勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    痛ましい事故であった。すでに10日以上経っているが、被害状況の正確なデータが発表されない状態が続いている。その一方で、早くも補償問題が話題に上がっている。本来であれば、事故原因調査が優先されるはずだが、先ず金銭問題が登場している。お国柄だろうか。

     

    『朝鮮日報』(8月2日付)は、「ラオス政府、ダム事故は人災、SK建設に補償要求か」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「ラオス国営メディア『ビエンチャン・タイムズ』によると、ラオスのシーパンドン副首相は先ごろ、事故処理のための特別委員会会議で『洪水はダムにできた亀裂が原因で発生したもので、被害者への補償も一般的な自然災害とは違う形になるべき』と言及した。つまり『特別補償』が必要というわけだ。エネルギー鉱業省のポンケオ局長も『われわれには被災者に対する補償規定があるが、この規定は今回の事故には適用されないだろう。今回の事故が自然災害ではないからだ』と述べた」

     

    今回の事故は、自然災害でなく人災と位置づけている。この場合、どの程度の「割増」を要求されるのか不明である。

     

     

    (2)「ラオス当局が発表した現時点での人命被害は死者13人、行方不明者118人。周辺の村や田畑の浸水に伴う物的被害の規模はまだ具体的に明らかにされていない。SK建設、韓国西部発電、タイのラチャブリ電力、ラオスのLHSE社による合弁会社、PMPC側は、68000万ドル(約700億円)規模の建設工事保険に加入している。工事保険は、工事の目的物であるダム自体の損害などを補償するもので、一般住民の被害については特約事項となっている」

     

    68000万ドル(約700億円)規模の建設工事保険に加入しているが、ダム自体の損害補償である。後のパラグラフにあるように、特約条項で一般住民の被害補償も入っている。

     

    (3)「SK建設は、『工事に関連して事故が発生した場合、第三者に対する被害まで補償する保険にも入っている』と説明した。しかし、事故原因が施工上の問題と判明し、民間人の被害金額が保険で設定された金額を上回る場合、SK建設が大規模な被害補償を行わなければならなくなるというのが業界の分析だ」

     

    事故原因が、施工上のミスと断定され、一般人の被害額が全て保険でカバーできない場合、SK建設が負担せざるを得なくなる。これが、業界の分析という。ただ、SK建設は韓国第3位のSK財閥の一員という立場から、SK財閥グループで支援する形になるのでないか。韓国の「反企業ムード」から言えば、文政権がSK財閥に圧力をかけるケースは十分に予想できる。


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    米国の恐ろしさを見せつけたのが、「新国防権限法」である。8月1日、米上院で成立し、トランプ大統領に署名を待つばかりとなった。この法律は、毎年の米国防予算を決めるという法主旨だが、それだけにとどまらない。米国の安保戦略が全て含まれている。非公開部分があるという法律であり、米国の対中国戦略は大きく転換した。

     

    もはや、オバマ政権時代のような「中国融和姿勢」をかなぐり捨て、力には力で対抗する基本方針が盛られている。米朝首脳会談を機に、トランプ大統領は「在韓米軍撤退」を臭わせる発言をしたが、今回の新国防権限法によってそうした撤退論を封じられた。

     

    『朝鮮日報』(8月3日付)は、「米議会、新国防権限法で在韓米軍削減を制限」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「米国政府が議会の承認なく在韓米軍の兵力を2万2000人以下に減らせなくする『2019会計年度国防権限法』(NDAA)が8月1日(現地時間)、米国連邦議会上院本会議で可決した。法は、在韓米軍の削減が米国と同盟国の安全保障を深刻に阻害せず、韓国・日本との合意を経たと国防長官が議会に確認した場合を除き、現在2万8500人規模の在韓米軍の兵力を2万2000人未満まで削減してはならないと制限している。また、米国政府が今後北朝鮮と結ぶ核合意の履行状況について、検証評価を議会に報告するよう義務付ける内容も盛り込まれた」

     

