勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    新型コロナウイルスは、関西圏が警戒解除の段階にこぎ着けた。後は、首都圏と北海道を残すだけである。ここで、耳寄りな情報が登場した。広島大学名誉教授による予測では、7月7日に日本全体が、現段階での収束(終息ではない)となる見込みだ。この予測では、これまでの感染者数の推計と実績が、ほぼ一致しており7月には、発症前の状態に戻れるという。

     

    『中国新聞 デジタル』(5月20日付)は、「自粛を続けたら新型コロナ7月収束予測、広島大名誉教授が解析」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「ピークを越えたように見える新型コロナウイルスの感染について、広島大の山本民次名誉教授(環境予測制御学)は、「自粛」を続けると7月上旬にいったん終息すると予測する。流行状況を解析し、1カ月前から「接触の8割削減」を実現できていたと説明する。経済活動が活発になっても各自が手洗いやマスク着用をすれば、感染者は減っていくとみる

     

    首都圏と北海道の緊急事態宣言解除も目前に来ている。現在の手洗いやマスク着用の生活を続ければ、感染者は自然に経る見込みである。

     

    (2)「山本名誉教授は、全く予防策を講じないときは感染者1人が25人にうつすと設定し、潜伏期間を5日間、発症から自然治癒までの期間を10日間として解析した。5月10日までに、実際に検査で確認された感染者と死亡者のデータ、入国の状況、治療による回復過程なども数式に組み込み、国内初の感染者が出た1月15日から6カ月間について計算した。

     

    (3)「この解析から、緊急事態宣言が全国に出された4月中旬には1人の感染者が感染させる人数は既に02人程度で「接触の9割削減」を達成していたとみる。計算で求めた各時点の感染者は「実際の数にほぼ合っている」と山本名誉教授。4月30日のピーク時の実測値が計算値より低くなったのは、感染者を早く見つけて治療するようになり、感染が広がりにくくなったためとみる

     

    ここで、予測値と実績の推移をグラフで表せないが、見事に一致しており信頼度は「パーフェクト」と言えそうだ。下線のように、4月30日の感染者ピークは、予測よりも低くなっている。これは、防疫体制が効果を上げていた証拠と見る。世論は、政府対応の遅れを批判したが、防疫活動に遅れはなかったようだ。先ずは、成功と言える。

     

    (4)「『自粛』を続けると7月7日には全国の感染者はピーク時の1%の約100人となり、感染はほぼ収まる計算になる。その時までの死者は約840人と予測する。しかし今後は、経済活動が活発になり、接触機会が増える。山本名誉教授は「実際の収束は先に延びる可能性は高い」とする一方、「これまで通り、手洗いと消毒、マスク着用など感染予防策を続ければ、医療崩壊を招くような爆発的な患者の増加は防げる」と見込む」

     

    自粛生活を続ければ、7月7日には全国の感染者は100人に減るという。昨日(20日)の全国の新規感染者数は37人。すでにかなりの減少である。このことから言えば、防疫体制と国民の自粛生活は、予想以上の効果を上げていることになろう。

     

    ここで、日本のコロナ死亡者の人口100万人当りの数字(5月10日現在)は、4.6人である。中国の3.3人より多いが、韓国の5.0人を下回っている。中国は、感染者数を隠しており、その秘密リストによれば実数は公表の約8倍である。この点は、このブログで紹介済みだ。そこで、中国の「3.3人」を8倍すれば、26.4人が実際の人口100万人当りの死亡数となろう。

     

    こういう補正をすると、日本の死亡者数(人口100万人当り)は、世界最低であることが分かる。日本は大いに自信を持つべきだ。日本特有の悲観論で肩を落としてきたが逆なのだ。韓国ほど威張れとは言わぬまでも、もう少し胸を張って「世界一」を発信すべきだろう。

     

    では、なぜ日本が「世界一」なのか。これが、謎という説が多い。ノーベル賞の山中京都大学教授は、抗体検査を行なえばその謎が掴めるという。山中教授は、その謎を「ファクターX」と呼んでいる。これこそ科学的な究明を待つしかないが、PCR検査数では世界最低部類で、死亡者数が世界一低いとなると、「Why?」である。さあ、元気を出そう。


    あじさいのたまご
       

    元慰安婦怒りの一石が波紋

    新国会議員が疑惑の焦点へ

    1人で牽引の支援活動騒動

    慰安婦否定の理性派復活も

     

