勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。


    米ホワイトハウスで、対中強硬論で知られる米通商部(USTR)代表のライトハイザー氏が、きょう(12月1日)行なわれる米中首脳会談で「合意の可能性」を示唆する発言をした。

     

    『ロイター』(11月30日付)は、「米中会談で重要な案件討議へ、合意は両首脳次第ーUSTR代表」と題する記事を掲載した。『大紀元』が転載した。

     

    (1)「ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表は30日、翌日に予定されている米中首脳会談について、『極めて重要な案件』を巡り良好な協議が実施されると予想しているとしながらも、何らかの合意が得られるかは両首脳に『完全に依存している』と述べた」

     

    米中の実務交渉の米側代表のライトハイザー氏は、強硬派と知られているが、米側の要求を中国が認めたような発言である。

     

    (2)「トランプ米大統領と中国の習近平国家主席は12月1日の夕食会の席で会談を行う。ライトハイザー代表はこれについて、会談後は双方に『前向きな』雰囲気が生まれるだろうとし、今回の首脳会談が成功に終わらなかった場合は驚きに値すると述べた。ただ、両首脳が通商問題を解決できるかどうかについては明言を避けた」

     

    ライトハイザー氏は、「今回の首脳会談が成功に終わらなかった場合は驚きに値する」と述べたことは、事前交渉で米中が合意したようである。詳細は、会談後の発表を待つしかない。

     

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    今年の新車販売台数は、30年ぶりのマイナスが予想されている。テコ入れ策として一時、自動車取得税10%を半減するとの噂も流れた。当局が否定しており、打つ手はなさそうだ。景気の実勢は、地方都市ほど落込みが激しく、これまで新車ブームを牽引してきたが一変した。不動産バブル景気が終わったことの証明であろう。

     

    『ロイター』(11月26日付)は、「自動車市場、けん引役の中小都市で買い控え顕著」とだいする記事を掲載した。

     

    中国の自動車市場は今年、約30年ぶりに販売台数が前年割れしそうな情勢であることが、業界データで分かっている。米国との貿易摩擦でさらに強まった中国経済減速の兆候の1つと言えるが、特にこれまで自動車をはじめとする耐久財消費をけん引してきた中小都市では、減速の影響が色濃くにじむ。

     

    (1)「中国当局は製造業に長らく依存してきた経済構造を多様化する手段として、中小都市の消費活性化に期待をかけてきた。ところが既に、映画チケット販売からネットショッピング、スマートフォン購入に至るまで、消費の落ち込みが確認できる。その理由の一部は、中小都市の消費者の懐がひっ迫していることにある。中国汽車工業協会(CAAM)幹部は、『国内では4級6級都市(中小都市)で主に市場の減速が見受けられる。これらの都市は過去数年間、中国の自動車販売を引っ張ってきた』と述べた」

     

    このパラグラフでは、地方都市の消費沈滞の理由について明確にしていない。だが、不動産バブルの崩壊第一波が現れたと見るべきだ。バブル崩壊に伴う不良債権発生が、信用収縮を産み出し、俗に言う「金回りが悪くなった」結果、経済活動全般を押し下げている。米中貿易戦争が、さらに心理的な圧迫感を与えている。

     

    (2)「(取材した)中国河南省の平頂山市では、成長が続いていた時代、同市においてファミリーカーは、地位と成功の象徴となり、販売台数が全国平均よりも高い伸びを記録していたものの、今はまったく状況が異なっている。フォルクスワーゲンと上海汽車の合弁会社の販売店マネジャーは、『本当にひどいことになっている。10月の販売台数は9月から40%減ってしまった。自動車ディーラーになって6年でこんなことは滅多にない』と語り、最大の理由は車を買えるお金のある人がどんどん少なくなっていることだと指摘。生産能力削減を迫られた国有企業の福祉切り詰めが影響しているとの見方を示した」

     

    中国経済の屋台骨は、不動産バブルであった。それが、これから鮮明になってゆくはずだ。この裏には、潤沢なマネーが撒かれていたから、誰もそれに気付かず「なんだか景気が良い」という浮かれた心理になっていたのであろう。平成バブル中、日本の消費者心理がこれであった。今度は、中国がその苦杯をなめる番になった。歴史は繰り返すのだ。

