勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    テイカカズラ
       


    けさ、発行しました、よろしくお願い申し上げます。

    暗転した運命の行方?

    米国は冷戦意識で対応

    合従連衡スパイの原型

    具体的な損失の中身は

     

    米商務省は5月16日、中国通信機会社ファーウェイ(華為技術)と関連会社68社について、米政府の許可なく米企業から部品などを購入することを禁止する「エンティティ―リスト」へ正式追加を発表しました。これは、米国が放った中国戦略の「核爆弾」に匹敵するものです。

     

    前記の記述は、「メルマガ57号」(5月20日発行)からの引用です。その後の情報は、これを裏付けるものが多く、「ファーウェイは存続できても気息奄々(きそくえんえん)」という悲観論が目立ちます。これは、ファーウェイが「エンティティ―リスト」に追加されたことで、米国からの技術やソフトの輸入杜絶を意味するのです。

     

    具体的には、スマホのOSでグーグルの「アンドロイド」が使用不可能になります。「アンドロイド」は、事実上の世界標準です。世界中のスマホのOSの87%を占めています。残りのほぼすべてが、アップルの「iOS」です。OS市場は、実質的に複占状況にあります。

     

    ファーウェイが、新たに商標登録したOSの入り込む余地は、ほぼゼロの状態です。さらに難関は、300万と言われるグーグルの「アプリ」が使えなくなります。「アプリ」こそ、スマホの生命線です。ここから切り離されれば、ファーウェイ・スマホの魅力が消えるのです。グーグルのOSとアプリが使えない、スマホの商品価値は極端に下がります。

     

    ファーウェイの次世代通信網「5G」の基礎技術でも、米国企業に依存しています。IBM、アクセンチュアといった米国を拠点とする大手企業の名前が出ています。今回の「エンティティ―リスト」によって、これら企業からの技術輸出も止まるので、「5G」製品に多大の影響が出てきます。

     


    暗転した運命の行方?

    以上のように、ファーウェイの運命は急転せざるを得なくなりました。この影響は、ファーウェイだけに関わらず、中国経済そのものを直撃します。その点で、米中関係が根本的に変わる事件となりました。中国政府は、米中通商協議中にファーウェイ問題が起こったことで、米国の真意が掴めないとする報道が見られるほどです。

     

    私は、米国が明白にその意図を示していると思います。その理由を、次に説明します。

     

    (1)米国は、中国の産業高度化計画である「中国製造2025」に補助金を使うことがWTO(世界貿易機関)の規則違反であるとし、撤回を求めてきました。しかし、中国はこれに応じる意向を見せませんでした。

     

    (2)「中国製造2025」の担い手になる中核企業は、ファーウェイです。ファーウェイは「5G」の先導企業として、世界の通信機市場で絶対的な地位を築かせるようにする狙いでした。

     

    (3)「5G」が、「4G」に比べて約100倍もの通信速度を持つことから、安全保障上で米国の地位を脅かす危険性が特段に高まります。それは、軍事機密情報がファーウェイを通して、中国人民解放軍の手にわたる危険性が高まるからです。

     

    (4)ファーウェイは、形式的に見れば社員株主制で民営企業です。米国法学者の研究によれば、実態は国営企業でした。ファーウェイは「民営企業」のお面を被り、世界中から先端技術を集めて人民解放軍に渡していたと見られます。

     

    その一例として挙げれば、ファーウェイは住友電工ライトウェーブへ委託開発した光ファイバー技術と同じものが、中国軍のジェット戦闘機の殲10(J―10)、ハイエンド駆逐艦、巡洋艦、開発を続けている空母に使用されているそうです。米国諜報部によって確認されました。これらの技術横流しについては、後で取り上げます。

     

    以上の4点を見ますと、ファーウェイが中国の経済問題の推進役だけでなく、米国の安全保障上のリスクとして浮上しました。ファーウェイは、文字通り中国を牽引する「航空母艦」に当ります。米国は、ここへ「エンティティ―リスト」入りという核爆弾を投下したのです。その「被弾範囲」が、きわめて大きいのです。中国政府が戸惑う原因はここにあります。

     

    米国は冷戦意識で対応

    米国側の意識では、すでに中国と冷戦状態に入っています。一方の中国には、冷戦への準備も覚悟もなく、米国から技術窃取してうまく立ち回る積もりだったのでしょう。その「隠密作戦」が、米国のファーウェイ探索によって暴露されたのです。中国は現在、茫然自失状態に陥っています。習近平氏が、「新長征」と言いだしている背景でもあります。(つづく)

