北朝鮮のミサイル実験は、ついに発射舞台を海上へ変えてきた。今回は、潜水艦からの直接発射でないが、その一歩手前の段階にまでこぎ着けている。潜水艦からの発射となれば、韓国は防御手段に欠けるとして、危機感を募らせている。そうなると、日本の出番である。日本海に常時潜航する潜水艦部隊が、北朝鮮潜水艦を探知するからだ。
こうして、大見得切ってGSOMIA(日韓軍事情報包括保護協定)廃棄を決めた韓国は、はたと困惑の色を浮かべざるを得なくなっている。韓国国防部は、恥を忍んで日本側に「情報提供」を依頼してきた。
『朝鮮日報』(10月5日付)は、「南官杓駐日大使、『GSOMIA破棄は遺憾 復帰が望ましい』」と題する記事を掲載した。
南官杓(ナム・グァンピョ)駐日韓国大使が4日、「韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)は復帰が望ましいと考えている」と述べた。
(1)「南官杓大使は同日、駐日韓国大使館で行われた国会外交通商委員会の国政監査で、「GSOMIAを破棄しても情報交流は全く問題ないのか」という尹相現(ユン・サンヒョン) 議員=自由韓国党=の質問に、「GSOMIA終了という事態は韓日両国間において望ましくない状況であり、このような状況が起こらざるを得ない局面は遺憾だ」と語った。キム・ソンハク駐日国防武官(海軍准将)も同日、「情報は一つでも多く持っている方がいい。GSOMIAは韓日関係から離れて友好国との関係、北東アジア情勢も考えなければならない」と述べた」
韓国政府決定のGSOMIA破棄について、駐日韓国大使はGSOMIAの継続性を訴える内容の発言をしている。また、国防武官までが同一の発言をしている点に注目が集まる。
(2)「日本の輸出規制への対抗措置であるGSOMIA破棄決定に関して、韓国外交部当局者が「復帰」を強調したのは、強硬な韓国政府の従来の姿勢と温度差があるという見方もある。外交消息筋は「先月23日の韓米首脳会談以降、GSOMIA破棄について韓国政府内で慎重論が取りざたされているようだ。青瓦台は韓米首脳会談でGSOMIAについて全く言及がなかったと言ったが、実際にはあった可能性が高い」と話す。韓国外交部の「GSOMIA終結」公文書は既に日本側に渡された状態だが、GSOMIAは来月22日まで有効だ」
韓国駐日大使が、韓国政府と異なる発言をした裏に、先の米韓首脳会談でGSOMIA破棄についての発言があったのでないかという憶測もある。仮に、文大統領がトランプ米大統領に見直しへ含みある発言をしたとすれば、今回の駐日大使発言も、違和感はないであろう。
(3)「南官杓大使は同日、「青瓦台国家安保室第2次長時代にGSOMIA破棄が検討されていたか」という質問には「そのようなことはない」と答えた。南官杓大使のこうした回答は、同大使の後任者である金鉉宗(キム・ヒョンジョン)現・国家安保室第2次長の主導でGSOMIAが破棄されたことに対して遺憾の意を間接的に表したものと解釈できる」
南官杓大使の前職は、青瓦台国家安保室第2次長である。この部署は、今回のGSOMIA破棄を決めたところだ。南氏が、当時そのような検討をしたことがないと発言したことから、後任の金氏の主導でGSOMIA破棄が決められたもの。金氏は、民族主義者で弁護士出身である。安全保障問題の専門家でなく、感情論でGSOMIAを破棄に導いた裏事情はすでに明らかにされている。
(4)「また、「朝鮮半島の完全な非核化や恒久的な平和体制構築の過程で日本は2国間だけではなく、朝鮮半島や北東アジア地域の平和・共同繁栄の協力パートナーとして認識している」とした上で「日本の建設的な役割を確保するため多角的な努力を傾けている」と説明。「難しい韓日関係の中、一部では嫌韓、反韓の声がある」とし、こうした声が広がらないよう積極的に対応する考えを示した」
南駐日大使は、朝鮮半島問題解決に果たす日本の役割にも触れている。外交官として、大統領府の反日姿勢と一線を画していることが浮き彫りになっている。