勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。


    アジア太平洋経済協力会議(APEC)が15日に終幕した。日米中など21カ国・地域が参加しており、APEC域内でインフラ投資を受ける国に対して透明性や財務の健全性を確保するよう求める新たな指針を作成し合意した。

     

    この合意によって、手足を縛られたのが中国である。返済不可能であることを知りつつ融資し、担保を取り立てる「借金漬け外交」が否定された。中国は、「一帯一路」だけでなくアフリカや中南米でも「借金漬け外交」を行なっている。この札束外交が、大きな曲がり角を迎えた。

     

    中国が、APEC会議でこの新基準作成に合意した背景には、経常収支の黒字急減問題がある。対外投資は本来、経常収支黒字があってこそ資金的に安定し、長期に行えるものである。ところが、今年の経常収支黒字は去年の1600億ドル台から急減。1~9月は赤字であり10~12月にどれだけ黒字を計上できるかという状態だ。来年は赤字予想である。これでは、相手国を「借金漬け」にする前に、中国が借金まみれになる。話はアベコベになった。

     

    『共同』(11月16日付)は、「APEC閣僚会議閉幕、インフラ投資指針で合意、健全性要求、中国を牽制」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「アジア太平洋経済協力会議(APEC)の閣僚会議が、パプアニューギニアで15日、開かれた。日本は中国の巨大経済圏構想「一帯一路」への牽制を念頭に、APEC域内でインフラ投資を受ける国に対して透明性や財務の健全性を確保するよう求める新たな指針を作成し、合意して閉幕した。政府関係者によると、インフラ整備に関する国際標準を文書化したのは初めて。中国のインフラ投資を受け入れた国で財政状況が悪化している例が相次いでいることを問題視し、歯止めをかける狙いがある」

     

    日本が、音頭を取って決めた合意である。日本は、「第三国市場協力」という名前でインフラ投資基準を決めている。健全性・経済性などの4項目だ。「一帯一路」にはない投資基準であり、APECで承認された。

     

    (2)「世耕弘成経済産業相は同日、記者団の取材に「アジア各国で今後インフラ整備が進む上で非常に有意義な成果だ。中国からも合意を得られた」と述べた。指針は海外融資で整備した港湾や鉄道などの施設を特定の融資国が囲い込んで使用しないよう求めたほか、対外債務の返済が滞る事態にならないよう計画性を持たせることなどを融資条件にするように呼び掛けた。建設した設備の経済合理性の確保も求めた。パキスタンやラオスは中国からの融資で対外債務が膨張。スリランカでは中国が債権者の地位を利用して、南部の港湾の運営権を奪うといった事例が出ている」

     

    中国の略奪的な融資は不可能になったが、今後の中国はどう変わるだろうか。一足飛びに「紳士の国」になるはずもないが、これまでの外延的な発展に制約がかかったのは確かだ。一つは、経常収支黒字の激減と赤字転落問題。もう一つは、APEC会議の申し合わせである。これで、海外での騒ぎは少し鎮まる気配となった。


    中国は、米国から要請のあった幅広い通商改革に対し、書面で142の項目で回答した。内容は、今後対策を取ることに前向きな分野、すでに取り組んでいる分野、聖域とされる分野の3つのカテゴリーに分類されている。ロイターが16日伝えた。

     

    いずれの項目も米国を満足させるものでなく、米ロス商務長官は「来年1月1日から予定通り2000億ドル分について関税率を25%(現在10%)に引き上げる」と発言した。

     

    中国経済は10月以降、急速に悪化している。金融危機がいつ発生してもおかしくない状況へ追い込まれた。中国政府がこれを放置して、なお強気姿勢を貫くことは、「自殺行為」であろう。米国に屈しないという「メンツ」維持が、中国経済を破綻に追い込むであろう。習近平氏の権威は、確実に低下へ向かっている。

     

