勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。


    中国製造業の落込みは深刻である。日本製工作機械は、世界一の品質を誇っているので、対中国の受注減は正直正銘、中国経済の実勢悪を証明している。11月は前年比67%減。9ヶ月連続でマイナスを続けている。「中国一人負け」状態だ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(12月20日付)は、「中国向け7割減で強まる不透明感、11月の工作機械受注」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「日本工作機械工業会が20日発表した11月の工作機械受注額(確報値)は中国向け受注額が前年同月比67%減った。昨年のスマートフォン(スマホ)向け特需の反動があったとはいえ、落ち込み幅は大きい。米中摩擦の行方が見通せない中で、先行き不透明な環境が続く。11月の輸出受注額は、米国向けが8.%増の238億円、ドイツ向けが3.%減の55億円と比較的順調に推移するなかで中国向けが全体を押し下げた。中国向け受注額は136億円にとどまった。日本を含む先進国は軒並み堅調で、中国の1人負けが目立つ」

     

    記者会見した日工会の飯村幸生会長によると、中国は「生産過剰に対する緊縮策の影響、半導体の悪化、スマホ需要の低迷、米中対立による設備投資の手控え感などがあり調整局面にある」と話したという。

     

    中国工作機受注は、来年の経済成長率に深く関わってくる。中国のシンクタンクなどは、6.0%~6.5%レンジでの成長率目標設定を提案している。今年の成長率は、6.5%予想だから、来年の成長率は今年よりも下がる見通しであることを忘れてはならない。IMF(国際通貨基金)や世銀では6.2%成長を見込んでいる。

     

    こう見ると、日本の対中工作機受注は、さらに落込むものとみるべきだ。米中貿易戦争の行方も不透明である。だが、合意書を交わすことが明らかになっている。この合意書には、中国が約束を守る具体的な手続きや検証方法が盛り込まれるという。こうなると、中国がもはや実施をサボタージュすることは不可能になる。逃げ隠れできない状況で、米国の突付ける条件の完全履行である。中国経済が、米国に屈すると見ておくべきだ。

     

    これまでの中国経済は、やりたい放題の振る舞いだった。技術は窃取する。スパイ活動は行なう。こういう無法国家が枠にはめられれば、経済活動は沈滞して当然である。ここから飛躍的な発展などあり得ない。日本が、日米貿易摩擦と平成バブルが重なって、急速に成長率鈍化に見舞われた状況を思い浮かべることだ。これによって、中国経済の方向性を掴めるであろう。

     

    メルマガ10号 「混迷する韓国経済、青年の5人に1人が失業へ。文在寅大統領がハマった罠とは?」が、『マネーボイス』で紹介

    まぐまぐの『マネーボイス』で抜粋が紹介されています。どうぞお読みくださるようお願い申し上げます。

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    中国は、どうやら「中所得国のワナ」にはまったようである。これまで、6.5%経済成長を21年まで継続する前提で、「中所得国のワナ」が脱出可能とされてきた。その肝心の来年の成長率が、6.2%成長と見込まれるにいたった。中国が、発展途上国のままで終わる可能性が一段と濃くなっている。

     

    中国は現在、1人当たりの名目GDPが8643ドル(2017年)である。発展途上国が先進国入りするには、1万2000ドル以上が尺度とされている。来年が6.2%成長であれば、それ以降の見通しも厳しくなるので、中国経済の息切れは決定的になろう。

     

    世界銀行が20日公表の報告書で、中国の2019年の経済成長率は6.2%と、今年の見込みである6.5%から伸びが鈍化するとの見通しを示した。米国との貿易摩擦を背景に経済への逆風が強まっていることを減速の理由に挙げた。

     

    『ロイター』(12月20日付)は、次のように伝えた。

     

    (1)「世銀は、『先行きについては、中国の主要な政策課題は貿易関連の逆風を乗り切り、金融リスクを抑えるための取り組みを継続することだ』と指摘。融資の伸びの弱さが投資を抑制し、世界需要の鈍化や中国製品に対する米関税の引き上げが輸出に打撃を与えるため、消費は中国経済の主要なけん引役であり続ける見通しだとした」

