勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    尹大統領は6月30日(以下、日本時間)、NATO(北大西洋条約機構)首脳会議への招待を契機に外交舵を西側諸国へと明確に切った。文政権では、絶えず中国の鼻息を覗って様子見に徹してきたが、尹政権では「右顧左眄」から脱して、「右側通行」を宣言した形である。

     

    今回のNATO首脳会議では、オブザーバーとして、日本、韓国、豪州、NZ(ニュージーランド)の4首脳が招待された。日豪は、対中姿勢ではこれまで旗幟を鮮明にしてきたが、韓国、NZは曖昧であった。ただ、NZは中国が南太平洋島嶼国へ勢力圏を広げる動きをしたことから、「反中姿勢」に転じた。韓国も新政権によって、その立ち位置が明確になった。

     


    『中央日報』(7月1日付)は、「韓日米共助も復元『グローバル中枢国家』尹外交の方向性を決めた」と題する記事を掲載した。

     

    韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は、NATO(北大西洋条約機構)首脳会議に参加するためにスペイン・マドリードを訪問し、16件の外交日程をこなした。そのたびに、「国際安保秩序において、ある地域の問題はその地域の問題だけにとどまらない。他の地域に広がってグローバル社会の共通課題となり、共同で対処してこそ解決することができる。韓国の国際的な寄与と協力を強化する」と強調した。要するに、「グローバル中枢国家」というビジョンを掲げたものだ。価値と規範の連帯を基に、国際社会で韓国の役割を拡大していくと公言した。

    (1)「尹大統領は4年9カ月ぶりの韓日米首脳会談を通じて3角共助の枠組みも復元した。尹大統領と岸田文雄首相、米国のジョー・バイデン米国大統領は「地域およびグローバル問題の解決のために3国協力が重要だ」と同じ声を出し、北朝鮮の核・ミサイルに対する厳しい対応も再確認した」

     

    文政権時代は、日米韓三ヶ国による防衛協議に消極的であった。中国へ「三ヶ国の軍事同盟を結ばない」と約束する文書まで出した結果だ。こういう国家主権を中国へ売り渡すような非常識な政権であった。尹政権は、そういうくびきを取り払って、国際情勢急変にあわせた動きを見せている。

     


    (2)「これに関連し、米国が北朝鮮の核・ミサイルの資金源を遮断するために北朝鮮の個人と機関に対する制裁拡大を準備している中で、韓国ともこの法案について協議中だ。大統領室関係者は、「韓米日首脳会談では制裁方案について話し合うことはなかったが、『北朝鮮の個人と機関に対する制裁を拡大する』というプランが準備されているようだ」とし「残りの追加制裁は軍事事項も多く、さまざまな保安事項なので、韓米間で協議はしたものの、今は申し上げられない」と伝えた」

     

    米韓の間で、具体的な北朝鮮対策が用意されている模様。経済制裁強化である。

    (3)「大統領室関係者は「今回の会談の最も大きな意味は、韓米日安保協力が復元されたこと」としながら、「米ホワイトハウスでも『歴史的で、非常に成功的だった会談』という評価を伝えてきた」と話した」

     

    米韓は、三ヶ国首脳会談を共に非常な成功としている。約5年ぶりの会談であるから、米国が一番ホットしたであろう。



    (4)「尹大統領は特に、岸田首相との3回の対話を通じて複雑に絡み合っている韓日関係のもつれをほぐす契機を用意した。岸田首相について「両国関係を発展させるパートナーになれると確信した」と述べた尹大統領の認識通り、両国は今月10日の日本参議院選挙が終わり次第、関係復元に向けた実務作業に着手する予定だ」

     

    日韓は会談でなく「対話」形式になった。それでも3回の対話というから、互いにフランクに意見を出し合ったに違いない。参院選終了後に日韓の実務作業開始で合意した。

     

