勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    中国では、一部の小売業者が低価格を売りに積極的にシェアを拡大し、大きな利益を手にしている。こうした経営戦略が、厳しい価格競争を一段と激化させており、中国が慢性的なデフレに陥るのではないかとの懸念が高まっている。いわゆる「日本化」現象である。不動産バブル崩壊後の不安心理が招く沈滞ムードである。

     

    『ロイター』(6月15日付)は、「中国で安売り店が躍進、近づく『日本型デフレ』の足音」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国の安売り業者は、不動産危機や高い失業率、暗い経済見通しで消費心理が落ち込む中、何とか需要を掘り起こそうとコーヒーから自動車、衣料品に至るまで、あらゆるものを値下げしている。低価格帯の通販「拼多多(ピンドゥオドゥオ)」のような企業は、電子商取引大手アリババなどライバルに対抗するために値下げに踏み切り、売上高が増加した。しかしエコノミストは、こうした戦略が成功したことによって、中国でも消費者の間に日本型のデフレマインドが定着し、慢性化するのではないかと危惧している」

     

    中国の「消費者心理指数」は、22年4月に好不況ラインの100を割って以来、80台という低空飛行を続けている。低価格帯の商品が売れる背景だ。

     

    (2)「小売業者は何よりも価格で勝負するため、商品の納入業者は厳しいコスト圧縮を強いられ、利益率が圧迫される。その結果、賃金の伸びが鈍ったり、単発で仕事を請け負う低賃金の「ギグワーカー」(注:インターネット上で仕事を探す労働者)への依存度が高まったりして家計の需要が打撃を受ける。豪メルボルンにあるモナシュ大学のヘリン・シ教授(経済学)は、「この状況が続けば中国は悪循環に陥るかもしれない。付加価値の低い消費がデフレを引き起こし、利益率が悪化して賃金が下がり、それがさらに消費を押し下げるという負の連鎖だ」と警鐘を鳴らす」

     

    大都市では、若者の「ギグワーカー」が急増している。劣悪な労働条件で休日なしという状況だ。「生きていくため」に職を選ぶ余地がない。中国は、下線部のような悪循環に嵌まっている。この現実を習近平氏が理解せず、「長征」(1934~35年の中国共産党敗走)の苦難再現とみているほど。現状を乗切れば、光明が訪れると信じているのだ。

     

     

    (3)「安売り業者は、直近の決算シーズンで利益が市場予想を上回り、競合他社を凌駕した。ピンドゥオドゥオを運営するPDDホールディングスは131%の増収を記録。フードデリバリーアプリの美団は25%、ディスカウントストアの名創と瑞幸咖啡(ラッキンコーヒー)もそれぞれ26%、42%の増収だった」

     

    安売り業者の繁栄は、「悪貨が良貨を駆逐する」の例のように、中国経済全体を沈滞状態へ引き込む「罠」である。日本も、この安売り競争に巻き込まれた。

     

    (4)「消費者心理がどん底に近い環境では、価格こそが王様だ。中国の自動車メーカーは国内需要の低迷を受けて、ほぼ2年にわたり価格競争を繰り広げており、一部のディーラーや自動車金融会社はこの2カ月間に頭金なし、さらには金利ゼロなどのローンプログラムを開始した。米スターバックスは、「安売り業者間の熾烈な競争」(ラクスマン・ナラシムハン最高経営責任者)のせいで第1・四半期に中国での売上高が8%減少。この数カ月で割引クーポンの利用を増やし、価格をラッキンコーヒーに接近させている」

     

    下線部は、初めて明かされた事実である。自動車販売で、「頭金なし・金利ゼロ」の販売が始まっている。日本でも、こういうケースがあった。苦い思い出である。

     

    (5)「中国欧州国際ビジネススクール(上海)のアルバート・フー教授(経済学)は「長期的には価格競争によってさまざまな産業で弱小プレーヤーが淘汰され、生き残った企業は価格を引き上げてサプライチェーンに一息つかせることができるようになるかもしれない」と話した。ただ、こうした展開が可能になるのは、価格競争が引き起こす市場からの業者撤退を補うだけの雇用と所得が他の産業で創出された場合に限られるとくぎを刺す。フー氏は、「デフレは深刻な問題であり、日本は30年以上もこれと闘ってきた。重要なのは賃金の伸びだ」と強調した」

