勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    テイカカズラ
       

    日本で、半世紀前に起こった「サラ金悪質取立て」が、いま中国で起こっている。1月以降のコロナ禍による失業で、ローン返済が延滞しているためだ。延滞している本人はもちろん、親、親戚、友人とところ構わず支払い催促の電話やメールが送られてくるという。借金地獄である。しかも、返済できずにいると、政府のブラックリストに記載され、不動産の購入や高級ホテルの予約、高速鉄道の利用などが禁じられる。その数が、数百万人という。

     

    中国では、好景気にローンが急増するが、今回のように突然のコロナ襲来で支払いは大幅遅延である。誰も予想していなかった事態だけに、マイナス成長経済下で個人消費にブレーキとなっている。5月の小売売上高は前年比2.8%減で4カ月連続の減少。4月(7.5%減)よりは小幅な減少にとどまったものの、市場予想(2.0%減)以上の落ち込みとなった。裏には、こういう「涙の話」があるのだ。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(6月16日付)は、「中国でローン延滞急増、悪質回収業者に苦しむ市民」と題する記事を掲載した。

     

    中国では、新型コロナウイルスの感染が拡大した1月以降、賃金引き下げや失業を背景にクレジットカードや消費者ローンの延滞が急増しており、回収業者が時に極めて悪質な手口で返済を迫っている。

     

    (1)「コロナ不況に見舞われる以前、中国では住宅・自動車ローンに加え、クレジットカード融資や短期ローンが過去最大の水準に膨れあがっていた。好景気を背景に、従来の銀行に加え、ネット銀行も貸し出しに躍起になっていたためだ。スマートフォンやアプリが普及したことで、ネット銀行からの借り入れは非常に容易になった。そして借り手の多くは、融資申請の際、家族や友人の連絡先を提供していた。貸し手はここにきて、融資回収を急いでいる。多くは専門業者を使って借り手を追跡し、返済を迫っているようだ。貸し手には、従来の銀行に加え、ここ数年に金融サービスに参入した大手ハイテク企業の金融部門などが含まれる」

     

    誰でも、返済のメドがあるから金を借りる。だから、気軽に家族や友人の連絡先を借用書に書いてしまうのだろう。これが、返済が滞る事態になると、仇になって返ってくる。返済催促の電話やメールが殺到するのだ。生きた心地がしないという。

     

    ここへ来て、回収業者が必死になって返済を求めるのは、景気の実勢が悪いからだ。先行きさらに悪化するという見立てで、回収を急いでいると見られる。

     

    (2)「シュウ・ダンさん(30)は事務員の職を失った4月時点で、約30万元(約450万円)の借金を抱えていた。中信銀行(チャイナCITICバンク)のクレジットカードで、最低支払い必要額の返済を最初に滞納した翌日、シュウさんには電話やテキストメッセージが1日10回以上、数週間にわたって続いた。4万1445元(中信銀からの借り入れの約4.5%)を支払わない限り、カード没収や訴訟、回収業者による自宅への取り立てに見舞われると告げられたという

     

    中信銀行と言えば、国有銀行グループの一員で名前の通った銀行だ。そこですら、こういう「あこぎな」ことを始めている。相当な延滞債権を抱えている証拠だ。

     

    (3)「シュウさんはまた、出前アプリなどを手掛けるハイテク会社、美団点評の金融部門の回収業者からも執拗(しつよう)な取り立てに遭った。祖母や両親、元同僚らにも、シュウさんに1万元を返済するよう伝えろとの電話があった。政府の「不誠実な人」リストに掲載される可能性があるとのテキストメッセージも受け取ったという。美団点評は、委託している回収業者は法律や業界の指針に従う必要があるなどとコメント。業者の行為に違反があった可能性があるとして、調査する意向を示した」。

     

    中国の金融業界が、いかに混乱しているかを示す貴重な話だ。この裏には、中国経済が瀕死の重傷を負っているという事実がある。

     

