勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    韓国を襲う「トランプの米国」に対する不安と、「習近平の中国」に対する不信が、日本の再発見につながっている。韓国は、米国の関税戦争による被害が実質的に発生している。一方、反中感情が固定化する中で、韓国世論は日本と協力して突破口を探したい、とこれまで以上に思っていることが明らかになった。開闢以来の「珍事」が起こっている。

     

    『中央日報』(6月13日付)は、「国民49.6%『日本と未来協力推進』…31.5%は『歴史問題解決』」と題する記事を掲載した。

     

    6月12日、中央日報と東アジア研究院の共同企画調査(6月4-5日、全国18歳以上の成人男女1509人を対象にウェブ調査、最大許容標集誤差95%信頼水準に±3.1%ポイント)の結果によると、新政府が対日外交でまず考慮すべきイシューとして最も多くの49.6%が「経済、技術、安保、環境分野などで未来志向的協力を推進」を挙げた。「歴史問題の解決」を最優先に挙げた回答者は31.5%だった。

     

    (1)「前回大統領選挙直前の2021年に実施した世論調査(2021年8月26日~9月11日、全国成人男女1012人対面面接調査、95%信頼水準で最大許容標集誤差±3.1%p)では、同じ質問に対して歴史問題解決が優先という回答者が40.7%で未来志向的協力が優先という回答(35.3%)を上回っていた。今回は、順位が逆転した。党派別に見ると、進歩層のほうが歴史問題解決を優先に置いた(歴史問題44.9% vs協力37.3%)が、保守では過半の59.4%が協力を選び、中道層も協力に傍点(歴史問題30.8%vs協力50.6%)をつけた」

     

    日韓関係では従来、歴史問題解決(謝罪)が主流であった。それが今回は、未来志向的協力が優先である。若者世代が、世論をリードしている結果だ。となれば、この逆転現象は年々、強まるであろう。

     

    (2)「また、「歴史問題の解決なしに両国の未来志向的協力は難しい」という回答は、昨年8月共同企画調査(全国成人男女1006人ウェブ調査、95%信頼水準で最大許容標集誤差±3.1%p)の時の42.1%から今年40.4%で小幅に減少した。反面、「両国間の未来志向的協力を作っていけば、歴史問題も徐々に解決されていく」という回答は同じ期間32.4%から38.3%に増えた。韓国が、当面の最大脅威要因1位が「米中戦略競争」(昨年42.5%→今年64.9%)、2位が「保護貿易拡散および先端技術競争」(昨年39.7%→今年59.8%)であることと無関係ではなさそうだ。米中間葛藤による被害を体感する水準になると、日本をパートナーととらえ、共に対応することを願っているといえる」

     

    韓国は、独立して80年になる。今や、経済問題で解決困難な状況へ向いつつある。日本と仲違いしては、生きていけないという現実認識が強まっている結果だ。

     

    (3)「これに関連し、李氏は9日、日本の石破茂首相との初の電話会談で過去史に言及しないで「こんにちの戦略的環境の中で韓日関係の重要性がより一層重大になっている」としたが、世論の問題意識と一致する側面がある。李氏は、「両国が相互国益の観点から、未来の挑戦課題に一緒に対応して共生できる方向を模索していくことを期待している」ともした」

     

    「反日闘志」の李大統領も、今のところ口を慎んでいる。これが、いつまで続くかだ。

     

    (4)「約10カ月の間に、日本に対する好感度が急上昇したことも目を引く。昨年の調査では「日本に良い印象を持っている」と回答したのは41.8%だったが、今年の調査では63.3%まで上昇した。これは「日本に良くない印象を持っている」(30.6%)の2倍以上となる数値だ。EAIが調査を開始した2013年以降、対日好感度が非好感度を上回る「ゴールデンクロス」を達成したのは初めてだ。信頼度も昨年33.1%から今年41.2%に上昇した。同期間、米国を信頼するという回答は73.2%から68.4%に下落し(不信は18.2%→28.6%)、中国を信頼しないという回答は66.7%から69.5%に増えたが、対日信頼度だけが高まった」

     

    対日感情が、約10カ月の間に逆転したのは、自国の政治不安を心底、恥じているのであろう。かつて韓国は、日本で自民党政権が続いていることを批判し、民主主義が根付いていないとまで言っていた。その韓国が、立て続けに大統領弾劾という事態だ。深く恥じ入っているのであろう。日韓、どちらが民主的であるか。肌身で知ったのだ。


