勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    先のG7首脳会議は、ロシアへさらなる経済制裁を見送った。効果は確実に出始めた。資源高騰で外貨を稼いでいるが、経済制裁で部品や技術の供給が止まっている。これにより、国内の鉱工業生産に大きな影響が出る。4月は、3.0%のマイナス成長に落込んだ。これから、マイナス幅が拡大されるはずだ。

     

    『日本経済新聞』(6月30日付 経済教室欄)は、「ロシア経済の強さと弱さ 制裁に伴う在庫不足、大打撃」と題する記事を掲載した。筆者は、ロシア・ユーラシア政治経済ビジネス研究所代表の隈部兼作氏である。

     

    2月24日に始まったウクライナ侵攻により、ロシア経済を取り巻く環境は激変した。西側諸国は外貨準備の凍結、ロシア主要行の国際銀行間通信協会(SWIFT)排除、エネルギー資源の一部禁輸、半導体などの輸出制限、対ロ新規投資の禁止など、ロシアを国際金融システムや世界経済から孤立させる措置を次々と導入した。ウクライナは欧米諸国から供与される重火器などで反撃しており、紛争は長期化が予想される。

     


    (1)「貿易に関しては、ロシア税関庁は侵攻後に通関統計の公表をやめている。対ロ輸出入の60%以上を占める欧州連合(EU)、米国、日本、中国、インドの統計から、これらの国の対ロ貿易が侵攻前後でどう変化したかを見る。34月の対ロ輸入は米国を除き前年比で増えた。資源価格の高騰が主因だ。ただし、制裁に参加している米国、EU、日本は減少傾向で、いち早くエネルギーを禁輸した米国は4月に前年同期比15%減少した。一方、制裁に参加していない中国は4月に57%、インドは253%増加させており、制裁参加国と非参加国の違いが鮮明だ」

     

    インドと中国は、ロシアからの原油輸入が激増している。対ロ制裁で西側諸国は減少し、好対照である。

     

    (2)「特筆すべきは制裁に参加していないインドで、割安なロシア産ウラル原油の輸入を急増させており、ロシアの原油輸出に占める割合は侵攻前の1%から18%に拡大した。インドは輸入した原油を精製し、その一部を米国、フランス、イタリア、英国などに輸出している。インドや中国が制裁の抜け道になると懸念していた欧米諸国は、ロシア産原油が原料であることを知りながら、インドからの石油製品輸入を増やしている。EUはロシア産石油を輸送する船舶への保険提供を禁止し、制裁を科していないインドなどへの輸出を制限する効果に期待するが、こちらも6カ月間の猶予期間があり即効性はない」

     

    インドは、急増するロシア原油を精製して第三国へ輸出して利益を上げている。この便乗商法は、秋に船舶への海上保険付保が禁止されるので、不可能になる。西側諸国は、インドを陣営へ取り込もうとしており、見て見ぬ振りをしている。

     


    (3)「6月に入りロシアから欧州へ天然ガスを輸送するパイプライン「ノルドストリーム」の輸送量が60%減少した。ロシア側の報道によれば、西側企業の撤退で出荷基地の保守・点検・修理ができなくなった。制裁による西側企業の撤退は、エネルギー禁輸よりも早くロシアのエネルギー産業に影響を与えそうだ」

     

    下線部は、極めて重要だ。ロシアの原油出荷基地では、保守・点検・修理業務の6割を西側企業が担ってきた。西側企業の撤退で、前記業務が大幅に滞っている。これにより、ロシアは原油の生産減に追い込まれる。

     

    (4)「各国の対ロ輸出をみると、3月以降大幅に減少した。制裁を科していない中国やインドも減少している。SWIFT除外の影響による海外送金の停滞、半導体などの先端技術の輸出制限強化、サプライチェーン(供給網)の分断などにより、ロシアのビジネス環境は急速に悪化し、企業の撤退や工場の操業停止が相次いでいる。これらの制裁は即効性が高く、ロシアは原材料、設備、部品、高度な技術などを西側から調達することが困難になった。現時点で電子部品などを海外から輸入する自動車工場はすべて操業を停止している」

     