    (5)「大統領室関係者は「日本の首相に直接会ったが、かなり開放的で韓国に対する期待が大きく、うまくやっていこうとする熱意が感じられた」とし「ボトムアップではなくトップダウンの雰囲気が形成され、首脳間で関係を改善しようとする準備ができているようだ」と述べた」

     

    韓国大統領室関係者は、岸田首相が開放的であったという。拒絶姿勢でなかったことに安堵した様子である。この辺りに、韓国の日韓関係に賭ける期待の大きさが窺える。中ロ朝が、一体化しているだけに、韓国は日本へ期待を寄せているのであろう。

     


    (6)「尹大統領は、今回の外交活動を通じて少なくない成果を上げたが、韓日米共助の回復と西側との密着により、反対給付として中国との関係再設定という難題も抱え込むことになった。中国は、韓国のNATO首脳会議出席について不快な表情を露骨ににじませた。尹大統領はNATO同盟国・パートナー国全体会議で「新しい競争と葛藤構図が形成されつつある中で、我々が守ってきた普遍的価値が否定される動きも確認されている」と演説の中で述べた。これはウクライナ戦争の状況に言及したものだと分析されているが、自由・民主主義・人権・法治に基づいた価値連帯を強調したのは権威主義国家である中国を不快にさせかねない」

     

    韓国にとって厄介な問題は、中国の反応である。文政権が中国へ傾斜していただけに、余計にその反動が気になっているのだ。だが、もはや「二股外交」は不可能な国際環境だけに、割り切るほかない。

     

    (7)「大統領室関係者は、「韓米日首脳会談を含めてNATO同盟国のすべての演説には『国際社会の普遍妥当な価値と規範、合意を尊重する中で国際関係が構築されるべき』という言葉が含まれている」とし「反中路線というよりは、すべての国がルールと法治に逆らわないでこそ、基本的な協力関係が作られるという共感がある」と述べた」

     

    韓国は、「普遍妥当な価値と規範、合意の尊重」を旗印に掲げた。中国が、いくら文句を付けても、この外交路線で押し切る意向のようだ。



     

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    中国政府は、大学でマルクス主義を専攻した学生の就職を後押している。企業側も、政府の要望に応えれば後々、便宜を受けられると期待し、採用しているという。一般学生には、超狭き門の就職地獄だが、マルクス・ボーイには「マルクス様々」という御利益を受けられるご時世だ。

     

    英紙『フィナンシャル・タイムズ』(6月29日付)は、「中国でマルクス主義専攻の大卒者に求人殺到」と題する記事を掲載した。

     

    中国の労働市場が近年で最悪の状況にあるなか、同国の大卒者は就職先を見つけるのに苦労している。しかし、マルクス主義の学位を持っていれば話は別だ。

     


    (1)「マルクス主義は、中国の支配的な思想であるにもかかわらず、過去何十年もの間、学生にはなじみが薄い専攻科目だった。しかし、習近平国家主席の下で復活を遂げつつある。今年、異例の3期目を目指す習氏は、中国共産党の幹部に「初心を忘れずに」と説いている。大卒者向け就職情報サイト「応届生」によると、今年は採用のピークである46月にマルクス主義の学位を条件にする求人が前年同期に比べて20%増加した。マルクス主義の専門家は、政府省庁から民間複合企業まで、様々な雇用主から引く手あまただ」

     

    中国は、マルクスの世界だ。150年も昔の学説にしがみつく。何とも不思議な感覚で政権運営している。凡そ、イノベーションと無縁のこの経済理論で、14億人の国民を食わせるというのだ。マルクスの伝道師は、マルクス専攻学生である。去年に比べて、求人は20%も増えている。引く手あまたという。

     


    (2)「アナリストらは、マルクス主義を学んだ大学卒業生に対する人気は習氏が進める思想教育の強化が影響していると説明する。中国は米国への対抗意識を強めており、ロシアのウクライナ侵攻から新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)への対応まで、米中両国は全く異なるアプローチをとっている。米ニューヨーク市立大学の夏明教授(政治学)は「マルクス主義専攻の目的は、国民全体を洗脳する思想警察を養成することだ」と指摘する」

