勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    中国のファーウェイ(華為技術)は、米国の根強い不信を買い苦境に立たされている。この裏には、秘密主義・独善主義・外国排外主義という中国共産党の体質がそのまま乗り移っている。ファーウェイは、中国の経済成長とともに攻撃的体質を帯び始めた。これでは、米国に受入れられる訳がない。米国のトランプ氏は、中国へ貿易戦争で一太刀浴びせているが、その切っ先はファーウェイにも向けられている。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(2月22日付)は、「PR戦で墓穴を掘ったファーウェイ」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「ファーウェイ創業者の任正非氏は今週、2度のテレビインタビューで疑惑に反論した。英BBCに対して、米国がファーウェイを「踏みつぶす」ことはできないと語り、こう続けた。「西で光が消えても、東が輝き続ける。米国が世界を意味するのではない」。元中国人民解放軍の技術者で、ほとんど取材に応じない任氏が表立って発言したのは、ファーウェイの世界的な事業を脅かす攻撃に応戦しようとしたからに他ならない」

     

    ファーウェイ創業者の任氏が強気のコメントをした。危機管理対応としては下策と評されている。これでは、反感を買うだけで何の解決策にもならないのだ。まさに、秘密主義・独善主義・排外主義の典型例である。

     

    (2)「トランプ米大統領は、「モバイル・ワールド・コングレス」(MWC)開幕前に、国内通信事業者にファーウェイの機器の利用を禁じる大統領令に署名する見通しだ。現実として実効性はほとんどない。すでに米政府はファーウェイ製品を買わないよう通信事業者に圧力をかけ、同社の米企業に対する投資も阻む動きに出ており、18年前に始まったファーウェイの米国進出はおおむね行き詰まっている」

     

    米国トランプ氏は、間もなく国内通信事業者にファーウェイの機器利用を禁じる大統領令に署名する見通しだ。ファーウェイの任氏が、抗議のコメントを出しても「犬の遠吠え」に過ぎない。

     

    (3)「昨年までファーウェイのロビー活動を手がけていた会社の幹部は、「この1年の電撃的な聖戦で、政府との渉外活動にあたる人は誰も実のある仕事ができなくなった」と話す。「ファーウェイ自身が状況をさらに悪くしている。いま打てる最善の手は危機管理なのだが、自社のイメージを管理する一貫した戦略的アプローチがまったくない」。ファーウェイの仕事を手がけた複数のPR専門家によると、それは助言がないからではない。元経営幹部や外部のコンサルタントによると、ファーウェイは決定的に重要な時期に助言に耳を傾けず、コンサルタントよりもうまく立ち回ろうとすることさえしてきたという。ファーウェイ米国法人の広報・渉外担当副社長だったプラマー氏は、「外国人に対して常に根本的な不信があった。助言をしても疑いを持たれてしまう」と言う」

     

    ファーウェイのPRを担当した専門家によると、ファーウェイは助言を聞こうとしないばかりか、PR会社を出し抜いて自らPR会社を設立するという信じがたい行動をしてきた。これは、中国人に契約理念が欠如している結果である。

     

    このような例はほかにも山ほどある。技術提携の話を持ち込み、技術の概要をすべて聞き出した後、契約当日、姿を見せず消えてしまうのだ。これは、技術の中身を無料で知ったから、もはや契約に及ばないという「反倫理的行動」である。中国人のこの種の行動は、「詐欺行為」である。この記事を読まれた方は、これに騙されないように十分、気を付けていただきたい。

     

    (4)「現在の米中の地政学的対立の中で、ファーウェイ内部の実態と同社が欧米に示そうとしているイメージの齟齬(そご)は膨らむ一方だ。ファーウェイ欧州法人のある外国人幹部は、中国の力の高まりと中国企業の成長がおごりを生み出し、ファーウェイの社員も含めて中国人は時に攻撃性を示すようにもなっていると話す

     

    中国人の最大の弱点は、自らの経済力がついたと自信を持つと、手に負えないほどの傲慢さを表すことである。私には、この点がどうにも理解できないのだ。中国人が世界で排除される理由は、こういう欠陥によるのだろう。

     


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    韓国は、希代の「ユートピア大統領」を選んでしまった。国民を豊かにすべき最低賃金引き上げが、逆に国民を貧しくさせているからだ。この最賃引き上げでもっとも潤ったのは、文政権支持母体の財閥企業労組組合員という、とんでもない結果を生んでいる。

     