     


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    韓国政府は日常、何を目安に政治をしているのだろうか。日本の動きには猛烈な関心を示すが、自国のことになると無関心とも言えるほど冷淡である。権力だけを握ることが目標なのだろう。

     

    文政権は、行政として機能していないのだ。最低賃金の大幅引上げという天下の「悪法」を履行して、失業者を増やすだけという信じがたい政策を行なっている。最賃の大幅引上げが、当初目的と違う結果をもたらしていることに気付くのが政治の役割のはず。現実には、負の効果を生んでいても政策手直しをしない。財政支出拡大で糊塗するという最悪の政府である。

     

    この悪政の下で、韓国は引き返すことのできない道へはまり込んでいる。現状の合計特殊出生率の「1」割れは、韓国社会の基盤を破壊しているのだ。なぜ、この現実に気付かないのか。労組も市民団体も無言である。自らの主導した最賃大幅引上げが、就職難→結婚難→出生率低下という悪循環を招いている責任を回避したいから「完黙」なのだろう。

     

    韓国社会は、自分の利益だけしか考えない独りよがりの社会である。西欧流の連帯意識の欠片もない社会だ。だから、他人を犠牲にした最賃の大幅引上げを平気で行える冷たい社会なのだ。それが、いよいよ韓国社会を崩壊させるところまできた。



    『朝日新聞』(5月26日付け)は、「1を下回った韓国の出生率 他国と違う形で進んでいる」と題する記事を掲載した。曺永台・ソウル大学人口政策研究センター長へのインタビュー記事である。

     

    ――女性が一生に産む子の数を示す合計特殊出生率が、韓国は2018年に0・98と初めて1を割りました。

     

    (1)「ありえないことが起きている。1を下回る事態は社会の急激な変化、例えば東欧で共産主義政権が崩壊した際に起きた。ただ、1年ほどですぐ回復した」

     

    合計特殊出生率が、「1」を割ることは、天変地異が起こったときにでも見られる現象である。そのあり得ないことが韓国で見られるのは、韓国政治がデタラメな証拠である。ここまで国民生活を追い込んでおいて、「南北交流」だとか「日本の右翼化」だとか、地に足のつかない政策に血道をあげている。

     

    日本から見た韓国政治は無能である。二言目には、日本に対して、戦犯国、戦犯旗、反省が足りないなど言いたい放題である。他国の批判をしたければ、自国の政治をしっかりやること。現状では落第政治である。他国批判をしても笑われるだけなのだ。

     
    ――韓国は違いますね。21年には0・86まで低下すると政府が推計しています。

     

    (2)「他の先進国と全く違う形で進んでいる。人間の基本的な本能に生存と再生産があるが、生存できない状態では再生産も考えられない。韓国では子を産み育てる年齢層の生存が脅かされている」

     

    潤滑な人間「再生産」が行えないのは、それを邪魔する要因が発生しているからだ。屁理屈は取り下げ、何が国民のためになるか、ひたすら考え続ければ回答も見つかるはずである。その目印は、日本の経済政策の中にヒントがあるはず。つまり、労働市場の流動化に着手すること。労組が反対しても、実行する勇気を持つべきだ。

     


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    韓国外務省が突然、旭日旗に「日本側は謙虚な態度で歴史を直視する必要があると考える」と上から目線の訓戒を垂れてきた。

     

    海外で広く受け入れられている旭日旗に、こういう言い方は不遜と言うべきだろう。ならば問う。韓国を侵略した中国と北朝鮮の国旗や軍旗に文句を言ったことあるか。ひたすら低姿勢の韓国が、日本だけには滅法、強気で攻めてくる。その理由は、大統領府の「86世代」の差し金であろう。米国トランプ大統領から日韓関係の改善を求められた腹いせに相違ない。

     

    韓国国防省が、昨年の国際観艦式で旭日旗掲揚をしないように求めてきたので、日本は参加を拒否した。他国のことがらに対して、こういう干渉がましいことを言うべきでない。韓国の安全保障には、日本の在日米軍基地が利用されるのだ。このように、有事の際に世話になる日本へ言うべき言葉か反省を求めたい。仮に日本有事の際、韓国が協力する保障はゼロだ。

     


    『中央日報』(5月26日付け)は、「日本外務省が旭日旗広報、 韓国外交部『謙虚な態度で歴史直視すべき』」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「日本政府が広報物に日本軍国主義の象徴である戦犯旗の「旭日旗」を使い、「日本文化の一部」と主張したことに対し韓国外交部は25日「日本側は謙虚な態度で歴史を直視する必要があると考える」と明らかにした」

