勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。


    映画で見るスパイには、必ず女性が登場する。男をスパイの手先にするには、これが、古典的手法のようだ。このほど、米司法省が相次いで逮捕した中国スパイの3大手口では、女性のほかに、パソコン供与と学費支給で学生をスパイに一本釣りした様子が分るという。

     

    『大紀元』(11月5日付)は、「米ジャーナリスト、中国のスパイ・スカウトの手法を分析」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「正式な接触の前、「スポッター(spotter)」と呼ばれる中国の調査員が、ターゲットについて調査・評価を行う。そして、その結果を情報機関の幹部に提出する。幹部らは、正式なスカウトに値するかを再評価する。スポッターの多くは、シンクタンク、大学、企業幹部であり、スカウトに直接関与していない」

     

    (2)「ターゲットになった米技術者をスパイ活動に駆り立てるため、さまざまな手段で動機づけをする。金品の供与、イデオロギーの宣伝、脅迫、またはスパイ生活のスリル感を味わせるなどなど。中国当局は、中国人をスカウトする場合、脅迫や愛国心の利用などの手段を多用している。欧米人に対しては、金品の提供が多い」

     

    (3)「中国の工作員はターゲットとなった欧米人に、直ちに祖国への反逆を求めることはない。まず気づかれないように良好な関係づくりに腐心する。米中央情報局(CIA)ブレナン前長官は、「(スパイになった米国人が)気づいた時点ですでに時遅し」とその手口は巧妙だと述べた」

     

    (3―1)「2001年中国に留学し、その後中国上海に移り住んだバージニア州出身の大学生、グレン・シュライバー(Glenn Shriver)氏は04年、諸外国の貿易白書の作成スタッフを募集する新聞広告を見て、応募した。広告を掲載した中国人が、シュライバー氏に120ドル(約13537円)の論文作成費を支給し、同時に2人の男性を紹介した。学生と2人の男性は親しくなるにつれ、男性らは学生に対して、米への帰国、米の国務省またはCIAでの就職を薦めた。中国の情報機関は、大学生に採用試験の参加費として、3万ドル(約338万円)を与えた。大学生は2回採用試験を受けたが、2回とも失敗した。2007年、CIAの秘密プロジェクトの採用試験にも応募した。中国情報機関はその際、学生に4万ドル(約451万円)を渡した。大学生はその後、逮捕された。米諜報当局は大学生をモデルにした啓発ビデオを作成した。海外に留学している米国人学生に対して、中国人工作員からの誘惑に警戒を高めるよう呼び掛けた」

     

    (4)「ターゲットとなる人に対して、中国情報部員は時にストレートにスパイ行為の強要を切り出す。20172月、CIA元幹部のケビン・マロリー(Kevin Mallory)氏がソーシャルメディアのリンクトインで、中国の上海社会科学院の職員と自称する人物からリクエストを受け取った。FBIは、中国国家安全省は、中国社会科学院と連携して活動していると指摘した。社会科学院の職員と名乗る中国の工作員は多く存在するという。マロリー氏はその後、電話を通じてこの上海社会科学院の職員と連絡を取り、174月に中国で2回面会した。そこで、マロリー氏は特別な電話機を受け取り、安全なメッセージ機能を使って中国の「顧客」に連絡する方法を教えられた。マロリー氏は中国の対米政策白書の作成に2回協力した」

     

    FBIは、中国国家安全省が中国社会科学院と連携して活動していると指摘した。社会科学院の職員と名乗る中国の工作員は多く存在するという。中国社会科学院といえば、哲学及び社会科学研究の最高学術機構であり、総合的な研究センターだ。研究所31、研究センター45、研究者4200人を擁し、中国政府のシンクタンクとして大きな影響力をもつ。また世界80ヵ国のシンクタンク、高等研究機関200余りと日常的に交流する。政府直属事業である。

     

    この中国社会科学院が、中国のスパイ活動の一端を担っているとは驚きである。学術研究に名を借りてスパイに誘い込むとは、恐るべき国家である。ここまでスパイする意図は何か。相手国を出し抜き、陥れる謀略を秘めているのだろう。この地球上に、このような国家が存在すること自体、恐怖である。後進国が、先進国へのし上がろうという謀略である。労せずして甘い汁を吸う策略だ。「中国製造2025」は、まさに謀略のシンボルであろう。

     

    中国が、ここまで謀略に長けているのは、中華帝国の戦略そのものを受け継いでいる証拠だ。こうした手練手管を駆使し、中国の版図を拡大してきたに違いない。

     

    (5)「スパイとその指令役(handler)の連絡方法は以前の直接会うことから、現在暗号化された通信機器の利用に変わった。FBIは今年1月、中国情報機関の指示を受けて米国内でスパイ行為を繰り返していたとして、CIA元職員の李振成(英語名、Jerry Chun Shing Lee)氏を逮捕・起訴した。起訴状によると、20104月李氏は中国の工作員2人に会った。工作員は李氏に金品の供与を約束し、その見返りとしてCIAに関する情報の提供を求め、密かに連絡するために、李氏に複数の電子メールアドレスを提供した」

