勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    習近平氏はなぜか、鄧小平に対抗している。鄧小平の息子も孫も、習近平批判と伝えられている。習氏が、露骨に鄧小平の業績を過小評価する動きをしていることが理由だろう。正直に言って、習氏が鄧小平の業績を上回っていると思えない。逆であろう。現に、中国経済の苦境がそれを証明している。

     

    深圳にある鄧小平博物館では、鄧小平の業績展示物を博物館の奥へ移動させ、習氏の業績を博物館入り口付近に麗々しく展示させてあるという。ここまで、対抗する必要はないと思うのだが、独裁者の感覚は庶民とは異なるのだろう。

     

    鄧小平は、改革開放路線の指導者である。市場経済化を進めようと旗を振った。習近平氏はそれをストップさせ、統制経済と国有企業中心の経済構造に逆戻りさせた張本人である。今、鄧小平vs習近平の第一次評価が出てきた。習氏の歴史的な敗北である。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(1月21日付)は、「中国経済減速の真の理由」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「今年の世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)が始まった。2年前の会議では、中国の習近平国家主席が演壇に立ち、自らをグローバル化の擁護者と位置づけた。習氏は、中国が経済を開放することにより、自国と世界がいかに豊かになったかという事例を多くあげて語った。確かに、中国の開放で中国も世界も豊かになった。だが翌年、習氏は国家主席の任期の制限を撤廃し、毛沢東時代に逆戻りした。中国は推進してきた改革を逆転させはじめた。生産性が低く、巨大な国有企業をさらに成長させるべく競争を抑制し、既に減速しつつあった中国経済をさらに悪化させていった

     

    習氏は、国有企業優先主義者である。「大きいモノは良いことだ」という典型的な中華主義者だ。小さいモノが、効率的に動き生産性を上げるという認識がゼロである。中国経済の昨今の低生産性の背景には、国有企業重視の間違った戦略がある。

     

    「中国経済界の良心」と呼ばれる経済学者の呉敬璉氏はこのほど、中国の「国家資本主義」について警告した。呉氏は、中国当局の市場干渉で、中国経済に対する国民や投資家の意識が冷え込むとした。また、中国の国家資本主義は旧ソ連の計画経済と同様に、失敗に終わるだろうと呉氏は指摘した。『大紀元』(1月23日付)が伝えている。

     

    (2)「中国政府は、最近の経済減速に対処するために、融資でその場をしのぐという昔ながらの手法に頼った。大企業には国有銀行から巨額の融資をし、そのために生産性が比較的高い民間企業の借り入れ余地はなくなっていった。米モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメントのルチル・シャルマ氏によると、現在の中国では1ドルの成長を遂げるには3ドルの債務が必要だという。習氏はまた、グローバル化や多国間主義を軸とする新たな計画を推進するどころか、国家による市場の統制を強め、米クアルコム、米アップルから米ビザ、米マスターカードに至るまで、数々の企業が中国で事業展開するのを難しくしてきた」

     

    習氏は、胡錦濤政権まで踏襲された経済政策を首相の専管事項とする流れを変えてしまった。彼が経済政策まで取り仕切っている。それ故、経済低迷の責任はすべて習氏にある。自らの政権基盤を固めることが最大目的である。だから、何が何でもGDPを押上げさせてきた。その結末が、現在の過剰債務経済である。

     

    (3)「中国の指導者らは、中国経済の減速は自然なものであり、内需主導の新たな経済への移行という歓迎すべき状況を示していると主張する。だが、今の減速は指令と統制による経済に戻ってしまった結果だと指摘する人も実に多くいる。米ワシントンに拠点を置くピーターソン国際経済研究所のニコラス・ラーディー氏は、中国の生産性の伸びは2008年の金融危機以降、重荷が増した国有企業が足を引っ張っているために大幅に鈍化しているという。成長を回復するために必要なのは、国家統制の緩和であって強化ではない。今日、中国への資本流入も、中国の成長も縮小している。減速の一因は米中貿易戦争だ。だが、米経済の問題の原因が米国内にあるのと同様、中国の問題の根も国内にある」

     

    習氏は、国有企業優先主義を貫いている。これが、生産性を押し下げた原因である。こうして、中国経済の潜在成長率低下が現実問題として意識され、中国への資本流入を減らしている。昨年7~9月期は直接投資による純流入額は252億ドルで、同4~6月期の527億ドルから見て半減している。これは、中国の市場としての魅力が減ってきたことの証明だ。習氏は、自らの権力に14億の民の生活がかかっていることを忘れてはならない。

