勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    韓国政府は、GSOMIA(日韓軍事情報包括保護協定)破棄後、米国から強い批判を浴びている。米国務省は二度にわたり声明を発表するという怒りかただ。GSOMIAは、日韓だけの問題でなく、日米韓三ヶ国の安保インフラであると力説している。当然、米国は事前に韓国へ、この主旨を説明しているはず。それにも関わらず、米国の要請を断ったのだ。

     

    米国は、「文在寅政権」と名指しの批判である。普通は、「韓国」と呼んでいるが、「文在寅政権」が、GSOMIAの意味を理解せず破棄したというニュアンスである。ちなみに、GSOMIAを導入したのは、「朴槿惠政権」であった。言外に、現政権と前政権を比較しているのだろう。

     

    韓国大統領府は、米国の怒りを逸らすために、記者団にとんでもない「責任逃れの話」をでっち上げている。韓国大統領府の品性がいかに劣るかを示している。呆れる話だ。

     

    『聯合ニュース』(8月25日付)は、「軍事協定終了、延長決定後に日本が破棄する可能性も考慮=韓国高官」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「韓国の青瓦台(大統領府)や政府が日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の終了を決めた背景には、同協定を延長した後、日本が協定を一方的に破棄する可能性があるとの判断も大きく働いたようだ。韓国政府が7月、日本に高官級の特使を派遣し、8月には日本政府高官との協議を試みるなど、外交的な解決を目指したが、これを無視し続けた日本側が「外交挑発」を敢行する可能性を考慮したという」

     

    (2)「韓国政府高官は聯合ニュースに対し、「政府と青瓦台の安保室で(協定延長の)賛否を巡って激論が交わされた。深く考慮したことの一つは、われわれの対話の努力に日本が応じなかったこと」と明らかにした。また、「(協定の更新期限の)24日以前に協定を延長しても日本は結局、28日に『ホワイト国(輸出管理の優遇対象国)』から(韓国を)除外する措置を取るとみた」と伝えた」

     


    (3)「その上で、「その後、日本が一方的にGSOMIAを破棄する可能性があった」として、「われわれが協定を延長し、日本がこれを破棄すれば、ばかを見ることになる」と説明。「(日本にとっても)非常に負担になる決定であるにもかかわらずホワイト国から韓国を除外するほど強気に出たのは、『韓国政府とは(共に)できない』と判断したとみなければならない」との認識を示した。韓国政府としては、対立の解消を促した米国の呼びかけまで拒否して関係改善の努力を行わなかった日本と信頼関係を維持することは難しいと考えたようだ」

     

    韓国が、これほど荒唐無稽な作り話をしている。日本は、韓国に対して国家間の協定を守れと要求している。その日本が、GSOMIAの自動延長後に破棄できるはずがない。自動延長したならば、1年間は守る義務があるのだ。仮に、韓国がそういうリスクを感じたとすれば、韓国がこれまで日本に対して行ってきたことから引き出した妄想だろう。

     

    それにしても、こういうあり得ない話を記者団にして、「フェイクニュース」を書かせる。韓国大統領府は、相当に悪質な情報操作をし始めている。

     

    この作り話は、GSOMIAの意義を全く忘れた議論をしている。GSOMIAは、日米韓三ヶ国の安保インフラである。日本が、この輪から抜け出ることが対米関係から言ってもあり得ない自殺行為である。日本はG7の一員である。世界の物笑いになる道を選ぶはずがない。それができるのは、韓国だけである。


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    韓国が、GSOMIA(日韓軍事情報包括保護協定)の延長をせず、今年で破棄する決定をしました。米国は、日米韓三ヶ国の安保ラインとして中ロに対峙する象徴と、GSOMIAを位置づけていました。毛利元就の「三本の矢」同様に、三ヶ国が一体となって、北東アジアの安保体制を固めておきたかったのです。

     

    ところが、韓国は22日にGSOMIA破棄を決定しました。その発表文が、なんと日本を「悪者」にしているのです。韓国大統領府の金鉉宗(キム・ヒョンジョン)国家安保室第2次長は、次のように結論を語ったのです。

     

    日本の対応は単純な韓国への拒否を超え、韓国の「国家的自尊心」を喪失させるほど韓国を無視し「外交的な礼を欠いた」と指摘しました。このため、韓国のプライドを守るために、GSOMIAを破棄するというのでした。

     

