現在のインターネットと比べて消費電力を100分の1まで減らせると見込む。段階的に商用化を進めている」 

    NTTは、半導体内の電子処理を電気信号から光に置き換える「光電融合技術」を開発し、大幅な消費電力の削減を実現させるメドがついた。すでに製品化へ向けて動き出している。演算用の半導体を手掛けるインテルや、記憶用の半導体を手掛けるSKハイニックスと必要な技術の擦り合わせなどで協力を要請した。NTTは、この技術を核にして次世代通信基盤「IOWN」の実用化に成功した。 

    IWONは、2028年度に伝送容量125倍を処理し、32年度に電力消費100分の1削減を達成できると見込んでいる。つまり、現在よりも125倍のデータ伝送を1%の電力消費で行うのだ。夢の実現である。 

    (2)「NTTは、IOWN構想推進で米国を重視した。20年1月にソニーグループ、米インテルと国際団体「IOWNグローバルフォーラム」を設立。拠点は日本でなく米国に置いた。インテルのボブ・スワン最高経営責任者(CEO、当時)や米マイクロソフトのサティア・ナデラCEOらビッグネームと会い、次々と提携をまとめた。なぜ米国なのか。IOWNの優位性を売り込んでも「米国には米国の優れたサービスがあるという議論になってしまう。だから最初に仲間に引き込んだ」(NTT澤田会長)」 

    IWONは、国際標準化することで世界通信市場を席巻できる。それには、米国の力を借りるほかない。米国を仲間に引き入れることだ。

     

    (3)「沢田氏は、「ハードウエアのメーカーでないNTTにとって、IOWNをいかに製品やサービスに応用できるかが重要だ。テック大手のGAFAMについても「ライバルであり、お客さんでもある」と語る。「日本に閉じこもらず、世界標準にする」。澤田氏がこの目標を掲げる背景にはiモード(注:携帯電話でのメールのやりとり)の苦い経験がある。iモードは自社技術を押しつけようとして海外に普及しなかった。IOWNでは初期段階から海外企業を含めた仲間づくりに力を注いできた」 

    NTTは,iモードが世界標準になれなかった理由として、海外での「仲間づくり」に失敗したことを挙げる。これを教訓に、IWONは米国という最大の仲間をつくり、「6G」の骨格を担う。 

    (4)「道のりは半ばだ。グローバルフォーラムの参加企業は約140社まで広がったが半分は国内勢。残る半分のうち米企業は数社にとどまる。研究開発の成果の開示義務を課すNTT法が足かせになっている。だが、そのNTT法は転機を迎えている。改正案が4月5日の衆院本会議で与党などの賛成多数で可決され、衆院を通過した。オープンイノベーションを探るうえでの障壁は取り払われる見通しだ」 

    NTTは、オープンイノベーションによって世界中から研究に参加できる仕組みをとっている。これが、IWONの改良に繋がり世界へ普及させる基盤になるからだ。 

    (5)「NTTはパートナー拡大の布石を打ち始めている。米国に拠点を置く研究機関「NTTリサーチ」を通じて米ハーバード大に最大170万ドル(約2億6000万円)を寄付することも技術イベントで発表した。優秀な研究者が集まるトップ大学との関係を深める。今回の日米首脳会談では「日米企業はIOWNグローバルフォーラムのようなパートナーシップを通じ、光半導体を通じて得られる幅広い可能性を模索している」と確認された。政府間の文書でIOWNへの言及があったのは初めてという」 

    NTTは、ハーバード大学へ最大170万ドルを寄付して、IWONの研究普及を目指す。米国企業が、よく行う手段である。日本企業がこれに倣ったものだ。今回の日米首脳会談の政府間の文書でIWON普及への文言が入った。大きな前進である。

     

    次の記事もご参考に。

    2024-04-11

    メルマガ557号 日本経済「再飛躍」は確実、水素エネルギーと光半導体の2技術「国際標

     

     

     

     

