韓国のソウルと仁川が、大気汚染ワースト世界1位と2位になった。5日午前、ソウル・光化門広場から約2キロメートルの距離にある北岳山が見えなかったという。 5日連続で微小粒子状物質(PM2.5)をはじめとする粒子状物質が韓国全土を覆っている。この緊急事態で活躍するはずの環境団体が、完全沈黙しているという世にも不思議な現象が起こっている。
韓国紙は、日本のきれいな空気の秘密を解く記事を流し、韓国政府との違いを指摘している。日本は高度経済成長期(1960~80年代)に大気汚染に苦しんだが、地道な対策の積み重ねで現在の環境を保っている。その原動力になったのが、環境団体を先頭とする市民団体であった。これに、関連業界や政府が協力したものだ。
韓国の環境団体や市民団体は、なぜ抗議の声を上げずに沈黙しているのか。それは、彼らが利権集団、猟官集団に成り下がっており、文在寅政権の要職を占めて権力の一角に棲み着いているからだ。この実態こそ、韓国政治がいかに「軽量内閣」であるかを物語っている。
『朝鮮日報』(3月7日付け)は、「大気汚染にお手上げの韓国政府、だんまり決め込む環境団体」と題する社説を掲載した。
(1)「韓国政府が太陽光や風力発電などに100兆ウォン(約10兆円)を投じると言ったのにもかかわらず、石炭火力発電の割合が2017年の33.5%から2030年は31.6%と変わらないのは、脱原発のためだ。石炭火力を大幅に減らすには、安価で安定した電力を生産できる原子力発電に頼らなければならない。脱原発に固執しながら粒子状物質対策として石炭発電削減を主張するのは矛盾している。文在寅大統領は大統領選挙で、「粒子状物質30%削減」を公約した。人工降雨や空気清浄器の設置は、がんになった人に軟こうを塗るようなものだ。学校の空気清浄器設置も必要だが、国民が望んでいるのは粒子状物質の根本的な削減であって、税金を使って空気清浄器を設置することではない」
文大統領は、大統領選で大気汚染の原因である「粒子状物質30%削減」を公約した。選挙目当ての話であった。現在の緊急事態で行なっていることは、人工降雨実権や学校への空気清浄器の設置だという。人工降雨実験は失敗した。文政権の欠陥は、原因を除去せず、財政資金を投じて場当たり的対策でお茶を濁していることだ。
最賃の大幅引上が、失業率を高めると何をしたか。原因である最賃引き上げ幅の修正でなく、失業対策費の増加で約5兆2000億円も無駄金を使っている。大気汚染対策も全く同じことをやっている。
(2)「こうした中、多くの人々が困惑しているのは、粒子状物質が災害レベルに達しているのにもかかわらず、あれほど執拗(しつよう)な環境団体がやけに静かなことだ。韓国最大の環境団体「環境運動連合」は6日、粒子状物質が飛び交う中、ソウル中心部で「核廃棄物 答えはない」という市民宣言式を開催した。今月に入って6日間連続で全国民が「PM2.5地獄」に苦しめられているのに、環境運動連合はデモどころかコメントや声明すら発表していない」
環境団体が市民団体は、社会問題などが起ると、最初に立ち上がって運動を始める。今回のような大気汚染という健康被害を及ぼす事態が発生しても、前記の団体は音沙汰なしである。どうしてしまったのか。この謎を解く鍵は、環境団体のリーダーが文政権で要職を占めているので政府批判できないのだ。完全な「御用団体」である。
(3)「(各環境団体は)国民の健康にとって本当に重要な粒子状物質に対して完全に無視したり、形式的な論評をしたりするだけにとどまっている。その理由を推測するのは難しいことではない。現政権発足以降、各環境団体の出身者たちは『おいしい役職』に就いている。環境運動連合の事務総長を務めた人物たちは現在、首都圏埋立地管理公社の社長や韓国原子力安全財団の理事長をしている。環境正義の事務局長を務めた人物は埋立地管理公社の事業理事、緑色連合の政策委員は原子力安全技術院の監査だ。現在の環境部長官も環境正義で活動していた。これらの人物たちが追い求めているのは環境や国民の健康ではなく『おいしい役職』だ」。
韓国の市民団体は、政治と無関係な団体ではない。政治屋的な側面を持っている。一種の利権屋的な動きをするのだ。猟官運動のために革新派の看板を立てているだけだろう。ここで、連想されるのが、この延長で「反日運動」をやっていることだ。反日=選挙で有利、という図式ができあがっている。環境運動=利権という浅ましい実態が浮かび上がっている。