勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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     韓国の文政権は、巧妙に支持基盤の利益を擁護している。最低賃金の大幅引上げは、労働団体向けの利益還元である。脱原子力政策は、市民団体の再生エネルギー運動を支援する目的である。

     

    最低賃金の大幅引上げは、所得主導成長論というオブラートに包んで行なわれ、韓国経済に瀕死の重傷を負わせている。一見、底辺で働く人々の賃金を引き上げれば、購買力が増強されて経済が好循環を描くと考えられる。その通りだが、そのためには、生産性向上をともなわなければ、絵に描いた餅になる。現実は、その危惧通りになって、「雇用破壊」をもたらしている。

     

    再生エネルギーは、原子力発電に比べれば無害という点で理想的である。だが、太陽光発電には、100倍という膨大な場所を必要とする。韓国の狭い国土では不向きなのだ。脱原発は、福島の原発事故から始まったが、この事故の後遺症は、事実と異なり過剰に宣伝されている。韓国政府が、福島産海産物の輸入禁止措置を取っている背景に、原発被害の過剰宣伝が大きな影を落としている。詐欺的側面すら持っているのだ。ソウル大学原子力研究陣が、この噓の混じった宣伝を否定して歩くほど、酷い内容である。

     

    韓国の市民団体は、こうした事実に反することを理由にして、強引に太陽光発電を進めさせている。この事業に参加しているのが、市民団体である。

     


    『朝鮮日報』(4月25日付け)は、「中国メーカーに流れる韓国の太陽光発電補助金」と題する社説を掲載した。

     

    韓国政府は脱原発を推進するとして、再生可能エネルギーへの投資を大幅に増やしている。昨年1年間に韓国政府が太陽光発電など再生可能エネルギー事業に給付した補助金は26000億ウォン(約2500億円)だった。ところが、韓国の太陽光発電事業に中国メーカーが主導的に参入し、補助金が中国メーカーに流れている。

     

    (1)「韓国における太陽光・風力発電の割合は、2017年時点で1.6%だった。韓国政府は太陽光と風力が主軸となる再生可能エネルギー発電の割合を2030年までに20%、40年までに30~35%に高めようとしている。そうなれば、20~30年代には太陽光・風力発電分野に投入される補助金は10兆ウォンを超える可能性がある。中国企業が韓国で補助金をがっぽりもらい、韓国企業が市場から締め出される事態も予想される。過去にはドイツでも同様の事態が起きた」

     

    文氏が、大統領に就任する以前の韓国における再生エネルギーは、わずか1.7%に過ぎなかった。今後、強引にその比率を上げようとしている。そのためには、膨大な自然破壊によって太陽光パネルを設置する場所が必要になっている。再生エネルギーという言葉はきれいだが、これを実現するには多くの森林伐採が必要とされている。

     

    (2)「韓国のように国土が狭い国で原発を捨て、発電コストが割高な再生可能エネルギーの使用を拡大するという発想には最初から無理があった。ソウル市民が昨年消費した家庭用電力14000ギガワット時を確保するためには、原発ならば出力2ギガワット規模の設備を整えればよい。しかし、太陽光発電は1日に34時間しか稼働できないため、10ギガワット以上の設備が必要となる。同じ出力の原発を太陽光発電に転換するには20倍を超える敷地が必要だ。稼働効率も考慮すると、原発に比べ100倍を超える土地が欠かせない。それだけ山林を伐採しなければなくなる」

     

    太陽光発電には、原発に比べてざっと100倍を上回る土地が必要である。この事実を知らずに、簡単に脱原発と言えない厳しい現実がある。韓国の市民団体は、そういう面での配慮はゼロだ。

     

    (3)「カザフスタンを訪問した文在寅(ムン・ジェイン)大統領に現地の実力者が、韓国のアラブ首長国連邦(UAE)での原発事業を挙げ、『カザフスタンも原発を建設したい』と持ちかけ、文大統領も『韓国も参入機会があれば参入する』と答えたとされる。文大統領は昨年11月、チェコでも韓国の原発をセールスした。それほど韓国の原発をうらやむ諸外国は、韓国政府が太陽光・風力発電にこだわり、脱原発を進めようとしている点を理解できるだろうか」

     

    韓国は、海外に原発を売り込み、国内では脱原発という矛楯を冒している。過去の原発事故の原因を徹底的に究明し、再発させないシステムをつくり上げることだ。科学には、事故を乗り越える知見の積み重ねによって現代を築いてきた歴史がある。日本では、2050年に究極の無害発電である水素発電が、完全普及時代を迎える計画だ。


