勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    米政府は6月12日、ロシアに対する制裁を大幅に拡大すると発表した。ロシアとの取引がある外国金融機関に制裁対象を広げることを正式に決めた。イエレン米財務長官は措置の狙いについて、「外国金融機関への『二次的制裁』のリスクを高め、ロシアの軍需産業が米国製のソフトなどを利用することを制限する」と述べた。

     

    中国外務省は13日、米政府が発表したロシアに対する制裁の拡大に「断固反対」を表明した。林剣副報道局長が記者会見で、「中ロ間の正常な経済・貿易を妨げたり、壊したりすべきではない」と主張した。中国の一部金融機関とロシアの銀行や企業との間では、決済や送金といった取引があるとされる。林氏は、対ロ制裁拡大について「中国をおとしめ、封じ込める道具として使うべきではない」と要求した。「米国による世界規模での一方的な制裁は他国の主権と安全を著しく損ね、サプライチェーン(供給網)の安定を壊している」と強調した。

     

    こうした中国外務省の声明は、これまでロシアへ戦略物資を輸出していないと言い繕ってきたことを否定し、公然と認めたようなものである。米国政府の制裁拡大があっても、これに該当する事実がなければ、わざわざ反対声明を出すまでもないからだ。中国は、とんだところで「馬脚」を表した。

     

    『日本経済新聞 電子版』(6月13日付)は、「米国、対ロシア制裁を強化 外国金融機関に対象拡大」と題する記事を掲載した。

     

    米政府は、ロシアとの取引がある外国金融機関に制裁対象を広げることを正式に決めた。半導体などの供給にかかわるロシア国内外の企業・個人も公表し、圧力を強める。

     

    (1)「イエレン米財務長官は措置の狙いについて「外国金融機関への『二次的制裁』のリスクを高め、ロシアの軍需産業が米国製のソフトなどを利用することを制限する」と述べた。外国金融機関が制裁対象のロシアの金融機関や、軍需産業に関わる個人、軍需物資をロシアに販売・供給する企業と取引した場合などが対象になる。従来は米国内の企業、個人が制裁対象の中心だった

     

    金融機関にとって、ドル決済機構から排除されることは「死」を意味する。決済ができなくなるからだ。米国が、こうした「二次制裁」へ踏み切ったことは伝家の宝刀を抜くものだ。

     

    (2)「米財務省は国務省とも連携し、軍需物資の迂回輸出に関わるロシア国内外の300以上の団体・個人を新たに特定して公表した。ロシア向けに半導体や電子部品、工作機械などを供給している中国企業も複数含まれている。バイデン米大統領は2023年12月に、ロシアの軍需関連の取引に関わった外国の金融機関に制裁を科す権限を財務省に与えていた。制裁を受けた外国金融機関は、米国内の金融網から遮断されたり、米国内の送金用口座の維持を禁じられたりする可能性がある」

     

    米国は、「二次制裁」の準備を重ねてきた。制裁権限は昨年12月に、財務省へ与えられていた。

     

    (3)「国際決済銀行(BIS)によると、ロシア関連の投融資は23年末時点でオーストリアが136億ドル(約2兆1000億円)と突出している。モーニングスターDBRSによると、オーストリアの大手銀行ライファイゼン・バンク・インターナショナルはリスク資産のうちロシア関連が15%を占める。イタリア大手ウニクレディトは5%ある。米国の特定のIT関連サービスやソフトウエアをロシアで利用できなくする措置も取る。対象となった場合、9月12日以降はロシア向けのクラウドサービスの提供やソフトウエアの更新などのサポートが禁じられる」

     

    ロシア関連の投融資は、オーストリアが136億ドルと突出している。かつてのロシア・

    オーストリアの関係が、未だに生きていることを再認識させられる。1873年締結のドイツ・オーストリア・ロシアの三国による対フランス同盟である。現在のオーストリアは、永世中立国となったが、「昔の誼(よしみ)」で繋がっていたのであろう。ただ、オーストリアの貿易相手国として、ロシアは輸出が16位、輸入も13位に止まっている。

     

    (4)「ロシア国内の一般市民が、インターネットにアクセスすることを制限する措置までは踏み込まない。13日からイタリアで始まる主要7カ国首脳会議(G7サミット)では、対ロ制裁の強化が主要テーマの一つになる」

