米国トランプ大統領の外交政策は、行き当たりばったりとの批判がつきまとっている。だが、ベネズエラ急襲やキューバ懐柔に続くイラン攻撃で、親中国国家を狙い撃ちしていることだ。これは昨年、米国がレアアース(希土類)で中国からしっぺ返しされたことへの「反撃」とみられる。とすれば、中国はレアアースで優位に立ったものの、親中国国家を次々に失う羽目に陥っているという構図だ。
『日本経済新聞 電子版』(3月10日付)は、「トランプ政権のイラン攻撃、親中国家に照準 対中優位性確保に陰の狙いか」と題する記事を掲載した。
トランプ米政権によるイラン攻撃は、対中国戦略の一環だとの見方が広がる。1月のベネズエラ攻撃から始まり、次にイラン、キューバと中国に近い国への攻勢に一気に乗り出した。経済・軍事で親中国家を制し、米国の優位性を確保する狙いが透ける。トランプ米大統領は9日、キューバについて「彼らが取引をするか、我々が(ベネズエラやイランと)同じように簡単に(攻撃を)するのかどちらかになる」と語った。反米政権を改めて米国に近づくことが要求の主眼にある。
(1)「米政権は1月、ベネズエラを攻撃してマドゥロ大統領を拘束し、親米政権への転換を促している。2026年に入って行動に出たベネズエラ、イラン、キューバはいずれも反米親中国家だ。米国に対抗するため中国と近い関係を築いてきた。政権の一連の行動は、中国に対して優位性を保つための戦略の一環といえる。政権に近い専門家によると、対中抑止を柱の一つに掲げた国家安全保障戦略を公表した25年12月ごろから本格的に動き始めたという」
トランプ氏が自ら唱えた「ドンロー主義」で、米国が西半球から中ロ勢力の一掃を掲げた。これは、米国の陽動作戦である。アジア太平洋を軽視するものでなかった。それどころか、「敵は本能寺」で中国の拡張主義を押し返す重要な一歩である。「反米チャンピオン」キューバが、石油攻めによって米国との交渉テーブルに着く所まで追い込まれている。中国にとっては、支持勢力の一端を失う事態だ。
(2)「保守系軍事専門家のマイケル・ウォーラー氏は「イラン攻撃は、共産主義・中国に対抗するトランプ氏の世界戦略を強力に推し進めるためのものだ」と指摘する。イラン、ベネズエラのいずれも産油国で、米国の行動は中国への打撃となった。イランの原油輸出先の9割を中国が占める。ベネズエラの輸出分と合わせると、中国の石油輸入の少なくとも15%を占める。両国の原油は米国などの制裁対象となっている。中国は、行き先を失った原油を割安価格で手に入れてきたが、米国の攻撃によって手に入りにくくなった。中国は25年、レアアース(希土類)の供給停止をちらつかせて米国との貿易交渉で譲歩を引き出した。トランプ政権は石油を通じて中国に反撃に出ている」
中国は、ベネズエラとイランから割安価格で原油を輸入してきた。それが、米国の攻撃で不可能になっている。中国は、レアアースで米国へ対抗した。米国は、原油で中国へ反撃している。
(3)「米国は、政情不安が続く中東に軍事資源を割いてきた。反米イランの現体制を突き崩せば、インド太平洋に資源を振り向けられるとの算段がある。23年からイエメンの親イランの武装組織フーシが紅海で相次ぎ商業船舶を攻撃したり拿捕したりした。米国は対応するため高性能ミサイル迎撃弾の在庫の約4分の1を使い果たした。米保守系シンクタンク、安全保障政策センターのグラント・ニューシャム氏は「中東において米国の安保問題はイランが根源だ。そしてイランを支えているのは中国だ。イランの体制が倒れれば軍事資源を中国に振り向けられる」と話す」
米国はイランを叩けば、米軍の大軍を中東地域へ駐留させる必要がなくなる。その余力は、インド太平洋防衛へつぎ込める。中国封じ込め戦略の強化だ。
(4)「イランは、中国やロシアから軍事支援を受けてきた。防空網を簡単に突破され、最高指導者ハメネイ師ら幹部が一斉に殺害された衝撃は大きい。軍事専門家は、米軍の力を中国や親中の国に見せつけたことは、米国の抑止力向上につながるとみる」
米国は、ベネズエラやイランで、中国製防空網を簡単に制圧した。これは、米国の電子戦がいかに強力であるかを見せつけたもので、中国製防空網の無力ぶりを暴露した。
(5)「トランプ政権が、デンマーク自治領グリーンランドの領有を狙って動いたのも、イランなどと同じ文脈にある。グリーンランドは親中ではないが、北極圏は米中が争う重要な軍事的要衝だとトランプ氏らは主張してきた。トランプ政権はパナマでも中国の影響力排除に動いた。パナマ政府にパナマ運河を返還するよう脅した。26年に入り、運河両端の港を管理していた中国・香港の巨大企業グループの排除が確実になった」
トランプ氏は、グリーンランドとパナマでも中国勢力の拡張予防策に打って出ている。グリーンランドには「接近禁止」、パナマには港湾管理権の返上を促した。
(6)「仮に台湾海峡で有事が起きそうになった場合、世界の海運の要衝を米中のどちらが抑えられるかが、開戦判断に大きな影響を及ぼす。政権に近い軍事専門家は、トランプ政権の一連の要衝確保は中国と「戦わずして勝つ」ための戦略だと唱える」
台湾は地勢上、軍事的に世界でも有数の難攻不落の場所とされている。「孫氏の兵法」では、こういう地帯は絶対に攻めてはならない場所である。勝ち目ないからだ。それにもかかわらず、習氏は強引に攻撃目標に仕立てている。この強引さをいかにして諦めさせるか。それは、米国の巨大軍事力を見せつけるしかない。米国は、まずイランを無力化して、軍事力を中東からインド太平洋へシフトさせることだ。トランプ氏は、中国包囲網の最終戦に取組んでいる。




