勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。


    米中関係は、「冷戦時代」に入ったことは疑いない。米国の安全保障が、中国によって脅かされているという認識を固めたからだ。中国が経済発展半ばで、米国とこのような対立状態になったことは、経済的に大きな損失である。

     

    習近平氏が、「永久国家主席」の座を手中に収めたことが、米中対立の引き金になった。習氏は、生粋の民族主義者であり、側近にそういう人物を引き立てたことも、習氏を「暴走」させる結果になった。「覆水盆に返らず」であるが、習氏は調子に乗りすぎたようだ。いずれ、国内で習氏の政治責任を問う声が大きくなるであろう。なお、先の中国最高指導部による、中央経済工作会議に、国家副主席の王岐山氏が欠席していたという。習派と経済改革派の論争の席に居合わせることを避けたとも見られている。

     

    『ロイター』(12月27日付)は、「米、華為・ZTE製機器の利用禁止命じる大統領令検討」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「複数の関係筋によると、トランプ米大統領は、国内企業に対し、中国の華為技術(ファーウェイ)と中興通訊(ZTE)が製造した通信機器の利用を禁止する大統領令を来年にも発令することを検討している。米国は、両社が中国政府の指示を受けているとみており、米国人に対する諜報活動に両社の製品が利用される可能性があると主張している。大統領令は8カ月以上前から検討されており、早ければ来年1月にも発令される可能性がある」

     

    米国が、国内でのファーウェイとZTEの製品を使用禁止にする大統領令を検討している。来年1月にも発令する準備が進んでいるほど、米中関係は悪化している。発令が現実になると、前記2社の受ける営業的な痛手は相当なものになろう。各国が、使用を控えることが予想されるからだ。

     

    中国が、ここまで米国を警戒させたのは、2008年のリーマンショックで米国を軽い存在に見たことだろう。時期的に、このころの中国経済は日の出の勢いであった。対して米国は、「100年は復活しまい」と噂されたほどの傷を受けていた。その米国が、10年間でここまで復活している。市場経済の持つ回復力がなさしめたものだ。中国は、有頂天になりすぎた。今、その罰が加えられるような情景に映る。

     

    (2)「大統領令は、米国企業が国家安全保障上、重大な脅威となり得る海外通信機器市場から機器を購入することを阻止するよう商務省に指示する内容。通信業界と政権の関係者が明らかにした。華為技術と中興通訊が名指しされる公算は小さいが、関係筋の1人によると、商務省は両社製通信機器の利用拡大を制限する権限を得たと解釈する見通し。大統領令の文面は最終決定していないという。大統領令は、国際緊急経済権限法を発動するもので、大統領が非常事態を宣言し、商取引を規制する。米国では今年8月に、両社と米政府の取引制限を盛り込んだ国防権限法が成立している」

     

    米国ではすでに、前記2社と米国政府との取引を制限する国防権限法が成立している。今回の大統領令は、米国内すべての取引に適用するものだ。中国は、対抗手段として米国のIT製品の使用禁止令を出すだろう。そうなれば、米国は半導体やソフトの輸出禁止で対抗するに違いない。事実上、中国IT産業の「壊滅作戦」になるリスクを抱える。中国は、まともに米国へ対抗すれば、自滅するだけに難しい選択を迫られる。

     

    私のメルマガ17号において、「中国は大国のメンツ維持を優先、米へ妥協し経済危機回避へ必死」でこの問題を詳細に取り上げた。

     

     

     



    日本が来年4月、海上自衛隊艦船の訪中を検討していることについて、中国外交部報道官は26日の定例記者会見で「参加の方向である」とコメントした。観艦式と言えば、今年の韓国における国際観艦式で、旭日旗掲揚を認めないことから、日本は参加を取り止めた。中国も事情は不明だが、日本の不参加後に不参加を表明する一幕があった。この点で、日中海軍は同一歩調である。

     

    『人民網』(12月27日付)は、「日本が海上自衛隊艦船の中国派遣を検討、中国外交部がコメント」と題する記事を掲載した。

     

    中国外交部報道官は26日の定例記者会見で「双方の防衛当局の交流と意思疎通の強化は、溝を適切に管理・コントロールし、安全保障上の相互信頼を増進し、建設的な二国間安全保障関係の構築を後押しするうえでプラスであり、日中関係の持続的改善と長期にわたる健全で安定した発展にプラスのエネルギーを注ぐものだ」と指摘した。