     

    米国は、G7首脳会談が始まる前に、二次制裁を発表して不退転の決意を示した。G7の意思を一本にまとめる伏線であろう。

     

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    中国の習近平国家主席は、台湾は中国の不可分の領土と宣言している。これを邪魔する勢力は一切許さないと強硬姿勢だ。この「威嚇」に恐れをなしたか、元外務省の高官が「中国を刺激するな」と言った婉曲発言をしている。中国とは、経済関係で密接な関係を築くことが究極的は「日本の安全保障」になると力説する。韓国の文政権が採用した対中外交政策の踏襲でもある。中国の「戦狼外交」が、日本で見事に成果を上げた感じだ。 

    『毎日新聞』(6月12日付け)は、「『台湾有事』と軽々に言うなかれ、日本は壊滅的打撃を受ける」と題する記事を掲載した。筆者は、元外務省高官の田中均氏である。小泉政権当時、拉致被害者の一部帰国実現など、日朝外交を影で推進したことで有名である。 

    台湾周辺で有事的事態になれば日本に甚大な被害を与えることは想像に難くないが、「日本有事」と言いきることは日米安全保障条約5条事態で日本が攻撃にさらされ、日米が共同行動をとるという事態を指すわけで、戦争に入ることを意味する。これはどうしても避けなければいけない事態であり、国民の生命財産を守る立場にある政治家が軽々しく口にできる言葉ではない。

     

    (1)「習氏が、いつ台湾統一に踏み切るのかは内外の環境次第だろう。今日、中国経済は大きな曲がり角にあると見られ、不動産不況、若年層の高い失業率、消費需要の落ち込みなどデフレに向かう要素も強く、果たして今後どれだけ5%程度の高い成長目標値を続けられるのだろうか。成長率が大幅に減速する事態となれば習政権の安定にも疑問符が付くのだろう。しかし、経済成長を順調に維持できれば、政権はむしろ米国をはじめ国際社会を敵に回して経済制裁の対象となるような行動には踏み出さないと見るのが自然だ。中国は、ロシアとの本格的な連携が対米戦略上も役に立つと考えているにしても、経済制裁を受けそうな対露軍事支援には向かわないだろう」 

    田中氏は、中国経済が順調な成長過程であれば、台湾侵攻へ踏み切らないとみている。これは、一般論と逆である。経済に自信があれば、台湾侵攻のマイナスを乗り越えられるとの前提に立ち、侵攻へ踏み切るであろう。現在、中国が米国と話合い姿勢をみせているのは、深刻な不況克服策を求めている証拠だ。田中氏の発想の原点とは、全く異なっている。中国「性善説」に立っている。
     

    (2)「バイデン米政権が続く限り、バイデン大統領が何度も明言する通り、中国が台湾の軍事統一に向けて動き出せば軍事介入するだろう。その場合、双方が核戦争の危険を冒して全面的な戦争となるとは考えられない。台湾海峡地域の限定的な軍事衝突だとしても、米軍は沖縄やフィリピンの基地から戦闘作戦行動に出るのだろうし、日本が安保条約交換公文に従った事前協議でノーということは難しい。限定的戦争であったとしても、日本は好むと好まざるとにかかわらず戦争に巻き込まれていくことになる」 

    中国の台湾侵攻は、中ロ話合いの中で決断されるみるべきだ。外交戦略は、平時においては「性善説」に立つ。一方で、万一の事態に備えた「性悪説」に立つことも不可欠だ。日米同盟が機能するには、日本側の「最少犠牲」も計算に入っている。それによって、国土喪失という最悪事態の回避も可能になる。自衛隊は、なんの目的で存在するのか。全ての結論は、ここに帰着するだろう。

     

    (3)「いずれにせよ日本にとって被害甚大なシナリオだ。日本の死傷者の数は膨大となるだろう。中台との貿易が途絶し、さらには台湾周辺の海上輸送路が封鎖され、海上輸送コストが高騰する結果、日本経済が被る損失は壊滅的だ。もちろん、備えがあるに越したことはなく、沖縄離島住民の沖縄本島への避難計画や、海上保安庁の大型輸送船の建造などは危機管理として正当化されるだろう。防衛能力の拡大や米軍との包括的抑止力を強化することも重要だ。しかし、より重要なのは中国を台湾の軍事的統一に走らせないような外交アプローチだ」 

