勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    中国の汚職は、「文化」である。「人縁社会」であるから、賄賂が潤滑油になって人間関係をつくってきた。古来、政治家は賄賂を受け取って普通という感覚である。ただ、それが度外れて巨額なものになると罰せられたという記録は残っている。習近平氏が、国家主席になる2012年以前は、賄賂が「名刺代わり」であったのだ。

     

    実は、最近の中国経済不振の裏には、習氏による厳しい汚職追放によって、中国経済の「イノベーション」が止まってしまったのでないかという説が登場している。市場経済機構が十分に機能しない中国では、賄賂が重要な役割を果たしていたというのである。人縁社会では、賄賂が人と人をつなぐ重要な役割を果たす。

     

    市場機構に生きて来た民主主義国の人間が、中国の賄賂先導システムを理解することは不可能である。だが、市場機構という合理的な資源配分機能が存在しない中国では、「義理」「人情」「恩顧」「顔」という人縁社会特有のキーワードが社会を動かしてきたのだ。

     

    習氏は、自らの政敵を倒す道具として「汚職取締」を強化し、同時に国有企業優遇という市場機構弱体政策を採用した。国有企業優遇は、脱市場機構である。こうして、習氏の「特色ある社会主義」は、汚職撲滅と国有企業優遇によって、経済成長率を引き下げているというのである。この説は、後で取り上げる。

     

    習氏が、汚職撲滅に努力しているが、中国の「汚職認識指数」(トランスペアレンシー・インターナショナル調査)による、世界ランキングを紹介したい。

     

     世界順位(順位が低いほど良い)

    2010年  78位

      11年  75位

      12年  80位(習氏の国家主席就任)

      13年  80位

      14年 101位

      15年  83位

      16年  79位

      17年  77位

      18年  87位   

     

    この腐敗認識指数によれば、習氏が国家主席に就任して厳しい取締を行なっても、ほとんど改善していないことを示している。毛沢東主義者は、中国の汚職腐敗は市場経済を採用した結果としている。これは、中国人社会自体が「人縁」という汚職と密接な構造であることを認識していない議論だ。日本の「腐敗認識指数」の世界ランキングは、18位(2018年)で、ほぼ18~20位にある。米国よりも上位だ。

     

    以上のような事実を理解すれば、中国の汚職撲滅を効果あらしめるには、徹底的な市場機構の採用によって、無駄や非効率性を排除するシステムを生かす社会を作ることだ。まさに、マックス・ヴェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』が生きる経済システムの構築である。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(11月4日付)は、「汚職なくして成長なし:中国経済のパラドックス」と題する記事を掲載した。

     

    1990年代から2000年代初めにかけて、中国では汚職が横行していたが、経済成長ペースも速かった。近年ではさまざまな面で汚職が減ったが、成長も減速している。これは単なる偶然ではないかもしれない。制度部門や金融部門の抜本的な改革がない中、ある程度の汚職は実のところ中国の成長モデルに不可欠だった可能性を示唆する調査が増えている。

     

    (1)「秩序に欠ける地方当局者を統制することは、2012年に習近平国家主席が就任して以来、政権の目玉政策となっている。容赦ない汚職撲滅運動は習氏の地位固めと権力強化の一助となった。だが、政府と渡り合う裏ルートを閉ざされて最も痛手を被るのは、国内の官僚制度で既に多くの壁に直面している民間の中小企業かもしれない。中国の過去30年の急成長を支えてきたのはこうした中小企業であるため、これは大きな問題となる」

     

    官僚の非効率性は、制度の壁になって経済活動を停滞させる要因である。市場機構が完全に作動していれば、官僚機構の非効率性を克服できる。だが、専制体制下の官僚は恣意的であって動きは鈍いもの。賄賂は、この恣意性を乗り越えさせる「魔力」を持つから、スピード感のある決定が行なわれる。これが、皮肉にも中国の改革を促進させる原動力になってきた。

