勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    米国では、米マッキンゼーが過去に中国政府へ政策助言したのでないか、と米議員から追求されている。マッキンゼーは、米国政府からの受託調査を行っているだけに、「二股」が問題視されている。米中対立によって、過去におけるマッキンゼーの対中接近が争点になっているのだ。 

    『フィナンシャル・タイム』(2月27日付)は、「米マッキンゼー、中国政府に政策助言か 米議員が追及」と題する記事を掲載した。 

    米コンサルティング大手マッキンゼー・アンド・カンパニーは、中国の中央政府に国内消費の喚起や医療政策の改革について助言した実績をマーケティング資料でアピールしていた。中国政府向けの業務を請け負ったことはないとする同社の主張に新たな疑問が生じている。 

    (1)「2019年に閉鎖されたマッキンゼー中国法人のウェブサイトによると、同国での顧客の約10%は政府機関や非営利団体だった。ウェブサイト「mckinseychina.com」(現在はマッキンゼーの国際版メインサイトにリダイレクトされる)のアーカイブには「中国におけるマッキンゼーの影響力は、企業部門で請け負う業務をはるかに超えている」と記されている。「過去10年間だけでも、経済計画や都市再開発、社会分野など幅広い問題に関して中央、省、市など20以上の政府機関にサービスを提供してきた」という。このマーケティング資料には、同社が「医療改革の政策立案や、次世代の政府指導者を育成する人材・リーダーシップ開発プログラムの提供、国内消費の活性化を目的とした政策や具体的措置の策定など、社会的影響の大きいさまざまな問題について複数の中央政府省庁に助言してきた」とも記載されている」 

    マッキンゼーは、苦しい立場である。中国政府部門へ種々の立案をしてきたことをPRしていたことが、現在は批判されることになっている。米中対立激化が、もたらした影響である。

     

    (2)「一部の米議員は、中国事業に関するマッキンゼーの発言に矛盾があるとして、米連邦政府の取引先から同社を除外するよう要請している。マッキンゼーのグローバル・マネジングパートナー、ボブ・スターンフェルズ氏は6日、米連邦議会の公聴会に出席し、中国中央政府の業務を請け負ったことはないと発言した。「当社は中国共産党や中央政府のために仕事をしておらず、私の知る限りでは一度も業務を請け負ったことがない」としている。中央政府省庁に助言したという宣伝文句は、少なくとも14年から19年にかけてマッキンゼー中国法人のウェブサイトに掲載され、22年には米保守系雑誌「ナショナル・レビュー」でも取り上げられた」 

    マッキンゼーは、中国での活動を覆い隠そうとしている。当時の米中関係では、当然の業務範囲であると説明すべきところを、事実そのものを否定して疑惑を生んでいる。 

    (3)「フィナンシャル・タイムズ(FT)が今週、本件について同社に問い合わせたところ、次のような回答があった。「当該の旧サイトは『mckinsey.com(メインサイト)』の一部ではなく、当社の顧客サービスについて不適切な表現が含まれており、数年前に削除された。当社としては、中国中央政府が現在マッキンゼーの顧客ではなく、当社の知る限り顧客だったことはない、というこれまでの声明を堅持する」としている」 

    マッキンゼーは、過去に行った中国政府絡みの業務が一切なかったとしている。

     

    (4)「マッキンゼーは、09年に打ち出された医療改革に貢献したと当時の中国国営メディアで報じられている。国営通信新華社が中央政府のウェブサイトに掲載した記事によると、政府は07年3月に「外部の頭脳を活用して幅広いアイデアを収集する」ため、マッキンゼーの中国法人を含む7団体に独立調査を委託した。共産党系紙の中国青年報によると、中国の経済企画当局と保健当局が率いる医療改革作業部会は、マッキンゼーなどの機関に「独立した、かつ同時進行の医療改革計画策定」を依頼した」 

    国営通信新華社が報じたところでは、07年にマッキンゼーの中国法人を含む7団体に独立調査を委託した、としている。 

    (5)「FTは23日、中国が15年に第13次5カ年計画をまとめるにあたって、マッキンゼー主導のシンクタンク「アーバン・チャイナ・イニシアチブ(UCI)」が別途助言していたと報じた。中国のマクロ経済政策の司令塔である国家発展改革委員会向けの調査プロジェクトの一環として、企業と軍の協力を深め、機密産業から外国企業を締め出すよう提言したという。この業務を請け負ったUCIは、マッキンゼーが中国の清華大学や米コロンビア大学と共同で立ち上げたシンクタンクだ。提言書に序文を寄せたマッキンゼーの最上級パートナーの一人がその写しを中国の李克強(リー・クォーチャン)首相(当時)に贈呈したという」

