勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    中国が、狂犬のように周辺国と紛争を起こしている一方で、「本丸」米国には融和姿勢を見せている。なぜか。米国と本格的な紛争に入ったならば、中国経済の息の根を止められる危険性に気づき始めたのでないか。いくら、国際情勢が読めない中国民族派といえども、遅ればせながら中国の金融的脆弱性に感づいたと見られる。

     

    ポンペオ米国務長官は6月17日、ハワイで中国共産党の楊潔篪政治局員と会談した。その際、中国側が第1段階合意の下で交わした米国からの穀物輸入について、約束を全て守る考えをあらためて示した。これまで、米中対立を利用して、米中貿易「第一段階合意」を反古にして対抗するとの予測もされていた。

     

    それが、「約束実行」と発言したのは、米中対立激化を恐れ始めたと見られる。その代わり、国内対策で周辺国との紛争を煽っていると見られる。中印衝突は、中国軍の事前準備に基づくものだけに、国民の関心をインドに向けさせたのであろう。

     

    『ブルームバーグ』(6月19日付)は、「中国、米農産物購入を加速させる計画ーハワイでの協議後」と題する記事を掲載した。

     

    中国は今週のハワイでの米国側との協議を受け、第1段階の貿易合意の履行のため米国産農産物の購入を加速させる計画だ。

     

    (1)「新型コロナウイルス流行の影響などで購入が進んでいなかったが、大豆やトウモロコシ、エタノールなどの購入を今後増やす方針だと、非公開情報だとして事情に詳しい関係者2人が匿名を条件に述べた。別の関係者によると、中国政府は第1段階の貿易合意の内容を満たすように国有の農産物輸入会社に求めた」

     

    中国は、これまで米国に約束した穀物輸入計画をサボタージュしてきた。連日の米中による応酬から見て、輸入計画を破棄するのでは、とすら見られてきたのである。だが、約束通りに米国穀物を輸入するという。米国の存在を恐れたに違いない。それは、中国が自らの金融的弱点を認識したからであろう。

     

    (2)「新型コロナの発生源や香港の国家安全法制を巡り米中の対立が強まる中で、貿易問題についても懸念していた市場にとって安心材料となる。ポンペオ米国務長官は17日にハワイで中国共産党の楊潔篪政治局員と会談。中国側が第1段階合意の下で交わした約束を全て守る考えをあらためて示したと18日にツイートしていた。ポンペオ長官はツイート以上の詳細は明らかにしていない。会談が行われた経緯やどちらが会談を呼び掛けたかは分かっていない」

     

    ポンペオ長官が、18日にツイートして中国の穀物輸入計画に変更のないことを明らかにした。

     

    (3)「中国は第1段階合意で、米国産農産物365億ドル(約3兆9000億円)相当を購入すると約束。貿易戦争前の2017年の240億ドルから増やすことになっていた。しかし米農務省のデータによると、今年1~4月の購入額は46億5000万ドルと目標の13%にとどまり、17年同時期の水準を約40%下回っていた

     

    下線部のように、今年1~4月の輸入額は目標の13%、17年同時期に比べても40%下回っていた。明らかに、サボタージュした結果であり、米国の出方を見ていたのだ。だが、米国がこれにお構いなく繰り出す対中強硬策に音を上げてきたにちがいない。

     

    中国の最大のウイークポイントは金融である。不動産バブル経済の渦中にある中国は、すでに金融面で行き詰まっている。米国が、ここを突いてきたらひとたまりもない。鈍感な中国も、はたと気付いたのであろう。

     

    中国の個人投資家は、かつてない状況に見舞われている。国有銀行が扱う25兆元(約377兆円)に上る高利回りの「理財商品」(投資運用商品)の一部で損失が出ているためだ。「理財商品」は、すでに元本保証が消えている。一部の「理財商品」が元本割れとなったことが、危機感を高めた。現在、中国人民銀行(中央銀行)からの追加刺激策への期待が後退している。その中で、国債利回りは今月上昇(注:価格は下落)する事態だ。金融環境の激変が窺える局面となっている。

     

    国債の値下がり(利回り上昇)は、高利回りの理財商品には痛手である。元本保証がなくなった現在、中国の個人投資家はその不安を鎮める場所がないのだ。こういう中で、米国が香港を巡る金融措置を発動したならどうなるか。中国資本市場は大揺れであろう。米国へ事前に、「お手柔らかに」と陳情したとして不思議はない。現在の中国は、ここまで弱っている。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(6月15日付)は、「『王様』ドル、米中の闘いで人民元に対する死角は」と題する記事を掲載した。