    【記者】報道によると、日本政府は来年4月に青島で開催される中国海軍創設70周年観艦式に参加するため、海上自衛隊艦船を中国に派遣することを検討している。日本政府は来年秋に日本で開催する海上自衛隊観艦式に中国の軍艦を招待する可能性もある。これについてコメントは。

    【華報道官】防衛関係は日中関係の重要部分をなす。今年は日中平和友好条約締結40周年だ。双方の防衛当局の交流と意思疎通の強化は、溝を適切に管理・コントロールし、安全保障上の相互信頼を増進し、建設的な二国間安全保障関係の構築を後押しするうえでプラスであり、日中関係の持続的改善と長期にわたる健全で安定した発展にプラスのエネルギーを注ぐものだ。われわれは双方の防衛当局の意思疎通と交流の強化を歓迎する。双方艦艇の相互訪問の具体的状況については、中国国防部に問い合わせていただきたい。

     

    以上の記者会見から、日中の防衛交流が深まりを見せていることが分る。これは、双方が誤解を防ぐ意味で極めて重要である。韓国のように、旭日旗を掲揚するなと注文を付けるようでは、相互理解は不可能であろう。

     

    メルマガ15号 「貿易戦争で疲弊する中国、改革派が追い詰める習近平」が『マネーボイス』で紹介されました。

    まぐまぐの『マネーボイス』で抜粋が紹介されています。どうぞお読みくださるようお願い申し上げます。

    https://www.mag2.com/p/money/612755
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    日本政府は12月26日、国際捕鯨委員会(IWC)から脱退すると正式発表した。約30年ぶりに商業捕鯨を再開する。戦後の食糧不足時代、鯨肉は貴重なタンパク源であった。鯨肉の缶詰は懐かしい味である。

     

    統計的に言えば、鯨は捕獲して頭数の増えすぎを防がないと、逆に頭数が減るという事実を立証した日本人がいた。生命保険会社でアクチャリー(保険数理士)をされていた方(お名前を失念)が、東洋経済新報社が発行していた英文経済誌『オリエンタル・エコノミスト』に論文を掲載し、国際捕鯨委員会で発表したことがある。この主張は受入れられず、商業捕鯨は禁止されて今日にいたったものだ。日本の商業用捕鯨再開は、資源問題から見れば正統である。

     

    『レコードチャイナ』(12月27日付)は、「日本が商業捕鯨再開へ 中国政府は一貫して日本の主張を理解」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「日本のIWC脱退を伝える記事に対しても、中国版ツイッター・微博(ウェイボー)では、「(日本人は)人を殺しても表情を変えないからな。鯨を殺すのなら、なおさら」「3割の人間性も学びきっていない。7割の獣性は根深く固まっている」などのコメントが、圧倒的に多くの「いいね」を獲得した。日本の捕鯨に理解を示すコメントもあるが、「いいね」は比較的少ない」

     

    感情的に言えば、鯨が賢い生物であることが分っている。だから、捕獲して食べるなという理屈である。これももっともである。それなら、食用に供する牛や豚、馬はどうなんだ、という声が出てくるのだ。日本では、生きとし生ける物の「いのち」を頂いて、人間の生命をつないでいるという「感謝の心」があるという反論も聞く。要は、最後は食文化の問題に帰着するようだ。

    (2)「中国政府は強硬な反捕鯨国とは一線を画し、むしろ日本の主張を支持あるいは理解を示す動きを続けている。中国はIWCにおける日本の調査捕鯨の申し出について、賛成票を投じてきた。日本の伝統的捕鯨の維持についても反対していない。中国はそれ以外にも、日本の主張を支持する、あるいは日本にとって不利にならないよう投票を棄権するなどの行動を続けている。水産庁が11月に発表したリポートの『捕鯨をめぐる情勢』も、中国を『クジラ類の持続的な利用支持国』に分類している」

