勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    中国経済の核は、意外にも国有企業でない。民営企業である。例えば、民営企業は税収の5割、GDPの6割、都市雇用の8割と、経済活動の過半を占める。だが、習近平氏は国有企業を中国経済の核と定めている。この認識ギャップが、中国の経済発展にブレーキになっている。

     

    国有企業優遇論者の習氏の回りには、市場経済を軽視する人物が集まっている。その結果、民営企業を育成する気構えがなく、食い物にする傾向が強い。民営企業家の多くが、これに悲鳴を上げている。ついに、中国の将来に見切りを付け、移住する民営企業家が現れた。

     

    『大紀元』(2月26日付)は、「『中国は深い淵に向かう船のよう』ある民営企業家の文章が反響」と題する記事を掲載した。

     

    上海市出身の54歳の実業家・陳天庸氏は、「中国は深い淵に向かう船のようだ」「根本的な変化がなければ、この船は転覆し、船にいる人が死んでしまうという運命は避けられないだろう」。米紙『ニューヨーク・タイムズ』にこう話した。

     

    (1)「陳氏は今年1月、南欧のマルタに移民した。同国行きの飛行機で陳氏は、『なぜ中国を離れるのか、ある民営企業家の飛行機からのお別れの言葉』と題する文章をSNSに投稿した。中国から離れた理由について、重すぎる税負担、俎上の魚のように民営企業からお金を吸い上げる当局の理不尽さ、製造業の海外移転など20項目を上げた。文章は瞬く間に拡散されたが、その後当局によって削除された。」

     

    中国の民営企業家が、南欧のマルタへ移住した。その理由が、SNSに投稿されて関心を集めている。重すぎる税負担や、当局からの理不尽な現金要求の実態を明らかにしている。当局によって投稿はすぐに削除された。だが、『ニューヨーク・タイムズ』中国語電子版は、当の民営企業家の陳氏にインタビューした。投稿の全貌が判明したのだ。

     

    (2)「『ニューヨーク・タイムズ』中国語電子版24日の報道は、陳氏が多くの企業家の本音を代弁したと指摘した。『中国の実業家は、中国の未来に対する自信まで喪失した』と報じた。陳天庸氏は、中国当局が民営企業から多くの資金を搾取しようとしていると述べた。税負担と社会保障の負担額は企業にとって重い負担となっている。社会保障の負担分は社員の給料の40%近くに達している。腐敗幹部も企業をATMのように金銭を要求している。陳天庸氏は投稿のなかで、国内の企業家に対して『(中国から)離れるなら、早く行動してください』と呼び掛けた」

     

    中国当局は、民営企業へ多額の税金を課している。国有企業にも、同じように課税しているのかは分らない。民営企業を政府の「ポケット」代わりにしていることは間違いなさそうだ。

        社会保障の負担分は社員の給料の40%近くに達している。

    ②腐敗幹部は企業をATMのように使い金銭を要求してくる。

     

    中国経済は今後、バブル崩壊で成長率の急減速に見舞われる。こうなると、民営企業は一段の「搾取対象」になりかねない。社会保障費の増大や軍拡を考えれば、民営企業は太るどころか、やせ衰えるであろう。

     

    (3)「中国市場研究機関、胡潤研究院が1月中旬、国内富豪465人を対象に行った中国景況感調査を発表した。これによると、『中国経済に強い自信がある』と示した人は、回答者の3分の1を占めた。しかし2年前、同様の回答をした人の数は全体の3分の2であった。また、1月に発表された調査では『中国経済に全く自信がない』と答えた人は全体の14%で、2018年の2倍以上となった。半分以上の回答者は、海外への移民を検討中、またはすでに手続きを始めたと示した

     

    国内富豪465人を対象にした調査では、半分以上の回答者が海外への移民を検討中、またはすでに手続きを始めたと回答した。母国への愛着心を捨てざるを得ないほど、中国は居心地が良くなくなっている。ビジネス環境の悪化という意味だ。この中国が、さらなる発展ができるのか。首を傾げざるを得ない。


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    韓国人は、絶対に他人へ謝らないという。自分があくまでも正しいと主張する。これでは、話し合いが成立しない。日韓問題の軋轢は、すべてこの韓国式「詭弁」から始っている。