     

    価格競争は、決して悪いことではない。ただ、同時に賃金も上がるという前提がつく。本当の競争は、商品に付加価値を高めそれに相応しい値段で売ることだ。賃金を上げないでの安売り競争は、自滅に繋がる。中国は、この状況へ向っている。

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    ロシアのプーチン大統領が5月16日、習中国国家主席と会談した。国際会議に合わせた会談を含めれば、この両氏の顔合わせは40回以上にのぼるという。そして、今回の会談が世界へもたらす影響は、かつてなく大きく深刻だという論評まで飛び出している。 

    現秩序を守ろうとする西側陣営(米国と米同盟国)と、それを崩そうとする中ロ枢軸の抜き差しならぬ対立が始まったとしている。だが、こうした悲観論を180度否定する分析も出ている。真相は全く逆であり、「恋い焦がれるロシア」と「深情けを迷惑がる中国」という構図である。 

    『時事通信オンライン』(6月13日付)は、「中国とロシアの冷めた連帯、ウクライナ侵攻前と様変わり」と題する記事を掲載した。 

    ロシアのプーチン大統領が中国を公式訪問し、中ロの緊密な関係を誇示した。しかし、共同声明などを見ると、ウクライナ侵攻直前に同大統領が訪中した時の熱気は既になく、中国側は対米共闘のため、冷めた連帯をやむを得ず維持しているという雰囲気だ

     

    (1)「プーチン大統領は5月16日から17日にかけて訪中し、習近平国家主席との共同声明を発表した。ウクライナ戦争を巡って中ロが米国と対立する中、国交75周年を祝う文書だったが、2022年2月の北京冬季五輪を機にプーチン大統領が来訪した際の共同声明と比べると、次のような違いがある」 

    中ロ会談を分析するには、両国の声明を比較することでヒントが得られる。 

    (2)「両国の声明を分析すると、次のような特色が浮かび上がる。

    1)「両国の友好に限りはなく、協力に立ち入り禁止区域はない」という文言がない。昨年3月に習主席が訪ロした時に発表した共同声明で消え、今回も復活しなかった。

    2)中ロ関係について「同盟せず」と明記された。昨年の共同声明に盛り込まれ、今回もそれを引き継いだ。

    3)中ロそれぞれの「民主主義」を正当化する主張がない。22年の共同声明は、欧米流の民主主義押し付けに対する反論を詳述。昨年の共同声明も少し触れたが、今回は消えた。

    4)大群衆の民主化運動で政権を倒す「カラー革命」反対の記述がない。22年の共同声明は1回、昨年の共同声明は2回言及していた」 

    2)の両国が「同盟せず」は、中国側の主張であろう。中国国内では、歴史的にロシアへの警戒観が極めて強い。中国国内には、ウクライナ侵攻したロシアと「同盟」を結ぶなど頭から否定する見解が多数だ。

     

    (3)「5)昨年の共同声明と同様、北大西洋条約機構(NATO)拡大への反対がない。ロシア側は今回の共同声明で、台湾独立の動きに反対するだけでなく、中国による「国家統一実現」の措置にまで支持を表明したのに、欧州におけるNATOの動きに対しては「重大な関心」が示されただけだった」 

    中国は、NATOを敵に回したくないのだろう。中国の台湾侵攻という事態になれば、NATO介入ありうる。習氏にとっては、自己の立場を窮地に追込むからだ。 

    (4)「22年の共同声明は政策だけでなく、イデオロギー面でも中ロの連帯を強調したが、そうした一心同体的な表現はすっかり薄くなった。政策面でも22年はウクライナ侵攻直前だったロシアに対する中国の配慮が目立ったが、今回は逆になった。ロシア側には、ウクライナ戦争が泥沼化して、中国から支援を得る必要性が増したという事情があるとみられる」 

    中国は、苦境に立つロシアが負担になっている。米中対立が激化した理由の一つは、ウクライナ侵攻が災いしている。

     

    (5)「ロシア産天然ガスをモンゴル経由で中国に送るパイプライン「シベリアの力2」建設プロジェクトに関する具体的発表は今回もなかった。ロシア側は中国との話し合いについて「順調だ」と言い続けているものの、実際には難航しているようだ。ロシアの天然ガス事業を独占している国営企業ガスプロムのミレル最高経営責任者(CEO)はプーチン大統領訪中に同行すらしなかった。話が進む見込みがなかったからだろう」 