    文政権の支持母体は、前記の労組と市民団体である。要求することに長けているが、物を生み出す経験はゼロ同然である。それだけに、政策にバランスを欠いており、今回のような致命的な欠陥をもたらした。文政権は、この危険性を全く予知できなかった点で「アマチュア政権」と批判される理由である。

     

    『朝鮮日報』(2月22日付)は、「韓国、所得下位800万世帯、所得37%減の衝撃」と題する社説を掲載した。

     

    (1)「2018年10~12月の所得下位20%の世帯所得が、前年同期を約18%下回り、2003年の統計開始以来で最大の減少幅を記録した。税金による公的補助金を除けば、約30%も落ち込んだことになる。最低賃金引き上げと関係が深い勤労所得は37%減少した。目を疑いたくなるほど衝撃的な統計だ。その上の階層に当たる所得下位20~40%の所得も5%減少し、全国の世帯の40%(800万世帯)が1年前よりも貧しくなった」

     

    韓国経済が成長を続ける一方で、全世帯の40%が1年前よりも貧しくなる。異常事態だ。所得上位20%の所得は10%増加した。この所得上位20%には、労組が入っている。韓国の大企業労組の組合員は、「富裕階級」である。決して最低賃金を引上げなければならない層ではない。だが、計算上では最賃引上げに該当するという。こういう形式主義が、韓国特有の問題を生み出す原因だ。話は飛ぶが、「反日」も形式主義に基づく。実態を無視して騒ぎ立てるからだ。国民病であろう。

     

    (2)「所得下位層の所得減少は、雇用情勢悪化による必然的な結果だ。所得下位20%のうち無職世帯が56%に達した。1年間で12ポイントも増えた。失業者数が過去19年で最多を記録するほど深刻な雇用氷河期の衝撃は貧困層に集中した。昨年第4四半期には所得下位層による就職が多い臨時職が17万人減少した。廃業した自営業者は昨年、初めて100万人を超えた。低所得層の勤労者が働き口を失い、零細事業者が店をたたんでいる。それが貧困層の衝撃的な所得減少と過去最悪の所得格差として表れたのだ」

     

    「所得下位20%」は、5段階に分けた所得階層別で言えば「最下層」である。ここでは、56%が無職である。1年間で12%ポイントも増えた計算である。その原因は、最低賃金の大幅引上げで失業した人たちである。文氏が、「所得主導経済」などと言うインチキ経済論に騙されなければ、こういう辛酸をなめずに済んだ人たちである。

     

    気の毒なのは、これらの貧しい生活を余儀なくされている人たちが、大統領選で文氏に一票投じた層である。幸せになれると信じて入れた一票が、自らを不幸に追い込んだのだ。これに勝る不幸はない。

     

    (3)「最悪の所得統計が発表された当日、文在寅大統領は大学の卒業式で青年たちに「あきらめずに毎日を一生懸命生きてほしい」と訴えた。数日前には「包容国家」ビジョンとして3年以内に「全ての国民が生涯にわたり基本的な生活を営める国」をつくると表明した。市民生活が破綻している現実を前に「ユートピア」を約束する文大統領の発言にはあっけにとられる

     

    韓国与党の「共に民主党」は、100年政権論を言い出している。今後100年間、現政権の流れを続けたいというのだ。こういう経済無策の政権では、あと3年も保たないはず。このように「政権維持」だけが目標の文政権は、現実感覚が欠如しているので、経済危機を正確に認識できないのであろう。韓国は、まさに経済危機に直面している。


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    第2回の米朝首脳会談を前に、北朝鮮内部で粛清が行なわれた模様だ。米朝接近へ反対するグループが対象である。金正恩氏の護衛役で、約10万人で構成される護衛司令部を粛清の標的にしたのは、今回が初めてといわれる。金正恩氏はこれまで、護衛司令部の汚職には見て見ぬ振りをしてきた。その前例を覆して強行手段に出たのは、公然と汚職・蓄財が進んでいることへの警戒観の表明とみられる。

     

    この粛清が、米朝首脳会談前に行なわれたのは暗示的である。米朝首脳会談が一歩、前に進むシグナルとも読めるからだ。トランプ米国大統領は最近、頻りと楽観論を流しているが、正恩氏から、それらしき動きを察知している可能性もある。汚職取締は、隠匿されているドル資金を回収していることで、経済封鎖が効いてきたこと。また、対米融和姿勢に転じる上で、タカ派の存在が障害になってきたことを示唆している。となると、米朝首脳会談で前向きの動きが出てくる前兆とも読める。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2月21日付)は、「正恩氏がエリート層粛清、外貨確保やタカ派排除狙いか」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は、汚職撲滅の一環として、私腹を肥やしたエリート層に対する粛清を断行した。5070人が追放か、投獄・処刑されたとみられている。背景には、国際社会からの制裁措置で打撃を受けている国家財政を潤すほか、米韓との雪解けを進める正恩氏の方針に反対する政権内タカ派を排除する狙いがある。今回の政治的な粛清では、自らの権威を利用して不正蓄財した従来の強硬派が標的となっているという。脱北者が創設したシンクタンク(ソウル)、北朝鮮戦略センターがまとめた報告書やアナリストらの分析で明らかになった」