    (4)「中国の調査会社、艾瑞咨詢(アイリサーチ)は、消費者ローンの延滞額が今年、2兆8000億元(約42兆円)に達する可能性があると推測している。これは2019年末時点と比べて14%増、5年前からは倍以上の水準だ。延滞分の半分はクレジットカード債務で、残りはノンバンクの貸し手によるものだとしている。中国では返済に行き詰まった場合、裁判所を通じて債権者から猶予を得ることができないケースが大半だ。銀行やクレジットカードの融資でデフォルト(債務不履行)を起こした数百万人は政府のブラックリストに指定され、不動産の購入や高級ホテルの予約、高速鉄道の利用などが禁じられる

     

    今年の消費者ローン延滞額は、約42兆円を見込むという。凄い金額である。これが、資金循環から消えてしまうのだ。蟻地獄が始まっている。デフォルトを起こした数百万人は、政府のブラックリストに乗せられて社会的制裁を受けるのだ。

     

    (5)「中国には、膨大な数の債権回収業者が存在しており、その多くは独立運営で、複数の貸し手と契約している。回収金額に応じて手数料を受け取る仕組みで、延滞期間が長いほど手数料も増えるが、回収も極めて困難になる。今のところ業界に対する規制は緩く、中国の銀行規制当局は最近になって、違法な回収手口などを定めた規制案を公表した。近年では、暴力をふるう、殺すぞと脅すといった行為に及んだ業者が逮捕された。大学生の借り手に担保としてヌード写真を差し出すよう迫った貸し手が廃業に追い込まれたケースもある」

     

    回収業者への規制が緩く、ローン未返済者は踏んだり蹴ったりの扱いだ。社会主義を標榜する国家が、この有様である。回収業者の裏には共産党員が絡んでいるはず。だから、規制強化をさせない防波堤になっている。中国では、こういう例が実に多いのだ。


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    韓国は、事大主義の国である。歴史的に中国への依存心が強く、独立思考が困難という積弊を背負ってきた。この韓国が、米中対立という新次元において、名実ともに米韓同盟に沿って同盟国として行動すべきとの正論が聞かれ始めた。

     

    米韓同盟を結びながら、今さら米国への選択に向けて動きが見られるほど、韓国はヌエ的な存在である。洞ヶ峠を決め込み、形勢有利な側に付こうという卑怯な振る舞いを恥としない文化に染まっている。この卑怯な文化が、本当に変わるのか。まだ、最終的に分からない面がある。日本への外交姿勢において、疑わしい面が多々、見られるからだ。

     

    『中央日報』(6月16日付)は、「激しくなる米中競争、韓国、中国依存減らし貿易分散しなくては」と題する無署名のコラムを掲載した。

     

    (1)「新型コロナウイルスは世界秩序の大転換を招いた3大パンデミックのひとつとして記録されるだろう。14世紀に欧州の人口の3分の1を犠牲したペストは封建制生産様式を基礎とする中世を終息させ近代資本主義社会の到来を繰り上げた。第1次世界大戦が終わるころに5000万人の命を奪ったスペイン風邪は保護主義とファシズムを勃興させ第2次世界大戦の原因を提供した。現在進行形である新型コロナウイルスは新自由主義的世界化時代を終わらせ新国家主義的ポスト世界化時代を開いている

     

    格調の高いコラムである。あえて無署名にした理由は、思い切った主張を展開しているので、今後の風当たりを警戒しているのであろう。それにも関わらず、傾聴すべき内容である。

     

    過去のパンデミックが、世界史を大きく塗り替えてきたという事実を基にして、下線を引いたような変化を予測している。私も、その公算が強いと見る。歴史が後退することなく前進するという仮説に立てば、中国の独裁主義が滅びるきっかけが、今回のコロナ禍となろう。それは、中国を包囲する国家主義的な動きが強まるからだ。習近平氏は、中国衰退の引き金を引いた人物として、世界史に名を残すに違いない。

     


