勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    米中貿易戦争を契機に、中国の経済構造の矛楯が一気に噴き上がっている。およそ、GDP世界2位にふさわしい体裁をなしておらず、ゲリラ的な経済運営であることを証明している。「ゲリラ」という言葉の対は「正規軍」である。中国の経済政策は、「正規軍」というオーソドックスなものでなく、木に竹を接ぐものだ。

     

    その一端は、企業格付けである。これが全く機能を果たしていない。企業側からの賄賂によって格付けが左右されるというデタラメぶりである。金融逼迫の現象が起こっている現在、融資先企業の財務内容を的確に把握する指標は格付けのはずである。その格付けが、企業実体を表わさないので、正確な貸付のリスク計算もできない状態だ。債券発行企業の格付けは、6割が最高格付けの「トリプルA」(AAA)が付けられている。この「トリプルA」からデフォルトが出る惨状である。

     

    AAAは本来、デフォルト率「0%」である。それほどの最高ランクの格付けが、中国企業の6割についていること自体が異常なのだ。当然、企業と格付け会社との「癒着」が想像できる。それを裏付ける事件が持ち上がった。次の記事がそれである。

     

    「8月20日、中国当局は、利益相反の疑いで大手格付け会社『大公国際資信評』」に異例の厳しい処分を実施した。しかし政府は現在、景気テコ入れを目指し銀行にインフラ支援を呼びかけてもいる。貸出しの増加とリスキーな慣行の取り締まりを両立させるのは難しい。今回の処分は政府のジレンマを浮き彫りにした」

     

    「中国証券監督管理委員会は17日、大公国際資信評価に対して1年間の新規業務停止を命じた。同社が高額なコンサルティング・サービスを提供した企業に格付けも付与し、利益相反の恐れがあるというのが理由だ。中国では格付け会社と企業の癒着がリスク評価を歪ませており、不正一掃は確かに長年の課題だった。データ会社ウィンドによると、中国の既発債券の60%(金額ベース)は『トリプルA』格付けの発行体のもので、これは驚くべき数字だ」(以上は、『ロイター』(8月25日付)

     

    厳格であるべき企業格付けが、賄賂まがいの「コンサルティング・サービス」契約を結んだ企業に、AAAという最高格付けを出すというのだ。こういう実態を見ると、格付け自体が信用できず、金融機関は融資の基準になる尺度がないのだ。これは、中国の金融監督当局の業務懈怠でもある。こうして調べれば調べるほど、中国の金融秩序はデタラメの限りを尽くしている。これが、崩壊したならば再建は絶望と見られるほどだ。

     

    この金融無秩序状態で、当局が金融緩和を図っても実際に企業の資金繰りが楽になる保証はどこにもない。こうなると、中国の内需拡大策は、従来型のインフラ投資と不動産開発の二本柱に依存する。

     

    インフラ投資の拡充は、次のような路線が決められた。

     

    『日本経済新聞』(8月1日付)は、「中国、景気重視に転換 政治局会議 公共投資拡大へ」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「2018年下期に積極的な財政政策で景気を下支えする方針を決めた。地方のインフラ整備など公共投資を拡大するとみられる。金融政策も緩和方向に修正する。米国との貿易戦争の激化に備え、景気優先の運営にカジを切る。習近平指導部はこれまで、過剰債務の削減など構造改革を優先課題としてきた。景気刺激へのシフトで構造改革が先送りになるおそれが強まる」

     

    インフラ投資は、建設時期はGDPに寄与するが、人口密度の低い地域での投資であるから、リターンはほとんど望めない。この投資が、財政資金で賄われるのでなく、借入金や債券発行による調達に依存する。こうして負債が累積し続けるという最悪状態になる。今回もその例外でなく、中国経済を蝕むことが不可避だ。童歌の「行きはよいよい、帰りは怖い」という「通りゃんせ」と同じ状態になろう。つまり、債務によるインフラ投資は、返済で難儀を被るという意味だ。

     