     

    習氏は、賄賂を禁止すると同時に、市場機構を完全作動させずに国有企業中心という脱市場機構に走ってしまった。こうして、中国経済を動かすインセンティブが消えてしまったのだ。

     

    (2)「習氏が権力を握る以前にも、専門家の間では中国の収賄と成長の気になる関係が取り沙汰されていた。主立った論調はこうだ。裁判所や市場といった公的制度が公正かつ十分に機能していれば、汚職は成長の足かせとなる。機能していない場合――さらに当局者が成長に直結する利害関係を持つ場合――には、一定の汚職は地方の官僚と企業が非効率な制度や無意味な規制を避けて通るのに役立つ可能性がある」

     

    下線部分が重要である。賄賂(汚職)が、カネの力によって非効率な制度や無意味な規制を乗り越えさせる役割を果たしてきた。ここでは、賄賂が市場機構代替役を果たしている。

     

    (3)「学術誌「China Economic Review(中国経済展望)」に2012年に掲載された論文は、こうした仕組みが企業レベルでどう機能するかを焦点にしている。執筆者は中国人民大学の経済学者で、企業と政府機関の接触日数を指数として活用した。その結果、売上高の伸びの大部分に関して、汚職の可能性で説明がつき、小規模な株式非公開企業では特にその傾向が強いことが分かった

     

    汚職の可能性の大きい企業ほど、売上高の伸びが大きかったという。

     

    (4)「特に興味深いのは、中国の民間企業に共通する問題である資金調達に苦労している企業で、影響が一段と大きかったことだ。中国では国有の銀行システム事業の向かう先が国有企業に大きく偏っている。これが示唆するのは、2016年終盤に始まった徹底的なシャドーバンク(影の銀行)の取り締まりが、汚職撲滅運動と共に、経済の成長エンジンにもたらす問題を増幅させたということだ。過去には、民間企業は資金難を埋め合わせる方法を見つけ出せたかもしれない。今や当局者は、例外措置を講じることをとてつもなく恐れている」

     

    不正金融の温床とされた影の銀行は、汚職撲滅運動と共に整理淘汰されている。これが、経済の成長エンジンである民間中小企業の成長に大きな打撃を与えた。中国の経済構造が脆弱性を示している例である。

    ポールオブビューティー
       

    11月4日、タイで開催中のASEAN関連会議において、安倍首相と文大統領は11分間の「歓談」をした。事前に調整済みの出会いでなく、文氏による「突撃歓談」申し入れであった。安倍氏が、韓国語通訳を連れず英語通訳だけを帯同していた点に、それが窺える。

     

    日中韓首脳会談の控室で、先に着いていた文大統領は、後から来た安倍首相に「対話しましょう」と言って、側の椅子に誘ったという。日本側は突然のことで、韓国語通訳も陪席できず日本側の英語通訳が安倍首相の発言を英語に訳し、韓国側の英語通訳がこれを文在寅大統領に伝達するという方法で歓談が行われた。安倍首相は、徴用工問題について解決済みであるという原則論を主張した。文大統領は、「高官同士の話合いを提案」。安倍首相もこれに同意したという。

     

    以上が、11分間の「歓談」内容である。韓国側の報道では「真摯な話合い」と前向きに受け取っている。喉のトゲが取れたような「安堵感」を滲ませた報道である。これに対して日本側は、控え目な報道で落差が感じられた。

     

    『朝鮮日報』(11月5日付)は、「文大統領、安倍首相が現れるや隣の席に連れて行き『対話しましょう』」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「外交消息筋は、「文在寅大統領の方から先に手を差し出したが、日本は原則論を繰り返した。韓国政府が提示した、韓日企業が設立した基金で慰謝料を支給する『11』案に、韓国政府も参加する、いわゆる『21』案などの選択肢をめぐり、接点を見いだせなければ、破棄手続きへと進む可能性が高い」と語った」