     

    マッキンゼー主導のシンクタンク「アーバン・チャイナ・イニシアチブ(UCI)」は、中国で「企業と軍の協力を深め、機密産業から外国企業を締め出すよう提言した」という。マッキンゼーの言い分では、UCIがマッキンゼーと別組織であるから、マッキンゼーに直接の責任はないという形式論を振りかざしている。 

    (6)「米共和党のジョシュ・ホーリー上院議員は27日、マッキンゼーのスターンフェルズ氏は同社が中国共産党や中央政府に協力したことはないと明言したが、これは議会への虚偽の説明だとして非難した。政府のデータによると、マッキンゼーは23年9月までの1年間に米連邦政府から少なくとも1億100万ドル(約150億円)の支払いを受けており、そのうち6300万ドルは国防総省から支払われている」 

    マッキンゼーは、米国政府から23年に少なくとも1億100万ドル(約150億円)の支払いを受けている。米議会が、マッキンゼーに対していかなる対応をとるのか。

     

     

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    韓国の合計特殊出生率が、低下記録を更新し続けている。23年は「0.72」と世界ワースト記録を塗り替えた。韓国統計局によると、24年は「0.68」へさらなる低下が見込まれるという。23年12月の記者会見で公表した。

     

    韓国は、世界で最初に「消える国」とまで酷評されている。若い女性に「結婚願望」がないことが、大きな問題として指摘されている。さらに、結婚しても「子どもは要らない」という認識が広く共有されるという事態だ。韓国の未来が閉塞状態であるも影響している。

     

    こうした結果、働き手の中心となる15〜64歳の生産年齢人口は、72年に1658万人となる。22年から約55%減少する。人口を年齢順に並べた中央値を示す中位数年齢は、22年の44.9歳から72年には63.4歳と超高齢化が進む。韓国が、世界で最初に「消える国」と言われるのは、決して誇張したものではない。

     

    韓国の合計特殊出生率は、15年まで1.1〜1.3の間で横ばいを保った。それが、16年になって底が割れたように急落が始まった。18年に1を下回り、23年の0.72まで8年連続で低下している。生まれてくる子供の数は、8年間でほぼ半減状態である。この経緯をみると、日本も他人事ではなくなる。現在の日本の合計特殊出生率は1.26(22年)である。だが、韓国と同様にこの段階から「底割れ状態」が起こらないとは限らないのだ。日本は、韓国のケースを深く研究しなければならない。

     

    『中央日報』(2月28日付)は、「出生率0.72人で最下位の韓国、人口減少スピードさらに速まる」と題する記事を掲載した。

     

    韓国統計庁が28日に発表した「2023年出生・死亡統計(速報値)」によると、昨年の出生数は23万人で、前年の24万9200人より7.7%の1万9200人減少した。女性1人が生涯に産むと予想される平均出生数である合計特殊出生率は2022年の0.78人から昨年は0.72人に落ち込んだ。男女100組を基準として72人だけ子どもが生まれるという意味だ。専門家らは人口を維持するのに必要な出生率を2.1人とみる。

     

    (1)「少子化にブレーキはない。むしろアクセルをさらに強く踏み込む様相だ。前年比の出生数減少率は2021年が4.3%、2022年が4.4%だった。2016~2020年に記録した年間7~11%台の減少率をより低くなり少子化速度は鈍化するようだった。しかし昨年は7.7%を記録しそうした希望までへし折られた。さらにコロナ禍も収束しただけに「コロナ禍のため」という少子化原因説明ももはや説得力を失った形だ」

     

    ここ3~4年、パンデミックを出生減の理由にしてきた。だが、現在は説明力を失っている。「子どもを産みたくない」という風潮が余りにも大きくなっているからだ。


    (2)「2017年に始まった出生数減少と出生率低下が、すでに8年にわたり続いている。今年も続く可能性が大きい。昨年10-12月期だけ見れば合計特殊出生率は0.65人だった。四半期基準で出生率が0.6人台を記録したのは初めてだ。統計庁のイム・ヨンイル人口動向課長は「昨年の将来人口推計で24年は0.68人と予想した。数年前だけでも0.6人台までは落ちないだろうみていたが四半期単位で0.6人台が出てくるなど現実に近づいているようだ」と話した」