    田中氏は、日本の被害を甚大と見積もっているが、中国はさらに大きな被害を受ける。当然、NATO(北大西洋条約機構)も介入するだろう。中国は、ドル決済機構から排除されて第二の「ロシア化」する。中国へは、こういう一連の「マイナス」を認識させるべきだ。 

    (4)日本は安保面では米国との統合的抑止を強化しつつ、経済面ではむしろ中国に積極的に関与する政策をとるべきではないか。中国にとって日本との関係を損なうことが自国の成長を大きく阻害するという実態を作ることが日本の重要な抑止力となるこのような観点から、日中韓や東南アジア諸国連合(ASEAN)などが参加する地域的な包括的経済連携(RCEP)の活性化や環太平洋パートナーシップ協定(TPP)への中国加入に道を開くべきではないか台湾有事は日本有事と叫び、中国と敵対するような雰囲気を高め、中国を阻害しようとすることは結果的には日本の国益に資するものではない。冷静に考えていくべきだ」 

    中国が、TPPに加盟することなどあり得ない。中国経済は、国有化企業によって動いており、TPP加盟の条件を欠いている。こうした条件を緩和させてまで中国を加盟させたい理由はどこにあるだろうか。中国は、3000年の歴史を持つ国だ。どんな手段を使っても目的(世界覇権達成)を捨てない国である。元外交官の田中氏は、それを十分に知っているはずだ。

     

       

    EU(欧州連合)委員会は6月12日、中国の比亜迪(BYD)や吉利汽車、上海汽車(SAICモーター)などのEV(電気自動車)メーカーに対し、現行関税率10%へ追加関税を加えると正式に通知。これにより、7月から関税率は最高48に達する可能性が出てきた。ただ、EUへのEV輸出の6割は欧米メーカーである。米国テスラは、早くも追加関税率の引き下げを申請すると同時に、値上げを発表した。 

    中国乗用車協会(CPCA)が発表した5月の乗用車輸出台数は、4月に過去最高を記録したが、5月は前月比9%減の37万8000台となった。EUは、7月から大幅な関税率引上げに踏み切るので、どれだけの影響が出るか関心が集まっている。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(6月13日付)は、「中国の輸出マシン、欧米抜きで動き続けられるか」と題する記事を掲載した。 

    中国の輸出は依然として好調だ。それが西側諸国とのあつれきを生み、中国製の電気自動車(EV)に対する関税の新たな波を招いている。それと同時に世界貿易を塗り替える要因にもなっている。中国政府にとっての問題は、発展途上国に軸足を移すことで、輸出マシンを稼働させ続けられるかという点だ。 

    (1)「中国メーカーが、貿易制限の可能性に先手を打とうとしたことが、最近の力強い伸びの一因かもしれない。例えば、中国の対米輸出は5月に前年同月比3.6%増と、ここ数年の傾向に反して増加した。だが全体的に見れば、中国は欧米への輸出を減らし、東南アジアや中南米への輸出を増やしている。今年15月の輸出は、東南アジア向けが前年同期比12%増、米国向けが17%減だった。2023年だけでも中国の対米輸出は14%減少している」 

    中国は、駆け込み輸出をしている気配もある。4月の自動車輸出が過去最高を記録し、5月には一転して減少しているからだ。

     

    (2)「一つには、中国企業が貿易ルートをベトナムやメキシコ経由に迂回(うかい)させていることがあるかもしれない。だが、中国がバリューチェーンの段階を引き上げる一方で、これらの国々も低価格製品の生産体制を整えてきた。中国は新たな市場も見いだしている。対ロシア輸出は過去2年間に70%急増した。西側の経済制裁でロシアが諸外国との貿易の多くを断たれたことが背景にある。また中国は大量のガソリン車をロシアに出荷している。中国国内のEVへの急速な移行を受け、中国は今やこの分野で過剰な生産能力を抱えている」 

    中国は、対ロ輸出を急増させてきたが、米国の金融「二次制裁」発動によって、対ロ輸出も急ブレーキがかかるであろう。輸出はしだいに、「八方ふさがり」状態へ向いつつある。 