     

    韓国メディアに、「論点すり替え」で日本を批判する典型的記事が登場した。

     

    『中央日報』(2月26日付)は、「文喜相議長の発言めぐる態度、村上春樹の忠告」と題する記事を掲載した。筆者は、同紙のソ・スンウク東京総局長である。

     

    (1)「25日午前、衆議院予算委員会で自民党議員と外相の間で、次のような質疑が交わされた。

    平沢勝栄自民党議員=(天皇陛下は)会ったこともないのに文喜相(ムン・ヒサン)国会議長が、勝手に頼まれたと言った可能性がある。天皇陛下は100%、こういう話をするはずがない。宮内庁も『面談をしたことはない』と確認したが、放っておけば事実のように広まってしまう。
    河野太郎外相=(天皇陛下が)文喜相議長と面会した記録はない。(文)議長の一連の発言は非常に不適切だと考えている」

     

    韓国の文議長は、天皇陛下に10年前に面会の際、「韓国を訪問し元慰安婦女性に合わせてくれるように依頼された」と発言した。この言葉の真偽が、日本の国会で問題になり前記のような質疑になった。私は、2月18日のブログで「ウソ発言である」と断定している。状況証拠から見て、「陛下が韓国政治家にそのようなことを依頼するはずがない。この問題は、国事行為で政府の承認が必要」という内容だ。宮内庁記録でも文議長が、陛下に面会した記録はないという。完全なでっち上げ発言で悪質である。

     

    (2)「俎上に載せられたのは、韓国の文喜相国会議長が最近米国で話したという聯合ニュースのインタビューだ。『戦争の主犯の息子である日王(天皇)が慰安婦のおばあさんたちに謝罪しなければいけない』と発言したブルームバーグのインタビューで波紋を呼んだ文議長が、聯合ニュースのインタビューでまた天皇に言及した。『10年前に日王から韓国に行きたいので仲立ちしてほしいと頼まれた時、とにかく(元慰安婦の)おばあさんたちが集まっているところに行って“申し訳ない”と一言さえ言えばよいと伝えた』という内容だ」


    慰安婦問題は、安倍・朴の首脳において解決済みである。今になって、被害者の了解を得ていないから無効という理屈は通用しない。韓国の元慰安婦の半分以上の人達が、日本の提供した資金を受領している。これは、了承したという意味である。未受領者は少数だ。それにもかわらず文政権は、日韓慰安婦合意を骨抜きにした。二国間の協定が、相手国の了解を得ず一方的に破棄同然の扱いになっている。日本が怒るのは当然である。国家間の協定を守らない韓国に、いかなる抗弁も許されない。

     

    (3)「警察幹部出身の自民党8選議員の平沢氏は、『文議長が10年前に天皇陛下に会ったかどうかが核心』とし『早期に措置を取るべき』と政府を促した。もちろん政治家の発言の真偽は重要だ。ない話を作り出したとすれば発言全体の信ぴょう性が疑われかねない。したがって文議長も適当な機会に事実をありのままに説明するのが正しい」

    文議長は、陛下のねつ造発言し、日本へ謝罪を求めるという二重の違反行為をしている。

    ①陛下のねつ造発言

    ②日韓慰安婦協定が正式破棄されていない以上、韓国は「慰安婦問題について一切の発言をしないという日韓合意に違反している。

     

    ここから韓国の得意の「論点すり替え」がはじまる。

     

    (4)「しかしこれよりもっと大きな問題は歴史問題に対する日本の政治家の態度だ。文議長や韓国人が望むことは、慰安婦のおばあさんに対して本当に申し訳ないという気持ち、その気持ちにふさわしい態度と行動だ。「天皇陛下が文議長に会ったのか」より、慰安婦・徴用問題で深まった両国間の感情の溝をどのように埋めることができるかに集中しなければいけない時だ。しかし日本の政治家は「どうか月を見てほしい」という要請には応じず、月に向けた指先にばかり毎日怒っている」

    韓国は、文議長の「ウソ発言」がばれて不利になると、次のように論点をすり替える「得意技」を見せる。「謝罪せよ」という情緒論で、自らのウソを棚上げするのだ。

     