     

    本日発売の「メルマガ24号」で、「習近平が招いた国難、バブル崩壊で経済基盤ガタガタ回復力なし」を特集しました。こちらもどうぞ、

     


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    カナダ当局が昨年12月1日に逮捕した中国・華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟(メン・ワンツォウ)副会長は目下保釈中である。米司法省は22日、カナダ側に身柄の引き渡しを求める方針を明らかにした。

     

    保釈中の孟氏は、どのような生活を送っているかを紹介したい。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(1月21日付)は、「ファーウェイの戦い、矢面に立つ創業者の娘」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「孟氏の逮捕によって、ファーウェイは世界中の主要金融機関との関係を築いてきたキーパーソンだった人物を失った。同氏はファーウェイの行動の秘密めいたベールをはがし、同社の透明性、独立性を世界に示す上で、重要な役割を果たしてきた。孟氏は、マダガスカルからミャンマーにいたるまで、ファーウェイが急速に事業を拡大した各地を日常的に訪問していた。バンクーバーで逮捕された際も、メキシコ、コスタリカ、アルゼンチン、フランスを回り、中国へ戻る予定となっていた出張の途中だった。しかし同氏は、米国へ立ち寄ることは避けた。米検察当局によれば、それは同氏が2017年に捜査について知ったからだという

     

    逮捕された孟氏は、2017年から子どもが留学している米国へ立ち寄らなかった。米国で、自らへの捜査が進んでいることを知っていたからとされる。米国が孟氏の身柄を要求しているのは、ファーウェイと中国政府の関係を徹底的に洗い出す意思と見られている。

     

    (2)「裁判所に提出された複数の性格証人の証言に関する文書によれば、孟氏は堅実、誠実、真面目で、愛情深く思いやりのある母、仕事に熱心に打ち込む企業人とされる。裁判所に提出された家族写真は夫、子供たちと撮影されたものだが、その多くで孟氏は髪を後ろに束ね、トレーニングウエア姿で納まっている。孟氏は保釈後の数週間、(夫の)劉氏とともにほとんどバンクーバーの自宅から外出することはない。自宅は丸く刈り込まれた常緑樹と葉の落ちた低木に囲まれている。保釈に関する聴聞会の際、孟氏の弁護士は同氏から裁判所あてのメッセージを明らかにしたが、それによれば、(米国への)引き渡しまでに長期間かかる場合、ブリティッシュコロンビア大学の大学院ソウダー・ビジネス・スクールの博士課程で学ぶことを申請するという

     

    カナダでは、孟氏が米国への身柄送致に異議を申し立てれば、数年間は現状のままとされる。孟氏は、それを前提にしてカナダのブリティッシュコロンビア大学大学院の博士課程で学びたいとしている。

     

    (3)「孟氏は、『私は25年にわたり懸命に仕事をしてきた。もし釈放されるのであれば、私の目標は夫と娘といることだ』と述べ、『ここ何年も1冊の小説も読んでいない』と付け加えた」

     

    孟氏は、ファーウェイの創業者任氏の娘だが、父親とは名字が異なっている。これは両親の離婚の際、父親への抗議の印として母親の名字に変った結果という。16歳の時だ。父親への反抗と、父親に認められたい。そういう子どもとして複雑な心境であったのだろう。だから、自分の時間のすべてをビジネスに賭けてきた。小説の一冊も読まないで。いま半分は、囚れの身である。勉学生活によって、過去の失った自分の時間を取り戻したいのであろう。

     

    『ロイター』(1月23日付)は、「ファーウェイCFOの身柄要求、次に何が起きるか」と題する記事を掲載した。

     

    (4)「46歳の孟氏は、今後の公判日程を決めるため、2月6日にバンクーバーの裁判所に出廷する予定だ。カナダ当局が身柄引き渡しの手続きを進めれば、中国との関係が一段と悪化するのは確実とみられる。中国は同CFOの逮捕後、カナダ人2人を拘束。麻薬の密輸で有罪判決を受けていたカナダ人には死刑を宣告した」

     

    ファーウェイ副会長の逮捕は、カナダと中国の政治問題となっている。中国は、カナダへ報復をしており、釈放に向けて圧力をかけている。

     