     

     



    国家に忠誠を尽くした退役軍人が、年金で暮らせないとデモを繰り返す。こういう国家がこれから発展できるだろうか。中国では現在、50歳代の退役軍人が待遇に不満を持っている。米国は、退役軍人に対して最大限の敬意を表わす。この米中の違いを見ただけで、米中の覇権争いが本格化する前から決着がついたようなものだ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(11月5日付)は、「中国で退役軍人デモが続発、背景に格差」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国で退役軍人によるデモ活動が続発している。ベトナムとの中越戦争に従軍した50代以上が中心となって生活手当などの引き上げといった待遇改善を求めており、地元の公安当局と相次いで衝突している。人民解放軍は中国共産党の基盤であり、退役軍人の総数は5700万人以上に達する。デモ発生の背景には貧富の差拡大という中国社会の深刻な問題があるだけに、異例の長期政権を視野に入れる習近平(シー・ジンピン)最高指導部のアキレス腱となる可能性もある」

     

    退役軍人5700万人に満足な年金も払えない。そういう中国が、軍拡に力を入れて米国に対抗するとは恐れ入る。この一事をもっても、中国の軍事覇権はあり得ないことだ。今後、さらに増えてゆく退役軍人が不満を募らせ、慣れた武器操作の経験を生かした反乱を起こす危険性が高まるはずだ。そういうリスクを考えない習近平氏の頭脳構造は、どうなっているのだろうか。

     

    (2)「(上京する)退役老兵を暴力で阻止した黒幕をあぶり出し、暴力団を撲滅せよ」。そんな横断幕を掲げた高齢の退役軍人らが104日から、山東半島の付け根にある山東省平度市に集結した。海外の中国語ニュースサイトなどによると、黒竜江、吉林、遼寧、河南、浙江、四川、福建の各省などから1000人以上が集まって行進。公安当局が催涙ガスなどを使って阻止に動き、退役軍人らはこん棒や消火器などで抵抗したが、7日までにほぼ鎮圧されたという」

     

    国の安全を守った退役軍人に対して、催涙ガスを使って鎮圧する。そこには、憎悪しかない悲劇的な結末が待っている予感がする。退役軍人へのこの扱いは酷いものである。「ない袖は振れない」という財源不足が、引き起こした問題だ。この状態で、どうやった軍拡が出来るのか。そこまでやって習近平氏は、自らの権力欲を満たそうというのであろう。

     

    ‘(3)「デモの発端は平度市の退役軍人38人が北京に行って生活手当などの引き上げを陳情しようとしたこと。デモ参加者によると、地元の公安当局が鉄道チケットの販売を認めなかったため、鉄道乗車をあきらめて車に乗って北京に向かった。しかし、公安局幹部が暴力団数十人を率いて殴る蹴るの暴行を加えて上京を邪魔したという。退役軍人らはスマートフォン(スマホ)のチャット機能などで事件を仲間に訴えたことから、全国の退役軍らが抗議活動のために集まった」

     

    過去の中国の革命騒ぎは、すべて地方の暴力団が主体であった。現在の暴力団は、政府の用心棒になっている。新たに退役軍人が、革命騒ぎの主体に躍り出る可能性を持ってきた。中国の荒っぽい統治は、こういうミスの積み重ねによって崩れるのだろうか



    104日、ペンス米副大統領が歴史的は「中国批判演説」を行なった。経済、政治、人権、軍事など多方面から中国の政策を批判したもの。ペンス副大統領は、「中国の安全保障機関が、最先端の軍事計画を含む米国の技術の大規模な窃盗の黒幕です」と言及したが、その後、次々とスパイが逮捕された。

     

    『大紀元』(11月4日付)は、「貿易戦争に変化か 米中首脳が電話会談 中国側が低姿勢に」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「司法省は(10月に入って)中国産業スパイの取り締まり強化に乗り出し、中国の情報部員を次々と起訴・逮捕した。司法省はまた111日、米半導体企業の企業機密を盗んだとして、中国国有半導体メーカー「福建晋華集成電路」(JHICC)などを起訴した。米政府のこの動きで、今後中国当局が米で作り上げたスパイ・ネットワークが完全に破壊する可能性が高い。スパイ行為に関係する国有企業、党幹部らは米政府による資産凍結や他の金融制裁を受けるとみられる」

     

    このパラグラフで注目されるのは、次の点だ。

       中国当局が米で作り上げたスパイ・ネットワークが完全に破壊される可能性が高い。

       スパイ行為に関係する国有企業、党幹部らは米政府による資産凍結や他の金融制裁を受けるとみられる。

    米国の執拗な捜査によって、中国の産業スパイ網が一網打尽になったかどうか。いずれ、中国の国有企業などは金融制裁を受ける。この金融制裁は、米国銀行との取引を禁じられるもの。広範囲な経済活動が制限を受ける痛手は大きい。

