勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    スポーツは勝って良し。破れた後の美しい涙もまた良しだ。ロシアW杯サッカーの日本代表はベルギーに惜敗したが、積極的な攻撃が世界のファンの心を捉えた。

     

    米TV『CNN』は4日(日本時間)、「日本代表はベルギー戦の後、自分たちが使用したロッカールームを清掃し、スパシーバ(ありがとう)というメッセージを残した」とし「日本代表が皆さんの親から休日のディナーに招待されるほどのマナーを持つことは疑いない」と評価したほど。試合に敗れて、マナーで得点を挙げた試合であった。

     

    『朝鮮日報』(7月4日付)は、「サッカーW杯日本代表・サポーターの美しい去り際に賞賛相次ぐ」と題する記事を掲載した。

     
    日本は3日(韓国時間)に行われた決勝トーナメントのベルギー戦で23の逆転負けを喫した。日本のサポーターたちは涙でほほをぬらして自国代表チームの敗戦を悲しんだが、それでもいつも通り、用意してきたゴミ袋を持って会場だったロストフ・アリーナの隅々を歩き回った。観客約45000人が同アリーナに捨てたペットボトル・缶・ビニール袋などは瞬時に消えた。英日刊紙ザ・サンは「日本は試合では敗者だったが、スタジアムでは勝者だった。日本のサポーターたちは世界最高のマナーを率先垂範した」と絶賛した」

     

    「日本の選手たちも同じだった。国際サッカー連盟(FIFA)ゼネラルコーディネーターのプリシラ・ジャンセンズさんは試合直後、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)「ツイッター」に、日本代表チームが去った後のロッカールームの写真を掲載した。ロッカールームは床がピカピカで滑ってしまうのではないかと思うほど完ぺきに片付けられた状態だった。ジャンセンズさんは「日本代表チームはベンチはもちろん、ロッカールームまできれいに片付けた。しかも、ロシア語で『ありがとう』というメモまで残して去っていった。すべてのチームの鑑(かがみ)だ。彼らと一緒に仕事ができて光栄だった」と書き込んだ。FIFAは公式ツイッターで「日本に尊敬の拍手を送る」とコメントした」

     

    「勝っても、引き分けても、負けても、日本のサポーターの清掃マナーは変わらない。日本は初出場した1998年のフランスW杯から『立つ鳥跡を濁さず』とばかりに、とどまっていた場所をきれいにすることで有名になった。日本はこの時、グループリーグ3戦全敗で敗退したが、サポーターは黙々とスタジアムのゴミを拾い、仏紙ルモンドなど現地メディアに取り上げられた」

     

    「今回のW杯でも、コロンビアとのグループリーグ初戦から清掃・片付けをしていた。この様子を見ていたセネガルやポーランドなど、グループリーグ対戦国のサポーターたちも一緒にゴミ袋を持って片付けた。英BBCスポーツは『日本の試合がある日は、W杯ボランティア15000人が仕事がなくなる日だ。日本人は五輪やほかのスポーツの国際大会でも常にきれいに片付けてから競技場を去る、世界最高のスポーツ・ファン』と伝えた」

     

    かつて、欧州のサッカーのサポーターといえば、「荒くれ男集団」というイメージが付きまとっていた。気が付いたら、今ではそういう集団が姿を消している。日本のサポーターの礼儀を見倣ったのだろうか。海外メディアは、日本の代表選手やサポーターをこれだけ高く評価してくれた。立派な「外交官」役を果たした。改めて、感謝したい。


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    米中貿易戦争は、あすから双方が360億ドル相当の製品に25%の関税を科す。非生産的な振る舞いだ。原因は、米国が技術窃取を止めるように中国へ要求したのに対して、中国が「ノー」と答えた結果である。双方は断固、闘うと表明しているが、中国の劣勢は明らかだ。

     

    ここからが、中国の本領発揮である。例の「嫌がらせ」の連発が気になるところ。日本も韓国も、この「洗礼」を受けた。相手国産品の不買運動と旅行禁止措置である。得意の不買運動は、米国企業が単独で中国へ進出できず、中国資本との合弁形式である。となれば、米国産品の不買運動を始めると、中国のパートナーが損害を受けるので、不買運動の効果は期待薄になりそうだ。