     

    (4)「米中の反目は、一部の側面では米国に高くつくだろうが、金融面では中国の方が失うものが大きいのは明らかだ。ドルは依然、国際金融システムの鼓動する心臓であり、ドルの調達システムのコントロールは敵を罰する恐ろしいツールである。米国にとって本当の「バズーカ砲」は中国の銀行に対する制裁だろう。昨年、名称非公開の中国の銀行3行が、北朝鮮に対する制裁の捜査を巡り法廷侮辱罪とされたため、米国から罰を受ける可能性が出てきた。上院に提出されている法案も、香港の自由をないがしろにする銀行への罰則をちらつかせている」

     

    米ドルは、国際金融システムの心臓である。この強力な武器を持つ米国に対して、新興国の中国が立ち向かって勝てると思うのは、正気の人間でない。狂人であろう。私が、繰り返し主張している点はこれだ。金融に無関心な人ほど、中国を過剰評価している。国際的な信頼のない中国が、戦える相手ではない。

     

    (5)「中国の銀行がドルで事業をする能力を限定することは、かく乱要因であることは間違いない。中国の銀行が国外に保有すると主張する2兆2150億ドル(約237兆7000億円)のうち、63%はドル建てだ。今後2年間に、中国と香港で発行された米ドル建ての債券約3210億ドル相当が償還を迎え、借り換えが必要になる可能性がある。一方、米国の資金調達は、人民元に対するこれといったエクスポージャー(注:価格変動リスクの金融資産割合)は依然ほとんどない」

     

    中国企業は、ドル建て債券を発行して資金調達している。そのドル調達に失敗すれば、中国企業の外貨資金繰りがつかなくなる。米ドルは命綱なのだ。逆に、米国にとって人民元は「ワン・ノブ・ゼム」である。月(米ドル)と星(人民元)の関係だ。これだけ説明すれば、十分であろう。


     

    テイカカズラ
       

    習近平氏は最近、何を考えて周辺国と紛争を起こしているのか。軍事面では南シナ海でベトナムと衝突。これに同情したフィリピンが、ベトナムに加勢して中国批判へ転じた。インドとは国境紛争で中印両軍が衝突。両軍から、死者を出すまでに悪化している。オーストラリアとは、コロナ問題の対立から経済制裁を加えるなど、やりたい放題である。

     

    習氏が、中国経済の悪化からくる国内矛楯を逸らすため、あえて周辺国と衝突していると見られる。古い手を使っているが当面、これしか手がないのも事実だ。内外で追い詰められる習近平氏に「活路」はあるのか。残念ながら、袋小路に入っているのが現実だ。武力を背景にして、好き勝手ができると誤解しているところが、新興国特有の落し穴である。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(6月19日付)は、「中国の夢『貿易外交の主役』中印衝突で道遠く」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国とインドの兵士がヒマラヤ山脈の国境付近で激しく衝突したことで、中印の政治関係が冷え込みかねない状況に陥っている。今回の衝突はまた、本来なら中国が支配してもおかしくないアジアの貿易を巡り、中国が主導的役割を果たすことがなぜ難しいのかを如実に物語っている」

     

    中国のGDPは、周知の通り世界2位である。だが、荒れ狂ったように周辺国と衝突を繰返している。これが、中国経済にどのような悪影響を与えているか。アジアの貿易外交で主導権を握れないのである。相変わらず、日本がヘゲモニーを握って世界貿易の「仕切り役」となっている。これは「円」が、「人民元」より絶対優位という実質的裏付けにもよる。だが、「大国・中国」外交の迷走による面も大きいのである。

     

    (2)「インド兵20人が死亡したとされる今回の衝突からは、通商外交で中心的な役割を果たそうとする中国の野心を、アジア地域全体の係争が妨害しているという、より広範な構図が浮かび上がってくる。こうした争いは、国境を越えた規制の枠組みを整備する能力にも影響を及ぼしている」

     

    6月15日の中印両軍の衝突は、突発的に起こったものではない。衛星写真の分析によれば、中国軍は数日前から現場へ機材を持込んでいたことが判明した。中国軍が、インド軍へ仕掛けた衝突である。インド側では、ますます日米との軍事的連携強化を求める声を大きくさせている。中国にとっては、今回の意図した軍事衝突が、何らの利益を生まないばかりか、日米豪印の軍事的一体感を強めさせるだけに終わった。