    ロシアの輸入ビジネスが、禁輸の影響を真っ正面から受けている。ロシアは、モノカルチャー経済ゆえに、禁輸の影響は甚大である。想像を超えるマイナス効果が及ぶはずだ。

     


    (5)「ロシア中央銀行の調査では、ロシアの製造業の約4割が代替サプライヤー(部品会社など)を見つけるのが困難で生産に支障を来している。夏以降の生産に不安を抱く企業も多い。
    ロシアは資源価格の高騰で外貨を稼げても、必要な物資や技術を海外から調達できない状況にある。エネルギー資源の生産・輸出についても、今後は西側企業の撤退により保守・点検・修理などが困難となり、生産量が減少する可能性が高い。中長期的にはエネルギー禁輸や船舶保険の提供禁止の発動により輸出も減少していくと考えられる

     

    ロシアは資源価格高騰で外貨を稼いでいるが、その外貨を使った肝心の輸入ができないのだ。モノカルチャー経済最大の弱点である。中長期的には、海上保険の付保禁止の影響が、これからのし掛ってくる。

     

    (6)「4月以降のロシア経済は景気後退が一段と鮮明になった。1~3月の実質経済成長率は3.%に達したが、4月は3.%のマイナスとなった。鉱工業生産は1.%減、小売売上高は9.%減など、経済指標は軒並み悪化している。1~5月の経常収支は資源価格の高騰による輸出増加と輸入激減から1103億ドルの黒字を計上し、一時暴落したルーブル相場は侵攻前よりも強くなった。だが、外貨があっても必要な物資や技術を海外から調達できない結果ともいえる」

     

    外貨があっても、必要な物資や技術を海外から調達できない結果、下線部のように経済指標は軒並み悪化している。インドや中国では、その代役ができないのだ。

     


    (7)「ロシアの連邦財政をみると、14月は歳入が前年比34%増えた。資源価格の高騰で石油ガス収入が91%増えたことが大きい。他方、非石油ガス収入は制裁による景気後退で5.%の増加にとどまり、侵攻後の34月は単月で前年よりも減少した。一方、歳出は3月以降急増し、4月は前年比40%増えた。ロシア財務省は侵攻後、歳出の内訳を公表せず詳細は不明だが、一部報道から算出すると4月の国防費が前年比約150%増えたことが原因とみられる。4月の連邦財政は赤字となった。22年の国防予算は3.5兆ルーブル(約9兆円)が計上されていたが、4月時点で4割強の1.5兆ルーブルが使われたことになる」

     

    歳入は、石油関連が増えても非石油関連が減少し、トータルでは減っている。歳出は、国防費関連が激増し、財政赤字に陥っている。

     

    (8)「今後も国防費が膨らむのは確実だ。ロシア政府は4月に国民福祉基金の資金の繰り入れと使途に関するルールを変更した。同月だけで基金残高は約2兆ルーブル減っており、戦費流用の可能性を指摘する専門家もいる。今後問題になる失業対策や年金などの社会保障についても、国防費が財政を圧迫する中で手当てせねばならない。原材料や部品の在庫が底をつき始める夏以降に、経済は厳しい状況になるだろう」

     

    国防費激増分を賄うべく、国民福祉基金を流用し始めている。財政も悪化は必至である。輸入の原材料や部品の在庫が、夏以降に底をつく。これから、ロシア経済の危機が表面化するだろう。



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    ウクライナ軍は6月30日、ウクライナ南部オデッサ州沖合の黒海上にあるズメイヌイ(スネーク)島からロシア軍が撤退したと明らかにした。ロシア国防省も同日、撤退を認めた。同島は周辺の制海権や制空権を掌握する上で要衝とされ、ウクライナ軍が奪還に向けた攻撃を続けていた。『日本経済新聞 電子版』(6月30日付)が報じた。

     

    ロシア国防省は、ウクライナからの穀物の輸出に向け、国連などが黒海で安全に貨物船が通れる「回廊」の設置を協議しており、これを阻害しないために撤退したと説明した。これにより、世界の穀物危機が回避される希望が出てきた。

     