     

    もう一つは、米国に対すうる「旅行抑制」である。ただ、表面きってハッキリとは言えないのが悩みだ。ニューヨークの目抜き通りから、中国人観光客が消えてしまったとなれば、「大ニュース」になって、世界中に配信される。これでは、中国政府の狭量さをわざわざ世界に宣伝するようなものだ。これまで、他国をいじめ抜いてきた中国が、はたと米国相手では手詰まり感が否めない。名案があるのだろうか。

     

    韓国紙『中央日報』(7月4日付)は、「米国と貿易摩擦中の中国、米国旅行注意令発動」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「『米国では銃器事故が多い。旅行者は怪しい人物に警戒しなさい』。中国と米国の貿易葛藤が深まる中、中国政府が米国を訪問する中国人に旅行注意令を発令した。在ワシントン中国大使館は、最近、公式サイトに掲示したお知らせを通じて、中国人観光客が米国を旅行する時は高、価な医療費、公共場所での銃撃と強盗事件、税関捜索および押収の危険、通信詐欺、自然災害などに注意しなければなければならないと警告したもの」

     

    駐米中国大使館は警告文で、『米国の治安状態は良くない。銃撃や強盗、盗難事件が頻繁に起こっている。したがって旅行者は周辺の環境や怪しい人々に警戒し、夜間は一人で外出してはいけない』と載せたわけだ。米国を低開発国並みに扱っている。これで、胸の溜飲を下げているのだろう。何か、「引かれ者の小唄」にも聞える話だ。中国のできる「嫌がらせ」がこの程度としたら、もはや米国へ撃つ弾もなくなってきた証拠かも知れない。

     

    米国産商品への不買運動はどうか。

     

    『ブルームバーグ』(7月4日付)は、「習主席の奥の手、米製品不買は中国側パートナーに打撃もたらす恐れ」と題する記事を掲載した。

     

    (2)「米中貿易戦争の可能性が高まる中、中国の習近平国家主席の最大の武器の一つは、消費者による米国ブランドの不買運動になる可能性がある。しかし、不買運動は中国自体にも打撃を与える恐れがある。コカ・コーラやマクドナルド、ウォルト・ディズニーといった米ブランドの中国事業は中国政府の支援を受けた中国企業の共同所有となっているからだ。コカ・コーラの主要中国パートナーの一つは政府系の中糧集団であり、上海ディズニーランドは中国コンソーシアムが出資している。また中国国内のマクドナルドのフランチャイズの経営権は政府系複合企業の中国中信集団とプライベートエクイティ投資会社の中信資本が握っている」

     

    コカ・コーラやマクドナルド、ウォルト・ディズニーなど、米ブランドの中国事業は中国政府の支援を受けた中国企業の共同所有である。これでは、中国政府は不買運動という手に出にくくなる。こんな姑息なことをやる前に、米中貿易戦争を終わらせる方がはるかに有益なはずだが、さて、どうなるのか。



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     「失われた20年」。内外で、こうあざけられてきた日本経済も本領発揮である。あの高度経済成長時代を上回る労働力不足に悩んでいるからだ。完全失業率は2.2%。なんと25年ぶりとのこと。こういうデータが出てくると、少子高齢化時代だから当然、という説が流れるが間違い。少子高齢化時代では、潜在成長率自体が低下するもの。経済政策によって、この潜在成長率が引上げられ、労働需給が逼迫しているのだ。

     

    今後は、さらなる労働需給が逼迫化の見込みだ。TPP(米国を除いた環太平洋経済連携協定:11ヶ国)と日欧EPA(経済連携協定)が、今年と来年に相次ぎ発効する。両方の多角的貿易協定によって、GDPは13兆円、雇用が75万人も増える計算である。

     

    今ですら、人手不足は深刻である。この上さらに75万人もの労働需要が増えたらどういう事態になるのか。想像もできない騒ぎとなろう。あの高度経済成長時代の労働力不足は、地方の農村から次男や三男が都会へ出てきた。この人々が、大型団地で家族を持って日本経済を牽引した。今後は、外国から技能実習生」という名の人々が来日する。それでも人手が足りないことに変わりない。