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    日本は戦後、太平洋戦争開戦の贖罪から外交面で一歩も二歩も引き下がる姿勢をとり続けてきた。それが、逆に中国の領土拡張的な動きを押し上げる逆効果をもたらした。中国が、二言目には日本の太平洋戦争責任に言及することにあらわれている。その日本が、西側陣営の核の一つとして中国への抑止力として立ち上がる。日本は、太平洋戦争で甚大な被害を与えたフィリピンの「僚友」として、ともに中国抑止へ動き出した。

     

    『日本経済新聞』(4月12日付)は、「日米比、原発・半導体で供給網 初の首脳会談 中国に『深刻な懸念』」と題する記事を掲載した。

     

    日米フィリピン3カ国の首脳は4月11日(日本時間12日午前)、ホワイトハウスで会談した。エネルギーや半導体など重要物資について中国に依存しすぎないサプライチェーン(供給網)をつくる。南シナ海における「中国の危険で攻撃的な行動に深刻な懸念」を共同文書に盛り込んだ。


    (1)「岸田文雄首相、バイデン米大統領、フィリピンのマルコス大統領が参加した。日米比3カ国による首脳会談は初めて。首相は会談の冒頭で「国際秩序の維持・強化に向けて同盟国・同志国との重層的な協力が重要だ」と指摘した。「インド太平洋地域の平和と繁栄のために日米比の協力のさらなる強化を確認したい」と期待を示した。日米はオーストラリアや韓国、インドといった同志国との3カ国や4カ国の枠組みを活用して国際秩序を維持する戦略を描く。フィリピンは南シナ海で中国の覇権主義と向き合う。11日の3ヶ国会談はこれまで日米比の協力の柱だった安全保障に限らず、経済面での結びつきを強めた」

     

    中国は、みすみすフィリピンを西側陣営へ追いやる結果になった。中国が約束したフィリピンへの経済援助を空手形にしたからだ。中国は、フィリピンを属国のように扱い、外交的に大きな損害を被っている。「一寸の虫にも五分の魂」を忘れた中国の振舞が、フィリピンの逆襲を招くことになった。中国は、防衛面で大きなしくじりになったのだ。

     

    (2)「中国が、経済力を背景に影響力を行使する威圧に「強い反対」を表明し、日米でフィリピンを支援しながら「強靱(きょうじん)で信頼性のある多様な供給網」をつくるとした。半導体の供給網確保へ人材を育成する。フィリピンの学生が日米の主要大学で高い水準の研修を受けられるようにする。電気自動車(EV)の電池に欠かせないニッケルを念頭にフィリピンを含めた重要鉱物の安定した供給網づくりを進める」

     

    フィリピンの工業化には、日本の広範な支援が不可欠である。人材教育のために、日米はフィリピン留学生を受入れる。工業化促進には、先ず人材養成が必要だ。フィリピンはニッケル資源保有で世界2位である。日米にとっては、貴重な資源国である。

     

    (3)「民生用の原子力に関する知識を持つ人材育成で協調する。フィリピンではIHIや日揮ホールディングスなどが出資する米新興企業のニュースケール・パワーが次世代原発「小型モジュール原子炉(SMR)」の建設を計画する。日米でフィリピンの港湾や鉄道などのインフラ整備を後押しする。首都マニラを含む地域に「ルソン経済回廊」を立ち上げる」

     

    「ルソン経済回廊」とは、ルソン島にあるスービック湾、クラーク、マニラ、バタンガスを結ぶ地域で、港湾、鉄道、クリーンエネルギー、半導体の供給網(サプライチェーン)関連のインフラを整備する。また、フィリピンの情報インフラを整備するため、オープン無線アクセス・ネットワークの技術普及支援にも乗り出す。

     

    (4)「海洋安全保障をめぐっては南シナ海の南沙(スプラトリー)諸島のアユンギン礁近くで中国船がフィリピンの船舶に衝突したり、放水銃を使ったりして緊張が高まっている。

    日米がフィリピン沿岸警備隊の能力向上を支援する。今後1年以内に3カ国の海上保安機関がインド太平洋地域で共同訓練を実施する。中国が民兵や民間船を使って南シナ海の実効支配を進める「グレーゾーン戦術」に結束して対処し、抑止力を高める」

     