    (5)「カナダが容疑者の身柄引き渡し協定を結んでいる国からの仮令状の提出によって、手続きが始まる。請求国は最初の逮捕から60日以内に正式な請求を行う。法相は請求の受け取りから30日以内に手続き開始の是非を判断する。法相は手続きの開始を認める見通しで、その後はブリティッシュコロンビア州最高裁判所が孟氏の身柄の引き渡しを審理する。州最高裁の審理には数週間から数カ月かかる。裁判官は、証拠が有罪とするのに十分であるかなど、一応の基準を満たしているかを判断することになる」

     

    逮捕は、昨年12月1日である。これから起算して60日以内とすれば、米国は2月1日までに身柄引き渡しを求められる。カナダ側は、この米国の請求を認めて州最高裁での審理に入る。その期間は、数週間から数カ月かかる場合もあるという。

     

    (6)「裁判官が米国の証拠は十分だと判断すれば、法相に身柄の引き渡しを勧告。法相が引き渡しを命令する。孟氏は、裁判所の引き渡し勧告や法相の引き渡し命令に不服を申し立てることができるが、裁判が何年にも及ぶ可能性があると弁護士はロイターに語った」

     

    カナダ州最高裁が身柄引き渡しを認めても、孟氏が不服として申し立てれば、裁判に何年もかかる可能性もあるという。長期化するケースだ。

     


    テイカカズラ
       


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    けさ、下記の目次で発行(有料)しました。よろしくお願い申し上げます。

     

    習近平4つの大罪を問う

    国有企業優先の落し穴は

    民営企業軽視と出生率低下

    世界の安全を脅かす存在

    共産党が直面する重大危機

     

     

    中国は今年、建国70周年を迎えます。本来なら、輝かしい経済成長の成果を大いに誇り、中国式社会主義を世界に広める契機としたかったはずです。現実は、真逆の状況に追い込まれています。不動産バブル崩壊が信用機構に甚大な影響を与えています。国有大銀行を除けば、不良債権によって資本を毀損し、預金不足から新規融資もままならないという瀕死の重傷を負っています。

     

    日本が平成バブル崩壊で、「失われた20年」と揶揄された同じ道を歩まざるを得なくなっています。中国政府は、過剰貸出しでGDPを無理矢理押上げてきました。その結果、膨大な不良債権が発生しています。中国の情報隠蔽政策で、不良債権の金額は掴めません。それが一層、中国経済に底なしの不安を与えています。臭いものには蓋をする。この中国の秘密主義が問題を深刻にさせています。

     

    習近平4つの大罪を問う

    1978年12月に始った改革開放政策は昨年、40年になりました。この間の平均経済成長率は9.5%です。これが、均衡ある経済政策による成果であれば、歴史的快挙です。実は、次に列挙するような負の現象を伴っていたのです。

     

    1大気・水・土壌の環境崩壊。

    2一人っ子政策による産児制限で、女性の職場進出を促進し労働力化して、GDPを押上げた。

    3習近平政権の登場(2012年)後、民営企業を圧迫し国有企業優先策に転換した。

    4過剰融資が過剰生産を招き、巨額の不良債権を生み出した。これが、信用機構を危機的状態に追い込んでいる。

     

    以上の4点は、一時的効果でGDPを引上げました。問題は、これらの「カード」が今後はすべて裏返しになるのです。中国経済の負担になって覆い被ってくることに最大の注意を払わざるを得ません。私は、これらの巨大圧力に、中国経済が耐えられるか疑問視しています。バブル崩壊後の重圧は、日本経済が経験済みであり、長い間にわたり苦闘したからです。

     

    中国経済は、急速に足腰が弱まっています。民営企業が国有企業優先の煽りを受けているからです。習氏は国家主席就任後に、改革開放路線の主役であった民営企業を脇役に追いやり、国有企業優先策を打ち出しました。この背景には、習氏が市場メカニズムに違和感を持っていたことです。習氏は、国有企業こそ中国経済の骨格になるべきである。こういう個人的信念で、計画経済を前面に出して市場経済を軽視しました。ここで整理すると、次のようになります。

     

    民営企業重視(民進国退)→市場機構重視→改革開放路線

    国有企業優先(国進民退)→計画経済重視→国有企業救済合併

     

    習近平氏は、なぜ鄧小平以来の改革開放路線を中断させたのでしょうか。習氏は、「紅二代」と言われるように、革命を推進した元老たちの二代目になります。同じ「紅二代」が、改革開放路線により国有企業に持っている権益基盤の弱体化に直面しました。その危機感を習氏に訴え、習氏は彼らの支持を得る必要から国有企業優先路線に戻したのです。

     