    中国は、パイプライン「シベリアの力2」の供給するガス価格の大幅値引きを要求している。ロシアが、これに難色を示しており、プロジェクトは契約できずにいる。 

    (6)「トップセールスに熱心なプーチン大統領は北京のほか、東北地方のハルビン(黒竜江省)にも赴いて、中ロ博覧会の開幕式に出席した。しかし、ハルビンへ同行した中国側指導者は習主席ではなく、韓正国家副主席だった。韓氏は副大統領に当たるポストにあるとはいえ、共産党の最高指導部である政治局常務委員会からは既に引退しており、重要な問題について実質的な話ができる立場にはない。習主席は昨年4月、マクロン仏大統領と北京で会談した後、華南地方の広州(広東省)に同行して、そこで再び会談している。北京からハルビンは広州よりはるかに近いのに、プーチン大統領はマクロン大統領と同等の扱いを受けなかった」 

    習氏は、フランス大統領マクロン氏を国賓として招き2日間もつきっきりで接待した。プーチン氏のハルビンへの立ち寄りには同行せず、接待に差を付けている。

     

    (7)「中国メディアでも、ロシアと距離を置く論説が出ている。党機関紙『人民日報』系の有力紙『環球時報』の前編集長でオピニオンリーダーとして知られる胡錫進氏は5月16日、SNSを通じて、ウクライナ戦争で中国が中立であることを強調する論評を発表。ロシアは中国の友人であり、戦略的パートナーだとしながらも、中ロ関係が中国と西側の関係に対して排他的になってならないと主張し、「中国は一貫して、外交戦略のバランスを実現するために努力している」と指摘した」 

    中国メディアは、「中ロ関係が中国と西側の関係に対して排他的になってならない」と主張するほどだ。中国にとって、ウクライナ侵攻が迷惑であることを示唆している。

     

     

     

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    日米で政策金利操作を巡って、神経戦が繰り広げられる気配だ。日銀の植田和男総裁は6月14日、金融政策決定会合後に記者会見し、7月の次回会合で政策金利を引き上げる可能性は「当然あり得る」と言及した。外国為替市場の円安進行には、「物価の上振れ要因であり、十分注視している」とけん制したのだ。『共同通信』(6月14日付)が報じた。 

    日銀が、国債の購入額を減らすと長期金利が上昇する可能性が強まる。固定型の住宅ローンや企業の借り入れの負担が増え、経済に打撃となることが懸念される。ただ、追加利上げに踏み切るかどうかは、経済や物価の情勢次第とした。植田氏は、過去の記者会見で円安に「無関心」なイメージを与えただけに、円相場を意識した発言になった。 

    円相場は、日米金利差が大きく影響していると指摘されている。現状では「5.5%ポイント」も開いていることから、円キャリートレードと言われる「円を借りて他通貨や商品へ投資する」スタイルが定着している。これを覆すには、日米金利差の縮小が不可欠だ。その条件が、日米金融当局の金利操作で整えば円安相場へ影響を及ぼせる。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(6月14日付)は、「FRB、利下げ前に金利押し下げも」と題する記事を掲載した。 

    米連邦準備制度理事会(FRB)は、経済に働きかける方法が一つしかないわけではない。近いうちに、より目立たない手段を使って金利を押し下げ始める可能性がある。それでも企業や家計には確実に影響が及ぶだろう。 

    (1)「FRBが短期金利を最も直接的にコントロールする方法は、銀行間で資金を貸借する際の金利であるフェデラルファンド金利(FF金利)の誘導目標を操作することだ。経済全般で適用される金利は、他にもたくさんあり、それらは全て、FRBの短期的・長期的な政策見通しによる影響を間接的に受ける。FRBはFF金利の誘導目標を操作しなくても、今後の方針を示すことで経済全般の金利を動かすことが可能であり、実際にそうしていることが多い」 

    FRBは、これまで金融市場でのFF金利を操作して、政策金利を動かす例が多くみられた。今回も政策金利を引下げる前にFFレートの引き下げを行い誘導する可能性を指摘している。そうなれば、FRBの金利操作の自由度がぐっと上がるとしている。

     