     

    ここで、何が起こるのか。賃上げと設備投資の盛り上がりが期待される。

     

    先に成立した「働き方改革」で、同一労働・同一賃金が実現する。非正規雇用では年収200万円が限度であった。「これでは結婚もできない」と若者の悲痛な叫びを聞いて胸を痛めてきた。ところが、正規・非正規で賃金を差別してはならない時代へ移行する。ヨーロッパでは非正規雇用の待遇は、正規の80%見当と言われる。日本もその方向へ向かうはずだ。非正規雇用を冷遇したら、さっさと他社へ移ってしまう時代が来る。民主党政権時代では、想像もできなかった労働環境が現れそうだ。

     

    企業は、設備投資によって「省力化」を急がなければなあない。省力化という言葉も何十年ぶりに聞く言葉だ。日本経済の活力が戻って来た感じがする。

     

    『日本経済新聞』(7月4日付)は、「設備投資意欲高まる、日銀短観 機械など伸び率最高」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「日銀が7月3日発表した6月の短観(業種別計数)によると、製造業では紙パルプが前年度比38.1%増、食料品が19.1%増とそれぞれ1974年度以降で最高の伸び率となった。生産用機械は29.6%と統計を遡れる2010年以降で最高だった。企業は長らく投資には慎重だったが、国内外の堅調な需要を受けて増産に動き始めている。各業種で設備投資が活況になってきたことは機械業種の投資計画の好調さにも表れている。生産用機械の投資計画は計画額、前年比伸び率ともに過去最高となった」

     

    製造業の設備投資計画では、紙パルプと食料品がそれぞれ1974年度以降で最高の伸び率となる。生産用機械も統計を遡れる2010年以降で最高という。久しぶりに聞く景気のいい話である。企業は、設備投資に踏み切る場合、長期の見通しが立つことが前提である。先行き、好展望という結論なのだろう。

     

    だが、米中貿易戦争になったらどうするのか。その対応は、次のようなものが予想される。

     

    第一、   急速な円高で1ドル100円突破のケース。「為替相場の耐性」が急速についているので収益に関係しない。人手不足は半永久的問題であるから省力の機械化投資をしなければ生き残れない。

    第二、   TPPと日欧EPAの合計によって、世界シェアは次のように高まる。

    GDP41.3%

    貿易額51.9%

    人口 15.5%

     

    まさに、日本経済は「大船」(おおぶね)に乗るから、大波が来ても安定度は高まると見られる。バブル崩壊は1990年1月の株価大暴落から始まった。あれから28年も時間がかかった。一口に「苦節10年」と言うが、「苦節30年」を経たのだ。あのとき生まれた赤ちゃんは、今は28歳だ。日本経済が、再び活力を取り戻すのに不足のない時間を経ている。


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    米中摩擦は、今や「発火」寸前の危険な状態に陥っている。習氏は、あくまでも米国と闘う姿勢と報じられる。米中の話し合いが決裂し、関税引き上げ合戦へ突入すれば、不利なのは中国に決まっている。米国からの技術伝播がなければ即刻、干し上がる危険性をはらんでいるからだ。

     

    その例が、通信大手中興通信(ZTE)である。米国の法律に違反してイランへIT機器を輸出した問題で、米国政府から7年間の米製品輸入禁止処分を受け、経営は大きく傾いた。先頃、前記の処分を撤回する代わりに15億ドル(うち、5億ドルは供託金)の罰金と全役員更迭、それに米国側から監視役が常駐という屈辱的な制裁を飲まされた。

     

    だが、ZTEの経営破綻と国有化が取り沙汰されている。香港紙『蘋果日報』が72日に伝えたもの。中国当局やZTEからの公表はまだない。香港紙報道では、(国有通信企業の)烽火通信科技集団がZTEの全株式を買収したと報じた。

     

    こうしたZTEの「末路」から、中国は一日も早く自前の半導体生産体制を確立しなければならないところへ追い詰められている。だが、肝心の技術がないのだ。手っ取り早い方法は、研究者のスカウトか先端技術をもつ企業との連携である。その慌てふためいた姿を覗いてみた。