    日本は、すでに総理大臣名で謝罪している。日韓慰安婦合意で10億円を提供した。韓国はそれを受入れたのだ。今になって、「もっと謝罪せよ」と言い出すのは契約違反である。解決した問題をぶり返す。あり得ない話なのだ。今起っている問題はすべて、韓国国内で解決すべきことがらである。それを怠り、日本へ持ち込むべきでない。韓国は、もっと大人になるべきだ。子どものような振る舞いを止めるべきである。


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    文政権は、ダブルスタンダードである。これまでの保守党政権を「積弊」と名付けて一掃を図っている。刑務所送りや自殺者を出すなど北朝鮮の「粛清」を真似た振る舞いを続けている。一方で、自ら唱道した「所得主導政策」の大失敗が明確になると、「財政主導政策」に衣替えして財政バラマキ政策に転換し始めた。正確に言えば、「移転所得主導政策」である。文氏は、この政策を「国家包容政策」と呼んでいるが大間違いである。

     

    「移転所得」とは、生産活動の伴わない所得である。補助金がその代表例であう。財政から支出されるもので、最低賃金の大幅引上げによる失業者救済の5兆3000億円はこの類いである。もしも、最低賃金の引上げ幅を数%程度に収めておけば、韓国経済は順調に回っていたはずだ。実際は、その2~3倍もの引上である。成長軌道から外れるのは当然である。

     

    文政権には、経済原理が通じない独断的な面が多い。ユートピアを夢見ているに過ぎない。文氏が、大統領任期の終わる2022年の経済は2%を割込み、財政面でも追い込まれるに違いない。右に巻くべきネジを左に巻いているので、機械(韓国経済)はガタガタになっている。

     

    革新派は野党時代、保守党政権の大型インフラ工事を「土建国家」と非難してきた。ところが、文政権はさらに大掛かりな「土建国家」を目指している。政策に定見がなく、韓国経済の自律的な発展を拒み、財政依存型の国家へ急傾斜しているからだ。前記の「移転所得主導政策」に加えて、赤字をつくるだけの大型インフラ工事に着手する。韓国経済は、もはや引き返しのきかない段階へ踏み出してしまった。

     

    こうして韓国の衰退現象は、文政権によって加速されるに違いない。文氏には、経済政策の欠陥を改める意思がない。日本としては、見物しているほかない。

     

    『朝鮮日報』(2月26日付)は、「韓国政府の土建ポピュリズムと地域利己主義」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「韓国のリベラル系野党・平和党の国会議員らが25日に会見を開き、『政府が事前調査を免除した総額24兆ウォン(約2兆3000億円)規模の公共事業のうち、全羅北道のものはわずか1兆ウォン(約1000億円)しかない』とした上で、『全羅北道を愚弄(ぐろう)している』などと主張した。議員らはセマングム空港などに今すぐ税金を投入することも要求した。事業の妥当性を調べる事前調査を免除するのは、次の国会議員選挙で政府与党が票を確保するための税のバラマキに他ならないが、これをきっかけに全国各地で税金を確保するための競争が起こっているのだ。これでは税金ではなく、先に手に入れた者が得する持ち主のない金のようなものだ。このような現状は、政府が23件の妥当性調査免除事業を発表した時から予想されていた。とりわけ大統領の側近が知事を務める慶尚南道は別の地域に比べて2~3倍以上多い4兆7000億ウォン(約4700億円)の事業が承認され、他地域から不満の声が上がっている」。

     

    政治家が、選挙区で大型インフラ投資を実現させることは、政治手腕を発揮すると誤解されている。現在の中国を見れば分るように一度、この麻薬を口にすると引き返しが難しくなる。財政資金であるから、誰も懐が痛む訳でない。こうしてルーズなインフラ投資依存政策は、韓国経済の背骨を溶かす危険性が高い。

     