    中国は、一貫して日本の立場に近いようである。その理由は、次のパラグラフで説明されている。


    (3)「中国政府が捕鯨に「理解」を示す理由については、不明な点が多い。ただ、資源の利用について「持続可能性を最大限に考慮」とする中国政府の原則論との矛盾はないまた、中国は現状で捕鯨活動をしていないが、将来的に自国が鯨資源の利用を検討する状況になった場合も想定し、「自らの手足を縛るような行動は避ける」との思惑があるためにIWCなどで反捕鯨国に安直に同調することを避けている可能性もある。また、反捕鯨の動きは「環境運動を利用した他国に関する干渉だ」との警戒感を示し、中国は冷静さを保つべきだと主張する文章も発表されている」

     

    中国は、資源利用における持続可能性を最も考慮する立場である。これは、冒頭で取り上げたように、一定の捕獲によって頭数の増えすぎを防がないと資源確保が困難になるという点に共通している。それにしても将来、中国が商業用捕鯨に乗り出して「乱獲」を始めたら、これもまた困った問題になる。悩みは尽きない。

     

    メルマガ15号 「貿易戦争で疲弊する中国、改革派が追い詰める習近平」が『マネーボイス』で紹介されました。

    まぐまぐの『マネーボイス』で抜粋が紹介されています。どうぞお読みくださるようお願い申し上げます。

    https://www.mag2.com/p/money/612755
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    けさ、下記の目次で発行(有料)しました。よろしくお願い申し上げます。

     

    中国の世界覇権阻止へ全力

    米国の外濠埋め立て作戦へ

    ファーウェイ包囲網を構築

    本格化する経済危機の到来

    経常赤字で為替・株価大揺れ

     

    米中貿易戦争は、来年2月末まで「休戦」状態になっています。この間に、通商交渉を進めていますが、順調に進んでいるようです。12月には、中国通信機メーカーのファーウェイ(華為技術)副会長が、米国の要請によってカナダで逮捕される事件が発生しました。従来の中国であれば、これを理由に米中交渉を中断してもおかしくはありません。だが、中国は「ファーウェイ事件と米中通商交渉は別問題」として、交渉を続けています。

     

    中国は、カナダに対して厳しい態度に出ています。カナダ人二人を違法拘束して「人質」にとっています。カナダへこういう態度を取るならば、米国へも「報復」して当たり前でしょう。それを控えていることが、今回の米中交渉を妥結させたいという中国の強い意志の表れと見られます。

     

    米国は、中国に5項目で合意を迫っています。その内の一つである、米国農産物輸入と米国製自動車関税を引下げは、中国が同意し実行に移しています。問題は、残りの4項目です。知財権保護、ハッカー禁止、技術移転強要禁止などが焦点になっています。技術移転強要禁止は全人代(国会)の常務委員会で成文化の検討を始めました。

     

    このように、中国は断片的ですが対米合意に向けて動いています。来年1月になれば、米中両国の交渉団が、顔を合わせて直接交渉を行なうと伝えられています。米国は、合意書にサインしたあとも、実際に合意事項が履行されているか検証することを要求しています。中国得意の「食い逃げ」は許さない強い姿勢です。米ホワイトハウスのナヴァロ通商政策局長は、「中国が経済政策の変更をしなければ、実効を挙げえないだろう」とも指摘しています。米国は、不退転の決意であることを示しています。

     

    中国の世界覇権阻止へ全力

    米国が、中国に対して強硬姿勢をとっている理由は、安全保障上の問題も絡んでいます。中国の習近平国家主席は、自らの権力基盤を固めて国家主席の任期制(2期10年間)を廃止し、自らの「終身国家主席制」に道を開きました。この余勢を駆って、2050年頃には、米国の世界覇権に挑戦する夢まで語ってしまったのです。これが、米国の強い反発を受けました。独裁国家が、世界覇権を握りたいとう野望は、世界の歴史を逆回転させるに等しいことです。聞き捨てにできない「放言」です。

     

    人間は、長い歴史において第二次世界大戦や、その後の米ソ対立という冷戦を経験して、ようやく世界的な民主主義政治の確立を見ました。それが突然、新興国の中国が、米国と覇権争いをすると名乗り出たのです。米国とその同盟国が政治的危機感を覚え、独裁国家の中国へ対抗する姿勢で足並みを揃えたのです。この点は、中国にとっては予想外のことであり、ここに先進国vs中国という対抗の構図に変ったのです。こうなると、中国は、もはや手も足も出ません。中国の大誤算というべき事態です。