     

    中国は、アジア外交で孤立を深めている。シンパは北朝鮮だけという深刻な事態だ。こういう状態では、中国経済が一段と落込まざるを得まい。「中国を尊敬せよ」、というこれまでの尊大な声は、虚しく響くだけである。

     

    (3)「ベトナムは今月入り、欧州連合(EU)との自由貿易協定(FTA)を批准した。EU側はすでに承認済みだ。このFTAでは、双方が関税のほとんど撤廃し、残りについても今後数年に段階的に撤廃していくことになっている。新たな投資保護協定は、まだ批准待ちだ。その2カ月前、ベトナム政府は中国と領有権を争っている南シナ海の海域で、中国の船舶がベトナムの漁船に体当たりして沈没させたと明らかにした。これを受けて、外交上、中国寄りの姿勢を強めているフィリピン政府からさえも、ベトナムを支持する声が上がった」

     

    ベトナムは、根っからの「反中」である。同じ共産主義国家だが、柔構造を特色として、日米との関係強化に努めている。TPP(環太平洋経済連携協定)では、米国が抜けた後、日本へ全幅の信頼を寄せ「TPP11」成立に向け最大の協力をした。このベトナムは、経済圏でも中国と別になりたいという強烈な願望を持っている。中国の横暴から逃れたいのが本音だ。韓国は、中国の横暴を「歓迎」するという事大主義に落込んでいる。

     

    ベトナムの一途な「脱中国」の背景を理解したのか、フィリピンがベトナムに加勢している。南シナ海で、中国に島嶼を奪われて、同じ境遇になっていることが、フィリピンの姿勢を変えたもの。

     

    (4)「オーストラリアとの関係も悪化した。豪政府は、新型コロナウイルスがパンデミック(世界的大流行)に発展する要因となった中国の初動のまずさを巡る国際調査に支持を表明。中国政府は人種差別や暴力を理由に、自国民に対して豪州への渡航自粛を勧告した。さらに中国は先月、豪州産大麦に80.5%の追加関税を発動した」

     

    中国は、豪州からコロナ禍で批判されると、すかさず関税率引き上げで制裁を加えてきた。横暴そのものだ。力で相手をねじ伏せようというもの。こうして「反中国」の動きが、アジア全体に広がるのだ。

     

    (5)「中国はおよそ15年前に、アジア最大の輸出国に躍り出た。現在ではゆうに月間2000億ドル相当の中国産品を海外で販売している。これはインド、日本、オーストラリア、韓国、ベトナムの合計額を上回る規模だ。しかしながら、アジアの貿易外交を主導しているのは今でも、輸出国としては2番手に後退した日本だ。中国が領土問題を巡って近隣諸国との対立を続けている限り、輸出規模がどこまで膨らんでも、アジアにおける貿易関係の構築において、中国は「脇役」から抜け出せない」。

     

    中国が、周辺国と紛争を続けるかぎり、アジアの貿易外交で主役になれないだろう、と指摘している。他国から信頼されないことを意味する。中国は、このままの状態が続ければ、確実に「外交の孤児」だ。そのことに気づかないのは、「ウドの大木」に他ならない。安全保障面で、孤立することは確実だ。


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    コロナに感染した場合、血液型で重症化とそうでないとの差がある。そういう研究結果が、ドイツで発表された。科学の国ドイツの研究であるから、参考までに取り上げる。ただ、この研究を鵜呑みにして「軽挙妄動」されると一大事。コロナに感染しないことが、第一であることは言うまでもない。

     

    『中央日報』(6月19日付)は、「『コロナにA型は危険、O型は安全』こんな研究結果も出た」と題する記事を掲載した。

     

    ドイツの研究チームがA型の人が新型コロナウイルス感染症(新型肺炎)にかかった時、重症化する可能性がより高いという研究結果を出した。このような研究結果は3月に中国でも出たことがあるが、実際の新型コロナの治療と防疫現場で重症化の可能性が高い患者を分類するために参考資料になるものと期待される。

    (1)「ドイツ・キール大学のアンドレ・フランク教授の研究チームは17日(現地時間)、ニューイングランド医学ジャーナルに掲載された論文でA型の新型コロナ感染者が他の血液型よりも相対的に重症患者に発展する可能性が高いという研究結果を発表した。逆に重症の発展する可能性が最も低いのは血液型がO型の患者だった。人工呼吸器を着用しなければならないほど重症の新型コロナ患者の血液サンプルを分析した研究チームによると、A型の新型コロナ感染者は呼吸不全につながる可能性が他の血液型より50%高いことが分かった」

