勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    習近平氏は、国粋主義者であることに間違いない。異常なまでに国威発揚を訴え、軍事パレードを行なうなど、通常の政治家とは異なるパターンである。習氏の合い言葉である「中国の夢」は、明国時代の再現という。この辺りに、なんとも言えない時代錯誤を覚えるのだ。また、現代において死語の富国強兵という言葉が、習氏の頭では健在である点に驚く。

     

    習氏の描く国家構造では、規模の大きさを追求することが最大の眼目である。国有企業を相次いで同業合併させて、世界一、二の規模を争うようなことに興味の焦点があるのだ。問題は、企業規模の大小でなく、経営効率にあるはず。その点が、不問にされている。この量を追い質は問わない中国経済モデルが、必ず中国経済の地盤沈下を招くだろう。

     

    習氏は、経済成長率の高さにこだわる。その裏で、債務が急増していることにそれほど神経を払わないのだ。その証拠は、限界資本係数の恒常的は上昇という危機的な現象が起こっている。これは、国家統制を重視し市場機構を無視する根本的な誤りに基づく。量を重視し質を問わないのが、中国経済モデルの欠陥である。

     

    先に挙げた限界資本係数とは、GDP1単位を増やすのに必要な投入資本の量を指す。効率的な経済では3前後の値だ。中国はすでにこの2倍に近い値となっている。無駄なインフラ投資が、GDPを支えているという私の批判は、限界資本係数が異常値になっていることを意味している。

     

    次に示すデータは、中国国有企業の収益性が他国に比べて劣勢にあることの証明である。

     

    『日本経済新聞』(8月19日付)は、「中国の国有企業、経営効率低下」と題する記事を掲載した。

     

    この記事では、中国の上場国有企業の経営効率が大きく低下している事実を浮き彫りにした。自己資本利益率(ROE)は10年で半分に落ち、総資産利益率(ROA)は3分の1近くに低下した、と指摘している。この点は、量的拡大を優先して、質の充実を後回しにしている中国経済モデルの欠陥そのものだ。

     

    (1)「中国政府が直接、間接に50%以上の株式を保有する企業の2007年から17年の経営指標を集計した。海外にのみ上場する企業や金融を除き、業績を継続比較できるのは約300社。中国全上場企業の9%弱を占める。国有企業のROEは07年の15.6%から17年に7.0%と大幅に低下した。ROEは最終的なもうけの純利益を自己資本で割って算出し、資本の効率性を表す。保有資産をいかに効果的に使って稼いだかを示すROAも7.8%から2.8%へ下がった。民間企業の17年のROEは8.1%。10年で4ポイント低下したが、14年以降は国有企業を上回っている。国有企業は政府の意向に沿った戦略実行で資本や資産が膨らみ、効率の悪化を招いている」

     

    上海総合株価指数は、8月17日の終値で2700ポイントを割り込んだ。国有企業300社のROE(自己資本利益率)が、最近10年で半分以下、ROA(総資本利益李)も3分の1という落ち込みである。これでは、株価は下落して当然であろう。この裏には、政府のインフラ投資の資金肩代わりをさせられている事情も無視できない。中国政府は、こうして中央財政での国債発行を減らして、国有企業にしわ寄せしている

     

    (2)「国有企業の純利益合計は10年前から、3000億元から4000億元台で一進一退を繰り返している。経営規模が拡大しても体質を強化する取り組みが後手に回り、収益性が低下している。習近平政権は国有企業の統合で規模を拡大し、国際競争力を高めようとしている。だが効率悪化に加え、負債の増加も目立つ。17年末の上場約300社の総負債は10年前の4倍に膨らみ、初めて10兆元を上回った」

     

    中国政府は、国有企業を自らの財布代わりに利用している。国有企業の利益が、ここ10年間、ほぼ横ばい状態である。だが、この間に総負債は4倍を超えている。中国経済の矛楯を国有企業にしわ寄せされているのだ。

     

    中国政府は、表面的に国家財政のバランスをとっている。国有企業が、そのバッハー役に使われている。ただ、国有企業は最終的に国家財政に帰着するものだ。決して「別物」でなく一緒の扱いになる。国有企業を「ゴミ箱」代わりに使っていても意味はない。天に唾する行為と同じである。

     

    (3)「(今回の景気刺激策による)公共投資の積み増しで、事業主体となる国有企業は短期では恩恵を受ける可能性が高い。ただ地方政府などは景気下支えに必要な公共投資の資金を、まず国有企業に負担させた上で着工するケースもある。中長期でみた構造改革には、むしろ逆効果との指摘も多い」

     