    ウクライナからの穀物輸出を巡っては、ロシアのラブロフ外相とトルコのチャブシオール外相が6月8日に会談し、黒海に貨物船が通過できる「回廊」の設置などを協議。さらにウクライナとロシアに加え、トルコと国連も参加する4者協議をイスタンブールで開くことを提案していた。ロシア軍が、スネーク島撤退を明らかしたことで、ウクライナから穀物輸出が可能になりそうだ。

     

    一方、ロシア軍のスネーク島撤退は、ウクライナ軍の猛攻撃に耐え切れなかったという軍事的な側面がある。

     

    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(6月28日付)は、「ウクライナ沖の小島、戦争で大きな役割」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアはスネーク島を制圧して以降、拠点の確立と防衛の強化に繰り返し取り組んできた。一方で、ウクライナは妨害工作を活発化。複数回にわたりロシア軍のヘリや防空システム、重火器を空爆で破壊したと主張している。ロシア側はこれを否定している。衛星データ企業マクサーとプラネット・ラボがウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に提供した衛星画像によると、ロシア軍は4カ月でスネーク島の要塞(ようさい)化に成功。新たにテント構造や塹壕(ざんごう)を構築し、短距離ミサイルシステムを配備した。とりわけ6月初め以降の進展が著しい。

     


    (1)「ウクライナ軍はトルコ製ドローン「バイラクタル」を使って相次ぎスネーク島で空爆に成功したと主張している。58日に公表された動画によると、島の上空を飛行していたロシア軍のヘリがドローン攻撃を受けたみられる様子が映っている。ウクライナの軍情報機関トップ、キリロ・ブダノフ氏は22日、テレビのインタビューで「われわれは攻撃を加えており、スネーク島を全面解放するまで作戦を続ける」と言明した。ウクライナのアンドリー・ザゴロドニュク元国防相は、ロシアがスネーク島にレーダーや防空・電子戦システムを導入することで、実質的に沈没したモスクワの代わりにしようとしていると指摘する。ウクライナは414日、対艦ミサイルでモスクワを撃沈させた。ロシアは原因不明の火災が原因だと説明している」

     

    スネーク島を巡って、ロシア軍とウクライナ軍が激しい攻防戦を繰返してきた。ロシア軍は、沈没した「モスクワ」に代わって、スネーク島へレーダーや防空・電子戦システムを導入していた。絶対的な防衛戦構築の構えであった。それが、6月30日に撤退したのだ。相当の決断の結果である。

     


    (2)「ロシアはウクライナの海上封鎖を狙っている」とザゴロドニュク氏。「ロシアはスネーク島を沈まない巡洋艦として使い、黒海で飛行・航行するものすべてを攻撃する考えだ」軍事専門家によると、ロシアはウクライナの空爆にさらされながらスネーク島で軍事拠点の構築を続けるリスクを勘案した結果、島にとどまり、いずれ地対空ミサイルシステム「S400」などの最新鋭兵器を持ち込むことの利点が、島を断念するコストを上回ると結論づけた可能性がある」

     

    ロシア軍のスネーク島死守の決断が揺らいだのは、ウクライナ軍の猛攻であったに違いない。ウクライナ軍は、米英からミサイルも供与されているので猛攻できる兵器を揃えていたことは事実だ。

     

    (3)「ウクライナにとっては、スネーク島を奪還できれば、ロシア軍による封鎖を突破するための一助となる。ロシアの軍艦がオデッサ南部の沖合を巡回しており、ウクライナ南部の拠点から穀物など重要な食糧が輸出されるのを妨げている。港湾封鎖で経済が壊滅的な打撃を受けているオデッサのゲナディー・トゥルハノフ市長は「スネーク島はシンボルになった」と話す。「ここを支配すれば、戦況を支配できる」。ロシア、ウクライナ双方とも今のところ、目標は達成できていない。ただ、ウクライナはスネーク島への部隊配置を目指しているのではなく、むしろロシアによる軍事拠点の構築を阻止することに注力している可能性があるとの指摘も出ている」

     

    下線のように、スネーク島奪回はウクライナ軍の戦況を有利に展開できるシンボル的な意味を持っている。この象徴的な「小島」をウクライナ軍が手中に奪回したことは、ウクライナ戦争全体へ大きな意味を持っている。ウクライナが、和平への足がかりを掴んだとも言えるのだ。