     

    マルクス主義専攻生への求人増加は、習氏が進める思想教育の強化が影響しているという。身近に、「マルクスの先生」がいれば、マルクス主義の浸透に役立つという狙いからだ。

     


    (3)「河南省にある大学でマルクス主義を学ぶ3年間の修士課程のカリキュラムには「思想教育の原理と方法」 という単位が含まれるほか、学生たちは習氏の教育に関する演説について18時間学習する。習氏が2012年後半に政権を取るまでの30年間は1978年に鄧小平氏が打ち出した改革開放の時代で、思想として正しいかどうかよりも経済的な繁栄が重視され、マルクス主義の学科は苦戦を強いられた。しかし、習氏は「共同富裕(ともに豊かになる)」を重視する方針を打ち出して民間複合企業への規制を強化し、世界で最も不平等な社会の一つである中国において貧富の差を縮小し、思想をより厳しく取り締まる「新しい時代」を統治したい考えを表明している」

     

    「共同富裕」は、税制改革で実現できる。習氏は、それを避けてマルクス主義で押し通す計画である。これは、マルクスにとってはなはだ迷惑な話だ。マルクスは平等を説いている。それならば、富める者が税金を多く負担するのが筋である。習氏は、共産党員の負担を避けて、大衆に負担させようというマルクスの教えと逆のことを始めている。

     


    (4)「習政権は、国家資本主義体制下での労働者虐待についてマルクス主義による分析を使って厳しく批判する若者らを弾圧している。一方で、中国の共産主義体制がなぜ欧米より優れているかを一般国民に教育する上で重要な役割を担っている教師らを積極的に求めている。共産党が国家主席の任期を2期までとした制約を撤廃した18年、中国の教育省は各大学に対し、学生350人につき少なくとも1人のマルクス主義の教員を採用することを求める通達を出した。それを受けてまもなく、マルクス主義教員の獲得競争が起こった。大学の「思想と政治」担当教員の数はその後の4年間で3分の2増えた」

     

    習氏の狙うマルクス主義は、空理空論の世界を目指す手段である。習氏の「終身皇帝」への布石でもある。誰も、習氏の国家主席3選に反対できないように細工を施す。それが、マルクス主義の布教であるのだ。各大学に対し、学生350人につき少なくとも1人のマルクス主義の教員を採用することを求めている。中国は、これでますます西側世界と断絶しようとしている。

     


    (5)「マルクス主義の学位は不況に強いようだ。若者の失業率は現在18.4%と歴史的な高水準にあり、他の学科を専攻した大卒者の就職は厳しくなっている。しかし、「応届生」のサイトでマルクス主義の教師の募集要項をみると、給与や手当が従来人気のあった経営学などの専攻に追いついてきている。陝西省では都市労働者の平均年収は5万2000元(約106万円)だ。同省にある西安科技大学では、マルクス主義の博士号習得者には20万元の年俸に加えて2万元の契約金と無料の住居を提供している。「マルクス主義を専攻した学生にとって、今がゴールデンタイムだ 」と同大学のある関係者は語った」

     

    マルクス主義専攻生は、給与も桁違いに良くなる。まさにマルクス主義の伝道師の役割を担うのだ。

     

    (6)「中国の電子商取引(EC)最大手アリババ集団の創業者である馬雲(ジャック・マー)氏や不動産大手中国恒大集団の創業者である許家印氏などテクノロジーや不動産の起業家に対する締め付けを受け、民間企業もマルクス主義を専攻した大卒者を採用し、共産党への忠誠をアピールしようとしている。上海に近い浙江省寧波で工作機械工場を経営するデビッド・トン氏は「党の考えを代弁する人が我が社で働いてくれるのはありがたい。政府からの信頼が高まるからだ」と語った」

     