     

    ここでは、O型とA型が取り上げられている。他の血液型は不問である。それほどの差が出なかったということだろうか。

     

    (2)「研究チームはイタリアとスペインの病院7カ所で新型コロナ重症患者1980人と軽症や無症状の患者2000人を比較分析した結果、これらの結論を得たと論文で明らかにした。血液型を決定する遺伝子は人の細胞壁をめぐるタンパク質成分と関連があるが、研究チームは特定のタンパク質がコロナに免疫力を持つ効果があるものと把握している

     

    イタリアとスペインの例からも同じ結果が得られたという。下線のような原因であれば、「納得」せざるを得まい。

     

    (3)「同様の研究結果は、3月に中国武漢大学中南医院の証拠基盤仲介医学センターの研究チームも提示している。当時研究チームは中国武漢と深センで新型コロナ陽性判定を受けた患者2000人あまりの血液型のパターンを非感染群と比較分析した。非感染群と比較して新型コロナ陽性判定患者の血液型分布が、A型で5%ポイント以上多かった。一方、O型は8%ポイントほど低いことが分かった」

     

    中国でも同じ結果という。新型コロナ陽性判定患者の血液型分布は、A型とO型で異なっている。A型が多くO型が少ない。こういう結果だそうだが、くれぐれも「盲信」せず、「三蜜」を避けてコロナ安全地帯へ逃避するように。


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    韓国自動車メーカー首位の現代自動車が、予定の部品納入がストップされ、間もなくラインが止まる事態になった。二次部品メーカーが、経営悪化で生産放棄という前代未聞の理由である。現代自と部品メーカーの間で、いかに意思疎通がされていなかったかを物語っている。

     

    日本の自動車メーカーでは信じられない話だ。トヨタ自動車では、部品メーカーを含め「オール・トヨタ」で情報の共有が行なわれている。むろん、部品会社の経営面についての情報もトヨタ自動車は把握しているであろう。そうでなければ、安心して部品生産を任せられないからだ。

     

    現代自は、電気自動車や水素自動車で世界競争に打って出ると夢を語ってきた。だが、足元の部品会社の経営情報については、全く無関心であったことを暴露した。ちょうど、労組が会社の経営状態に無関心であることと同じ。要求を一方的に相手に突付ける点では、韓国社会共通の現象である。日韓外交もその典型である。

     

    『中央日報』(6月19日付)は、「『経営悪化、もう限界』2次協力会社が納品放棄、現代車、国内部品調達に支障」と題する記事を掲載した。

     

    現代自動車グループが韓国国内サプライチェーンの非常点検に入った。2次協力会社1カ所が経営悪化を理由に納品中断と事業放棄を宣言したことで、現代車蔚山(ウルサン)工場は18日午後からパリセードとツーソン用の部品の在庫がなくなり、車両の出庫ができなくなり始めた。サンタフェ、ネクソ用の部品も一日分しか残っていない。最終組み立て段階の部品であり、この部品がなければ出庫が不可能だ。自動車業界ではその間、現代車グループのサプライチェーンが非効率的だったという理由で「来るべき時が来た」という反応を見せている。

     


    (1)「似た事例がさらに発生する可能性も高く、現代車グループのサプライチェーン全体が打撃を受けるかもしれないという懸念も出ている。
    自動車業界によると、現代自動車グループ購買本部はさらなる納品中断事態に備えてサプライチェーンの見直しに着手した。現代車の2次協力会社のミョンボ産業は最近、「経営悪化で事業経営が不可能」と1次協力会社に公文書を送り、納品中断と事業放棄を宣言した。ホームページ・事業場をすべて閉鎖して連絡が取れない状態だ」

     

    1台の自動車には、3万点以上という部品が必要とされる業界である。部品の性能を含めて、重大な影響が出る。そういう重要性から言えば、現代自の部品メーカーの管理は、全くの杜撰の一語である。下線のような事態は、考えられないことである。

     

    (2)「慶尚北道慶州(キョンジュ)にあるミョンボ産業はシートや運転席の部品などを生産してきた。パリセード、サンタフェ、ツーソンなどに部品を単独で供給している。ミョンボ産業が工場を閉鎖したことで、現代車は部品の製作に必要な金型を確保できず、調達先の変更も難しい状況だ。ミョンボ産業は1次協力会社が会社を買収するよう現代車が仲裁することを要求しているという。ミョンボ産業が「実力行使」を決めたのは、国内の自動車生産規模が減ったうえ、新型コロナウイルス事態で物量が減少したのが最も大きな原因だ。しかし業界はさらに複雑な背景があるとみている。まず現代車グループの「従属的部品生態系」が原因に挙げられる。