     

    (2)「日本は依然として、「韓日協定をまず順守せよ」という見解を繰り返しているという。GSOMIA破棄を日本に圧力を加える切り札として切った政府としては、日本のGSOMIAに対する消極的な姿勢に当惑している状況だ。韓国政府関係者は「韓国政府はあらゆる可能性に対してオープンにして日本と対話しようとしたが、日本はGSOMIAが終了しても構わないという立場のようだ」と話した。青瓦台や韓国政府も、日本がGSOMIA復帰に消極的ならば、支持層の反日感情に逆らってまでGSOMIA復帰のための交渉に乗り出す考えはないと言われている」

     

    韓国は、GSOMIA廃棄を切り札に、「ホワイト国除外」で日本へ譲歩を求めている。韓国は、日本にとってGSOMIAが切り札でないことに気付いていないのだ。日本は、自前の軍事情報の収集体制を取っているからだ。ただ、日米韓三ヶ国は中朝ロに対して、情報インフラで結束している姿を示す必要がある。韓国は、こういう象徴的な隊列から離れようとしているわけで、米国が強い懸念を深めている。これが、韓国へ種々の圧力がかけられている理由だ。

     

    韓国では、GSOMIA復帰へのコンセンサスはできていない。だが、すでに要所、要所では、復帰へのシグナルが打ち出されている。日韓首脳歓談という「儀式」が終わって、日本と話合いルートができたという理由付が可能になるのだ。

     

    『中央日報』(11月5日付)は、「韓日首脳歓談後、韓国国家情報院長『GSOMIAの復旧、排除』」できないと題する記事を掲載した。

     

    (3)「東南アジア諸国連合(ASEAN)関連の首脳会議のため、タイ・バンコクを訪問中の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が4日、安倍晋三首相と単独歓談を行った。鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)国防部長官が4日、国会国防委でGSOMIAに関連し、「わが安保に少しでも役に立つならこのようなことがずっと維持されなければならないという立場」と話した。わずかこの前まで提起された軍事的効用価値が高くないという立場とかけ離れている。

     

    鄭景斗国防部長官が4日、「GSOMIAが韓国の安保に役立つなら、維持すべきである」と発言している。

     

    (4)「徐薫(ソ・フン)国家情報院長も4日、国会情報委国政監査でGSOMIAについて文在寅大統領と安倍首相がこの日ASEAN首脳会議で会って対話で解決しようということに共感を得たことを例にあげ、「(GSOMIA復旧の)可能性を排除することはできないのではないか」と話したとイ・ヘフン情報委員長が伝えた。これはGSOMIAの維持を求める可能性が大きいデイビッド・スティルウェル米国務省東アジア太平洋次官補の訪韓を一日控えて出てきた発言でもある」

    徐薫国家情報院長も、GSOMIA復帰への可能性を排除できないと発言している。これは、国防長官発言と同様に、感情論でなく韓国安保の必要性から出てきたものだ。文大統領は8月22日時点では民族派の感情論に乗った。その後の紆余曲折を経て、国防第一線の専門家の意見を無視できるはずがない。安倍首相との「突撃歓談」までやらざるを得ないところまで追い込まれていた文大統領だ。再び、GSOMIA破棄の姿勢を続ければ、韓国は救いのない状況に落込むほかない。

     

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    伝統的に多くの日本人が住み「ソウルのリトル東京」と呼ばれる東部二村洞で、日本人が姿を消している。ソウル日本人学校の周辺に引っ越した人が多い上に、日韓関係の悪化で家族を帯同させる駐在員が減少したからだという。

     

    今年の春頃までは、「日本ブーム」で和食や居酒屋など、日本の繁華街を思わせるように賑わった飲食街は寂れてしまったのだろう。ここ10年ほど、輸入ビール1位の人気を誇った日本製ビールは、もはや見る影もないという。倉庫には日本ビールの在庫が山になっている。