     


    (4)「前出のザゴロドニュク氏は「戦争が終わるまで総じて空白のままだろう。スネーク島の支配を維持することは極めて困難だ」と話す。「ここに残っても意味がないとロシアが認識するまで、軍装備を何度破壊しなければならないのだろうか」と指摘」

     

    ロシア軍は、ウクライナからの穀物輸出を妨害していると世界の非難を浴びてきた。だが、こうした非難ぐらいで撤退するロシアではない。穀物輸出を口実に撤退したと理解すべきだ。撤退の潮時と判断したのだ。それは、ウクライナ侵攻全体の構図を俯瞰した上での決断と読むべきである。和平への準備を始めたとも読める。

     

    ムシトリナデシコ
       

    メドベージェフ前大統領は、プーチン大統領の影のような存在である。そのメドベージェフ氏が突然、昨秋からウクライナ批判を始め存在感をアピールしているのだ。誰でも感づくのは、プーチン氏の健康不安から、メドベージェフ氏がその後釜を狙っているのでないか、というのである。真相は不明だが、メドベージェフ氏の言動からプーチン氏の健康状態を推し測れるかも知れない。

     

    『ニューズウィーク 日本語版』(6月30日付)は、「『プーチンの犬』メドベージェフ前大統領の転落が止まらない」と題する記事を掲載した。

     

    最近のメドベージェフのソーシャルメディア投稿には、欧米政府高官に対する口汚い批判や、アメリカを攻撃するとか、ウクライナを地図から消し去るといった好戦的な言葉が目立つ。ウクライナ侵攻がロシア国内にもたらす混乱が日常生活に表れ始め、さらにウラジーミル・プーチン大統領の健康悪化がささやかれるなか、メドベージェフは自己防衛策を強化しているようだ。

     


    (1)「メドベージェフは昨年10月、ロシアの日刊紙コメルサントに反ユダヤ主義むき出しの寄稿をした。ロシアがウクライナ国境に兵力を集める少し前のことで、ユダヤ系であるウォロディミル・ゼレンスキー大統領をナチスと非難するなど、支離滅裂な陰謀論と罵詈雑言に満ちた寄稿だった。かつては温厚に見えたメドベージェフの変節は、ロシアがヨーロッパにとって厄介な隣人から、存亡を脅かす存在に変貌したことと一致する」

     

    温厚に見えたメドベージェフ氏が、昨秋から豹変して過激派になった。ウクライナ批判を始めたのだ。そのきっかけが、プーチン氏の健康不安を察知した結果とみられる。

     


    (2)「2月のウクライナ侵攻以来、ロシア政界はナショナリズム色が極めて濃くなり、異論を認めない風潮が強まった。メドベージェフの過激な主張も、強硬派の監視の目を意識して繰り出された可能性が高い。「ロシア政治で起きている非常に興味深い変化の1つだ」と、ロシアのコンサルティング会社R・ポリティクのタチアナ・スタノバヤ代表は語る。「ロシアは変わった。そしてメドベージェフは、自分が新しいロシアの一員であることを示す必要に駆られている」と指摘」

     

    メドベージェフ氏は、ロシアの動きに合せて過激発言を行い一体感を演出しているというのだ。

     

    (3)「リベラル派からはプーチンの犬と揶揄され、ロシアの安全保障当局からは、アメリカに擦り寄ったと疑念の目で見られて、近年のメドベージェフは孤立していた。だから余計に、プーチンの厚意にすがるしかなくなっていた。「メドベージェフはロシアの政治エリートで、最も立場が弱い1人だ」とスタノバヤは語る。メドベージェフは6月のテレグラムへの投稿で、最近極端な愛国主義を唱えるようになった理由を説明した。「あいつらのことが憎いからだ。連中はろくでなしのクズだ」。この「連中」とはウクライナのことらしい。「私の命ある限り、あいつらを消滅させるために何でもする」と言う」

     

