勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    韓国の対日外交は、空洞化している。かつては、「ジャパン・スクール」として、韓国外交部でワシントンに並ぶ二大花形であった。それが、今や見る影もない。文政権になってからは、2016年12月に結んだ日韓慰安婦合意をヤリ玉に上げた結果、この交渉に尽力した日本通外交官をことごく左遷する極端な人事を行なった。

     

    こうして日本通が影を消しており、日韓外交は潤滑油切れを起こしている。文政権の独り善がりな日本軽視の外交が、現在の苦境を招いたと言える。今回のGSOMIA騒動では、そのリアクションが表れている。日韓のパイプが切断されているのだ。

     

    今回のGSOMIA騒動でも、日本側の意向を的確に掴む点で問題を残している。具体的には、先の米議会によるGSOMIAに関する声明では、ことごとく日本側の主張の線に沿っていたという。この動きをいち早くキャッチしていれば、米韓関係もこれほど傷がつかなかったであろう。GSOMIA問題は日韓問題でなく、米韓問題であったことを知らなかったのだ。韓国外交として、これ以上の恥辱はあるまい。

     

    『ハンギョレ新聞』(11月25日付)は、「日本側に傾いた米国の『天秤』が顕在化、韓国は北東アジア戦略構図を十分考慮したか」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「政府の今回の決定(注:GSOMIA)は、南北関係が悪化し、朝米交渉に進展が見られない状況で、予想を上回る米国の強い圧力に影響されたものと見られる。文大統領が「国民との対話(タウンミーティング)」でも明らかにした原則を貫くことができず、政府の信頼性と政策の一貫性が損なわれた。チョ・ソンニョル国家安保戦略研究院諮問研究委員は、「形式上では5050休戦だが、結果的に外交安保政策の安定性と信頼性が損なわれたのが残念だ」とし、「GSOMIAの終了を強行した場合、米国の反発と韓国経済の不確実性などを考慮した決定と見られる」と分析した」

     

    韓国が、GSOMIA破棄を棚上げしたのは、米韓関係の悪化と韓国経済の不透明性が理由としている。これが真相であろう。米韓関係は、韓国の命綱である。経済面では、日韓断絶が経済関係に甚大な影響を与えるのだ。

     

    (2)「「中国の浮上」を牽制するために新たな枠組みに入った米国の北東アジア秩序の中で、韓国の外交的選択が持つ限界も明確になった。韓国はGSOMIAの終了を日本の輸出規制およびホワイト国(グループA)からの排除に対する対応カードとした。米国は、中国牽制を念頭に置いた韓日米安保協力の枠組みを揺るがす脅威と見なした。822日、韓国政府のGSOMIA終了決定直後、「文在寅(ムン・ジェイン)政府の決定は北東アジアで、われわれが直面した安保的挑戦に対する深刻な誤解を示す」という米国務省の論評がこれを端的に示している。韓国の選択と米国の利益が衝突する構図が明らかになった」

     

    ここでは、重大な点を指摘している。韓国のGSOMIA破棄が、米国の国益に衝突すると見なされ、大きな圧力を受けた。実は、これが同盟の持つ意味であろう。同盟が「同床異夢」であれば、意味をなさないのだ。米国は今回、それを韓国に教えたと言える。

     

    (3)「政府がGSOMIAの終了を決定する際に、このような安保構図を十分に判断したのかは疑問として残る。政府が日本の報復措置を牽制するために「GSOMIA」カードを取り出す過程で、米国を十分説得できなかったことが結果的に大きな負担になったものと見られる。政府がGSOMIAと韓米同盟の分離に失敗したことで、米国の強い圧力に直面することになったのだ」

     

    このパラグラフは、同盟に関する認識で根本的な誤りがある。同盟とは、同一行動が前提である。好き勝手に行動する自由は制限されるはずだ。かつて、韓国軍がベトナム戦に参加した理由はこれであろう。大統領府の安保室次長は、GSOMIA破棄について「同盟の前に国益がある」という的外れの発言をして失笑を買った。この程度の認識で、GSOMIA破棄を決めたのだ。

     