    (2)「各国は国境を超えて拡散する新型コロナウイルスの攻撃に国境という障壁を立てて防御しようとする。その結果、国境を行き来する国同士の貿易と人的交流・交換が急激に減少している。また、自国経済を世界経済と絶縁させ、経済的民族主義を動員して自給自足経済を指向し、海外に出た自国企業に本国に戻れとリショアリングを強要する。新型コロナウイルス以前の世界秩序が新自由主義・世界化・地経学と国際主義を特徴とするなら、新型コロナウイルス後の新世界秩序は新国家主義・汎世界化またはポスト世界化、地政学、新現実主義と民族主義に転換すると予想する」

     

    海外に出た自国企業に本国に戻れというリショアリングは、単なる政治的な意味合いではない。地球の環境破壊が進む中で、今後もパンデミックは引き続き起こりやすい状況にある。そのたびに、サプライチェーンの寸断が起こったのでは、経済活動が停滞する。これを回避するには、リショアリングか政治体制が同じ同盟国で生産機能を保持するしかない。もはや、感染症発症が頻発する懸念のある中国へ、サプライチェーンのハブを置く選択はなくなった。技術革新によって、製造コストを切下げられる見通しも付いたのだ。脱中国は、技術的に見ても合理的選択になっている。

     

    (3)「地政学的に米国と中国の間に位置した緩衝国の韓国は新型コロナウイルス後に展開される米中覇権競争激化に備える戦略を準備しなければならない。戦略国際問題研究所(CSIS)のマイケル・グリーン専任研究員は、新型コロナウイルス後の米中覇権競争のシナリオとして3種類を提示する」

     

    新型コロナウイルス後、米中覇権競争のシナリオは3種類考えられるという。

    (4)「最初に、米中覇権競争は激しくなるが、米国優位の非対称的G2関係が維持される現状維持シナリオだ。2番目が、多者主義再充電と強化による米国の単一ヘゲモニー復活シナリオだ。3番目が、新型コロナウイルス危機への対応失敗で米国の国際権威が失墜し、東アジアで勢力が萎縮する間に中国が力の空白を埋め地域の勢力均衡を変更する者として登場するシナリオだ」

     

    要約すれば、次の3つである。

    1)米国優位の現状維持シナリオ

    2)米同盟国の強化による米国覇権体制の復活

    3)コロナ禍で米国が没落、中国が覇権を握る



    (5)「新型コロナウイルス後に米国のヘゲモニーが維持されたり強化されるという1番目と2番目のシナリオが現実化されることに備え韓国は米国覇権につく便乗戦略とともに、中国リスクを最小化するヘッジ戦略を同時に駆使しなければならない。米中非同調化が激しくなる場合に備えて対中依存度を減らし、中国に集中した投資・貿易をあらかじめ分散させなければならない

    3番目のシナリオは考えられない。普遍的な価値観を持たない中国が、世界のヘゲモニーを握ることは、世界を愚弄した話だ。中国は、人間が同じ価値観で集団を構成するという基本理念を理解していない。相手を威嚇すれば、屈服させられるという古代の観念に捉えられている。現在も、秦の始皇帝と同じレベルの思考法に止まっているのだ。

     

    よって、中国の世界覇権はあり得ない夢想である。この基本的な視点にたてば、韓国は、中国に付き従う行動を止めること。経済関係も中国依存度を下げる準備をすべきである。この場合、日本との関係構築が最大の問題になる。

     

    米同盟国が結集する際、日本の地位は米国に次ぐ「準トップ」になる。韓国は、その日本と摩擦を起こしていられるだろうか。対日外交は、大きな路線変更を求められるはず。その覚悟が求められるのだ。それがなければ、米同盟国への結集では参加が及び腰になろう。韓国は、極めて不利な立場に追いやられる。

     

     

     

     

     