    (5)「日本に対する認識変化はこの他にもさまざまな数値から確認することができる。韓国に軍事的に脅威になると考える国について尋ねると、日本を挙げた回答者は30.1%だった。昨年37.7%から7.6%ポイント減少した。「日本との経済関係が特に重要だ」という回答は昨年48.9%から今年53.6%に増えた」

     

    韓国は、地政学的に中ロ朝に挟まれる存在だ。これまでは、気楽に「中ロ朝と友好親善」と唱えていたが、今やそれがもたらす恐怖を実感するようになった。本来ならば、朝鮮戦争で目が覚めるべきであった。それが逆に、北朝鮮に統一して貰っておけば良かったという妄言すらもたらした。こういう妄想から今、目が覚めたのだ。

     

    (6)「ここには、両国間の人的交流が活発化したことも大きな影響を及ぼしたとみられる。昨年日本を訪問した経験が「ある」という回答者(60.8%)が「ない」(39.2%)を初めて超えたが、今年も66.3%が日本に行ったことがあると答えた(「ない」33.7%)。このうち最近5年間で日本を訪問した回数が2~4回という応答は38.4%、5回以上という回答は9.2%を占めた」

     

    人的交流の増加が、相手国への理解を深めるきっかけになる。昨今では、韓国からの訪日客が急増している。リピーター増加が、対日感情好転の裏にある。



     

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    トランプ米大統領は、ロンドンで実施された米中貿易協議の成果を声高に主張している。これに対し、中国の習近平国家主席は目立たないながらも戦略的な成果を上げた。中国が時間的な猶予を得るべく、レアアースの輸出解禁期間を小出しにして、米国からの打撃の大きい関税措置や技術規制の脅威を回避しようとする狙いであるからだ。メディアは、中国が切り札でレアアースを使っているとみている。現実は、中国の対抗策がレアアースしかないことを浮き彫りにしているのだ。「孤塁」を守っている感じである。実態を見誤ってはならないであろう。

     

    『ブルームバーグ』(6月13日付)は、「習国家主席が米中貿易協議で描く長期戦略-トランプ氏の重点と対照的」と題する記事を掲載した。

     

    トランプ米大統領がロンドンで実施された米中貿易協議の成果を主張したのに対し、中国の習近平国家主席は、打撃の大きい関税措置や技術規制の脅威を回避する交渉プロセスに固執した。

     

    (1)「協議終了後の11日、トランプ氏はソーシャルメディアへの投稿で中国からの重要な磁石の供給回復について合意が「成立した」と表明し、中国人留学生ビザの制限解除を約束した。ラトニック米商務長官はその数時間前、米国の自動車や防衛産業に不可欠な金属が十分迅速に供給されるようになれば、最近導入した対中技術規制を解除すると表明した」

     

    米国は、レアアースの合意が成立したと意気揚々と発表した。だが、『ウォール・ストリート。ジャーナル』によれば、6ヶ月の期間限定としている。米国が、新たな輸出規制を持ち出せば、6ヶ月後にレアアース輸出を止めるという意図が隠されている。中国は、サバイバルを掛けた必死の戦いである。レアアースという切り札がなかったならば、中国はいまごろ「落城」していたであろう。

     

    (2)「中国の重点は、全く違うところにあった。共産党機関紙『人民日報』の12日付け論説には、今回の協議を巡る中国側の最も具体的な見解が示されたものの、輸出管理については一切言及がなかった。その代わり、「協議メカニズム」を通じて両国の相違を埋める「制度的保障」を同紙は強調している。ロンドンでの協議に先立ち行われた米中首脳電話会談でも、習氏はトランプ氏にこの経路を用いた意思疎通の重要性を説いたと論じている」

     

    『人民日報』は、次のように主張している。

     

    (3)「中米経済貿易協議メカニズムの設立は、ジュネーブ経済貿易協議の重要な成果であり、双方が相違点を埋め、協力を深めるための制度的保証を提供する。 数日前の電話会談で、中国と米国は、双方のチームがジュネーブ・コンセンサスを引き続き実施し、できるだけ早く新たな協議を行うことで合意した。 電話会談で習近平国家主席は、双方が確立された経済貿易協議メカニズムを有効に活用すべきであると強調した」

     

    中国は、米中貿易協議について双方が相違点を埋め、協力を深めるための制度的保証と主張している。中国共産党は、米中間に何らの紛争も起っていないと「平静さ」を装っているのだ。これは、国内の動揺を抑えようという狙いである。

     