    (3)「より重要なのは、中国が以前とは異なる種類の製品を輸出していることだ。モルガン・スタンレーによると、EVや電池、太陽光パネル、非最先端半導体といった新分野は昨年の輸出総額の8.5%を占め、5年前の4.5%から拡大した。この種の輸出は欧州や米国で反発を招いている。欧米もグリーン移行に必要な技術や人工知能(AI)の台頭に対応する技術の構築に力を入れているからだ」 

    中国は、「三種の神器」(EV・電池・太陽光パネル)として、輸出プレッシャーをかけてきた。それが、どうやら限界点に向っている。後が、なくなったのだ。

     

    (4)「一方、比較的低所得の国々では手頃な価格の中国製品が歓迎されるかもしれない。ブラジル自動車販売店連盟(FENABRAVE)によると、同国では2023年にEVとハイブリッド車(HV)の販売台数がほぼ2倍に増えた。このうち純粋なEVの販売台数で中国のEV大手、比亜迪(BYD)は半分以上のシェアを占め、HVの販売台数でも中国メーカーが上位に入った」 

    EV・電池・太陽光パネルは、先進国向け製品である。発展途上国には、簡単に手の出ない製品である。これまでとは状況が異なる。 

    (5)「東南アジアは今や、中国の輸出先として米国やEUよりも大きな割合を占める。東南アジアと中南米を合わせると、今年これまでの中国輸出額の4分の1近くに上る。米国とEUの合計シェア(29%)よりはまだ小さいが、両地域合わせてかなりの規模の市場があり、今後の成長が期待できる。ただ、途上国の多くは中国におおむね友好的だとはいえ、国内の政治的圧力と無縁ではない。場合によっては中国からの輸入品に貿易障壁を設けるかもしれない」 

    途上国は、自国の産業を保護育成しなければならない立場にある。そこへ、中国の割安商品が「ドーン」と輸入されたなら根こそぎやられてしまう危険性が高い。

     

    (6)「中南米諸国の多くは国内産業を保護するため、鉄鋼関税を引き上げている。ブラジルは最近、国内生産の促進を目的にEV輸入関税を再び課すことを決めた。2026年までに18%から35%に段階的に引き上げる。緊張を和らげる動きとして、中国企業は雇用創出につながる現地工場を立ち上げている。BYDの場合、ブラジルにEV工場を建設中だ。中国の途上国への輸出シフトは今のところうまくいっている。だが、保護主義が次第に強まる世界では、その戦術にも限界が訪れるだろう」 

    ブラジルが、EV輸入関税をかけることになった。BYDは、ブラジルでEV工場を建設して輸入摩擦を回避する方向を目指している。中国企業は、世界的な保護主義の動きに直面する。

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    主要7カ国(G7)首脳会議は13日、イタリア南部プーリア州で始まる。G7は、ウクライナに侵攻するロシアの重要物資の調達を支援する中国などの銀行に対し、取引の停止を求める警告措置を検討する。従わない場合は、国際金融ネットワークから排除するなどの制裁を検討する。欧州外交筋などが、毎日新聞へ明らかにした。

     

    ロシアが、西側諸国からの経済制裁などで輸入停止した品目は、中国などからの代替品でまかなっている。民間向け航空産業では部品不足に直面したが、制裁に参加していないアラブ首長国連邦(UAE)などからの交換部品購入でしのいでいるとみられる。こうした「抜け穴」を塞いで、ウクライナ侵攻を止めさせる手段は、第三国への制裁強化しかない。具体的には、これら取引に加担した金融機関を世界のドル決済機構から排除する以外に道はないという結論のようである。

     

    『毎日新聞』(6月12日付)は、「ロシア支える中国の銀行を『除外』、G7が検討する新たな金融制裁案」と題する記事を掲載した。

     

    主要7カ国(G7)首脳会議(サミット)は13日、イタリア南部プーリア州で始まる。G7は、ウクライナに侵攻するロシアの重要物資の調達を支援する中国などの銀行に対し、取引の停止を求める警告措置を検討する。従わない場合は、国際金融ネットワークから排除するなどの制裁を検討する。欧州外交筋などが明らかにした。

     