    (4)「米国の圧力は予想をはるかに超えるほど執拗だった。米国は国務省や国防総省などさまざまなルートを通じ、インド太平洋戦略の中核軸として韓米日安保協力の必要性を強調して圧力をかけてきた。「GSOMIAの終了は北朝鮮や中国、ロシアを利するだけ」だとし、GSOMIAが中国を牽制するためのものという点を明らかにした。韓国の安保利益が中国を牽制しようとする米国の安保利益と分離できないことを明確にしたのだ

     

    GSOMIAは、日米韓三ヶ国の安保協力の紐帯をなしている。だから、韓国がGSOMIAを勝手に破棄することは不可能である。韓国が、ここから離脱すれば米韓同盟を破棄すると同じである。韓国は、こういう厳しい現実を突付けられたのだ。

     

    (5)「米国のこのような態度は、韓国外交にさらなる負担としてのしかかっている。韓国が中国を牽制するための韓米日安保協力の枠組みの中で自由ではないことが改めて確認されたためだ。北東アジアで韓米日協力の枠組みが強化されることに対する中国の不満が高まるだろうし、北朝鮮も独自の南北関係が容易ではないと判断する可能性がある。国家安保戦略研究院のキム・スクヒョン対外戦略研究室長は、「政府の今回の決定は、韓国が米国の影響力の下で独自に動くことは難しいというシグナルを送った」とし、「これまで韓国は自主的役割、特に朝鮮半島問題で南北の自主的解決原則を強調してきたが、現実ではこれを実現することが容易ではないという限界を露呈した」と指摘した」

     

    韓国が、日米韓三ヶ国の安全保障体制の一翼であることを認識すれば、日韓で歴史紛争を起こし、GSOMIA破棄を試みることは不可能になる。この観点から言えば、反日など歴史問題で紛争に陥る余裕がなくなるだろう。同じループでつながっている以上、そのループを弱体化させる原因を早く取り除く作業が求められるのだ。ここまでくると、日米韓三ヶ国の安全保障体制が、日韓関係にそのあり方を問うようになってきた。同じ船に乗った「同士」という認識が、必要になるということだろう。

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    警官隊と学生デモの壮絶な衝突後の24日、香港で区議選が行なわれた。今回の選挙は、香港政府トップの林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官に対する支持を示すバロメーターになるとみられていた。同時に、香港政府のバックにいる習近平中国国家主席への民意でもある。現地テレビRTHKが25日に報じたところによると、民主派は全452議席のうち90%に近い390議席を獲得したという。行政長官が、香港政府は区議会選の結果を尊重すると表明せざるをえなかった。強硬策を支持した習近平氏の敗北である。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(11月25日付)は、「香港区議選、自由求めるメッセージ」と題する社説を掲載した。

     

    香港は経済的自由の恩恵を示す見本のような都市だが、現地の市民は24日、政治的自由をも求めていることを示した。区議会(地方議会)選挙の投票率は過去最高に達し、民主は候補が議席を得た。政治・法律面での自治を奪おうとする中国の試みを拒絶した形だ。

     

    (1)「区議会議員452人は地域の懸念に対応する以外の権限をほとんど持たない。それでも今回の選挙は香港全体として初めて、半年に及ぶ反政府デモに評決を下すチャンスとなった。有権者の71%超が投票所を訪れた。驚くべき結果だ。一部の香港当局者は、デモに反対する「サイレントマジョリティー(声なき多数派)」が政府支援のために投票所を訪れる可能性があると予想していた。しかし結果を見ると、一部デモ参加者の行き過ぎについて有権者がどのような懸念を抱こうと、中国政府の命令に従う香港政府を巡る懸念の方が大きいようだ」

     

    香港の区議会選挙である。東京で言えば、品川区や中央区の区議会議員選挙が、これだけ世界から注目された理由は、民意が中国か、反中国かを示すバロメーターになるからだ。その結果は、圧倒的に「NO CHINA」であった。皮肉である。2047年には「一国二制度」が終わるが、束の間の自由を香港の人々は守る意思を示した。

     

    この選挙結果から類推できるのは、来年1月の台湾総統選挙で、蔡総統の再選可能性が高まったことだ。国民党は、一国二制度を吹聴してきただけに、香港の混乱で最悪事態に追い込まれた。

     