    債務でインフラ投資を行なう構図に、何らの変化もない。中国経済の活性化など、全て棚上げされている。中国経済の抱える矛楯の根は深い。


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    米中復交の際に確認した「一つの中国論」は、米国によって破棄されようとしている。8月19日、南米を訪問中の蔡英文総統が、テキサス州ヒューストンの米航空宇宙局(NASA)ジョンソン宇宙センターを訪問したことが分った。米国としては、異例中の異例とも言うべき厚遇をした。

     

    米国は、中国に対してすでに「仮想敵国」の扱いを始めている。国防権限法では公開部分と非公開部分があるが、公開部分でもハッキリと中国を焦点とした扱いが明記されている。南シナ海での国際法を無視した占拠と軍事基地化など、公海自由の原則を御旗にする海洋国家・米国には許しがたい振る舞いである。米国を無視した中国を、これ以上甘やかさないという決意を見せつけたもの。米国の自由と民主主義を守る決意が、蔡英文総統のNASA受け入れと見られる。

     

    この裏には、ボルトン米大統領安保担当補佐官の助言が大きく影響していると見られる。ボルトン氏は、トランプ氏が大統領当選前から台湾を訪問しており、米国の台湾への武器売却、台湾旅行法などの推進役になっている。

     

    米国は、蔡英文総統への厚遇を通して、米中貿易戦争でも妥協しないという強いメッセージを出したのであろう。ホワイトハウスでは、「中国経済は日一日と弱っている」と判断している。

     

    『日本経済新聞』(8月19日電子版)は、「台湾蔡総統がNASA施設訪問、米が異例の厚遇、中国反発も」と題する記事を掲載した。

     

    「外遊中の台湾・蔡英文総統が米現地時間19日午前、米テキサス州ヒューストンの米航空宇宙局(NASA)ジョンソン宇宙センターを訪問することが分かった。台湾の中央通信が報じた。台湾の総統が米本土の政府関連機関を直接訪れるのは初めて。米が台湾との親密さを見せつけ、中国をけん制している可能性がある。中国は反発しそうだ」

     

    「今回の外遊では蔡氏に対する米の厚遇ぶりが鮮明になっている。蔡氏は13日、往路でロサンゼルスに立ち寄った際にレーガン大統領図書館を訪問。レーガン氏の米台関係への貢献をたたえる談話を発表した。台湾の総統が米本土の公開の場で談話を出すのは異例。従来、米国は中国への配慮から台湾の総統が領内を経由する際にはメディア対応などを厳しく規制していた」

     

    「米は通商やアジアの安全保障を巡って中国との摩擦が激化しており、台湾問題を中国をけん制するための外交カードとして活用する場面が増えている。3月には台湾とのあらゆるレベルの高官の往来を促進する「台湾旅行法」が成立。同法が成立して以降、蔡氏が米を訪れるのは初めてだった」

     

     


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    親日と見られてきた台湾で、8月14日慰安婦像が建てられた。台南市の国民党所有の敷地内である。このニュースを見て、誰でも驚いたに違いない。日本で震災が起これば、いつも心暖かい真心こもった支援をしてくれる。その台湾でなぜ?

     

    台湾メディアが、その裏事情を伝えている。

     

    『中央社』(8月16日付)は、「台南に設置の慰安婦像 市や民進党、国民党による政
    治利用を批判」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「南部・台南市に台湾で初めての慰安婦像が設置されたことについて、同市や与党・民進党台南支部は『国民党による慰安婦の政治利用』だとの見方を示している。日本の対台湾窓口機関、日本台湾交流協会は15日、国民党台南市党部関係者らによる慰安婦像設置は日本政府の立場やこれまでの取り組みと相容れないものであり、『大変残念』とする声明を発表した」

     

    日本台湾交流協会は15日、公式サイトにつぎのような声明文を掲載した。「慰安婦像設置を残念に思う気持ちを示した上で、日本政府主導で創設された『アジア女性基金』が台湾で呼びかけに応じた元慰安婦13人に『償い金』として1人当たり200万円、医療・福祉支援事業として1人当たり300万円を支給したことを説明。歴代首相からのお詫びの手紙を元慰安婦に届けた」

     

    このような、状況下で国民党があえて「慰安婦像」を建てたのは、「反日」が目的でなく、与党の民進党へ対抗する意図だという。

     

    (2)「台南市政府新聞及国際関係処の許淑芬処長は15日、慰安婦像除幕式は国民党が一手に取り仕切ったものだと指摘。式典の開催地や像の設置場所が同党の所有地であるほか、式典を主催した台南市慰安婦人権平等促進協会が今年4月に同党台南支部の謝龍介主任委員の協力で創設され、馬英九前総統が式典をつかさどったことを根拠に挙げた。式典後、台南市長選に出馬する同党公認候補、高思博氏の街頭イベントが行われたことにも触れ、同党には政治的目論見があったと批判した」