    韓国は現在、一人の元慰安婦が、慰安婦支援団体の「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」(「正義記憶連帯」)の前リーダー(先の総選挙で国会議員に当選)を告発する記者会見により大揺れである。その後、事態は急進展し市民団体の告発を受け、韓国検察は20日、家宅捜索に入った。ついに、事件化したのだ。

     

    毎週水曜日、在韓国日本大使館前で開催している抗議集会で集められる募金が、元慰安婦の支援にほとんど使われていないと暴露したからだ。小学生まで動員される水曜日の抗議集会は、「国民行事」になった感すら与えてきた。その際、小学生は小遣いを貯めて募金に応じたのである。その浄財が、元慰安婦の下に届けられず、流用されてきたという告発である。誰でも聞けば、腰を抜かす話である。

     

    元慰安婦怒りの一石が波紋

    元慰安婦の李容洙(イ・ヨンス)さん(92)は、5月7日に大邱(テグ)市内のカフェで記者会見を行い、慰安婦関連団体の運営がまともにされていないとした上で、「水曜集会をなくさなければならない」との考えを明らかにした。以下は、『中央日本』(5月7日付)の報道を要約した。

    1)李さんは、水曜集会への義援金などを通じて調達された財源が被害者のために使われず、寄付金使用の透明性に対する疑問を提起した。

    2)李さんは、参加した学生たちが出した義援金はどこに使うかも不明である。義援金や基金などが集まれば、被害者に使うべきなのに被害者に使ったことはない。
    3)李さんは、来週から水曜集会に参加しない。集会は学生たちに苦労させ、わずかばかりの金を使わせ、まともな教育にもならない。
    4)関連団体で出版した慰安婦の事例をまとめた本は、内容検証がしっかりされないまま出され販売されている。
    5)第21代国会議員総選挙で「共に市民党」から比例代表で当選した尹美香(ユン・ミヒャン)前「正義記憶連帯」代表に対して、尹氏が慰安婦問題を解決しなければならない。尹氏は国会議員をしてはならない。この問題を(運動の現場で)解決しなければならない。
    6)李さんは、これ以上どんな団体とも一緒に運動をやらない。水曜集会にも参加しないだろう、と繰り返し明らかにした。

     

    92歳という高齢の元慰安婦が、水曜集会の実態を暴露し、水曜集会を主催した尹美香氏の国会議員進出を批判した記者会見が、韓国の進歩派を窮地に追い込んだ。ただ当初の反応では、与党「共に民主党」が尹氏を擁護し、「事態究明派」を親日派のあがきとして切り捨て、歯牙にも掛けない態度であった。

     

    だが、その後に広がり始めた疑惑は、募金が私利私欲のために使われていたことが判明した。具体的な内容は、次のようなものだ。

     

    1)元慰安婦の人たちのリクレーション施設目的に、時価の2~3倍で施設を購入した。

    2)その施設は誰も、その存在を知らず、リクレーション施設として使用されなかった。

    3)管理人名義で、尹氏の実父が住み給料まで支払われた。

    4)先の記者会見で告発されると、翌日、時価の半額で売却した。

     

    事態がここまで急展開し、同じ市民団体から刑事告訴された。さすがの検察庁も、大統領府の顔色を見ることなく受理、5月20日には捜査が始まる慌ただしさである。元慰安婦支援にまつわる募金流用問題はこれに限らず、他の団体でも内部告発され明らかになった。

     

    日本でも、その名前が知られている「ナヌムの家」は、元慰安婦女性たち6人が生活している場である。この「ナヌムの家」を運営している社会福祉法人「大韓仏教曹渓宗ナヌムの家」が、職員によって告発されている。元慰安婦に使われるべき後援金が、流用されてきたのだ。ナヌムの家」で暮らしている元慰安婦に、まともな治療も受けさせず放置してきたという。しかも、元慰安婦が存命中に大型募金を行い、「ホテル式療養院」を経営する目的まで話合われていたという。元慰安婦を食い物にする「謀略」である。

     

    こういう二つの事例は、元慰安婦問題がビジネスの種にされてきた忌まわしい事実を示している。韓国社会が、これに気付かずにいたことにも愕然とするのだ。

     

