勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    中国が、意に従わない国に下す手段は、自国観光客を渡航させないことだ。観光客の「武器化」を実践している。人間が、鉄砲弾の代わりをしているが、こういう行為は、大国にふさわしくない振る舞いである。だが、そういう認識はゼロ。中国の民度が大国クラスでなく、発展途上国クラスと見られている理由だ。

     

    『大紀元』(8月28日付)は、「中国当局、中国人観光客を武器化、外交カードとして」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「国連世界観光機関(UNWTO)によると、中国人観光客の海外での消費額は世界全体の5分の1以上を占め、2位の米国の倍程度だという。ホテル予約サービスサイト、Hotels.comによると、2016年に12200万人もの中国人が海外旅行をしており、今後も80年代90年代生まれの世代を中心に増加する見込みだ」

     

    中国人観光客の海外消費額は、世界全体の5分の1以上を占め、2位の米国の倍程度だという。「爆買い」をやるから消費額が増える理屈だ。中国国内の医薬品や食品の安全性に問題があるので、先進国でこれら生活必需品を購入せざるを得ない事情もある。ただ、中国人観光客の増加は、国際収支の「サービス収支」赤字を増やしており、経常収支の黒字幅圧迫要因になっている。

     

    今年の経常収支黒字は1000億ドルまで減る予想だ。来年は500億ドルを下回る恐れが出ている。となると、いずれ中国で海外旅行が割り当て制になる可能性を否定できない。米中貿易戦争が激化して貿易黒字が減れば、経常赤字転落は必至だ。

     

    中国で海外旅行の割り当て制になったらどうなるか。国民の不満は沸騰しよう。そうなれば、習政権は保つだろうか。そろそろ、そういう頭の体操も必要だ。

     

    (2)「世界の観光市場を左右する中国人観光客だが、中国政府はこれを外交カードとして利用している。米ウェブニュース『Axios』は826日、『観光の武器化:中国』と題した記事で、中国政府は外交の都合で、自国から海外へ向かう旅行者の緩和や規制を操作していると指摘した。同記事は、819日にロイター記事を引用し、太平洋の小さな国であるパラオは現在、中国による観光を武器とした圧力で苦しんでいるとのレポートを発表した」

     

    パラオのほかに韓国がまだ虐められている。こういう振る舞いに義憤を感じる。中国は、大国風を吹かすのが大好きゆえに、まだ続けるのだろう。近く、経常赤字で本当に割り当てをやらざるを得なくなる時期が来たとき、バツの悪い思いをするに違いない。奢れる者久しからず、だ。


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    米国による対中制裁の第3弾として、2千億ドル相当に25%関税を科す予定だ。9月末が、発動時期とされている。中国経済には重大な影響が出る。家具までがその対象とされているからだ。投資ファンドでは、この危機をいかに回避するか知恵を絞っている。できるだけ現金保有比率を高め、対応を早める臨戦態勢だ。中国政府から、こういう逼迫感は伝わってこないのが不思議である。

     

    『ブルームバーグ』(8月27日付)は、「リターン618%の中国株ファンド、資産の半分を現金保有-先行き慎重」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国株式市場はまだ底入れしていない。2008年開始以降のリターンがプラス618%を記録した中国の株式ファンドが慎重な見方を示した。運用資産が約200億元(約3270億円)に上る北京源楽晟資産管理は、そのうち100億元相当を現金で保有している。ファンド幹部は中国経済の見通しや対米貿易摩擦を懸念しており、株式に対する極めて弱気なセンチメントの回復には、数年を要する可能性があると予想している」

     

    投資ファンドの「北京源楽晟資産管理」は、2008年以降に618%の上昇率を実現した屈指の好成績ファンドである。2015年の株価暴落でも無傷だが、現状の中国株価は「見通し難」としてさじを投げている。市場は超弱気が覆っており、回復には数年を要するというほどの重症である。

     

    (2)「源楽晟の曽曉総経理は先週、北京でインタビューに応じ、『多くの銘柄が下落し、価格水準が魅力的に映りつつあるが、中国経済の先行き不透明感があまりにも強い』と指摘。『われわれはしばらくマーケットエクスポージャーを抑え気味から比較的低水準に維持する方針だ』と述べた。源楽晟の投資姿勢は、中国国内の資産運用会社がいかに悲観的にみているかを示している。売買は減少しており、株式のバリュエーションが14年以降で最も低くなっているにもかかわらず、買いを入れようとする機運が乏しいことを示唆している」