    メディアを賑わす、在韓米軍の削減については厳しい枠が付けられ、安易に削減論を話題にできないように国防権限法がお目付役になった。現在2万8500人規模の在韓米軍の兵力を2万2000人未満まで削減してはならないと制限した。しかも、日韓の合意を得ることを前提にしている。中朝の動きに警戒の目を光らしているのだ。

     

    (2)「また同法では、『在韓米軍に対する議会の認識』という条項を別に設け『在韓米軍の相当規模の削減は、北朝鮮の完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)と関連するものなので交渉可能な項目ではない』として『CVIDが米国の外交政策の核心目標』と定めた。さらに同法は『在韓米軍の大規模な削減は、中国・ロシア・北朝鮮など専制主義諸国が長年追求してきた目標』と指摘した」

     

    北朝鮮の非核化では、CVID(完全かつ検証可能で不可逆的な非核化)を核心目標に据えている。トランプ政権が、ここから逸脱した米朝合意は不可能になった。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(8月2日付)は、「米国防権限法、中国への厳しい姿勢を反映」と題する記事を掲載した。

     

    (3)「米議会が可決を目指している年次の国防権限法(NDAA)について、一部議員は、これまでになく厳しい対中姿勢を反映していると指摘している。米議会では、中国に対抗しようとする超党派的な動きが勢いを増している。同法案には、中国政府の一連の政策に対抗する措置が含まれている。中国による南シナ海での軍事活動拡大、米国のハイテク技術を獲得しようとする行為、中国共産党の宣伝活動などに狙いを定めたものだ。今年の国防権限法に反映されているのは、議会や安全保障関係者の間に広がる超党派的なコンセンサスだ。すなわち、世界は大国のライバル関係を巡る新時代に入り、米国は中国やロシアとの競争に一段と力を入れる必要があるとの見方だ」

     

    米議会では、超党派で中国へ対抗する姿勢を強めており。これが「国防権限法」改正に色濃く反映されている。①南シナ海での軍事活動拡大、②米国のハイテク技術窃取行為、③中国共産党の宣伝活動などに狙いを定めた。①は南シナ海における中国軍活動の抑制、②は米中貿易戦争の主要テーマ。③は孔子学院への監視だ。米国が、長年見て見ぬ振りをした結果、中国を増長させたという反省が基本にある。オバマ政権の失だ。米国は、明らかに中国を「仮想敵国」にしている。

     

    (4)「米国は非機密扱いの2018年国家防衛戦略(NDS)で、『米国の繁栄と安全保障を巡る重要課題は、長期的かつ戦略的な競争の再出現』であり、『中国は自国に有利なようにインド・太平洋地域の秩序を塗り替えるため、軍の近代化や情報作戦、略奪的な経済政策を通して近隣諸国を抑圧している』と指摘している。国防権限法で特に目を引くのは、中国の経済活動に関する条項だ。法案は対中取引について、対米外国投資委員会(CFIUS)による安全保障上の審査を厳格化すると同時に、米技術の輸出規制の見直しを目指している」

     

    米国は、中国を封じ込める確固たる意思を内外に表明した。米中貿易戦争は、単なる経済問題を超えている。米中覇権争いへの米国の見せた最終的な回答である。私は常々、この視点から米中問題を見てきたつもりだ。


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    上海総合株価指数は、8月2日に前日比2%下落の2768ポイントで終わったが、3日も続落して2744ポイント(下落率1%)で引けた。米中貿易戦争の影響を懸念したもの。

     

    『ブルームバーグ』(8月3日付)は、次のように伝えた。

     

    「ブルームバーグの集計データによると、中国株は2日の下落で時価総額が6兆900億ドル(約680兆円)に目減りした。これに対して日本株は6兆1700億ドル。世界最大の株式市場は米国で、時価総額は31兆ドルをやや上回る水準だ。中国株式市場の時価総額は2014年終盤に日本を抜き、世界2位に浮上。15年6月には10兆ドル超の過去最高を記録した。上海総合指数は年初来で16%余り下落し、世界の主要株価指数でもパフォーマンスの悪さが目立つ。人民元は対ドルで5.3%下げている。米国との貿易摩擦や政府主導の債務削減の取り組み、景気鈍化が打撃となった」