    時代遅れのマルクス主義を広めて、一党独裁を確固たる制度へ育てる積もりだ。いずれ、中国経済破綻の際に、マルクス主義がヤリ玉に上げられる。それまでは、我が世の春を謳歌するのだろう。

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    先のG7首脳会議は、ロシアへさらなる経済制裁を見送った。効果は確実に出始めた。資源高騰で外貨を稼いでいるが、経済制裁で部品や技術の供給が止まっている。これにより、国内の鉱工業生産に大きな影響が出る。4月は、3.0%のマイナス成長に落込んだ。これから、マイナス幅が拡大されるはずだ。

     

    『日本経済新聞』(6月30日付 経済教室欄)は、「ロシア経済の強さと弱さ 制裁に伴う在庫不足、大打撃」と題する記事を掲載した。筆者は、ロシア・ユーラシア政治経済ビジネス研究所代表の隈部兼作氏である。

     

    2月24日に始まったウクライナ侵攻により、ロシア経済を取り巻く環境は激変した。西側諸国は外貨準備の凍結、ロシア主要行の国際銀行間通信協会(SWIFT)排除、エネルギー資源の一部禁輸、半導体などの輸出制限、対ロ新規投資の禁止など、ロシアを国際金融システムや世界経済から孤立させる措置を次々と導入した。ウクライナは欧米諸国から供与される重火器などで反撃しており、紛争は長期化が予想される。

     


    (1)「貿易に関しては、ロシア税関庁は侵攻後に通関統計の公表をやめている。対ロ輸出入の60%以上を占める欧州連合(EU)、米国、日本、中国、インドの統計から、これらの国の対ロ貿易が侵攻前後でどう変化したかを見る。34月の対ロ輸入は米国を除き前年比で増えた。資源価格の高騰が主因だ。ただし、制裁に参加している米国、EU、日本は減少傾向で、いち早くエネルギーを禁輸した米国は4月に前年同期比15%減少した。一方、制裁に参加していない中国は4月に57%、インドは253%増加させており、制裁参加国と非参加国の違いが鮮明だ」

     

    インドと中国は、ロシアからの原油輸入が激増している。対ロ制裁で西側諸国は減少し、好対照である。

     

    (2)「特筆すべきは制裁に参加していないインドで、割安なロシア産ウラル原油の輸入を急増させており、ロシアの原油輸出に占める割合は侵攻前の1%から18%に拡大した。インドは輸入した原油を精製し、その一部を米国、フランス、イタリア、英国などに輸出している。インドや中国が制裁の抜け道になると懸念していた欧米諸国は、ロシア産原油が原料であることを知りながら、インドからの石油製品輸入を増やしている。EUはロシア産石油を輸送する船舶への保険提供を禁止し、制裁を科していないインドなどへの輸出を制限する効果に期待するが、こちらも6カ月間の猶予期間があり即効性はない」

     

    インドは、急増するロシア原油を精製して第三国へ輸出して利益を上げている。この便乗商法は、秋に船舶への海上保険付保が禁止されるので、不可能になる。西側諸国は、インドを陣営へ取り込もうとしており、見て見ぬ振りをしている。

     


    (3)「6月に入りロシアから欧州へ天然ガスを輸送するパイプライン「ノルドストリーム」の輸送量が60%減少した。ロシア側の報道によれば、西側企業の撤退で出荷基地の保守・点検・修理ができなくなった。制裁による西側企業の撤退は、エネルギー禁輸よりも早くロシアのエネルギー産業に影響を与えそうだ」

     

    下線部は、極めて重要だ。ロシアの原油出荷基地では、保守・点検・修理業務の6割を西側企業が担ってきた。西側企業の撤退で、前記業務が大幅に滞っている。これにより、ロシアは原油の生産減に追い込まれる。

     