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    文政権は最近、不可解な行動が増えている。小学校社会科の教科書から「漢江の奇跡」を削除した。韓国が、朝鮮戦争の惨害から経済復興を果たし、現在の経済規模に達した高度経済成長の歴史を子どもたちに教えないというのだ。

     

    考えられる理由は2つある。軍事政権が経済成長を実現し、その背後に日本の支援があった事実を隠したい。もう一つは、北朝鮮が今なおどん底生活を送っていることへの配慮だ。文政権には、市場経済そのものを疎ましく思っており、北朝鮮のような「貧しくても平等」ということへの妙な憧れがある。

     

    この延長に出てきたのが、韓国の出生率増加目標を捨てるという恐るべき企みである。一国にとって、人口は最大の資産である。国家発展の原動力は、一定の人口を維持することである。人々が安心して老後を送れるのは、安定的な現役世代が負担してくれる社会保障費のお陰だ。その現役世代が将来、人口減で減って行くとなれば、国民の老後生活は破綻する。

     

    文政権は、政権批判の「種」になる、合計特殊出生率の目標と実態との乖離拡大を恐れ始めている。いっそのこと、出生率目標を捨ててしまえば、国民から批判される懸念はなくなる。この消極的理由で、合計特殊出生率目標を明示しないというのだろう。

     

    『中央日報』(4月26日付け)は、「出生率の目標取り下げた韓国政府、少子化対策の放棄ではないのか」と題する記事を掲載した。

     

     (1)「 韓国国策研究機関の専門家が、文在寅(ムン・ジェイン)政権の少子化政策を強く批判した。政府は少子化政策のパラダイムを転換したと言うが、一部では『政府が少子化政策を放棄するための出口戦略を用意したのではないか』という懸念が出てきていると指摘した。韓国保健社会研究院の李相林(イ・サンリム)研究委員は25日午後、低出産・高齢社会委員会が主催した第17回低出産・高齢化フォーラムでこのように話した。文政府の少子高齢社会政策の成果と限界点を評価する場だ。現政権は『男女平等の強化など、人生の条件を改善すれば出産問題が解決される』とし、以前の政府の出産奨励政策を廃棄して再構造化(パラダイム転換)を推進している

     

    文政権の最大の弱点は、抽象論でしか語らず、具体的な回答を用意できないことだ。政治は抽象論でなく、具体的に問題解決案を提示することである。文政権には、その能力がないのだろう。だから、抽象論でお茶を濁すのだ。

     

    現政権は、「男女平等の強化など、人生の条件を改善すれば出産問題が解決される」という。評論家の発言のように聞える。「人生の条件を改善」するとは、具体的に何を指すのか。若者には就職が人生最初の関門である。この関門をなくして、日本のように誰でも就職可能な条件を整えること。それが政府の義務である。現実には、就職準備を含めた若者の失業率(体感失業率)が25%にも達している。若者の4分の1は失業状態である。

     

    こういう就職難が結婚難に結びつく。出生率が低下して当然である。韓国では公務員家庭では平均、3人の子どもがいるという。生活が安定している結果だ。先ず、若者が就職できる経済状況をつくれば、結婚が増えて必ず出生率は上がるはずだ。

     

    これまで韓国政府は、出産奨励政策に力を入れてきた。これが成果を生まないのは、就職難という人生の関門を解決しないことにある。北欧では、女性の有業率上昇が出生率向上に寄与している。就職問題解決が、最大の出産奨励策とも言える。

     

    (2)「 李氏は、『政府がこれからは合計特殊出生率を政策目標にしないといったが、これに対して少子化政策の放棄と解釈する者もいる』とし、『政府が少子化政策を今後どうやって行っていくのかに対する各論を確実に出さなければならない』と話した。李氏は『現政府のパラダイム転換がとても抽象的だ。これをどのように政策化するかについてはまだ多くの議論が必要だ』と指摘した。 李氏は出産奨励金のような地方政府の現金性対策を批判した。李氏は『地方自治体は財政負担にもかかわらず、選挙を考えたばらまき支援をする』とし『現金支援基準を中央政府が用意しなければならない』と話した」

     

    経済活性化は、韓国の出生率引上げにとって不可欠である。この認識を欠いて、出産奨励金にこだわるのは順序を間違えている。

     

    文政権は、最賃大幅引上だけで経済活性化を実現できると誤解した。経済活性化の本道は、生産性向上策と最賃引き上げ策がセットになるもの。文政権は、生産性向上策を見落としていたのだ。この伝で言えば、出生率向上には先ず就職難を解決し、その上に出産奨励金を出すべきであろう。方法や順序を間違えれば、初期の効果は期待できないのだ。