     

    (3)「ロイターが主に平頂山市近辺で取材したが、このマネジャーのような販売店員や自動車ローン会社幹部、地方政府当局者20人は、同市の今年の自動車販売は消費者が財布のひもを締めるとともに急失速したと口をそろえた河南省の自動車市場は、中国でも有数の規模を誇り、今年は乗用車100万台が売れている。それでも10月は18%減と、全国の約12%減よりも大幅な落ち込みになった。平頂山市では、各販売店が値引きを展開しているが、先のマネジャーは『効果は目に見えていない』と話した」

     

    河南省の自動車市場は今年、乗用車100万台が売れるほど、中国有数の規模を誇る地域である。それが、10月に入って前年比18%減。全国平均以上の落込み幅となった。余談だが、河南省は中国古代文明の発祥地である。「中原」の地だ。漢族は、ここを足場に中国全土に勢力を拡大したので、ここが「基地」でもある。それだけ、経済的に豊かな地域である。これまで、新車がよく売れた裏には、こういう経済的な豊かさ支えてきた。それが、光を失い、大騒ぎになっている。

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    韓銀は、11月30日に1年ぶりの利上げ(0.25%)に踏み切った。かねてから、ウォン安に伴う資金流出を抑制すべく検討されていた。ただ、国内景気への影響、とりわけ家計債務の増加の中で、利上げが与えるショックを考慮して先延ばしにしてきた。

     

    最悪事態での利上げである。10月から景気は「不況局面」へ入っている。韓国統計庁の正式発表は来年半ばになろう。だが、現実の景気実態は不況期に入った。不況の中での利上げとは、韓国経済の置かれている状況がいかに苦しいかを証明している。常識的には、不況=利下げである。それと真逆の利上げに踏み切った裏には、ウォン急落による経済危機の予防策である。

     

    『中央日報』(11月30日付)は、「韓銀がついに利上げ、1500兆ウォンの家計負債が負担に」と題する記事を掲載した。

     

    韓国銀行(韓銀)金融通貨委員会は30日、ソウル中区(チュング)の韓銀本館で全体会議を開き、政策金利を年1.5%から1.75%へと0.25%引き上げた。昨年11月30日に6年5カ月ぶりに政策金利を引き上げて以来1年ぶりだ。

     

    (1)「景気悪化が懸念される中でも韓銀が利上げに踏み切ったのは、深刻化する金融不均衡を解消するためだ。昨年11月の利上げで超低金利(年1.25%)から抜け出したものの低金利基調が続いたことで不動産市場に資金が流れ、家計の負債は急増した。不動産と貸出に関連する規制で家計負債の急増は抑えたものの、その規模は依然として負担となる水準だ。韓銀によると、今年7-9月期基準の家計負債は1514兆ウォン(約152兆円)だった」

     

    家計債務急増の理由は不動産ミニバブルにあるが、問題はこの後に起る。値上がりした不動産価格は、値下がりするはずである。値上がり期待で購入した物件は、売却できなければ債務返済も滞る。これが、金融システム全般への負担になることだ。この面での警戒が必要であろう。


    (2)「家計の所得より速いペースで増える負債も金融不安を強めている。7-9月期基準で家計の負債が1年前に比べて6.7%増加した半面、統計庁が集計した1世帯あたりの月平均所得増加率は4.6%だった。LG経済研究院のチョ・ヨンム首席研究委員は「金融の不均衡を解消して市中にあふれる流動性を吸収するためには政策金利の引き上げが必要だと判断したようだ」と話した」

     

    家計負債は、1年前(7~9月期)に比べて6.7%増加した。だが、1世帯あたりの月平均所得増加率は4.6%に過ぎない。これでは、家計債務増加率が家計所得増加率を約2%ポイントも上回っている計算である。ここでの利上げである。家計への負担は重くなる。この結果、家計消費切り詰めという悪影響が予想される。

     

    (3)「米国のさらなる利上げの可能性も韓銀の選択に影響を及ぼした。12月18、19日(現地時間)に開かれる米連邦公開市場委員会(FOMC)では政策金利の引き上げが予想される。この場合、米国の政策金利は年2.25-2.5%となる。政策金利の差が1.0%以上に広がれば資金の流出を刺激するという懸念が強かったため、韓銀としては今回の利上げで一息つくことになった。しかし今後の景気見通しから追加の利上げは当分難しいと、市場は予想している」

