政府は、全国を10地域に分けて、地域ごとの技術資源を生かした産業計画を行う。これまでの総花的計画から脱して地域に根ざした産業育成を目指す。過去の日本にない大胆な試みで、地域を競わせて目標を達成する狙いであろう。高度成長経済をリードした「国民所得倍増計画」は、マクロ経済の視点から日本経済をリードした。今回の地域ごとの技術資源を生かした産業計画は、ミクロ経済の視点から日本経済の建直しを図る意味であり、全国を下から押し上げる方式となる。
日本は、従来から地域を分けて競わせると極めて効率的な成果を上げることで知られている。江戸城でも各地の大名に工事範囲を決めて築城したという前例もあるように、全国10地域がそれぞれの技術を生かして成果を上げるというシステムを採用する。一種の産業オリンピックのような色彩も帯びており、日本人特有の「地域対抗」という意識も加わって多彩な産業計画が推進されるであろう。
『日本経済新聞』(5月14日付)は、「地域別に重点産業指定 政府、全国10ブロックで計画 近畿は空飛ぶクルマ」と題する記事を掲載した。
政府は地域ごとに成長分野の企業を集積するための計画を策定する。近畿を次世代移動手段である「空飛ぶクルマ」の実用化拠点に指定するなど全国を10ブロックに分ける。関連する企業や研究機関、自治体などを集めて投資を促し、地域経済の活性化を目指す。
(1)「高市早苗政権は地方経済の活性化に向けた「地域未来戦略」を6月にも策定する。近隣の都道府県単位での産業集積計画が柱となる。黄川田仁志地方創生相が近く戦略策定に関する会合で首相に計画の素案を報告する。重点投資対象と位置づける人工知能(AI)や半導体など「戦略17分野」に含まれる製品や技術について地域ごとの担当を決める。インフラ整備支援や地域限定の規制改革などに取り組む。海外と比べて遅れている新興技術などへの投資を後押しする」
各地域では、大学が技術センターの役割を果すであろう。将来、大学整理案が取り沙汰され始めているが、地域経済発展のニーズにそった新たな発展策が織り込まれるようになろう。これによって、これまでの東京一極集中は姿を変える。地域経済が新技術に裏付けられた発展コースを歩めば、新たな雇用も生まれて人材流出を抑えられるに違いない。
(2)「地域別の指定分野は既存の産業構造や企業の投資状況を踏まえて決める。近畿の重点産業を空飛ぶクルマに代表される「空モビリティ」関連とするのは離着陸場などの整備が他地域よりも進んでいるためだ。2025年の大阪・関西万博で空飛ぶクルマの試験飛行を実施し、大阪市高速電気軌道(大阪メトロ)が離着陸場を設置した経緯がある。充電設備などのインフラ整備を進め、既存の空港・飛行場を活用するための規制緩和なども検討する。空飛ぶクルマは政府が成長戦略として重点的に支援する17分野61製品・技術の1つだ。空飛ぶクルマは、40年ごろに1500億円の市場獲得を目標としている。海外も開発段階で、日本が実用化で先行すれば世界市場での競争力確保につながるとの期待がある」
近畿の重点産業の一つとして、「空飛ぶクルマ」が取り上げられている。総花的な産業支援に代わって、地域ごとの勝ち筋の明確化、国家主導のクラスター形成、目標必達型の産業戦略を明らかにすることになる。日本の産業地図が、地域の視点から再設計されるという意味で、戦後最大級の産業政策転換と言える。
(3)「最先端半導体の量産を目指すラピダスが立地する北海道や、台湾積体電路製造(TSMC)が進出した九州などは半導体を基幹産業に指定した。半導体の部素材や製造装置のメーカーが多い北陸は富山・石川・福井の3県の広域連携を促す。関東は、千葉県の成田空港を中心とする航空産業の振興を掲げる。デジタルトランスフォーメーション(DX)支援により航空機の保守・修理・整備にかかわる企業を育成する。航空機の整備需要は国際的に増えており、成長性が高いとされる」
リーディングインダストリーとして、半導体が挙げられている。北海道、九州、北陸などが適地とされている。関東は、成田空港を中心とする航空産業の振興である。
(4)「中国や四国は造船業への重点支援を見込む。愛媛は国内最大手の今治造船を筆頭に既存の産業集積がある。35年に建造量を24年比で1800万総トンにほぼ倍増させる目標の達成をめざす。AIを活用した生産性の向上支援などの政策を詰める」
中国や四国は、造船業への重点支援を行う。35年の建造量は、24年比で1800万総トンにほぼ倍増を目指す。
(5)「高市政権は地域未来戦略を成長投資の中核に据える。首相は、25年末の地域未来戦略本部で「世界をリードする成長分野のクラスター、地域発のクラスターを全国各地に形成して、地方から日本を成長軌道に押し上げていく」と強調した。企業、大学、自治体などの人材や投資が集まることで産業が発展するとみる。地方創生と成長戦略を連動させ、地方の経済成長や雇用の創出効果を狙う。計画は(1)都道府県域をまたぐ「戦略産業」(2)都道府県単位の「地域産業」(3)市区町村を中心とした「地場産業」――の3類型別につくる」
大学単独の再建は困難である。人材育成や技術開発の基点として、大学を守り立てなければならない。これは、地域経済が再興しない限り不可能である。