    (2)「現金バラマキの福祉競争も加熱している。中高生の制服代として1人30万ウォン(約3万円)支給は今や全国に広まり、釜山や金浦などでは中高生の修学旅行代まで支援している。ソウル市中区は基礎年金とは別『オルシン(高齢者の敬称)功労手当』として月10万ウォン(約1万円)を支給して周囲の区を刺激し、京畿道城南市はマンション外壁の塗装費用まで税金で支援する条例を審議中だ。南欧や南米の破綻国家はどれも同じようなプロセスを経て衰退していったが、韓国社会では誰もその危険性を指摘しようとさえしない」

     

    韓国は、「土建バラマキ」のほかに「福祉バラマキ」を始めた。国会選挙を控えてバラマキ競争は本格化する。文氏は、「国家包容政策」なる福祉政策に乗りだそうとしている。福祉政策の前提には、高い生産性維持が必要だ。文政権は、こちらには関心を持たない大衆迎合主義に陥っている。


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    自衛隊が、今年10月に予定している観艦式で、中国はすでに招待されている。一方、レーダー照射問題で対立する韓国への招待状がまだ送られていないと、中韓で話題になっている。

     

    日本は、昨年10月の韓国主宰の国際観艦式で参加の条件に、「旭日旗」の不掲揚を求められるという屈辱を味わされた。旭日旗は、自衛隊旗であり国際的に承認されている。韓国国防部は、旭日旗が「戦犯旗」として騒ぎ立てる一部メディアに流され、旭日旗の不掲揚という考えられない要求を突付けた。結局、日本は参加を見送った。

     

    その後の日韓をめぐる問題を考えれば、韓国軍艦を招待すべきでなかろう。日本としては、宥和精神で招待論も出るであろうが、これは長い目でみて良い結果を生まない。これまで日本は、「まあまあ主義」「事なかれ主義」で、韓国の要求をほぼ飲んできた。そういう甘さが、韓国を増長させている。今回は、ピシッと線引きして招待を見送ることが、反省を求める機会になろう。

     

    『レコードチャイナ』(2月26日付)は、「自衛隊観艦式に中国を招待、韓国はまだ招待されず、『海自と韓国海軍の関係はすでに崩壊状態』と中国メディア」と題する記事を掲載した。

     

    中国メディア『観察者網』(2月25日付)は、自衛隊が今年10月に予定している観艦式で中国がすでに招待された一方で、レーダー照射問題で対立する韓国はまだ招待されていないと報じた。


    (1)「記事は、『日中両国関係の回復に伴い、中国海軍と海上自衛隊の雪解け、交流回復が進む一方で、レーダー照射問題を理由に海上自衛隊と韓国海軍の関係はすでに崩壊状態にあると言える』と伝えた。そのうえで、日本の複数メディアが25日に、『防衛省が多くの国を招待して今年10月に行う予定の自衛隊観艦式で、韓国が招待国リストに入っていないことが政府関係者の話から明らかになった』と報じたことを紹介。観艦式は海上自衛隊にとって最大規模のイベントで3年に1度開催され、首相が現場で艦隊を観閲するとしたほか、防衛省がすでに米国、オーストラリア、インド、シンガポールに加えて中国にもすでに招待を出していると伝えた。中国の参加が実現すれば、海上自衛隊の観艦式への参加は初めてとなる

    (2)「記事は一方で、現時点で韓国に招待を出していないことについて、韓国に対し強硬的な立場を見せる自民党議員が、『レーダー照射問題を棚上げにして韓国海軍を呼べば、誤ったメッセージと受け取られかねない。韓国が謝らないのなら、招待すべきでない』と発言したことを伝えた。また、岩屋毅防衛相がこの件について『すでに招待しないことを決定したというのは事実とは異なる。各種の状況を総合的に考えて適切に判断する』とコメントしたことを紹介したうえで、『観艦式まで半年以上ある中で、方針転換の余地を残したことは妥当といえる。ただ、レーダー照射問題を契機に、日韓両国の防衛関係悪化がかなり長い時間続くことは間違いなさそうだ』と評している」

     

    韓国としては、参加しにくい雰囲気であろう。レーダー照射問題で、あれだけ日本を非難攻撃した手前、参加を遠慮すべきだ。韓国は、友邦国に対しあたかも仇敵に対するように、罵詈雑言を発した。そういう礼儀を忘れた軍隊とは、冷却期間を置くべきだろう。