     

    地元の台南市では、「慰安婦像」が建てられて困惑している様子だ。慰安婦像の除幕式を国民党が全て手配し、地元が関わっていないからだ。除幕式後、台南市長選の立候補者についてPRするなど、目的がここにあったことを示唆している。

     

    (3)「民進党台南支部の蔡麗青執行長は、馬前総統が総統在任中に像を設置しなかったのは、外交上の考えがあったからだと言及。(台南市長)選挙期間中に協会設立や銅像設置などの大きな動きを突然見せたのは、1947年の2・28事件で犠牲になった弁護士の湯徳章(坂井徳章)氏の像への当てつけで、国民党が難癖をつけていると非難した。湯氏の像は市内の湯徳章記念公園に設置されている。また、慰安婦問題は党派を問わず共に向き合うべきで、これらの強くて偉大な女性たちが消費されることはあってはならないと述べた」

    民進党の地元幹部は、国民党が「慰安婦像」を建てた目的について、2.28事件(国民党政府が、台湾市民の抗議を弾圧して2万人前後の犠牲者を出した事件)で犠牲になった弁護士像への「嫌がらせ」だと見ている。前記の弾圧事件は、国民党政府の行なったもの。それだけに、古傷に触れられるのを忌避したかったのか。その嫌がらせが、「慰安婦像」とは解せない。

     

    それにしても、国民党はもはや政権を獲れる見込みがなくなったのか。政権に復帰したときは、「慰安婦像」を撤去し日本へ涼しい顔をするつもりなのか。理解に苦しむ話だ。

     


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    韓国大統領府は、きょう日曜日でも雇用危機対処の緊急会議を開いているはずだ。文氏が政権について以来、雇用政策が完全に破綻しており、韓国国民は路頭に迷わされている。隣国の話とはいえ、余りの無能・無策に義憤さえ感じる体たらくである。

     

    最低賃金の大幅(16.4%)引上げが、社会の底辺で経済的に苦しんでいる人々に経済的な余力をつける。その結果、消費が増えて経済が成長する。政府は、こういう説明であった。言っていることは正しいし、ぜひそうあって欲しいと願う。だが、この主張には大きな「落し穴」がある。賃金の支払い能力のない雇用主は、対応不可能なのだ。しかも、韓国ではこの最賃法に罰則がついている。最賃を守らない雇用主は処罰を受ける。中小零細業者は、やむなく雇用止めをした。失業者が増え新規雇用が急減して、現在の雇用危機を迎えたのだ。

     

    日本の野党の一部でも、韓国政府と同じ主張をしている政党がある。日本が、この政策を取り入れ実行していたならば、今頃は韓国と同じ運命で「悲憤慷慨」(ひふんこうがい)して、政権を呪っていなければならなかった。危ないところで難を免れた。内外を問わず、革新を名乗る政党の主張には、理屈に合わないことを平気で主張する軽薄さがある。中国共産党もその一つだ。

     

    『中央日報』(8月19日付)は、「雇用惨事の悲鳴、まだ聞こえないのか」と題する社説を掲げた。タイトルからも、切迫感が伝わってくる。

     

    (1)「7月の新規就業者数は5000人増だった。また失業者は7カ月連続で100万人を上回った。5000人は韓国経済が正常だった当時の新規就業者30万人の60分の1にすぎない。米国発グローバル金融危機の影響があった2010年1月以来8年6カ月ぶりの雇用惨事だ。世界景気の好調で主要国では人手が不足しているが、韓国だけが深刻な状況を迎えている」

     

    昨年までは毎月、新規に職に就く人が30万人もいた。それが先月は、たったの5000人増である。何か、桁を間違えていないかと思うほどの激落ぶりだ。政策を失敗すると、こういう被害が国民に及ぶいい見本になった。

     

    日本では逆である。最賃以上の賃金を出しても人が集まらない。これを見れば、政党を選ぶことの重要さが分る。日本の若者は、自民党支持だと言って年配者が嘆いている。自分たちに仕事を保証してくれる政党を支持するのは、致し方ないのでなかろうか。

     

    (2)「これまで雇用政策に動員された予算だけでも54兆ウォン(約5兆3100億円)にのぼる。本予算内の雇用関連予算は昨年の17兆ウォンからは今年は過去最大の19兆ウォンに増えた。さらに2回の雇用関連補正予算として15兆ウォン、最低賃金支援のための雇用安定資金として3兆ウォンが動員された。天文学的規模の予算がじゅうたん爆撃式に投入されたのだ」