    (2)「ある意味、このプロセスはすでに始まっている。この数週間に発表された米経済指標の一部が低調だった(顕著な例外は7日に発表された堅調な雇用統計)ことで、10年物の米国債利回りはFRBが米東部時間12日午後2時(日本時間13日午前3時)に政策声明を発表する直前に4.25%へ低下した4月下旬には4.7%を付けていた。FRBが年内1回のみの利下げを示唆する高官らの予測を発表すると、同日遅くに上昇に転じ、4.33%に到達。そして13日朝に軟調な卸売物価指数(PPI)が発表されると、4.27%程度まで低下した。この利回りが動くと、実体経済における借り手の状況に即座に影響が及ぶ」 

    すでに、FRBの金利操作が始まっている。10年物の米国債利回りは、4月下旬の4.7%から6月13日朝に軟調な卸売物価指数(PPI)が発表されると、4.27%程度まで低下した。政策金利が動く前に、10年物の米国債利回りは低下に転じている。 

    (3)「重要なことに、FRB高官らが今後の利下げについて予測を立てたのは、市場予想を下回る5月の消費者物価指数(CPI)が発表される前のことだった。CPIの発表を受けて予測を修正する機会があったはずなのに、そうしなかったのだ。5月のCPIは、年初には停滞していたインフレ率が着実に低下しつつあることを改めて裏付けた。変動の大きい食品とエネルギーを除くコアCPIの前年同月比は、15カ月連続で横ばいか低下している」

     

    CPI上昇率(総合)は、2022年6月の9.%から23年6月に3.%まで劇的に低下し、その後の1年間は横ばい圏内で推移している。振れ幅の大きいエネルギーと食品を除いたコア指数では、5月は前年同月比の伸び率が3.%となった。市場関係者は3.%予想だった。コア指数は、総合指数とは別に着実に低下しており「戻り現象」は一度も起こっていない。これは、大きな成果である。 

    (4)「FRBのパウエル議長は12日の記者会見で、「インフレ率が持続的に2%に向かっているという確信を強めるには、より多くの良好なデータを確認する必要がある」と述べた。そのようなデータは、今後2回の月次CPI統計でさらに明らかになる可能性があり、そうなればFRBは利下げに前向きな姿勢を示し始めるだろう。最も注目すべきは、7月30・31日に開かれる次回の連邦公開市場委員会(FOMC)だ。FRBの足元の景気認識を示す政策声明が発表される。もちろん、パウエル氏の記者会見もある。FRBはこれらの場を利用して、インフレが軟化しているとの確信が強まったと明示するかもれない」 

    次回の連邦公開市場委員会(7月30・31日)で、インフレ軟化の見通しが語られる可能性も出てきた。 

    (5)「現実にはFRBの政策変更は、少なくともベン・バーナンキ議長の時代以降、実際に行われる頃には形式的なものとなっていることがよくある。そのかなり前に地ならしが済んでいるからだ。今回もそうなる可能性が高い」 

    下線のように、政策利下げがFRBによる市場金利誘導によって先行される可能性が出てきた。「年1回利下げ」という見方を鵜呑みにしていると危険である。

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    中国の多くの地域に猛暑注意報が発令された6月12日(現地時間)、一部地域(華北平原)の地表温度が70度を超えた。これは靴を履かないと火傷をする水準で、昼の最高気温が45度を超えたところもあった。この「炎熱地獄」は、2070年以降に常態化するとの予測が、米マサチューセッツ工科大学の研究チームによって2018年、発表されていたのである。

     

    華北平原(北京など)が、気候変動と集中灌漑によって、生命に危険を及ぼすほどの猛暑に脅かされるとの研究が公開されていたのだ。その前哨戦が、すでに始まったと言うべきであろう。私のメルマガ552号で取り上げたばかりである。

    『中央日報』(6月14日付)は、「靴を履かないと火傷する水準、燃え上がる中国の悲鳴」と題する記事を掲載した。

     

    中国気象局は13日、微博を通じて前日午後、河北省の中南部や山東省、河南省、陝西省南部、安徽省北部などの地表気温が60度を上回り、一部は70度を超えたと明らかにした。気象局は「数日間地表温度がほぼ同様で、またはさらに上がる可能性がある」とし「市民には、身長が小さく比較的に地表温度にさらに影響を受ける子供やペットを連れて出かけることを控えてほしい」と助言した。