    ここには、日米韓三カ国による安保ラインを守るという認識が消えており、日本が憎ったらしい態度を続けるから、腹を据えかねて破棄すると言うのです。韓国に駐留する在韓米軍の後方部隊は、日本に常駐しています。これが、韓国の防衛にどれだけの効果を上げているか。韓国大統領府は分っていないのです。日本の基地があるから、韓国防衛はより強力なものになっているのです。その日本による韓国への態度が良くないので「懲らしめる」とまでは言っていませんが、「国家的自尊心」を賭けて対抗するというのです。

     

    私は、ここまで書いて来て、日本の「大東亜戦争」でも、韓国の「国家的自尊心」に近い言葉を使っていることに気付きました。

     

    大東亜戦争における天皇の開戦詔勅では、次のような文面(口語訳)がありますので紹介します。

     

    「私(注:天皇)は政府に事態を平和に解決させようとし、長い間忍耐をしたが、米英は少しも譲りあう精神が無く、むやみに事態の解決を遅らせようとている。ことここに至っては、我が帝国は自存と自衛の為に決然と立ち上がり、一切の障害を破砕する以外にはない」

     

    韓国の「国家的自尊心」と、太平洋戦略詔勅の辞の「自存と自衛の為に決然と立ち上がり」はよく似ています。

     

    もう一つ似ている点は、韓国には「日米韓」の安保ラインという前提が抜けています。開戦詔勅では、従来の宣戦布告書にあった「国際条約を守る」という一言が入っていません。要するに、韓国は米国の存在を忘れて「日本憎し」で平衡感覚を失っています。日本の宣戦布告も同様です。日本の立場だけで開戦に踏み切りました。

     

    ここで、結論としましょう。

     

    日本は大東亜戦争で、米英に対して経済的劣勢にもかかわらず開戦し、結局は敗れました。韓国も、日本の経済力には対抗できないにもかかわらず、戦いを挑んでいます。

     

    まだ、大東亜戦争との類似点があります。日本にとっての米英は、日露戦争で日本側に立ち支援してくれた国です。朝鮮を日本の保護国にする上で協力支援した国です。日本は、その米英に宣戦布告したのです。米英の怒りは大変なものがあったろうと思います。

     

    韓国は、1945年の独立以来、日本の技術と資本で経済発展して、今日の経済的な地位を得ました。その日本と歴史問題で対抗して、ついに日米韓三カ国の安保ラインから抜けると宣言したのです。なにやら現在の韓国は、戦前の日本と立場がそっくりです。この帰結は、どうなるか。それに触れることは止めましょう。「武士の情け」です。

     

     

     

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    米中貿易戦争は、大混戦になってきた。中国も負けじと報復関税で応戦しているからだ。

    中国は23日夜、米国が9月から発動する予定の対中制裁関税「第4弾」への報復措置を発表した。原油や農産物など約750億ドル分(約8兆円)の米国製品に5~10%の追加関税をかける。

     

    この中国の「応戦」に対して、トランプ米大統領は23日、さらなる対抗策を発表した。2500億ドル(約26兆円)分の中国製品に課している制裁関税を、10月1日に現在の25%から30%に引き上げると発表したもの。さらに、ほぼすべての中国製品に制裁対象を広げる「第4弾」については91日に15%を課すと表明した。従来は10%の予定だった。

     

    『ブルームバーグ』(8月23日付)は、「対中関税第4弾実施なら中国成長率は6%未満」と題する記事を掲載した。

     

    この記事は、これまで米国が発表してきた関税率に基づく、中国GDPの成長率見通しである。ただ、23日に発表された「プラス5%」の関税引き上げを加味していない。よって、実際の中国経済は、以下の予測よりさらに悪化するであろう。この点をあらかじめ注意していただきたい。

     

    (1)「ブルームバーグが実施したエコノミスト調査によると、トランプ米大統領が9月1日に発動するとしている対中制裁関税第4弾が実施されれば、中国の経済成長率は6%未満と、1990年以来の低い伸びに鈍化する見通しだ」

     

    エコノミストの予測では、今年の中国のGDP成長率が6%割れと見込んでいる。すでに、4月以降に経済は急減速局面に向かっている。7月の統計でそれがはっきりと確認された。

     

    (2)「エコノミスト14人を対象とした調査によれば、(第4弾で)10%の制裁関税が上乗せされた場合、中国の国内総生産(GDP)の前年比成長率が最大0.5ポイント押し下げられると見込まれる。中国の2020年のGDP伸び率は既に6%への鈍化が予想されている。中国政府の19年の成長率目標は6~6.5%だ」