    韓国政府は、「雇用政権」が看板だ。それだけに、雇用関連予算をたっぷりと付けている。これまでに5兆3100億円にも達した。その結果が、新規雇用者を60分の1に減らしている。貴重な国家予算をドブに捨てたも同然である。政策手段を間違えると、この始末である。

     

    中央日報社説は、「最低賃金据え置きや再審議など大統領緊急命令権の発動も考慮すべき」と提言している。雇用危機は、ここまで進行している。重大事態だ。


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    中国の「一帯一路」計画は、当初の思惑と異なり、次第に経済的な負担になってきた。この「一帯一路」構想は、党内序列第5位の王滬寧(ワン・フーリン)政治局常務委員によるもの。王氏は、イデオロギーとプロパガンダ担当である。この職務から見ても、「一帯一路」計画そのものが、理念先行であることは想像に難くない。経済的メリットの面の検討が、十分にされたかどうか、はなはだ疑問なのだ。

     

    「一帯一路」は、経済面よりも政治面を重視した。これが現在、中国経済の負担要因になっている。具体的には、経常収支の所得収支面で、マイナス要因になっているからだ。中国が「一帯一路」計画を議論し始めた時期は2014年秋と見られる。中国の外貨準備高が、4兆ドル台スレスレに達した時期(2014年5月)と符節を合うのだ。当時は、潤沢な外貨準備を背景にして、「一帯一路」計画が練られたのだろう。その意味で、投資効率への配慮よりも政治的影響力拡大を重視したことは疑いない。

     

    当時と異なって現在は、経済面を重視せざるを得なくない。このギャップが、中国を大きく苦しめることになった。これを、見透かすような記事が登場した。

     

    『レコードチャイナ』(8月17日付)は、「一帯一路に失敗したら、中国はソ連と同じ運命」と題して『ブルームバーグ』の記事を転載した。

     

    この記事は、中国の将来を左右するポイントが、「一帯一路」が経済的に成功するかどうかにかかっていると指摘している。中国は、「一帯一路」起案時に重視していたものは、政治的な影響力の拡張であったはず。4兆ドルに近い外貨準備高を擁していたので、経済面での配慮は副次的なものであったろう。この記事では、経済面での成功が中国の運命を左右すると指摘している。中国の弱点を鋭く衝いたものだ。これに失敗すれば、中国は「ソ連」が陥ったように、破綻するほかないと論じている。中国にとっては、極めて厳しい内容だ。

     

    (1)「米『ブルームバーグ』(8月12日付)は、『ソ連の崩壊が中国の一帯一路でこだまする』と題する記事を掲載した。記事は、『収益のない地域での大規模な投資が、かつての帝国を崩壊させた』とし、投資問題の効率性を指摘している。それによると、『大国とは、経済的な潜在力を最善の方法で利用することで軍事力を発展させることができる国のこと。しかし、軍事的拡張の度が過ぎると、戦略的優位性を維持するための巨費が、経済的に収益のある地域の資金を欠乏させることになり、これが衰退を不可避なものとする。中国にとって、この点が非常に憂慮されている』としている」

     

    大国とは、経済の潜在成長力をフルに生かし、それを利用して軍事力を発展させる、としている。つまり、経済発展が前提であって、軍事力はその中で発展するものだという。したがって、軍事力に資金を配分しすぎて経済面の発展が疎かになると、逆に軍事力の発展を抑える結果になる。要は、経済と軍事はバランスをとることが重要だ。このバランスが崩れて、経済面が弱体化すると経済崩壊のリスクが大きくなる。中国は、その恐れが大きいとしている。「一帯一路」は、その点で非効率投資であると示唆するのだ。

     

    (2)「中国は、『①現在の経済成長力、②拡張を続ける軍事力、③戦略的に重要な『一帯一路』での巨額投資の3点が密接に関係している』と指摘している。その上で、『1980年代のソ連のように、中国の労働力がもたらした長期的な繁栄は尽きようとしており、固定資産投資によって成長神話を維持しようとしている。『一帯一路』の成否は、中国復興の夢を実現できるか、それともかつてのソ連のように滅亡へと向かう前に倒れてしまうのかを決定するだろう』と指摘している」。

     

    このパラグラフは、前のパラグラフの具体的な説明である。1980年代、ソ連経済が停滞したのは労働力の枯渇が原因であった。現在の中国も、この状態に向かっている。この労働力不足を補うには、効率的投資が前提になる。中国はこれと逆行しており、限界資本係数の構造的上昇という危機に陥っている。無駄なインフラ投資でGDPを押上げる「土木国家経済」に堕しているからだ。その上、「一帯一路」投資まで成果を生まなければ、軍事力拡張が大きな圧力となって、中国経済を破綻に追い込むと見ている。貴重なアドバイスと思う。

     

     

     


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