    メドベージェフ氏は、リベラル派から揶揄され安保当局からは警戒されるという挟み撃ちに遭っている。どうしても、プーチン氏の庇護を得なければならない立場とされる。これによって、「ポスト・プーチン」の座を固めたいのかも知れない。

     


    (4)「メドベージェフが大統領に就任したのは08年、プーチンが当時の憲法が定める大統領の任期上限に達して、ひとまずその座を降りなければならなくなったときだ。それはロシア国内にも欧米諸国にも、大きな希望を生み出した。なにしろメドベージェフは、プーチンをはじめ過去のロシア(とソ連)の政治指導者たちとは大きく違っていた。大学を卒業したのはベルリンの壁崩壊の数年前で、ソ連の政治に染まっていなかった。ロシアの「弱い民主主義」と「非効率な経済」は問題だと語るなど、言うことは言う。だが、欧米諸国にこうした希望を抱かせることになったメドベージェフの特質が、ロシア政界では、保守派の愚弄と疑念を招く原因となった」

     

    メドベージェフ氏の経歴は、ソ連政治に染まっていないことだ。だから、第三者の立場で過去のソ連を批判できる。ロシア保守派には、それが気に入らないのだろう。

     

    (5)「ロシアの反政府活動家アレクセイ・ナワリヌイは17年、ロシアの政治家による幅広い腐敗を暴露する動画を発表した。プーチンが大統領に復帰すると入れ替わるように首相に就任していたメドベージェフもターゲットの1人だ。すると、その豪勢な暮らしぶりを知った多くの市民が全国で怒りのデモを繰り広げた。10代の若者たちは、黄色いアヒルのおもちゃを手にデモに参加した。メドベージェフの広大な別荘に、ヨットハーバーやスキー場やヘリ発着場だけでなく、アヒル小屋があることにちなんだ抗議だ。支持率が38%に落ち込むと、メドベージェフは20年に首相辞任を発表した」

     

    メドベージェフ氏も、利権漁りをして広大な別荘を手に入れていた。これが暴露され結局、首相辞任へ追い込まれた。プーチン氏と同じ蓄財に励んだが失脚原因になった。

     


    (6)「コロナ禍が始まってから2年、プーチンはいまだに群衆に近づこうとしないし、政府高官とさえ距離を置きたがる。このため欧米のメディアでは、「プーチン健康悪化説」が盛り上がる一方だ。もちろんロシア政界も噂には気付いている。メドベージェフの最近の行動は、長年自分を守ってくれたパトロンも、政治的・肉体的な死と無縁ではないという思いと関係していると、ロシアのコンサルティング会社R・ポリティクのタチアナ・スタノバヤは語る。「メドベージェフは『プーチン後のロシア』における、自分の居場所を確保するために戦っているのだ」と指摘」

     

    メドベージェフ氏にとっては、プーチン氏の健康不安が絶好のチャンスになる。何と言っても大統領と首相の経験者である。秘かに、「闘志」を燃やしても不思議でない、政治環境になったと判断したのであろう。

     

     

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    儒教社会に人権はない

    北朝鮮がナンバーワン

    国連も乗り出す事件へ

    根深い女性蔑視の社会

     

    立つ鳥跡を濁さず、という。韓国前大統領の文在寅氏は退任後、世間から忘れられたいと言っていたが、どうも希望通りになりそうもない雲行きだ。在任中に、韓国公務員が北朝鮮軍により射殺された事件が蒸し返され、責任を追及されているからだ。射殺された遺族は、文氏を訴えると発言しており、事件の行方が注目されるにいたった。

     

    この問題は、文政権が北朝鮮とのいざこざを恐れて「不問」に付した疑惑が持たれている。韓国公務員は、北朝鮮領海を漂流して生存していることを確認されながら、韓国政府が直ぐに救助の要請をせず3時間後に北朝鮮軍により射殺・焼却されたという衝撃的事件である。この事件の顛末が、韓国新政権で明らかになった。政権交代がなければ、隠蔽されたままで葬り去られたであろう。

     