    中国船が、フィリピン船に向って放水するなど、無謀行為を行っている。中国の主張する南シナ海領有権は、国際仲裁裁判所から100%否定されている。中国が、南シナ海で居座っているのだ。

     

    (5)「海上防衛の協力も深める。オーストラリアを含めた日米豪比4カ国で7日に南シナ海で海上自衛隊と各国海軍による本格的な訓練を初めて実施している。共同文書では台湾海峡の平和と安定の重要性を共有した。海洋をめぐる協力を促進する協議の枠組みをつくる。沖縄県・尖閣諸島を含む東シナ海での力による一方的な現状変更の試みに反対した」

     

    マルコス政権による中国への厳しい対応は、国内世論が好意的に受け止めている。民間調査会社が23年末にまとめた全国世論調査で、南シナ海への対応を評価すると答えた人は58%にも上った。「外交を通じて領有権をさらに主張すべきだ」との意見は、7割を占めている。

     

     

     

     

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    台湾のTSMCは、今や世界一の業績を誇る半導体企業である。筑波市に半導体研究所を設けており、日本の半導体製造装置や素材企業が参加している。最先端半導体には、日本企業の協力が不可欠であるからだ。その日本が、国策半導体企業ラピダスを設立してTSMCが手がけようとする「2ナノ」(10億分の1メートル)の最先端半導体へ進出する。これに、半ばショックを受けているのがTSMCだという話が持ち上がった。 

    『東洋経済オンライン』(4月11日付)は、「TSMCが日本の補助金よりも欲した“2つの取引先”」と題する記事を掲載した。 

    今、日本は半導体特需で沸きに沸いている。この熱狂の中心にいるのが半導体受託製造(ファウンドリー)の世界最大手、TSMCだ。この巨大企業を創業期から取材してきた台湾のハイテクジャーナリスト林宏文氏が、『TSMC世界を動かすヒミツ』を発刊した。以下は林氏とのインタビューである。

     

    (1)「TSMCが、日本で工場を建設する意義や目的は、TSMCのシーシー・ウェイCEOが過去に明確に述べている。すなわち「重要な顧客企業のため」なのだと。日本政府に請われたから、補助金が得られたからではないのだと、そうはっきり語っています。重要な顧客の1つは、トヨタ自動車です。ウェイCEOは熊本工場の開所式にトヨタの豊田章男会長と面談した際、「(熊本工場は)TSMCが日本で半導体製造に乗り出す第一歩。ぜひトヨタの支援をいただきたい」「(自動車向け半導体が)今はTSMCにおいて小さな割合であっても、将来は伸びる。トヨタと一緒に成長したい」と語っている。もう1つの重要な顧客は、アップルだ。iPhoneはカメラ用の撮像素子(CMOSセンサー)を大量に消費するが、それを供給しているのはソニーグループだ」 

    TSMCは、トヨタとソニーの顧客を得たくて日本へ進出したと指摘している。ならば、熊本第一工場だけで済んだはずだ。それが、第二工場進出を既に発表している。第四工場まで九州へ建設するのは、日本の半導体製造の適地性を認識した結果であろう。トヨタとソニーは、「入り口」に過ぎない。 

    (2)「TSMCが、米国をより重視してきたのは当然だ。その姿勢に、変化が生じているのではないかと感じている。TSMCの経営陣は当初、米国のアリゾナ新工場のプロジェクトを「千載一遇の成長機会」と感じたはず。中国との半導体戦争という環境の中で、米国政府はTSMCの新工場建設に巨額の公的支援を約束したからだ。今となっては、米国政府はTSMCの有力ライバルであるインテルに、より大規模な支援を行うことが明らかになっている。TSMCの米国新工場の建設はいろいろの要因で遅れている」 

    TSMCは当初、米国を高く評価していたが、しだいに熱が冷めている。米国政府が、TSMCの有力ライバルであるインテル支援に傾いているからだ。この反動で、TSMCは日本へ軸足を移していることは間違いない。日本の「物づくり文化」を頻りと絶賛しているからだ。

     