    新国会議員が疑惑の焦点へ

    韓国は、慰安婦問題が人権侵害の最大事例として、日本を糾弾し続けている。日本政府が2015年12月、日韓慰安婦合意に基づき10億円を拠出し、慰安婦問題は永遠に不可逆的な解決とした。だが、2017年の文政権の登場は、元慰安婦の同意を得ていないという理由で一方的に破棄した。その際、破棄に一役買ったのが、前記の尹美香氏である。日韓合意前、韓国外交部は尹氏に交渉内容を伝えていたとされる。尹氏は、知っていたのだ。

    (つづく)


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    韓国は、ガラス細工のような心理状態である。日本に対して疑心暗鬼なのだ。河野太郎防衛相が、ツイッターに朝鮮半島の地図が壁にかかっている執務室の写真を公開したことで、憶測を始めている。日本が朝鮮半島を未来の戦場とみているのではないかとの解釈が出ているというのだ。これは、全くの誤解であり、地政学の変化を知らない素人の見方だ。

     

    「日本の竹島領有権の主張などで両国間に微妙な雰囲気が感知されている状況で、韓国を刺激するためのものとも見ることができる」。韓国紙『中央日報』は、こういう独断と偏見に満ちた記事を書いている。

     

    防衛大臣室に、朝鮮半島の地図が架かっていることがそれほど不気味だろうか。単なる装飾品代わりのものだろう。防衛大臣室であれば、周辺国の地図があっても不思議はない。これが、作戦参謀室にあって、机上に広げられていれば問題視するも良かろう。朝鮮半島地図は、大臣室で絵画と同様に壁に掛かっているに過ぎないのだ。

     

    この韓国は、もう一つ気にしていることがある。日本の外交青書で韓国よりも台湾を「褒めている」とジェラシーを見せている。それなら、「反日不買」などやらなければいいのだ。

     

    『中央日報』(5月20日付)は、「韓国を『重要な隣国』と表現の日本、台湾には『極めて重要なパートナー』」と題する記事を掲載した。

     

    韓国に対して「重要な隣国」という表現を3年ぶりに復活させた日本政府の今年の外交青書が、台湾を「極めて重要なパートナーであり、大切な友人」と表現した。

    (1)「日本経済新聞は20日、前日に配布された外交青書に関する分析記事で、(台湾について)「2019年版で半ページほどだった分量を約1ページに倍増した。世界保健機関(WHO)総会の台湾のオブザーバー参加を『一貫して支持してきている』と新しく明記した」と紹介した。同紙は「安倍政権で台湾を重視してきた延長線上だ」という政府関係者の話を紹介した」

     

    台湾重視は、日米豪印4ヶ国による「インド太平洋戦略」において当然のことである。韓国が、日本の安全保障政策において占める地位は、米国、豪州、印度、ASEANに次いで5番目に落ちている。それは、南シナ海・東シナ海が地政学的に重要な意味を持つ結果だ。台湾は、「インド太平洋戦略」のキーストーンになる。日本にとっての台湾は、反日の韓国よりも重要な役割が期待されている。

     


    (2)「報道によると、安倍晋三首相が再執権(2012年12月)する前の2012年版の外交青書は台湾を「重要な地域」と表現していた。しかし安倍首相の執権後の2013年版では「重要なパートナー」に変わり、2015年から「基本的価値を共有」「大切な友人」などの表現が追加された。昨年は「自由、 民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的価値を共有する重要なパートナーであり、大切な友人」とした表現が、今年は「極めて重要なパートナーであり、大切な友人」に格上げされたのだ」

     

    このパラグラフは、まさに日本の防衛線にとって果たす台湾の重要性が年々、高まっていることを、言葉で示していると思えば良かろう。韓国が、ジェラシーを覚えることではないのだ。

     

    (3)「安倍首相は、今年1月の施政方針演説で、2006年以来初めて台湾に言及した。自民党の外交調査会なども先月、「台湾にもっとしっかりページを割くべき」という意見を外務省に伝えたという。安倍首相と自民党のこうした態度には、中国との激しい対立の中で台湾の重要性を強調する米国のトランプ政権に歩調を合わせようという意図が込められているとみられる。日本経済新聞は「台湾は海洋進出に力を注ぐ中国に向き合う上で重要だ。半導体産業や観光など経済的な結びつきも強い」と伝えた」

     

    地政学的には、台湾の方が韓国よりも重要である。尖閣諸島防衛を考えれば分かるはずだ。台湾の協力を得られれば、中国を軍事的に牽制できるからだ。その意味で、韓国が日本防衛に果たす役割は小さくなっている。