     

    大都市での合計特殊出生率は、すでに「0.6台」というゾッとする数字が珍しくなくなっている。人々の予想を上回る速度で「出生率低下」が始まっているのだ。

     

    (3)「首都圏集中とこれによる過度な競争、不動産価格上昇などが出生数減少の主要因に挙げられる。実際に大都市の出生率が低かった。昨年、ソウルの出生率は0.55人で、前年の0.59人より0.04人下落した。釜山(プサン)が0.66人、仁川(インチョン)が0.69人などと続いた。合計特殊出生率が1人を超えていた世宗(セジョン)まで0.97人に落ちた。もう全国の市・道のうち出生率が1人を超える所は1カ所もなくなった」

     

    ソウル一極集中の是正もテーマになる。尹大統領は2月13日、韓国の現状を「コート全体をまともに使えないサッカー」と例えた。首都圏への人口集中が少子化の原因だと断じ、税制支援などを通じて地方に企業を移転し、社会インフラを整える戦略を示した。政府の直接支援だけでなく、企業を通じた社会づくりも重視する。出産支援や育休取得に積極的な企業への税制優遇を検討する。従業員の子育てを支援する企業を評価する社会の雰囲気を醸成することを狙う。

     

    (4)「人口ショック」は避けられない現実として近づいた。昨年末の韓国の人口は5132万5000人だ。昨年1年間に生まれた子どもは全人口の0.4%水準にすぎない。年間100万人ずつ生まれたベビーブーマー世代が、高齢層に入るなど高齢化の速度は速い。少子化が続いたため、新たに生まれる世代の扶養義務が急速に高まっている」

     

    韓国は、「国が消える」騒ぎまで起こっている以上、あらゆるタブーに挑戦する気構えで対応するほかない。地方経済を立直し、人口最適配置の構図が不可欠になっている。

     

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    TSMC熊本工場が布石

    九州で設備投資ブームへ

    世界で激しい陣取り合戦

    韓国半導体は迷子になる

     

    世の中の巡り合わせは、不思議なものである。好循環が始まる段階になると、予想もしなかったことが同時に押し寄せてくる。現在の日本経済は、こうした予期せざる「幸運」が重なり合っている。だが、悪循環過程へ嵌まり込むと、全てが逆風にさらされる。日本経済は、この両過程を経験しつつある。

     

    日本半導体は、1980年代半ばに世界シェア50%強を握る「絶対王者」であった。それが、日米半導体摩擦に巻き込まれこと。バブル経済が、崩壊して企業体力の衰弱と急激な円高に翻弄されたこと。こうした事情によって、現在の日本半導体シェアは、10%にとどまっている。だが、米中対立という国際情勢の激変によって、日本半導体が不可欠な位置を占めるようになった。日本半導体への逆風は、一挙に順風へ変わったのだ。半導体が、国際戦略製品であることを裏付けている。

     

    日本半導体が、1980年代半ばに世界シェア50%強を握れたのは、半導体設備・半導体素材・半導体製品において一貫生産体制を確立していたからだ。半導体製品のシェアは、その後に急落したものの半導体設備や半導体素材は国際競争力を維持している。これが、半導体製品復活への手がかりになった。半導体基幹部分が健在であることが、半導体製品でも復活を早める大きな理由になっている。「腐っても鯛」なのだ。

     

    TSMC熊本工場が布石

    台湾の半導体企業TSMC(台湾積体電路製造)の熊本第1工場が2月24日、開所式を行った。引き続き第2工場建設計画を発表した。24年中に工事へ着手し、27年末に操業開始予定である。

     

    日本政府は、引き続き財政支援計画を発表した。第1工場に最大4760億円を補助しているが、第2工場は約7300億円を支援する。両工場で、財政支援は1兆2060億円に達する。これだけの巨額支援は、無条件で出されている訳でない。次のような条件がTSMCへ付けられている。

    1)10年間は撤収しない。

    2)製造装置と素材の半分以上は日本国内で調達する。

    3)半導体供給が難しい状況でも増産する。

     