    (4)「この会議は、両国の国家元首の戦略的コンセンサスの指導の下での重要な協議です。 両国と国際社会のあらゆる階層の人々がこの会議に細心の注意を払っており、一般的に、世界の二大経済大国である中国と米国は、対立よりも摩擦や対立をめぐる対話よりも協力の方が優れていると考えており、双方が対等な立場での対話と協議を通じて相違点を解決し、世界経済により多くの安定性と確実性を注入することを望んでいます」

     

    中国と米国は、「対立よりも摩擦や対立をめぐる対話よりも協力の方が優れていると考えており、双方が対等な立場での対話と協議を行っている」と平静さを強調している。これをみても、米中対立で中国経済が低迷していることを窺わせている。何事もなかったと、カムフラージュしているのだ。

     

    (5)「中米関係の歴史を振り返ると、制度的な取り決めを通じてコミュニケーションと対話を強化することが、双方の違いを適切に処理し、協力を強化する上で重要な役割を果たすという教訓が明らかになる。 今回の会談では、双方が率直かつ綿密なコミュニケーションを行い、互いの経済・貿易上の懸念を解決するために新たな進展を遂げました。その役割を果たすのが協議メカニズムです」

     

    中国外交部は、これまで米国へ「徹底的に最後まで戦う」と宣言していた。あの激烈な主張が嘘のような落ち着いたトーンである。国民に向けて、「何事もないのだよ」と言い聞かせていることが、むしろ不自然さを感じさせるのだ。

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    中国は、EV(電気自動車)の波に乗って、ついに「空飛ぶクルマ」へ進出するまでになっている。いくら、「新しもの好き」な中国でも、空飛ぶクルマとなると二の足を踏むようだ。主要顧客は地方政府傘下の国有企業だが、不動産バブル崩壊後遺症で、肝心の土地売却益が大きく落込んでいる。まだ「不要不急」の空飛ぶクルマを購入する雰囲気ではなさそうだ。

     

    『東洋経済オンライン』(6月13日付)は、「中国『空飛ぶクルマ』開発企業の急成長にブレーキ」と題する記事を掲載した。この記事は、中国『財新』の転載である。

     

    「空飛ぶクルマ」の開発を手がける中国の億航智能(イーハン)の業績が、約1年間の急成長を経て失速の兆しを見せている。

     

    (1)「同社が5月に発表した2025年1~3月期決算では、売上高が前年同期比約58%減の2610万元(約5億1790万円)に縮小。純損益は7840万元(約15億5580万円)の赤字で、損失額が前年同期比約24%増加した。eVTOL(電動垂直離着陸機)とも呼ばれる空飛ぶクルマは、電動モーターでプロペラを駆動し、人を乗せて垂直離着陸が可能な飛行機械を指す。イーハンが開発したeVTOL「EH216-S」は13月期の販売機数が11機にとどまり、前年同期の26機の半分未満に落ち込んだ」

     

    イーハンの1~3月期業績は、大幅な減収で赤字となった。販売機数は、11機で前年同月の26機の4割へ落込んだ。

     

    (2)「イーハンの四半期業績は、2024年1~3月期から同年10~12月期まで4四半期連続で顕著な成長を記録した。通期ベースで見ると、2024年の年間売上高は4億5600万元(約90億4900万円)と前年の3.9倍に拡大。純損益は2億3000万元(約45億6420万円)の赤字だったものの、損失額は前年比24%縮小していた。にもかかわらず、2025年1~3月期の業績はなぜ急に悪化したのか」

     

    2024年1~3月期から同年10~12月期まで、4四半期連続で顕著な成長を記録した。それが、今年1~3月期に失速したのは、早くも需要一巡であろう。米中対立の真っ只中で、必需品でない空飛ぶクルマに需要があるとは思えない。「ご祝儀」であったのだ。

     

    (3)「イーハンの説明によれば、背景には主要顧客である地方政府傘下の国有企業の意思決定プロセスがある。「国有企業の調達は政府予算の制約を受ける。新年度予算の策定には一定の時間がかかるうえ、国有企業は社内手続きに要する時間も(民営企業に比べて)長い」。イーハンの王釗COO(最高執行責任者)は決算説明会でそう述べ、1~3月期の業績落ち込みは年度初めの一時的なものという見解を示した」

     

    主要購買層が、今は地方政府である。民間企業が購入に向けて動き出さなければ、本格的な需要増にはつながらないであろう。

     