    (4)「各国の対ロ輸出をみると、3月以降大幅に減少した。制裁を科していない中国やインドも減少している。SWIFT除外の影響による海外送金の停滞、半導体などの先端技術の輸出制限強化、サプライチェーン(供給網)の分断などにより、ロシアのビジネス環境は急速に悪化し、企業の撤退や工場の操業停止が相次いでいる。これらの制裁は即効性が高く、ロシアは原材料、設備、部品、高度な技術などを西側から調達することが困難になった。現時点で電子部品などを海外から輸入する自動車工場はすべて操業を停止している」

     

    ロシアの輸入ビジネスが、禁輸の影響を真っ正面から受けている。ロシアは、モノカルチャー経済ゆえに、禁輸の影響は甚大である。想像を超えるマイナス効果が及ぶはずだ。

     


    (5)「ロシア中央銀行の調査では、ロシアの製造業の約4割が代替サプライヤー(部品会社など)を見つけるのが困難で生産に支障を来している。夏以降の生産に不安を抱く企業も多い。
    ロシアは資源価格の高騰で外貨を稼げても、必要な物資や技術を海外から調達できない状況にある。エネルギー資源の生産・輸出についても、今後は西側企業の撤退により保守・点検・修理などが困難となり、生産量が減少する可能性が高い。中長期的にはエネルギー禁輸や船舶保険の提供禁止の発動により輸出も減少していくと考えられる

     

    ロシアは資源価格高騰で外貨を稼いでいるが、その外貨を使った肝心の輸入ができないのだ。モノカルチャー経済最大の弱点である。中長期的には、海上保険の付保禁止の影響が、これからのし掛ってくる。

     

    (6)「4月以降のロシア経済は景気後退が一段と鮮明になった。1~3月の実質経済成長率は3.%に達したが、4月は3.%のマイナスとなった。鉱工業生産は1.%減、小売売上高は9.%減など、経済指標は軒並み悪化している。1~5月の経常収支は資源価格の高騰による輸出増加と輸入激減から1103億ドルの黒字を計上し、一時暴落したルーブル相場は侵攻前よりも強くなった。だが、外貨があっても必要な物資や技術を海外から調達できない結果ともいえる」

     

    外貨があっても、必要な物資や技術を海外から調達できない結果、下線部のように経済指標は軒並み悪化している。インドや中国では、その代役ができないのだ。

     


    (7)「ロシアの連邦財政をみると、14月は歳入が前年比34%増えた。資源価格の高騰で石油ガス収入が91%増えたことが大きい。他方、非石油ガス収入は制裁による景気後退で5.%の増加にとどまり、侵攻後の34月は単月で前年よりも減少した。一方、歳出は3月以降急増し、4月は前年比40%増えた。ロシア財務省は侵攻後、歳出の内訳を公表せず詳細は不明だが、一部報道から算出すると4月の国防費が前年比約150%増えたことが原因とみられる。4月の連邦財政は赤字となった。22年の国防予算は3.5兆ルーブル(約9兆円)が計上されていたが、4月時点で4割強の1.5兆ルーブルが使われたことになる」

     

    歳入は、石油関連が増えても非石油関連が減少し、トータルでは減っている。歳出は、国防費関連が激増し、財政赤字に陥っている。

     

    (8)「今後も国防費が膨らむのは確実だ。ロシア政府は4月に国民福祉基金の資金の繰り入れと使途に関するルールを変更した。同月だけで基金残高は約2兆ルーブル減っており、戦費流用の可能性を指摘する専門家もいる。今後問題になる失業対策や年金などの社会保障についても、国防費が財政を圧迫する中で手当てせねばならない。原材料や部品の在庫が底をつき始める夏以降に、経済は厳しい状況になるだろう」

     

    国防費激増分を賄うべく、国民福祉基金を流用し始めている。財政も悪化は必至である。輸入の原材料や部品の在庫が、夏以降に底をつく。これから、ロシア経済の危機が表面化するだろう。