     

    これは、一面で韓国の消費景気を冷やしていることになる。「反日不買」は、韓国経済自体を弱体化させている。消費者心理を不安にさせているのだ。韓国自身が、ブーメランで苦しんでいる。それに比べれば、日本は軽微である。

     

    『朝鮮日報』(11月5日付)は、「『リトル東京』東部二村洞から日本人が消える」と題する記事を掲載した。

     

    今月1日午後3時、ソウル市竜山区東部二村洞(二村1洞)にあるハンガラムアパート正門前。二村駅の4番出口からその周辺を歩き回ったが、1時間が経過してようやく日本語で話しながら歩く人を見かけた。近所の不動産屋を10軒ほど見て回ったが、23年前にはよく見られた不動産屋の「日本語で相談可能」の表示はなかなか見つからなかった。日本式の商圏が形成されている東部二村洞のモクチャコルモク(食い倒れ横丁)でも日本人を見つけるのは容易ではなかった。

     

    伝統的に多くの日本人が住み「ソウルのリトル東京」と呼ばれる東部二村洞で、日本人が姿を消している。ソウル日本人学校の周辺に引っ越した人が多い上、韓日関係の悪化で家族を帯同させる駐在員が減少したからだ。

     

    (1)「二村1洞にあるA不動産仲介会社の社長は「この一帯に住む日本人の99%は駐在員だが、体感ではこの12年の間に駐在員が3040%減少した」として「3分の2は(日本人学校のある)上岩洞の方へ、残りは麻浦駅近くに引っ越したようだ」と話した。この社長はさらに「家族単位で来ている日本人たちは学校のある上岩洞へ、単身の場合は家賃も安く便利な施設が多い麻浦駅の近くに引っ越す傾向にある」と付け加えた」

     

    日韓関係に隙間風が吹いている現状では、日本企業も社員の韓国派遣で慎重になるのだろう。派遣される側も、家族帯同でなく単身赴任という、かつてのスタイルに戻ってしまった感じだ。だが、韓国人学生の日本企業就職希望者は相変わらずの好人気である。怖がることなく派遣すべきである。国際ビジネスマンを育成するには、この程度のことでびくついてはいられない。

     

    日本企業の海外直接投資収支は、2018年で世界1である。世界中でビジネスをする日本企業は、韓国が同じ資本主義国である以上、「ビクビク」する必要はない。

     

    (2)「近くにある別の仲介業者の店舗でも似たような話を聞くことができた。B不動産仲介会社の社長は「二村洞に新しく来る日本人はほとんどいないと見ていい」として「米軍が竜山基地を離れたのに続き、日本人も減少し、部屋を賃貸に出している大家たちはしばらく新しい入居者を探すのが困難な状況だった」と話した。二村1洞で日本人が減少した理由としては、まず子どもの学校の近くに引っ越した人が多いということが挙げられる。最近、麻浦区に新しいマンションが多数建設され、街の雰囲気が少しずつ良くなってきた影響だ。生活水準が高く日本人が多い、という理由で好まれてきた二村1洞の長所が、色あせてしまったわけだ。

     

    (3)「韓国と日本の葛藤が深まり、家族を日本に置いたまま(韓国に)入国する駐在員が増えたという点も、二村洞で日本人が減った理由に挙げられる。二村1洞には単身世帯が住むようなオフィステルなどの小型住宅がない。日本人たちの移動の動向は統計でも確認できる。ソウル市の登録外国人現況統計によると、今年の第3四半期(79月期)に竜山区に登録された日本人は1352人で、3年前の2016年第3四半期(1711人)に比べ20.8%減少した。一方、上岩洞と麻浦駅のある麻浦区は、今年の第3四半期は1010人で、16年第3四半期(928人)に比べ8.8%増加した

     