    (1)バイデン米大統領は2023年12月、兵器製造に必要な物資の対ロ輸出に関与した銀行に対し、監視を強化する大統領令を出した。G7の検討案では、ロシアとの取引が明らかになった銀行に対し、第1段階として取引の停止を警告し、履行されない場合は、G7の大手銀行などで構成する国際金融ネットワークから排除する。G7はこれまで、ロシアの戦争資金を減少させるため、制裁を強化してきた。22年12月にはロシア産原油の上限価格を設定したほか、半導体や工作機械など兵器製造に利用可能な重要物資の対ロ輸出を禁止してきた。だが、ロシアの戦争継続能力に当初想定したほどの打撃は与えられていない」

     

    元ロシア中央銀行顧問でカーネギー・ロシア・ユーラシアセンター非常勤研究員のアレクサンドラ・プロコペンコ氏は、原油、天然ガスなどのエネルギー資源や、世界有数の生産量を誇る小麦などの食料生産力を背景に、ロシア国内で極端なモノ不足が起きていないことを指摘する。また、経済制裁などで西側諸国からの輸入が停止した品目は、中国などからの代替品でまかなっている。民間向け航空産業では部品不足に直面したが、制裁に参加していないアラブ首長国連邦(UAE)などからの交換部品購入でしのいでいる。

     

    プロコペンコ氏はまた、「豊富な資源と、中国、インドなどとの貿易の拡大が、ロシア経済を支えている。西側諸国との貿易が減少した分、より制裁への耐久性が増す結果になった」と分析する。また一定の生活水準を維持できていることから、「国民の不満が政府に対する暴動に発展する可能性は低い」と予想した。以上、『毎日新聞』(2月13日付)が報じた。

     

    (2)「G7を中心とする欧米の制裁を半ば骨抜きにしてきたのがロシアと中国の取引だ。両国間の貿易は、ロシアによるウクライナ侵攻後の22年春以降に加速し、23年の貿易総額は前年比26%増の約2400億ドルと過去最高を更新。19年に両国が設定した目標を1年前倒しで達成した。中国がロシア産原油などを買い増しているほか、中国からの自動車や携帯電話、電子部品などの輸出が急増。ロシアの23年の貿易決済に占める人民元のシェアは3割超に達しており、米欧の制裁を受けたロシア経済を中国が大きく下支えしている。今回のサミットでは、中国などの銀行を対象にした制裁とともに、制裁が世界の金融システムへ与える影響を軽減するための対策も協議する。制裁の対象も大手銀行ではなく、小規模の銀行にする」

     

    中国の大手銀行は、米国のドル決済機構からの排除案を警戒しており、対ロ決済を忌避している。中国税関総署が5月発表した統計によると、4月の対ロシア輸出は人民元建てで前年同月比10.8%減少した。3月も13%減とマイナスだった。米国の対ロ制裁が影響している可能性が指摘されている。

     

    中国への銀行制裁は、大手銀行では影響が大きすぎるので、小規模銀行に止めてその波及力を見込んでいるのであろう。大手銀行をドル決済機構から排除したならば、中国の貿易がほとんどストップして、中国経済は破綻するからだ。これは、同時に西側諸国にも影響する「禁じ手」である。中国の台湾侵攻の際は、躊躇なく発動される。

     

     

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    EU(欧州連合)の執行機関である欧州委員会は12日、中国製EV(電気自動車)の輸入に関し最大38.%の追加関税を課すと発表した。74日から実施する。中国政府から補助金を受けた安価なEVがEU市場に流入し、競争を不当に阻害していると判断したものだ。 

    中国車大手の上海汽車集団のEVには38.%、BYD(比亜迪)には17.%の税率を課す。EUの調査に応じた社の平均税率は21%、応じなかった社は38.%とする。米テスラなど中国でEVを生産する外国メーカーも対象とする。 

    日本経済新聞 電子版』(6月12日付)は、「EU、中国EVに追加関税 実は6割が欧米メーカー製」と題する記事を掲載した。 

    EUの欧州委員会が中国製EVの関税引き上げを決めた。実は、中国から輸入されるEVの6割は米テスラや仏ルノーといった欧米メーカーの製品だ。中国は欧州産品への報復関税を検討している。

     