     

    (4)「今年の外交青書は韓国については「日本にとって重要な隣国」という表現を3年ぶりに復活させた。しかし「日韓関係は難しい状況が続いた」とし、全体的には韓日関係がふさがっている局面を反映する内容が大部分だった。台湾に対して使用した「価値観の共有」などの表現もなかった。日本で「安倍政権の友軍」と呼ばれる産経新聞は20日、「悪化した日韓関係の改善に向けた具体的な動きがない中で、前向きな表現は韓国側の誤解を招きかねない」と批判した。また「『重要な隣国』とあえて評価したのは、問題解決に動き出すよう自覚を促す狙いがある。ただ、過去を振り返れば、期待外れに終わる公算が大きい」と指摘した」

     

    下線のように韓国と共有する価値観の共有はゼロだ。国際法を無視して、日韓慰安婦合意を破棄する。また、徴用工賠償問題を蒸し返す韓国に、日本がお世辞にも「価値観の共有」など言えるはずがない。韓国は、自国のやっていることが、いかに国際法から外れているか、先ずそれを認識することが必要である。


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    中国は、国内市場を外資に開放すると言いながら、政府調達では外資系製品を入札から外す動きに出ている。2018年後半からだという。米中貿易戦争が始まると同時に開始した、国内市場保護策である。これは、WTO(世界貿易機関)のルール違反である。中国にとって、ルールは破るためにあるようなもの。この無法国は、恐れを知らない振る舞いを行なっている。

     

    『日本経済新聞 電子版』(5月21日付)は、「中国、IT国産化推進へ『秘密組織』」と題する記事を掲載した。

     

    中国がパソコンや印刷機、複写機などIT(情報技術)機器の政府調達で、外資企業の製品を少しずつ締め出している。取材を進めると、IT国産化に向けて産官学が集まった「秘密組織」の存在が浮かんできた。「おかしい。絶対に何か起きている」。多くの日本企業が異変を感じたのは昨年夏のことだった。上海市などの印刷機の政府調達で落札できない例が増えた。複写機やパソコンも日本や米国の企業の落札が難しくなっていた。

     

    (1)「ある日本企業は長年取引があった大手国有企業から「御社の複写機を買うことはできない」と告げられ、理由として「(情報を抜き取る)『バックドア(裏口)』がついているのではないか」と指摘された。「安全面は絶対に大丈夫だ」と説明しても取りあってくれなかった。複数のメーカー関係者は「外資排除のカギは『安可』だ」と明かす。正式名称は「安全可靠(かこう)工作委員会」。政府系組織「中国電子工業技術標準化協会」の傘下にひっそりと存在する、産官学でつくる会議体だ

     

    下線のような外資系製品排除の政府系組織が作られている。略称は「安可」である。

     

    (2)「2016年の設立当初の団体規約によると、安可は「安全で信頼できるハード、ソフトのコア技術の研究、応用をする非営利の社会組織」。運営費は「会費、利息収入、政府支援など」と記し、税金が投入されていることが分かる。理事会員はアリババ集団系や華為技術(ファーウェイ)系を含む企業、工業情報化省の研究所など政府機関、さらに北京航空航天大学と北京理工大学という産官学が名を連ねる」

     

    安可は、民間企業の組織だが、税金がつぎ込まれている。実態は、産官学の合同組織である。

     


    (3)「『安可』という名前を外国人が知っていてはいけない」。安可の職員は接触した外国人にこう告げる。外資の警戒を招きやすい「安可」に替え、最近は「信創」という前向きな響きの名前を使うことが多いようだ。複数の関係者によると、安可は会員企業の商品を集めた「安可(信創)目録」の案をつくり、工業情報化省が審査する。地方政府などは目録から調達商品を選ぶ。メーカー関係者が記者に見せた目録には、印刷機、複写機、ウイルス対策ソフトなど商品ごとに企業名や型番、価格まで書いてあった。基本はすべて安可の会員企業の商品だ」

     

    安可は、会員企業の商品を集めた「安可(信創)目録」の案をつくり、工業情報化省が審査する。地方政府などは、目録から調達商品を選ぶシステムである。WTOは、こういう非公開の入札システムを禁止しているが、中国政府は型破りにお構いなしである。こういう国を、国際組織に加盟させてはいけないのだ。

     