     

    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(6月27日付)は、「シリコンバレーで人材引き抜き中国の飽くなき野望」と題する記事を掲載した。

     

       トランプ米政権は中国への頭脳流出が米国の技術的競争力と国家安全保障を損なうことを危惧し、中国企業による一部米IT(情報技術)企業への投資を制限しようとしている。一方、中国は別の方法で米国のノウハウを活用しようとしている。人材の引き抜きだ。政府当局者や人材紹介会社、引き抜きの誘いを受けた人たちによると、中国政府や企業はトップクラスのエンジニアや科学者、その他の熟練技術者(特に米国在住の中国系人材)を引きつけようとしている。主な標的となっているのが、大手IT企業や研究所、ベンチャー投資家が集まるシリコンバレーだ」

     

    中国もあの手この手を使って、米国のトップ頭脳を中国へ引入れるべく必死である。基礎研究からコツコツやるよりもカネを払って、最高技術を手に入れようという魂胆だ。この前例は、韓国のサムスン電子にもある。サムスンは、基礎研究に時間と金を掛けず、応用技術を手に入れてきた。研究時間の短縮を金で買う感じだ。だが、自前の研究開発基盤がないと、その後に新たな研究が進まない欠陥が出てくる。サムスンは今、これに悩んでいるのだ。

     

       「今のところ、中国企業は人材引き抜きを続ける万全の態勢にある。アリババグループ や 百度(バイドゥ) などの中国IT大手は、シリコンバレーに研究開発拠点を構えている。また、中国のIT企業やベンチャーキャピタル(VC)企業のハブとして、北京市内には同市政府系企業によって3階建ての『中関村科技園』(中関村サイエンスパーク)が設けられている」

     

    中国のIT企業は、米国のシリコンバレーに研究開発拠点を設けて、米国の最新研究情報の入手と人脈づくりに力を入れている。IT最大手の一部では、社員が平均2年以内に転職しているという。中国IT企業も、この研究者流動化の中で高給を条件にスカウトに懸命である。

     

    次の例は韓国である。こちらは、企業ぐるみの買収という大掛かりな手を打っている。

     

    韓国紙『中央日報』(7月2日付)は、「中国の韓国半導体企業狩り」と題して、次のように伝えた。

     

      「半導体装備メーカー『セミクス』のユ・ワンシク代表はこのほど中国から合併の提案を受けた。セミクスは半導体検査装備のウエハープローバで世界3位に入る強小企業だ。条件は破格だった。中国に工場を作り、装備を購入し、研究開発にかかるすべての費用を出すというものだ。株式は中国側が51%、セミクスが49%を提案した。ユ代表は、『合併すれば中国市場を確保できるため心が動いた。しかし何年か後に技術だけ奪われて捨てられる可能性があり、苦悩の末に断った』と話した」

    ここに出てくるケースは、中国企業が海外企業と提携する際の「常套句」だ。「おいしい」条件をズラリと並べて、相手が食いついてくるのを待っているという。過去に、こういう好条件で釣り上げ、途中で契約を打ち切られる例がある。技術さえ手に入れれば、後は邪魔物。あっさりと見捨てるのだ。

     

       「半導体製造工程関連業務を担当するハンさん(41)は最近中国の半導体メーカーへの転職の提案を受けた。現在の年俸の5倍に、外国人だけが暮らす高級マンションと小学生の子どもの国際学校の学費を5年間支援するという破格な条件だった。ハンさんは『たいてい5年単位で労働契約を結ぶが、それ以前に解雇されるという話もあり、ひとまず固辞したがまだ悩んでいる』と話した」

     

    ここでは、現在の年収の5倍と子どもを国際学校に5年間通わせる学費、それに高級マンションを条件のヘッドハンティングだ。この話を持ち込まれたハンさんは、余りの厚遇に半信半疑である。相手は、技術入手だけが目的である。それさえ可能になれば、すぐにお払い箱になるリスクに敏感である。相手は、百戦錬磨の中国人だ

