勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    かつては、「環境車」としてもてはやされたEVテスラが危機に立たされている。同社CEOのマスク氏が、トランプ米大統領と行動を共にしており、米国官庁で大量な人員整理の先頭に立っていることへの強い批判を浴びている。株価は、昨年11月の最高値時から半値まで激落した。マスク氏は、テスラ社員へ「株を売らないよう」と懇願する事態にまでなっている。テスラは生き延びられるか。世論を敵にしては、いかなるビジネスも成り立たないという単純なケースである。

    『ブルームバーグ』(3月22日付)は、「破壊や放火、激化するテスラへの抗議ーマスク氏への反発止まらず」と題する記事を掲載した。

    ショールームへの火炎瓶、サイバートラックへの落書き、充電ステーションの破壊行為--。イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)に対する反発は、テスラ車やディーラーに対する物理的な攻撃という形を取っており、抗議者の数が増加するにつれ、勢いづいている。一方、トランプ政権は暴力行為には法的措置を取ると言明している。電気自動車(EV)は政治的なシンボルとして見られるようになり、同社の何百万人もの顧客が争いに巻き込まれている。


    (1)「トランプ政権内でのマスク氏の巨大な役割に対する国民の怒りに対し、大統領側近の対応も厳しさを増している。今週、ボンディ司法長官は、テスラの施設に対する攻撃は「国内テロに他ならない」と述べた。ラトニック商務長官はFOXニュースでテスラ株は買い得だと述べ、視聴者に購入を促した。トランプ大統領自身も先週、ホワイトハウスの外でテスラ車を購入してみせた」

    人々のトランプ氏への怒りは、テスラへの「敵意」となって向けられている。この点を認識することが重要だ。トランプ政権の閣僚がテスラを庇えば庇うほど、「テスラ排撃」の火は燃えさかりそうだ。

    (2)「マスク氏は、所有するX(旧ツイッター)上で「暴力」を繰り返し非難し、20日には、ショールームの全車両のセキュリティー機能をオンにしたと述べた。同日夜遅く、マスク氏は突然全社員ミーティングをオンラインで開き、同社の車が燃やされている様子は「アルマゲドン」のようだが、会社としては「全体的に良い」状況だと述べた。ニューヨーク市ブルックリンからテキサス州オースティン、サンフランシスコ・ベイエリアまで、週末にショールームで計画的に行われる抗議活動には、毎週参加者が増えている。 「テスラ・テークダウン」と呼ばれる分散型のグループは19日、有名人や政治家、学者も巻き込んで参加を呼びかけ、これまでの活動で最大規模となる世界500カ所で、29日に抗議活動を行おうとしている」

    反テスラ活動は、世界500カ所で繰り広げられる勢いである。


    (3)「PR会社「レピュテーション・ドクター」のマイク・ポールCEOは、反発の声は米国企業では前例のないレベルに達していると述べた。不買運動のような典型的な消費者からの抗議とは異なり、テスラのショールーム、車両、充電ステーションはブランドを想起させるもので、潜在的な抗議の対象でもある。ポール氏は「今後、テスラ車が燃やされることは増え、世界中のショールームでさらに多くの抗議活動が見られるようになるだろう。路上に駐車しているテスラ車を所有している人は、誰でも危険にさらされることになると思う」と述べ、騒ぎがすぐには収まらないとの見方を示した」

    テスラは典型的な不買運動から離れ、テスラのショールーム、車両、充電ステーションの破壊活動へ向っている。路上に駐車しているテスラ車所有者は、誰でも危険にさらされるという物騒な雰囲気になっている。

    (4)「一部のテスラ所有者は、売却する代わりに、自分の車にマスク氏への抗議のステッカーを貼っている。中古のテスラの価格は暴落しており、車を処分したい場合、大きな損失を覚悟しなければならない可能性がある。自動車関連の調査会社エドマンズによると、ディーラーで新車または中古車を購入する際に下取りに出されたテスラの割合が、今月は過去最高を記録した。先月、エドマンズでテスラの新車購入を検討している人の割合は1.8%まで落ち込み、2022年10月以来最低となった」