     

    「戦犯旗」などと形容される旗はない。旭日章が戦犯旗なら、韓国の太極旗は、「植民地旗」になろう。いつまでもこういう無益なことを言うのか。韓国経済が危機になれば、日韓通貨スワップ協定を結んでくれと言って来るに違いない。既に、韓国の大学生を日本で就職させてくれ、と懇願しているのでないか。都合のいいときだけ頼み事をするものでない。

    (2)「 外交部当局者はこの日、問題の掲示物と関連して『旭日旗が過去周辺国に軍国主義と帝国主義の象徴と認識されている点を日本側もよくわかっていると考えられる』としてこのように明らかにした」

    日本は、戦後賠償で誠意を見せた。ODA(政府開発援助)でもしっかりやっている。だからASEANでの日本評価は最高である。過去の傷を引きずり出して騒ぎ立てるのは韓国だけだ。こういう後ろ向きの外交姿勢が、アジア外交で韓国が孤立している理由だ。屁理屈を並べず、日米韓三カ国の安全保障政策に参加するのか、しないのか。態度を決めるべきである。

     

     


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    韓国の反原発団体は、暴力的な振る舞いをしている。先に韓国原子力学会が、韓国の反原発団体による運動は科学的根拠を逸脱していると発表した。これに食いつき、とうとう謝罪会見をさせるという事態を引き起こした。

     

    原子力問題は、感情論で議論するものでない。あくまでも科学的根拠にしたがって冷静に論じ合うものだ。韓国ではそれが不可能である。反原発団体は、太陽光エネルギー事業に取り組む関係者が多い。こうした理由も手伝い損得が絡むから、反原発批判論には猛然と反発するのだ。

     

    『朝鮮日報』(5月26日付け)は、「早野龍五東大名誉教授、自分の誤った論文が韓国で脱原発の根拠に」と題する記事を掲載した。

     

    物理学者の早野龍五東大名誉教授は、原発事故による放射能被害を研究してきた学者だ。2011年の東日本大巨大地震以降、8年以上にわたり、日本全域の土壌、食品汚染、住民の被ばく線量などさまざまな測定データを収集してきた。世界的に見ても、日本国内の放射能被害の実態を最も正確に知る人物だ。

     

    (1)「5月21日にソウル市内で取材に応じた早野名誉教授は、「当初の研究では放射能汚染が日本全域に拡大したという結論を下したが、その後の調査で自分の予測が誤っていたことを知った。それからは放射能被害に対する誤解を正すために取り組んでいる。自分は『福島は安全だ』などと主張するために来たわけではない」とした上で、「ただ不正確な資料を根拠として、原発の危険性を議論するのは無責任だと考えるだけだ」と語った」

     

    原発事故直後の日本は、大混乱の状況に置かれた。危機感から、予測データが過大な被害状況を見積もり安い心理状況に置かれた。こういう面も理解する必要があろう。韓国では、原発事故から時間が経っても相変わらずの混乱状態にある。

     


    (2)「早野名誉教授は東日本巨大地震以降、仲間の研究者とともに日本の国土の70%近い地域がセシウム137に汚染されている可能性があるとする研究結果を米国科学アカデミー紀要(PNAS)に発表した。論文は日本だけでなく、全世界で波紋を呼んだ。原発の危険性に対する警戒を訴える声が高まり、原発反対論者の根拠として広く引用された。早野名誉教授は「当時の論文は放射能物質がどれほど広がったのか不明な状況で仮想分析によって汚染程度を予測した資料だった」とし、「翌年放射能を実際に測定してみると、自分の論文が放射能汚染を過度に高く予測し、事実とは異なっていたことが判明した。実際にセシウム137に汚染された地域は放射能漏れが発生した福島県東部と周辺の一部の県に限られていた」と説明した。

     

    セシウム137によって汚染された地域は、福島県東部とその周辺の一部であることが判明した。韓国の反原発団体はこの事実を認めずに騒ぎ立てている。「福島産海産物輸入規制」がそれである。WTO(世界貿易機関)の上級審まで、この間違った事実を受け入れるという混乱ぶりだ。風評は一度、起こると修正は効かぬようである。

     

    (3)「その後、日本では原発に関する社会的論議に際し、早野名誉教授の論文ではなく、公式な測定データを根拠とするようになった。早野名誉教授の論文はコンピューターモデルを利用した予測で、実際の結果とは異なっていたためだ。早野名誉教授は「3年前に韓国の放送メディアが取材に来て、過去の論文を根拠に『日本がセシウムで汚染されているのか』と聞かれたので驚いた」と話す。既に日本どころか世界で実際の測定データを活用しているのに、事実と異なる自身の過去の研究が韓国では脱原発の根拠として使われていたからだ」