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    「ハラスメント」問題が、世界的な注目を浴びている。優越的な立場を利用した嫌がらせである。すでに、「ME TOO」はセクハラ告発で記号化した。こういう問題だけでなく、職場でも上司が部下に発する言葉や処分によって、相手の人権を著しく侵すとして訴訟まで発展するケースが増えている。ハラスメントのない「明るい職場」をつくるには、まず上下関係の壁を取り去ることが前提のようだ。

     

    サッカーW杯の日本代表チームを率いた西野朗監督は、相手の話をじっと聞くタイプと言われる。選手との意思疎通をはかる「名手」と報じられた。だから、日本代表監督として「緊急登板」しても、見事に選手のハートをわしづかみにし「ベスト16」まで駒を進められた。テレビ画面を見て愕いたが、スタッフを交えた選手との合同写真の撮影前、遅れてきたスタッフが、わざと西野氏の膝に座って笑わせるシーンがあった。名監督になるには、肩書きを振りかざし「威張り」ちらしてはならない。そういう教科書がここにある。

     

    企業内ハラスメント発生の背景には、二つの側面が考えられる。

     

    第一は、企業内の命令伝達経路の変化だ。日本企業はピラミッド型である。トップの意向が、部長、課長、次長、社員という形の「上意下達」である。これは、社内で権限の大きい者が基点となって意思伝達が行なわれる。実は、この伝達経路は軍隊式であって、部下は上官に対して「絶対服従」を要求されるスタイルだ。自由な空気の下で育った人間には耐えられないことであろう。上役を職名で呼ぶのでなく、「さん」付けで十分。そうした職場環境に変えることだ。

     

    このピラミッド型は、意思疎通が悪いという欠点がある。そこで、今後の意思疎通は「円環状」が適切なものとして推薦されている。かのドラッカー博士が著書に残しいているのだ。ドラッカー博士は、21世紀型の理想的な経営システムは、NPO型になると喝破している。NPOは、上下関係のない組織である。ボランティアが最も嫌うのは、上からの命令である。文字通り「ボランティア」(自主的な参加)である。このボランティアに対して、ピラミッド型の組織原理を持ち込むのは「NG」だ。

     

    第二は、過去の就職難時代に「体育会系学生」が珍重された後遺症である。上司の命令に絶対服従することを「売り」にしてきたもの。今回の日本大学アメフト部の違法反則問題は、「体育会系文化」の抱える問題点をさらけ出している。「個」を抹殺した体育会系文化でなく、「個」を生かした体育会系文化が求められているようだ。

     

    旧来の体育会系文化に悩まされている一流企業がある。

     

    『ブルームバーグ』(7月3日付)は、「三菱モルガン社長がハラスメント根絶を決意、体育会的文化が温床」と題する記事を掲載した

     

    「三菱UFJモルガン・スタンレー証券の荒木三郎社長は、ブルームバーグの取材に応じ、同社がハラスメント問題に直面していることを明らかにし、その根絶に向けて取り組む決意を表明した。背景には、同社内の『体育会的文化』が温床となっているとの認識を示した。三菱UFJフィナンシャル・グループでは、東京とニューヨークで2件のハラスメント訴訟が起きている。同社は原告らの主張内容を否認している。三菱モルガンは6月までに大規模なハラスメント防止研修を実施し、7月から社長自身が全国を回り直接社員に撲滅を訴えていくという」

     

    「三菱モルガンの人事部は5月下旬、『ハラスメント防止研修の実施』について部店長などに通達。副参事以上の社員に25分のDVDを視聴させ、ハラスメントを行っていないか、容認していないか、どうしたら職場からなくすことができるか、議論するよう指示した。ブルームバーグが入手した社内メモで明らかになった。同社は、部店長らにハラスメント研修と、その後のディスカッションの内容を6月中旬までに人事部に報告するよう指示していた。ただ、社外などに研修内容を漏らすことは厳禁だとしていた」

     

    社名に、「三菱」と「モルガン・スタンレー」がついている。世界で超一流の金融機関の冠である。その企業で、期せずして2件のハラスメント疑惑で社員からの訴訟が発生した。名誉挽回で、体制一新に取り組むという話である。


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