    このご都合主義が、中国経済を破綻させる大きな役割を演じたのです。習氏にとっては、自らの権力基盤を強固にする上で、高目の経済成長が不可避です。その手っ取り早い手段は、無駄でもインフラ投資を強行することでした。その投資資金は、財政支出でなく国有企業の負担で資金調達させました。一見、財政赤字は増えません。だが、国有企業の債務は最終的に、政府債務へ分類されます。頭隠して尻尾隠さずという類いの話でした。

     

    従来通りの民進国退で、民営企業重視の経済政策であれば、民営企業に資金負担させてインフラ投資を行えません。民営企業は破産します。この経済原則が歯止めになって、過剰な投資をチェックできたはずでした。結果は逆で、ブレーキを欠いた自動車のごとく、習氏は国有企業を隠れ蓑にしてインフラ投資を行なってきたのです。(つづく)

     


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    人民大学国際通貨研究所副所長の向松祚教授は120日、上海市で行われた経済フォーラムで、2019年に「ミンスキー・モーメント」(すべての資産価格が急落する時)の到来に警戒せよと警告を発した。昨年12月、中国はマイナス成長の危機を抱えていると強調して注目された。こういう大胆発言が、中国で許されているのは、習氏による取締能力が低下していることを裏付けている。悲観論に同調する向きが多いという意味である。

     

    もう一つ、講演中に経済改革派であった元首相・朱鎔基氏の息子の名前が出てくる。これは、向松祚教授が朱鎔基グループの「庇護」にあることを示唆しており、朱・元首相の手前、言論弾圧ができない理由と見られる。中国は、人縁国である。元権力者につながる人物には、公安部といえども手を出せないに違いない。

     


    『大紀元』(1月23日付)は、「中国著名な経済学者、最新講演でミンスキー・モーメントに言及」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国著名のマクロ経済学者であり、人民大学国際通貨研究所副所長の向松祚教授は120日、中国上海市で行われた経済フォーラムで、2019年にミンスキー・モーメント(すべての資産価格が急落する時)の到来に警戒せよと警告を発した。向教授によると、景気の冷え込みを招いた原因は4つあると指摘した」

     

    不動産価格の下落は、政府の命令で安値売却を禁じられているので、表面的には安定している。だが、こういう実態無視の命令効果はいつまで保つか疑問である。

     

    (2)「1つ目は、中国当局が金融リスクを低下させるためのデレバレッジ(債務削減)政策で企業が資金難に陥ったこと」

     

    急な債務削減命令が、逆に企業の資金繰りを悪化させている。そういう矛楯に気付かないのだろう。債務削減は、時間をかけて実行するもの。短兵急には行えない。

     

    (3)「2つ目は、中国企業の収益が少ない。向教授は、中国企業が保有する巨額な負債によって収益が減少していると分析。『過去10数年、中国企業は凄まじい勢いで(事業)拡張してきた。企業の資産も負債も同時に拡大している。しかし、企業が持つ技術や収益、自己資金などで拡張したわけではない。銀行から借りてきた資金で、社債で、シャドーバンキングで拡張した』向教授によると、朱鎔基・元首相の息子で、中国大手投資銀行の中国国際金融(CICC)最高経営責任者(CEO)を務めた朱雲来氏はこれまで複数回、中国債務の総規模が600兆元(約9466兆円)を上回ったと警告し、『債務拡大による経済成長モデルは持続不可能だ』と強調した」

     

    中国政府の最大の失策は、過剰債務隠しに夢中だったことだ。債務の資本化とか債務を社債に置換えるとか、枝葉末節なことに努力する情けないことをやってきた。不動産バブルを放置して、GDP押上げに利用した習氏が一番、責任を負う立場だ。

     

    (4)「また、向教授は自身の体験を紹介した。『江蘇省のある銀行の幹部から、中国全国第1、あるいは第2の省内総生産を誇る江蘇省では、収益が10億元(約161億円)以上の企業は1社か2社しかないと聞かされて驚いた。中国株式市場に上場する企業のなかにも、収益が10億元以上の企業数も限られている』。教授は上場企業の収益が低いため、中国株式市場の不調が続くと予測する」

     

    企業収益が極端に悪化している。この現実を認めるべきだろう。

     

    (5)「3つ目は、向教授は中国当局の私有制と民営企業を排除する姿勢により、民営企業経営者の心理が強く打撃を受けたことにあると示し、『2018年景気が悪化した最大の要因だ』と話した。教授は昨年12月の講演でも指摘した」

     