     

    中国は、「中国製造2025」という産業構造高度化のプロジェクトを立ち上げています。2025年までに、日本やドイツの工業化水準に追いつくというものです。日本でも過去、「所得倍増計画」や「産業構造高度化計画」を立ててきました。これが、何らの問題を起こさなかったのは、自主技術開発や、他国からの正規の技術導入によって実現を目指したからです。

     

    中国は、スパイによる技術窃取や技術移転強要など、犯罪行為を駆使しているのです。国家が経済犯罪を煽動するという、これまで考えられない手を使ってきました。米国は、中国に対して「中国製造2025」を中止せよと言う資格はありません。内政干渉になるからです。

     

    米国は、技術窃取や技術移転強要などの禁止を中国に求める資格はあります。中国へ要求している4項目(5項目から農産物などの輸入を除く)の是正は、「中国製造2025」の外堀を埋めさせる行為なのです。卑近な例で言えば、盗賊集団に盗賊行為を禁じれば、盗賊は生存不可能になると同じことなのです。

     

    米国の外濠埋め立て作戦へ

    米国による外堀埋め立て作戦の例を挙げておきます

     

    .中国人の米国入国へのビザ発給の厳格化です。

    米国留学生の中で、最大の比率は中国人です。米国の大学は、中国人留学生の授業料で経済的に潤ってきました。これが、産業スパイの温床になっていました。大学院生が米国の大学の研究室から研究成果を盗み出す役割をしていたのです。また、米国大学院で博士号取得後に米企業に就職し、企業の極秘情報を盗み出す例が跡を絶ちません。(続く)



    中国政府による韓国への報復で、姿を消していた中国人「観光客」が復活してきた。1日平均で1万3400人が韓国へ入国している。ところが、この7割強は観光目的でなく、「便利屋」だという。最近の言葉で言えば、「物品購入代行屋」である。韓国で仕入れて中国で売りさばくビジネスである。

     

    『レコードチャイナ』(12月27日付)は、「毎日1万人超の中国人が韓国へ、そのほとんどが純粋な観光客ではない―中国メディア」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「韓国観光公社が12月24日、今年11月までに韓国を訪問した中国人観光客数が延べ437万3000人に上ったと発表したことを紹介。『1日当たり1万3400人もの中国人観光客が韓国を訪れている計算になる』とした。

     

    韓国にとっては、中国人観光客が上得意である。一度に沢山の品物を買ってくれるからだ。その点、日本人は財布の紐がきついという。韓国の買い物では、店先で日本語飛び交っており、外国というイメージはない。

     

    (2)「一方で、『毎日1万人超の中国人が韓国旅行に来ているという話が本当であることは、ソウルの明洞のショッピングエリアや免税店に足を運んでみてようやく理解できた』とし、『韓国を大挙訪れている中国人というのは、純粋な観光客ではなく、ほとんどが韓国コスメなどがお目当ての『代購』(外国で販売されている商品を購入して中国のSNSなどで転売する業者や個人のこと)なのだ』と紹介。『話によると、代購で月に数万元から十数万元も稼ぐ人がいるそうで、道理で彼らはそれに必死になるわけだ」などと伝えた』

    「代購」では、商品買い付けが目的であるから当該店の売上は増えるが、宿泊客ではない。日帰りである。まさか、航空機では定期券があるはずがないから、儲かる点では航空会社(安売り)もホクホク組であろう。

     

    韓国では、本当に宿泊してくれる観光客を誘致しなければならない。その対策はあるのだろうか。地方へ行くと、受入れ態勢が整っていないと指摘されている。文大統領は、北朝鮮ばかりに関心を持たず、観光面への気配りも必要である。韓国紙は、日本の外国人観光客急増の裏に、安倍首相が陣頭に立って指揮していると褒めている。韓国メディアは、滅多に安倍首相を褒めないが、実績が上がれば無視できないということらしい。

     

    メルマガ15号 「貿易戦争で疲弊する中国、改革派が追い詰める習近平」が『マネーボイス』で紹介されました。

    まぐまぐの『マネーボイス』で抜粋が紹介されています。どうぞお読みくださるようお願い申し上げます。

    https://www.mag2.com/p/money/612755
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