     

    韓国が、中国を恐れているのはその苛烈な報復主義にある。日本は、報復することなくすべてを受入れる包容主義できた。この差が、韓国の日中に対する差別的な対応を生んでいる。国家間でも「もたれ合い」は精算することだ。不条理な要求を突付ける場合は、それなりの厳しい対応をすべきである。日韓関係は、過去のもたれ合いを精算して、中国のように「ドライ」な対応に立ち戻る時期である。


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    中国でインフラ投資の資金調達難が起こっている。債券の売れ行きが悪い結果だ。投資家が、債券の安全性に疑念を持ち始めたもの。地方政府の発行する債券が、デフォルト懸念を持たれるという異常な事態に落込んでいる。

     

    習近平国家主席が、先の党幹部勉強会で指摘した「システミック・リスク」(金融機関の連鎖倒産)発生への危機感は、すでにインフラ投資の資金調達難に表れている。予断を許さない状況になってきた。

     

    『ロイター』(2月26日付)は、「中国、投資家の信頼感低下がインフラ投資を圧迫―発改委」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国の国家発展改革委員会(発改委)は26日、投資家の信頼感低下がインフラ投資計画を圧迫しているとの認識を示した。一部の省は計画されたプロジェクトで急速な落ち込みがみられるという。中国では、インフラプロジェクトは通常、地方機関やその他国家系機関が実行する」

     

    中国政府は、投資家の信頼感低下がインフラ投資計画を圧迫していると指摘している。資金調達が困難になっていることを表明したもの。インフラ投資が、財政資金支出でないことに注目すべきだ。債務でインフラ投資をするところに、過剰債務の一端が現れている。一部の省(地方政府)では、景気下支え役のインフラ投資が急速に落込んでいる、と率直に指摘している。

     

    (2)「発改委は報告書の中で、製造業界の投資も今年上半期に一定の下押し圧力にさらされる可能性があると指摘。昨年終盤以降、さえない需要や価格低迷を受けて企業利益が圧迫されていることが背景だ。不動産投資については、一部のプロジェクトが2018年以来建設中のため、第1・四半期は比較的急速な伸びを維持するとしつつ、新規着工は減少する可能性があるとした」

     

    現在の企業設備投資低下は、10年周期で発生する設備投資循環による落込みである。景気循環論で指摘する「中期循環」の発生が起ったものだ。上半期という短期に終息する性格でない。この点の認識が、中国政府には欠けている。

     

    不動産投資は昨年の今頃、大規模な着工をしていた。私は当時、その危険性を指摘しておいた。いよいよ、そのリスクがこれから発生する。不動産開発企業は、資金調達のために住宅在庫を投げ売りせざるを得なくなろう。「住宅暴落」に陥れば、住宅ローン返済困難の続出で信用機構は大きく傷つき、「システミック・リスク」が現実化する恐れが強まる。

     

    日銀の黒田総裁が、国会で中国経済について「急減速論」に触れている。

     

    『ロイター』(2月26日付)は、「中国経済は『かなり減速』、年後半に持ち直しへ=黒田日銀総裁」と題する記事を掲載した。

     

    (3)「日銀の黒田東彦総裁は26日午前の衆院財務金融委員会で、中国経済について昨年後半以降、『かなり減速している』との認識を示した。もっとも、中国当局の政策対応によって年後半には持ち直すとの見通しを語った。今井雅人委員(立憲)への答弁。総裁は、中国経済が減速している背景について、政府による過剰債務の圧縮と米中貿易摩擦が中国企業に影響を与えているとの見方を示した。もっとも、『中国当局はすでに財政政策、金融政策において拡大策、刺激策をとっている』と述べ、年後半には景気は持ち直し政府が示している6%前半の成長率になるのではないかと語った」

     

    日銀総裁が、中国経済について発言するのは珍しい。「かなり減速している」と認めている。年後半に持ち直すとの見通しを語っているが、「外交辞令」と読むべきだろう。率直な見方を発言したならば、外交摩擦に発展する。現在の中国経済は、設備投資循環と在庫循環が重なっている。「短期回復」はあり得ない。


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