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    中国という国家の将来を見たければ、中国高速鉄道の経営実態を見れば予測できよう。およそ、合理的な思考が見られないからだ。最新の決算(昨年12月期)で、累積債務は82兆円に上がっている。日本の旧国鉄は、累積債務37兆円、年間金利が1兆円という最悪の事態で解体され民営化した。この例からも、中国高速鉄道の経営が暗礁に乗り上げる日は、そう遠い先でない。無責任国家の無責任鉄道が、どういう末路を辿るのか興味深い。

     

    『日本経済新聞 電子版』(6月15日付)は、「中国新幹線、勝算なき膨張、国有の鉄路集団」と題する記事を掲載した。

     

    中国版新幹線「高速鉄道」の膨張が止まらない。独占運営する国有の中国国家鉄路集団は2020年も総距離を1割増やし、30年に日本の約14倍に上る4万5000キロメートルにする計画だ。政府の意をくんだ拡大路線の結果、負債額は82兆円に達する。財務改善策にも着手したが、当面は政府支援に頼らざるを得ない。「新しい鉄道で街が栄えるなんて、誰も期待していませんよ」。中国東北部、遼寧省朝陽市。7月に新しく路線が増える予定の駅周辺にある食料品店の男性従業員は、こうぼやいた。この駅は18年末に開業したが、利用客は少なく、今も周辺にホテルや店舗はほぼないという。同市は景気低迷が全国でも著しい遼寧省内でも、GDPで下位に沈む自治体だ。目立った産業もない地域に駅や新たな路線ができる現状こそ、計画の野放図さを象徴する。


    (1)「鉄路集団は鉄道省(現・交通運輸省)の下部組織が独立して誕生した。中国経済の高速成長に沿って全国に路線を張り巡らせ、ここ数年も年10~20%のペースで総距離を拡大。19年末には約3万5000キロメートルに達した。20年もさらに4000キロメートルが開通する見通しで、30年に4万5000キロメートルに引き上げる計画を掲げる。交通運輸省の李小鵬部長(日本の大臣に相当)は5月下旬の会見で「交通インフラは経済を成長させ、小康(ややゆとりのある)社会の基礎となる」と意義を強調した」

     

    「小康社会」という魔術に引っかかって、高速鉄道を全土に張り巡らした。人口密度の低いところにも高速鉄道を建設してきた狙いは二つある。一つは、建設によるGDP押し上げ効果。もう一つは、国内反乱が起こったとき、兵員を迅速に輸送する目的である。最初から、採算を度外視する政治路線である。

     

    小康社会建設という合い言葉は、無駄な投資を公然と行なわせてきた。本当に「小康社会」を建設する意思があれば、社会福祉の充実と所得分配の公平性実現がカギを握る。そういう努力をせず、高速鉄道建設に走ったのは、建設目的が先の2点にあったからだ。

     


    (2)「路線拡大の優先はひずみも生む。19年12月期の売上高は1兆1348億元(約17兆円)、最終損益は25億元の黒字だったが、売上高純利益率はわずか0.%。直近の20年13月期は新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出制限が響き、613億元の最終赤字に陥った」

     

    営業路線は、19年末には約3万5000キロメートルに達した。20年もさらに4000キロメートルが開通し、30年に4万5000キロメートルに引き上げる計画だ。こうなれば、完全な赤字は避けられない。すでに82兆円の債務を抱えている。自力での返済は不可能だ。今後の開業路線は、人口密度が一段と希薄な地域になる。採算向上の見込みはない。

     

    (3)「地方政府による誘致競争も大きい。「うちの地元にも路線を敷いてほしい」。内陸の小都市、江西省九江市のトップらは5月に開いた全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の席で訴えた。交通が専門の北京交通大学の趙堅教授は「(地方幹部は)任期中に鉄道建設で経済成長を達成しようとする。債務返済は気にしない」と指摘する」

     

    高速鉄道は、政治路線である。日本でも政治家は自分の選挙区に鉄道を建設する運動を重ねた。これは、「我田引水」ならず「我田引鉄」と揶揄されたほど。中国も地方政府トップは、高速鉄道建設を自らの業績にしたいのだ。