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    ウクライナ軍は6月30日、ウクライナ南部オデッサ州沖合の黒海上にあるズメイヌイ(スネーク)島からロシア軍が撤退したと明らかにした。ロシア国防省も同日、撤退を認めた。同島は周辺の制海権や制空権を掌握する上で要衝とされ、ウクライナ軍が奪還に向けた攻撃を続けていた。『日本経済新聞 電子版』(6月30日付)が報じた。

     

    ロシア国防省は、ウクライナからの穀物の輸出に向け、国連などが黒海で安全に貨物船が通れる「回廊」の設置を協議しており、これを阻害しないために撤退したと説明した。これにより、世界の穀物危機が回避される希望が出てきた。

     


    ウクライナからの穀物輸出を巡っては、ロシアのラブロフ外相とトルコのチャブシオール外相が6月8日に会談し、黒海に貨物船が通過できる「回廊」の設置などを協議。さらにウクライナとロシアに加え、トルコと国連も参加する4者協議をイスタンブールで開くことを提案していた。ロシア軍が、スネーク島撤退を明らかしたことで、ウクライナから穀物輸出が可能になりそうだ。

     

    一方、ロシア軍のスネーク島撤退は、ウクライナ軍の猛攻撃に耐え切れなかったという軍事的な側面がある。

     

    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(6月28日付)は、「ウクライナ沖の小島、戦争で大きな役割」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアはスネーク島を制圧して以降、拠点の確立と防衛の強化に繰り返し取り組んできた。一方で、ウクライナは妨害工作を活発化。複数回にわたりロシア軍のヘリや防空システム、重火器を空爆で破壊したと主張している。ロシア側はこれを否定している。衛星データ企業マクサーとプラネット・ラボがウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に提供した衛星画像によると、ロシア軍は4カ月でスネーク島の要塞(ようさい)化に成功。新たにテント構造や塹壕(ざんごう)を構築し、短距離ミサイルシステムを配備した。とりわけ6月初め以降の進展が著しい。

     


    (1)「ウクライナ軍はトルコ製ドローン「バイラクタル」を使って相次ぎスネーク島で空爆に成功したと主張している。58日に公表された動画によると、島の上空を飛行していたロシア軍のヘリがドローン攻撃を受けたみられる様子が映っている。ウクライナの軍情報機関トップ、キリロ・ブダノフ氏は22日、テレビのインタビューで「われわれは攻撃を加えており、スネーク島を全面解放するまで作戦を続ける」と言明した。ウクライナのアンドリー・ザゴロドニュク元国防相は、ロシアがスネーク島にレーダーや防空・電子戦システムを導入することで、実質的に沈没したモスクワの代わりにしようとしていると指摘する。ウクライナは414日、対艦ミサイルでモスクワを撃沈させた。ロシアは原因不明の火災が原因だと説明している」

     

    スネーク島を巡って、ロシア軍とウクライナ軍が激しい攻防戦を繰返してきた。ロシア軍は、沈没した「モスクワ」に代わって、スネーク島へレーダーや防空・電子戦システムを導入していた。絶対的な防衛戦構築の構えであった。それが、6月30日に撤退したのだ。相当の決断の結果である。

     


    (2)「ロシアはウクライナの海上封鎖を狙っている」とザゴロドニュク氏。「ロシアはスネーク島を沈まない巡洋艦として使い、黒海で飛行・航行するものすべてを攻撃する考えだ」軍事専門家によると、ロシアはウクライナの空爆にさらされながらスネーク島で軍事拠点の構築を続けるリスクを勘案した結果、島にとどまり、いずれ地対空ミサイルシステム「S400」などの最新鋭兵器を持ち込むことの利点が、島を断念するコストを上回ると結論づけた可能性がある」

     

    ロシア軍のスネーク島死守の決断が揺らいだのは、ウクライナ軍の猛攻であったに違いない。ウクライナ軍は、米英からミサイルも供与されているので猛攻できる兵器を揃えていたことは事実だ。

     