    (4)「イーハンは、空飛ぶクルマの商用運航実現を目指し、航空安全当局の規制のハードルを着実にクリアしてきた。2025年3月下旬には、中国の民間航空行政を所管する中国民用航空局(民航局)が「億航通用航空」と「合翼航空」の2社に対して、(パイロットが搭乗しない)無人操縦のeVTOLによる商業目的の航空運送事業認可(AOC)を初めて交付した。億航通用航空はイーハンの100%子会社、合翼航空は億航通用航空と安徽省合肥市の政府系投資会社の合弁会社であり、いずれもEH216-Sを使った商用運航サービスを計画している」

     

    空飛ぶクルマの商用運航は、2社のみに与えられている。その運航条件も、次のパラグラフで指摘されているように、運航コースが決められている。

     

    (5)「AOCの交付は、空飛ぶクルマの商用運航開始に民航局がゴーサインを出したことを意味する。とはいえ、商用運航が(事業採算を見込める)一定のスケールに達するには、まだまだ時間がかかりそうだ。民航局の開示情報によれば、億航通用航空と合翼航空に交付されたAOCは両社が保有する合計6機のEH216-Sを対象に、同一地点から離着陸する飛行に限って許可している。言い換えれば、ある地点から別の地点に乗客を輸送する運航形態は認められていない。そのため、当初のサービスは観光目的の遊覧飛行に限られる見通しだ。

     

    民航局によれば、6機の空飛ぶクルマに観光目的の遊覧飛行だけが認められている。これでは、購入しても利用範囲が限定される。

     

    (6)「イーハンは、2024年に合計216機のeVTOLを顧客に納入した。だが、現時点でAOCを取得できたのは上述の6機だけであり、ほとんどの機体がテスト飛行の段階にとどまっている」 

     

    イーハンは、24年に合計216機のeVTOLを納入した。現時点で、AOCを取得できたのは6機だけである。操縦が難点になっているのであろう。前途遼遠である。

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    トランプ米大統領は、2期目の最初の外遊で中東を訪れ、人工知能(AI)を中心とした何兆ドルもの新規投資を呼び起こした。トランプ氏は、日本を相手にすれば、もっと大きな成功を収めるチャンスを得られる。こういう主張が、米国に現れた。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(6月13日付)は、「日本にあるトランプ氏の大チャンス」と題する寄稿を掲載した。筆者のマイク・ギャラガー氏は、『ウォール・ストリート・ジャーナル』(WSJ)の寄稿者で、ハドソン研究所の特別研究員である。

     

    日本は、太平洋地域において米国の支配力を支えている。世界有数の経済大国であり、年間生産は約4兆ドル(約580兆円)で、そのうち約27%が製造業によるものだ。日本企業は、ロボット工学から材料科学、半導体製造装置に至る重要産業で世界をリードしている。また日本は、米国の軍人を他のどの国よりも多く受け入れている。

     

    (1)「トランプ氏の大統領就任から100日間で、トランプ政権は在日米軍の地位を高め、日本の極超音速ミサイルプログラム向けの装備品売却を承認し、軍民両用船の共同建造について検討した。また、トランプ氏はミサイル防衛システム「ゴールデンドーム」に関する協力を示唆した。だが、貿易と投資はあつれきの目立つ分野となっている。筆者が先月東京を訪れた際、日本の政策面やビジネス分野のリーダーから、米政府の動向に関する困惑と動揺の声を聞いた」

     

    トランプ氏が、日本の産業技術力の実相を十分に認識していないから、相互関税という不条理なものを押しつけているのであろう。

     

    (2)「日本と米国にはもっと野心的な経済アジェンダが必要だ。今こそ、セクターごとの貿易赤字という狭い範囲のこだわりから脱却するときだ。米国は、中国共産党の経済的侵略から日米両国を守るための新たな制度を構築する必要がある。日米同盟が、既に中国の軍事的侵略から両国を守っているのと同じように」

     

    日米同盟が、「中国の軍事的侵略から両国を守っている」という指摘は正しい。

     

    (3)「経済侵略は、中国に何兆ドルもの貿易黒字をもたらした。しかも、それは増加している。これは抑制された内需、戦略的産業への補助金や驚くべき規模の知的財産の窃取に下支えされたものだ。日本と協力してこの侵略に立ち向かえば、貿易交渉の焦点は鉄鋼、大豆やスバルなどの自動車を巡る言い争いから、造船、半導体やソフトウエアの市場支配をどう奪回、ないし維持するかという、もっと生産性のある課題へと移るだろう。トランプ氏がこの道を選べば、日本政府内で意欲的なパートナーを見つけられるだろう。日本のリーダーたちは、少なくとも2019年以降、明日の産業に関して協力を推進してきた」