    (2)「中国政府はすでにインフラ投資の拡大に動き始めている。国営の新華社によると、7月25日から27日にチベット自治区を視察した李克強首相は鉄道建設の現場を訪れ、工事の加速を指示した『中西部のインフラはまだ脆弱だ。有効な投資で弱い部分を補強すれば、地域間の格差を縮めるだけでなく、経済にかかる下押し圧力への対応にも役立つ』。李首相はこう述べ、景気対策としてインフラ投資を増やす必要性に言及した」

     

    中国の国家発展改革委員会によると、7月のインフラ投資計画承認額は、776億9000万元(112億4000万ドル)と発表した。6月の208億元(公式データを基にロイターが算出)のほぼ4倍に相当する急増ぶりだ(『ロイター』8月16日付)。中国政府が、いかに慌てふためいているかが分る。この投資が、GDPに寄与するのは来年の話だ。急場には間に合わない。

     

     



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    破竹の勢いで、対中貿易戦争に臨んでいる米国トランプ大統領に、前途多難を予想させる問題が持ち上がっている。トランプ氏が過去に関係した二人の女性に対して、大統領選挙中にトランプ氏の個人的弁護士は「口止め料」を払った。これが、選挙違反に問われて有罪となった。しかも、トランプ氏が口止め料支払いを承知していたことも分かった。

     

    野党の民主党は、鬼の首を取ったような「喜び」を押し殺している。これで、仇敵のトランプ氏を弾劾に持ち込みたい、としている。ただ、トランプ氏が、ロシアと謀議を重ねて大統領選を勝ったという問題ではない。「派生的」問題で大喜びして、今から「トランプ弾劾」と言い出せば、逆に「トランプ支持派」を刺激して逆効果になりかねない。だから、前述のように「喜び」を押し殺して、次なる闘いの準備を始めている、というのだ。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(8月24日付)は、「大統領の弾劾に口つぐむ民主党」と題する社説を掲げた。

     

    (1)「(トランプ氏の元私的弁護士の)コーエン被告の罪は重大だが、大統領弾劾の議論は「時期尚早」だと民主党の上院院内幹事を務めるディック・ダービン議員も言う。『より多くの情報が出てくる必要がある』ため、『まだそうした言葉を使う段階ではない』。政治的な現実はこうだ。民主党が11月の選挙で下院の過半数を獲得すれば、ほぼ確実にトランプ氏の弾劾手続きに入るだろう。民主党のこれまでの発言や既に動き出したプロセスからみて、民主党には他に取るべき道があまりない。ただ、選挙前の今はそれを認めたくないだけだ。4年の任期を見越して大統領を選んだつもりでいる大勢の『嘆かわしい人々」』(トランプ氏の支持者)や無党派層の人々を刺激しないようにとの配慮だ」。

     

    民主党支持者にとってトランプ氏は、仇敵である。大統領選直前まで、有利に闘っていたクリントン氏が、まさかの敗北を喫した。その理由は、ロシアの選挙干渉である。その裏に、トランプ氏がいたはずだ。そう思い込んでいる。現在は、選挙違反ということだが、今後にボロが出てくるはず。11月の中間選挙までは沈黙して我慢しよう、というもの。

     

    (2)「民主党が下院(定数435)で228議席を獲得し、過半数を奪還するのが妥当な推測だと思われる。10議席差は多くないが安定的多数といえる水準だ。それは民主党が2年間主張し続けたことによってもたらされた結果となる。すなわち、トランプ氏はロシア政府と共謀して2016年の大統領選をかすめ取った正当性を欠く大統領であり、大統領の地位を私利私欲の手段に利用しており、米連邦捜査局(FBI)のジェームズ・コミー前長官を解任したことは司法妨害にあたり、コーエン氏が有罪を認めた以上、もはや選挙資金不正の「起訴されていない共謀者」(注:トランプ大統領)だという主張だ」

     

    民主党が下院で過半数の議席を得たら、「トランプ弾劾」を声高に主張する。これが、民主党の戦略である。確かに、トランプ氏は破天荒なタイプだ。世界中をかき回している人物である。だが、米中貿易戦争という世界の自由と民主主義を賭けた大戦略を前に、二人の女性に口止め料を払ったことを理由に、弾劾する意味を考えるべきだ。中国が、先の米中交渉でなんらの解決策も持たずに臨んだ裏に、民主党と気脈を通じていた? そんなことはあり得ないが、中国は大いに期待していることだろう。民主党は、党利党略を避けて世界の利益を考えるべきだ。