    (4)「購入目録に載るには5つの条件を満たす必要があるとされる。「非外資」「中国で生産」「中国で設計・デザイン」「自社で製品機能を試験できる」「アフターサービスができる」。5条件はさらに細かな点検項目がある。「非外資」ならば外資比率20%以下、社長もその配偶者も中国籍、中国での3年以上の販売実績など。点検項目は全部で100を超し、外資企業の商品はまず採用されない」

     

    購入リストに載る条件は5つ。

    非外資

    中国で生産

    中国で設計・デザイン

    自社で製品機能を試験できる

    アフターサービスができる

     

    前記の5項目は、純然たる中国国産を要求していることが分かる。中国が、ここまでWTO違反をやっているのだから、いっそのことWTOから排除すればよい。そうすれば、目を覚ますであろう。

     

    (5)「これらの条件は工業情報化省の担当者が口頭で伝え、紙は渡さない。目録の登録審査では工業情報化省の担当者34人が企業を訪れ、工場などに2週間ほど滞在して調べるとされる。口頭で質問し、口頭で答えるやり取りを100項目にわたって続けるという。検査機器の領収書まで調べる念の入れようだ。外資排除は18年後半から始まったようだ。ちょうど米中の貿易戦争が起きた頃で、習近平(シー・ジンピン)国家主席は18年9月に「自力更生」を国民に呼びかけた。建国の父、毛沢東が唱えた言葉で、外国に頼らず自力で困難な状況を切り開くとの意味だ。政府の情報機器を国産化する動きと符合する」

     

    中国は、秘密裏にやっている積もりだが裏が割れている。こういう違法行為が、制裁も受けずに長期に続くはずがない。必ず、懲罰を受けるであろう。

     

    (6)「中国の業界試算では政府や共産党のすべての情報機器やソフトの更新需要は総額2兆元(約30兆円)。一部の日本企業は安可会員の中国企業にOEM(相手先ブランドによる生産)供給し、規制を乗り切る方針のようだ。当面は問題がなくても、規制の過渡期が終われば、最終的にはOEMも含めて外資が排除されかねない」

     

    中国の業界試算では政府や共産党のすべての情報機器やソフトの更新需要は、総額約30兆円に及ぶという。これを、外資に渡さないという意図である。

     

    (7)「在中国の米企業でつくる中国米国商会は、4月末の年次白書で「中国は暗示的、未公開もしくは内部指針を使い、米国など外国製品の代わりに国産製品を利用するよう要求するのをやめるべきだ」と批判した。中国は外資企業の投資を保護する「外商投資法」を20年1月に施行したばかり。同法16条は「外資企業が公平な競争を通じて政府調達に参加することを保障」と明記し、安可の動きは同法違反が疑われる。北京の日本大使館は法律を所管する中国商務省に水面下で懸念を伝えたが、回答は「安全保障の問題なのでどうしようもない」だった」

     

    下線部は、外商投資法違反である。20年1月に施行したばかりの法律違反を堂々と行なっている。中国政府を信じろと言われても信じられないのだ。こういう「噓八百」を繰返している理由は何か。いつの日か、自由主義諸国を屈服させるという政治的意図に外ならない。ここまで、その意図が見通せる以上、「先制攻撃」で経済的な包囲網を徹底化させて、中国が根をあげるまで縛り上げること。容赦はしないことだ。相手が悪意を持っている以上、妥協は禁物である。

     

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    米国は、ナスダック市場で中国企業の新規公開(IPO)に厳しい条件をつけることになった。中国企業の不正会計問題が、続発していることへの対応である。最低でも2500万ドル(約26億円)、または時価総額の25%相当の金額を投資家から調達するよう義務付ける。監査状況についても新たな審査基準を設ける。事実上、中国勢の米上場を制限する内容になった。

     

    これは、米中対立がもたらした問題である。米議会では、超党派で中国企業に米国の貯蓄を利用させるなという強い要求がある。「利敵行為」という認識にまで高まっているのだ。中国が、対外的に派手な動きをすればするほど、これに反応して米国の締め付けは厳しくなる状況だ。開戦前夜を思わせるような雰囲気である。日米開戦前、米国が日本に対して取った経済的な圧迫を思い起こせば、米中対立が次第に袋小路に入ってきたことを覗わせている。

     

    『日本経済新聞 電子版』(5月20日付)は、「米ナスダック、中国勢のIPO制限へ、米中対立飛び火」と題する記事を掲載した。

     