    儒教社会に人権はない

    事件の詳細は後で触れるが、文氏は「人権派弁護士」として名前を売ってきた人物だ。これを足がかりにして大統領まで上り詰めた。文氏は、果たして人権派であったか。そういう疑問の声が最近、米議会からも上がっている。文氏が、北朝鮮外交重視の結果、最も大事な人権問題を棚上げするご都合主義者になったと批判されているのだ。韓国にとっても、極めて由々しい批判である。

     

    この人権問題と関係あるのが、大統領夫人への嫌悪感である。大統領夫人は、「私人」であって批判対象になるべき存在でない。ところが、韓国では大統領夫人を「公人」扱いし、批判対象にしているのだ。「出しゃばり」とか、「目立ちたがり屋」とまで批判される始末だ。極めつけは、尹大統領が愛妻家で食事の支度をしていたことを、進歩派メディアまで批判していることだ。これは、夫人が「良妻賢母」という儒教社会のイメージとかけ離れていることを指摘しているのであろう。

     


    韓国は朝鮮李朝以来、儒教が国教になったことから、無意識のうちに儒教倫理で社会を規制している。儒教の基盤である宗族社会では、個人の認識はなく集団の認識が先行している。「私」という概念は邪悪なものとされており、「私たち」が優先概念である。ここには、個人の「人権重視」という概念は、口先では存在しても、心の奥まで響かない曖昧な概念になっているのだ。この事実に注目すべきであろう。

     

    儒教倫理では、男女平等という認識もない。女性蔑視を意味する、「男女七歳にして席を同じうせず」という言葉通りに男尊女卑社会が形成された。韓国で、大統領夫人への批判が絶えないのは、伝統的に根付いている儒教の男尊女卑の認識が無意識に働いている結果だ。韓国が、真に近代社会へ脱皮するには、こういう儒教倫理の残滓を一掃することであろう。

     


    北朝鮮がナンバーワン

    冒頭から、儒教倫理などと「小難しい」ことを持出したのは、理由あってのことである。それは、前記二つの「人権」と「女性蔑視」の問題を何の脈絡もなく取り上げると、「三文記事」に堕する危険性があるからだ。韓国社会が、いかに儒教に毒されているかを検証するには、まずその検証ツールを明らかにしておかなければならない。こういう私の流儀をご理解いただきたい。

     

    まず、「人権問題」に該当する事件からとり上げたい。

     

    2020年9月22日、北朝鮮軍の銃撃を受け遺体を燃やされて死亡した韓国海洋水産部の公務員、故イ・デジュンさんの事件に関する事件だ。韓国政府は、故イさんが多額の債務を抱えており、勤務中の水産部調査船から姿をくらました、という説明をした。自分の意思で北朝鮮領海へ泳いで行き、北朝鮮軍から「不審者」として射殺された、という説明で事件の幕引きとした。

     


    政権が代わって大逆転が起こった。海洋警察庁の丁奉勳(チョン・ボンフン)庁長が6月22日、「多くの誤解をもたらした」として、国民と遺族に向け謝罪したのだ。

     

    海洋警察は同事件を巡って、男性が行方不明になった8日後に中間捜査結果を発表。軍当局と情報当局が傍受した北朝鮮の通信内容や本人の債務などを根拠に、「男性が自ら北朝鮮に渡ろうとした」との判断を示した。国防部と海洋警察庁が今年6月16日、「自ら北に向かったという証拠はない」とし、文在寅政権当時の立場を覆したことから、海洋警察庁トップが謝罪会見に追い込まれたものだ。

     

    文前大統領は、事件の報告を受けてから3時間後に、公務員は北朝鮮軍による銃撃で死亡した。その3時間に文氏がどのような対応したかが問われている。遺族側の弁護士は、文氏が何ら救命指示を出さなかったならば、職務放棄罪で告発。事態を放置するよう指示したのであれば、職権乱用罪で文氏を告発すると強い姿勢である。(つづく) 

    次の記事もご参考に

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    メルマガ366号 韓国、山積みになった「請求書」 長期低迷期に入る覚悟あるか

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    メルマガ365号 習近平10年の「悪行」、欧米から突付けられた「縁切り状」

     

     

     

     