     

    米国の短期金利は、12月に引き上げられるので2.25~2.50%となる。韓国金利は今回の利上げで1.75%になった。米韓金利差は1%ポイント以内に収まるので、資金流出は抑えられるという期待だ。だが、中国人民元が大きく売られる局面になれば、ウォンも道連れとなる。その点を忘れてはなるまい。

     

     

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    これまでの米中交渉は、遅々として進まなかった。中国は、貿易赤字削減を主体に考えてきた。米国は、不公正貿易慣行の是正が目的である。これによって、中国の野望である覇権を阻止する遠大な計画である。タカ派が主導してきたものだ。トランプ氏は政権内で穏健派とタカ派が議論すると、最終的にタカ派の意見を入れてきた。ここから、トランプ氏の本質は、中国覇権阻止にあると見られる。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(11月30日付)は、「米中の打算と誤算、貿易戦争の瀬戸際」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「両国の緊張は数年に及ぶが、ここまでの事態悪化を招いたのは、米中双方が今年繰り広げた政治的駆け引きと度重なる誤算が原因だった。中国側の最初の誤解は、トランプ氏が貿易問題を執拗に掲げて大統領に登り詰めた政治家ではなく、単なるビジネスマンと考えたことだ。対話のカギを握る相手についても、トランプ氏が本当に耳を傾けていたホワイトハウスの対中強硬派ではなく、財務長官だと誤解していた。また、米国や世界が中国による勝者総取り式の貿易・経済政策への憤りを強めているとの認識もなかった」

     

    中国は、トランプ氏が単なるディールの名士と見誤っていた。対中強硬派と、見ていなかったのだ。だから対米交渉では、王岐山氏の知り合いの米金融界のルートを使い、米ムニューシン財務長官との話し合いに力を入れてきた。実は、これが完全な見誤りであり、「米国や世界が、中国による勝者総取り式の貿易・経済政策への憤りを強めていることの認識がなかった」のだ。つまり、中国ビジネスに対して、自由世界が強い憤りを持っている。中国は、それに気付かなかった。これが、中国の立場を決定的に不利にさせている。

     

    (2)「中国の当局者は、トランプ氏との交渉チャンネルとしてムニューシン氏に顔を向け続けた。しかし、政権内で採用され続けたのはライトハイザー氏の考え方だった。1980年代以来、中国は米政府からの圧力をはね返すのに米企業の経営者たちを頼ってきた。89年の天安門事件を受けた制裁が限定的なものになったのも、中国が世界貿易機関(WTO)加盟への支持を勝ち取ったのも、米企業によるロビー活動が寄与した面がある。習氏の助言役を務める王岐山国家副主席は欧米通を自負している。90年代に国有の中国建設銀行のトップだった時には、ポールソン氏と働いた」

     

    米政権内では、対中交渉の仕切り役が財務長官でなく、USTR代表のライトハイザー氏ら強硬派に移っていた。中国は、それに気付かずに従来路線のロビー活動に止まっていた。的外れのところで運動をしていたのだ。米中交渉の焦点が、貿易赤字問題から中国の覇権阻止問題へ向かっていた。米国は、中国の軍事脅威をいかに効率的に取り除くか。中国が、想像もしていない展開をしていたのである。この点は、私も一貫して指摘し続けてきた点である。

     

    (3)「(米政権の)タカ派はロバート・ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表やジョン・ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障担当)、通商顧問のピーター・ナバロ氏らだ。ライトハイザー氏は、穏健派が提案しているように新たな交渉と引き替えに関税発動を棚上げすれば、歴代の米大統領のように、具体的な成果を出せないまま交渉が永遠に続くという中国の『罠』にはまると繰り返し強調しているという。タカ派と穏健派の対立が先鋭化するような場面では、トランプ氏は通常、強硬派の側についているもようだ。また、最近になってG20での米中通商協議の交渉チームにナバロ氏が加わったことから、ライトハイザー氏の立場はさらに強化されたとみられている。ナバロ氏は、ライトハイザー氏よりも中国に強硬な姿勢で知られる」