     

    (4)「中国ではバスやタクシーといった公共交通の運賃は低く設定されており、値上げによる採算改善は難しい。「債務返済はもはや不可能」(趙教授)とみられるなか、鉄路集団は止血に向けて貨物の輸送にも乗り出している。それでも、レールが重量のある荷物の輸送を想定しておらず、事業拡大のメドは立っていない。結局、中国政府は今年、約15千億円に上る異例の資本注入を決めた。趙教授は「鉄路集団は新幹線の建設を減らし、貨物列車が走れる一般の線路を増やすべきだ」と訴える。膨張路線を突き進む鉄路集団に、その声は届きそうにない」

     

    人間の輸送が目的の高速鉄道である。採算向上で貨物輸送に転用したくても、レールがその負担に耐えられない。結局、宝の持腐れである。今後、中国の人口は高齢化が顕著に進むので、乗車効率は上がらないのだ。高速鉄道が、中国財政を直撃する日は近い。


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    韓国ソウル首都圏は、秋を待たずコロナの第二次感染が7月に到来するリスクが高まってきた。7月初旬、1日800人を越す爆発的な感染者が出てくるという予測が登場している。韓国では、これまで「K防疫モデル」と自画自賛してきた。集団感染発生により、その脆さが浮き彫りになっている。

     

    東京では、14~15日にわたり連日40人を上回る感染者が出ている。この半分は、歓楽街の関係者を事前に検査した結果だ。「後追い」でなく、「三蜜」のリスクが極めて高い場所での事前検査である。それだけに、ゆとりを持って対応できる。早期発見で、今後の感染者を減らす効果があるのだ。

     

    『中央日報』(6月15日付)は、「新型コロナの2次大流行、手遅れでは阻止できない」と題する社説を掲載した。

     

    韓国はもちろん、中国と米国など世界で一時停滞していた新型肺炎が強い勢いで復活している。ソウルと京畿(キョンギ)の場合、感染者がそれぞれ1000人を突破して不安感が高まっている。特に、ソウルでは高危険群である高齢者の介護施設で集団感染が初めて発生した。新型肺炎に対する警戒心を緩めたのが大きな原因に選ばれる。特に「しばらく病んで過ぎ去る病気」程度に軽く思う若年層の防疫に対する警戒心が失われたという指摘もある。「痛くて死ぬ前に飢えて死にそうだ」という人々は防疫より経済活動を優先する。

     

    (1)「一時、海外で好評を得たK防疫の成功に酔ったのではないか、冷静な自省が必要な時点だ。実際に、防疫対策をみると、先制的な対応よりはほとんど手遅れの対策だ。防疫の死角地帯は目に見えるが、なぜもう少し先制的に対応できないのか。感染者1人が数人にウイルスを移すかを見せる再生産指数(R値)は最近、首都圏(1.2~1.8)が非首都圏(0.5~0.6)の2~3倍にもなる。人口の50%が集中している首都圏がさらに脆弱ということだ。ついに政府は12日新規感染者が一桁に落ちるまで「首都圏防疫管理強化案」を無期限維持すると発表した。すでに効果が小さい対策をそのまま維持して新型肺炎を撲滅できるのか疑問だ」

     

    感染者1人が、何人にウイルスを移すかを見る再生産指数(R値)は最近、首都圏(1.2~1.8)であり、非首都圏(0.5~0.6)の2~3倍にもなる。この驚くべき結果に、韓国防疫当局は青ざめている。「K防疫」と自慢した韓国の防疫体制に、大きな穴が開いているのである。自慢するのが早すぎたのだ。

     


    (2)「専門家らは、距離確保の水準を直ちに高めなければ、「2次大流行」が秋より早く発生する可能性があると警告する。国立がんセンターのキ・モラン教授チームは4月30日~6月11日平均R値(1.79)が維持される場合、7月9日には一日感染者が826人にもなり得ると警告した。一歩間違えれば社会的距離確保を再び施行することを含んで準備に万全を期しなければならないという意味だ」

