米国トランプ政権は、中国の人権問題への関心が低いと言われてきた。だが、じりじりと中国政府を攻め立て始めている。トランプ米大統領は12月19日、「チベット相互入国法」に署名し、法案が成立した。同法案は、中国当局が米政府高官やジャーナリストのチベット立ち入りを制限した場合、関与した中国当局者の米への入国禁止を定めたもの。米『ボイス・オブ・アメリカ』(VOA)が20日伝え、『大紀元』が転載した。
『大紀元』(12月21日付)は、「米上院、チベット相互入国法を可決、大統領署名で成立」と題する記事を掲載した。
(1)「法案は今年4月、ジェームス・マガバーン下院議員(民主)とランディー・ハルグレン下院議員(共和)によって提出された。9月25日、米下院で同法案は満場一致で可決した。米上院でも、12月11日に満場一致で可決した。同法案の成立を受け、ポンペオ国務長官は90日間内で、中国当局が米国民のチベット立ち入りを制限しているか、また、制限措置に関わった中国当局者の身元確認について報告書をまとめ、議会に提出しなければならない。国務長官は同法案に基づき、中国当局者の入国査証の発給を拒否する」
チベット問題は、世界の人権弾圧の例としてたびたび引き合いに出されてきた。中国政府にとっては、「敏感な問題」と位置づけられている。ここへ、米国政府は「チベット相互入国法」を以て関与する姿勢を鮮明にしてきた。中国は、対米通商問題を抱えている他に、米国がチベット問題で動きを見せている。また、ファーウェイ副会長の問題もあり、「二正面作戦」どころか、「三正面作戦」を強いられているようなものであろう。
チベット問題の概略は、1911年の辛亥革命後,イギリス,チベット,中国がチベットの帰属問題を協議し、事実上の独立国だとするイギリス,チベット側と中国が対立し,合意にいたらないまま,中華人民共和国(1949年)が樹立された。毛沢東は軍隊を派遣して強引に中国領に編入したことが紛争の始りである。以来、いくたびかの流血事件が発生して多くの犠牲者を出してきた。
この段階で、米国政府が人権問題を旗印にしてきた裏には、中国経済の疲弊を確実に読みとっていることが挙げられる。米国が仮に、中国経済は今後も破竹の発展力を秘めていると判断すれば、今回のような手段には出なかったであろう。事実、歴代の米国政権は「ビジネス協調主義」で、人権問題は口先だけに終わってきた。ところが、トランプ政権は一歩踏み込んできた。米国人のチベット立ち入りを拒否した場合、その責任者の米国ビザを発給しないという。これは、中国にとって痛手になろう。その責任者のランクが引き上げられれば、思わぬ所へ飛び火するのだ。中国としては、戦々恐々の法律である。
米国は、台湾と「台湾旅行法」(2018年2月)によって米台政府の高官が、自由に往来可能な制度を設けた。中国には苦々しい法律のはずだ。今回は、「チベット相互入国法」である。中国の最も嫌がるところへ次々に布石を打っている。米国は、中国の国力が衰退過程に入っていることを正確に認識した結果にちがいない。米国政府の中国経済分析は、正鵠を得ていると思われる。私も、口幅ったいことで恐縮だがそういう認識である。2010年以来、毎日、中国情報を分析して得た結論である。
メルマガ10号 「混迷する韓国経済、青年の5人に1人が失業へ。文在寅大統領がハマった罠とは?」が、『マネーボイス』で紹介
まぐまぐの『マネーボイス』で抜粋が紹介されています。どうぞお読みくださるようお願い申し上げます。
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