    (2)「中国政府は2047年までの50年間は香港の自治を認めると約束したが、実質的に林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官と立法会(議会)をコントロールしており、香港から徐々に自由を奪おうとしている。今月には、香港政府の覆面禁止法について現地の裁判所が下した「違憲」判断を却下する権限があると主張した。24日に有権者が突き付けた拒絶に対する中国と林鄭氏の反応は、香港が平静を取り戻し、デモを終結させられるかどうかを左右するだろう。今回の投票は、市民がうっぷんを晴らす手段として選挙が有効であることを物語っている。香港市民は、自治を求める姿勢を見せつける民主的な機会が他にもあれば、経済を混乱させはしないはずだ」

     

    専制主義か民主主義か。国民に真の幸せをもたらすのは、民主主義である。それを、今回の香港選挙が典型的に示している。4年前の前回選挙では、民主派の議席数は約100議席にとどまっていた。今回の選挙には過去最高の1104人が立候補し、452議席を争った。民主派は390議席を得たので、前回の約4倍という急増ぶりである。

     

    民主派候補に投票したという22歳の学生は、「中国政府が要求を無視したことで全ての香港市民が立ち上がり投票した」と指摘し、「民主派の勝利は、中国政府に強力なシグナルを送る」と述べた。何君堯(ユニウス・ホウ)氏をはじめ多くの親中派の大物議員が議席を失った。ホウ氏はフェイスブックで支持者に「異常な年の異常な選挙で異例の結果になった」と敗戦の弁を述べた」(『ロイター』11月25日付)

     

    (3)「投票には、ドナルド・トランプ米大統領に香港の自由希求を支援するよう求めるメッセージ、というより嘆願の側面もある。香港に関してトランプ氏はロナルド・レーガン元大統領のような明確な倫理観に基づいて発言してきたわけではなく、米上下両院が今月ほぼ全員一致で可決した「香港人権・民主主義法案」に署名するかどうかも決めていない」

     

    トランプ大統領は、米国議会で議決された「香港人権法」にまだ署名していない。法律として発効していないのだ。米中通商協議への悪影響を恐れた結果だ。今回の香港選挙で表れた民意は、米国に助けて欲しいというシグナルと見られている。トランプ氏は、こういう切なる願いを、引き延ばしてはいけない。

     

     

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    GSOMIA(日韓軍事情報包括的保護協定)破棄の一時的停止が決まった後、日韓ではドタバタ劇が続いている。「言った」「言わない」という水掛け論である。はなはだ困った事態である。韓国は、米国の強い圧力がかかって渋々、GSOMIA破棄ストップ令を出した。その後、韓国国内での突き上げが激しいのか、「マル秘話」が出ている。

     

    その一つが、日本が韓国に対して行なっている「ホワイト国除外」について、韓国政府に対して約1ヶ月後に撤廃を約束したというもの。いずれは、そういう時期が来ても不思議はないが、時間を区切って撤廃するとは凄い情報である。

     

    『聯合ニュース』(11月25日付)は、「輸出規制撤回に1カ月程度必要、GSOMIA終了前に日本が言及=韓国政府筋」と題する記事を掲載した。

     

    韓国政府が日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)終了を条件付きで延期する決定をしたことと関連し、日本が韓国に輸出規制関連の対話を提案する際に輸出規制の撤回までに約1カ月程度の時間を要すると言及していたことが分かった。複数の政府消息筋が25日、明らかにした。

     

    (1)「韓国政府は、日本が規制撤回にかかる時間まで提示して輸出規制に関する協議に向けた対話を先に提案しておきながら、メディアを通じて一切譲歩していないとの立場を示したことに対して怒りをあらわにしている。これを受け、韓国政府は今後1~2カ月程度日本の出方を見守った後、変化がないと判断すればGSOMIAの終了を積極的に検討する見通しだ」

     

    韓国は昨年12月、海上自衛隊哨戒機へ韓国海軍艦船からレーザー照射して大問題になった。あのときの水掛け論が再び、GSOMIA問題で繰り広げられそうな気配である。問題の本質は、日米韓三ヶ国の安全保障体制の強化維持であって、「約束した」、「約束しない」と言ったレベルの話でないはずだ。

     