     

    中国や韓国では、噂が真実を上回るという妙な現象が存在する。長い専制時代において、為政者は真実を隠してきたので、噂の伝播力は驚くほどの速度を持っている。いったん形成された「噓話」が、さも真実のごとく語られるのは、後発社会の宿命である。韓国が、まさにこの状況に置かれている。

     

     

     


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    日韓関係は、最悪事態を迎えている。文大統領の日本嫌いが原因だ。個人感情が外交関係に影響を与えるケースである。何とも不思議な話である。国益増進が外交の目的だが、文大統領はそうでないらしい。

     

    文氏は、海外の国際会議で安倍首相に二度、先に声をかけたという。たまたま、同時に他国の首脳も安倍氏に声をかけ、文氏の声に気付かなかったようだ。それを根に持って、「安倍嫌い=日本嫌い」へとつながったようだ。幼稚な話である。

     

    ことの経緯はどうあれ、日本に生活する韓国人は、日韓関係悪化の強い影響を受けている。そこで、文政権の対日政策と対北朝鮮政策に反対する集団を立ち上げた。

     

    『朝鮮日報』(5月25日付け)は、「民団元幹部ら、反文在寅政権団体を立ち上げ」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「在日韓国人社会の主軸である在日本大韓民国民団(民団)の元幹部らが、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の対日政策と対北朝鮮政策を批判する団体を新たに立ち上げた。かつて民団で副団長や支部長などを歴任した彼らを中心とする『大韓民国の自由民主主義を守る在日協議会(韓自協)』は25日、東京都内で結成大会を開いた」

     

    日本社会から韓国政治を見ていると、大きな危機感を持つのであろう。日本人の私ですら、韓国は重大な段階にあると見る。就職難がもたらす結婚難。それが出生率を異常なまでに低下させている。韓国社会では、この事実に気付いているか疑問だ。出生率対策は、単純に出産のお祝い金を出すことでない。結婚可能な経済的な条件、出産後の子どもの教育費、母親が子育てと就職が両立できる制度。そういう諸々の条件整備が不可欠である。

     

    そういうきめ細かい対策を行なわず、やっていることといえば、日本の過去を穿り返して、賠償や謝罪を求めて、日本と鋭い対立を再燃させている。その対極では、北朝鮮への過剰傾斜によって、韓国の自由主義と民主主義を骨抜きにする動きを始めている。小学校の教科書では、全面的な書き換えを行い、「漢江の奇跡」が象徴する高度経済成長という歴史的な事実まで抹消する始末だ。民団の人々が、母国のこの異常な動きに危機感を強めるのは当然だろう。

     

    (2)「韓自協準備委員会は結成趣旨分の中で、『文在寅政権は経済政策の相次ぐミスで国民の不満を高め、政権維持の基盤として親日清算を掲げることにより国民の間で葛藤をあおり、未来志向の関係を構築してきた韓日関係を破綻に追い込んでいる』と主張した。さらに『文在寅政権は北朝鮮に対する制裁を解除し、金正恩(キム・ジョンウン)政権を延命させ、韓半島(朝鮮半島)の平和に必要な韓米同盟を破綻させようとしている』とも訴えた。韓国大法院(最高裁に相当)が徴用被害者に対する賠償を命じてから6カ月、この問題に文在寅政権が何の対応も取らないことに在日韓国人社会の間で不満が広がっていた」

     

    文政権は、北朝鮮との統一を目指して動き始めている。だが、国内経済の疲弊を見れば、韓国が、北朝鮮との統一費用を賄えるとは思えない。南北統一を実現したいならば、まず国内景気の立て直しに全力を投球すべきである。文政権には、そういう政策実施の優先順位が確立せず、感情のままに政策を発動させている。はっきり言えば、政策が余りにも素人であり、ランダム過ぎるのだ。

     

    (3)「韓自協の共同代表を務めるキム・イルウン元栃木県民団団長は本紙との電話インタビューで『我々は反大韓民国団体ではなく、反文在寅政権団体だ』とした上で『文在寅政権の対日政策が今後も続いた場合、最終的に大きな被害を受けるのは在日韓国人だ』と述べた」

     

    海外にあるこうした団体が、母国政府に反対の狼煙を上げるのは珍しいであろう。それだけ、日本社会の「嫌韓」感情を肌で感じているに違いない。


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