    テスラ所有者の一部では、自分の車にマスク氏への抗議のステッカーを貼って「自衛手段」に出ている。


    (5)「テスラの株価は12月に最高値をつけてから、50%余り下落している。20日に行われた全社会議で、マスク氏は従業員に対し、「困難な時期」にあるものの保有株を手放さないよう呼びかけた。同氏はテスラの今後について、5年以内にテスラの自動運転車が世界的に普及するなど、野心的な予測も披露した」

    マスク氏は、「5年以内にテスラの自動運転車が世界的に普及する」と当てもないことを言う羽目に追込まれている。ステージ5の自動運転車は、簡単に登場できるほど甘いものではない。人的損害は、メーカーが保証する建前である。

    (6)「非暴力の抗議活動を訴える「テスラ・テークダウン」は、さらに運動を拡大しようとしている。同グループが19日に行った会議には、民主党のクロケット下院議員や俳優のアレックス・ウィンター氏、ジョン・キューザック氏がスピーカーとして参加した。ウィンター氏は「この会社を転落させた責任は、マスク氏自身にあるだけだ。陰謀などない。テスラを窮地に追い込んだのはマスク氏ただ1人であり、その一方で抗議活動は拡大し続けるだろう」と述べた。主催者の1人であるソフィー・シェパード氏は、「私たちは、彼とビジネスをする人々を望んでいない。彼が連邦政府で持つ権力を保持し続けないでほしい」と訴えた」

    テスラ危機は、マスク氏がトランプ政権から離れる以外に解決方法はなさそうだ。彼は、それを決断できるか。それともテスラを枕に「討ち死」にするかという切羽詰まった段階へ来ている。世論を敵にしては、いかなるビジネスも成り立たないのだ。


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    中国のEコマース(ネットショップ)は一時、低価格を武器にして旋風を巻き起こしたが、韓国ではいくつかの「不祥事」が報じられており、失速状態という報道が出てきた。韓国内の他のEコマースで売っている商品より価格がはるかに安く、1週間で受け取れるなどのふれこみで購入したが、全くの当て外れの商品で返品のできず、結局は損をしたというケースが頻発している。こうなると、国内の信頼できるEコマースが安心できる、という結論に落ち着くようである。

    米国では、トランプ大統領就任直後、中国に関税を賦課し、Eコマースで800ドル(約12万円)未満の物品に適用してきた関税免除条項(デミニミスルール)の運用停止も予告した。欧州連合(EU)も、すべての輸入品に「取扱手数料」を導入する。こうして、中国Eコマースに逆風が吹き付けている。


    『中央日報』(3月22日付)は、「瞬間的ブーム? 成長止まった中国Eコマース、韓国直接進出で反転狙う」と題する記事を掲載した。

    「アリカン」「テムカン」など、新造語が登場するほど人気だったアリエクスプレス(アリ)・テム(Temu)など中国Eコマースの勢いが減速している。利用者数が停滞状態に陥り、一時台風と思われたCコマース(注:中国のEコマース)熱風が微風に終わるのではないかという分析まで登場した。見たことのないような「超低価格」を前面に出してブラックホールのように韓国消費者を吸い込んだが、価格が安い代わりに品質とサービスが期待に及ばなかったためという分析だ。

    (1)「フォーブスコリア・IGAWORKSが、アリ・テムのアプリの月間アクティブユーザー数(MAU)を調査した結果、アリは昨年3月694万人でピークを迎えた後に停滞状態を示している。季節的繁忙期である年末の利用者数が瞬間的に増加傾向を示したが、またたく間に失速した。アリより韓国進出が遅れたテムは、昨年4月693万人を基点に減少の一途だ。ショッピングが増える年末利用者数も626万人にとどまった。同じ期間、韓国内EコマースであるクーパンアプリのMAUが地道に成長を示していたこととは対照的だ」

    アリは昨年3月694万人でピーク、テムは昨年4月693万人を基点に減少の一途だ。「安かろう悪かろう」では、顧客の信頼を失って当然だ。日本ではどうだろうか。


    (2)「このような流れは、決済額でも確認することができる。IGAWORKSによると、昨年12月クーパンのカード決済推定額は3兆2300億ウォン(約3292億円)で、全体Eコマース10社のうち1位だった。アリは、1133億ウォンで9位にとどまった。特に11月と比較するとクーパンは3%増えたが、アリは42%減少した。アリ・テムの決済金額合算シェアは、昨年1月(1.6%)に比べると2倍以上成長したものの、韓国内のEコマース市場に地殻変動を起こすには力不足という評価がある」