    前記の3条件をみると一見して、TSMCに負担となるような項目はない。

    1)10年間撤収しないは、補助金受領の単なる条件である。TSMCが巨額投資して撤収する理由がないからだ。そのくらいの判断なら、最初から工場を建設しまい。

    2)日本で製造装置と素材の購入は不可欠である。これも、TSMCにとって負担ではない。日本から購入しなければ、操業できないからだ。

    3)が、実は「意味深」である。「半導体供給が難しい状況でも増産する」とは、具体的にどのような事態を想定しているのか。天変地異が起これば、操業継続は不可能となる。これは当たり前で、TSMCへ強制できる話でない。となると、具体的にどのような事態を想定しているのか。この点が、問題のポイントになる。

     

    TSMCは、熊本第1工場で24年10〜12月期の量産開始を目指し、回路線幅12〜28ナノ(10億分の1メートル)の半導体生産を計画する。28ナノメートルの半導体は旧世代(成熟品)とされている。自動車や家電などで大量に使用されている半導体だ。第2工場では27年末に国内最先端の回路線幅6ナノメートルなどの半導体を製造する予定である。つまり、熊本第1・第2工場は6ナノ~28ナノ半導体を生産するが、成熟品半導体も製造するのだ。ここが、重要な意味を持っている。

     

    成熟品半導体は、中国が世界シェア3割を狙っているとみられている。先端半導体は、米国の輸出規制によって製造が不可能であることから、中国は成熟品半導体で世界供給を左右する重要な位置を狙っていると推測されている。これが現実化すると、中国が外交手段として半導体供給制限をちらつかせ、「パンデミック下」の半導体不足と同じ事態が起こり兼ねなくなる。これは、西側諸国にとって悪夢の再来である。日台連合によって、日本が成熟品半導体の世界供給基地になる以外、先に経験したような混乱を防ぐ道はない。

     

    この点が、極めて重要である。世界半導体業界団体SEMIは、世界の23年半導体装置売上高が、前年比6.1%減の1010億ドルと試算している。このように、世界の半導体企業が設備投資を控えていたのだ。一方、23年の中国半導体装置輸入額は、前年比14%増の約400億ドル(約6兆円)にも達する。中国が、世界半導体製造装置の4割を輸入したのだ。『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2月27日付)が報じた。

     

    中国が、旧世代半導体で世界の主要生産基地を目指していることは確実である。これが、西側諸国にとって脅威になるのは、既に経験済みである。日本が、台湾と組んで中国のシェア上昇を阻止することで、世界の旧世代半導体の安定供給を保証するのだ。(つづく)

     

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    https://www.mag2.com/m/0001684526

     

     

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    これまで、「アップルカー」へ大きな期待が掛っていた。だが、EV(電気自動車)の将来性は明るくないことから撤退することを決定した。代わって、経営資源はAI(人工知能)開発へ向けることになった。アップルが、EV開発を放棄したのはEVの将来性がバラ色でないことに気づいたこともあろう。

     

    ブルームバーグ通信は21年、アップルが自動運転EVを25年にも発売する可能性があると報じていた。その後は、開発の遅れをたびたび報じており、24年1月には発売が早くとも28年になると伝えた。搭載する技術も高度な自動運転ではなく、高速道路での運転支援などにとどまると報じていた。以上のように、「アップルカー」と銘打って発売できるEVが開発できなかったことが、撤退理由であろう。

     

    『ブルームバーグ』(2月28日付)は、「EVよりAI、決断下したアップル-経営資源集中し巻き返し図る」と題する記事を掲載した。

     

    アップルは自動運転車の開発を中止することで、巨額になるとみられていた潜在的な売上高と、ある幹部が「究極のモバイルデバイス」と呼んだプロダクトを販売するという夢をあきらめる。

     

    (1)「アップルが今望んでいるのは、生成人工知能(AI)や複合現実(MR)ヘッドセットなど他の大きなプロジェクトがそうした収益機会の逸失という穴を埋めることだ。アップルは2月27日、電気自動車(EV)を開発するという10年がかりの取り組みを断念すると社員に伝え、スタッフの一部をAI向けに配置転換した。この決定は、今後の事業方針を巡り最高幹部と取締役会が数カ月にわたり会議を重ねた後に下された。ジェフ・ウィリアムズ最高執行責任者(COO)とプロジェクト責任者のケビン・リンチ氏は15分足らずのミーティングで約2000人のチームにこのニュースを伝えた」

     

    アップルは、自動車を完全に自律走行させるのに十分強力でエネルギー効率の高いAIシステムを構築しようと考えていた。それが、技術的に不可能であることを認識したようだ。ただ、AIシステム開発に膨大なコストを掛けてきたので、AIの技術的蓄積を幅広いAI部門へシフトさせ、収益化を図るものとみられる。

