米中貿易戦争を契機に、中国の経済構造の矛楯が一気に噴き上がっている。およそ、GDP世界2位にふさわしい体裁をなしておらず、ゲリラ的な経済運営であることを証明している。「ゲリラ」という言葉の対は「正規軍」である。中国の経済政策は、「正規軍」というオーソドックスなものでなく、木に竹を接ぐものだ。
その一端は、企業格付けである。これが全く機能を果たしていない。企業側からの賄賂によって格付けが左右されるというデタラメぶりである。金融逼迫の現象が起こっている現在、融資先企業の財務内容を的確に把握する指標は格付けのはずである。その格付けが、企業実体を表わさないので、正確な貸付のリスク計算もできない状態だ。債券発行企業の格付けは、6割が最高格付けの「トリプルA」(AAA)が付けられている。この「トリプルA」からデフォルトが出る惨状である。
AAAは本来、デフォルト率「0%」である。それほどの最高ランクの格付けが、中国企業の6割についていること自体が異常なのだ。当然、企業と格付け会社との「癒着」が想像できる。それを裏付ける事件が持ち上がった。次の記事がそれである。
「8月20日、中国当局は、利益相反の疑いで大手格付け会社『大公国際資信評』」に異例の厳しい処分を実施した。しかし政府は現在、景気テコ入れを目指し銀行にインフラ支援を呼びかけてもいる。貸出しの増加とリスキーな慣行の取り締まりを両立させるのは難しい。今回の処分は政府のジレンマを浮き彫りにした」
「中国証券監督管理委員会は17日、大公国際資信評価に対して1年間の新規業務停止を命じた。同社が高額なコンサルティング・サービスを提供した企業に格付けも付与し、利益相反の恐れがあるというのが理由だ。中国では格付け会社と企業の癒着がリスク評価を歪ませており、不正一掃は確かに長年の課題だった。データ会社ウィンドによると、中国の既発債券の60%(金額ベース)は『トリプルA』格付けの発行体のもので、これは驚くべき数字だ」(以上は、『ロイター』(8月25日付)
厳格であるべき企業格付けが、賄賂まがいの「コンサルティング・サービス」契約を結んだ企業に、AAAという最高格付けを出すというのだ。こういう実態を見ると、格付け自体が信用できず、金融機関は融資の基準になる尺度がないのだ。これは、中国の金融監督当局の業務懈怠でもある。こうして調べれば調べるほど、中国の金融秩序はデタラメの限りを尽くしている。これが、崩壊したならば再建は絶望と見られるほどだ。
この金融無秩序状態で、当局が金融緩和を図っても実際に企業の資金繰りが楽になる保証はどこにもない。こうなると、中国の内需拡大策は、従来型のインフラ投資と不動産開発の二本柱に依存する。
インフラ投資の拡充は、次のような路線が決められた。
『日本経済新聞』(8月1日付)は、「中国、景気重視に転換 政治局会議 公共投資拡大へ」と題する記事を掲載した。
(1)「2018年下期に積極的な財政政策で景気を下支えする方針を決めた。地方のインフラ整備など公共投資を拡大するとみられる。金融政策も緩和方向に修正する。米国との貿易戦争の激化に備え、景気優先の運営にカジを切る。習近平指導部はこれまで、過剰債務の削減など構造改革を優先課題としてきた。景気刺激へのシフトで構造改革が先送りになるおそれが強まる」
インフラ投資は、建設時期はGDPに寄与するが、人口密度の低い地域での投資であるから、リターンはほとんど望めない。この投資が、財政資金で賄われるのでなく、借入金や債券発行による調達に依存する。こうして負債が累積し続けるという最悪状態になる。今回もその例外でなく、中国経済を蝕むことが不可避だ。童歌の「行きはよいよい、帰りは怖い」という「通りゃんせ」と同じ状態になろう。つまり、債務によるインフラ投資は、返済で難儀を被るという意味だ。
(2)「中国政府はすでにインフラ投資の拡大に動き始めている。国営の新華社によると、7月25日から27日にチベット自治区を視察した李克強首相は鉄道建設の現場を訪れ、工事の加速を指示した『中西部のインフラはまだ脆弱だ。有効な投資で弱い部分を補強すれば、地域間の格差を縮めるだけでなく、経済にかかる下押し圧力への対応にも役立つ』。李首相はこう述べ、景気対策としてインフラ投資を増やす必要性に言及した」
中国の国家発展改革委員会によると、7月のインフラ投資計画承認額は、776億9000万元(112億4000万ドル)と発表した。6月の208億元(公式データを基にロイターが算出)のほぼ4倍に相当する急増ぶりだ(『ロイター』8月16日付)。中国政府が、いかに慌てふためいているかが分る。この投資が、GDPに寄与するのは来年の話だ。急場には間に合わない。





