中国経済が、ドロ沼状況へ足を踏み入れている。低価格帯商品が、人気を集めるという典型的な状態へ落込んでいるからだ。EV(電気自動車)やスマホも、メーカーは低価格製品を競って売出している。中国が、健全な経済状態にない証拠だ。
かつての日本も、同じ道を歩まされた。長年、値上げしない製品が「物価の優等生」として持てはやされた。裏返せば、デフレの苦汁を飲まされていたことに気付かないという錯覚に陥っていた。中国は、日本以上の苦境に立たされている。地方政府自体が、歳入欠陥に落込んでいるからだ。
『日本経済新聞 電子版』(3月24日付)は、「中国、新エネ車やスマホにもデフレの足音 節約志向濃く」と題する記事を掲載した。
中国で電気自動車(EV)など新エネルギー車やスマートフォンなどの売れ筋が低価格帯にシフトしている。景気減速で消費者の節約志向が強まり、メーカー間の価格競争も激しい。内需不足は鮮明になっており、店頭からはデフレの足音が聞こえてくる。
(1)「3月中旬、広東省広州市の郊外にあるEV新興、小鵬汽車(シャオペン)の店舗で店員は「店の販売台数の半分が最安値の車種に集中している」と明かした。店の売れ筋は2024年8月発売の「MONA M03」だ。12万〜16万元(250万〜330万円)と手ごろな価格とスタイリッシュな外観が人気だ。最も高いモデルは高度な運転支援機能も備える。以前は18万〜20万元の「G6」が主力だったが、車情報のアプリ「懂車帝」によると中国全体で直近半年のMONA M03の販売台数はG6の3倍に上る」
小鵬汽車(シャオペン)EVは、12万〜16万元(250万〜330万円)が売れ筋である。耐用年数は4~5年であろう。高い買い物だが、消費者はそのことに気付かず、「安物買いの銭失い」に陥っている。
(2)「プラグインハイブリッド車(PHV)に強みを持ち上質な印象がある理想汽車でも同じ傾向がある。広州のシャオペン近くの店では、入り口正面に24年4月発売の多目的スポーツ車(SUV)「L6」があった。店員によると同車種は店の販売台数の4割を占める。L6は25万〜28万元するものの理想では最も安い。従来の主力だった「L7」(30万〜36万元)より大幅に安く、懂車帝によるとL6の直近半年間の販売台数はL7の2倍に上る。新エネ車のプライスリーダーは比亜迪(BYD)で7万〜9万元の「海鴎(シーガル)」は中国で最量販車の1つだ。シャオペンや理想は運転支援機能や上質感でBYDと差異化してきたが、価格の押し下げ圧力は全体的に増している。中国国家統計局によると2月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比0.7%下落した。2024年1月以来のマイナスで、自動車などの耐久財の値下がりなどが影響した」
理想汽車のプラグインハイブリッド車(PHV)の最新型は、25万〜28万元(520万~582万円)で、これまでの30万〜36万元より大幅に安くなっている。2割近い値下げである。安い部品を使ってコストダウンを図っているのであろう。こうして、2月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比0.7%下落した。
(3)「スマホなどの電子製品も節約志向が現れ、高級路線の米アップルがあおりを受けている。米調査会社IDCによると、アップルは24年の中国スマホ出荷台数が5%減り、米制裁の影響から復活してきた中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)に抜かれシェア3位に後退した。シェア首位だったのは中国vivo(ビボ)で、コストパフォーマンスの高さが支持され出荷は10%増えた」
スマホも、値下げ競争へ突入している。高価格帯のアップル製品が、その余波を受けている。
(4)「iPhoneは、6000元以上が中心なのに対し、vivoの主力は4000〜6000元だ。広州中心部のショッピングセンターにあるvivo販売店の店員は、「ドイツの光学機器メーカーと提携しており撮影機能は抜群。同レベルで他のメーカーなら数千元は高い」と話していた。安価な「Yシリーズ」なら、2000元台で屋外で仕事する人向けに自動で画面の明るさやスピーカーの音声を調整する機能も備えている。店員は「iPhoneは高い」という。アップルは24年、スマートウオッチやワイヤレスイヤホン、タブレット端末など、軒並み中国でシェアを落とした。低価格品もそろえる地場メーカーに顧客を奪われている」
アップルのiPhoneは、6000元以上が中心だ。vivoの主力は、4000〜6000元でワンランク下である。消費者は、懐と相談してvivoを選ぶのであろう。
(5)「中国政府はデフレにつながる内向きの過当競争の「内巻」に歯止めをかけたい考えだ。だが供給過剰は構造問題で企業は生き残りのために価格競争から逃げ出せない。販売競争激化で理想は24年12月期の純利益が前期比3割減と苦戦した。国家統計局によると工場などからの出荷価格を示す2月の卸売物価指数(PPI)も前年同月比で2.2%下がり、2年5ヶ月連続で低下した。直近では、米テスラも中国で主力車「モデルY」の廉価版の開発を始めたと報じられた。中国政府は、消費喚起へ消費財の買い替えを促す補助金支給で消費てこ入れを目指すが、デフレは現実味を帯びている」
中国の物価状況は、明らかにデフレ状況にある。当面、ここか抜け出す道はなさそうだ。「八方塞がり」とは、まさにこの状況を指している。不動産バブル崩壊後遺症とは、こういう事態を指すのだ。