日本は現在、米国、EU(欧州連合)、英国、カナダ、スイスの五ヶ国と通貨スワップ協定を結んでいる。中国は、この中に入れないだけに日本と通貨スワップ協定を結ぶ意義は極めて大きい。韓国も、秘かに日本との通貨スワップ協定を希望している。メンツゆえか、自らは言い出せないというジレンマを抱えている。
『ロイター』(8月31日付)は、「日中が多国間貿易維持で合意、金融協力、速やかにと麻生財務相」と題する記事を掲載した。
(1)「日中両政府は31日の財務対話で、多国間貿易体制を維持することで合意した。日本円と人民元の通貨スワップを柱とする金融協力についても議論し、麻生太郎財務相は会合後、記者団に「(合意に向けた)作業を速やかに進める」と表明した。日中財務対話を開催したのは昨年5月以来1年3カ月ぶりである」
人民元相場は、いつ売り込まれてもおかしくない状況にある。それだけに、日中通貨スワップ協定が結ばれれば、中国にとってこれ以上ない援軍となる。中国は、米国との通貨スワップ協定は不可能ゆえに、日本へ依頼せざるを得ない事情にある。この日本に対して、再び「悪口雑言」を言えない立場に追い込まれた。それでも、不条理な日本批判をすれば、通貨スワップ協定の期限延長を断るだけである。
(2)「会談では、マクロ経済政策など幅広い分野で意見を交換。自由で開かれたルールに基づく多国間の貿易体制を維持、推進することで合意した。麻生財務相は会談後、『保護主義的な措置による内向きな政策は、どの国の利益にもならない』との認識をあらためて示した。麻生氏はまた『最近の日中関係の改善の流れの中で、きわめて良い雰囲気の中で対話が行われた』と述べた。スワップ協定では3兆円規模での再開で調整を続け、安倍晋三首相の訪中時にも最終合意にこぎ着けたい考え。麻生財務相は『スワップなどいろいろな話が出た。きちんと発表できるようなものにしていきたい」』と記者団に語った」
麻生氏が、「最近の日中関係の改善の流れの中で、きわめて良い雰囲気の中で対話が行われた」と発言するように、中国は低姿勢であったのだろう。日本に通貨スワップ協定を依頼する立場だから当然のこと。頭の高い中国が、日本に対しては今後、傲慢な態度をとれなくなるはずだ。