フィリピン国民は、中国への反感が根強い。南シナ海のフィリピン所有の島嶼が占領され、軍事基地化されているからだ。その上、常設仲裁裁判所で中国の主張は完全否定されたが、なお居座っている不満は、いつでも表面化する危険性を持っている。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2月21日付)は、「ファーウェイ製品、フィリピンでも懸念の的」と題する記事を掲載した。
(1)「中国の華為技術(ファーウェイ)に対する米国の圧力がフィリピンにも及びつつある。フィリピンではファーウェイ製品を使った4億ドル(約443億円)の監視カメラ導入計画に議員が抵抗している。「セーフ・フィリピン(安全なフィリピン)」と呼ばれるその計画は、首都マニラとロドリゴ・ドゥテルテ大統領の出身地ダバオに1万2000台の閉回路テレビ(CCTV)カメラを設置するもの。中国の習近平国家主席が、昨年11月にフィリピンを訪問した際に調印された。顔認証技術を使用して警察による犯罪対応の迅速化、証拠収集、容疑者の特定を支援することが目的だ」
中国は、これまでフィリピンへの支援を約束しながら、目立ったことをせず放置していた。それが、ファーウェイ製品を使った4億ドル(約443億円)の監視カメラ導入で腰を上げた裏には、何かの意図が隠されていると見るべきであろう。従来の援助計画にはなかったものだ。中国が、監視カメラを通して、北京からフィリピンを監視する懸念は十分にある。
(2)「フィリピンの反対派議員は中国政府によるスパイ活動を懸念、今月初旬に成立した年間予算に条項を盛り込み計画への歳出を阻止した。上院には国家安全保障上のリスクの観点から計画について調査を求める決議案が提出された。決議案を起草したラルフ・レクト上院議員は、フィリピンは中国とは以前から南シナ海で領有権を争っており、議員の不安は大きいと話す。レクト氏は「スパイ行為やデータの安全に関して世界中で中国の技術に懸念が持たれている」と指摘、「監視システムが本当に必要なら中国抜きでできないのか」と述べた」
フィリピンが、中国と南シナ海で領有権を争っている関係にあることを忘れたような話である。国会議員の不安が大きいのは当然だ。国会が、この監視カメラへの予算支出を否決したのは、国民の不安を反映した結果であろう。
(3)「今回の計画では資金の大半は中国からの融資で賄われることになっているが、フィリピンは2割に相当する約8000万ドルを負担しなければならない。フィリピン議会はこの負担分の承認を保留した。関係者によると、ドゥテルテ大統領が拒否権を行使することが計画を進める唯一の方法だという。こうした背景には、米国がファーウェイと同社社員が中国政府にスパイ活動を強要されている可能性があるとして、欧米各国に同社製品の使用中止を呼びかけていることがある」
監視カメラ予算(約8000万ドル負担)は、議会で拒否された。後は、ドゥテルテ大統領が拒否権を行使すれば、予定通り計画が進められる。大統領としても苦しい立場に追い込まれた。国民の抱く中国へ不安を踏みにじる訳にもいかないからだ。長年の紛争地帯だった南部ミンダナオ島に、2022年設立予定のイスラム自治政府の領域が最終的に確定した。こうなると、社会的騒乱の種がなくなる。それだけに、選りに選って中国製の監視カメラを導入する意味が、ますますなくなるはずだ。





