親日と見られてきた台湾で、8月14日慰安婦像が建てられた。台南市の国民党所有の敷地内である。このニュースを見て、誰でも驚いたに違いない。日本で震災が起これば、いつも心暖かい真心こもった支援をしてくれる。その台湾でなぜ?
台湾メディアが、その裏事情を伝えている。
『中央社』(8月16日付)は、「台南に設置の慰安婦像 市や民進党、国民党による政
治利用を批判」と題する記事を掲載した。
(1)「南部・台南市に台湾で初めての慰安婦像が設置されたことについて、同市や与党・民進党台南支部は『国民党による慰安婦の政治利用』だとの見方を示している。日本の対台湾窓口機関、日本台湾交流協会は15日、国民党台南市党部関係者らによる慰安婦像設置は日本政府の立場やこれまでの取り組みと相容れないものであり、『大変残念』とする声明を発表した」
日本台湾交流協会は15日、公式サイトにつぎのような声明文を掲載した。「慰安婦像設置を残念に思う気持ちを示した上で、日本政府主導で創設された『アジア女性基金』が台湾で呼びかけに応じた元慰安婦13人に『償い金』として1人当たり200万円、医療・福祉支援事業として1人当たり300万円を支給したことを説明。歴代首相からのお詫びの手紙を元慰安婦に届けた」
このような、状況下で国民党があえて「慰安婦像」を建てたのは、「反日」が目的でなく、与党の民進党へ対抗する意図だという。
(2)「台南市政府新聞及国際関係処の許淑芬処長は15日、慰安婦像除幕式は国民党が一手に取り仕切ったものだと指摘。式典の開催地や像の設置場所が同党の所有地であるほか、式典を主催した台南市慰安婦人権平等促進協会が今年4月に同党台南支部の謝龍介主任委員の協力で創設され、馬英九前総統が式典をつかさどったことを根拠に挙げた。式典後、台南市長選に出馬する同党公認候補、高思博氏の街頭イベントが行われたことにも触れ、同党には政治的目論見があったと批判した」
地元の台南市では、「慰安婦像」が建てられて困惑している様子だ。慰安婦像の除幕式を国民党が全て手配し、地元が関わっていないからだ。除幕式後、台南市長選の立候補者についてPRするなど、目的がここにあったことを示唆している。
(3)「民進党台南支部の蔡麗青執行長は、馬前総統が総統在任中に像を設置しなかったのは、外交上の考えがあったからだと言及。(台南市長)選挙期間中に協会設立や銅像設置などの大きな動きを突然見せたのは、1947年の2・28事件で犠牲になった弁護士の湯徳章(坂井徳章)氏の像への当てつけで、国民党が難癖をつけていると非難した。湯氏の像は市内の湯徳章記念公園に設置されている。また、慰安婦問題は党派を問わず共に向き合うべきで、これらの強くて偉大な女性たちが消費されることはあってはならないと述べた」
民進党の地元幹部は、国民党が「慰安婦像」を建てた目的について、2.28事件(国民党政府が、台湾市民の抗議を弾圧して2万人前後の犠牲者を出した事件)で犠牲になった弁護士像への「嫌がらせ」だと見ている。前記の弾圧事件は、国民党政府の行なったもの。それだけに、古傷に触れられるのを忌避したかったのか。その嫌がらせが、「慰安婦像」とは解せない。
それにしても、国民党はもはや政権を獲れる見込みがなくなったのか。政権に復帰したときは、「慰安婦像」を撤去し日本へ涼しい顔をするつもりなのか。理解に苦しむ話だ。