     

    中国の産業スパイ網が、今回の米司法省の摘発で大きな打撃を受ければ、技術窃取は困難になる。これが、「中国製造2025」に影響を与えるであろう。ここから、中国が弱気になって米国との貿易戦争で妥協の姿勢を見せ始めるのでないか、という観測も出ている。



    米中貿易戦争の影響は、中国最大の広州貿易会の商談にも現れた。中国国家統計局が、10月31日に発表した10月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は、50.2と前月の50.8から低下しており環境悪化を示していた。10月の新規輸出受注を示すサブ指数は46.9。9月の48.0から低下し、5カ月連続で50を下回っていた。

     

    『日本経済新聞 電子版』(11月4日付)は、「中国最大の貿易商談会、3年ぶり前年実績下回る」と題する記事を掲載した。

     

    「中国最大の貿易商談会「中国輸出入商品交易会(広州交易会)」が4日、閉幕した。中国メーカーと海外の輸入業者(バイヤー)が結んだ1015日から約3週間の契約額は、前年に比べ1%減の2986千万ドル(約34千億円)だった。米中貿易摩擦が激化し、国・地域別で2番目に多い米国からのバイヤーが減ったことが響いた。同商談会は毎年春と秋に広東省広州市で開く。今回は3年ぶりに前年実績を下回った。契約額は向こう半年間の中国の輸出の先行きを占う指標とされる」

     

    秋の広州交易会は、前年に比べて1%減の契約額に留まった。3年ぶりに前年実績下回ったもの。ただ、この程度の減少に留まっていたのか疑問である。前記のPMI新規輸出受注では、すでに10月で連続5ヶ月減少になっているからだ。

     

    広東省の製造業PMIは、これまで低迷しているので、広州の契約額には水増しはなかったのか。GDPまでその信憑性が疑われる国である。信用は出来ない。

     



    今回の安倍首相訪中は、中国国民に日本のODA(政府開発援助)による中国支援を認識させたことであろう。40年間にわたる支援額は、3兆6500億円に上る。このODA資金は、どこに使われていたか。インフラ投資に向けられ、外資系企業の中国進出にあたり大きな力を発揮した。

     

    中国は、技術も資本もない国であった。それが、現在のGDP世界2位になれた原動力は、外資系企業の進出にあった。その道を開いたのが日本のODAである。この事実認識を明確にしておきたい。

     

    『サーチナ』(11月4日付)は、「日本のODAは大きな助けになったが、経済成長はわが国が努力したからー中国」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「日本が中国に対して行ってきた政府開発援助(ODA)の終了について、中国では様々な報道がなされている。中国メディアの今日頭条はこのほど、「中国経済の成長は日本の援助に依存したものではなく、中国の努力によって成し遂げられた」と主張する記事を掲載した。ODAが始まった1979年当時の中国は、工業化を進めるためにインフラの建設費用や技術、人材の育成を必要としていた。それゆえ記事は、「ODAによる無償資金協力、円借款、技術協力を受けたことは大きな助けになった」と指摘。しかし、現在の中国経済は国内総生産(GDP)では日本を上回って世界第2位となっており、「引き続き日本からの支援を受けるのは理にかなわない」と指摘した」

     

    このパラグラフでは、「ODAが始まった1979年当時の中国は、工業化を進めるためにインフラの建設費用や技術、人材の育成を必要としていた」と言っている。この基礎部分で日本のODAが役立ったという認識まではあるようだ。その後は、「中国人の努力」だと言って胸を張っている。この辺りの認識になると、よく理解していないようだ。

     

    (2)「一方で記事は、日本が中国に対して行った援助は中国全体の発展からするとごく一部に過ぎないと主張した。たとえば、上海の宝鋼鋼鉄集団が日本の支援を受け、日本人技師らと計画した製鋼工場は、規模としては中型で一部の需要を満たすのみに過ぎないと主張したほか、40年間に日本が供与した金額と、現在の中国の鉄鋼生産量を比較しても「日本の援助は大きな影響を与えたと言える金額ではない」と主張し、「中国経済の成長は日本に依存したものではなく、中国の努力によって成し遂げられたものである」と主張した」

    このパラグラフのおかしい点は、次のような喩えを持出せばよいだろう。

     

    「穀物の種をくれた人がいたとする。その種を蒔いたら何百倍もの収穫があった。その収穫高と種の量を比較して、収穫高が多いからこっちの方が上」という自慢話と同じなのだ。種をくれる人がいなければ、多量の収穫は上げられない。こういう単純な事実を思い浮かべれば、中国が日本に自慢するのはお門違いである。



     


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