    アリ・テムの決済金額合算シェアは、昨年1月(1.6%)に比べると2倍以上成長したものの、韓国内のEコマース市場に地殻変動を起こす力はない。

    (3)「これは、超低価格など価格だけに焦点を合わせたマーケティングが、配送力量とサービスの差別化に集中している韓国内Eコマース市場のトレンドと合致しなかったためという分析だ。韓国消費者が、Cコマースに注目した理由は大きく2種類だった。韓国内Eコマースとは比較できないほどの超低価格と多様な商品群だ。韓国内Eコマースで1万~2万ウォン台の生活用品をアリ・テムでは3000~4000ウォンで販売した。「安い」という水準を越えて「超低価格」という認識が拡散してCコマースに消費者が殺到した」

    韓国内Eコマースで1万~2万ウォン台の生活用品が、アリ・テムでは3000~4000ウォンで販売されている。消費者は、この安さに目を奪われるのだ。


    (4)「だが、有害成分が基準値を超過した製品が相次いで摘発されるなど商品性に問題が見つかり始めた。韓国関税庁は、昨年中国直接購入製品のうち、こども用品・雑貨・化粧品など1401種を分析して有害製品198種を摘発したことがある。Cコマース販売製品に対する安全性問題が絶えないことを受け、公正取引委員会は昨年10月Cコマースの1915件の商品に対して危害商品販売遮断措置を下した。このような措置にも安全性論争は絶え間なく続いている。国会産業通商資源中小ベンチャー企業委員会所属の金東我(キム・ドンア)共に民主党議員室によると、昨年Cコマースではコピー商品が5500件以上摘発された」

    Cコマースでは、有害成分が基準値を超過した製品が相次いで摘発されている。中国の基準が甘いのか、規制をくぐって製造しているのかだ。

    (5)「アフターサービス(AS)も韓国消費者の求める基準からはほど遠い。ソウル市が昨年下半期、市民団体「未来消費者行動」と共同で海外Eコマースで販売されている衣類100件を調査した結果、AS責任者情報や連絡先のある商品は一件もなかった。製造国表示のない事例が80件、製造年月がない事例は98件だった。「緑色消費者連帯」のパク・インレ代表は「消費者が個別に有害商品を選別するには限界があることからこれを補完する制度的装置が急がれる」と話した」

    アリ・テムのアフターサービスもゼロである。商品を売りっぱなしである。中国では、こういうビジネスがまかり通っているのであろう。


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    外国為替市場では、トランプ氏が昨年の大統領選に勝利して以来、投機筋がドルに対して弱気な姿勢に転じた。米商品先物取引委員会(CFTC)が発表したデータ(3月18日終了週)によると、ヘッジファンドなど投機筋によるドルショート(ドル売り)が9億3200万ドル(約1390億円)規模に達した。ドルのロングポジション(ドル買い)340億ドル規模に上っていた1月中旬からは劇的な変化だ。トランプ氏の政策や米経済に対する疑問が、ドルの見通しを修正する兆候が浮き彫りになった。

    『ブルームバーグ』(3月22日付)は、「投機筋がドルショートに転じる トランプ氏勝利以来―不透明感が重し」と題する記事を掲載した。

    (1)「アムンディの債券・為替戦略ディレクター、パレシュ・ウパダヤ氏は、「トランプトレードに対する見方は完全にひっくり返った」と指摘。「混乱を招くトランプ氏の政策運営が不確実性をもたらしている」とし、トランプ氏の政策が「経済やインフレ、金融政策に与える影響に関して、市場の見方は景気刺激的から景気縮小的へと変化した」と述べた」


    もともと昨年12月中旬時点では、トランプ氏の政策と米金融当局の利下げで2025年後半にドルに下押し圧力がかかる可能性が高いとみていた。だが、この「ドル安転換」予想時期が早まってきた。トランプ関税政策が、ますます不透明になっているからだ。トランプ氏得意の減税政策もしぼんでいる以上、ドル安予想へ早めに舵を切っている。

    ドルは24年に大幅上昇しており、15年以来最大の上げとなった。米大統領選挙でのトランプ氏勝利と、好調な経済データを受け、トレーダーらが来年の米利下げ回数予測を下方修正したことが要因だ。専門家は、ドルの強さについて「胃が痛くなる思いだ」と述べ、「長期的に持続不可能な水準まで相場が押し上げられている」と指摘していた。こういう、異常なドル高相場であった以上、「過熱」部分の剥落が起こったところで驚くには当るまい。