     

    韓国自動車部品メーカーは、生産の減少で経営が悪化している。本欄でも、その実態を何回か取り上げてきた。ついに、来るべき時がきたという感じを否めない。その間、現代自が具体策を用意せず、一片の文書で済ましてきた無責任体制に驚くのだ。



    (3)「国内最大自動車企業の現代車グループは1・2・3次協力会社とつながる垂直的な部品サプライチェーンを構築してきた。利潤が少なくても大量納品を保証し、協力会社は納品ラインの多角化なく安定的な経営をしてきた。しかし現代車グループの海外生産比率が高まったことで、協力会社の納品規模が減少している。現代車グループは2018年、協力会社に経営資金を支援し、納品ラインを多角化して競争力を高めるべきだと通知した。
    問題は、その後も零細な2・3次協力会社が十分に競争力を確保できず、2万個以上の部品からなる自動車部品生態系が効率化されていないという点だ。納品量の保証をめぐり現代車-1次協力会社間、1次-2次協力会社間の葛藤も頻発した。1次協力会社が取引物量を減らすと通知すると、2次協力会社の代表が部品の金型を持って潜伏することもあった。1次・2次協力会社の間で物量をめぐる訴訟もあった」

     

    韓国産業の脆弱性が、実に良く現れている話である。李朝時代、地主が小作人を虐めている姿を連想する。江戸時代の日本では、地主と小作人の関係は、「親子関係」となっていた。小作人の家庭で病人が出れば、地主が経済面で面倒見るという習慣ができていたのだ。この一体感が、現在の系列関係に生きている。

    (4)「専門家らは現代車グループが非効率的なサプライチェーンにもう少し早く手を入れるべきだったと指摘する。イ研究委員は「現代車だけを眺めて革新や納品先多角化をしてこなかった部品会社と、効率的なサプライチェーン管理ができなかった現代車グループに責任がある」とし「この機会に部品会社の玉石を分けて、現代車グループのサプライチェーンも合理的・効率的に改編する必要がある」と助言した」

     

    日本の部品メーカーは、幅広い販売先を持つようになっている。これが、技術を磨きレベルを上げるので、結果としてアセンブリ・メーカーにも利益になるという構図である。韓国でこういう事態が起きると、日本との格差がいかに大きいかを実感させられる。


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    北朝鮮問題を考える時、文大統領の頭脳構造が学生時代のままというのはウソでなさそうだ。韓国が、北朝鮮のような共産主義になることを夢見ているからだ。韓国軍の主敵は、北朝鮮という目標を捨てており、代わって自衛隊が主敵の座に座っている。これでは、防衛体制も脆弱化したままであろう。

     

    これをリードしたのは、文大統領である。韓国の友軍の位置にある自衛隊を、主敵にするとは米韓同盟、日韓同盟という文脈から見てあり得ないこと。文氏は、学生時代の「親中朝・反日米」で凝り固まっているから驚くのである。韓国最大の悩みは、国家元首の外交認識が幼稚である点だ。

     

    『中央日報』(6月18日付)は、「大統領の認識が変わってこそ韓国が北朝鮮に『甲』となる」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のカン・チャンホ論説委員である。

     

    2015年初め、出勤のため地下鉄に乗ろうとしていた北朝鮮専門家、金根植(キム・グンシク)慶南大教授の携帯電話が鳴った。知らない番号だった。「私は文在寅(ムン・ジェイン)です。昨日のインタビューを見ました」。会ったこともない文在寅新政治民主連合代表(当時)からの電話だった。金根植教授は前日、脱北者団体の対北朝鮮ビラ散布予告で波紋が広がると、放送に出演して「境界地域の国民の安全が脅かされるなど副作用があるため、ビラ散布の自制を要請しなければいけない」と発言した。これを見た文代表が金教授に電話をかけたのだった。



    (1)「金根植教授によると、文代表は「ビラ散布はそれ(国民の安全)以外にも問題があるのではないだろうか。(北朝鮮の)主権を侵害する国際法違反ではないか」と話した。金根植教授は「初めて聞く話だ。そのように考えることができるのかはよく分からない。南北が分断されて競争し、ビラをやり取りしてきたが、これを国際法にかけるのは問題だ」と否定的な立場を表明した。すると文在寅代表は「とにかく私はそのように(国際法違反)考えるので、金教授も少し考えてほしい」と言って電話を切ったということだ」