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    韓国の文在寅政権の日々を観察していると、これほど無責任な政府が存在するだろうかという実感に襲われる。昨日、発表になった1~3月期の実質GDPが、前期比マイナス0.3%に落込むと、理由のすべてを外部要因に転嫁させる。この国には、本当の意味での政府が存在しない。

     

    経済成長の動因には二つある。外需と内需である。前者は純輸出(輸出-輸入)。後者は消費・投資などだ。昨年4~6月期以降、内需がマイナスでも外需がカバーしてプラス成長を維持してきた。私は、外需の伸びが落ちればたちどころにマイナス成長に落込むと、昨年のブログで書き続けてきた。

     

    昨年10~12月期は、政府が大盤振る舞いして財政でアルバイトを増やす奇策が奏功。内需が大きく跳ね上がった。この結果、前期比1%増という予想外の数字が飛び出したのだ。

     

    今年の1~3月期は、内需も外需もすべて前期比マイナスである。これでは、トータルのマイナス成長に落込んで当然である。問題は、文政権が厚顔にもマイナス成長の責任を認めないことだ。外需のマイナスはやむを得ないとしても、内需のマイナスは文政権の失政によるのだ。

     

    その原因は、もはや取り上げるのも億劫になるが、最低賃金の大幅引上げだ。2年間で約30%にもなる引き上げで、しかも罰則を伴うという厳しさが、「最賃解雇者」を大量に発生させた。文政権が、最賃引き上げ幅を3分の1に抑えていたら、マイナス成長に追い込まれる可能性は低くなっていたであろう。

     


    『朝鮮日報』(4月26日付け)は、「マイナス成長を外部要因のせいにする韓国大統領府」と題する記事を掲載した。

     

    韓国銀行(中央銀行)は25日、韓国の2019年13月期の国内総生産(GDP、速報値)が前期比で0.3%減だったと発表した。世界的な金融危機当時の08年10~12月期(3.3%減)以降で最低だった。

     

    (1)「08年当時は全世界が金融危機に陥り、マイナス成長が避けられない側面があった。しかし、文在寅(ムン・ジェイン)政権下の今回はこれといった外部の悪材料がないにもかかわらず、成長率が2017年10~12月期(0.2%減)に続き2回目のマイナスを記録した。通貨危機以降の歴代政権では初めてだ。しかし、韓国大統領府(青瓦台)の尹道漢(ユン・ドハン)国民疎通首席秘書官は同日、13月期の成長率について、『外部の経済的要因が最大の原因として挙げられるのではないか』と述べた。青瓦台関係者は『海外の経済が不安定で影響を受けた面が大きい。これを経済政策の失敗と見なすことには同感しない』と話した」

     

    先に、私がコメントしたGDP動因には2要因がある。外需と内需に分けて考えれば、韓国大統領府の説明がいかに責任逃れであるか明白である。外需が不振でも内需の岩盤がしっかりしていれば、外需不振を跳ね返すことが可能だ。もともと、内需がマイナス基調であった所へ、外需不振が重なって前期比で0.3%のマイナス成長になった。これが、真相である。

     

    内需のマイナス基調をつくり出したのは、文政権が間違えた最賃大幅引上にある。自らの責任を棚に上げて、外需にすべての責任を押しつけるのは、余りにも韓国流すぎる。独善主義の韓国左翼政権らしく、責任を取らずに逃げ回るのは醜悪である。

     

    (2)「経済専門家は13月の成長率が低下した直接的原因として、『政府主導の成長』を挙げる。政府が18年の成長率を押し上げようと財政出動を行い、18年10~12月期の成長率は前期比1.0%増だったが、財政出動の効果が切れ、一時的ショックが訪れた格好だ。18年10~12月期の財政出動による成長寄与度は1.2ポイントだったが、1913月期はマイナス0.7ポイントだった」

     

    経済の運転台に立つのは本来、民間企業である。その民間企業が、最賃大幅引上で大きなダメージを受けたので、代わって政府がその役を引き受けた。だが、昨年10~12月期の1期のみである。今年の1~3月期は、誰も運転台に立たなかったからマイナス成長になった。これが、舞台裏の話である。文政権は、これほど経済について無知である以上、韓国経済の基盤が、さらに取り返しのつかない事態へ突っ込むのは致し方ない。落日の韓国経済である。