    (2)「ウォール街では、2025年のドル相場について、少なくとも上期はドル高になるとの予想が多かった。トランプ大統領の政策見通しに加え、米利下げ回数が限定的になるとの見方が背景にあった。だが、足元では米経済の先行きに対する不安から、2026年1月までに3回の利下げが行われるとの観測が強まっている」

    トランプ氏は、関税引上げに伴い利下げするように、とFRB(米連邦準備制度理事会)へ希望を出し始めているが、そういう甘い期待を持てるはずがない。関税引き上げが、国内物価を押上げるリスクを高めるからだ。

    ドル強気派の多くは昨年末、トランプ氏の関税引上げがドルを支えるとの見方を強め。ドル買いのポジションを積み上げてきた背景がある。現実には、逆の事が起こっている以上、「ドル売り」ポジションへ乗換えるのは当然のことである。投機筋は、見方が間違っていたと悟れば後は、「脱兎」のごとく走り出すのが習性である。


    ブルームバーグ・ドル・スポット指数の大半は、昨年11月初めの選挙日直前とそれ以降の上げとされている。トランプ氏の関税と減税がインフレをあおり、米金融当局の利下げ方針を向こう数カ月にわたり複雑化させるとの見方がドル高を後押ししたのだ。

    トランプ政権下のドル相場の動向を考える場合、過去の値動きが参考になる。9年前のトランプ氏初当選直後に急上昇した後、17年には、米経済の勢いが失われる一方で欧州の成長が加速したため、ブルームバーグ・ドル指数は年間で過去最大の下落を記録した。ウォール街は、昨年末の時点で25年に劇的なドル安にならないと予想していた。だが、現在のユーロ相場は上昇しており、どうやら17年の再現になる可能性を否定できなくなっている。ユーロは、ドイツが財政拡大政策へ切替えたことでユーロ高・ドル安場面となっている。


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    台湾の行政院(内閣)が、自衛隊の統合幕僚長を務めた岩崎茂氏を政務顧問に任命した。政務顧問は、行政院への政策提言を担う。安全保障分野で日本との関係強化を探る狙いとみられる。岩崎氏は航空自衛隊の出身で、航空幕僚長を経て2012~14年に統合幕僚長を務めた。

    『毎日新聞』(3月22日付)は、「自衛隊の制服組元トップが台湾政府顧問に就任、安保連携狙いか」と題する記事を掲載した。

    自衛隊制服組トップの統合幕僚長を務めた岩崎茂氏が台湾行政院(内閣)の政務顧問に就任したことが21日、行政院関係者への取材で明らかになった。自衛隊最高幹部経験者の任命は極めて異例。日本との安全保障分野での関係を強化する狙いとみられる。

    (1)「岩崎氏は航空自衛隊の戦闘機パイロット出身。航空幕僚長を経て2012~14年に統合幕僚長を務めた。政務顧問は非常勤・無報酬で、行政院に対して政策提言を行う。行政院関係者によると、岩崎氏は今月、台湾側の招待で訪台し、顧問に就任。卓栄泰・行政院長(首相に相当)とも面会した」

    岩崎氏の台湾政府・政務顧問就任は、台湾と日本との安全保障問題で大きな役割を果すとみられる。台湾防衛では、制空権確保が重要問題である。岩崎氏は、航空幕僚長や統合幕僚長を務めた経緯がある。有力なアドバイスを与えるであろう。


    (2)「岩崎氏は公職を退いた後、たびたび台湾を訪問している。24年5月には台湾北部・新北市の淡江大学で講演。中国やロシア、北朝鮮が地域の大きな脅威になっているとした上で、日本は直接台湾を支援できないが、台湾とのさまざまな分野での協力関係をさらに強めていく必要があると述べていた。中国外務省の毛寧報道局長は21日の記者会見で「日本は台湾問題で中国人民に対する歴史的な罪を負っていて、特に言動を慎むべきだ」と批判した」