     

    関税第4弾で10%の関税で、最大0.5ポイントの引き下げになるという。ところが、最新のトランプ関税では、第1弾から第4弾までさらに5%の関税引き上げになれば、0.5ポイントの引下げにとどまらず1%ポイントの落込みは不可避。中国経済は大混乱に陥る。

     

    (3)「中国経済が内需縮小と米国との貿易戦争という逆風に直面する中で、このような見通しは同国経済の危うさを浮き彫りにする。ただ、トランプ大統領は9月1日に実施予定の制裁関税の一部製品への発動を延期するとしており、9月から再開されることになっている対面協議の結果、さらなる猶予が与えられる可能性もある」

     

    中国が、米国の「関税攻撃」にどう対応するかだ。抵抗を止めて、米国と合意にこぎ着けるのか。その辺がポイントになろう。ともかく、これ以上の米中貿易戦争は、中国が金融システムの波瀾で「再起不能」になる。むろん、世界経済もメチャクチャだ。「原爆投下」と同じで、局面転換のテコ役を果たすだろう。

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    韓国大統領府が22日、GSOMIA(日韓軍事情報包括保護協定)破棄を発表した。その際、「米国の理解を得た」と発言して米国から「それはウソ」と反発されるなど、波紋を呼んでいる。

     

    本欄ではすでに、外交用語の「理解」が「同意」した意味でないことを指摘し、韓国側の勇み足であると指摘した。その通りの動きとなり、韓国は大慌てで「疎通」に変更して平謝りである。韓国大統領府の「86世代」は、外交用語の理解もできない、未熟なスタッフであることを改めて示すことになった。この「連中」が、安全保障の根幹を決めるとは、空恐ろしい感じすらする。

     

    『朝鮮日報』(8月24日付)は、「米、文在寅政権『GSOMIAうそ』」と題する記事を掲載した。

     

    米国務省と国防総省は22日(現地時間)、青瓦台の韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄決定に対して一斉に「文在寅(ムン・ジェイン)政権に強い懸念と失望を表明する」との見解を明らかにした。

     

    (1)「米国が公式論評で「ROK(韓国)」と呼ばずに「文在寅政権」と呼ぶのは非常に異例なことだ。これについてトランプ政権の高官は、本紙に「(GSOMIA破棄が)文大統領の決定だということに焦点を合わせるためのもの」と説明した。それだけ米国が文大統領と青瓦台に強い不満を持っているという意味だ。カナダを訪問中のマイク・ポンペオ米国務長官は同日、「我々は、韓国が(日本との)情報共有合意に対して下した決定に失望した。両国関係を正確に正しい所に戻すよう望む」と述べた。韓国の決定について遺憾の意を表し、これを覆すよう求めたものだ」

     

    米国は、今回の韓国によるGSOMIA破棄に対して強い不満を持っている。公式論評で「文在寅政権」と呼び「韓国」と呼ばなかったからだ。国務省と国防総省が、同時に韓国を批判するという異例の展開である。

     

    韓国社会の身勝手さが図らずも露呈した感じだ。日本に対しても条約の遵守という基本的な認識を欠いているように、米国に対しても日米韓三ヶ国の安保インフラの重要性を踏みにじるという、約束違反の国であることを立証する形になった。

     


    (2)「米国務省は本紙に送った論評で、「米国は文在寅政権に対し、この決定が米国と我が国の同盟国の安全保障利益に否定的な影響を与えるということを繰り返し明らかにしてきた。(この決定は)北東アジアで我々が直面している深刻な安保的挑戦に関して、文在寅政権の深刻な誤解を反映している」と述べた。米国防総省も報道官の論評として「文在寅政権に強い懸念と失望を表明する」と述べた。米政府が韓国に不満の意を表す際、「韓国政府」ではなく「文在寅政権」という表現を使うのは非常にまれである2017年の終末高高度防衛ミサイル(THAAD)配備撤回問題時も、米国務省は「韓国(ROK)政府に聞いてほしい」などと言っていたが、「文在寅政権」という表現は使わなかった」

     

    米国が、政権の要人を次々と韓国へ送って、GSOMIAの重要性を懇々と説明してきた。それにも関わらず、最後は来年4月の総選挙で勝つためにはGSOMIA破棄が有効と判断したのだ。国益でなく文政権の利益を優先した意味では、「私利私欲」の政権である。

     