     

    日米が協力すれば、造船、半導体やソフトウエアなどの分野で大きな成果を上げられる。

     

    (4)「中国共産党に関する下院特別委員会での超党派による推薦を通じ、日本を投資規制「適用除外国」のホワイトリストに載せることから始めるべきだ。その後、ジョン・フェラン米海軍長官が描く造船分野での協力のビジョンに向けて行動を起こすべきだ。同長官が初の外国訪問先に日本を選んだのは、これが理由だった。このビジョンの実現のため、2024年に結んだ合意を延長すべきだ。米国と日本は、日本の造船所で米国の船舶を修理することと、合弁事業や供給契約を通じ、無人艇製造に関する防衛産業基盤を融合させることで合意していた」

     

    日本は、米国の投資規制「適用除外国」のホワイトリストに載せるべきとしている。つまり、日本の投資が米国の利益という認識で、投資規制から外すべきだ。そうなれば、日鉄・USスチール合併はスムースに行く。

     

    (5)「日米両国政府はそこから、経済連携に突き進むべきだ。こうした連携には関税に関する合意も含まれるが、それだけにとどまらない。このパートナーシップは、重要技術に関する関税面の連携や輸出管理、さらには、前駐日大使のラーム・エマニュエル氏が提案したような貿易版の集団防衛の枠組みを含むものになる可能性がある。この枠組みは、中国のレアアース輸出規制のような経済的圧力に対抗するためのものだ。日米の経済連携には、サプライチェーン(供給網)のデジタル認証基準を組み込む必要がある。これは、中国が自国への関税を回避したり、日米の重要インフラに脆弱な部分を設けたりするのを防ぐためのものだ」

     

    米国のサプライチェーンデジタル認証基準とは、供給網の安全性を確保するために、主に情報通信技術や製造業を対象にした基準やルールを設定するもの。日本もこれに組み込めば、同じ基準でスムースに運ぶという意味だ。まさに、日米経済の一体化である。

     

    (6)「さらに進んで日米の経済連携では、デジタル分野の支配的地位の基盤を確固たるものにするため、両国の補完的役割の強みを生かすべきだ。まずエネルギー分野で、米国の液化天然ガス(LNG)の対日輸出契約をまとめる必要がある。電池の輸入・生産、次世代の原子力技術に関する協力や、レアアースの代替サプライチェーンを構築するための共同作業も必要だ」

     

    米国は、日本に対して壁を取り払い、電池の輸入・生産、次世代の原子力技術に関する協力や、レアアースの代替サプライチェーンなど、幅広い協力体制を組むべきと提言している。

     

    (7)「(米国が)貿易と技術分野で、日本との協力に大きく踏み出すことは、自国の防衛に積極的に投資しているこの同盟国に恩恵をもたらす。そして日本は、(恐らく例外的存在として)米国から受け取るのと同等のものを米国に提供できる。日本との連携はまた、米国と他の諸国との貿易ディールの重要な基準になる。トランプ政権はそれを利用して、同盟諸国との関税面の戦術的対立を、中国が仕掛ける経済戦争に対抗するための戦略的協力関係に変えていくことができる。中国政府はそれに羨望のまなざしを向けるだろう」

     

    米国は、日米が技術的に対等であるとの前提で同盟関係強化が不可欠である。中国が、仕掛ける経済戦争に対抗するには、日米の共同サプライチェーン形成が必要である。

     

    次の記事もご参考に。

    メルマガ643号 「強くなった」日本、米国製造業支援 半導体・EV・ロボット・鉄鋼が先兵役(2月13日付)

     

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    韓国経済が、急速に精彩を失ってきた。家計負債の膨張、若者の雇用不安、超少子高齢化などの構造問題が、幾重にも積み重なっているからだ。決定的な弱点は、難問を難問と意識し内でやり過ごしていることであろう。この裏には、既得権益を絶対に手放さないという「業」が潜んでいる。繰り広げられる政争が、こうした業を増幅させ改革を忌避させている。

     

    『ハンギョレ新聞』(6月12日付)は、「韓国経済がマイナス成長する確率、10年前の3倍以上…『低成長の継続が原因』」と題する記事を掲載した。

     

    韓国経済が、四半期基準でマイナス成長する可能性が10年前の3倍以上になったとの分析が出た。潜在成長率を下回る低成長が続き、小さな経済ショックにも変動性が大きくなったためとみられる。