     

    (1)「中国気象当局が普段、予報する気温は地表面から1.5~2.0メートル上の観測機器で測定した大気温度だが、地表温度は遮蔽物のない状態で測定した地表面の温度をいう。地表温度は夏、特に午後に急激に上がり、一般的な気温との差が大きい。河南省の省都である鄭州は前日、最高気温が45.4度を記録した。河北省や河南省、山東省でも前日の最高気温が40度を超えた。河北省と山東省の20余りの気象観測所は1~10日、過去最高気温を記録した」

     

    河北省や河南省、山東省で最高気温(地表面から1.5~2.0メートル上)40度を超えた。地表面では70度を超えている。この事態は、決して一時的な異常気温ではない。華北平原は、中国最大の沖積平野である。およそ4億人の人口を擁する密度の高い地域であるが、同時に灌漑農業が盛んなエリアである。とりわけ、集中灌漑は夏場の温度と湿度を上昇させて、より厳しい熱波をもたらすのだ。これは、前記の米マサチューセッツ工科大学の研究チームによって2018年、発表されていた事実である。この不可避的な現象が、華北平原に現れたのだ。私の「メルマガメルマガ552号」(2024年3月25日)で予告した異常気温が、わずか3ヶ月足らずで現実になった。改めて、米マサチューセッツ工科大学の研究チームに敬意を表したい。

     

    華北高原における猛暑のリスクの存在は、温室効果ガスの排出量が大幅に削減されないかぎり、2070年から2100年までの間に、湿球温度35度以上の猛暑に見舞われる可能性を示唆している。気候変動と灌漑との複合的影響によって、湿球温度の上昇幅は摂氏3.9度で、灌漑による上昇幅(0.5度)と気候変動による上昇幅(2.9度)とを足した数値よりも高くなるとしている。中国は、過去の灌漑農業の弊害がこれから襲ってくる巡り合わせになった。

     

    WHO(世界保健機関も、2030年から2050年までの間に、熱中症による年間死亡者数が3万8000人規模になると予測し、気候変動がもたらす健康影響にも注意を呼びかけている。中国は、こういう現実と向かい会わなければならない。

     

    (2)「ある中国のネットユーザーは「一般的な暑さではない」として、「午後2時に車を運転すれば、ヘアドライヤー20台の熱風が顔にあたる気分」と話した。山東や河南省などの東部地域は、深刻な干ばつで農作物まで脅かされている。山東省沂蒙山地域では11日、村の住民たちが「草帽子」を頭にかぶったまま祈雨祭を行ったと地元メディアは伝えた。ある住民は、長い間雨が降らず農作物が水不足で死に、井戸は枯れてしまい、畑は亀の背中のように割れたと訴えた」

     

    ネットユーザーによって、今回の暑さが説明されている。ヘアドライヤーを、20台も顔に吹き付けたようなものとしている。呼吸もできない状況であろう。

     

    (3)「現地政府は、条件が整えば人工降雨を実施すると明らかにした。中国国家気候センター関係者は、新華社通信とのインタビューで「地球温暖化が深刻になったことにより、最近数年間、中国高温天気の初出現日が繰り上げられ、発生頻度もまた増加した」と話した。ある気象専門家は地元メディアを通じて「全地球的な温暖化の中で大気循環異常現象が高温現象の直接的な原因」と分析した」

     

    中国の気象専門家は、集中的灌漑の副作用とは言っていない。世界的異常気温の結果としている。現実は、中国の灌漑農業がもたらしたものだ。

     

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    韓国は、13日から始まったイタリアでのG7サミットに招待されなかった。自称「G8国」してきただけに、「カナダを外して韓国をメンバーに入れろ」との主張まで出ている。G7が、欧米主要国で構成されているが、韓国は半導体主要国のメンツにかけても出席したいのであろう。 

    『中央日報』(6月13日付)は、「『カナダ外してでも韓国入れろ』、拡大する『韓国G7追加』議論」と題する記事を掲載した。 

    韓国のG7(主要7カ国)加入議論が拡散している。G7は中国やロシアをはじめ、北朝鮮・イランなどが急激にブロック化して国連など多くの国際機構が無力化している状況で事実上唯一国際秩序に対する方向性を提示している多国間協議体と評価されている。