     

    米中貿易戦争と金融リスクが、中国経済の抱える二大リスクである。米中貿易戦争で合意ができても、米国から足かせをはめられる。貿易黒字が減少することは必定である。金融リスクは、債務の拡大で危険度を増している。綱渡りがつづく。

     

    (2)「景気を刺激するためには、財政政策は公共インフラよりむしろ、家計消費を押し上げることに狙いを置くことが可能」と指摘。また、中国はさらに法人税率を引き下げる余地があるとの見方を示した。第3・四半期の中国の国内総生産(GDP)伸び率は6.5%と、世界的な金融危機以来の低水準となった。成長率は第4・四半期および来年にさらに縮小する可能性が経済指標などで示されている。国際通貨基金(IMF)は10月に、中国の19年の成長率見通しを6.4%から6.2%に下方修正している。18年の見通しは据え置いた」

     

    中国政府は、依然としてインフラ投資に軸足を置いて景気下支えを狙っている。これは、平成バブル崩壊後の日本が、犯した失敗と同じで債務を増やすだけである。減税をしても効果は限られている。ここまで来たら、世界覇権などという身丈に合わない夢を捨てて、内政充実を最大の目標にするべきだろう。

     

    けさ発行した「メルマガ15号」で、中国の直面する課題を取り上げた。

     

    メルマガ10号 「混迷する韓国経済、青年の5人に1人が失業へ。文在寅大統領がハマった罠とは?」が、『マネーボイス』で紹介

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    訪日観光客が順調に増加している。12月18日現在で3001万人に達した。日本政府観光局(JNTO)が発表したもの。クルーズ船需要が好調だったという。11月の国・地域別では、中国が前年同月比8.8%増の61万人余と最多を記録している。

     

    3000万人の訪日観光客が、日本経済にどのような好影響を与えているかを見ておきたい。

     

    『朝鮮日報』(11月4日付)は、「岐阜・高山の英語ガイド」と題するコラムを掲載した。筆者は同紙のイ・ドンフィ産業1部記者である。

     

    このコラムは、朝鮮日報記者が休日を高山で過ごしたことを素材に、人口減で悩む地域がいかに観光客を集めて、人口減のもたらす需要減をカバーしているか、数値を含めて説明するユニークなコラムである。

     

    (1)「約10年前、日本の多くの地方都市のように人口が減り、商店街が一時の活況を失うと、働き口を失った青年たちは町を後にした。こうしていては町そのものが消滅してしまうのではないか、という恐怖が押し寄せてきた。その活路を外国人観光客の誘致に求めた」

     

    飛騨高山が、人口減対策として外国人観光客を誘致に活路を求めた話だ。

     

    (2)「いわゆる『1対8の法則』を突破口としたのだ。高齢化と低出産で国民1人が減ると、1年に120万円の消費が消える。しかし、1回の訪問で1人当たり15万~16万円を使う外国人観光客を8人誘致すれば、1人の成人人口が生じるのと同じことになるのだ。この法則を実現するために、10年にわたって高山市は英語を教え、案内標識を取り換え、海外の旅行博覧会に参加した。モニタリングチームを設置して、外国人の立場から観光インフラを点検。施設の改善を図った」

     

    「1対8の法則」があるという。日本人1人が減れば、外国人観光客を8人誘致することで、経済的な損失をカバーするもの。日本人1人の年間消費額120万円の減少分を、外国人消費額1人平均15~16万円の8人分でカバーするというのだ。

     

    12月18日現在で、訪日観光客は3000万人である。日本人の消費額に換算すると375万人分になる計算だ。この「1対8の法則」を使うと、日本経済に大きなプラスがもたらされていることがわかる。

     

    (3)「努力は功を奏した。1日でも高山に宿泊したことのある外国人観光客は、1997年の3万人から昨年には18倍の52万人へと急増した。観光による後押しで雇用と設備投資は2兆ウォン(約2000億円)に上った。高齢化と人口減少に伴う内需の絶壁と景気低迷は乗り越えることができるということを、高山は証明しているのだ。観光入国政策を10年以上にもわたって続けてきた日本には、高山のような所が数多く存在する」