     

    韓国のコロナ防疫体制では、大統領府が口出しをしている。「全数調査」は、大統領府の素人集団が政治的思惑で強引に実行させたもの。中国でも、武漢市で先頃600万人のPCR検査を行ない、胸を張っていた。その矢先に、北京市の総合卸売市場で大量感染が発生している。この600万人分の検査の「偉業」も色あせるのだ。全数調査には、こういう的外れなことが起こる。

     

    防疫専門家の勘を働かせて、リスクにあるところ(総合卸売市場)で先回りして検査すべきだった。東京が、歓楽街の関係者を「予防的に検査」して多くの陽性者を発見したことは大手柄である。韓国も中国も、「三蜜」の場所を集中的に検査すべきであった。

     

    日本が、このままで推移して大事に至らなければ、「日本モデル」が脚光を浴びるであろう。「K防疫モデル」は、世界で先行して評判になった。現状では崩れかかっている。日本は、韓国失敗の轍を踏まないように「三蜜」回避で全力を挙げるべきだろう。日本の暫定的「成功要因」は、次の3点である。

     

    1)クラスター調査に全力を入れた

    2)横浜の大型クルーズ船による教訓で、「三蜜」回避に全力を挙げた

    3)保健所の防疫機能がフル回転した

     

    以上の3点に、全数調査は入っていない。疫学の原点に立った防疫対策の成果である。


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    韓国与党と大統領府は、旧徴用工補償で担保に差し押さえている新日鉄の株券(約6500万円)を現金化する方向に傾いている。日本の報復は大した痛手にならないという見方だという。しかし、1億円に満たない金額で、日韓が外交的に激突するデメリットを考慮しない辺りに韓国の狭量さが滲み出ている。

     

    日本のGDPは、韓国の約2.4倍である。この違いを頭に入れるべきである。しかも、日本の技術と資本が韓国経済の隅々までに浸透している。こういう毛細血管の役割を果たしている日本と、角付き合わせの関係になったらどうなるか。冷静に考えられないのが、韓国の一大欠陥である。しかも、繰返すが1億円未満の金額である。「感情8割、理性2割」の国民性を100%示した動きである。

     

    『中央日報』(6月15日付)は、「『日本の報復にも耐えられる』韓国与党、年内日本企業資産現金化論」と題する記事を掲載した。

     

    最近、裁判所が強制徴用被告企業の国内資産売却手続きに入ることで韓国政府の中では「今年中に日本企業の資産の現金化が避けられず、日本の2次報復措置に備える必要がある」という雰囲気が強まっていると複数の消息筋が14日、明らかにした。

    (1)「外交部の公式立場は、「現金化する前に最大限日本政府と解決方法を探りたい」というが、青瓦台など与党核心部では「現金化以降」に備える必要があるという声がますます高まっている。このままなら結局「現金化→日本の2次報復措置→韓国の追加措置」に続き、1965年韓日国交正常化以来55年ぶりに両国関係が最悪の状況を迎える兆しも見せている。与党の内部事情に詳しいある消息筋はこの日、中央日報に「裁判所が年内日本製鉄の韓国資産を強制売却することに対して青瓦台内でもこれを既成事実として受け止めている雰囲気」として「これに伴い、日本の2次報復に備える動きがある」と明らかにした」

     

    韓国与党は、先の総選挙で議席の6割を握ったので、野党の追及を恐れることなく「反日は何でもできる」と超強気になっている。危険である。この際、日本はこういう韓国に対して「教育効果」を狙った対応も必要だろう。つまり、隣国・日本とはどう付合うべきかを深く考えさせる対抗措置である。

     