    (3)「日本が半導体産業を振興すること自体に成功のチャンスがあると思う。半導体製造装置において、日本は米国、オランダと並ぶ最重要国です。多くの半導体材料でも、日本企業がトップシェアを掌握している。これは日本企業が長期的なR&D(研究開発)を重視してきた成果だ。息の長いR&D重視姿勢は、台湾よりも日本が顕著だ。製造装置や材料の強みがさらに増す政策であれば、日本にとって大きな価値があると思う」 

    日本の半導体製造の潜在的な能力は、台湾や韓国をはるかに凌いでいる。製造装置・素材・生産とワンセット揃っているのは、世界で日本だけだ。 

    (4)「ラピダスについては、日本の皆さんにシビアに伝えたいことがある。日本では先端半導体を作るプロセス技術が途絶えているため、ラピダスはIBMからの技術移転を選んだ。実はIBMからの技術移転は、台湾を代表する半導体メーカーも選んだことがある。しかし失敗に終わった。企業成長を決定的に遅らせるほどの大きなつまずきだ。その企業はUMC(聯華電子)である。UMCはTSMC同様、台湾政府の支援で生まれた。UMCの創業は1980年とTSMCより7年早い。ところがUMCは2000年ごろを境に、TSMCに技術や業績の面で大きく引き離された。UMCが、IBMからの技術移転を選んだ影響が大きいと考えられる」 

    IBMは、「2ナノ」で試験生産に成功している。ただの「特許」ではない。ましてや、日本は「一を聞いて十を知る」潜在的な半導体製造能力を持っている。台湾のUMCと同列に扱われては困るのだ。日本は、大学を始め研究機関参加の「オールジャパン」で取組んでいる。

     

    (5)「IBMは、今の最先端技術を使って半導体を量産したこともないし、ましてや受託製造のサービス業であったことはもちろんありません。量産ラインにおいて、どうすれば歩留まりを低減でき、半導体の品質とコストを下げられるのか。顧客からの突然の追加オーダーや、逆に思ってもみないキャンセルといった不測の事態に耐えるためには、工場の柔軟性や学習曲線をどう上げればよいのか? ラピダスはどうやって学ぶのだろうか」 

    日本は、天才的な物づくりノウハウを持っている。日本を見くびっては困る。半導体で言えば、台湾も韓国も日本の後発国である。 

    (6)「トヨタは、ハイブリッドカーや水素カーを世界に普及させる夢を抱いている。そのために先端半導体が不可欠だ。自動車産業の強みをどう伸ばすかが重要で、そこで必要な半導体を日本が設計さえすれば、TSMCがパートナーとなって製造することができるのです」 

    TSMCは、トヨタやソニーの半導体を全て受注したいのだ。それは、ビジネス動機である。日本の産業政策としては、TSMCに半導体の製造付加価値を全て吸い上げられていたのでは、国家経済が発展しないのだ。日本は、半導体植民地にならない。

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    不況脱出を目指す中国は、世界中に安価な製品であふれさせている。20年余り前に、世界の製造業を席巻した「チャイナ・ショック」の続編でないかと警戒されている。米国とEU(欧州連合)は、中国製のEV(電気自動車)やソーラーパネルに対し、貿易障壁を引上げると警告しているほどだ。今回はブラジルやインド、メキシコ、インドネシアなどの新興国もこの輪に加わり、鉄鋼やセラミック、化学製品など、ダンピング(不当廉売)の疑いがある中国製品に狙いを定めている。『ウォール・ストリート・ジャーナル』(4月10日付)が報じた。

     

    『ロイター』(4月12日付)は、「中国輸出、3月は前年比ー7.5%と予想以上に減少 輸入もマイナス」と題する記事を掲載した。

     

    中国税関総署が12日発表した3月の貿易統計によると、輸出は前年比7.5%減、輸入は1.9%減でいずれも市場予測を大きく下回った。輸出は昨年8月以来の大幅な落ち込みとなった

     

    (1)「ロイターがまとめたエコノミスト予想は、輸出が2.3%減、輸入は1.4%増。輸出は前年同月が高水準だったため減少するとみられていたが、予想以上の落ち込みとなった。ただ鉄鋼輸出は2016年7月以来の高水準だった。輸入の減少は、国内需要の低迷を浮き彫りにした。3月の大豆輸入は4年ぶりの低水準となった。原油輸入は6%減少した。1~2月は、輸出が7.1%増、輸入は3.5%増だった。第1・四半期の輸出は、前年同期比1.5%増加。輸入も1.5%増だった」

