韓国の対日外交は、空洞化している。かつては、「ジャパン・スクール」として、韓国外交部でワシントンに並ぶ二大花形であった。それが、今や見る影もない。文政権になってからは、2016年12月に結んだ日韓慰安婦合意をヤリ玉に上げた結果、この交渉に尽力した日本通外交官をことごく左遷する極端な人事を行なった。
こうして日本通が影を消しており、日韓外交は潤滑油切れを起こしている。文政権の独り善がりな日本軽視の外交が、現在の苦境を招いたと言える。今回のGSOMIA騒動では、そのリアクションが表れている。日韓のパイプが切断されているのだ。
今回のGSOMIA騒動でも、日本側の意向を的確に掴む点で問題を残している。具体的には、先の米議会によるGSOMIAに関する声明では、ことごとく日本側の主張の線に沿っていたという。この動きをいち早くキャッチしていれば、米韓関係もこれほど傷がつかなかったであろう。GSOMIA問題は日韓問題でなく、米韓問題であったことを知らなかったのだ。韓国外交として、これ以上の恥辱はあるまい。
『ハンギョレ新聞』(11月25日付)は、「日本側に傾いた米国の『天秤』が顕在化、韓国は北東アジア戦略構図を十分考慮したか」と題する記事を掲載した。
(1)「政府の今回の決定(注:GSOMIA)は、南北関係が悪化し、朝米交渉に進展が見られない状況で、予想を上回る米国の強い圧力に影響されたものと見られる。文大統領が「国民との対話(タウンミーティング)」でも明らかにした原則を貫くことができず、政府の信頼性と政策の一貫性が損なわれた。チョ・ソンニョル国家安保戦略研究院諮問研究委員は、「形式上では50対50の“休戦”だが、結果的に外交安保政策の安定性と信頼性が損なわれたのが残念だ」とし、「GSOMIAの終了を強行した場合、米国の反発と韓国経済の不確実性などを考慮した決定と見られる」と分析した」
韓国が、GSOMIA破棄を棚上げしたのは、米韓関係の悪化と韓国経済の不透明性が理由としている。これが真相であろう。米韓関係は、韓国の命綱である。経済面では、日韓断絶が経済関係に甚大な影響を与えるのだ。
(2)「「中国の浮上」を牽制するために新たな枠組みに入った米国の北東アジア秩序の中で、韓国の外交的選択が持つ限界も明確になった。韓国はGSOMIAの終了を日本の輸出規制およびホワイト国(グループA)からの排除に対する対応カードとした。米国は、中国牽制を念頭に置いた韓日米安保協力の枠組みを揺るがす脅威と見なした。8月22日、韓国政府のGSOMIA終了決定直後、「文在寅(ムン・ジェイン)政府の決定は北東アジアで、われわれが直面した安保的挑戦に対する深刻な誤解を示す」という米国務省の論評がこれを端的に示している。韓国の選択と米国の利益が衝突する構図が明らかになった」
ここでは、重大な点を指摘している。韓国のGSOMIA破棄が、米国の国益に衝突すると見なされ、大きな圧力を受けた。実は、これが同盟の持つ意味であろう。同盟が「同床異夢」であれば、意味をなさないのだ。米国は今回、それを韓国に教えたと言える。
(3)「政府がGSOMIAの終了を決定する際に、このような安保構図を十分に判断したのかは疑問として残る。政府が日本の報復措置を牽制するために「GSOMIA」カードを取り出す過程で、米国を十分説得できなかったことが結果的に大きな負担になったものと見られる。政府がGSOMIAと韓米同盟の分離に失敗したことで、米国の強い圧力に直面することになったのだ」
このパラグラフは、同盟に関する認識で根本的な誤りがある。同盟とは、同一行動が前提である。好き勝手に行動する自由は制限されるはずだ。かつて、韓国軍がベトナム戦に参加した理由はこれであろう。大統領府の安保室次長は、GSOMIA破棄について「同盟の前に国益がある」という的外れの発言をして失笑を買った。この程度の認識で、GSOMIA破棄を決めたのだ。
(4)「米国の圧力は予想をはるかに超えるほど執拗だった。米国は国務省や国防総省などさまざまなルートを通じ、インド太平洋戦略の中核軸として韓米日安保協力の必要性を強調して圧力をかけてきた。「GSOMIAの終了は北朝鮮や中国、ロシアを利するだけ」だとし、GSOMIAが中国を牽制するためのものという点を明らかにした。韓国の安保利益が中国を牽制しようとする米国の安保利益と分離できないことを明確にしたのだ」
GSOMIAは、日米韓三ヶ国の安保協力の紐帯をなしている。だから、韓国がGSOMIAを勝手に破棄することは不可能である。韓国が、ここから離脱すれば米韓同盟を破棄すると同じである。韓国は、こういう厳しい現実を突付けられたのだ。
(5)「米国のこのような態度は、韓国外交にさらなる負担としてのしかかっている。韓国が中国を牽制するための韓米日安保協力の枠組みの中で自由ではないことが改めて確認されたためだ。北東アジアで韓米日協力の枠組みが強化されることに対する中国の不満が高まるだろうし、北朝鮮も独自の南北関係が容易ではないと判断する可能性がある。国家安保戦略研究院のキム・スクヒョン対外戦略研究室長は、「政府の今回の決定は、韓国が米国の影響力の下で独自に動くことは難しいというシグナルを送った」とし、「これまで韓国は自主的役割、特に朝鮮半島問題で南北の自主的解決原則を強調してきたが、現実ではこれを実現することが容易ではないという限界を露呈した」と指摘した」
韓国が、日米韓三ヶ国の安全保障体制の一翼であることを認識すれば、日韓で歴史紛争を起こし、GSOMIA破棄を試みることは不可能になる。この観点から言えば、反日など歴史問題で紛争に陥る余裕がなくなるだろう。同じループでつながっている以上、そのループを弱体化させる原因を早く取り除く作業が求められるのだ。ここまでくると、日米韓三ヶ国の安全保障体制が、日韓関係にそのあり方を問うようになってきた。同じ船に乗った「同士」という認識が、必要になるということだろう。