     

    2015年6月に、中国の時価総額は10兆ドル超の過去最高を記録したが、その後は下落基調に転じて、8月2日には6兆900億ドルへ下落。日本の6兆1700億ドルを下回った。日本の世界2位浮上は4年ぶりだ。日中経済の勢いの差が株価に現れている。


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    サムスン電子は、現代自動車とともに韓国経済を牽引する二枚看板であった。「あった」と過去形にしたのは、現在の現代自の売上営業利益率は3%台に落込み、「ゾンビ化目前」という事態になったからだ。残るは、サムスンだけである。そのサムスンは、スマホの販売台数で中国勢の低価格品にシェアを食われて収益悪化を招いている。

     

    中国では、例の政府による補助金によって国内スマホメーカーが低価格で販売している。これは、WTO(世界貿易機関)違反であるが、「涼しい顔」で続けている。中国国内で低価格であれば、輸出しても反ダンピング法に抵触しないからだ。このように、巧妙に仕組んだ低価格品によって、サムスン・スマホは中国製品に追撃されている。

     

    サムスンは、韓国国内では文政権に目の敵にされている。朴槿惠・前政権との癒着を問われて批判の矢面に立たされてきた。これを跳ね返すような昨年の業績は絶好調を維持したが、今年はスマホの異変と半導体市況に陰りが出ており、今後は「下り坂」が予想されている。

     

    『朝鮮日報』(8月1日付)は、「スマホ不振のサムスン電子、減収減益、際立つ半導体依存」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「サムスン電子は、今年46月期の売上高が前期比3%減、営業利益が5%減と発表した。201746月期以降4半期連続の過去最高業績更新がストップした。サムスンは主力スマートフォン『ギャラクシーS9』の販売台数が予想を下回り、スマートフォン事業の業績は大幅に低下した。ディスプレーも中国製の安価な液晶パネルが大量に流入し、営業利益が縮小した。半導体事業は、過去最高となる営業利益を上げて業績を下支えしたが、営業利益の78%を半導体に依存する形となった」

     

    サムスンの業績は、スマホが停滞し半導体が好調という色分けである。スマホのライバルであるアップルは、業績好調で明暗を分けた。『韓国経済新聞』(8月3日付)が、次のような記事を紹介している。『ウォール・ストリート・ジャーナル』(8月2日付)が、「高価格戦略でアップルは上昇したが、サムスンは沈んだ」というもの。両社は、スマホ市場停滞に対応し昨年から高仕様スマホを高価格で発売した結果、アップルは従来の顧客を維持した。サムスンの一部の顧客は、中国企業などに流れた。アップルかサムスンか、という最終的なブランドの選択では、アップルに軍配が上がった形だ。

     

    スマホと一口にいっても、高級品から普及品にいたるまで多種多様である。販売台数で争のでなく、収益性に焦点が当てられている時代に移行している。

     

    (2)「スマートフォン事業を担当する無線事業部は、46月期の売上高が24兆ウォン、営業利益が26700億ウォンだった。1年前と比較すると、売上高は20%、営業利益は34%減少した。3月中旬に発売されたギャラクシーS9が前作と大差ないと不評で、アップル、華為(ファーウェイ)、小米(シャオミ)などとの競争でも押され気味となり、業績が伸び悩んだ。このままではギャラクシーS9の通年販売台数が当初目標の4500万台に大きく届かない3000万台以下にとどまるとの見方も聞かれる」

     

    4~6月期のスマホは、前年比で売上高20%減、営業利益率34%の減益になった。ギャラクシーS9の不振と中国勢に追撃されたもの。中国勢は、低価格品でシェ競争だけが目的、という感じである。

     