     

    3月の輸出が前年同期比7.5%減に落込んだ理由は、EVの販売不振が影響しているであろう。調査会社ロー・モーションが12日発表したデータによると、世界の完全電気自動車(BEV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)の販売台数は3月に前年同月比12%増の123万台となった。中国で27%、米国とカナダで15%伸びたが、欧州で9%減少した。

     

    ここでは、欧州が9%減であることに注目すべきである。欧州の港湾には、大量の中国製EVが車庫代わりに留め置かれている。代理店までの輸送手段がないままに「見込み輸出」してきたものだ。これにも限界があるので、自動的に欧州向けEV販売が落ちてきているのであろう。とすれば、欧州でのEV不振は長引きそうだ。

     

    (2)「ジョーンズ・ラング・ラサールのチーフエコノミスト、ブルース・パン氏は、「為替変動による混乱に加え、3月の輸出入が予想を下回ったことは、野心的な成長目標を達成するためにより包括的かつ的を絞った景気刺激策が必要になることを示している」と指摘。「中国の貿易が再び成長の原動力となるまでには長い道のりとなるだろう」と述べた」

     

    ここでは、3月の輸出入が事前予想を大幅に下回ったことで、中国経済の底流が冷却に向っていると警戒している。24年は、「5%前後」という成長率目標を掲げているが、3月輸出が、昨年8月以来の大幅な落ち込みとなったことで、輸出で景気を支える方程式が崩れ始めたとみている。輸入減は、内需の落込みを反映している。こうなると、3月の

    貿易動向から明るい展望が消えるであろう。

     

    (3)「中国当局が個人消費や民間投資を促し、市場の信頼を回復させるための支援策を昨年後半から打ち出したことで、経済は今年、比較的堅調なスタートを切った。しかし成長は依然として不均一で、不動産セクターの危機が長引いていることなどから、アナリストは当面本格的な回復はないと予想している3月の貿易黒字は585億5000万ドル。エコノミストの予想(702億ドル)を下回った。3月の対米貿易黒字は229億4000万ドル、1~03月は702億2000万ドルだった」

     

    不動産バブル崩壊に伴う過剰債務の重圧は、これだけで内需の芽を押し潰している。習近平氏は、この過剰債務の重圧を「三種の神器」(EV・電池・太陽光パネル)を先頭にした輸出攻勢で切り抜けようとしている。だが、「三種の神器」が霊験あらたかでなくなってきたのだ。となれば、正統派の政策である個人消費刺激策に立ち返ることになるのか。ますます、経済政策の混迷が深まるばかりである。

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    韓国の総選挙は、与党「国民の力」が大敗北を喫した。108議席にとどまり、現有議席の114議席を下回る事態となった。ただ、定数300議席の3分の1にあたる100議席を維持した。野党議席は、大統領の弾劾訴追が可能になる3分の2を下回ったので、朴槿恵政権弾劾の二の舞を回避できる。野党「共に民主党」は、総選挙中に大統領弾劾を叫んでいたのだ。

     

    『日本経済新聞』(4月12日付)は、「尹氏の対日政策難路、韓国与党大敗 政権脆弱に 元徴用工問題見通せず」と題する記事を掲載した。

     

    韓国総選挙(一院制の国会議員選)で与党「国民の力」が108議席にとどまり大敗した。現有議席の114議席を大幅に下回る事態はかろうじて回避した。当面の日韓関係への影響は限定的とみられるが、韓国政府が関係改善に取り組む上で火種は残っている。

     

    (1)「与党は投票日直前の世論調査や当日の出口調査で、現有議席114議席を大幅に下回ると報じられていた。定数300議席の3分の1にあたる100議席を下回るとの予測もあった。野党勢力が大統領の弾劾訴追も可能となる3分の2を確保する可能性も取り沙汰された。最大野党「共に民主党」と曺国(チョ・グク)元法相が立ち上げた革新系新党「祖国革新党」の議席数はあわせても3分の2に届かなかった。与党は大敗したものの、野党の極端な巨大化は免れた」