    (3)「ウクライナにとっては、スネーク島を奪還できれば、ロシア軍による封鎖を突破するための一助となる。ロシアの軍艦がオデッサ南部の沖合を巡回しており、ウクライナ南部の拠点から穀物など重要な食糧が輸出されるのを妨げている。港湾封鎖で経済が壊滅的な打撃を受けているオデッサのゲナディー・トゥルハノフ市長は「スネーク島はシンボルになった」と話す。「ここを支配すれば、戦況を支配できる」。ロシア、ウクライナ双方とも今のところ、目標は達成できていない。ただ、ウクライナはスネーク島への部隊配置を目指しているのではなく、むしろロシアによる軍事拠点の構築を阻止することに注力している可能性があるとの指摘も出ている」

     

    下線のように、スネーク島奪回はウクライナ軍の戦況を有利に展開できるシンボル的な意味を持っている。この象徴的な「小島」をウクライナ軍が手中に奪回したことは、ウクライナ戦争全体へ大きな意味を持っている。ウクライナが、和平への足がかりを掴んだとも言えるのだ。

     


    (4)「前出のザゴロドニュク氏は「戦争が終わるまで総じて空白のままだろう。スネーク島の支配を維持することは極めて困難だ」と話す。「ここに残っても意味がないとロシアが認識するまで、軍装備を何度破壊しなければならないのだろうか」と指摘」

     

    ロシア軍は、ウクライナからの穀物輸出を妨害していると世界の非難を浴びてきた。だが、こうした非難ぐらいで撤退するロシアではない。穀物輸出を口実に撤退したと理解すべきだ。撤退の潮時と判断したのだ。それは、ウクライナ侵攻全体の構図を俯瞰した上での決断と読むべきである。和平への準備を始めたとも読める。

     

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    メドベージェフ前大統領は、プーチン大統領の影のような存在である。そのメドベージェフ氏が突然、昨秋からウクライナ批判を始め存在感をアピールしているのだ。誰でも感づくのは、プーチン氏の健康不安から、メドベージェフ氏がその後釜を狙っているのでないか、というのである。真相は不明だが、メドベージェフ氏の言動からプーチン氏の健康状態を推し測れるかも知れない。

     

    『ニューズウィーク 日本語版』(6月30日付)は、「『プーチンの犬』メドベージェフ前大統領の転落が止まらない」と題する記事を掲載した。

     

    最近のメドベージェフのソーシャルメディア投稿には、欧米政府高官に対する口汚い批判や、アメリカを攻撃するとか、ウクライナを地図から消し去るといった好戦的な言葉が目立つ。ウクライナ侵攻がロシア国内にもたらす混乱が日常生活に表れ始め、さらにウラジーミル・プーチン大統領の健康悪化がささやかれるなか、メドベージェフは自己防衛策を強化しているようだ。

     


    (1)「メドベージェフは昨年10月、ロシアの日刊紙コメルサントに反ユダヤ主義むき出しの寄稿をした。ロシアがウクライナ国境に兵力を集める少し前のことで、ユダヤ系であるウォロディミル・ゼレンスキー大統領をナチスと非難するなど、支離滅裂な陰謀論と罵詈雑言に満ちた寄稿だった。かつては温厚に見えたメドベージェフの変節は、ロシアがヨーロッパにとって厄介な隣人から、存亡を脅かす存在に変貌したことと一致する」

     

    温厚に見えたメドベージェフ氏が、昨秋から豹変して過激派になった。ウクライナ批判を始めたのだ。そのきっかけが、プーチン氏の健康不安を察知した結果とみられる。

     


    (2)「2月のウクライナ侵攻以来、ロシア政界はナショナリズム色が極めて濃くなり、異論を認めない風潮が強まった。メドベージェフの過激な主張も、強硬派の監視の目を意識して繰り出された可能性が高い。「ロシア政治で起きている非常に興味深い変化の1つだ」と、ロシアのコンサルティング会社R・ポリティクのタチアナ・スタノバヤ代表は語る。「ロシアは変わった。そしてメドベージェフは、自分が新しいロシアの一員であることを示す必要に駆られている」と指摘」