    国進民退で民営企業を軽視した報いを受けている。企業家が自信を失っているのだ。バブル崩壊による打撃の上に、国家が必要としないごとき発言をした影響は今後、長く尾を引きそうだ。

     

    (6)「4つ目は、米中貿易戦である。これは、『唯一の外部要因だ』」。

     

    向教授の主張によれば、1~3までの国内における理由(バブル崩壊)で、中国経済は打撃を受けている。これに、米中貿易戦争という外部要因が加わったのだ。逃げ場がない。

     

     


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    韓国国内は、今回のレーダー照射問題で韓国が勝ったと見ている節がある。日本の協議打切りが、日本にとって不利と判断したと一方的に思っているからだ。「反日」とは恐ろしいものである。問題の本質を冷静に判断させる機会を奪っている。

     

    ひとまず、日韓の応酬は終わった。今回の問題が引き起こした「韓国イメージ」は、大きく傷ついたはずだ。例の劇画風のBGMをつけたビデオをつくって、自らの噓を隠して日本を非難した積もりだが、専門家の目を騙すことはできない。最大の失策は、米国の信頼を失ったということにつきる。誤りを誤りとして認めず、相手を非難して糊塗する。典型的な韓国社会の流儀を世界に披露した。

     

    『中央日報』(1月23日付)は、「哨戒機問題、国内の世論がすべてではない」と題するコラムを掲載した。筆者は、チェ・ビョンゴン/国際外交安保チーム長である。

     

    (1)「戦闘で勝利したからといって戦争で必ず勝利するのではない。戦闘で勝っても戦争では負けることが少なくない。現在、韓日間で生じている、いわゆる哨戒機問題がそうだ。しかし国内で世論の支持を受けて国内の戦闘で勝つとしても問題は解決しない。日本は韓国の世論を相手にするのではないからだ。日本が攻撃的、公開的、執拗に出たのは国際社会と米国に向けてだ」

     

    韓国は、レーダー照射問題で勝ったという世論が多数のようである。「反日罪」まである国である。反日は、国是にしているような国家だ。今回の問題の裏には、文政権になってから、日韓関係の枠組みがすべて壊されてしまったという事情がある。これを忘れて、議論しては片手落ちだ。

     

    (2)「安倍政権は在韓米軍の縮小や撤収まで念頭に置いた中長期戦略を立てている可能性がある。トランプ政権は非核化交渉を進める見返りに韓米連合訓練を中断した。北朝鮮が「北朝鮮非核化」の見返りとして要求する「韓半島(朝鮮半島)非核化」には、外交的・軍事的・経済的体制保障がすべて含まれている。外交的体制保障が米朝国交正常化なら、経済的体制保障は対北朝鮮制裁解除だ。軍事的体制保障は在韓米軍の役割の中断だ。ところが米国の立場では在韓米軍に代わる保険はすでに準備している。玄海灘の向こうに在日米軍がある。安倍政権が韓国軍との葛藤を執拗に提起できた自信は、在韓米軍はなく在日米軍はある未来を眺めたからではないだろうか」

    さすがは、筆者の見方は鋭いと思う。日米は、米朝合意後の朝鮮半島の安保体制を視野に入れていると指摘する。在韓米軍の役割が縮小されれば、在日米軍の機能が強化される。米軍は、韓国よりも日本との関係をより深くする方向に動くと見ているからだ。その通りと思う。韓国世論は、この深い意味が分らずに騒いでいる。


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    (3)「(韓国)国内の世論を動かして日本を叩けば痛快だ。しかしこれがすべてではない。日本は韓国の世論に臆するような国でないうえ、日本の世論も韓国叩きで結集した。何よりも本当の戦いは韓国の外側で起きている。北東アジアの安保で日本の地位が高まっていて、この過程で日本が韓国を相手に『真実ゲーム』に出たと見なければいけない。(韓国は)日本との口論に没頭すれば『井の中の蛙』式の認識だ。もっと重要なことは、急変する北東アジア安保で韓国の地位を守ることだ。米国であれ日本であれ北東アジアで韓国は欠かせないと思わせることが、こうした真実ゲーム攻勢を防ぐ根本的な解決法となる」

    日本は、北東アジアの安保体制で韓国の役割を無視していると指摘している。日本の安保体制において、韓国のランクは5番目に落ちているからだ。米国、豪州、印度、東南アジア、そして韓国である。過去は2番目にランクされていたから「急落」した。韓国は、すでに日本から見捨てられた位置にある。驕り高ぶっていると、足下を掬われる大きなリスクを抱えていることに気付くべきだろう。


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