皮肉な言い方をすれば、「親日精算」などと70年以上も昔の亡霊に怯え、未来を見なかった罰が下った。韓国の人口は、来年がピークとの予測が出てきた。ソウル大学人口学研究室の推計結果である。
日本が人口減社会に入ったのは2011年である。韓国は、日本よりも10年遅れての後追いとなる。これまで、日韓は人口面で約20年の時間差があるとされてきた。それが、一足飛びに「10年差」に縮まったのは、韓国の合計特殊出生率の低下によるもの。昨年は、これが0.98と歴史上初めてに「1」割れとなった。日本は「1.4台」を維持し、さらに2025年に「1.8」へ引上げる政策努力が行なわれている。教育費の無料化だ。保育園から高校までの無料化に加え、大学も一定の学業成績者の授業料が無料化される。
日韓の生産年齢人口比率は、約20年の間隔をおいて同じ動きをしてきた。だが、韓国は今後の生産年齢人口比率が急速低下となる。これに合わせて、潜在経済成長率も急低下するはずだ。「親日精算」どころの話でなくなり、日本へ「SOS」を打ってくる局面になろう。韓国大学生の就職活動は、日本企業がメインになる。
『中央日報』(2月28日付)は、「韓国、このままだと2021年から人口減少 予想より7~11年早まる」と題する記事を掲載した。
(1)「韓国の昨年の合計特殊出生率(女性1人が生涯に産むと期待される子どもの平均数)0.98人、出生児32万7000人は十分に衝撃的だ。少子化が一日二日の話ではないためそのまま通り過ぎてしまうかもしれないが、米朝首脳会談に劣らず韓国の未来を決める重要な懸案だとみなすべきだ。出生率0.98人は2つの意味を持つ。一つは現在の韓国社会を構成している各種制度・法・価値観・規範などがそろそろ変わるべき時を迎えたということだ。人類歴史で出生率が1人以下に落ちた時がほとんどなく、あっても中世の黒死病が吹き荒れた時のような生存そのものが不確かだった時期以外はなかった」
記事では、「米朝首脳会談に劣らず韓国の未来を決める重要な懸案だとみなすべきだ」と指摘している。その通りであろう。文政権は、そのような危機感を持ち合わせていない。「親日精算」と70年以上も昔のことに関心を取られているからだ。文氏が大統領になったことは、韓国危機の始りと見ている。過度の民族主義を振り回しており、「愛国主義」で韓国の現実課題を忘れさせているからだ。
歴史上初めて、合計特殊出生率が「0.98」にまで低下したのは、文政権2年目に起った事態である。生活が苦しいから結婚を見送り、出産を諦めている結果だ。朴槿惠政権時よりも経済が悪化していることの証明である。
記事はまた、「現在の韓国社会を構成している各種制度・法・価値観・規範などがそろそろ変わるべき時を迎えた」とも指摘している。その通りだ。労働組合が「労働貴族」と揶揄されていること自体、異常なことである。労働組合は、庶民を代表し特権を振り回す立場にない。現代自動車労組に見るように、①働かない、②高賃金を獲得する、③終身雇用を守る、を労働運動の3原則にしている。他の労組も「右へ倣え」である。こうなると、労組は「社会の敵」という存在になる。庶民の味方を装って特権を獲得することは、労働組合の本旨にもとるのだ。
この記事では、「黒死病」の例が出てくる。黒死病は、1346年~50年にかけてヨーロッパに流行したペストである。これは、封建社会に変革をもたらしたことでよく知られている。韓国でも急激な出生率低下が、社会保障制度の維持に痛撃を与えるはずだ。その場合、現在の労働組合のあり方が大きな争点になろう。組織率10%の労組が、全労働者の代表と言えるのか。自らの利益確保だけに奔走している利権集団という認識が深まれば、労働市場改革へのうねりが高まり、労組の特権を奪う動きが出るだろう。その前に、労組は自ら改革すべきだろう。
(2)「ソウル大学人口学研究室が、最近国内居住者(内国人)を対象に1.0人以下の合計特殊出生率を適用して推計した結果、韓国の人口が2020年にピーク(約4999万人)に達した後、2021年から減少することが分かった。政府の予想よりも早くて7年、遅くて11年前倒しになるということだ。今後の出生率が昨年のように低くても国内居住内国人は2030年まで約4946万人に減るためだ。今後10年間で約40万人の減少にとどまる。だからといってその後何事もないわけではない。2040年に総人口は約4730万になり、10年間で200万人が減る予定だ」
合計特殊出生率が、0.98にまで低下したことは衝撃的事件だ。文政権は、国内経済を改革しなければならないが、そういう関心はゼロである。文氏の在任中、合計特殊出生率はどこまで低下するか。これが、文氏の経済政策を評価する尺度になろう。