     

    (1)「米戦略国際問題研究所(CSIS)は12日(現地時間)に公開した報告書で「G7を韓国とオーストラリアを含んだG9に拡大するべき」と提言した。両国を追加したG9体制への拡大を提案した理由は、G7の影響力の弱まりと欧州に偏重された現体制の限界と関連がある。1975年にカナダ(1976年加入)を除くG6でスタートしたこれらの国内総生産(GDP)は、全世界の60%を占めた。先進国首脳の年次会議は言葉どおり「ゲームのルール」になった。しかし、G7のGDP占有率は1992年66.9%にピークを迎えた後、43.4%に減少した。1970年代に3%だった中国のGDP占有率が18%に急増したためだ」 

    G7加盟国の増減問題は、全加盟国の賛成が前提である。かつて、トランプ氏が米大統領当時、韓国をG7に加えると発言したが立ち消えになった。全加盟国の賛成がなかったからだ。韓国は、メンツで加盟したいとしているが、左派が政権を取ったときの外交姿勢が不明である。韓国が中ロ擁護論を主張すると、「全員一致の原則」が崩れるのだ。韓国外交が成熟しない限り、G7参加論は現実味を持たないだろう。最大の鍵は、日韓関係が安定しているかどうかだ。 

    (2)「このため中国と競っている米国は未来の経済・安全保障を左右するAI(人工知能)と最先端半導体技術を保有した韓国や台湾などアジアのパートナーが切実になったが、G7は依然と1970年代経済の中心だった欧州に集中している。欧州の強い影響で欧州委員会委員長(1977年)と欧州理事会議長(2010年)まで準会員国として参加し、現在G7の加盟国9カ国中6カ国を欧州が占めている。CSISはこれに対して「G7でアジアを代表する国はひとつ(日本)だけで開発途上国の声も排除されている」とし「このような構造ではグローバルガバナンスを先導できない」と指摘した」 

    世界の安全保障論から言えば、EU首脳が参加することは必要であろう。EU参加によって、ロシアによるウクライナ侵攻という高度の政治外交問題で対処できるからだ。韓国に、地球儀的外交センスがあるとは思えないのだ。 

    (3)「特に韓国については「新興技術サプライチェーンを保護するために重要な役割を果たしている」とし「一部G7加盟国よりも優秀な成果を示している」と強調した。CSISは引き続き韓国とオーストラリアの新規加盟国加入のために2席を占めるEU関連機構の会員資格を統合するよう提案した。従来の欧州国の一部を排除できないなら、EUが「席」一つを空けろという論理だ」 

    韓国は、半導体という視点から世界を眺めている。ならば、台湾もG7のメンバーになれるはずである。外交センスの有無が、G7参加国には欠かせないのだ。

     

    (4)「G7に韓国を追加しようという議論が大統領選挙を控えた米国で超党派的に出てきていることも注目すべき点に挙げられる。韓国のG7加入議論は2020年5月当時トランプ米国大統領が韓国をはじめとするオーストラリア、インド、ロシアなど4カ国を追加したG11体制への転換に言及して始まった。しかし関連議論はバイデン政府に入って事実上中断され、昨年、広島サミットを控えて韓国の追加の可能性が提起された時でさえ、国務省は「加盟国の変化に関連する議論は分からない」といって線を引いた」 

    韓国が、G7に参加するには世界安定への貢献が問われる。朝鮮半島から出られない韓国外交が、世界問題を議論する資格があると思えないのだ。 

    (5)「トランプ再執権時、大統領補佐官候補に挙げられているエルブリッジ・コルビー氏(前国防総省戦略・戦力開発担当副次官補)も中央日報のインタビューで「アジアが(米国安全保障戦略の)核心なので(欧州加盟国を)アジア国家に変える必要がある」とし「(欧州説得のために)必要な場合、カナダを外して韓国を加盟国に入れることも支持する」と話した」。 

    カナダは、「ファイブ・アイズ」メンバー(米・英・カナダ・オーストラリア・ニュージーランド)である。第二次世界大戦後の極秘情報交換メンバー国だ。米英が、カナダを外すことを承認するはずがない。「兄弟分」の関係にあるからだ。こういう現実的な配慮もなく、カナダを外せという議論は余りにも粗野である。

     

     

     

     

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