    米取引所大手ナスダックは新規上場ルールの厳格化に乗り出す。海外企業は新規株式公開(IPO)時に、最低でも2500万ドル(約26億円)、または時価総額の25%相当の金額を投資家から調達するよう義務付ける。監査状況についても新たな審査基準を設ける。

     

    (1)「ナスダックによるルール変更方針は、同社が19日までに米証券取引委員会(SEC)に提出した文書によって明らかになった。SECの承認によって導入が決まる。ナスダックは上場ルール変更案の中で、制限の対象として中国企業を名指ししていない。ただ、ナスダック上場を目指す海外企業の多くは中国資本で、資金調達額が小さく、流動性に乏しい銘柄も目立つ。新ルール適用によって中国企業が最も影響を受ける」

     

    中国企業の上場は米国だが、実際の会計監査は中国企業が本社を置く中国で行い、大手の監査法人は現地の中国法人に監査を任せる体制を取ってきた。ここに不正会計の温床があると、長く改善を求めてきたのが、米規制当局の米証券取引委員会(SEC)だ。中国は帳簿などの詳細な監査資料については、国外へ持ち出すことを法律で禁じている。このためSECは、仮に中国企業の監査に疑いを持っても、それを裏付ける詳細な情報は中国からは入手できず、中国企業の実態をつかめないことを問題視していた。こういう背景も見落とせない。そこへ米中の対立が加わったのである。

     


    (2)「ナスダックは上場申請企業の監査状況をより厳しく審査する方針だ。SECや上場企業会計監視委員会(PCAOB)の調査に制限がかかっている国・地域の企業を対象にする。PCAOBは上場企業の会計監査を担当する監査法人を定期的に調査し、財務諸表の質を担保しようとしている。一方、中国政府は米当局による自国監査法人への調査を認めていない。監査を巡るナスダックの新上場ルールも事実上、中国を念頭に置いたものになっている」。

     

    中国は帳簿などの詳細な監査資料については、国外へ持ち出すことを禁じている。こういう根本的な規制を掛けながら、米国の資金は吸い上げるという極めて身勝手な行動に対して、米国が遅まきながら「反応」した側面もあろう。「目には目を、歯には歯を」という対応である。中国も文句を言える筋合いでない。

     

    (3)「規制当局のSECも中国企業への圧力を強めている。中国を含む新興市場に投資する際のリスクについて話し合う会議を7月に開く。今年に入って米ナスダック上場の中国カフェチェーン大手ラッキンコーヒーの会計不正が発覚し、規制当局も対応を迫られていた。現在は米国に上場する中国企業が、米国のルールを順守しているか調査できていないとした上で、投資家を不正リスクから守る新たな方策について、専門家を交えて議論するという

     

    中国企業が、米国のルールを守っているかどうか。SECが専門家を交えて議論するというが、遅すぎると言わざるをえない。これまでも、中国企業の不正会計が続発していた。米金融界が、圧力を掛けて不問に付してきたはずだ。ウォール街には、親中国派が多かったからだ。それも、もはや影響力を発揮できない局面なのだろう。

     

    (4)「ナスダックやSECの動きはトランプ米政権の対中強硬姿勢と呼応している。トランプ大統領は14日放映のテレビインタビューで米上場の中国企業への監視を強めるよう求めた。一部の議員はかねて、中国企業が米国のルールを順守しないまま、投資家から資金調達を進めている状況を問題視していた。対中関係の悪化によって、両国の摩擦が資本市場にも飛び火した形となった」

     

    米中対立が、資本市場まで及んできた。すでに貿易・技術の両面で網がかかっているが、資本市場まで「中国締出し」が始まれば。中国の受ける打撃は極めて大きい。

     

    (5)「米調査会社ディールロジックによると、中国企業が19年に米国IPOで調達した資金は35億ドルで、前年比61%減となった。ある米銀大手の株式引き受け担当者は「中国政府の方針を受けて中国本土市場や、香港市場を選ぶ企業が増えてきた」と話す。すでにアリババ集団が香港との重複上場を果たしたほか、他の電子商取引やゲーム大手も香港上場に向け準備を進めているもようだ。米中分断は資本市場でも鮮明になってきた」

     

    中国が、米国から甘いところだけ吸い上げる「ストロー効果」は終焉を迎えた。後は、自力で生きてゆくべきであろう。米国との関係が薄れることで、どれだけの影響を受けるか。壮大な「実験」が始まるのだ。

     

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