    16年第3四半期と今年の同時期の日本人居住数を比べると、竜山区が20.8%減少し、麻浦区は8.8%の増加だという。3年間で合計277人減少した。率にして10.5%減である。「リトル東京」から日本人が消えたのは、居住地の移動と日本からの派遣人数の減少が理由である。それにしても、かつて見られて日本人の姿が見られなくなって、地元の商店街では淋しい感じなのだろう。

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    韓国の反日不買運動が、韓国の航空会社や旅行業界に深刻な影響を与えている。日本旅行を取り止めたが、これに代わる旅行先がないためだ。改めて、韓国人にとっての「日本旅行」が、かけがえのない地域であることを証明している。韓国政府が、「反日不買」の旗を降ろさない限り、経営危機が続くと見られる。

     

    『朝鮮日報』(11月5日付)は、「他地域へ吸収されない日本旅行需要、 韓国旅行会社の業績が急激に悪化」と題する記事を掲載した。

     

    韓国で「日本旅行ボイコット運動」が3カ月以上続いている。大手旅行会社ハナツアーの先月の日本旅行需要は前年同月を82.3%下回った。減少幅は8月(76.9%減)、9月(75.4%減)よりも拡大した。時間がたっても回復の兆しがなかなか見えない。モドゥツアーの日本商品の販売も先月は91.9%落ち込んだ。

     

    (1)「単純に日本への旅行客が減少したのにとどまらず、日本への旅行需要が他地域に吸収されることもなく、旅行会社の業績が急激に悪化している。ハナツアーとモドゥツアーは79月期に営業損益が赤字を記録した。証券業界からは「日本問題が続き、旅行会社の業績改善はどんどん難しくなってきている」とのリポートが相次いでいる。国内の大手旅行会社は長期休暇制度である「安息年」や希望退職を受け付けるなど非常経営態勢に突入した。ある旅行会社関係者は「通貨危機、2008年の世界的な金融危機に続き、3番目の危機が訪れた」と語った」

     

    本欄では、反日不買運動が韓国国内に災難をもたらすだろうと繰り返し警告してきた。「日本憎し」で始めたことが必ず、ブーメラン効果で国内にはね返るはずであると指摘してきた。今それが、明確になって表れているに過ぎない。

     

    下線部分のように、大手旅行会社では希望退職を受け付ける事態にまで発展して来た。普通は、日本がダメなら他地域へ旅行先を変えるはずだ。韓国では、そういう「代替旅行先」がないため、旅行業界は袋小路に入っている。

     

    ここで一策を考えるとすれば、日本から「安心して旅行に来て下さい」というキャラバンを送る方法もあろう。多分、韓国国内の反日ムードと同様に、日本国内でも「嫌韓ムードが高い」と懸念しているのであろう。日本は、「オモテナシ」精神で、国を差別することなく外国人観光客を歓迎していることを知ってもらうことだ。商業ベースでは、「政経分離」の実態をPRすれば、韓国人旅行客の警戒心を解くであろう。日本でも、韓国人旅行客が集中していた地域では、それなりの影響が出ている。互いにやせ我慢せずにPRを始めればよい。

     

    (2)「10月のハナツアーの海外旅行需要は、前年同期比で33.2%減少した。日本への旅行者が激減したことが最大の理由だった。モドゥツアーの場合、一時は日本商品の取り扱いが全体の30%に達したが、先月はわずか3.4%にすぎなかった。旅行会社をもっと不安にさせているのは、日本から離れた需要が他地域に吸収されていないことだ。ハナツアーの中国(香港含む)への先月の旅行客は前年同期比30.6%減少した。米州(2.7%減)、欧州(10.9%減)、南太平洋(15.9%減)なども同様だ。需要が増加したのは東南アジア(1.2%増)だけだった」

     

    日本旅行が減っただけでなく、他地域への旅行も減っている。これは、韓国の個人消費減退を反映したものだ。経済危機の進行と見なければならない。私の見方では、家計債務残高の対GDP比が90%台と異常な高さを見せている。これが、個人消費を圧迫しているはずだ。反日不買と個人消費減退が二重の負担になって表れてきたと言えよう。