    (2)「与党の内部事情に詳しいある消息筋は、「昨年から(現金化以降の)日本の予想される各種経済報復措置を検討した結果、日本が使えそうなカードが多くなくその衝撃による波も思ったより大きくないという判断が作用している」と伝えた。政府のこのような判断の背景には昨年日本の「輸出規制」に対する“予防注射”の効果が働いているという。経済産業省が昨年7月1日付で韓国の主力輸出品目である半導体素材・部品の3品目を対象に規制したが、体感打撃がそれほど大きくなかったという結論を下したということだ。

    下線部分は、日本が韓国の生産に影響を与えないという配慮で行なった措置である。日本が、「手心」を加えた緩いムチであった。そのムチが痛くなかったから、「体感打撃」が大したことはなかったと言っている。WTOへ提訴した理由とは、全く違った矛楯した発言である。ここら辺りに、韓国の軽率さを感じるのだ。つまり、論理が一貫せず、行き当たりばったりである。日本への対応を間違える土壌がこれだ。

     

    (3)「3日、産業通商資源部は日本の輸出規制問題で世界貿易機関(WTO)への提訴手続きを再開した。このような一連の措置は日本の2次報復措置に「耐えられる」という与党核心部の判断にともなう実行措置という観測も出ている。日本は強制徴用問題で自国企業の国内資産処分を韓日関係のレッドラインだと数回言及してきた。茂木敏充外相は今月3日、康京和(カン・ギョンファ)外交部長官との電話会談で「日本企業の韓国内資産現金化は深刻な状況を招くだろう」と警告したことをはじめ、数回にわたって日本の立場を伝えてきた」

     

    韓国は、日本から供給される中間財を加工して輸出している関係にある。その大事な供給先の日本と一戦、交えようという話だ。日本の国内世論がどう反応するかを、計算に入れていないのである。日本は売られた喧嘩であれば、「韓国と戦え」という世論になることを忘れている。日本の世論が少々、「手荒」なことでも要求するリスクを見落としているのだ。

     


    (4)「日本側は自国企業の韓国内資産が強制売却されれば報復措置に踏み切ると公言してきた。昨年3月には「日本政府は現金化に備えて100件余りの報復リストを作っている」という共同通信の報道もあった。
    韓国政府が検討してきた日本の2次報復措置の中で有力な案の一つに日本国内の韓国企業の「資産没収」の措置もあると確認された。韓国側が日本製鉄などの財産を強制処分するように「目には目を歯には歯を」の報復措置だ」

     

    日本が、行なう韓国企業の資産没収は序の口である。1億円未満の金額であるから、韓国には痛くも痒くもない話である。問題は、その後につづく日本の報復である。金融措置が大きいと見られる。日本の金融機関が、韓国金融機関に貸付けている。それに圧力をかけることもできる。

     

    (5)「その他にも日本の2次報復措置は通貨スワップを延長しないなど金融措置とビザ制限の延長などにつながり得る。しかし、日本との通貨スワップは独島(ドクト、日本名・竹島)問題などで2015年2月すでに停止され、韓国は現在米国〔600億ドル(約6兆4000億円)〕をはじめ中国・スイス・カナダなど9カ国と1932億ドル規模の通貨スワップを締結している」

    韓国に通貨危機が起こった時、日本の支援は一切、受けられないことが自明であれば、投機筋は安心してウォン売りに拍車を掛けてくるだろう。韓国は、その防戦で失うドルが巨額なものになるはずだ。日本の円という「安全通貨」から切り離されている「ウォン」が、どれだけ弱い立場であるかを存分に知ることになろう。日本との不和は、韓国にとって何一つメリットにならないのである。

     

    (6)「ある外交消息筋は、「日本側も報復措置の実効性が大きくないということを分かっているが、自国企業の資産に対する競売段階に入れば国内政治的のレベルで何でも報復措置をしようとするだろう」と話した」

    韓国は、この点を完全に忘れている。自国の立場だけで問題を考えている。この際、日本は100年の計で韓国への対応策を決めるべきであろう。再び、こういう事態が起こらないようにするにはどうするか。日本が、妥協しないことだ。


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