    (2)「政府消息筋によると、日本はGSOMIAの失効期限(23日午前0時)の約1週間前に韓国側に輸出管理の優遇対象国「グループA(旧ホワイト国)」からの韓国除外を取り消すなど、輸出規制の撤回を議論するために局長級会議を行うことを提案してきた。当時、日本側は「輸出規制を撤回するなら、形式的ではあるが韓国の輸出入管理体制に問題がないことを確認しなければならない」とし、「1カ月程度の時間がかかる」との趣旨の立場を伝えてきたとされる」

     

    韓国国内の戦略物資管理が、国際的水準かどうかを審査すればすむことだ。また常時、政府間で話し合えるシステムが構築できているか再確認することが必要だ。そこで、安全確保の確認が出来れば、「ホワイト国除外」問題について議論が出てくるだろう。日本は、韓国に「1カ月程度の時間がかかる」との趣旨の立場を伝えてきたとされる。焦点は、これが本当かどうかだ。韓国の「作り話」となれば、紛糾するだろう。

     

    問題の本質は、徴用工賠償問題である。韓国が、これをどのように解決するのかだ。文国会議長の提案が実際に法案化されるのか。それを待たなければならない。

     

    (3)「この消息筋は、「政府はGSOMIA終了を念頭に置いて準備してきたが、日本のこのような提案で雰囲気が変わった」と説明した。別の消息筋も「GSOMIA終了が近付いた時点で日本側が輸出規制について議論しようと先に提案してきた」とし、「これを撤回するのにある程度の時間が必要だと言及した」と明らかにした」

     

    韓国政府部内では、口裏合わせしたさも「真実のような話」に仕立ててはいないだろうか。海上自衛隊哨戒機の一件があるから、にわかに信じがたいのだ。

     

    (4)「経済産業省の飯田陽一貿易管理部長は22日の会見で、日本と韓国の間の健全な輸出実績の積み上げ、韓国の適切な輸出管理の運用に基づいて輸出規制見直しの検討が可能だとの考えを示した。政府は日本が輸出規制の撤回にかかる時間にまで言及した点から、信ぴょう性があると判断してGSOMIA終了の延期を決めた。しかし、今後日本が時間稼ぎを行うなど積極的な姿勢を見せない場合にはGSOMIA終了を検討するとみられる。政府消息筋は「日本が小細工をするならGSOMIAを終了してしまえばよい」とし、「米国も韓日間の合意事項を承知している」と強調した。

     

    このパラグラフでは、GSOMIA破棄の延期理由について、日本の「輸出規制見直し検討」だけを上げている。これは、ウソであろう。韓国国内向けの煙幕である。米国からの圧力に抗しきれず「撤回」したはずだ。それをカムフラージュして、日本に責任を転嫁しているとも読める。ともかく、海上自衛隊哨戒機へのレーザー照射という悪夢が頭をよぎるのだ。この国は、ウソ話を作る術に長けている。こういう、ドタバタ劇は残念である。韓国国民向けのプロパガンダと読めるのだ。

     

     

     

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    韓国政府は、GSOMIA(日韓軍事情報包括的保護協定)失効目前にブレーキを踏んだ。これに対する韓国と日本の反応が分かれている。韓国は歓迎ムード。日本は冷めたもので「別に、、、」と言った好対照を示している。韓国は早く日韓関係の正常化を願い、日本はこれまでの反日の言動に深い怒りを見せている。韓国は、こういう日本の反応をよく見ておくべきだろう。

     

    私の書く韓国関連ブログまでクレームが付くほどだ。事実を淡々と書いているだけで、「中国に厳しく韓国に甘い」というもの。これでは、客観的な記事を書くことさえ、ブレーキをかけられる感じで困ったものである。

     

    『レコードチャイナ』(11月25日付)は、「GSOMIA延長に対する韓国内の反応は、メディアは険路を予告と懸念も」と題する記事を掲載した。

     

    韓国側の破棄通告により23日に失効する予定だった日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)が急きょ「条件付き」で延長され、韓国内で安堵の声が上がっている。

    (1)「『デジタルタイムス』によると、GSOMIA延長の知らせを受けた韓国最大野党・自由韓国党の羅卿ウォン(ナ・ギョンウォン)院内代表は23日、フェイスブックに「断崖を目の前にしてなんとかブレーキを踏んだ」と書き込み、「破棄撤回」を歓迎する立場を示した。正しい未来党の崔道子(チェ・ドジャ)報道官も22日に発表した論評で「いつでも終了できるという条件をわざわざ付ける必要があったのか疑問」としつつも、延長に歓迎の意を示した。与党・共に民主党も22日に発表した論評で「文在寅(ムン・ジェイン)大統領が行ってきた国益のための原則に基づく外交の勝利」とし、「日本政府の前向きな立場変化を受け入れた政府の決断を歓迎する」と評価したという」