     

    (3)「業界関係者は、「日本旅行の代替旅行先はないという業界内での話が証明された。飛行時間が短く、口に合う食べ物、快適な環境があることを理由に日本を選ぶ旅行客は、現在のムードのせいで旅行を断念しても、他地域への旅行には出掛けない」と話した。別の関係者は「景気が活力を失い、旅行業界では昨年から危機感が高まっているが、日本旅行ボイコット運動で最悪の状況を迎えた」と指摘した」

     

    下線の部分は、日本旅行の代替旅行先がないことを証明している。韓国で反日運動をやっている層は、主に文政権支持の「進歩派」の人たちである。保守派は、日本への理解がある層だ。日本も、この保守派が安心して日本旅行できる雰囲気づくりを手伝う必要があろう。

     

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    中国は、南シナ海領有を主張して強硬策を取っている。だが、国際司法の場では見事に「敗訴」した。この判決を無視して居座り、着々と既成事実をつくって「自国領有」にする戦術を進めている。これに反発するASEAN(東南アジア諸国連合)が、立ち上がって抗議姿勢を強めている。

     

    中国は無謀にも、南シナ海のほぼ全域に対して領有権を主張している。一方目下、対立しているベトナムに加え、フィリピン、マレーシア、ブルネイ、台湾も同じ海域に領有権を主張し、中国と対立している。フィリピンの提訴によって2016年、オランダ・ハーグの仲裁裁判所が、中国の主張に法的根拠がないと裁定を下している。中国政府はこれを受け入れず、紛争は未解決のまま。前記諸国が、中国へ対抗姿勢を強める理由だ。米国もこれを応援するなど、国際問題化している。

     

    『日本経済新聞 電子版』(11月4日付)は、「ASEAN、中国の分断工作に反発、南シナ海問題で」と題する記事を掲載した。

     

    東南アジア諸国連合(ASEAN)が南シナ海の領有権問題を巡って、中国への反発を強めている。中国はASEAN各国の分断工作を仕掛けるが、3日まで開かれたASEAN関連首脳会議ではマレーシアなどから反発する声が相次いだ。ASEANや日米中の各国が参加する東アジア首脳会議の議長声明では、南シナ海問題に関して例年よりも強い懸念を示す表現を盛り込む案が浮上している。

     

    (1)「マレーシアのサイフディン外相は2日にバンコクで開かれたASEAN関連会合で、(中国政府に所属する中国公船を管理する)中国海警局の存在を非常に懸念している」と強調した。中国は今夏以降、領有権問題で「反中国」の立場を鮮明にするベトナムと他のASEAN参加国を分断する戦略を進めてきた。習近平(シー・ジンピン)国家主席は8月に訪中したフィリピンのドゥテルテ大統領と会談し、南シナ海での石油・天然ガスの共同開発の推進を提案。経済協力をテコに同国を取り込む姿勢をみせていた」

     

    中国は、対立しているベトナムを孤立させるべく、フィリピンのドゥテルテ大統領を取り込む動きを見せた。ASEANの分断工作に出たのだ。これが、ASEAN側を強く刺激した。フィリピンは、もともと南シナ海領有で中国を仲裁裁判所へ提訴した国だ。そのフィリピンを抱き込む工作は大胆すぎた。フィリピンを舐めていたのだ。

     

    フィリピンのドゥテルテ大統領は、先に筋肉の収縮する難病にかかっていることを公表した。フィリピンの歴史を汚す行動を取れるはずがない。中国の誘いを振り切って、大義に生きることを鮮明にした。

     