    (3)「トランプ政権の高官はまた、青瓦台がGSOMIA破棄について「米国が理解を示した」と説明したことに関して、本紙に「うそ(lie)」だとして、「明確に言って事実ではない。ここ(駐米韓国大使館)とソウルの(韓国)外交部に抗議した」と語った。記者の質問に答えたものだが、「うそ」という表現を使ったのも極めてまれなことだ。米政府高官は同日、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルに「(GSOMIA破棄は)文在寅政権が(韓米日)集団安保に献身しているかどうかに対する根本的な疑問を赤裸々に現したものだ」と語った」

     

    韓国大統領府は、米国の理解も得てGSOMIAの破棄を決めたと発表した。これは、「ウソ」と米国務省が明確に否定し、韓国側へ抗議したことも明らかになった。外交上、相手国を巻き込んだ「ウソ発表」は滅多に起こる話ではない。

     

     

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    中国にとって、日米韓三カ国の安保ラインのGSOMIAが目障りであることは言うまでもない。それが、日韓の「喧嘩別れ」で消えたことは、好都合であろう。目の上のタンコブが消えたのだ。韓国は、敵に塩を送ったようなものである。

     

    『レコードチャイナ』(8月24日付)は、「中国メディアは 韓国が米国に逆らったことに注目日本との軍事協定破棄で」と題する記事を掲載した。

     

    中国メディアも韓国が日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を廃棄したことに関心を示した。記事は日韓関係の紛糾は続くとの見方を示すとともに、韓国が米国の意向に反して協定廃棄をしたことを注目した。

    (1)「『新華社』(824日付)の記事で、日韓がGSOMIAを締結する前に、米韓、日米はそれぞれ個別にGSOMIAを締結していたと紹介。日米韓の同盟の主導者は米国であり、米国は一貫して日韓の軍事協力を促してきたと論じた。同じく中国メディア『観察者網』は同件について、米国は韓国に対して「米国の軍および政府の要人が、さまざまな場所で日韓GSOMIAの重要性を繰り返してきたと強調し、両国が同協定を維持する説得に力を入れていたが、韓国は最終的に廃棄を決定した」と紹介。韓国の協定廃棄が米国の意向に反するものであることを強調した」

     

    中国は、アジアでの軍事覇権を狙っている。だが、中国一カ国では不可能である。そのことに気付かないことが不思議なのだ。四方八方を米国とその同盟国の基地で囲まれており、普通ならば軍事覇権を諦めるものだが諦めない。ここが、「中国七不思議」の一つである。日韓のGSOMIAが、韓国によって破棄された。中国が、これ幸いと韓国へ接近すると、警戒されるだろう。

     


    (2)「同記事は、協定の成立そのものが米国の強い意向だったと論じ、締結された2016年に
    朴槿惠(パク・クネ)大統領はスキャンダルの泥沼にはまった状況で、米国からの政権への支持を取り付ける目的で、国内の反対を無視して即決方式で協定を締結したとの見方を示した。中国には、日米間の同盟強化は自国にとって不利との認識がある。2016年に始まった戦域高高度防衛(THAAD)ミサイルの韓国配備に対する強烈の反発は、その典型的な表れだ

     

    THAADは、中国に無害であることは習氏も熟知している。それでも、韓国を虐めているのは、韓国と米国との離反を狙っているからだ。しかし、度が過ぎた韓国制裁は逆効果である。ほどほどにしておくべきだろう。韓国人は、今回の日本との一件で見せたように、「民族主義」で凝り固まっている。中国がここへ手を突っ込むと火傷するに違いない。

     

    (3)「中国外交部(中国外務省)の耿爽報道官は23日の定例記者会見で、韓国が日本とのGSOMIAを廃棄したことを注目していると説明し、「軍事協力の実施または終結は主権国家の自らの権利」と論じた上で「2カ国間の(協定)締結は、地域の平和と安定に役立ち、半島の平和の過程の促進に役立ち、第三者の利益を損ねないものであるべき」と述べ、日韓のGSOMIAが中国にとって好ましくないものだったとの考えを示唆した」

     

    中国は、米国がアジアに中距離ミサイルを持ち込むと最大の危機に立つ。これまで中国は、近海で米国艦船を寄せ付けない戦術を立ててきた。米国の中距離ミサイルが、その鉄壁の守りを崩してしまった。米国のこういう戦術上の優位性が確立すると、韓国も米中どちらに付くかといった「洞ヶ峠」を決め込んでいると、自国の居場所を失うことになろう。


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