消費税引き上げは、これまで景気にとって鬼門となってきた。その鬼門が、来年10月にやってくる。政府は、「リーマンショック並みの大不況が来ない限り行なう」としている。現在の8%が10%に引上げられる。
この消費税10%への引き上げは、一度見送っている。景気への影響が芳しくないというのが理由である。ところが、今度はそれほど景気への影響を心配している感じが伝わってこないのだ。内閣府は7月6日開催の経済財政諮問会議に、18年度・19年度の経済見通しの年央試算を提出した。それによると、今年1月からは下方修正したものの、両年度とも民間予測を大幅に上回る成長率となっており、高成長を前提とした経済の姿を描いている。
18年度の実質成長率は実質1.5%成長、19年度も消費税率の引き上げが10月に実施されるものの、1.5%を維持するというのだ。この根拠についての報道はないが、完全失業率が25年ぶりに2.2%と完全雇用ラインを大幅に下回っている。この状況は、簡単に崩れそうにない。潜在成長率1%程度を大幅に上回る成長率を期待しているからだ。企業は、労働力不足を最も懸念しており現在、大学3年生の就職も「青田刈り」が始まる気配と伝えられているほど。
企業は、恒常的な労働力不足を見込んで設備投資に動いている。紙パルプと食料品がそれぞれ1974年度以降で最高の伸び率という。生産用機械も統計を遡れる2010年以降で最高という。久しぶりに聞く景気のいい話である。企業は、設備投資に踏み切る場合、長期の見通しが立つことが前提である。先行き、好展望という結論なのだ。
問題は、米中の貿易戦争の帰趨いかんであろう。日本の場合、円高になっても業績への影響はほとんどないほど収益構造が強化されている強味がある。貿易戦争によって自動車などの一部業種に影響が出るにしても、全産業が大きな影響を受けるという予想は出ていない。
以上のような前提で眺めると、政府が消費税の2%上げに対して、それほどナーバスでない事情が浮かび上がる。この裏には、あの「慎重居士」の日本銀行が消費税の影響について、「大丈夫」と見ている理由があるのだ。それは、次のようなものである。
日銀は、次回予定される消費税率の引き上げ前後に増える実質的な家計負担が、2兆円程度にとどまると計算。1997年や2014年の増税時と比べて、家計負担分は約4分の1に留まると見ている。それは、軽減税率の導入や教育の無償化で家計の負担が軽減される結果だ。
8%から10%への消費税率の引き上げの2ポイント上げの負担増は5兆60000億円と試算している。一方、軽減税率(1兆円分)や教育無償化(1兆4000億円分)、年金額改定(6000億円分)など計3兆5000億円分の負担軽減措置があるという。この結果、家計負担分は2兆1000億円となる。こういう計算根拠を聞かされると、来年の消費税引き上げでも景気への影響は少ない、という感じがする。まだ、確信を持って言える段階ではないが、願望を含めて「そうあって欲しい」という希望に止めたい。