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    韓国がまた衝撃を受けている。米国が、これまで「門外不出」としてきたステルス型戦闘機F22改良型計画への参加を、日本企業に認めたことだ。しかも、2030年をメドに、日本の開発・生産の分担比率50%以上にするという提案に、さらに驚いている。

     

    F22の性能については、世界最強の戦闘機とされている。その特色は、ステルス性能と超音速巡航速度にある。敵に見つかる前に敵を発見・攻撃・破壊という三拍子が揃ったもの。この米空軍の「虎の子」技術を日本に公開し、改良型の共同開発を認めたことは、日米同盟が新段階へ進む意味である。

     

    中国が猛烈な勢いで軍拡に進んでいる現在、これを食い止めて確実な安全保障体制を確立するには、最新鋭戦闘機で防衛する以外にない。米国が、アジアの安保体制において日本を「同等」の国として信頼を持つにいたった表れである。このほか、日米貿易赤字解消という狙いも込められている。

     

    『朝鮮日報』(8月24日付)は、「韓国に技術移転しない米国、日本と新型ステルス機を共同開発へ」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「米国政府は、F22の技術移転はもちろん完成機の販売すら禁じていた。今回、日本に対しては鍵を開けてやったのだ。米国は、韓国はもちろん盟邦たる英国やイスラエルにも、F35ステルス戦闘機は売ったもののF22は売らなかった。韓国軍のある消息筋は『韓国空軍の一部ではF22の配備を希望していたが、米国法で2018年まで海外販売が禁じられており、価格の高さなどのため実際にはその気になれなかった事案』と語った」

     

    米国が、これまで英国やイスラエルにさえ販売しなかったF22の改良型の共同開発を日本に認めたのは、「超破格」というべき措置である。この裏には、①日本の機密保護法が情報漏洩を防ぐこと、②中国軍の現実的脅威が迫っていること、③日本がアジア安保体制を米国と担うこと、などの諸点を意味するであろう。機密保護法については、日本国内で大変な騒動を巻き起こしたが、国民の知る権利を侵さない限り、役立つ法律であろう。

     

    (2)「日本経済新聞は、改良型F22が配備された場合、日本全域の防衛が一層強化されるだろうという見方を示した。専門家らは特に、日本の次世代戦闘機が、既存のF22やF35を上回る世界最強の戦闘機になるかもしれない、という点に注目している」

     

    朝鮮日報記事では、「F22の改良型が世界最強の戦闘機になるかも知れない」というが、F22がすでに世界最強の位置にある以上、さらにその上を行く「絶対的戦闘機」として、日本とアジアの安保体制に寄与する。

     


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    中国は、蔡氏が台湾総統に就任以来、露骨な台湾虐めを行なっている。国民党出身の馬氏が総統時代には見せなかった牙を剥く。台湾と国交を結ぶ国家に札束外交で接近。「台湾断交・中国国交」に持ちかけ相次いで成功している。台湾と国交を結ぶ国家は17ヶ国に減った。これに危機感を持つ米上院議員は、台湾支援法を準備しているとロイターに語った。

     

    中国は、種々の「悪事」を働いている。台湾の「TPP11」(米国抜きの環太平洋経済連携協定)参加も妨害工作をやっているという。なんとも浅ましい中国の姿に呆れるのだ。

     

    『台湾・中央社』(8月23日付)は、「中国は横暴、 頼行政院長 国際社会に理解呼び掛け」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「頼清徳行政院長(首相)は22日、中央社の単独インタビューに対し、中国の『横暴さ』を国際社会に伝える必要があると述べた。日本が主導する環太平洋経済連携協定(TPP)への台湾の参加については、政治的に大きな困難に面しているとし、『完全に中国の妨害のせい』と批判した」

     

    中国は、口を開けば美辞麗句を並べるが、やっていることは「みみっちい」の一言だ。台湾虐めに狂奔している。小国・パラオに台湾断交を迫って断られると逆上、中国人観光客の渡航を禁止という圧力をかける。大国の看板が泣く振る舞いだ。

     