     

    高山市は、1997年に3万人の観光客(宿泊を含む)が、現在は52万人に増えていると言う。先の「1対8の法則」によれば、6万5000人分の高山市民の消費額に値する。昨年12月末の高山市の人口は、8万9280人だ。外国人観光客で6万5000人分の人口増に匹敵する消費がある計算だから、市の財政に相当の貢献をしている。宿泊設備を整えれば済むわけで、市民に必須の設備である学校・公民館等々の経費は不要である。こう考えると、外国人観光客の誘致は、最も効果的な産業誘致になろう。

     

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    文在寅大統領の支持率が、釣瓶落としの状態に陥っている。その中で顕著な特色は、20代の男女が、全く異なる評価をしていることだ。男子20代は、支持率は29.4%で年代別で最低、不支持率64.1%で同最高である。要するに、20代の男子は「ノー文在寅」である。

     

    ところが、同じ20代の女性は男子と全く異なる評価である。支持率は63.5%で、年代別で最高、不支持率は29.1%で最低である。いずれも、 最近発表されたリアルメーターの世論調査結果である。

     

    男子の支持率が、最も低い理由は、就職難であろうことはすぐに分かるが、女子の支持率が最も高いのはなぜか。

     

    『中央日報』(12月19日付)は、「韓国20代女性はなぜ文在寅大統領が好きなのか」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「20代女性が文大統領を支持する理由は何だと見るべきか。彼女たちがフェミニストで、現政権から恩恵を受けていると考えているからだろうか。20代女性支持者に尋ねてみた『金正淑(キム・ジョンスク)夫人と一緒に登場する場面を見ると愛妻家という気がする。捨て犬保護所から子犬をもらってきて飼っていることを知ってイメージがさらに良くなった。また、出産や育児支援政策を積極的に展開している点も肯定的に見ている』 という」

     

    文大統領は、海外出張では必ず夫人同伴でむつまじい姿が伝わってくる。夫妻は恋愛結婚であり、学生運動で負傷した文氏が女子学生(現夫人)に手当てして貰ったという話を聞く。それが、縁になったという。文氏の政策には賛成しかねるが、夫人と手を取り合って飛行機のタラップを降りてくる姿は、なんとなく微笑ましく映る。20代女性は、文氏が愛妻家と見る。また、子犬と映っている写真も公表されている。これも好感度を上げている。優しい人柄であることは確かなようだ。

     

    (2)「特に20代の考えに注目する理由は唯一この世代で明確に現れてい『ジェンダーギャップ』のためだ。リアルメーターが最近実施した共同体葛藤関連世論調査(成人1018人対象)によると、20代は性葛藤(57%)を最も深刻な問題に挙げた。全体年齢帯では貧富葛藤(35%)という回答が最も多かったが、20代はジェンダーイシューに特に敏感であることを示している。最近議論になった『女性暴力防止法』に対する賛否世論調査でも、20代女性の91.5%が賛成した反面、20代男性は26.2%だけ賛成するなど、ジェンダー格差が最も大きく広がった」

    ここでは、韓国の深刻な「ジェンダーギャップ」(男女格差)問題が浮き上がっている。これは、日本も同じ状態だ。
    世界経済フォーラム(WEF)による男女格差の度合いを示す「グローバル・ジェンダー・ギャップ指数」2018年版が12月18日に発表された。調査対象となった149カ国のうち、日本は110位だった。韓国は115位、中国103位である。北東アジアの三カ国はいずれも振るわない結果となった。

     

    韓国では、文政権が「女性暴力防止法」が議論になっているので、20代女性はそれに期待して「文支持」に回っていることが分る。男女格差があるのは、日本も韓国も同じような状況である。改善が求められるのだ。日本では労働力不足に陥っているので、否応なく改善の方向に向かうほかない。

     

    メルマガ10号 「混迷する韓国経済、青年の5人に1人が失業へ。文在寅大統領がハマった罠とは?」が、『マネーボイス』で紹介

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    今朝、下記の目次で発行(有料)しました。よろしくお願い申し上げます。

     

    4大陰り現象は解決困難

    合意書の焦点が4点ある

    最強固派の習氏には打撃

    「中所得国の罠」脱出?