     

    (2)「アップルの結論はこうだ。同社の未来は、自動運転機能を搭載した10万ドル(約1500万円)のEVを売ることにかかっているわけではない。その代わり、オープンAIやグーグルのチャットボットが消費者や投資家の想像力をかき立てる中で、生成AI業界のライバルに追い付くことに集中する。また、この方針転換によってアップルは、まだ発展途上の製品であるMR対応のゴーグル型端末「Vision Pro(ビジョン・プロ)」をメインストリームでヒットさせることに焦点を絞ることができるようにもなる」

     

    アップルはEV開発を中止して、MR対応のゴーグル型端末を軌道にのせる技術開発へ全力投入する。

     

    (3)「投資家やアナリストは、最近数カ月で危うさが増しているEV市場を避け得るアップルの決断を称賛。ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のアナリスト、アヌラグ・ラナ、アンドリュー・ジラード両氏は「AIおよび乗用車の収益源についての長期的な可能性を踏まえれば」生成AIに経営資源をシフトすることは正しい判断だと指摘した。ただ、アップルが成長持続に苦慮しているこの時期のこうした決定は、将来的な収入源を失うことも意味する。同社は前四半期、なんとか販売不振から脱したものの、今期は再び低迷すると警告。発売されたばかりのビジョン・プロは今後数年間、成長に大きく貢献しそうもない」

     

    世界的にEVへの夢がさめている。EVが世界的な過当競争に落ち込んでいる以上、「アップルカー」がアップルの特色を発揮できる技術的成果を得られなかったのだろう。他社並みのEV発売では、「アップルらしさ」に大きな傷がつくはずだ。

     

    (4)「乗用車を販売しても、利益率は小さいだろう。だが、売上高という点でその可能性は大きい。「アップルカー」は長い間期待され、消費者をよりしっかりとアップルのエコシステム(生態系)につなぎ留めることができた。米国でEV革命を主導したテスラは、昨年1000億ドル近い売上高を上げた。さらに、グーグルを傘下に置くアルファベットや中国のテクノロジー各社は、依然として自動車に力を注いでいる」

     

    アップルが、テスラ並みのEVを発売しても消費者の満足感は得られないであろう。二番煎じの「アップルカー」では、市場の評価を得ることはできないのだ。

     

    (5)「『プロジェクト・タイタン』として知られてきたアップルの10年にわたる乗用車への取り組みは、それ自体がAIへの挑戦だった。アップルは、自動車を完全に自律走行させるのに十分強力でエネルギー効率の高いAIシステムを構築しようと考えていた。同社は自動車チームの約3分の1を他部門に移す予定だ。一方、自律走行ハードウエアや車の内装・外装、車両エレクトロニクスに携わる数百人の従業員は、社内で新たな仕事を探す必要がある。仕事が見つからなければ解雇される。そして、一部の従業員はすでに解雇を通告されている」

     

    アップルカー開発自体が、AI化の流れに沿ってきた。だから、その技術開発蓄積は、そのままAI開発へつなげられる。

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    中国の消費者物価は、景気低迷を反映して4ヶ月連続、前年比マイナス状況が続いている。豚肉など激安状態だ。これに目を付けた香港市民は、買い物で隣接の深センへ殺到している。香港ドルは、米ドルに連動している。香港ドル高=人民元安というメリットも加わって、香港市民にとっては「ウハウハ」だが、香港の地元商店街は売上不振で苦しんでいる。 

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2月28日付)は、「中国で物価下落、香港住民が買い出し旅行で殺到」と題する記事を掲載した。 

    中国本土で物価の下落が続いている。これは香港で暮らす人々にとってはありがたいことだが、企業にとっては大きな問題だ。中国の1月の消費者物価指数は前年同月比0.8%下落し、ここ10年余りで最大の落ち込みとなった。

     

    (1)「香港では中国との境界を越えて深セン市を訪れ、コストコやサムズ・クラブなどの大型量販店で冷凍食品や安い家具を買い込む人が増えている。香港の企業は中国企業と価格で勝負できず、厳しさを痛感している。「今、街を歩くと、香港の小売業者が大きな苦境に陥っているのが分かる」。前香港財政官の曽俊華氏は最近、ソーシャルメディアにそう投稿した。香港の企業が感じている痛みは、エコノミストがこの1年おおむね議論してきた「中国のデフレは世界の他の地域にどう影響するか」という問いへの一つの答えだ」 