     

    今回の粛清で数十人が対象になったという。目的は二つ指摘されている。

        制裁措置で打撃を受けている国家財政を潤す

        米韓との雪解けを進める正恩氏の方針に反対する政権内タカ派を排除する

     

    この通りとすれば、米朝首脳会談で何らかの動きが期待される。

     

    (2)「正恩氏は11日の演説で、汚職撲滅を宣言。党や政府組織は「深刻なものから軽度のものまで、権力乱用や官僚主義、汚職の根絶に向けた闘争を加速させるべき」と表明した。韓国の元情報当局者らは、北朝鮮の指導者が汚職撲滅を掲げるのは異例だと話す。北朝鮮戦略センターの報告書の執筆者らによると、昨年暮れには、金一族の身辺警護を担当する護衛司令部の幹部らが、数万ドルを不正蓄財していた疑いで粛清された」

     

    金一族の身辺警護を担当する護衛司令部幹部らを粛清した。これは、かなり大胆な策である。反感を買えば、自らに危害が加えられかねないからだ。無論、そこは見極めて粛清したのであろうが、完全に権力掌握している証拠であろう。

     

    (3)「昨年終盤から始まった今回の粛清では、北朝鮮の既得権益層が蓄えていた外貨を没収することが狙いで、金政権は数百万ドルを手に入れたとみられている。金正恩氏はこれまで、政権の安定を優先し、取り巻きを満足させるために汚職をある程度容認してきたが、制裁措置により考えが変わったもようだ。正恩氏は不正資金について、国庫をさらに枯渇させる悪因と認識するようになったという。米韓の安全保障専門家によると、今回の汚職対策では、横行していなければそれほど目立たない賄賂のようなものを取り締まっている点で、従来のものとは性質が異なるとしている

     

    北朝鮮は、国際的な経済制裁によって、外貨資金が枯渇している。それを補うべく汚職取締を行い、同時に、正恩氏の政策転換に反対する層を粛清するという「一石二鳥」を狙った。


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    フィリピン国民は、中国への反感が根強い。南シナ海のフィリピン所有の島嶼が占領され、軍事基地化されているからだ。その上、常設仲裁裁判所で中国の主張は完全否定されたが、なお居座っている不満は、いつでも表面化する危険性を持っている。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2月21日付)は、「ファーウェイ製品、フィリピンでも懸念の的」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国の華為技術(ファーウェイ)に対する米国の圧力がフィリピンにも及びつつある。フィリピンではファーウェイ製品を使った4億ドル(約443億円)の監視カメラ導入計画に議員が抵抗している。「セーフ・フィリピン(安全なフィリピン)」と呼ばれるその計画は、首都マニラとロドリゴ・ドゥテルテ大統領の出身地ダバオに12000台の閉回路テレビ(CCTV)カメラを設置するもの。中国の習近平国家主席が、昨年11月にフィリピンを訪問した際に調印された。顔認証技術を使用して警察による犯罪対応の迅速化、証拠収集、容疑者の特定を支援することが目的だ」

     

    中国は、これまでフィリピンへの支援を約束しながら、目立ったことをせず放置していた。それが、ファーウェイ製品を使った4億ドル(約443億円)の監視カメラ導入で腰を上げた裏には、何かの意図が隠されていると見るべきであろう。従来の援助計画にはなかったものだ。中国が、監視カメラを通して、北京からフィリピンを監視する懸念は十分にある。

     


    (2)「フィリピンの反対派議員は中国政府によるスパイ活動を懸念、今月初旬に成立した年間予算に条項を盛り込み計画への歳出を阻止した。上院には国家安全保障上のリスクの観点から計画について調査を求める決議案が提出された。決議案を起草したラルフ・レクト上院議員は、フィリピンは中国とは以前から南シナ海で領有権を争っており、議員の不安は大きいと話す。レクト氏は「スパイ行為やデータの安全に関して世界中で中国の技術に懸念が持たれている」と指摘、「監視システムが本当に必要なら中国抜きでできないのか」と述べた」

     