     

    韓国の選挙は、投票日1ヶ月間の風が支配するとされている。今回も、3月初めの与党有利説が一挙にひっくり返った。感情論を煽った方が勝利を収めるからだ。多くの被告が堂々と立候補して当選する姿は、日本にはみられない情景である。

     

    (2)「韓国半導体産業協会の安基鉉(アン・ギヒョン)専務は「(輸出管理問題の時に)関係の毀損が両国にとって良くないことを経験した。与野党ともにそれを傷つけるようなことはしないと思う」と話す。韓国最高裁は18年以降、日本製鉄など複数の日本企業に対し元徴用工への賠償を命じる判決を確定させた。尹政権は1965年の日韓請求権協定で解決済みとする日本側の立場に理解を示し、韓国政府傘下の財団が判決金を支払う解決策を提案した。勝訴した原告に支払いを進めている」

     

    日本にとって気がかりな点は、旧徴用工問題が最後まで解決されるかである。韓国政府は解決策の受け入れを拒んだ原告に関しては、判決金相当額を裁判所に預ける「供託」の手続きを23年7月から始めたが、供託の有効性を認めない地裁の判断が全国各地で相次いでいる。韓国司法は、民意の影響を受けやすいことで知られる。今後の判決の行方に疑問付がつく。

     

    (3)「解決策は韓国内で「一方的な譲歩だ」など一部に反発もあったが、大統領の強力な権力を用いて推し進めてきた。尹氏の大胆な取り組みに官庁や企業も協力した。2022年に発足したばかりの政権に求心力が働きやすい状況だったことも尹氏を後押しした。今回、与党が過半数を取れなかったことで、尹政権が元徴用工問題の解決策を最後までなし遂げられるか見通しにくくなった」

     

    韓国社会では、もともと元徴用工問題の解決策に対し「日本の呼応措置が不十分だ」との批判が根強い。解決策を主導した政府・与党が総選挙に敗れたので、尹大統領のレームダック(死に体)化が懸念される。いずれ裁判所で差し押さえられた日本企業資産の現金化の手続きが再開され、最終的に日本企業に実害が生じるリスクを排除できないのだ。

     

    (4)「韓国政府の財団は、足元で原告への支払いの原資が不足している。鉄鋼大手ポスコが資金を拠出しただけで、寄付の動きが他の企業に広がっていない。今後、企業側の政権への協力姿勢が低下すれば寄付集めがいっそう難航しかねない。財団からの資金の受け取りを拒否する原告への弁済が滞っている問題もある。今回の選挙で与党が勝利すれば、国会で法整備をして新たな財団をつくり、完全解決をめざす道が開けるはずだった。与党が敗北し、この道は絶たれた。野党は総選挙での圧勝を背景に、尹政権に対日関係の修正を迫りそうだ。共に民主党は総選挙の公約で、元徴用工や慰安婦の問題で「日本企業や政府の直接補償」を求めた。日本企業が補償しない形での解決を進めてきた尹政権を批判する」

     

    韓国政府は、旧徴用工問題の完全解決のために、国会で法律を成立させ新たな財団をつくるはずであった。この計画は、与党大敗北で潰えた。

     

    (5)「尹政権が日韓関係の改善を機に進めた日米韓の安保協力についても、野党は「北朝鮮との対立をあおっている」と非難する。尹政権が残る任期でこれまで通りの外交・安保政策を進めたとしても、次の大統領が尹氏の方針を維持する保証はない。中国の台頭や北朝鮮のミサイル開発など東アジアの安全保障環境を考えると、韓国の内政リスクが改めて浮き彫りになった」

     

    韓国政治の難しさは、政策の善悪を議論するよりも感情論が支配していることだ。その時の気分次第で動いているだけに、韓国の指針は揺らいでいる。尹大統領は、こういう自国民の感情特性を把握していれば、今少し柔軟に対応できたであろう。尹氏の正論一本槍が、感情社会に敗れた印象だ。

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