    『ブルームバーグ』(11月16日付)は、「米中首脳会談、将来の交渉『枠組み』で合意の可能性ーロス商務長官」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「ロス米商務長官は15日、予定されている米中首脳会談がうまく行けば、貿易摩擦解消に向けた将来の交渉の『枠組み』で合意する可能性が高いが、それでも米国は来年1月に中国からの輸入品2000億ドル相当への関税率を予定通り引き上げる計画だと述べた。米中両国は現在、11月30日、12月1日の両日にアルゼンチンで開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせて行う計画の首脳会談の議題と、現実的にどのような成果があり得るかについて話し合っている」

     

    ロス長官は、将来の交渉の「枠組み」で合意する可能性が高い、と指摘している。先に中国が提示した回答には、すぐに解決に向かうような具体案がないことを示唆している。

     

    (2)「ロス長官は、『大きなイベントはアルゼンチンのG20でのトランプ大統領と習近平国家主席の1対1の会談になるだろう。他のことは全て、これに向けた準備にすぎない。真の枠組みが作られるかどうかを決めるだろう』と話した。また、米中両首脳が『液化天然ガス(LNG)の輸入量がどうのこうのという細部に立ち入ることはなく、全体像を話し合うことになるが、うまく行けば将来に向けた枠組みが設定されるだろう』と述べた上で、『1月までに完全な公式合意に至ることはないとわれわれは確信している。それは不可能だ』と指摘した」

     

    米中首脳会談が、具体的な成果を上げられずに終われば、世界的なショックは避けられないだろう。それにもまして、中国国内の衝撃は大きく、経済活動は一段の低下が見込まれる。厳寒期入りである。金融的に行き詰まり現象が一層、明らかになって行く


    やっぱりと言うべきか。「独身の日セール」にはカラクリがあった。前日に値札を釣り上げ、当日に下げて、あたかも値引きによる「バーゲンセール」を装ったというのだ。ニセ物商売で名高い「中国商法」が、真っ当な商売をするはずがない。経済倫理に欠ける中国ビジネスの一端を表わしている。

     

    『大紀元』(11月15日付)は、「独身の日セールで取引総額51兆円、不当な割引表示で多くは値下げされていないか」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国では1111日は「独身の日(双11)」と呼ばれ、大型ネットショッピングデーとなっている。中国の各ECサイトの取引総額は5.1兆円で、日本の年間電子商取引(EC)規模に匹敵する取引額だ。報道によると、京東に出品されているあるブランド寝具は通常価格229元のところ、独身の日セールの直前に379元につり上げ、セール期間中は再び249元に引き下げて『35%OFF』をうたっていた」

     

    日本でも値札を書換えるだけで、大幅な値引き販売のような「偽商売」は、厳しく規制されている。「独身の日セール」では、その熱気に押され、あたかも「大バーゲン」という幻想をあたえる販売法が取られている。中国消費者は、詐欺商法が横行している現実を知るべきだろう。事前に、通常価格をチェックしておくぐらいの用心深さが必要になってきた。

     

    (2)「このように、セール幅を強調するために、淘宝や京東などECサイトの出店店舗はセール直前に製品を通常価格から2倍近く値をつり上げ、セール日に再び引き下げるという操作が行われている。中国メディアの記者は1111日の前週までに、淘宝と京東からそれぞれテレビや蒸し器など50の製品をカートに入れた。セール前日の1021時頃、この100点すべての価格が上昇した。セール日には、それぞれ10点ほどの製品の価格が下がった。こうした問題は昨年から指摘されていた。中国消費者協会の報告によると、2017年の独身の日でセール品とうたわれた製品のうち8割は、通常価格よりも値引きされていなかったという」

     

    2017年の独身の日でセール品とうたわれた製品のうち8割は、通常価格よりも値引きされていなかった、という。こういう「詐欺商法」は消費者を欺くものだ。この種のニュースも、習氏の指示で検閲されて「没」にされていれば、消費者は知るよしもない。情報管理の統制国家は、消費者に不利益を与える。