     

    ここでは、中国経済の先行き不透明感が余りにも大きいと、指摘している。この状態を習近平氏はなんと聞くだろうか。彼らに、「米国衰退・中国発展」と聞かせたら腹を抱えて笑いこけるに違いない。まともな知識を持っていれば、習氏の国粋主義的な見通しは子どもの描く夢の類いだ。

     

    (3)「源楽晟を設立した呂小九ファウンディングパートナーは、『貿易戦争はわれわれの投資戦略に大きな影響がある。自動車部品や家具、一部の軽工業を含む輸出依存型の業種など影響を受けそうな業界への投資見送りを決めた』と話し、家電銘柄も売却したことを明らかにした」

     

    中国経済は、消費も売上が鈍化している。輸出関連は、米中貿易戦争で八方ふさがり状況にある。要するに買える銘柄がないと言うことだ。企業格付けも信用できず、投資ファンドの防衛策としては、総資産の半分を現金化しておく。それが、最善の投資戦術と言える。中国市場はここまで落込んだのだ。

     

     


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    米中貿易戦争は、次第に深みにはまりこみそうな気配だ。先の米中交渉では何らの進展もなかった。中国が、対応策を用意してこなかったからだ。これは、米中貿易戦争の原因が中国にないというポーズである。米国が、関税引き上げ策をとれば、中国もそれに対抗した措置を取る、としている。

     

    中国は表向き、米国を恐れないと言っている。しかし、貿易戦争が勃発すると「両方が敗れて傷を負う」とも言っている。どちらも敗者となるという意味だ。このことは、中国がまだ米国と対決する時ではないと考えていることの裏返しと言われている。実は、中国が何らの妥協もせずに時間稼ぎをしている間に、米国は着々と「戦闘態勢」を整えているのだ。

     

    8月24日、米国は日本やEUと話合いをし、中国のWTO(世界貿易機関)違反への対処について共通認識に達している。中国は、この動きを知らず、ただ、「米国を恐れない」というだけだ。一方米国は、第3弾の中国制裁として2000億ドル相当に25%関税発動を準備している。米国への跳ね返りがあることは当然。その負のブーメランが、米国経済に大きなダメージを与えない。それは、米国企業の設備投資動向が、その自信のほどを証明しているからだ。

     

    中国では、前述の通り「米国と争うときでない」と判断しているほどだから、企業行動が萎縮仕切っている。この米中企業の対応の中に、米中貿易戦争の帰結はすでに現れている。言葉を換えれば、中国の敗退は決まったようなもの。習近平氏の国粋主義が災いして、中国は、「負け戦」に突入するのだ。

     

    『ブルームバーグ』(8月24日付)は、「米耐久財受注、7月はコア資本財が予想上回る伸び」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「7月の米耐久財受注では、設備投資の先行指標となる航空機を除く非国防資本財(コア資本財)の受注が前月比1.4%増となり、6月の同0.6%増を大きく上回った。コア資本財の出荷は、GDPペースで7月が前月比0.9%増、6月が同0.9%増で好調を持続している」

     

    米国景気は、来年10月で景気循環の上昇局面が10年に達する。それにもかかわらず、設備投資の勢いが衰えないのは、トランプ大型減税(法人税と所得税)が支えているからだ。このトランプ減税については当初、その効果を否定する向きもあった。だが、法人減税については、設備投資を行なった場合、減税するという条件が付けられている。企業にとっては、設備投資を行なって初めて減税の恩典を受けられる仕組みだ。この期間は5年間である。企業にとっては「据え膳」でない。設備投資をしなければならないという、「ムチ」が用意されている。

     

    今後5年間、設備投資が無税となれば、中国へ進出している外資系企業は、米国へ回帰する可能性が強まる。米国は「2000億ドル25%関税発動」によって、世界のサプライチェーンをアジアから米国へ戻す構想を立てている。「メード・イン・チャイナ」から、昔懐かしい「メード・イン・USA」に戻したいのだ。中国は、ここまで米国を怒らせた。これが、中国が唱える「米国衰退・中国発展」に対する米国の回答である。どちらが衰退するか。習近平氏は首をすくめるだろう。

     

    『ロイター』(8月21日付)は、「米国経済と株式相場の新たな支え役」と題するコラムを掲載した。

     