    台湾のTPP参加も妨害しているという。日本は、中国の妨害を断固として撥ね付けることだ。日本まで、中国の鼻息を気にしているようでは、「自由民主党」の名前に傷がつく。

     

    (2)「TPP加盟を目指す台湾。頼氏は、法整備は順調に進んでいると話す。一方で、中国の妨害で加盟が困難になっている現状を認め、加盟国の支持を積極的に求めていると明かした。中国はTPPに参加していないが、あらゆる手段で加盟国に圧力をかけているという。『(圧力の)強さは決して小さくないはず。われわれは立ち向かわなければならない』と圧力に屈しない姿勢を示した」

    頼氏は、大々的に記者会見を開いて、中国の不当な介入を訴えるべきである。ペンの力で中国の「暴力」を退治することだ。私も、及ばずながら支援したい。

     

    (3)「頼氏は、安全保障のため、台湾は米国や日本、韓国、オーストラリアなどの各国と協力すると同時に、蔡英文総統の要求に沿って着実に国防予算編成を行ったと説明。台湾は自由で民主的な、人権を保障する国家だとし『われわれの権利も国際社会に知ってもらう必要がある』と述べた。

    日本にとって台湾は、自由と民主主義を守る重要な拠点である。沖縄―台湾―フィリピンを結ぶ線は、中国の防衛ライン「第1列島線」に位置している。このことから分るように、日本と台湾は、自由と民主主義を防衛する上で重要な役割を担っている。この安全保障上の認識に立てば、日本が台湾を支援することは当然だ。

     

    米上院議員(共和党のコリー・ガードナー議員)は、中米のエルサルバドルが台湾と断交し、中国と国交を樹立したことを受け、台湾との外交関係を断ち切り、中国との関係を強める国がさらに増えることを防ぐための法案を準備していると明らかにした。

     

    『ロイター』(8月23日付)は、「米上院議員、台湾支援の法案準備、断交の連鎖防ぐ」と題する記事を掲載した。

     

    (4)「共和党のコリー・ガードナー上院議員はロイターに対して、台湾との外交関係維持することを支援する法案を数日以内に提出すると語った。ガードナー議員は、台湾に不利となるような決定を防ぐため、外交関係や対外援助に関する変更を行う権限を国務省に与えると説明。『中国の弱いものいじめに対処するために用意されている様々な手段に新たな手段が加わる』とコメントした」

     

    この記事だけでは、詳細不明である。米国政府は、「一つの中国論」に囚われずに台湾政策に柔軟である。「台湾旅行法」も成立して米台政府の高官が自由に往来することが可能になってた。この延長線で、新たな台湾支援法ができるのかも知れない。


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    米中貿易交渉は、8月22~23にかけて行なわれたが、なんの成果もなかった。中国は従来通りの主張を貫き、米国の要求する不公正貿易慣行の是正については「ゼロ回答」である。

     

    中国は最初から交渉をまとめる意思はなかった。国内の株式市場と為替市場の不安心理を抑えることに利用したに過ぎない。習氏に問いたいのは、こういう時間稼ぎすることによって、事態解決の糸口が得られるのか、という点だ。遅らせたところで、さらに窮地に立たせられるだけである。

     

    『大紀元』(8月21日付)は、「米中通商交渉再開 中国側の時間稼ぎー専門家」と題する記事を掲載していた。

     

    (1)「米カリフォルニア大学ロサンゼルス校UCLA)の経済学者・兪偉雄氏は、今回(注:先)の協議と11月末の米中首脳会談は、『11月上旬の米国中間選挙を狙った中国側の時間稼ぎの計略だ』との見方を示した。中間選挙で米民主党が下院と上院のそれぞれ議院で過半数を占めれば、対中貿易政策を含むトランプ政権の各政策実施にストップをかけることができる。『中国当局がこれを狙っている』としている。兪氏は、「中国当局の狙いは失敗に終わるだろう。現在、共和党も民主党も、中国による米企業の知的財産権侵害に関して共通認識を持っている。中間選挙の結果と関係なく、トランプ政権は、貿易問題で引き続き中国に対して強硬な措置を実施していく」と判断している」

     