     

    韓国の与野党が、一斉にGSOMIA破棄の一時停止を歓迎している。だが、日韓それぞれの立場で、「場外戦」を繰り広げている。譲歩したのは日韓どちらかという議論である。率直な感想を言えば、双方がなにがしかの譲り合いをしなければ、外交交渉が成立するはずがない。米国の目的は、日米韓三ヶ国の安全保障体制の確立であって、米中冷戦で同盟国の仲間割れを防ぐことが眼目であろう。となれば、大乗的な立場で臨むべきで、重箱の隅を突くような議論は避けるべきだと思う。

     

    (2)「『国民日報』によると、財界も安堵した様子を見せており、関係者らは「日韓対立が解決に向かう肯定的なシグナルだ」「最悪の状況は免れた。この雰囲気が続けば日本の輸出規制強化措置の撤回も期待できる」などと話したという。ただ、メディアは今後の日韓対話の見通しに対する懸念も伝えている。『ヘラルド経済』は、「今回の事態を招いた強制徴用問題と日本の対韓輸出規制強化措置に対する両国の認識に大きな隔たりがある上、GSOMIA延長をめぐる主張も一致していない」と指摘している。韓国大統領府はGSOMIA延長について「日本が輸出規制措置とグループA(「ホワイト国」から改称)の再検討の意向を示したため」と説明した。一方、日本は「輸出規制を維持した状態で、韓国が事実上GSOMIA破棄を撤回し、世界貿易機構(WTO)への提訴を中断するという譲歩を見せた」としている」

    日韓の民間レベルでは、約110年以上の交流があったはずだ。経済面でも、底流は深いつながりがあるだろう。韓国の「反日不買」で、韓国航空会社8社の7~9月期業績は全社赤字である。韓国の観光会社も赤字に陥っている。日本側でも観光関連事業では、打撃を受けているはずだ。

     

    韓国では、日本旅行がベストで他地域へは目も向けない。そういう「リピート客」が、圧倒的であることを示している。となれば、ここは「大人の対応」をして、反日不買の旗を降ろさせる工夫があってもいいであろう。あえて、角突き合わせているよりも、笑いあった方が良いように思う。こう書くと、「韓国に甘い」と言われそうだが、日本の観光地でも困っている業者がいることを考えるべき時期だ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(11月24日付)は、「『韓国に譲歩する必要ない』69% 日経世論調査」と題する記事を掲載した。

     

    (3)「日本経済新聞社の世論調査で、日本政府が韓国との関係について、どのような姿勢で臨むべきか聞いたところ「日本が譲歩するぐらいなら関係改善を急ぐ必要はない」が69%に上った。「関係改善のためには日本が譲歩することもやむを得ない」は21%だった。いずれも、同じ質問をした10月の調査から横ばいだった。「関係改善を急ぐ必要はない」との回答は内閣支持層で77%、不支持層でも63%に上った」

     

    韓国の「反日」が強烈であったことへの拒否感が強い。本当に、日本人を怒らせる言動をしてきたから、簡単に怒りは収まらないであろう。内閣不支持層でも63%が、「反韓」である。韓国は、安倍政権が支持率を上げるために韓国へ強硬策を取っていると報じてきた。この報道が、いかに誤りであったかが分るだろう。

     

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    日韓の鋭い対決が、韓国のGSOMIA(日韓軍事情報包括的保護協定)の「失効一時停止」措置で、雪解けの雰囲気を見せ始めた。米国の強い要請を受けて、日韓首脳が来月末、中国で会談の方向へ動き出している。

     

    韓国にとっての目玉は、日本から「ホワイト国除外」を勝ち取ることだ。韓国経済は、日本の中間財や設備機械に依存しているだけに、いつ輸出規制を受けるかも知れないリスクを是が非でも取り払いたいと真剣である。それには、徴用工賠償問題というトゲを抜く必要がある。日本がもっとも要求している点だ。

     