    (2)「企業の設備投資が、米国の経済と長期間続く株式の強気相場を支える新たな要素となりつつある。各企業は、昨年の大型減税で浮いた資金の多くを新しい工場や設備の建設、ないしソフトウエア購入に振り向けている。これが好ましい流れをもたらし、同時に貿易摩擦などの逆風に対する『保険』の役割を果たしているのだ」

     

    米国経済は、設備投資という「エンジン」全開の状態を迎えている。設備投資は、潜在的成長率を引上げて、米国経済に新たな地平をもたらす。エンジンが力強く回っていれば、米中貿易戦争の逆風が吹き付けても吹き飛ばす。こういう構図が、米国株式市場には描かれつつあるという。

     

    (3)「バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチによると、S&P総合500種企業が第2・四半期に発表した設備投資額は前年同期比で24%増と、2001年以降で最大の伸びになった。より包括的な政府統計からも同様の傾向が読み取れる。第1・四半期の設備投資は前期比11.5%増、第2・四半期も7.3%増だった。投資はこれまで圧倒的にソフトウエアや知的財産が対象だったが、今はそれだけでなく有形資産向けも増えている。今年第1・四半期と第2・四半期の構造物投資はいずれも13%強増え、設備関連への投資は昨年初め以降10%近くの伸びが続く」

     

    S&P総合500種企業が、第2・四半期に発表した設備投資額は、前年同期比で24%増である。2001年以降で最大の伸びになった。これは、米企業が破竹の進軍を始めたシグナルである。投資はこれまで、圧倒的にソフトウエアや知的財産が対象だった。今はそれだけでなく有形資産向けも増えている。製造業が復活の狼煙を上げ始めたのだ。

     

    トランプ大統領関連のスキャンダルが法廷で裁かれている。トランプ氏の支持率へ影響与えて当然だが、現実はそうでない。「トランプ氏の支持率は44%となった。2つの裁判に関する新たな動きが報じられる前に実施された前回調査の46%からは小幅な低下だが、この変化は誤差の範囲内で統計的に有意性はない」(『ウォール・ストリート・ジャーナル』8月27日付)。経済動向が、大統領のスキャンダルを吹き飛ばしている。

     

     


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    習近平氏の対米政策をめぐる最大の誤算は、米国の関税引き上げ策が自らの孤立を招くと見たことだ。中国が、自由貿易体制の旗を掲げれば、日欧が中国側に回ると見たもの。自由主義諸国が、専制主義の中国と連帯して米国へ対抗する。そのようなことは、もともと全くあり得ない構図である。習氏は、日欧の出方を完全に見間違いがえた。逆に、中国が孤立しており、米欧日の連合軍によって攻められる側に回った。WTOルールの遵守を義務づけられるはずだ。

     

    『ブルームバーグ』(8月27日付)は、「トランプ政権の対中タカ派が攻勢を準備、通商協議が行き詰まる中」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「米中貿易摩擦は今後、一段と悪化しそうだ。この夏の間、リスクを検討したり警告を発してきたトランプ政権の対中タカ派が、ハト派を制し秋に攻勢に出る見通しだ。先週ワシントンで開かれた米中次官級通商協議は、摩擦解消に向けた明確な進展がほとんど見らず、中国からの年間2000億ドル(約223000億円)相当の輸入品への追加関税と中国の報復措置が現実味を増している。オバマ政権時代に財務省の中国駐在財務公使を務めたブルッキングズ研究所のデービッド・ダラー氏は、『われわれは向こう数カ月、貿易戦争の激化に直面する』と述べた」

     

    ホワイトハウスでは、通商政策をめぐるハト派とタカ派が主導権を争ってきた。トランプ氏の決済を得て、タカ派の対中政策が発動される見込みだ。中国の構造改革を要求するもので、WTOルールの完全実施である。技術窃取の禁止、政府補助金の禁止、国有企業の抑制、企業へ共産党支部設置禁止など、多方面の要求が並ぶはずだ。これを実施させるべく、2000億ドル関税発動となろう。今後数ヶ月、激しい米中の対立が予想される。

     

