中国の広い範囲で猛暑が続いている。暑さの走りは、5月から始まっていた。7月5日には、北京市では南部郊外の最高気温が摂氏41.8度に達しており、7月上旬としては1951年に観測して以来の59年ぶりの記録と言われている。
実はこの暑さは序の口、中国の中枢部である華北平原は2070年以降、人間が住めなくなるほどの暑さになるという恐ろしい研究発表が登場した。華北平原といえば、北京市、天津市、河北省、山西省、内モンゴル自治区がはいる。
『ニューズウィーク・電子版』(8月2日付)は、「中国・華北平原は2070年以降、熱波で居住できなくなる、との研究結果」と題する記事を掲載した。筆者は、松岡由希子氏。
(1)「米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは、2018年7月31日、科学オンラインジャーナルにおいて、『中国の華北高原が、気候変動と集中灌漑によって、生命に危険を及ぼすほどの猛暑に脅かされている』との研究論文を公開した。この研究チームでは、2017年8月には、インドやパキスタン、バングラデシュといった南アジア地域でも数十年以内に厳しい猛暑が始まるとの予測を示していた」
(2)「華北平原で予測されている猛暑は、極めて過酷なものが予想される。北緯34度41度までの約40万平方キロメートルに広がる華北平原は、中国最大の沖積平野で、人口およそ4億人を擁する人口密度の高い地域であるとともに、灌漑農業が盛んなエリアでもある。とりわけ、集中灌漑は、温度と湿度を上昇させ、より厳しい熱波をもたらすことがあるという。ペルシャ湾岸や南アジアよりもリスクの高いものだと警告している」
華北平原は、世界的な水資源不足に悩んでおり、地下水を利用した灌漑事業を行なってきた。これが温度と湿度を上昇させてより厳しい熱波をもたらすという。
(3)「研究チームは、これまでのペルシャ湾岸地域や南アジアを対象とした研究と同様、暑い天候下での生存可能性を評価する指標として、気温と湿度を複合した『湿球温度』を採用。その結果、『湿球温度が摂氏35度(華氏95度)に達すると、健康な人間でさえ屋外で6時間以上生存することは困難』とされている。華北平原は、気候変動が灌漑という人為的影響にさらなる作用をもたらし猛暑のリスクを高める。温室効果ガスの排出量が大幅に削減されないかぎり、2070年から2100年までの間に、湿球温度35度以上の猛暑に見舞われる可能性があることがわかった」
華北平原は、気候変動が灌漑という人為的影響にさらなる作用をもたらし猛暑のリスクを高める。そこで、このリスクを避けるには、温室効果ガスの排出量が大幅に削減される必要がある。それがないかぎり、2070年から2100年までの間に、湿球温度35度以上の猛暑に見舞われる可能性がある。つまり、人間が住めなくなるのだ。
この科学的な予測をどう受け止めるかかである。中国は、温室効果ガスの最大排出国であることから言えば、経済成長率などを問題にする以前に、物理的な「中国生存」という切羽詰まったところへ追い込まれてきた。中国の「米国覇権挑戦論」などということは寝言に聞える。