    テイカカズラ
       

    中国は、中ロ枢軸を形成して欧米へ対抗する姿勢を見せたことから、NATO(北大西洋条約機構)が「体制上の挑戦国」と位置づけ、世界包囲網形成へ着手した。中国にとっては、経済的にも取引範囲を狭められることから、失うものの余りにも大きいことに愕然としているはずだ。

     

    主要7カ国(G7)首脳が、中国に対しロシアへの影響力を活用しロシアによるウクライナ侵攻を阻止するよう要請したことに対して、挑戦的な姿勢を取った。中国外務省の趙立堅報道官は、29日の定例会見で「G7は世界の人口の10%を占めるに過ぎず、世界を代表する権利も、自分たちの価値や基準を世界に適用すべきと考える権利もない」と述べたのだ。こういう傲慢な姿勢が、中国をジリジリと追い込んで行くだろう。

     


    『日本経済新聞 電子版』(6月29日付)は、「NATO『中国は体制上の挑戦』、戦略概念で初言及」と題する記事を掲載した。

     

    北大西洋条約機構(NATO)は29日、今後10年の指針となる新たな「戦略概念」を採択するとともに、首脳宣言を発表した。NATOの戦略概念として初めて中国に言及。中国が「体制上の挑戦」を突きつけていると明記した。

     

    (1)「2010年に採択した戦略概念はロシアとの関係を「戦略的パートナーシップ」と呼ぶ一方、中国には触れていなかった。新しい戦略概念はロシアを「最も重要で直接の脅威」と定義。ウクライナに侵攻し、NATOと対立を深める現状を反映した。中国について、核兵器の開発に加え偽情報を拡散したり、重要インフラ取得やサプライチェーン(供給網)を支配したりしようとしていると分析。宇宙やサイバー、北極海など海洋で、軍事的経済的な影響力を強めていると主張した。中ロが、ルールに基づく秩序を破壊しようとしていることは「我々の価値と利益に反している」と強調した」

     

    中国が、NATOから警戒される存在になった背景に、ロシアのウクライナ侵攻へ精神的な支援を送っていることがある。侵略行為を是認する中国は、自らも侵攻するであろうと疑われたのだ。

     


    中国海軍が北極海にまで出没する事態に、欧州各国も神経を尖らせている。さらに、一帯一路による途上国への債務漬けによって、担保として港を取り上げるなど大胆な振る舞いを始めている。これは、「第二のロシア」として領土拡張に動く前哨戦と見られたのだ。NATOは、中ロ枢軸として一括して警戒対象に加えた。

     

    中国が、受ける経済的打撃は極めて大きい。米中関係が悪化しているだけに、欧州とは良好な関係維持を願ってきた。その最後の望みを絶たれたのだ。中国は、技術的にもEUに大きく依存してきた。EU関係の悪化は打撃である。日本とはすでに溝が深まっている。中国は今後ますます、ロシアとの関係を深めて袋小路に嵌り込むのだろう。

     

    中国は歴史上、一度も覇権を求めたことがないと主張している。現実には、南シナ海の他国所有の島嶼を占領して軍事基地をつくっており、言行不一致の面が多多あるのだ。最近は、空母3隻態勢にして、「侵攻作戦」への準備に余念がない。先進国で、中国の発言に信頼を置く国はあるだろうか。

     


    (2)「ストルテンベルグ事務総長は記者会見で、「中国の威圧的な政策は、我々の利益、安全、価値に挑んでいる」と戦略概念と同様の表現で訴えた。中ロの位置づけを大きく変えたことで、米欧の軍事同盟であるNATOは歴史的な転換点を迎えた。首脳会議には、日本などアジア太平洋の4カ国を招いた。戦略概念はインド太平洋地域の情勢が「欧州・大西洋に直接影響することを考えると、同地域は重要だ」として、対話と協力を深める方針を明記した」

     

    中国が、空母3隻態勢にしたことも警戒感を深めている、戦術的には、潜水艦とミサイルの好餌とされているが、軍事的弱小国には脅威であろう。中国は、余りにも無神経である。国内対策で軍事力を強化して「強い中国」を演出している。それが、対外的には危険な存在に映ってきたのだ。現実は「張り子の虎」だが、NATOは本物の虎と見たのだ。自業自得と言うべきだ。

     

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