    (2)「トランプ政権当局者は24日、ワシントンで日欧当局者と、中国の方針変更を促す方法について協議した。多くのアナリストによれば、こうした協議も含め中国への対処に関する議論は米政権の対中タカ派の勝利となった。ワシントンの戦略国際問題研究所(CSIS)の中国専門家、スコット・ケネディ氏は、タカ派の勝利がこのところの米国の要求の変化に反映されていると指摘した。現在、米国は産業補助金や知的財産権侵害の取りやめなど、ライトハイザー通商代表部(USTR)代表やナバロ国家通商会議(NTC)委員長らタカ派が主張してきた中国政策の長期的な構造的変更を求めている。ただ、ホワイトハウスのタカ派とハト派の争いが決着したわけではない。ケネディ氏によると、タカ派はサプライチェーンをアジアから米国に戻すことを目指し、両国経済の絡み合った関係を長期的に解消するという一段と意欲的なアジェンダを見据えている」

     

    8月24日、米欧日の世界三極が、対中交渉をめぐる話合いを済ませた。米国のタカ派が日欧の了解を得た形で、中国と交渉を開始する。タカ派は、サプライチェーンをアジアから米国に戻すことを目指している、という。中国へ高い関税をかければ米国企業のみならず、日欧企業まで米国へ回帰させられると見ている。すでに台湾IT企業大手6社は、脱中国の意向を明らかにした。

     

    米国は、メディアが想像するよりも深い戦略を用意している。中国経済の空洞化まで狙う徹底した戦術が用いられるだろう。習氏は、「徹底抗戦」という不用意な発言のもたらすリスクに怯えざるを得なくなった。


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    韓国では、電気料金が累進制になっているという。この夏は、異常高温でどこの家庭でも朝からクーラーを付けっぱなしだ。ここで、頭の痛いのが電気料金の支払い。電気料金の多い家庭では6~7万円にもなるという。

     

    だからと言って、職場で諸々の電気製品の充電をするのもおかしな話だ。韓国では、これを大目で見ているというからまた驚く。最近、韓国メディアで「公共物を持ち帰る人がいる」と嘆いた記事があった。韓国社会では、こういう習慣があるようだ。

     

    数年前、日本のコンビニで起こった話である。無断で携帯の充電をして警察に逮捕された事件があった。窃盗罪に当るという。韓国では、電気自転車の充電を職場で行なうなど大掛かりである。

     

    文政権は、「脱原子力」で原発の稼働率を引下げている。この結果、韓国電力の赤字が昨年10~12月期からこの4~6月期まで、連続3期続いている。この状態から見れば、電力料金引き上げは目前。韓国では、「電気泥棒」がさらに増えそうだ。文氏が、電気泥棒を増やすという妙な関係になりそうだ。

     

    『朝鮮日報』(8月26日付)は、「電気泥棒に寛大な韓国社会」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「事務所や公共の場で家電製品を充電する『どこでも充電族』が増えている。自宅でエアコンを長時間使用すると、電気料金の累進制により電気料金がかさんでしまう。そのため、あちらこちらで『ただの電気』を使用する人々が増えているのだ。仁川のある大型飲食店で働くオさん(34)夫婦は、通勤のため毎日電気自転車で20キロを往復する。オさん夫婦の鞄には長さ20センチ、重さ1キロの電気自転車用充電器が入っている。勤務時間の間、飲食店のコンセントにつないで自転車を充電する」

     

    電気泥棒が増えているのは、最近のことだろうか。生活状況が悪くなってきた結果かどうかは分らない。だが、金額に換算すればそれほどの「得」になるか不明だ。「TV東京」で、電気バイクで旅する番組がある。20キロ走る充電費用が、15円と表示されている。となれば、「コスト削減」のほどは怪しい。要は、心の問題。卑しい心かどうかの問題だろう。

     

    (2)「24時間運営の無人販売施設にも、『どこでも充電族』は出没する。今月6日、地下鉄1号線の餅店駅近くの『UFOキャッチャー専門店』(24時間運営)では、顧客を待つ運転代行の運転手たちが空いているコンセントでキックボードと携帯電話を充電していた。あるキャンピング関連サイトには、週末会社にキャンピングカーを持ち込んで、会社の電気でエアコンを付け、テレビも見た、という書き込みも掲載された。韓国は、公共の場所の電気使用に寛大な方だ。日本では、会社や公共の場で無料充電する人々を『電気泥棒』と呼ぶ」

     

    このパラグラフを読むと、韓国社会のモラルが問われている。わざわざ、自慢げに会社の電気を使って「得した」という意識が見られて、眉をひそめる。人間としての尊厳が問われるようなことを自慢する。日本では、「ドケチ」と言って軽蔑の対象だ。


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