    (3)「最近、指摘されている半導体需要のピーク説に関連し、『今年下半期もDRAMNAND型フラッシュメモリーなどメモリー半導体の需要が増え続ける』との見方を示した。ただ、来年の市場見通しについては、『具体的な予測値を示すのは難しい』とした。半導体景気の後退懸念について、予測が難しいというのだ」

     

    来年の半導体市況は見通し難としている。世界的な過剰生産が懸念され始めている。


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    人民元相場は、4月から7月までの対ドルで8%安となり、4カ月間の下落率で過去最大を記録している。米国トランプ大統領は、これまでの「2000億ドル10%関税引き上げ案」を、急遽25%関税案にするよう検討を命じた。中国がこれに対抗するには、さらなる人民元安に誘導する必要がある。

     

    この人民元安相場が、中国にとって副作用はないのか。資本移動に厳重な規制を掛けているが、「蛇の道は蛇」である。必ずこの裏をかく動きが始まる。さらには、中国の抱えるドル建て債務が7750億ドルある。人民元安は、これら債務の返済時に負担が増えるという新たな問題が発生するのだ。

     

    『ロイター』(8月3日付)は、「人民元安、米関税対策で万能薬にあらず」と題するコラムを掲載した。

     

    (1)「米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表は8月1日、年2000億ドルの中国製品への追加関税について、税率を当初予定の10%から25%に引き上げると発表した。国際通貨基金(IMF)元首席エコノミストのオリビエ・ブランシャール氏は、当初予定されていた10%の関税であれば、人民元が6~7%程度下落すれば計算上は相殺できると指摘していた。元相場は5月初めから対ドルで7%超下落している。しかし25%となると、12%程度の元安が必要になる。つまり1ドル=6.8元の現行水準から7.2元程度への下落だ」

     

    米国の10%関税引き上げは、人民元がすでに4~7月でほぼ8%下落したから相殺可能である。だが、25%の関税引き上げに対応するには1ドル=7.2元程度が必要と指摘している。実は、7元割れの人民元安は最近ない。ドル・人民元相場の年間平均値では、リーマンショック(2008年)以前に遡る。人民元がここまで下げることは、中国経済が08年以前の状態に戻ることの間接的表現になろう。そこまで決意しなければ、簡単に下落させられないだろう。

     

    (2)「しかし現実は複雑だ。最新の経済協力開発機構(OECD)の統計によると、中国の総輸出の約3分の1は、海外で付加価値が生まれている。アジアのサプライ・チェーンにおいては、多くの中間財が何度も国境を越えるため、為替レートと輸出の関係が込み入っている。例えば2012年から13年にかけて日本円は対ドルで37%下落したが、日本の対米輸出は13年にむしろ減少した。中国の当局者は、通貨切り下げによる副作用にも神経をとがらすだろう」

     

    中国製造業は、サプライ・チェーンの拡大によって、人民元安がそのまま、輸出競争力を回復できない現実もある。即効性を求める人民元安政策は、むしろ逆効果を生みかねない。

     

    (3)「ノムラのアナリストの推計によると、中国のドル建て債務残高は7750億ドルに上り、元安によって返済コストは膨らむ。また、元が急激に下がり過ぎれば資本流出を招き、当局は2015年のように外貨準備を費やして鎮静化に努める必要が出るだろう。諸外国は、中国が人民元を貿易戦争の武器に使っているとみるため、通商交渉は複雑になり、中国の株式・債券に対する投資も妨げられかねない。人民元安が新たな関税の影響を和らげるのは間違いないが、決して万能薬にはならない」

     

    中国のドル建て債務残高は7750億ドルに上り、元安によって返済コストが膨らむ副作用が出てくる。同時に、資本流出を招く。現在の外貨準備高3兆1120億ドル(6月末)を取り崩す事態になろう。「虎の子」同様に大切にしてきた外貨準備高の減少は、中国にとって致命的な欠陥をもたらすに違いない。3兆ドル台割れは、中国に必要な外貨準備高2兆8000億ドル接近という悪夢につながる。


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