    中国は、米国における対中感情がいかに悪化しているかについて、正確な認識がないようだ。民主党が中間選挙で勝利を得れば、トランプ政権の対中強硬路線を変更させられると誤解している。オバマ政権の対中政策が現在、批判されているのは融和的過ぎたという点だ。米国内の対中警戒論を軽視してはなるまい。

     

    (2)「中国経済専門家の秦鵬氏は、米中貿易摩擦の本質は中国共産党政権が抱える構造的な問題であると分析する。『中国側が構造的問題の存在を認めれば、抜本的改革を迫られる。この改革は、共産党政権の根底を覆す可能性が高いため、中国当局はどうしても避けたい』。中国当局が今できることは時間稼ぎしかないという」

     

    米国政府が、中国へ要求している点は、不公正貿易慣行の是正である。WTO(世界貿易機関)の基本原則を守れという点に尽きる。そうなれば、対米貿易収支が一方的な大赤字に

    なることはない。中国が、WTO違反の不正ルールを止めれば、米中貿易収支は改善されるという主張である。ただ、米国の主張のうちでWTO原則の遵守は正しいが、二国間で貿易収支を均衡させるのは不可能である。あくまでも多国間での貿易収支調整が基本である。

     

    中国が、WTOルールを守っていないことは事実だ。中国は、この点の是正を求められると、極めて苦しい立場に追い込まれる。「中国製造2025」は、他国の技術を窃取して、「産業強国」へのし上がろうとする「虫のいい」計画である。これは、習氏が「生涯国家主席」を目指す上で、重要なステップになっている。

     

    米国は、この習氏の「出世ハシゴ」を外すように要求している。習氏は、自らの思惑からも簡単に応じられまい。中国が、技術窃取問題を認めれば、根本的改革を迫られる。「産業強国」路線の根底が覆される事態なになるのだ。中国当局はどうしても避けたいにちがいない。だが、技術窃取は許されない。

     

    中国には、米中貿易戦争の解決策がない。時間稼ぎをするほかないという、哀れな状態へ追い込まれた。習氏の世界覇権狙いという「大言壮語」が招いた大失態だ。

     

    『産経新聞』(8月23日付)は、「中国経済が長期減速に陥る事態も」と題する東京財団政策研究所の柯隆(か・りゅう)主席研究員の見解を掲載した。柯氏は在日中国人エコノミストである。

     

    (3)「米側は、2000億ドル相当にも及ぶ第3弾の大規模制裁を準備している。これが発動されれば、中国経済は相当なダメージを受ける。短期的には、輸出にブレーキがかかって業績が低迷した企業がリストラに走り、雇用環境の悪化に伴う社会不安の増大という中国側が最も恐れる状況を招く恐れがある。長期的には、多国籍企業を中心に生産能力の一部を中国外に移す可能性もあり、中国経済が長期間減速する事態に陥りかねない」

     

    米国が目下、準備中の第3弾である2000億ドル関税を発動すれば、中国の対米輸出に大きな被害が及ぶ。むろん、米国も無傷ではあり得ない。中国に依存する生活必需品が関税分だけ値上がりする。だが、米中どちらの被害が大きいか。それは、中国である。輸出企業の倒産による雇用減が起こるからだ。雇用減=失業者増加は、家計を直撃する。2017年までの中国家計債務の対可処分所得比率は107.2%に達した。この状況では、失業すれば住宅ローン返済が不可能になる。その結果、金融危機リスクが高まるのだ。

     

    (4)「最悪のシナリオは、中国が国内改革をせずに報復カードを切り続け、とことんまで貿易戦争を続けることだ。中国が切れるカードは米側より少なく、報復措置に限界があるのは目に見えている。改革開放から40年間で、これほど強い外圧を中国が経済問題で受けたのは初めてのことだ。外圧をテコに国内の抵抗が強い国有企業改革を進めるなど、中国経済の『危機』を『好機』に転じさせることもできる。今、習近平国家主席の知恵が試されている」

     

    現在は、改革開放40年の中で最大の危機である。市場機構を意図的に抑圧し、国有企業主体の経済体制へ逆戻りさせていることも響いている。米中貿易戦争は、中国の不合理な面を徹底的に追い詰めるだろう。中国が、時間稼ぎでお茶を濁すような生温い対応は不可能に思われる。

     


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