     

    米政権のタカ派は、穏健派が主張している「休戦案」(棚上げ)が、中国の罠にはまると反対している。今回の米中交渉では、中国の最も嫌うナバロ氏が参加する。このことを以てしても、米国が、交渉妥結よりも厳しい条件を突き付ける準備をしているように見える。

     

    (4)「さらにホワイトハウスの側近によると、G20の米中協議は、トランプ氏の娘婿で大統領上級顧問のジャレッド・クシュナー氏が再浮上する機会にもなりそうだ。トランプ・習両首脳の夕食会にも同席する見通しだという。クシュナー氏は中国当局のお気に入りだが、最近では、中国に懐疑的な見方を強めている。クシュナー氏は、ハドソン研究所の中国専門家、マイケル・ピルズベリー氏と頻繁に会っているようだ。ピルズベリー氏は執筆本で、中国はひそかに世界トップの強国になることを目指していると主張している」

     

    トランプ氏の娘婿で大統領上級顧問のジャレッド・クシュナー氏が、米中交渉で登場する気配だという。クシュナー氏は、ハドソン研究所の中国専門家、マイケル・ピルズベリー氏と頻繁に会っている。ピルズベリー氏は、対中警戒論である。中国が世界覇権を狙っていると主張する。こう見ると、クシュナー氏が米中交渉ではタカ派になって、攻撃する側に付く公算が強い。トランプ氏は、義理の息子クシュナー氏の意見をどこまで取り入れるのか。

     

    中国が、従来通りの「人縁」を頼って対米交渉に臨んでいた。完全に見当違いであった。焦点は、米中の覇権争いに向かっていた。米国は、中国覇権を絶対阻止する構えである。習氏は、中国覇権を20年も早く言い出した。口は災いの元なのだ。

     

     

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    12月1日の米中首脳会談は、良い意味でも悪い意味でも、「岐路」になるだろう。中国の世界覇権への道が遮断されるかどうか、という視点である。米国が、関税問題で妥協しなければ、中国経済に息を吹き返させる機会を奪う。あるいは、米国や世界の経済に影響が出ることを恐れて妥協すれば、30年後に世界の安全保障は破られるだろう。そういう、劇的な舞台になる。私にはそう見える。

     

    中国は、会談を成功させようと必死である。

     

    『ロイター』(11月30日付)は、「米国は誠意を、G20控え中国が貿易問題打開を期待」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国外務省は30日、20カ国・地域(G20)首脳会議開幕を前に、貿易問題で米国が誠意を示し、中米両国が受け入れられる提案を推進することに期待を示した。1日にはトランプ大統領と中国の習近平国家主席の会談も予定されている。トランプ大統領は29日、アルゼンチンに向けて発つ際、中国との通商交渉妥結に近づいているものの、それを自分が望んでいるかは定かでないと述べた」。

     

    中国は、米国が誠意を示せと迫っている。中国の出したギリギリの妥協案を受入れろと言っているもの。焦点は、米国の要求が中国の技術窃取を止めること。研究開発に補助金支給を止めることなどだ。中国が、これを受入れるのかどうか。誠意は、中国が示す段階である。

     

    (2)「中国外務省の耿爽報道官は記者会見で『現在、両国の経済チームは、両国首脳が11月1日の電話会談で合意したコンセンサスの精神を実行すべく緊密に連絡を取り合っている』と説明。『われわれは、両国が受け入れられる提案の推進に向け、米国が誠意を示し中国に歩み寄ることを期待している』とし、『同時に、双方の努力により、アルゼンチンでもうすぐ行われる両国首脳会談が前向きな結果を達成し、米中関係発展の次の段階への方向性を打ち出すことを期待する』と述べた」

     

    中国は、米国の妥協を期待している。だが、米国は厳しい態度を窺わせている。覇権問題が絡むゆえに、安易に中国案に乗って妥協すれば、悔いを千載に残す羽目になる。まさに、あのとき妥協せずに突っ張っていたら、こんな結果にはならなかった、ということになるのだ。冷たい言い方だが、米国は絶対に妥協せず、「不公正貿易慣行の是正」目的を貫徹することだ。それによって、米国にとってマイナスが起っても耐えることである。

     

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