    その妙案が、韓国による「1プラス1プラスα」である。日韓の企業・個人の寄付金で賠償するという案だ。韓国の文国会議長が法案づくりに奔走している。今後、発生する可能性のある日韓に関わる賠償金問題は、すべてこの寄付金構想で解決し、日韓の歴史問題にまつわる係争を終わらせるというものだ。日本政府も非公式ながら関心をもっており、日韓友好議員連盟の幹部が訪韓して打ち合わせしている。

     

    『朝鮮日報』(11月25日付)は、「韓日首脳、来月中国で3大難題協議か」と題する記事を掲載した。

     

    韓日首脳会談が来月末、中国四川省成都市で開かれると伝えられ、徴用工賠償、輸出規制問題の解決に道筋が示されるか注目される。韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)が22日、「条件付き延長」され、ひとまず両国による対話の道が開かれたと評されている。両国政府は連日神経戦を展開しながらも、首脳会談の開催と懸案解決のための実務者協議に臨む方針だ。

     

    (1)「両首脳は今回の会談でGSOMIA、日本の経済制裁、強制徴用賠償という3つの難題の解決策を話し合うとされる。これに関連し、日本からは「3品目の輸出規制」を解除する案、韓国からは徴用賠償問題解決に向けた「1+1+α」案が示されている。日本政府は公式には「輸出規制の変化はない」という立場を表明している。しかし、日本メディアからは「文在寅(ムン・ジェイン)政権がエスカレートを踏みとどまった以上、日本政府も理性的な思考に立ち返るべきだ」との指摘が出ている」

     

    不思議なものだ。あれだけトゲトゲしい雰囲気の日韓関係が、一つ石(GSOMIA)を動かしただけで、水の流れが変りそうである。これが、「外交の妙」というもの。妥協が、さらなる変化につながるきっかけになり得るからだ。

     

    (2)「輸出規制に関連し、韓日政府は近く局長級協議を開始する方針だ。康京和(カン・ギョンファ)外交部長官は23日、茂木敏充外相と会談後、「韓日輸出当局間の会話を開始することにした。この対話を通じ、輸出規制問題が解決され、韓国が日本のホワイト国に戻されるようにしたい」と述べた。韓国政府は日本の輸出規制が来月の韓日首脳会談前に解除されることに期待感を示したとされる」

     

    韓国が、「ホワイト国除外」解除にかける期待はきわめて大きい。目の上のタンコブを取り除きたいからだ。それには、徴用工賠償問題の解決なくしてはあり得ないこと。韓国が、必死になって「寄付金構想」法案化に努めている理由だ。

     

    (3)「両国は徴用賠償問題についても外交ルートを稼働させるとみられる。青瓦台幹部は24日の記者説明で、「まだ(徴用問題に対する)韓日間の進展は全くない」としながらも、「『自国の案ばかりにこだわらない。日本が提議した現実的原則もオープンな気持ちで傾聴する準備ができている』日本側を説得している」と説明した。解決策としては、文喜相(ムン・ヒサン)国会議長が今月5日に表明したいわゆる「1+1+α」案が有力となっている。韓日企業(1+1)と国民の自発的募金(α)で日本企業の徴用賠償金を肩代わりする案だ」

     

    文国会議長による「1+1+α」案は、唐突に出てきたものでない。11月5日、文議長による早稲田大学での講演会で公表される前に、韓国の与野党、政府などの説明を行う根回しを終えている。日本でも政界、言論界、学界などの有力者10氏に会って説明し、「悪くはない」という感触を得たという。

     

    (4)「鍵は日本政府の態度と徴用被害者が同意するかどうかだ。青瓦台と韓国政府は徴用被害者に直接会い、意見を聴取しているとされる。シン・ガクス元外交部第1次官は「徴用問題と輸出規制問題はコインの両面のようなものだ。徴用賠償の解決策の輪郭が見えなければ、日本が輸出規制を簡単に解除することはなく、結局『GSOMIA一時猶予』合意にも影響を与えることになる」と指摘した」

     

    日本では、寄付金であれば日韓基本条約に抵触しないので出しやすいという姿勢と言われる。日韓友好議員連盟の幹部である下地議員が訪韓し逐一、政府に連絡していると報じられた。紛争を収拾するには、日韓双方ともこの寄付金構想によるしかない、というのであろう。

     

     

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