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    韓国の文在寅政権は、いよいよその本質を顕わにしてきた。中国と北朝鮮への指向をはっきりさせ、日本切り捨てが明らかになっているからだ。現状において、韓国が日本に背を向けようと何らの痛痒も感じない。ただ、今後の韓国経済を襲うであろう経済危機の際、韓国はどこへ頼ろうとしているのか。学生レベルの拙い思考法で乗り切れるはずがない。

     

    『中央日報』(4月25日付け)は、「韓国、219年間12年を除いて日帝・独裁・極右によって統治―韓国与党代表」と題する記事を掲載した。

     

    (1) 「韓国与党である共に民主党の李海チャン(イ・ヘチャン)代表が25日、『正祖(チョンジョ)大王以降219年間金大中(キム・デジュン)・盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領の10年と文在寅(ムン・ジェイン)大統領の2年など12年を除いては日帝強占期や独裁、または非常に右的な勢力によって国が統治された』と話した。 李代表はソウルの延世(ヨンセ)大学金大中図書館コンベンションホールで開かれた『金大中・盧武鉉元大統領死去10周忌』学術会議に参加し、祝辞でこのように述べた後、『そのため、国が非常に傾いている。運動場が傾いたのではなく平和・民主勢力が崖っぷちでかろうじて手でつかんでいる状況』と話した」。

    共に民主党の李海チャン氏は、「国が非常に傾いている」と言っている。発言のタイミングから言って、1~3月期のGDPが前期比マイナス0.3%に落込んでいる事態を指しているようだ。これは、文政権の稚拙な政策の結果ではない。現政権の平和・民主勢力が、崖っ縁で手をつないでさらに傾くのを阻止しているというニュアンスで発言している。

     

    現政権は、韓国独特の朱子学の道徳主義に毒されており、自分に責任はない。悪いのは相手であるという論法が「全開」している。気楽なものである。責任はすべて他者にかぶせているからだ。こういう神がかった連中が、韓国100年の計を考えているはずがない。北が核を持っていても気にならない様子で、内々では喜んでいる節さえ見える。核保有の北と統一することが、日本への対抗力を高めて結構という認識なのだ。これが、まさに「克日」と見ているのだろう。

     

    ここで李海チャン氏は、とんでもない発言をしている。「正祖(チョンジョ)大王以降219年間金大中(キム・デジュン)・盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領の10年と文在寅(ムン・ジェイン)大統領の2年など12年を除いては日帝強占期や独裁、または非常に右的な勢力によって韓国が統治された」と悪びれもせずに言っていることだ。まさに、韓国朱子学による、自己の絶対的正しさという、箸にも棒にもかからない幼稚な理屈を持出している。韓国左翼は、ほとんどこの韓国朱子学の独善主義に毒された小児病にかかっている。韓国大法院の下した旧徴用工への判決は、形式主義ゆえの独善主義に陥った典型的な判決であった。現実に日本から賠償が払われている。だが、名目が経済協力金だから賠償金でないという屁理屈である。

     

    こういう論法を基盤に据えて、「219年中、12年間を除いて不幸であった」という腰を抜かすような我田引水のこじつけ話をしている。ならば問う。現在の出生率急低下の責任はどこにあるのか。文氏の最賃大幅引上げによる雇用破壊がもたらした事態だ。屁理屈を並べず、現実を直視することだ。

     

    (2)「 また、彼は『ようやく再執権したが、この機会を絶対に逃がしてはならないという見方が強い』として『特に、今こそ分断70年史を終わらせて平和・共存の時代に行ける、別の見方をすれば唯一の機会』と述べた」

     

    文政権が続き後継政権も左派であれば、韓国経済は確実に崩壊過程へ突き進むであろう。韓国はそこまで偏向して「核付き北朝鮮」と統一できるだろうか。現実は、不可能である。「核付き」を米国や日本が容認しないからだ。「親中朝・反日米」では、絶対に南北統合は不可能である。日本が北朝鮮へ「戦後処理費」を支出しないからだ。文政権は「反日」だが、これは南北統一を邪魔する最大の障害になろう。そこまで、頭が回らないところが、左翼独特の頭の鈍さと言える。

     

    『朝鮮日報』(4月25日付け)は、「韓国、小学校教科書から消えた『漢江の奇跡』」と題する記事を掲載した。

     

    (3)「今年3月から全国の小学6年生は3年ぶりに改訂された社会科の教科書で授業を受けている。ところがこの教科書には1960~80年代の韓国の経済成長を意味する『漢江の奇跡』という言葉がない。以前の教科書には経済開発5カ年計画の成果として紹介されていた」

     

    韓国の高度経済成長(漢江の奇跡)は、軍事政権の手で進められたから抹殺したい。これが、現政権の基本スタンスである。歴史的事実が、思想的に受け入れられない独裁政権がやったので抹殺するというのだ。日韓併合の成果を拒否しているのも同じ屁理屈に基づく。