    シンガポールで15日開いた東アジア首脳会議で、南シナ海問題を巡って米国と中国が激しい応酬を繰り広げた。米国ペンス副大統領は、「南シナ海で軍事拠点化を進めるのは違法だ」と中国を厳しく批判したもの。

     

    ペンス氏が、中国批判することは「予告」されていた。米『ボイス・オブ・アメリカ』11月10日付)は、米政府高官の話として伝えていたもの。アジアにおける、米国のプレゼンスをはっきりさせる狙いがあった。

     

    『日本経済新聞 電子版』(11月15日付)は、「南シナ海問題、ペンス氏と李氏が応酬、東アジア首脳会議 」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「シンガポールで15日開いた東アジア首脳会議で、南シナ海問題を巡って米国と中国が激しい応酬を繰り広げた。中国の李克強(リー・クォーチャン)首相が米国を念頭に「域外国は地域の努力を尊重することを望む」と第三国の介入をけん制したのに対し、ペンス米副大統領は「南シナ海で軍事拠点化を進めるのは違法だ」と反論。貿易問題でも対立するなど、両国の溝の深さを浮き彫りにした」

     

    中国の習近平氏は、米国オバマ大統領(当時)に対して、南シナ海の軍事基地化をしないと約束していた。現実は、この約束を破って軍事基地にし、ミサイルを持ち込んでいるとされる。中国は、このように既成事実化しているが、米国が許すはずがない。米国から詰問されたら、「グーの音」も出ないのが中国である。ともかく、あらゆることで約束を守らないのが中国だ。米国が、面罵するに等しい怒りを表わすのは当然であろう。

     

    (2)「南シナ海を巡ってはベトナムやフィリピンなどASEANの一部加盟国と中国が領有権を争っている。李氏は「南シナ海の情勢は安定してきている」と訴えたが、ペンス氏は「インド太平洋に帝国と侵略の居場所はない」と語り、軍事拠点の増強など地域への影響力拡大を図る中国を暗に批判した」

     

    ペンス氏は、予告通りに強烈な中国批判を行なった。「インド太平洋に帝国と侵略の居場所はない」と指摘し、帝国=中国を侵略者と位置づけたのだ。出席者によると、ペンス氏の強い口調に東南アジア諸国連合(ASEAN)各国の首脳らは驚いた様子を見せたという。「米国ここにあり」、ということで不退転の決意を見せつけたのであろう。



    中国の金融状況は危機的な事態へ突入している。

     

    以下の3つの重要な貸出指標が、10月に急減していることは異常な事態が起こっていることを示唆している。中国政府は、厳しい経済ニュースの検閲を始めている。その理由が、この金融事情の急変にあることは間違いない。

     

    人民元建て融資が、10月は9月の半減。社会融資総量が、10月は9月の3分の1に減っている。これでは、経済活動がストップに等しいことを示している。人間に喩えれば、心臓が止まりそうな事態だ。

     

       10月の新規人民元建て融資は6970億元(約11兆3611億円)で、9月の1兆3800億元(約22兆4940億円)から半減した。

     

       10月の社会融資総量は7299億元(約11兆8974億円)で、9月の2兆2100億元(約36兆230億円)から3分の1に急減少した。

     

       10月のマネーサプライ(M2)は前年比8.0%増で、9月の8.3%増から低下した。

     

    香港紙『経済日報』の報道によると、市場関係者や専門家は、10月の中国融資統計は「目を疑うほど低い」と指摘した。一部の専門家は、今後発表される製造業の設備投資について消極的な見方を示した。以上は、『大紀元』(11月15日付)が伝えたもの。

     

    中国政府による経済ニュース検閲で、中国国内では知られていないようだ。上海株価もこれを全く反映していないからだ。ともかく、事態は切迫してきた。厳重な注意が必要になった。

     

     


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