習近平氏は、国粋主義者であることに間違いない。異常なまでに国威発揚を訴え、軍事パレードを行なうなど、通常の政治家とは異なるパターンである。習氏の合い言葉である「中国の夢」は、明国時代の再現という。この辺りに、なんとも言えない時代錯誤を覚えるのだ。また、現代において死語の富国強兵という言葉が、習氏の頭では健在である点に驚く。
習氏の描く国家構造では、規模の大きさを追求することが最大の眼目である。国有企業を相次いで同業合併させて、世界一、二の規模を争うようなことに興味の焦点があるのだ。問題は、企業規模の大小でなく、経営効率にあるはず。その点が、不問にされている。この量を追い質は問わない中国経済モデルが、必ず中国経済の地盤沈下を招くだろう。
習氏は、経済成長率の高さにこだわる。その裏で、債務が急増していることにそれほど神経を払わないのだ。その証拠は、限界資本係数の恒常的は上昇という危機的な現象が起こっている。これは、国家統制を重視し市場機構を無視する根本的な誤りに基づく。量を重視し質を問わないのが、中国経済モデルの欠陥である。
先に挙げた限界資本係数とは、GDP1単位を増やすのに必要な投入資本の量を指す。効率的な経済では3前後の値だ。中国はすでにこの2倍に近い値となっている。無駄なインフラ投資が、GDPを支えているという私の批判は、限界資本係数が異常値になっていることを意味している。
次に示すデータは、中国国有企業の収益性が他国に比べて劣勢にあることの証明である。
『日本経済新聞』(8月19日付)は、「中国の国有企業、経営効率低下」と題する記事を掲載した。
この記事では、中国の上場国有企業の経営効率が大きく低下している事実を浮き彫りにした。自己資本利益率(ROE)は10年で半分に落ち、総資産利益率(ROA)は3分の1近くに低下した、と指摘している。この点は、量的拡大を優先して、質の充実を後回しにしている中国経済モデルの欠陥そのものだ。
(1)「中国政府が直接、間接に50%以上の株式を保有する企業の2007年から17年の経営指標を集計した。海外にのみ上場する企業や金融を除き、業績を継続比較できるのは約300社。中国全上場企業の9%弱を占める。国有企業のROEは07年の15.6%から17年に7.0%と大幅に低下した。ROEは最終的なもうけの純利益を自己資本で割って算出し、資本の効率性を表す。保有資産をいかに効果的に使って稼いだかを示すROAも7.8%から2.8%へ下がった。民間企業の17年のROEは8.1%。10年で4ポイント低下したが、14年以降は国有企業を上回っている。国有企業は政府の意向に沿った戦略実行で資本や資産が膨らみ、効率の悪化を招いている」
上海総合株価指数は、8月17日の終値で2700ポイントを割り込んだ。国有企業300社のROE(自己資本利益率)が、最近10年で半分以下、ROA(総資本利益李)も3分の1という落ち込みである。これでは、株価は下落して当然であろう。この裏には、政府のインフラ投資の資金肩代わりをさせられている事情も無視できない。中国政府は、こうして中央財政での国債発行を減らして、国有企業にしわ寄せしている
(2)「国有企業の純利益合計は10年前から、3000億元から4000億元台で一進一退を繰り返している。経営規模が拡大しても体質を強化する取り組みが後手に回り、収益性が低下している。習近平政権は国有企業の統合で規模を拡大し、国際競争力を高めようとしている。だが効率悪化に加え、負債の増加も目立つ。17年末の上場約300社の総負債は10年前の4倍に膨らみ、初めて10兆元を上回った」
中国政府は、国有企業を自らの財布代わりに利用している。国有企業の利益が、ここ10年間、ほぼ横ばい状態である。だが、この間に総負債は4倍を超えている。中国経済の矛楯を国有企業にしわ寄せされているのだ。
中国政府は、表面的に国家財政のバランスをとっている。国有企業が、そのバッハー役に使われている。ただ、国有企業は最終的に国家財政に帰着するものだ。決して「別物」でなく一緒の扱いになる。国有企業を「ゴミ箱」代わりに使っていても意味はない。天に唾する行為と同じである。
(3)「(今回の景気刺激策による)公共投資の積み増しで、事業主体となる国有企業は短期では恩恵を受ける可能性が高い。ただ地方政府などは景気下支えに必要な公共投資の資金を、まず国有企業に負担させた上で着工するケースもある。中長期でみた構造改革には、むしろ逆効果との指摘も多い」
債務でインフラ投資を行なう構図に、何らの変化もない。中国経済の活性化など、全て棚上げされている。中国経済の抱える矛楯の根は深い。