    中国のデフレが、一足早く香港を襲っている感じだ。香港市民は、隣接の深センで中国の物価安のメリットを享受している。反面、地元の香港は大きな影響を受けているのだ。 

    (2)「経済シンクタンク、ミルケン研究所のチーフエコノミスト、ウィリアム・リー氏は、「この香港の話は、中国に近い国にも当てはまる。サプライチェーン(供給網)がはるかに小さいからだ」と話す。中国と近隣諸国との貿易サプライチェーンの距離が短いということは、価格の変動が製品の長距離輸送に関わるさまざまな企業に吸収されず、より直接的に伝わるということだ。シティグループのアナリストは1月のメモで、東アジアの近隣諸国には中国に対して保護主義的な政策を課す選択肢はないと指摘した。中国は世界貿易において非常に大きな勢力なため、これらの国にとって中国の怒りを買うリスクは冒せない」 

    香港と深センの関係は、中国近隣国と中国との貿易関係に置き換えられる。中国の安い商品が、ベトナムなどの近隣国へ輸入されて経済へ大きな影響を与えるからだ。

     

    (3)「近隣諸国が、中国の価格下落に抵抗するのが難しいとすれば、中国との統合を進めたい親中派政府が運営する香港にとってはさらに困難だ。香港住民はある程度、米ドルの強さの恩恵を受けている。香港ドルは米ドルに連動しており、香港の事実上の中銀はこの2年、米連邦準備制度理事会(FRB)にならって利上げを続けてきた。一方、中国中銀は低迷する経済を刺激するため利下げを行っている。2021年末以降、中国人民元は香港ドルに対して11%以上下落している」 

    2021年末以降、中国人民元は香港ドルに対して11%以上も下落している。香港市民にとっては、香港ドル高のメリットを満喫できるのだ。だが、香港の購買力が深センへ流出していることで、香港経済には痛手である。 

    (4)「中国本土が提供するものを香港の住民が喜んで受け入れるようなことは、反政府デモに飲み込まれていた5年前には考えられないことのようにみえた。香港住民は当時、自分と同じ政治的立場の店を支援するため、立場ごとに色分けされた地図でそうした店を探し出し、中国本土とつながりがあるとみられる店は避けていた。しかし、新型コロナウイルス対策で長期間にわたり香港からの移動が制限されてことや、不安を感じた住民の節約志向のおかげもあって深センの魅力が高まった。「香港と深センの経済的な相互依存性を示す生活様式の再調整が起きている」と香港城市大学のエドマンド・チェン氏(政治社会学)は話す」 

    香港民主派は、香港本土派を忌避している。買い物も本土派の店を避けてきたほど。だが、中国の物価安と香港ドル高を利用して、香港市民が深センへ買い物に行くことで香港民主派は焦っている。

     

    (5)「香港入境当局のデータによると、昨年は2月にコロナ関連の移動制限が全面的に撤廃されたあと、香港住民の中国入境は5000万回を超えた。まだコロナ前の水準を下回っているが、香港住民の購買力が一因となり、深センの昨年の小売売上高は7.8%増と中国本土の都市で有数の伸びとなった。経済団体が昨年実施した調査によると、2024年に売上高の増加を予想していると回答した香港企業は37%にとどまった。売上高がコロナ前の水準を超えると予想している企業は3分の1に満たなかった」 

    23年の香港市民の中国入境は、5000万回(5000万人)に及んでいる。香港市民数は750万人(2023年)だ。実に、一人当たり6.7回も「入境」している計算になる。買い物客や旅行客がいかに多いかを物語っている。 

    (6)「コーシー・リーさん(39)は定期的に深センに通う多くの香港住民の一人で、利益も上げている。副業として深センから商品を運び始めたのは昨年8月で、今では週に4回、深センを訪れ、トヨタ製のミニバンに冷凍ハンバーガーや魚の内臓スープ、パナソニックの食器洗浄機、トイレットペーパーを積み込む。リーさんは顧客から注文を取り、一律の手数料を請求している。「私の客の80%がわずかなお金も無駄にしたくない主婦だ」とリーさんは話した」 

    週4回、ミニバンを使って「買い物ビジネス」を始めている人まで現れている。買い物が商売になるほど、利益が保証されていることを物語っている。

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