    中国外務省は、日本に対して「台湾問題で中国人民に対する歴史的な罪を負っている」と発言している。これは、間違いである。日本は、日清戦争勝利で台湾を植民地にした。だが、当時の台湾は中国にとって「化外の地」(野蛮の地)とされ、清国の統治が及んでいなかった。この台湾を近代化させたのは日本である。「歴史的罪」どころか、「歴史的善政」であったのだ。現在の台湾が、「親日」である理由だ。

    台湾が、中国本土への統一を望まないのは与野党一致の意思である。これは、中国の共産党政権を忌避している証拠だ。自らが、民主化しない限り統一はあり得ない状況にある。中国は、これを無視して「侵攻」をちらつかせている。となると、台湾は防衛戦略を立てるほかない。米軍と自衛隊が、台湾防衛にどのようにかかわるかが問われている。


    『毎日新聞』(23年2月28日付)は、「台湾有事で何が起きるのか、米研究機関が日本に突きつけた課題」と題する記事を掲載した。

    米国のシンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」は(23年)1月、台湾有事の机上演習(ウオーゲーム)の報告書を発表した。計24ケースをシミュレーションし、大半で中国に不利な結果が出た。ところが、日本に深く関係する、ある条件を加えると、違ったシナリオが導き出された。

    (3)「報告書は台湾防衛成功の条件の一つに「在日米軍基地の使用」を挙げた。日米安全保障条約や付随する交換公文によって、米軍が日本から戦闘作戦行動をとる場合には「日本政府との事前協議」が必要だ。日本が認めなければ、作戦成功が危ぶまれ、米軍が軍事介入自体をためらうこともあり得ると言える。「米国が動くなら日本も付き合う」という発想ではなく、「台湾の行方は日本の判断次第だ」という気構えが最低限必要だ――。CSISの報告書はそう迫っていると言える」

    台湾防衛で、日本が在日米軍基地の使用を認めることが不可欠である。「台湾の行方は日本の判断次第だ」である。台湾政府が、岩崎氏を政務顧問へ迎えた理由である。


    (4)「米中の軍事衝突が始まった場合、日本政府は「どこまで米軍を支援するのか」という判断を迫られる。「日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態(存立危機事態)」と認定すれば、自衛隊が武力を行使することも可能になる。では、中国は日本を攻撃するのか。机上演習では中国チームが試行錯誤する中で「日本は攻撃しない」と選択したケースもあったが、いずれも中国にさらに不利な結果となった。中国にとって、日本を敵に回すリスクより、先手を打って在日米軍基地を攻撃するメリットの方が大きかった」

    中国は、先手を打って在日米軍基地を攻撃する攻撃するメリットが大きい。

    (5)「中国が日本を攻撃すれば、日本政府は「武力攻撃事態」と認定し、自衛隊は米軍と共同戦線を張ることになる。自衛隊の中でも「航空自衛隊が非常に重要だ」と指摘されている。机上演習では、空自のF35戦闘機が長射程ミサイル「JSM」で中国軍の艦船を攻撃し、米軍の爆撃機の護衛、情報収集でも貢献。海上自衛隊の潜水艦も中国軍に一定の打撃を与えたが、ミサイルの補充にかかる時間を考慮すると、戦闘機の有用性が高かった」

    中国が日本を攻撃すれば、自衛隊は米軍と共同戦線を張る。空自のF35戦闘機が、長射程ミサイル「JSM」で中国軍の艦船を攻撃し、米軍の爆撃機の護衛、情報収集でも貢献する。航空自衛隊の有用性が高いことが証明された。岩崎氏の政務顧問就任の背景だ。



    あじさいのたまご
       

    韓国は、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領弾劾に続いて、大統領代行の韓悳洙(ハン・ドクス)首相を弾劾した。現在の大統領代行は、崔相穆(チェ・サンモク)経済副首相兼企画財政相である。野党は21日、この崔氏も弾劾する弾劾訴追案を国会に提出した。2人目の大統領代行訴追を目指している。理由は、国会が推薦した憲法裁判所の判事候補を崔氏が任命しなかったことや、非常戒厳宣言を巡り内乱罪に問われていると共犯である疑いがあることなどを挙げた。韓国政治はドロ沼状態である。国際社会の韓国を見る眼は厳しくなる。