     

    文在寅氏が、大統領になる前の話である。韓国から北へのビラ散布が、「国際法違反」という認識を語ったと言うのである。文氏が、軽々に国際法という言葉を持ち出したが、後に、日韓問題では「国際法違反」を次々に行なっている。文氏のダブルスタンダードぶりが窺える話である。

     

    (2)「金教授は筆者に、「文代表の言葉は『北は主権国家であり(金正恩委員長は)選出された指導者だが、他国(韓国)が非難するのは話にならない』という趣旨だった。私はこれを聞いて当時の文代表の認識は北が主権国家、正常国家ということだと判断した」と話した。「青瓦台(チョンワデ、韓国大統領府)の雰囲気が本当に心配だ。大統領が北をそのように眺めているのに、どの参謀が『違います』と言えるだろうか。金与正(キム・ヨジョン)労働党第1副部長が対北ビラを非難すると、青瓦台関係者から民主党首脳部まで異口同音に『ビラは百害無益』と話している。このように断固とした極端な表現がどのように出てきたのだろうか。大統領の考えが反映された言葉ではないだろうか」と」

     

    文氏の言葉は、「北が主権国家であり(金正恩委員長は)選出された指導者である。他国(韓国)が非難するのは話にならない」としていた。この辺りに、文氏が北を正統国家と見ていることを示している。国民を弾圧しても形式さえ整っていれば、それが実質を伴っていると判断するのだ。いかにも弁護士上がりで、形式重視タイプの人間であることを示している。

     

    文氏は、形式論者である。実質を見抜く力が「弱い」か「ない」御仁とお見受けする。この人が今、韓国大統領である。眼光紙背に徹するという「哲人」タイプでない。気の毒だが、韓国の不幸はこの形式主義者・文在寅が、全権を握る国家元首になっていることにある。

     

    この文氏が、大統領であるゆえに、部下は「異見」を具申できず、事態の悪化を傍観するだけである。「親中朝・反日米」という1980年代、韓国の学生仲間に流行した考えが、今なお習氏を束縛していることが、韓国を外交孤児に追い込むであろう。

     


    (3)「北朝鮮が、「スーパー甲(注:主役)」として南側を愚弄する今とは違い、8年前は韓国が「甲」だった。李明博(イ・ミョンバク)政権末期だった2011-12年、北朝鮮は韓国側に「一度だけ会ってほしい」と哀願した。当時の千英宇(チョン・ヨンウ)青瓦台外交安保首席秘書官は「北の国防委員会が私の執務室に『会いたい。会って話そう』というファックスを何度も送ってきた。ストーキング水準だった」と振り返った。北側がこのように低姿勢を見せたのは、韓国政府が「大韓民国は表現の自由があり、民間が散布するビラは防げない。これを理由に挑発すれば断固報復する」という原則を強く守ったからだ」

     

    当時の韓国政府は、ビラ問題について「表現の自由」という原則によって北朝鮮の要求を拒否した。現在の韓国政府は、ビラは「国際法違反」というこじつけを言って、北の要求に屈している。大統領が違えば、これだけ理屈も変わるのだ。韓国という政治的未成熟国家では、大統領制が不向きである。議員内閣制が、政治に弾力性を持たせて好適と思われるのだ。

     

    (4)「破局に向かう今の南北関係を正常化する道は、文在寅大統領にかかっている。北朝鮮は相手が弱い姿を見せれば踏みにじり、強い姿を見せれば後退する国だ。漠然とした対北朝鮮同情心は、我々の立場を弱めて、北朝鮮の行動をさらに悪化させる最悪の手だ。北朝鮮が間違っていれば厳しく指摘し、挑発すれば数倍にして返すという意志を明確にしてこそ、韓国が甲の立場で対話を主導する道が開かれる。何よりも本質に戻らなければいけない。北朝鮮の非核化だ。これを避けて他の道を探しても、終着点は「制裁障壁」しかないことを文大統領は忘れてはならない」

    南北関係を糺すには、文大統領が「外交常識」に立ち返ることだ。学生時代に使い古された「親中朝・反日米」を現在に持ち出すリスクを考え直すことだ。しかし、文氏にそれを期待することはムリ。このまま、泥沼に落込むのであろう。


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