    来年経済は波乱の幕開け

     

     

    12月18日は、鄧小平によって始められた「改革開放」から40年たった記念日に当ります。中国経済が破竹の成長を始めたのは、1978年12月18日です。鄧小平は、中国経済の市場化を目指しましたが、党内には「市場経済」という言葉に強い拒否感があり、これをなだめるべく市場経済に「社会主義」という形容詞を付けるほどでした。社会主義=計画化によって市場経済をコントロールする意味です。

     

    4大陰り現象は解決困難

    過去40年間の平均成長率は、9.8%にも達しました。世界に例のない高度経済成長を実現しましたが、その裏には多くの問題点を抱えています。

     

    .環境破壊の凄まじさです。大気汚染を筆頭にして、土壌汚染や水質汚染など「環境崩壊」という言葉がふさわしいほどです。農村部には、「ガン村」と言われるように特定地域で集中的に癌患者が発生しています。この「ガン村」が約3000箇所あると指摘されています。

     

    2.「一人っ子政策」によって、極端な少子高齢化が進んでいます。一人っ子政策が、過渡的に生産年齢人口(15~64歳)比率を増やし、これが高度経済成長に多大の寄与をしました。だが、少子化によって合計特殊出生率(1人の女性が生涯に生む子どもの数)は、世界最低ラインに落込んでいます。2015年に1.05人(人口の横ばい維持には2.08人が必要)まで下がっています。日本を下回る状態で、将来の人口動態に危険信号が出ています。現在は、この種の統計発表を中止するほど追い込まれています。

     

    .不動産バブルによる過剰債務の発生です。習近平政権になって、意図的に不動産バブルによって住宅ブームを引き起こして、景気のリード役に仕立てあげました。国民は、住宅の高値に怯えて先を争い高額の住宅ローンを組み購入しました。現在、これが家計を圧迫しており、個人消費鈍化の大きな要因になっています。

     

    .不動産バブルは、中国経済全体に過剰債務をもたらしています。中国の抱える債務残高は、対GDP比で260%以上に達しています。これ以上は債務を増やせない。そういう限界状況において、「信用収縮」が起っています。金融機関が新規融資を渋る状況では、企業の資金繰りがつきません。国有企業は、国有銀行から融資を受けられます。民営企業には日本のような「メインバンク」がありません。非金融機関のシャドーバンキング(影の銀行)からの融資に頼っています。この脆弱性が、金融リスクを生み「地雷原」となります。

     

    改革開放40年間の光が、平均9.8%の成長率としましょう。その影は、誰でも前記の4点を挙げると思います。今後、潜在成長率低下の中で、これらの難題をどのように解決するのか。舵取りは極めて難しいのです。

     

    合意書の焦点が4点ある

    難題は、これだけではありません。現在、米中貿易戦争が「休戦」とはいえ、米国政府から来年2月末までに米中首脳会談で合意した5項目(うち、1項目は実行中)の「合意書」を要求されています。合意できなければ、米国の関税第3弾2000億ドルの関税率が25%に引き上げられます。米国は、すでに官報で告示しました。

     

    米中で合意書を求められている項目は、次の通りです。詳細な説明は、「メルマガ11号」を参照して下さい。

     

    .米企業への技術移転の強要

    .知的財産権の保護

    .非関税障壁

    .サイバー攻撃

     

    ムニューシン米財務長官は12月18日、関税を巡る米中間の休戦が終了する2月末までに「合意内容の文書化」に取り組んでいると『ブルームバーグ』のインタビューに答えています。この文書化が重大な意味を持ちます。米中が目指す正式合意には、中国が取り組む構造改革のスケジュールや検証方法について、ムニューシン氏は「十分に具体的」な内容が盛り込まれる見込みだと語りました(つづく)

     


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