    (2)「ドゥテルテ氏は2日夜のASEAN首脳会議で「南シナ海の航行の自由がASEANにとっての優先事項だ」と明言した。3日の中国・ASEAN首脳会議でも李克強(リー・クォーチャン)首相を前に「南シナ海での軍事的な活動を控えるべきだ」と発言し、中国への反発をあらわにした。2日時点の東アジア首脳会議の議長声明案では、南シナ海問題について「継続的な軍事化に重大な懸念を表明する」との記述が盛り込まれている。南シナ海問題で強い表現を求めるベトナムに、ASEANの複数の国が同調したためとみられ、10月時点の「幾つかの懸念に留意する」から表現が強まった」

     

    ドゥテルテ氏はこれまで、中国に対して融和姿勢で臨み、中国から経済援助を引きだす戦術をとってきた。結果は、すべて中国の「空手形」に終わっている。中国が、経済支援すると言っても形ばかり。フィリピン国内には、中国批判が渦巻いていた。こういう国内事情に従えば、フィリピンは、他のASEANと同じ強硬姿勢を取るほかなかったと見られる。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(11月4日付)は、「南シナ海で中越対立、『そっちこそ出ていけ』」と題する記事を掲載した。

     

    ベトナムは今年数カ月にわたり、同国沖の南シナ海で中国の石油・ガス調査船の動きを監視してきた。これを受け、中国側に対し、ベトナムの排他的経済水域から出ていくよう要求した。

     

    (3)「ベトナム政府当局者によると、中国からの回答はこうだ。「ベトナムこそ掘削をやめるべきだ」。この海域では5月に掘削リグ「Hakuryu-5」がロシアの国営石油企業 ロスネフチ との契約に基づいて操業を開始していた。ロスネフチはベトナムから認可を受けた海洋鉱区を運営している。(中越の)海上でのにらみ合いは3カ月以上続いた。その間、中国、ベトナム双方の法執行船は互いを尾行し合ったり、複数の中国沿岸警備隊の船舶がベトナムの船舶めがけて放水砲を噴射したりした。10月下旬、前出の掘削リグが任務を終え、同海域を離れると、中国の調査船も去った」

     

    中国沿岸警備隊の船舶は、ベトナムの排他的経済水域に入り込み、ベトナム側からの委託掘削リグを行なう企業船舶に妨害工作を行なう不法行為を働いてきた。仲裁裁判所から敗訴の裁定を受けた中国が、こういう違法行為を堂々と行なってきたのだ。許しがたい振る舞いである。ASEANが危機感を以て中国へ対抗姿勢を取ったのは当然である。

     

    (4)「ASEAN各国が中国への反発を強めるのは、中国が南シナ海での活動をますます活発化しているためだ。中国の海洋調査船は7月上旬から3カ月以上にわたり断続的にベトナムの排他的経済水域(EEZ)で調査活動を実施した。マレーシアの近海でも中国政府に所属する中国公船が頻繁に現れるようになり国内の懸念が強まっている。サイフディン氏は「南シナ海問題はASEANが一つのグループとして議論すべきだ」と主張し、中国の切り崩し工作をけん制する」

     

    中国は、現在の国力を過信している。こうして、周辺国を「反中国」側に向かわせ、中国に味方する国を減らしている。日本が、旧満州へ出兵し傀儡政権をつくって受けた中国の「痛み」を忘れた行動である。歴史を反芻すべきなのだ。

     

    (5)「貿易戦争で中国との対立を深める米国も南シナ海での中国の活動に懸念を抱いており、ASEAN各国への外交的な働きかけを強めた可能性がある。ペンス米副大統領は1024日の演説で南シナ海問題を巡り「この1年間で中国の行動は隣国に対しさらに挑発的になってきた」と危機感を示していた」

     

    米国が、中国に対して一段と警戒する原因を、中国自らがつくっている。愚かなことだ。将来、アジア版「NATO」(北大西洋条約機構)ができて、中国包囲網が完成する。中国は自ら、そこへ飛び込んでいく哀れな姿に見える。

     

     

     

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