    『朝鮮日報』(3月21日付)は、「崔相穆・大統領権限代行の弾劾を開始した共に民主党、何を狙っているのか」と題する社説を掲載した。

    韓国野党「共に民主党」は、馬恩赫(マ・ウンヒョク)憲法裁判官候補者を任命しない崔相穆大統領権限代行に対し、「黙認できない」との理由で弾劾手続きを開始するという。時期については明言していないが、尹錫悦大統領と韓悳洙権限代行に続き崔相穆代行まで弾劾する考えを明確にした形だ。「代行の代行の代行」体制になっても意に介さないようだ。


    (1)「共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表は前日、崔相穆代行に対し「国民の誰でも職務放棄の現行犯として逮捕できるので、お体にお気を付けいただきたい」と言葉をかけた。ヤクザ映画にも出てきそうな発言で波紋が広がったが、翌日には弾劾を宣言した。共に民主党による度重なる弾劾脅迫を受け、一時は崔相穆代行も辞任を検討中との見方も出ていた。崔相穆代行はこれを否定したが、共に民主党の攻勢がどれほど厳しいかをうかがい知ることができる」

    韓国政治は、「狂乱状態」にある。最大野党「共に民主党」代表の李氏が、早く次期大統領選挙を行わせて、自らが就任したいという焦りが拍車をかけている。李氏は、韓国政治を混乱させたもう一人の当事者である。大統領選への立候補は自重すべきである。韓国政治をさらに混乱させ、収拾のつかなくなる事態が懸念されるのだ。一人の人間の野望が、こういう事態を招いた一半の責任を感じるべきだろう。

    (2)「共に民主党は、何かあれば崔相穆代行に対し「内乱の共犯」「国政混乱の主犯」などと批判しさまざまな手を尽くして圧力を加えてきた。共に民主党は、重要法案を次々と一方的に採決したため、大統領や権限代行による拒否権行使は40回に及ぶ。首相、長官、検事などに対する弾劾案提出も29回だ。野党の政治攻勢に押され、崔相穆代行が職務を正常に遂行できなければ、国政の混乱は今以上に拡大するだろう。崔相穆代行を弾劾し別の国務委員が次の代行に就任したとしても、共に民主党が望む馬恩赫候補が任命されるわけではない」

    野党が提出した弾劾案提出は、すでに29回を数えている。今回の弾劾案で30回を数える。野党にとって気にくわない政府要人は、ことごとく弾劾するという正気とは思えないような乱暴な行動を取っている。政権への協力という配慮はゼロである。


    (3)「今、韓国の政治は大きな混乱に加え、トランプ政権の米国第一主義政策で経済と安全保障の危機に直面している。しかし国会を掌握した政党と大統領選挙候補支持率1位の候補者は国政から背を向けひたすら政略的弾劾暴走を続けている。実に無責任と言わざるを得ない」

    「大統領選挙候補支持率1位の候補者」とは、李氏を指している。自らは、5つの罪名を抱える被告人である。この司法リスクを逃れるために、一日も早い大統領選挙を行いたいと焦っているのだ。それが、「代行の代行の代行」というめまぐるしい騒ぎを引き起している理由である。

    (4)「憲法裁判所は、今月24日に韓悳洙(ハン・ドクス)権限代行に対する弾劾審判の宣告を行う。昨年12月27日に内乱を共謀・幇助(ほうじょ)したとの理由で弾劾訴追されてから87日だが、韓悳洙代行に対する弾劾も共に民主党の単なる政略に過ぎない。韓悳洙代行が復帰した場合、国政の混乱を収め米国と通商や安全保障の懸案を解決するきっかけになることも期待されている。韓悳洙代行は、通商の専門家で駐米大使も経験した人物だ。馬恩赫候補の任命は大統領弾劾審判後に先送りするしかないだろう」

    韓悳洙首相に対する大統領権限代行の弾劾審判は、24日に下される。大方は、「弾劾不成立」とみられている。そうなれば、崔相穆・大統領権限代行の弾劾は意味がなくなる。単なる嫌がらせとなろう。

    (5)「共に民主党は、今も弾劾審判の結果をじっと待てず焦っている。その理由は、国民も理解している。李在明代表の司法リスクが、現実となる前に大統領選挙を行いたいからだ。そうなれば、国政はさらに混乱する。今の事態に大きな責任がある共に民主党は、自粛と自重が必要だ」

    李氏の異常な権力執着心が、現在の韓国政治を混乱させている理由の一つである。国民は、このことを知り抜いているのだ。



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