     

    メドベージェフ氏は、ロシアの動きに合せて過激発言を行い一体感を演出しているというのだ。

     

    (3)「リベラル派からはプーチンの犬と揶揄され、ロシアの安全保障当局からは、アメリカに擦り寄ったと疑念の目で見られて、近年のメドベージェフは孤立していた。だから余計に、プーチンの厚意にすがるしかなくなっていた。「メドベージェフはロシアの政治エリートで、最も立場が弱い1人だ」とスタノバヤは語る。メドベージェフは6月のテレグラムへの投稿で、最近極端な愛国主義を唱えるようになった理由を説明した。「あいつらのことが憎いからだ。連中はろくでなしのクズだ」。この「連中」とはウクライナのことらしい。「私の命ある限り、あいつらを消滅させるために何でもする」と言う」

     

    メドベージェフ氏は、リベラル派から揶揄され安保当局からは警戒されるという挟み撃ちに遭っている。どうしても、プーチン氏の庇護を得なければならない立場とされる。これによって、「ポスト・プーチン」の座を固めたいのかも知れない。

     


    (4)「メドベージェフが大統領に就任したのは08年、プーチンが当時の憲法が定める大統領の任期上限に達して、ひとまずその座を降りなければならなくなったときだ。それはロシア国内にも欧米諸国にも、大きな希望を生み出した。なにしろメドベージェフは、プーチンをはじめ過去のロシア(とソ連)の政治指導者たちとは大きく違っていた。大学を卒業したのはベルリンの壁崩壊の数年前で、ソ連の政治に染まっていなかった。ロシアの「弱い民主主義」と「非効率な経済」は問題だと語るなど、言うことは言う。だが、欧米諸国にこうした希望を抱かせることになったメドベージェフの特質が、ロシア政界では、保守派の愚弄と疑念を招く原因となった」

     

    メドベージェフ氏の経歴は、ソ連政治に染まっていないことだ。だから、第三者の立場で過去のソ連を批判できる。ロシア保守派には、それが気に入らないのだろう。

     

    (5)「ロシアの反政府活動家アレクセイ・ナワリヌイは17年、ロシアの政治家による幅広い腐敗を暴露する動画を発表した。プーチンが大統領に復帰すると入れ替わるように首相に就任していたメドベージェフもターゲットの1人だ。すると、その豪勢な暮らしぶりを知った多くの市民が全国で怒りのデモを繰り広げた。10代の若者たちは、黄色いアヒルのおもちゃを手にデモに参加した。メドベージェフの広大な別荘に、ヨットハーバーやスキー場やヘリ発着場だけでなく、アヒル小屋があることにちなんだ抗議だ。支持率が38%に落ち込むと、メドベージェフは20年に首相辞任を発表した」

     

    メドベージェフ氏も、利権漁りをして広大な別荘を手に入れていた。これが暴露され結局、首相辞任へ追い込まれた。プーチン氏と同じ蓄財に励んだが失脚原因になった。

     


    (6)「コロナ禍が始まってから2年、プーチンはいまだに群衆に近づこうとしないし、政府高官とさえ距離を置きたがる。このため欧米のメディアでは、「プーチン健康悪化説」が盛り上がる一方だ。もちろんロシア政界も噂には気付いている。メドベージェフの最近の行動は、長年自分を守ってくれたパトロンも、政治的・肉体的な死と無縁ではないという思いと関係していると、ロシアのコンサルティング会社R・ポリティクのタチアナ・スタノバヤは語る。「メドベージェフは『プーチン後のロシア』における、自分の居場所を確保するために戦っているのだ」と指摘」

     

    メドベージェフ氏にとっては、プーチン氏の健康不安が絶好のチャンスになる。何と言っても大統領と首相の経験者である。秘かに、「闘志」を燃やしても不思議でない、政治環境になったと判断したのであろう。

     

     

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