    (1)「2023年に欧州で販売されたEVのうち、約20%の30万台が中国から輸入した製品だった。中国製の売上高は110億ユーロ(約1兆9000億円)に上る。中国の乗用車の業界団体によると、欧州向けは輸出全体の約4割を占める最大市場だ。欧州のシンクタンクT&Eの調査によると、メーカー別では上海に工場を持つ米テスラが最も多く全体の28%に達する。湖北省に工場を抱える仏ルノーの低価格ブランド「ダチア」、遼寧省に拠点を持つドイツBMWなどと合わせ計6割を占めており、欧米メーカーが中国からEUに輸出する構図だ」 

    EUが輸入する中国製EVは、6割が欧米メーカーである。純然たる中国企業のEVは、全体の28%だ。 

    (2)「中国製EVには現在10%の関税がかけられており、追加関税はこれに上乗せされる。中国政府から多額の補助金を受ける国有の上海汽車集団など中国車3社に対し、欧州委は最大38.%の追加関税を課すと決めた。その他の社は調査に協力したメーカーの場合で平均21%を追加する。欧米メーカーも対象となる。テスラには個別に異なる関税率が適用される。上海汽車よりは低い水準だが、それでも打撃は大きい」 

    中国製EVには、現在10%の関税がかけられており、追加関税はこれに上乗せされる。中国政府から多額の補助金を受ける国有の上海汽車集団など中国車3社に対し、欧州委は最大38.%の追加関税を課すと決めた。EV関税は合計で最大48.1%となる。

     

    (3)「英紙『タイムズ』によると、スウェーデンのボルボ・カーは多目的スポーツ車(SUV)など一部のEV車種の生産を、中国からベルギーに移管し始めた。ボルボは、中国民営車大手の浙江吉利控股集団が親会社で、追加関税の影響が大きくなると判断したようだ。欧州にEVを輸出する中国車大手では、上海汽車傘下の英国車ブランド「MG」が最大だ。浙江吉利がボルボと立ち上げた高級EVブランド「ポールスター」のほか、中国EV最大手の比亜迪(BYD)、長城汽車、新興EVの上海蔚来汽車(NIO)などがEV輸出に力を入れている」 

    上海汽車傘下企業は、英国車ブランド「MG」を合併して、このマークを輸出に利用してきた。事情を知らない欧州消費者は、あたかも英国で生産したMGと錯覚しているという。これにより、EUへの輸出シェアは23年、中国EV全体の25%を占め、BYDの4%を大きく引離している。「錯視効果」である。 

    (4)「すでに、中国EVの伸びは鈍化しつつある。4月の欧州市場での中国EV販売台数は前年同月比10.%増だった。23年4月の12.%増より下がり、EV全体のシェアも9.7%と0.2ポイント下げた。長城汽車は5月末、ドイツ・ミュンヘンの欧州本部を8月末に閉鎖すると明らかにした。21年に設立し販売管理や現地市場向けの研究開発などを手がけてきたが、同本部で働く100人に解雇を通知した。小型EVブランド「欧拉(オラ)」を中心とした欧州での販売は継続する。閉鎖理由について、ドイツで23年12月にEV補助金が打ち切られたことを念頭に、販売環境が厳しくなっている点を挙げた。EUの追加関税の動きも閉鎖の一因となったとみられる」 

    中国EVは、販売のピークを過ぎている。それだけに、7月からの追加関税引き上げは販売へ大きく影響するはずだ。長城汽車は、これを見越して8月で欧州本部を閉鎖する。同社は、中国車ではもっとも早く欧州進出を果したが、ついに「力尽きた」感じである。 

    (5)「追加関税を避けようと、中国車大手にも欧州域内生産に乗り出す動きが出ている。奇瑞汽車は4月、スペイン企業と共同で同国でEVの製造販売に乗り出すと発表した。2社で4億ユーロを投じ、日産自動車の工場跡地を活用する。BYDは23年12月、ハンガリーに欧州初の組み立て工場を建設すると表明した。上海汽車は欧州で自動車の組み立て工場の立地の選定作業を進めており、近く発表するとみられている。ただ奇瑞汽車やBYDの量産開始は27年前後になる。その間は中国からの輸出に頼らざるをえない。追加関税を課されると同型の欧米製に近い水準の販売価格になる見込みだ」 

    今回の追加関税によって、中国EV企業は欧州での生産へ踏み切る。ただ、当面の生産は間に合わず、BYDは27年前後になるという。トヨタの全固体電池EV発売と同じ時期となる。

     

     

     

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