     

    文政権は統一を前提にして、韓国を北朝鮮に合わせる準備を始めている。朝鮮戦争の解釈も変るだろう。「侵略」でなく「解放」に置換えられることになったら一大事である。左派政権は北朝鮮を美化している。何をやり出すか分らない不気味さを帯びてきたのだ。


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    中国の通信機メーカーのファーウェイ(華為技術)は、社員株主制度による純粋な民間企業とされている。その裏には、中国政府が控えているという説も根強い。米国の専門家による踏み込んだ調査分析によれば、実態は中国政府が保有しているという報道が現れた。

     

    『大紀元』(4月25日付け)は、「ファーウェイの所有者は誰、米専門家中国当局の可能性大」と題する記事を掲載した。

     

    中国の法律に精通する米国の専門家はこのほど発表した調査報告書で、中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の実質の所有者は、「中国当局である可能性が大きい」との見方を示した。

     

    中国当局が公開する工商登記情報によると、ファーウェイの株式は、創業者の任正非氏が1%、華為投資控股有限公司工会(労働組合)委員会が99%とそれぞれ保有している。中国法律専門家で米ジョージ・ワシントン大学法学部教授のドナルド・クラーク氏と、フルブライト大学ベトナム校のクリストファー・バルディング教授はこのほど、共同で調査報告書を発表した。

     

    (1)「非上場企業であるファーウェイは、社員が労働組合を通じて株式を所有する、従業員持株制度を採っていると宣伝している。報告書は、ファーウェイの従業員持株制度は、一般的な従業員持株制度と異なるとの見方を示した。中国の労働組合は、当局の支配下にある中華全国総工会が管理しているため、ファーウェイの社員は労働組合の方針、決定などに発言権を持っていないと教授らは指摘した。また教授らは、ファーウェイが社員に与える『ファントム・ストック(架空の株式)』について、実質的には賃金の一部でインセンティブであり、法で定める会社の所有権や経営決定権と無関係だとした。社員がこのファントム・ストックを他人に譲渡・売却することはできず、退職の場合、同労働組合がその社員が持つファントム・ストックを買い取らなければならない

     

    「ファントム・ストック(架空の株式)」の例では、日本経済新聞社の社員株主が最高裁判所まで争って敗訴して件がある。社員株主は、退社とともにその権利を失い、購入した時の株価で会社へ渡さなければならないという。これは、ジャーナリズムの独立性を守るために必要な制度というのが最高裁の判断である。この日経の件とファーウェイは似たような面があるようだ。ファーウェイの機密性を守るという狙いが込められている。

     


    (2)「教授らは、現有の公開情報では、ファーウェイの真の所有者は誰であるかをはっきりと示すことはできていないと指摘した。現時点では、中国当局が間接的に同社のオーナーである可能性が高いとの認識を示した。ファーウェイ側は教授らの指摘を否定した。労働組合はその代表委員会を通じて、株主である社員の権利を行使するうえ、労働組合の代表者は株式保有の社員によって選ばれているという。しかし、三権分立を議論すると投獄される可能性のある中国で、なぜファーウェイの社員にはこのような民主的な権利があるのかを説明しなかった

     

    共産主義社会において、ファーウェイ社員だけに資本主義社会の三権分立議論が適用されることは困難である。現時点では、中国共産党が労働組合を管理しているシステムから見て、中国当局が間接的に同社のオーナーである可能性が高いとの認識を示した。

     

    (3)「米ボイス・オブ・アメリカ(VOA)4月20日付によると、2003年ファーウェイの社員2人が、一株当たり純資産(BPS)額で株式を買い取らないとして、同社を相手取って訴訟を起こした。当時、広東省最高人民法院(地裁)は、ファーウェイの発起人だけが工商管理部門で登記しているが、同社の社員は株主として登録していないと指摘した。地裁は、関連規定に基づき、ファーウェイの労働組合が保有する株式は「ファーウェイとその社員の契約」であり、ファーウェイ社員は同社の株主ではないと結論付けた。クラーク教授らは報告書において、ファーウェイの労働組合が同社の99%株式を保有するということは、『ファーウェイはある種の国有企業であると示された』とした」

     

    地裁は、ファーウェイ社員が株主として登記されていないことを理由に、株主の権利を認めなかった。結局、ファーウェイの労働組合が同社の99%株式を保有することは、中国の制度に照らし合わせると、皮肉にも国有企業であるという結論になる。この推理過程は、なかなか興味深い。

     


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