    フィリピンが、中国と南シナ海で領有権を争っている関係にあることを忘れたような話である。国会議員の不安が大きいのは当然だ。国会が、この監視カメラへの予算支出を否決したのは、国民の不安を反映した結果であろう。

     

    (3)「今回の計画では資金の大半は中国からの融資で賄われることになっているが、フィリピンは2割に相当する約8000万ドルを負担しなければならない。フィリピン議会はこの負担分の承認を保留した。関係者によると、ドゥテルテ大統領が拒否権を行使することが計画を進める唯一の方法だという。こうした背景には、米国がファーウェイと同社社員が中国政府にスパイ活動を強要されている可能性があるとして、欧米各国に同社製品の使用中止を呼びかけていることがある」

     

    監視カメラ予算(約8000万ドル負担)は、議会で拒否された。後は、ドゥテルテ大統領が拒否権を行使すれば、予定通り計画が進められる。大統領としても苦しい立場に追い込まれた。国民の抱く中国へ不安を踏みにじる訳にもいかないからだ。長年の紛争地帯だった南部ミンダナオ島に、2022年設立予定のイスラム自治政府の領域が最終的に確定した。こうなると、社会的騒乱の種がなくなる。それだけに、選りに選って中国製の監視カメラを導入する意味が、ますますなくなるはずだ。

     


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    従来、豪州と中国は貿易関係を中心に密接な関係にあった。それが険悪化したのは、中国から多額の政治資金が豪州政界に流れていたからだ。中国が、多額の政治資金をバラマキ、豪州国政を牛耳ろうとした野心が露見したもの。豪州が、中国を警戒するのは当然である。発端は、中国がつくったと言ってよい。

     

    中国はまた、豪州やニュージーランドの裏庭と言える南太平洋の島嶼諸国へ、多額の資金を援助「債務漬け」にし、軍事施設を建設する野望も見せていた。豪州が、安全保障上の見地から中国を警戒するのはやむを得ないことだ。

     

    こうした、両国の関係悪化を背景に、中国は「輸入禁止」という禁じ手を使ってきた。これまで、「保護貿易反対」を唱えてきた中国としては、思い切った政策転換である。このニュースに一番驚いたのは韓国であろう。日本が、韓国への政治的報復で「輸出禁止」に出るのでないか、とビクビクし始めているに違いない。

     

    『日本経済新聞 電子版』(2月21日付)は、「中国、豪からの石炭輸入禁止、両国関係の悪化背景か」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国の税関当局が東北部にある遼寧省大連など5つの港で、オーストラリアからの石炭輸入を無期限の禁止にしたことが明らかになった。ロイター通信が伝えた。豪州にとって中国は石炭の主要な輸出先で、今回の措置は豪経済への一定の影響が避けられそうにない。広州港など他の主要港での禁輸は明らかになっていない。豪政府は中国の通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)や中興通訊(ZTE)に対し、次世代高速通信「5G」への参入を事実上禁止している。また、豪州での多額の政治献金で知られる中国人実業家の永住権を取り消すなど両国関係の緊張が高まっており、今回の措置は中国による豪政府への圧力との見方もある」

     

    中国が、豪州石炭の輸入禁止に踏み切った経済的な理由は、中国経済の悪化で石炭需要が減ることをカムフラージュする狙いもある。ここら辺りが、中国政府の「演出」である。中国はこれまで、豪州石炭の最大輸入先である。それが、掌を返したのは石炭需要の減少に理由を求められる。

     

     

    (3)「ロイターによると、大連のほか、丹東や盤錦など遼寧省内にある計5つの港で豪州産石炭の通関ができなくなった。ロシアやインドネシアといった豪州以外の国からの石炭は影響を受けていないという。ロイターは、今年に入ってから中国で豪州産石炭の通関作業が滞っており、荷降ろしできない運搬船が港の外で列をなしていると伝えた。また、大連の当局は管轄する港での石炭輸入量を2019年は全体で1200万トンに制限する措置も決めた。中国外務省の耿爽副報道局長は21日の記者会見で「安全や品質リスクの検査や分析をしている」と述べ、輸入禁止を暗に認めた。目的については「中国企業の合法的権益や環境、安全を守る」と主張した」

     

    大連当局は、2019年に管轄する港での石炭輸入量を、全体で1200万トンに制限すると発表した。この点に、中国が豪州石炭輸入禁止に出た理由がある。国内の石炭需要の低下=不況の深化である。豪州を悪者にして、中国経済の悪化を糊塗する。中国らしいカムフラージュ法だが、実際の背景は割れている。見透かされているのだ。


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