     

    (1)「韓国銀行が10日、ブログに公開した報告書によると、韓国経済のマイナス成長の発生頻度は、1990年代以降は減り続けたが、2020年代に入って再び高まった。年代別マイナス成長頻度は、1960年代の8回から1970年代には6回、1980年代には4回などと減り続け、2010年代はたった1回にとどまったが、2020年代に入ってからは再び増え5回となった」

     

    韓国は、2020年台へはいってマイナス成長へ落込む頻度が増えている。

     

    (2)「『年代別マイナス成長頻度』は、四半期の平均成長率が前四半期に比べてマイナスを記録した場合を5年間の発生回数に換算したもの。モデル分析の結果、韓国経済のマイナス成長の発生確率は、2014年の平均4.%から2024年には13.%に上がり、約3倍になったものと推定された」

     

    マイナス成長頻度は、四半期成長率を尺度にして計算している。マイナス成長の発生確率は、2014年の平均4.%から、2024年に13.%へと3倍にも増えている。韓国の分析結果は、日本経済にも当てはまる点で有益である。

     

    (3)「報告書によると、過去1960〜70年代には経済規模が小さく、産業構造も脆弱だったため、小さな衝撃にも景気が大幅に変動し、マイナス成長が頻繁に発生した。以後、1990〜2000年代には経済規模が大きくなるとともに、主力産業も多様化し、アジア通貨危機のような経済危機の時を除いてはマイナス成長がほとんど現れなかった。この期間には四半期の成長率が1%以上の高い水準を維持したため、景気変動性は傾向的に低くなった。2010年代に入ってからはたった1回(2017年第1四半期)だけマイナス成長を経験した」

     

    GDP成長率が右肩上がりのケースでは、多少の攪乱要因が出ても内部の成長力で吸収してきた。

     

    (4)「2020年代に入ってからは平均成長率が低くなるとともに、変動性が拡大し、マイナス成長の頻度が再び高くなった。新型コロナウイルス感染症の大流行のような経済危機の他にも、多様な内外の衝撃に影響を受け、現在まで5回のマイナス成長が発生した。この1年間でも、昨年の第2四半期(マイナス0.%)と今年の第1四半期(マイナス0.2%)の2度、マイナス成長を経験した」

     

    GDP成長率が右肩下がりのケースでは、経済に衝撃を受けるとマイナス成長へ落込むケースが増える。人間でも同じこと。若い時は躓いても転ばないが、高齢になれば転ぶケースが増える。

     

    (5)「韓国銀行が、主要先進国と新興国の事例を分析した結果、平均成長率が低いほどマイナス成長の頻度は高かった。ただし、四半期の成長率が0.5〜0.%(年率2%前後)以上を維持した場合には、マイナス成長の頻度は傾向的に上がらず、概して安定していた。一方、四半期の成長率が0.2〜0.%(年率1%前後)と大きく下がった場合、マイナス成長の頻度は傾向的に上がり、高い水準を示した。報告書は「一定水準以上の成長率は景気変動のショックを和らげる役割を果たすが、成長率が0%に近づくと中小規模の経済ショックにも変動性が高まるため」と説明した」

     

    四半期の成長率が、0.5〜0.%(年率2%前後)以上を維持した場合、マイナス成長の頻度は傾向的に上がらない。逆に、四半期の成長率が0.2〜0.%(年率1%前後)と大きく下がった場合、マイナス成長の頻度は傾向的に上がる。これは、日本経済にも当てはまる。

     

    (6)「2000年以降の主要先進国を分析した結果、対外依存度が高いほど成長率の変動性が大きく、マイナス成長の頻度も高くなることが分かった。輸出入の割合が高い場合、対外的なショックが発生した際、貿易ルートなどを通じて景気の振幅がさらに大きくなるためだと分析された。報告書は、「最近、韓国のマイナス成長の頻度が増加したのは、景気的要因と共に、成長潜在力の低下と対外的なショックに脆弱な構造的要因がかなり影響を及ぼした」と診断した。韓国の潜在成長率は、2000年代初めの5%から最近は2%を若干下回る水準に落ち、対外依存度は2015年の75%から2021年以降は83%へと上がった」

     

    成長潜在力の低下と貿易依存度の高い経済ほど、対外的なショックに弱くなる。ドイツと韓国の経済は、いずれも貿易依存が高いので、マイナス成長率に落込むリスクが高まる。こういう分析結果からみると、韓国経済は明らかに警戒ゾーンへ入った。

     

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