北朝鮮は、核放棄という「ルビコン川を渡った」のだろうか。世界の最貧国が、核とミサイルで防衛という図はやっぱり漫画に見える。早く、普通の国になって周辺国を安心させて貰いたい。これが、日本に住む人間の切実な願いである。
北の金正恩氏は、第一回の南北首脳会談の際、ベトナム型の経済開発を考えていると韓国の文在寅氏に語った。中国モデルでなく、ベトナムモデルの理由は明らかでないが、北の本音である「中国嫌い」を漏らしている感じで興味深い。
そのベトナムは現在、「TPP(環太平洋経済連携協定)11」のまとめ役として、日本に全面協力した間柄である。ベトナムは、中越戦争(1979年)で中国に侵略されたほか、南シナ海では島嶼を奪われた怨念の相手国である。北朝鮮は、こういうベトナムの苦悩に共感したのか。真相は分らない。
北朝鮮がベトナムの道を歩んでいくには、市場改革と開放をし政治・経済の安定を維持しなければならない。実は、この基盤づくりが重要である。北朝鮮は、賄賂が盛んと言われており、市場経済になるための社会制度から整備する必要がある。北朝鮮は、かつて南北が合同で北の開城で操業した工業団地を、何カ所かつくればそれが雛型になる。こういう議論も聞かれるが、その程度のことで済むはずがない。
北朝鮮経済に詳しい民間非営利団体(NPO)チョーソン・エクスチェンジ(本部・シンガポール)の創設者ジェフリー・シー氏は、米国経済通信社『ブルームバーグ』のインタビューで、外資による事業参入に少なくとも10年を要するとの見通しを明らかにした。
ベトナムと中国は、「漸進的な改革で安定的な体制への転換に成功した。一方、ソ連と東欧の場合は、急進的な改革で計画経済から市場経済に移行した。この過程が非常に不安定だったことが、共産党崩壊につながった」(『中央日報』7月5日付)。北朝鮮の場合、強制収容所や公開処刑など、過激な政治体質を持っている。当然、国内には恨みを抱える人々は無数いるはずだ。金体制崩壊を狙うグループが現れないとも限らない。なおのこと、経済改革を行なうには、その準備過程が必要になるはずだ。
『ブルームバーグ』(7月4日付)は、「北朝鮮経済、外資参入に最低10年、NPO見通し、市場開放の障壁多数」と題する記事を掲載した。
この記事は、前記の北朝鮮経済に詳しい民間非営利団体(NPO)チョーソン・エクスチェンジ創設者、ジェフリー・シー氏のインタビューである。
(1)「北朝鮮が米朝首脳会談後の制裁緩和を見据えて経済開放を進めるには、政府当局者による情報開示や透明性の欠如が障壁になると指摘。『市場開放に当たっては、この体制を変える必要がある。北朝鮮が海外のビジネスの流儀に合わせるのには、長い時間がかかる』との見方を示した」
北朝鮮は、秘密の多い閉鎖国家である。情報開示や透明性の欠如が、市場経済への障壁になる。先ず、これを取り除かねばならないが、簡単に進むはずがない。米朝首脳会談の過程を見てもそれが分る。一言で言えば、謎の多い国である。
(2)「貿易規制が緩和され、経済が徐々に開放されても、潜在的な外国人投資家を呼び込むに当たって課題は山積している。世界の汚職を監視する非政府組織(NGO)『トランスペアレンシー・インターナショナル』によると、世界の腐敗認識指数で北朝鮮は最下位。国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチは、北朝鮮では政府による公開処刑、強制労働、拷問など国民への人権侵害が蔓延(まんえん)しているとしている。しかし、前出のシー氏によると、こうした政府の厳しい制裁下にあっても、国民の起業家精神は奪われてはいない」
外国人が、北朝鮮で事業を始めるまでには超えなければならない山がいくつかある。賄賂の横行、人権弾圧、強制労働など非正常項目の一掃には相当の時間がかかるだろう。要するに、正常なビジネスをする前の障害克服が問題である。
(3)「シー氏は北朝鮮で最も潜在的な成長力が大きい部門として、小売業や道路や鉄道などのインフラ開発を挙げた。米中央情報局(CIA)が発行する『ザ・ワールド・ファクトブック』によると、北朝鮮には豊富な天然資源があり、鉱業部門は有望だ。さらに、レストランやカラオケが人気を集めており、レジャー市場も成長が見込めそうだ」
潜在的な成長力を持つ分野は、小売業や道路や鉄道などのインフラ開発。また、鉱業のほかにカラオケ、レストラン、レジャー市場など身近で手軽に楽しめる分野が有望だという。何か、戦後復興期の日本を想像する。1940年代の後半という感じで、70年前の